説明

自動製パン機

【課題】製品の全高に影響がなく、具入れ容器の着脱が自由であり、製パン工程終了後におけるパンケースの取り出しに支障の来たすことがないようにした自動製パン機を提供することである。
【解決手段】具入れ容器24が容器本体25と、該容器本体25に開閉自在に取付けられた容器蓋セット47とからなり、前記具入れ容器24を本体蓋セット18の内面に着脱自在に取付け、前記容器蓋セット47に対する係合が解除されたときに前記具入れ容器24が前記本体蓋セット18の内面の高さまで全開されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動製パン機に関し、特に製パン工程の途中においてレーズン、ナッツ等の具その他の製パン材料(以下、単に具と称する。)を追加的に自動投入できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
製パン工程の途中において必要に応じてパン生地に具を自動投入できるようにした具投入装置付き自動製パン機が従来から知られている。
【0003】
従来の具投入装置付き自動製パン機は、本体胴部の内部にオーブンが設けられるとともにその本体胴部に取付けられた蓋セットに具入れ容器が取付けられ、製パン工程の適宜な時期に作動機構部によって具入れ容器が開放され、その内部の具をオーブン内のパンケース内に落下させるようになっている(特許文献1)。
【0004】
この場合の具投入装置は、蓋セットを構成する内蓋と外蓋との間に設けられた収納部と、その収納部に出し入れ自在に収納された具入れ容器からなる。前記収納部の上面となる外蓋の部分に手動で操作される開閉蓋が設けられる一方、収納部の底面となる内蓋の部分に自動開放される扉が設けられる。その扉が作動機構部によって自動開放されると、内部の具入れ容器が扉の開放と共に傾いて内部の具をオーブン内部に落下させる。
【0005】
その他の従来例として、蓋セットを構成する内蓋に上面開放の具入れ容器が回転可能に軸支され、その上方の外蓋下面に前記具入れ容器を受け入れる空間が設けられ、作動機構部によってその具入れ容器を前記空間内に半回転させ上下逆様状態に反転させることにより、内部の具をオーブン内部に落下させるようにしたものもある(特許文献2)。この場合の具入れ容器は必要に応じて取り外すことができる。
【特許文献1】特開平9−117375号公報
【特許文献2】特開平11−346930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の具投入装置付き自動製パン機は、前記のように、具入れ容器が蓋の内部に設けられていたので、具入れ容器の高さが直接蓋セットの厚さに影響する構成である。このため、所定量の具の容量を確保しようとした場合に具入れ容器が高くなり、その結果蓋セットが厚くなり、必然的に製品の全高が高くなるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2の場合は、具の投入を必要としない場合は具入れ容器を取り外すことができるが、蓋内部に設けられた回転動作のための空間はそのまま残るため、蓋セットの厚さが具入れ容器の高さに影響されることについては前記の場合と変わりがない。
【0008】
具入れ容器の高さが蓋セットの厚さに影響しないようにするため、具入れ容器を本体胴部内部のオーブン上部に着脱自在に取付ける構成が考えられる。この構成を採用すると、具入れ容器の高さが蓋セットの厚さに関係しないため製品の全高に影響がなく、また具投入の必要がない場合は取り外しが可能である便利さもある。しかし、具入れ容器をオーブン上部に取付ける構成であるため、製パン工程終了後オーブン内部のパンケースを取り出す際に、まず具入れ容器を取り外す必要があるため、利便性の点から改良の余地がある。
【0009】
そこで、この発明は、製品の全高に影響がなく、具入れ容器の着脱が自由であり、更に、製パン工程終了後におけるパンケースの取り出しに支障を来たすことがないようにした自動製パン機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、この発明は、本体胴部11の内部にオーブン12が設けられるとともに本体蓋セット18に具入れ容器24が取付けられ、前記具入れ容器24の作動機構部20が設けられた自動製パン機において、前記具入れ容器24が容器本体25と、該容器本体25に取付けられた容器蓋セット47と、該容器蓋セット47を容器本体25に対して閉鎖状態に係合させる係合手段57と、該容器本体25と容器蓋セット47を相対的に全開させる付勢手段44とからなり、前記具入れ容器24が前記本体蓋セット18の内面に着脱自在に取付けられ、前記作動機構部20の作動によって前記係合手段57の容器蓋セット47に対する係合が解除されたときに前記具入れ容器24が前記本体蓋セット18の内面の高さまで全開されるように構成したものである。
【0011】
前記構成の自動製パン機は、通常の自動製パン機の場合と同様に、本体蓋セット18の内面とオーブン12との間にパン生地の膨張を許容する空間が設けられている。前記の具入れ容器24はその空間を利用して本体蓋セット18の内面に着脱自在に取付けられるので、本体蓋セット18の内部構造に影響をもたらさない。従って、具入れ容器24の高さが本体蓋セット18の厚さに影響することがない。また、具入れ容器24は、容器本体25の内容積と容器蓋セット47を構成する蓋枠26の内容積の総和が具の最大収納量となるので、十分大きい容量が確保される。その一方、具投入時においては、容器本体25と容器蓋セット47が相対的に全開することにより、具入れ容器24の高さは容器本体25と容器蓋セット47に分散されるので、容器本体25と容器蓋セット47の下方にパン生地の膨張空間を確保することができる。
【0012】
また、前記容器蓋セット47が、前記容器本体25に対し開閉自在に取付けられた蓋枠26と、該蓋枠26に開閉自在に取付けられた蓋板27とからなる構成をとることができる。この構成によると、予め具入れ容器24に具を入れる際は、
蓋板27のみを開放して具を入れることができるため、具の最大収納量を最大限に利用することができる。
【0013】
また、前記蓋板27を金属製とすることにより、所要の強度を保持しつつその厚さを可及的に薄く形成することができ、蓋板27による具入れ容器24の高さへの影響を実質的にゼロにすることができる。また、その表面に非粘着性の樹脂コーティングを施すことにより具の付着が防止され、内部に具が残ることなくその全量をパンケース15内に落下させることができる。
【0014】
また、前記蓋枠26の蓋枠ヒンジ部36、前記蓋板27の蓋板ヒンジ部39及び前記付勢手段44が同芯状態に嵌合され、その嵌合部分に嵌入された穴明きの軸受部材43によってこれらの部材が一体に組み合わされて前記の容器蓋セット47が構成され、前記軸受部材43に挿通された容器ヒンジ軸48によって前記容器蓋セット47が前記容器本体25に対して開閉自在に組み合わされた構成をとることにより組立性が向上する。
【0015】
更に、前記容器蓋セット47の開放時に前記容器本体25の制動部65に摺接する制動部材63が前記蓋枠ヒンジ部36に設けられ、前記制動部材63に設けられた径漸増形状の膨出部66が該容器蓋セット47の開放角が増大するに従い前記制動部65に摺接しながら回転し、全開時において該膨出部66の一部が前記制動部65に係合して前記容器蓋セット47を全開状態に保持するようにしたことにより、容器蓋セット47の全開時におけるバウンドが防止され、かつ全開状態に保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、以上のようなものであるから、以下のような効果を奏することができる。
1)具入れ容器24の高さが本体蓋セット18の厚さに影響を与えることがないので製品の全高を増加させることがない。
2)具入れ容器24が着脱自在に取付けられるので、具投入の必要のない場合は取り外しておくことができる。
3)容器本体25と容器蓋セット47の各内部容量の総和が具入れ容量となるので十分大きな容量を得ることができる。
4)蓋板27のみを開放して具を入れることができるため、具の最大収容量を最大限に利用することができる。
5)具の投入後は容器本体25と容器蓋セット47が両側に分かれるように開放されるので、これらの下方においてパンの膨張空間を確保することができる。
6)容器蓋セット47の容器本体25に対する相対的な開放時において、制動トルクが作用することにより全開時のバウンドが防止され、また、全開時において膨出部66の一部が制動部65に係合することにより容器本体25と容器蓋セット47を全開状態に保持することができる。
7)製パン工程終了後、本体蓋セット18を開放した場合、具入れ容器24が本体蓋セット18と共に開放されるのでパンケース15の取り出しに支障を来たすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいてこの発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0018】
図1に示したように、実施例の自動製パン機は、本体胴部11の内部にオーブン12が設けられ、そのオーブン12の底部にモーター等の駆動装置13、オーブン12の内部にヒーター14が設けられる。オーブン12の内部にパンケース15が出し入れ自在に設置され、パンケース15の内底面に駆動軸16が挿通され、その駆動軸16に混練羽根17が着脱自在に取付けられる。
【0019】
前記本体胴部11の上部開放部に本体蓋セット18が本体ヒンジ軸19により開閉自在に取付けられる。本体蓋セット18は、外蓋21と内蓋22からなり、その内蓋22が前記オーブン12の蓋となる。外蓋21に透明板が装着された覗き窓23が設けられる。前記本体蓋セット18の内面、即ち内蓋22内面の中央部から後方(本体ヒンジ軸19の方向)に片寄ったほぼ半分の範囲に具入れ容器24が着脱自在に取付けられる。
【0020】
なお、本体ヒンジ軸19の下方の本体胴部11の内部に後述の作動機構部20が設けられる。
【0021】
次に、具入れ容器24について詳述する。図2及び図3Aに示したように、具入れ容器24は、容器本体25、蓋枠26、蓋板27等からなる。容器本体25は、大略矩形に形成された底面の三辺を囲む周壁28を有し、その周壁28の両側端部に容器ヒンジ部29が形成され、該容器ヒンジ部29に軸穴31が設けられる。また、前記底面の他の一辺、即ち容器ヒンジ部29間に前壁32が設けられ、この前壁32と前記の周壁28とによって所要深さの容器本体25が形成される。周壁28は容器ヒンジ部29側が低く、途中で傾斜した段差があり、後壁(前壁32と平行な周壁28の部分)が相対的に高く形成されている。前記容器ヒンジ部29の外側面に取付け突起33(「特許請求の範囲」においては「取付け部33」と称している。以下同様)が設けられ、また前壁32に後述する付勢ばね44(「特許請求の範囲」においては「付勢手段44」と称している。以下同様)の脚49の係合スリット51が形成される。
【0022】
蓋枠26は、前記容器本体25の周壁28上に重なる蓋枠周壁34と、前壁32上に重なる蓋枠前壁35とによって枠形に形成され、その蓋枠前壁35の下端に蓋枠ヒンジ部36が形成される。前記蓋枠周壁34の中央部分の外側面に後述する係合レバー57(「特許請求の範囲」においては「係合手段57」と称している。以下同様)(図4(b)参照)の係合部37が設けられ、また、蓋枠前壁35から蓋枠ヒンジ部36に渡るスリット38が左右2個所に設けられる。各スリット38には、後述のように、蓋板ヒンジ部39が嵌入される。
【0023】
蓋板27は、具入れ容器24の高さに影響をもたらすことがなく、かつ所要の強度が必要であることからアルミ板によって形成され、蓋板27の容器本体25側の内表面には、具の付着防止のためにフッ素樹脂等の非粘着性樹脂によるコーティングが施される。この蓋板27は前記蓋枠26の開放部を開閉するとともに、蓋枠前壁35の部分をカバーする。また一対の蓋板ヒンジ部39を有する。蓋板27の自由端側の表面に金属板製の摘み41が設けられ、その摘み41と一体の巻き曲げ部42(図6参照)が所要の弾性をもって前記係合部37の内面に係脱自在に係合される。
【0024】
前記の蓋枠26と蓋板27の組み合わせは、蓋板27の一対の蓋板ヒンジ部39を蓋枠26の2個所のスリット38に嵌入して蓋板ヒンジ部39と蓋枠ヒンジ部36の芯合わせを行い、各蓋枠ヒンジ部36の外方から穴明き軸受部材43を挿入する(図3A参照)。各軸受部材43は、それぞれスリット38に嵌入された蓋板ヒンジ部39にも挿通され(図7参照)、蓋枠26に対し蓋板27を開閉自在に組み合わせる。一方の軸受部材43には捩りコイルばねでなる付勢ばね44が嵌合される。各軸受部材43には抜け止め部45が設けられ、その抜け止め部45が各蓋枠ヒンジ部36の外側面に設けられたた嵌合凹部46に圧入される。その圧入によって軸受部材43の抜け出しが防止される。このようにして蓋枠26と蓋板27を組み合わせた状態の容器蓋セット47を図3Bに示す。
【0025】
前記容器蓋セット47は、容器本体25の左右の容器ヒンジ部29の間に蓋枠ヒンジ部36を介在させ、芯合わせを行った状態で容器ヒンジ軸48を挿通することにより容器本体25に組み合わされる。容器ヒンジ軸48は前記軸受部材43の穴内にすき間なく挿通されることにより(図7(b)参照)、容器蓋セット47及び蓋板27の開閉が円滑に行われるようしている。付勢ばね44の一方の脚49は容器本体25の前壁32に形成された係合スリット51に係合され、他方の脚49は復元弾性を付与した状態で蓋枠26の内面に係合される。これにより、容器本体25と容器蓋セット47が相対的に開放方向に付勢される。
【0026】
前記容器蓋セット47を容器本体25に係脱自在に係合する作用及び具入れ容器24を本体蓋セット18に係脱自在に係合する作用は、図3A、図4(b)、図5、図6、図7(a)等に示した係合機構部52と、図1に示した作動機構部20によって行われる。
【0027】
係合機構部52は、容器本体25の周壁28の背面に一体に設けられた機構ケース53と、その機構ケース53の内部において前記の容器ヒンジ軸48と平行な横軸54(図4(b)参照)によって揺動自在に支持された取付け部材55と、前記横軸54と直交する上下方向の縦軸56によって揺動自在に支持された係合レバー57とからなる。
【0028】
前記の取付け部材55は、上下の端部が内向きにL字形に屈曲された金属片でなり(図7(a)参照)、上端の屈曲部は具入れ容器24の取外し時の指掛け部60となり、また下端の屈曲部は本体蓋セット18に対する係合爪58となる。また、該取付け部材55と機構ケース53の内面との間に付勢ばね59(「特許請求の範囲」では「付勢手段59」と称している。以下同様)が介在され、下端の係合爪58を係合方向に付勢している。
【0029】
前記の係合レバー57(図5、図6参照)は、その先端に設けられた内向きのL形の屈曲部61が、前述の蓋枠周壁34に形成された係合部37の上面に係脱自在に係合される(図6参照)。その係合レバー57と機構ケース53の内面との間に付勢ばね62が介在され、前記屈曲部61を係合方向に付勢している。
【0030】
前記係合レバー57が、後述のように、本体胴部11の作動機構部20から作動されると、係合レバー57の屈曲部61が外れるため容器蓋セット47が付勢ばね44に付勢され、容器本体25に対して実質的に180度開放される。この場合、全開状態になる前に制動を掛けてバウンドを回避する必要がある。このため、蓋枠ヒンジ部36において容器ヒンジ軸48の周りにシリコーン樹脂等の弾性体でなる制動部材63が装着される(図10A(a)参照)。
【0031】
制動部材63の一部に容器蓋セット47の開放時回転方向(同図の二点鎖線矢印a参照)と反対方向に次第に径が大きくなる、いわゆる径漸増形の膨出部66が設けられる。その膨出部66が蓋枠ヒンジ部36の開口部64から外部に露出され、その露出した膨出部66が容器本体25の前壁32の下端部に形成された制動部65の摺接面に摺接させるようにしている。容器蓋セット47が全開状態に近づくと制動トルクが作用し始め、次第に大きくなって全開時に最も大きい制動トルクが作用する(図10A(b)参照)。
【0032】
なお、容器蓋セット47の全開状態を確実に保持する大きな制動トルクを得るために、制動部65の摺接面に小凸部67(図10A(c)参照)を設け、この部分に膨出部66に設けた小凹部66aが落ち込むようにすることができる。
【0033】
図10Bに示した構成は、前記の場合と同様に制動部材63の一部に容器蓋セット47の開放時回転方向(図10Bの二点鎖線矢印a参照)と反対方向に次第に径が大きくなる、いわゆる径漸増形の膨出部66が設けられる。容器本体25側に形成された制動部65の先端部と蓋枠ヒンジ部36との間に径方向のすき間が形成される。前記の膨出部66が蓋枠ヒンジ部36の開口部64から外部に露出され、その露出した膨出部66が、前記の容器蓋セット47の開放とともに前期のすき間に入り込むようになっている。容器蓋セット47が全開状態に近づくにつれて膨出部66が前記すき間において次第に圧縮されながら制動トルクを増大させる。膨出部66は容器蓋セット47の全開時において前記のすき間を通過して停止する。容器蓋セット47が閉鎖方向に戻ろうとすると膨出部66がすき間に当たるため大きな制動トルクが発生し全開状態に保持される。
【0034】
前記の具入れ容器24を本体蓋セット18の内面に着脱自在に取付ける構成は次のとおりである。即ち、図8に示したように、具入れ容器24側においては、前述の取付け部材55のほかに、容器本体25の容器ヒンジ部29に設けられた取付け突起33、及び容器本体25の下面に設けられた位置決め凹部68(図4(b)参照)によって構成される。これに対応した本体蓋セット18側の構成は、前記の取付け部材55の下端の係合爪58に係合されるように、本体蓋セット18の内面に平行な平面において後方(本体ヒンジ軸19側)に開放されたコの字形の係合凹部69(図7(a)、図8参照。「特許請求の範囲」においては「第二の係合凹部69と称している。以下同様)、前記の取付け突起33に係合されるよう同様に本体蓋セット18の内面に平行な平面において前方に開放されたコの字形の一対の係合凹部71(図8参照、「特許請求の範囲」においては「第一の係合凹部71」と称している。以下同様)、及び前記位置決め凹部68に嵌合される突起からなるストッパー72(「特許請求の範囲」においては「位置決め手段72」と称している。以下同様)によって構成される。前記の係合凹部69、ストッパー72はそれぞれ本体蓋セット18の後端部に接近して設けられ、また一対の係合凹部71は本体蓋セット18の中央部に設けられる。
【0035】
図1に示したように、本体胴部11の後部においてオーブン12の外側面に沿って前述の作動機構部20が設けられる。作動機構部20は、上下方向に配置された作動レバー73と、ソレノイド74によって構成され、作動レバー73は水平方向の支点軸75によって揺動自在に支持される。作動レバー73の下端部はソレノイド74に係合されるとともに、上端の操作部77がオーブン12の内部に露出され、係合レバー57の一端部に臨む。作動レバー73は付勢ばね76によって操作部77が係合レバー57から離れる方向に付勢される。ソレノイド74は図示省略の制御部からの具投入信号によって作動され、作動レバー73を介して係合レバー57を作動させる。
【0036】
実施例の自動製パン機は以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0037】
具入れ容器24は、本体蓋セット18から外した状態においては、図2(a)に示したように、容器本体25と、その容器本体周壁28上に重なった蓋枠26とによって具の収納部が構成される。蓋板27の摘み41を摘んで開放すると、摘み41の巻き曲げ部42(図6参照)が係合部37から軽く外れて蓋板27が開放される(図2(b)、図6の二点鎖線参照)。また、蓋枠26と蓋板27からなる容器蓋セット47は、係合レバー57が外部から作動されて係合が外れると、付勢ばね44の付勢力によって開放される(図4(a)、図6の二点鎖線参照)。その開放が全開状態に到達する前に制動部材63が制動部65に摺接して制動が掛かる。
【0038】
いま、上記の具入れ容器24を用いて製パンを実施する場合、図2(b)に示したように蓋板27を開放し、容器本体25と蓋枠26とによって構成された収納部に所定量の具が入れられる。具の収納可能容量は容器本体25の内部容積と蓋枠26の内部容積の和である。蓋板27を閉めたのち、開放状態にある本体蓋セット18の内面に具入れ容器24を取付ける(図8参照)。この場合、容器本体25が本体蓋セット18の内面を向くように取付ける。即ち、図8において一点鎖線で示したように、具入れ容器24の取付け突起33を中央部の係合凹部71に係合したうえで、具入れ容器24の全体を本体蓋セット18の内面に押し当てる。これによって取付け部材55の係合爪58が係合凹部69のテーパ面70(図5、図7(a)参照)でガイドされながら傾動し係合凹部69に掛けられる。同時に、容器本体25の下面に設けられた位置決め凹部68にストッパー72が嵌入され、具入れ容器24の前後方向の位置決めが行われる(図11参照)。
【0039】
前記の要領で具入れ容器24を本体蓋セット18の内面に取付けた状態において、具入れ容器24は、図1に示したように、本体蓋セット18の本体ヒンジ軸19側に片寄ったほぼ半分の範囲を占め、蓋板27が下向きとなった上下逆様状態となる。この状態においては、具入れ容器24内の具はフッ素樹脂等の非粘着性の樹脂コーティングが施された蓋板27側に位置している。
【0040】
図1から分かるように、具入れ容器24は、オーブン12と本体蓋セット18の内蓋22によって構成される焼成室内に臨む。具入れ容器24の一部は焼成によって膨張するパンA(図1の二点鎖線参照)の一部に接触する高さにあるが、具の投入はパンAが膨張する前に行われ、具入れ容器24は、その容器蓋セット47が全開されるので、パンAの膨張空間が十分に確保される。
【0041】
即ち、制御装置からの具投入信号によって作動機構部20のソレノイド74が駆動され、作動レバー73を介して係合レバー57が作動されると、操作部77によって押し込まれ容器蓋セット47の係合が解除される。容器蓋セット47は付勢ばね44の付勢力によって開放され、内部の具をパンケース15内に落下させる。容器蓋セット47は、前述のように全開時の手前で制動トルクが作用して減速され、バウンドを生じることなく停止し、内蓋22の高さまで大きく開放され全開状態で保持される。容器蓋セット47の開放により、蓋板27の内面上にある具は、その内面に施された前記の樹脂コーティングの表面に付着することなく、その全部がパンケース15内に落下する。
【0042】
容器蓋セット47の全開状態において、内蓋22の内面は、中央部の容器ヒンジ軸48の一方側(ヒンジ軸19側)に容器本体25が存在するとともに他方側に容器蓋セット47が存在することにより、これらの下方にパンAの膨張空間が確保される。
【0043】
なお、前記の具入れ容器24を本体蓋セット18から外す場合は、図9のように本体蓋セット18を開放した状態において、具入れ容器24の取付け部材55の指掛け部60に指先を掛けこれを傾動させると(図11の二点鎖線参照)、前記の係合爪58が係合凹部69から外れるため、該具入れ容器24が外れる。
【0044】
図12は、具入れ容器24を本体蓋セット18の内面に取付ける構造の他の例である。即ち、前記の場合、具入れ容器24に取付け突起33を設け、これを本体蓋セット18側の係合凹部71に係合するようにしていたが、これに代え、図12(a)(b)に示したように、具入れ容器24側にコの字形の取付け凹部33a、33bを設け、これらと反対向きの係合凹部71a、71bと係合させるようにしている。また、前述の場合は、係合凹部69とストッパー72を別個に設けた構成であったが、これに代えて、図12(c)のように、係合凹部69にストッパー72を一体に設け、これに対応した位置決め凹部68を容器本体25の一部に設けた構成としたものである。このような構成によっても、前記の場合と同様に具入れ容器24を本体蓋セット18の内面に着脱自在に取付けることができる。
【0045】
以上述べた実施例においては、具入れ容器24の容器本体25を本体蓋セット18の内面に取り付け、具投入時に容器蓋セット47を開放させる構成であるが、これとは逆に、容器蓋セット47を本体蓋セット18の内面に取り付け、具投入時に容器本体25を開放させるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例の断面図
【図2】(a)同上の具入れ容器の蓋板閉鎖時の斜視図、(b)同じく蓋板開放時の斜視図
【図3A】同上の具入れ容器の分解斜視図
【図3B】同上の具入れ容器の一部分解斜視図
【図4】(a)同上の具入れ容器の容器蓋セット開放時の斜視図、(b)同じく蓋板閉鎖時の底面側斜視図
【図5】同上の具入れ容器の横断平面図
【図6】図5のX1−X1線の断面図
【図7】(a)図5のX2−X2線の拡大断面図、(b)図6のX3−X3線の拡大断面図
【図8】実施例の具入れ容器取付け状態の分解斜視図
【図9】同上の具入れ容器取付け状態の斜視図
【図10A】(a)制動部分の拡大断面図、(b)(a)図の一部拡大断面図、(c)制動部分の変形例の一部拡大断面図
【図10B】制動部分の他の例の拡大断面図
【図11】実施例の具入れ容器の取付け状態の側面図
【図12】(a)具入れ容器取付け構造の変形例の側面図、(b)具入れ容器取付け構造の他の変形例の側面図、(c)具入れ容器取付け構造の他の部分の変形例の断面図
【符号の説明】
【0047】
11 本体胴部
12 オーブン
13 駆動装置
14 ヒーター
15 パンケース
16 駆動軸
17 混練羽根
18 本体蓋セット
19 本体ヒンジ軸
20 作動機構部
21 外蓋
22 内蓋
23 覗き窓
24 具入れ容器
25 容器本体
26 蓋枠
27 蓋板
28 周壁
29 容器ヒンジ部
31 軸穴
32 前壁
33 取付け突起(取付け部)
33a、33b 取付け凹部
34 蓋枠周壁
35 蓋枠前壁
36 蓋枠ヒンジ部
37 係合部
38 スリット
39 蓋板ヒンジ部
41 摘み
42 巻き曲げ部
43 軸受部材
44 付勢ばね(付勢手段)
45 抜け止め部
46 嵌合凹部
47 容器蓋セット
48 容器ヒンジ軸
49 脚
51 係合スリット
52 係合機構部
53 機構ケース
54 横軸
55 取付け部材
56 縦軸
57 係合レバー(係合手段)
58 係合爪
59 付勢ばね(付勢手段)
60 指掛け部
61 屈曲部
62 付勢ばね
63 制動部材
64 開口部
65 制動部
66 膨出部
66a 小凹部
67 小凸部
68 位置決め凹部(位置決め手段)
69 係合凹部
70 テーパ面
71、71a、71b 係合凹部
72 ストッパー(位置決め手段)
73 作動レバー
74 ソレノイド
75 支点軸
76 付勢ばね
77 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体胴部(11)の内部にオーブン(12)が設けられるとともに本体蓋セット(18)に具入れ容器(24)が取付けられ、前記具入れ容器(24)の作動機構部(20)が設けられた自動製パン機において、前記具入れ容器(24)が容器本体(25)と、該容器本体(25)に取付けられた容器蓋セット(47)と、該容器蓋セット(47)を容器本体(25)に対して閉鎖状態に係合させる係合手段(57)と、該容器本体(25)と容器蓋セット(47)を相対的に全開させる付勢手段(44)とからなり、前記具入れ容器(24)が前記本体蓋セット(18)の内面に着脱自在に取付けられ、前記作動機構部(20)の作動によって前記係合手段(57)の容器蓋セット(47)に対する係合が解除されたときに前記具入れ容器(24)が前記本体蓋セット(18)の内面の高さまで全開されることを特徴とする自動製パン機。
【請求項2】
前記容器蓋セット(47)が、前記容器本体(25)に対し開閉自在に取付けられた蓋枠(26)と、該蓋枠(26)に開閉自在に取付けられた蓋板(27)とからなることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項3】
前記蓋板(27)が金属製であり、その表面に非粘着性の樹脂コーティングが施されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン機。
【請求項4】
前記蓋枠(26)の蓋枠ヒンジ部(36)、前記蓋板(27)の蓋板ヒンジ部(39)及び前記付勢手段(44)が同芯状態に嵌合され、その嵌合部分に嵌入された穴明きの軸受部材(43)によって前記各部材が一体に組み合わされて前記の容器蓋セット(47)が構成され、前記軸受部材(43)に挿通された容器ヒンジ軸(48)によって前記容器蓋セット(47)が前記容器本体(25)に対して開閉自在に組み合わされたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動製パン機。
【請求項5】
前記容器蓋セット(47)の開放時に前記容器本体(25)の制動部(65)に摺接する制動部材(63)が前記蓋枠ヒンジ部(36)に設けられ、前記制動部材(63)に設けられた径漸増形状の膨出部(66)が該容器蓋セット(47)の開放角が増大するに従い前記制動部(65)において発生する制動トルクが増大し、全開時において該膨出部(66)の一部が前記制動部(65)に係合して前記容器蓋セット(47)を全開状態に保持するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の自動製パン機。
【請求項6】
前記具入れ容器(24)の前記本体蓋セット(18)に対する取付け構造が、前記容器本体(25)の底面と本体蓋セット(18)の内面のいずれか一方に設けられその内面と平行な面内で一方向に開放された第一の係合凹部(71)と、その係合凹部(71)に係合されるべく他方に設けられた取付け部(33)と、前記の開放方向への該容器本体(25)の移動を阻止する位置決め手段(68)、(72)と、該容器本体(25)に設けられ前記内面と平行な横軸(54)によって揺動自在に支持された係合爪(58)付き取付け部材(55)と、前記取付け部材(55)の付勢手段(59)と、該係合爪(58)が係合され前記内面と平行な面内で一方向に開放された第二の係合凹部(69)とからなり、該第二の係合凹部(69)に前記係合爪(58)を係合させるようにしたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自動製パン機。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−131995(P2008−131995A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318462(P2006−318462)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】