説明

自動試験装置

【課題】Z軸方向に所定の負荷をかける機器の試験を行う自動試験装置において、Z軸方向へ所定の負荷をかける加重制御の管理可能な加重の幅を広くする。
【解決手段】X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ移動するX軸移動ユニット2、Y軸移動ユニット3、Z軸移動ユニット4を備えた自動試験装置において、前記Z軸移動ユニット4に固定されX軸方向の下方に延びたアーム404の下端部に取り付けられた加重制御ユニット401と、前記加重制御ユニットの下側に取り付けられた作用子402を備え、前記加重制御ユニット401は、前記上側固定板401aに設けられた孔401eに上側固定板401aには摺動自在となるように貫設し、上部に前記下側稼動板401bの下方向の移動を係止する係止部を具備した圧縮バネ案内軸401dと、前記圧縮バネ案内軸401dに案内される圧縮バネ401cから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X軸、Y軸、Z軸方向に移動可能な構造を持つ3軸ロボット自動試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のX軸、Y軸、Z軸方向に移動可能な構造を持つ3軸ロボットの一般的な構造としては、ベースに対してX軸方向に移動可能なXステージと、Xステージに対してY軸方向に移動可能なYステージと、Yステージに対してZ軸方向に移動可能なZ軸移動作用部を設け、ベースに設けたXアクチュエータと移動機構でXステージのX軸方向の移動を制御し、Xステージに設けたYアクチュエータと移動機構でYステージのY軸方向の移動を制御し、Yステージに設けたZアクチュエータと移動機構でZ軸方向の移動を制御する構造が知られている。上記Z軸移動作用部には打点部を有し、Z軸移動作用部と打点部を連結するコイルバネと打点部にコイルバネを有することで、所定の弾力でボタンキーなどの押下ができる3軸ロボットを提供している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−34276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の3軸ロボット自動試験装置では、Z軸方向に所定の負荷をかける必要がある機器の試験を行うときに、Z軸移動作用部にコイルバネを装着してZ軸方向に負荷の加重制御を行っている。しかし、上記Z軸移動作用部の先端可動部分は一本の軸に1本のコイルバネを介して接触子が設けられた構造をしており、先端可動部分の重さはほぼ無視されるので、コイルバネに圧縮加重の大きなものを用いる必要があり、コイルバネのフリー状態と最大圧縮状態におけるコイルバネの圧縮寸法差が小さくなる。このため、ボタンキー押下の加重制御において、管理可能な加重の幅が狭くなってしまう問題があった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できる自動試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動試験装置は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ移動するX軸移動ユニット、Y軸移動ユニット、Z軸移動ユニットを備えた自動試験装置において、前記Z軸移動ユニットに固定されX軸方向の下方に延びたアームの下端部に取り付けられた加重制御ユニットと、前記加重制御ユニットの下側に取り付けられた作用子を備え、前記加重制御ユニットは、前記アームの下端部でX軸にほぼ垂直に固定された上側固定板と、前記上側固定板の下側であって該上側固定板とほぼ平行に配置され前記作用子がZ軸方向を向けて下側に固定された下側稼動板と、X軸方向の上方に向けて前記下側稼動板に固定され、前記上側固定板に設けられた孔に前記上側固定板には摺動自在となるように貫設され、上部に前記下側稼動板の下方向の移動を係止する係止部を具備した圧縮バネ案内軸と、前記下側稼動板と前記上側固定板の間において前記圧縮バネ案内軸に案内される圧縮バネを備えたことを特徴とする。
また、本発明の自動試験装置は、前記下側稼動板との距離が所定の距離になったことを検知する近接センサーが前記アームの下端部に取り付けられたことを特徴とする。
また、本発明の自動試験装置は、前記圧縮バネが複数個装着されたことを特徴とする。
また、本発明の自動試験装置は、前記加重制御ユニットが、前記係止部が前記上側固定板の上面に当接していないときは接触子に少なくとも前記下側稼動板の自重が掛かるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動試験装置は、Z軸方向に所定の負荷をかける必要がある機器の試験を行うときに、Z軸方向へ所定の負荷をかける加重制御において、管理可能な加重の幅を広くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
機器のボタンキー押下を試験するときに、Z軸方向に所定の負荷をかけることができる加重制御において管理可能な加重の幅を広くできる本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(実施の形態)
本発明の実施の形態について、携帯電話機のボタンキー押下試験を行う3軸ロボット自動試験装置の例で説明する。
【0010】
図1に、本発明の実施の形態である3軸ロボット自動試験装置の外観を示す。図1に示すように、本発明の実施の形態の3軸ロボット自動試験装置は、ベース部1、X軸移動ユニット2、Y軸移動ユニット3、Z軸移動ユニット4から構成されている。更に、X軸移動ユニット2は、支柱部21と片持ち梁状の梁部22から構成されている。また、Z軸移動ユニット4には、ボタンキー打点ユニット40が取り付けられている。このボタンキー打点ユニット40の下端部には拡大図に示すように加重制御ユニット401、及び作用子402が備わっている。そしてベース部1の上に、被試験物である携帯電話機5が載置されている。
【0011】
X軸移動ユニット2は、ベース部1に収容された機構により支持されつつベース部1に対してX方向に移動する。また、Y軸移動ユニット3は、X軸移動ユニット2の梁部22に収容された機構により支持されつつX軸移動ユニット2に対してY方向に移動する。そして、Z軸移動ユニット4に取り付けられたボタンキー打点ユニット40は、Y軸移動ユニット3に収容された機構により支持されつつ、Y軸移動ユニット3に対してZ方向に移動する。各軸の移動は、例えばステッピングモータあるいはサーボモータとボールスクリューを組み合わせた機構を用いて行うことができる。
【0012】
次に、図1の加重制御ユニット401の拡大図、及び図2を参照して、3軸ロボット自動試験装置のボタンキー打点ユニット40の構造を説明する。図2において(a)、(b)、(c)はそれぞれ、ボタンキー打点ユニット40の正面図、側面図、上面図を示している。図1、図2を参照すると、本実施の形態のボタンキー打点ユニット40は、アーム404、加重制御ユニット401、作用子402、近接センサー403を具備している。アーム404の下端部に加重制御ユニット401の上側固定板401aがねじあるいは溶接などで取り付けられ、更に加重制御ユニット401の下側可動板401bに作用子402が装着されている。
【0013】
加重制御ユニット401は、上側固定板401a、下側稼動板401b、3個の圧縮バネ401c、圧縮バネ案内軸401dから構成されている。3個の圧縮バネ401cは、上側固定板401aと下側稼動板401bの間において圧縮バネ案内軸401dの軸部401iに挿入されている。そして、それぞれの圧縮バネ案内軸401dは、下側稼動板401bにねじ401fをねじ込むことによって下側稼動板401bに固定され、上側固定板401aには摺動自在となるように孔401eに貫設されている。401gは上側固定板401aと圧縮バネ401cの間に介在させたワッシャである。加重制御ユニット401は、圧縮バネ401cを圧縮することによってZ軸方向の加重が所定の範囲に入るように制御を行う。本発明の実施の形態では、加重フリーの状態において上側固定板401aと下側稼動板401bの間隔を図3に示したように17mmに設定している。このとき、圧縮バネ案内軸401dの頭部401h(係止部)が上側固定板401aの上面に当接し、上側固定板401aと下側稼動板401bの間隔がこれ以上広がらないように制限している。また、最大に圧縮した状態は後述の図5に示したように上側固定板401aと下側稼動板401bの間隔が4.5mmに設定している。
【0014】
また、誤って最大に圧縮した状態から更にボタンキー打点ユニット40が下方まで移動した場合に、安全に装置を停止するために近接センサー403が、アーム404の下端側の上側固定板401a近傍に設けられている(図1、図3の403参照)。この近接センサー403は、アーム404の下端部に取付金具403bとねじ403cによって固定されている。近接センサー403のと下側稼動板401bの間隔は図5に示すようにLmmに調節して設定されている。Lmmは、例えば2mm程度に設定され、ボタンキー打点ユニット40がこれ以上下方まで移動しようとした場合にZ軸の移動を停止させる。403aは近接センサー403の検出信号を図示しない制御装置に伝送する信号ケーブルである。
【0015】
下側稼動板401bの下側には作用子402がナット402bにより作用子402の軸がZ軸下方向に向けて固定されて取り付けられ、その作用子402の下端部には接触子402aが取り付けられている。この接触子402aは外側がウレタンで覆われており、被試験物である携帯電話機5のボタンキーを押下したとき、傷をつけないように適当な弾力を持たせている。
【0016】
このように本発明の実施の形態の3軸ロボット自動試験装置は、Z軸移動ユニット4をXYZ各方向へ任意に移動することができるように構成されている。ユーザは、本発明の3軸ロボット自動試験装置を用い、ベース部1に載置した携帯電話機5の複数のボタンキー5aを所望の順序で、ボタンキー打点ユニット40の加重制御ユニット401の下側に取り付けられた作用子402によって押下する。ユーザは、押下された携帯電話機5のボタンキー5aに対して、携帯電話機5が正常に応答するかどうかを調べる機能検査を行う。
【0017】
次に、携帯電話機5のボタンキー5aの試験装置に適用した本発明の実施の形態の3軸ロボット自動試験装置のZ軸方向の加重制御機構について説明する。
【0018】
Z軸方向の加重制御は、Z軸移動ユニット4と、Z軸移動ユニット4に装着されているボタンキー打点ユニット40の加重制御ユニット401により行われる。Z軸移動ユニット4からの動力が、ボタンキー打点ユニット40に伝達される。ボタンキー打点ユニット40は、伝達された動力に応じて、下端に取り付けられた加重制御ユニット401の位置を上下方向(Z軸方向)に移動させる。加重制御ユニット401の下側に取り付けられた作用子402の接触子402aが携帯電話機5のボタンキー5aに接触した状態で、加重制御ユニット401を下方に移動すると、圧縮バネ401cが圧縮される。そして、圧縮バネ401cの圧縮状態を変えることにより、Z軸方向への負荷をかける加重制御を行うことができる。
【0019】
次に、圧縮バネ401cを圧縮したときに、携帯電話機5のボタンキー5aに加えることができる加重について説明する。本発明の実施の形態に係わる3軸ロボット自動試験装置における加重制御ユニット401の加重フリー状態(作用子402の接触子402aが携帯電話機5のボタンキー5aに接触していない状態、またはボタンキー5aへの圧力が0の接触状態)を図3に示す。図3に示す加重フリー状態は、自由長が20mmの圧縮バネ401cを17mmで取り付けたときの状態を示しており、この場合圧縮バネ401cは既に3mm圧縮されている。また、圧縮バネ401cの最大加重状態(圧縮バネ401cが最大圧縮可能な状態)は15.5mm(圧縮後の長さは、図5で示した4.5mm)とする。
【0020】
作用子402の接触子402aをとおして、携帯電話機5のボタンキー5aに作用する押圧加重は、下記の押圧加重計算式で求められる。
【0021】
ボタンキー5aの押圧加重(g)
=自重(g)+バネ圧縮加重(g/mm)×バネ圧縮寸法(mm)×バネ本数(本)
・・・・・(数1)
【0022】
(数1)における自重とは、下側可動板401b+作用子402+圧縮バネ案内軸401d×3+圧縮バネ401c×3の総合された重さ(g)である。上側固定板401aと圧縮バネ案内軸401dは、孔401eが圧縮バネ案内軸401dに対して上下方向に摺動自在の状態なので、圧縮バネ案内軸401dの頭部401hが上側固定板401aの上面に当接していないときは、下側可動板401b+作用子402+圧縮バネ案内軸401d×3+圧縮バネ401c×3の総合された重さ(g)は作用子402の接触子402aをとおして、ボタンキー5aに対し自重として作用する。
【0023】
(数1)におけるバネ圧縮加重とは、1本の圧縮バネ401cを1mm圧縮するときの単位圧縮寸法当りの加重(g/mm)である。
【0024】
(数1)における圧縮寸法とは、圧縮バネ401cの圧縮寸法である。例えば、自由長20mmの圧縮バネ401cを最大の圧縮を行い4.5mmの長さにした場合の圧縮寸法は、20mm−4.5mm=15.5mmとなる。
【0025】
(数1)におけるバネ本数は、圧縮バネ401cの本数である。圧縮バネ401cが複数の場合は、全て同じバネ圧縮加重の圧縮バネ401cとする。
【0026】
本発明の実施の形態である圧縮バネを3本装着したときと、特許文献1に挙げた従来技術である圧縮バネを1本装着したときの管理可能な加重の幅を検証するために、圧縮バネの圧縮寸法3mm(加重フリー状態)と圧縮寸法15.5mm(最大加重状態)であるときの押圧加重を、押圧加重計算式で計算する。押圧加重計算式で計算する圧縮バネの自重は175g、バネ圧縮加重は10g/mmとする。
【0027】
図4(a)に圧縮バネが3本のときの押圧加重計算値を示す。図4(b)に特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネが1本のときの押圧加重計算値を示す。
【0028】
本発明の実施の形態である圧縮バネが3本のときの自重は175gである。他方、特許文献1に挙げた従来技術である圧縮バネが1本のときは先端可動部分は一本の軸となり、先端可動部分の重さはほぼ無視されるので、自重は0gである。
【0029】
図4(a)の押圧加重計算値に示すように、バネ圧縮寸法を3mmから15.5mmまで変化させたときに、本発明の実施の形態である圧縮バネが3本のときの加重は、上記条件を数1に代入すると265g〜640gの範囲で変化する。
【0030】
次に、本発明の実施の形態である圧縮バネを3本装着させたときの押圧加重計算値265g〜640gを得るための、特許文献1に挙げた従来技術における圧縮寸法範囲を求める。

【0031】
まず、本発明の実施の形態である圧縮バネが3本で圧縮寸法が3mm(加重フリー状態)の加重と同じ265gの加重を、特許文献1に挙げた従来技術である圧縮バネが1本で圧縮寸法3mm(加重フリー状態)が得るときの、バネ圧縮加重Xgを求めると次の(数2)に示したようにXg=88g/mmとなる。
【0032】
Xg×3mm=265g
∴ Xg=88g/mm ・・・・・(数2)
【0033】
次に、本発明の実施の形態である圧縮バネを3本装着させたときの圧縮寸法が15.5mm(最大加重状態)の加重640gを、特許文献1に挙げた従来技術である1本の圧縮バネ401cで、640gの加重を得ようとするときの圧縮寸法Ymmを求めると、バネ圧縮加重Xgが(数2)で求めたようにXg=88g/mmなので、次の(数3)に示したようにYmm=7.3mmとなる。
【0034】
88g/mm×Ymm = 640g
∴ Ymm=7.3mm ・・・・・(数3)
【0035】
上記計算により、特許文献1に挙げた従来技術により圧縮バネを1本装着させて加重640gを得るための、圧縮寸法は、7.3mmとなる。
【0036】
本発明の実施の形態である圧縮バネが3本のときは、265g〜640gの加重を得る圧縮バネのバネ圧縮加重は10g/mmであり、圧縮寸法は3mm〜15.5mmである。しかし、特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネが1本のときは、265g〜640gの加重を得る圧縮バネのバネ圧縮加重は88g/mmであり、圧縮寸法は3mm〜7.3mmとなる。このため、特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネ1本を装着した場合には、本発明の実施の形態である圧縮バネ3本を装着した場合に比べて、圧縮寸法が小さくなる。
【0037】
以上の本発明の実施の形態である圧縮バネを3本装着したときと、特許文献1に挙げた従来技術である圧縮バネを1本装着したときの管理可能な加重の幅についての検証結果により、本発明の実施の形態である圧縮バネを3本装着したときは、管理可能な加重の幅を広くすることができることがわかる。
【0038】
次に、本発明の実施の形態により上記のように管理可能な加重の幅を広くすることができる理由を数式を用いて説明する。以下では本発明の実施の形態による圧縮バネが複数本のときと、特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネが1本のときの押圧加重が等しいときの圧縮バネの圧縮比について計算する。
【0039】
(数4)は本発明の実施の形態による圧縮バネが複数本のときの加重フリー状態の押圧加重(F)を求める計算式で、(数5)は本発明の実施の形態による圧縮バネが複数本のときの最大加重状態の押圧加重(F)を求める計算式である。また、(数6)は特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネが1本のときの加重フリー状態の押圧加重(F)を求める計算式で、(数7)は特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネが1本のときの最大加重状態の押圧加重(F)を求める計算式である。
+k=F ・・・・・(数4)
+k=F ・・・・・(数5)
=F ・・・・・(数6)
3 =F ・・・・・(数7)
また、(数4)〜(数7)の計算式で使用している符号の内容を、下記に示す。
:自重(本発明の実施の形態)
:バネ圧縮加重(本発明の実施の形態)
:バネ圧縮加重(特許文献1に挙げた従来技術)
:加重フリー状態のバネ圧縮寸法
(本発明の実施の形態及び特許文献1に挙げた従来技術に共通)
:最大加重状態のバネ圧縮寸法(本発明の実施の形態)
3 :最大加重状態のバネ圧縮寸法(特許文献1に挙げた従来技術)
:圧縮バネ本数(本発明の実施の形態)
【0040】
本発明の実施の形態と特許文献1に挙げた従来技術において、(数4)=(数6)、(数5)=(数7)と置くと、下記の計算式が成り立つ。
+k=k ・・・・・(数8)
+k=k3 ・・・・・(数9)
上記(数8)の計算式よりkを求めると下記となる。
=(M+k)/l ・・・・・(数10)
また、計算式の(数9)−(数8)を求めると、下記の計算式となる。
(l−l)=k(l3−l)
∴ (l−l)/(l3−l)=k/k・・・・・(数11)
そして、上記(数11)の計算式kに(数10)の計算式を当てはめると下記の計算式となる。
(l−l)/(l3−l)=1+M/k・・・・・(数12)
【0041】
以上により、本発明の実施の形態による圧縮バネが複数本のときと、特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネが1本のときの押圧加重範囲が等しいときの圧縮バネの圧縮比は、本発明の実施の形態による圧縮バネが複数本のときが、特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネが1本のときの1倍以上となることが分かる。
【0042】
また、上記(数12)の計算式に、図4(a)に示すバネ圧縮加重(k=10g/mm)、加重フリー状態のバネ圧縮寸法(l=3mm)、圧縮バネ本数(m=3)を当てはめると、本発明の実施の形態による圧縮バネが複数本のときは、特許文献1に挙げた従来技術による圧縮バネが1本のときに比べて圧縮バネの圧縮比は約3倍となる。
【0043】
以上説明したように、本発明の実施の形態では、携帯電話機5の試験を行うときに、3個の圧縮バネを保持する加重制御ユニット401の先端可動部分の自重を生かすことができ、これにより、圧縮バネのフリー状態と最大圧縮状態における圧縮バネの圧縮寸法の差を大きくすることができ、ボタンキー押下の加重制御において、管理可能な加重の幅を広くすることができる。
【0044】
また、圧縮バネが1本のときは3本の時に比べ、同じ加重を得ようとすると、バネ定数の大きいことが必要であり、応力も大きくなるため、繰り返して圧縮バネの圧縮が繰り返されることにより圧縮バネのへたりが、圧縮バネが3本に比べて早くなるが、本発明の実施の形態では、圧縮バネはへたりを遅くでき、したがって部品交換の間隔を長くできメンテナンスの上で有利である。
【0045】
このような本発明の実施の形態によれば、Z軸方向へ所定の負荷にてボタン押下の試験を必要とする機器に対して、管理可能な加重の幅を広くすることができ、部品交換の間隔を長くでき、安定して負荷をかけることができる3軸ロボット自動試験装置を提供することができる。
【0046】
本発明の実施の形態は、本発明の実施の形態におけるボタンキー打点ユニット40に、近接センサー403を更に装着する形態である。図5に、ボタンキー打点ユニット40に装着した近接センサー403が検知する位置の加重状態を示す。図5に示すように、近接センサー403は、圧縮バネ401cの最大加重状態である圧縮後の間隔が4.5mmより狭くなった所定の間隔とき(近接センサー403と下側固定板401bの距離がLmmとなったとき)に下側可動板401bの接近を感知するように設定されている。以上のように、近接センサー403を設定することで、Z軸動作ユニット4が誤って、ユーザの所望の位置範囲を超えてさらに下方までボタンキー打点ユニット40を移動させてしまった場合に、近接センサー403がこれを検知して制御装置に通知するので、制御装置は強制的に3軸ロボット自動試験装置を停止させ、ボタン押下の試験を必要とする機器の損傷を防止することができる。
【0047】
以上、実施の形態により具体的に説明したが、圧縮バネの本数は3本に限定されないで実施できる。また、本発明は上記実施の形態に限定されないで、種々の変形をして実施できることは言うまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ボタンキー押下の試験を行う3軸ロボット自動試験装置に好適であるが、ボタンキー押下の試験や3軸ロボット自動試験装置に限られるものではなく、所定の負荷をかける自動試験装置一般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係わる3軸ロボット自動試験装置の外観を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる3軸ロボット自動試験装置のボタンキー打点ユニットの構造を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる3軸ロボット自動試験装置における加重制御ユニットの加重フリー状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる3軸ロボット自動試験装置における押圧加重計算値を示す表である。
【図5】本発明のその他実施の形態に係わる3軸ロボット自動試験装置のボタンキー打点ユニットに装着した近接センサーが感知する位置の加重状態を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・ベース部、 2・・・X軸移動ユニット、 21・・・支柱部、 22・・・梁部、 3・・・Y軸移動ユニット、 4・・・Z軸移動ユニット、 40・・・ボタンキー打点ユニット、 401・・・加重制御ユニット、 401a・・・上側固定板、 401b・・・下側稼働板、 401c・・・圧縮バネ、 401d・・・圧縮バネ案内軸、 401e・・・孔、 401f・・・ねじ、 401g・・・ワッシャ、 401h・・・圧縮バネ案内軸の頭部(係止部)、 401i・・・圧縮バネ案内軸の軸部、 402・・・作用子、 402a・・・接触子、 402b・・・ナット、 403・・・近接センサー、 403a・・・信号ケーブル、 403b・・・取付金具、 403c・・・ねじ、 404・・・アーム 5・・・携帯電話機、 5a・・・ボタンキー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ移動するX軸移動ユニット、Y軸移動ユニット、Z軸移動ユニットを備えた自動試験装置において、
前記Z軸移動ユニットに固定されX軸方向の下方に延びたアームの下端部に取り付けられた加重制御ユニットと、前記加重制御ユニットの下側に取り付けられた作用子を備え、
前記加重制御ユニットは、
前記アームの下端部でX軸にほぼ垂直に固定された上側固定板と、
前記上側固定板の下側であって該上側固定板とほぼ平行に配置され前記作用子がZ軸方向を向けて下側に固定された下側稼動板と、
X軸方向の上方に向けて前記下側稼動板に固定され、前記上側固定板に設けられた孔に前記上側固定板には摺動自在となるように貫設され、上部に前記下側稼動板の下方向の移動を係止する係止部を具備した圧縮バネ案内軸と、
前記下側稼動板と前記上側固定板の間において前記圧縮バネ案内軸に案内される圧縮バネを備えたことを特徴とする自動試験装置。
【請求項2】
前記下側稼動板との距離が所定の距離になったことを検知する近接センサーが前記アームの下端部に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の自動試験装置。
【請求項3】
前記圧縮バネが複数個装着されたことを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか一項に記載の自動試験装置。
【請求項4】
前記加重制御ユニットは、前記係止部が前記上側固定板の上面に当接していないときは接触子に少なくとも前記下側稼動板の自重が掛かるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の自動試験装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−154267(P2009−154267A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336899(P2007−336899)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508001361)イ.ソフト株式会社 (1)
【Fターム(参考)】