説明

自動車のデフロスタ装置

【課題】衝突体保護性能を確保することができる自動車のデフロスタ装置を提供する。
【解決手段】本デフロスタ装置では、デフロスタノズル20を構成するデフロスタアッパ26の後壁26Dに左右一対の開口42が形成されており、これらの開口42はデフロスタアッパ26よりも軟質なシート材46によって塞がれている。これにより、開口42からの空調空気の漏れを防止してデフロスタアッパ26の本来の機能を確保しつつ、開口42によってデフロスタアッパ26の剛性を十分に低下させている。これにより、フロントウインドシールドガラス21に衝突体が衝突した際の衝突体保護性能を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントウインドシールドガラスへ向けて空調装置の空調空気を吹き出すデフロスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されるデフロスタ装置では、フロントウインドシールドガラスへの衝突体の衝突により、インストルメントパネルを介してデフロスタダクト部に所定値以上の外力が作用した際には、デフロスタダクト部に設けられた脆弱部(V溝)が破断して、デフロスタダクト部の上下方向長さが縮小するようになっている。これにより、インストルメントパネル及びフロントウインドシールドガラスの変形量を増加させて、衝突体に及ぼす衝撃の吸収量を増加させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−47330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に3次元曲面によって構成されるデフロスタダクト部(デフロスタノズル)の表面にV溝を形成した場合、V溝の破断荷重が衝突荷重の入力位置や入力方向によって変化する。このため、破断荷重のコントロールが困難であり、衝突体保護性能を確保する点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、衝突体保護性能を確保することができる自動車のデフロスタ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、インストルメントパネルの内側に配置された空調装置と、前記インストルメントパネルに穿設されてフロントウインドシールドガラスに対向するデフロスタ吹出口と前記空調装置の送風口との間に上下方向に掛け渡され、前記送風口から送風される空調空気を前記デフロスタ吹出口へ導くと共に、上端側が空調空気を整流するための整流部とされ、前記整流部よりも下方側の壁部の一部が当該壁部の他の部位よりも軟質なシート状又は凹凸形状の軟質部によって構成されたデフロスタノズルと、を備えている。
【0007】
なお、請求項1に記載の「シート状」は、全体としてシート状(板状)であればよく、多少の凸部または凹部が設けられたものや、曲面状のものなどが含まれる。また、請求項1に記載の「凹凸形状」には、断面が波形形状のものや、連続したハニカム形状のものなどが含まれる。
【0008】
請求項1に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置では、空調装置の送風口から送風される空調空気が、デフロスタノズルによってインストルメントパネルのデフロスタ吹出口へと導かれ、フロントウインドシールドガラスへ向けて吹き出す。
【0009】
ここで、本発明に係るデフロスタノズルは、上端側に設けられた整流部よりも下方側の壁部の一部が、他の部位よりも軟質なシート状又は凹凸形状の軟質部によって構成されている。したがって、フロントウインドシールドガラスへの衝突体の衝突により、インストルメントパネルを介してデフロスタノズルに衝突荷重が入力された際には、軟質部においてデフロスタノズルを低荷重で変形させることにより、インストルメントパネル及びフロントウインドシールドガラスの変形量又は変位量を増加させることができる。これにより、衝突体に作用する減速加速度を低減することができるため、衝突体保護性能を確保することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置は、請求項1に記載の自動車のデフロスタ装置において、前記壁部には、開口が形成され、前記軟質部は、前記開口を塞いだ状態で前記壁部に取り付けられたシート材によって構成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の自動車のデフロスタ装置では、デフロスタノズルの壁部に開口が形成されており、この開口は壁部の他の部位よりも軟質なシート材によって塞がれている。これにより、開口からの空調空気の漏れを防止してデフロスタノズルの本来の機能を確保しつつ、開口によってデフロスタノズルの剛性を十分に低下させることができる。このように、デフロスタノズルに形成された開口を塞ぐシート材によって軟質部が構成されるため、例えば、デフロスタノズルを射出成形等によって成形する場合、軟質部(薄肉部など)を設定し難い部位(アンダー部等)に対しても、開口を形成してそれをシート材で塞ぐことにより、軟質部を設定することができる。これにより、デフロスタアッパの形状制約が少なくなり、設計の自由度を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置は、請求項2に記載の自動車のデフロスタ装置において、前記シート材に一体的に接合され、前記デフロスタノズルの内壁面の一部を構成する吸音材を有することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の自動車のデフロスタ装置では、シート材に一体的に接合された吸音材によって、デフロスタノズルの内壁面の一部が構成されているため、空調装置側(下方側)から発する音を吸音材によって吸収することができる。これにより、デフロスタ装置の静音性能を向上させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置は、請求項1に記載の自動車のデフロスタ装置において、前記デフロスタノズルは、シートブロー成形によって成形され、前記軟質部は、当該シートブロー成形時に前記デフロスタノズルの材料の一部が他の部位よりも伸び率を増加されることにより形成されることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置では、デフロスタノズルがシートブロー成形によって成形される際に、デフロスタノズルの材料(樹脂シート)の一部が他の部位よりも伸び率を増加されることにより軟質部が形成される。つまり、デフロスタノズルの成形時に、軟質部を同時に成形することができるため、後加工が不要であり、製造が容易である。これにより、デフロスタノズルの生産性を高めることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置は、請求項1に記載の自動車のデフロスタ装置において、前記軟質部は、前記デフロスタノズルの車両後方側の壁部に設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の自動車のデフロスタ装置では、デフロスタノズルの上端側に設けられた整流部に対して衝突荷重が入力された際には、当該整流部よりも下方側においてデフロスタノズルの車両後方側の壁部に設けられた軟質部を起点としてデフロスタノズルが変形する。これにより、整流部を車両後方斜め下方側へ倒し込ませることができる。したがって、特に車両前方斜め上方側からの衝突荷重に対してデフロスタノズルを低荷重で変形させることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置は、請求項5に記載の自動車のデフロスタ装置において、前記デフロスタノズルの車両後方側の壁部には、前記整流部の下端から車両後方側へ延出されて前記送風口に対向した棚部が形成され、前記軟質部は、前記棚部に設けられていることを特徴としている。
【0019】
請求項6に記載の自動車のデフロスタ装置では、デフロスタノズルは、整流部の下端から車両後方側へ延出された棚部が軟質部によって弱体化しているため、請求項5に係る発明と同様に、車両前方斜め上方側からの衝突荷重に対してデフロスタノズルを低荷重で変形させることができる。
【0020】
しかも、軟質部(棚部)が車両後方側へ延出されて空調装置の送風口に対向しているため、空調装置側から発する音は、軟質部によって空調装置側(下方側)へ反射されるが、この反射の際には、軟質部の膜振動による消音効果(吸音効果)が期待できる。したがって、空調装置側から発する音がデフロスタ吹出口から車室内へ漏れることを抑制することができ、デフロスタ装置の静音性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置では、衝突体保護性能を確保することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置では、デフロスタノズルの本来の機能を確保しつつ、開口によってデフロスタノズルの剛性を十分に低下させることができると共に、デフロスタアッパの設計の自由度を向上させることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置では、デフロスタ装置の静音性能を向上させることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置では、デフロスタノズルの生産性を高めることができる。
【0025】
請求項5に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置では、車両前方斜め上方側からの衝突荷重に対してデフロスタノズルを低荷重で変形させることができる。
【0026】
請求項6に記載の発明に係る自動車のデフロスタ装置では、車両前方斜め上方側からの衝突荷重に対してデフロスタノズルを低荷重で変形させることができると共に、デフロスタ装置の静音性能を向上させることができると共に、
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデフロスタ装置が適用されて構成された自動車の斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。
【図3】図2に示されるデフロスタアッパの斜視図である。
【図4】図2におけるデフロスタアッパの周辺を拡大した拡大断面図である。
【図5】図4に対応した拡大断面図であり、デフロスタアッパが変形した状態の図である。
【図6】本第1実施形態に係るデフロスタアッパの変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るデフロスタ装置の部分的な構成を示す縦断面図である。
【図8】図7に対応した断面図であり、デフロスタアッパが変形した状態の図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るデフロスタ装置の部分的な構成を示す縦断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るデフロスタ装置のデフロスタノズルを含む周辺部材の構成を示す斜視図である。
【図11】図10の11−11線に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るデフロスタ装置の部分的な構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施形態>
以下、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態に係るデフロスタ装置10について説明する。なお、図中矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左方向を示している。
【0029】
本第1実施形態に係るデフロスタ装置10は、図1に示される自動車12に搭載されており、図2に示されるように、ダッシュパネル14の車両後方側においてインストルメントパネル16の内側に配置された空調装置18と、インストルメントパネル16の上壁における先端部16B側に穿設されたデフロスタ吹出口16Aと空調装置18の送風口18Aとの間に上下方向に掛け渡されたデフロスタノズル20とを主要部として構成されている。なお、図2において、21はフロントウインドシールドガラスであり、22はサイレンサー(吸音材)であり、24はカウルトップであり、25はカウルインナである。
【0030】
デフロスタノズル20は、空調装置18から送風される空調空気を車室内へ導くダクト構造体の一部を構成しており、デフロスタアッパ26とデフロスタロア28とを備えている。デフロスタロア28は、合成樹脂からなる断面略矩形の筒体であり、車両左右方向に沿って長尺に形成されている。デフロスタロア28の下端側の開口は、空気導入口28Aとされており、この空気導入口28Aは、スポンジ状のシール部材30を介して空調装置18の送風口18Aに嵌合している。これにより、デフロスタロア28が空調装置18に連結されており、送風口18Aから送風される空調空気がデフロスタロア28の内側に導入されるようになっている。このデフロスタロア28は、車両前方側にやや傾斜した状態で配置されており、上端側の開口縁にはデフロスタアッパ26との連結部であるフランジ部28Bが設けられている。
【0031】
デフロスタアッパ26は、デフロスタロア28と同様に合成樹脂からなる断面略矩形の筒体であり、車両左右方向に沿って長尺に形成されており、上端側へ向かうに従い扇形に左右に広がるように形成されている。デフロスタアッパ26の下端側の開口縁にはデフロスタロア28との連結部であるフランジ部26Aが設けられている。このフランジ部26Aは、スポンジ状のシール部材32を介してデフロスタロア28のフランジ部28Bに接着接合されている。これにより、デフロスタアッパ26とデフロスタロア28は両者の内側(筒内)が連通した状態で連結されており、デフロスタロア28の内側を通過した空調空気がデフロスタアッパ26の内側に導入されるようになっている。
【0032】
デフロスタアッパ26の車両前方側の壁部である前壁26Bには、上下方向中間部に屈曲部34が形成されており、デフロスタアッパ26は屈曲部34よりも車両下方側の部分が車両前方側にやや傾斜した状態で配置されている。また、デフロスタアッパ26は、屈曲部34よりも車両上方側の部分が整流部36とされており、当該整流部36において断面積が縮小している。この整流部36は、フロントウインドシールドガラス21に沿うように車両後方側に傾斜している。整流部36の上端部は空気排出口26Cとされており、この空気排出口26Cは、インストルメントパネル16の上壁に穿設されたデフロスタ吹出口16Aに連結されている。なお、整流部36の上端縁(デフロスタアッパ26の上端縁)には、インストルメントパネル16に係止された図示しない複数の係止片が設けられている。
【0033】
デフロスタアッパ26内に導入された空調空気は、整流部36内を通過する際にフロントウインドシールドガラス21に沿うように整流され、デフロスタ吹出口16Aからフロントウインドシールドガラス21へ向けて吹き出すようになっている。これにより、フロントウインドシールドガラス21に付着した霜等が除去される。なお、デフロスタアッパ26の内側は、デフロスタアッパ26の左右方向中央部に設けられた仕切り部26E(図3参照)によって左右に仕切られており、デフロスタ吹出口16Aは、当該仕切り部26Eによって左右に分割されている。
【0034】
一方、図3に示されるように、デフロスタアッパ26の車両後方側の壁部である後壁26Dには、上下方向中間部に棚部40が形成されている。この棚部40は、整流部36の下端から車両後方側へ向けて略水平に延び出しており、空調装置18の送風口18Aに対向している。この棚部40には、左右一対の開口42が形成されている。
【0035】
これらの開口42は、車両左右方向(デフロスタアッパ26の長手方向)に沿って長尺な矩形状に形成されており、棚部40の左右方向中央部と左右方向両端部を除く略全域に形成されている。これらの開口42は、デフロスタアッパ26の後壁26Dの一般部(開口42以外の部分)よりも軟質なビニール製のシート材46によって塞がれている。各シート材46は、外周縁が後壁26Dの外側表面に熱溶着、接着、ホットメルト又は両面テープ等により接合されており(図4の接合部48参照)、開口42を隙間なく閉塞している。すなわち、このデフロスタアッパ26では、後壁26Dの一部が後壁26Dの一般部よりも軟質なシート材46(軟質部)によって構成されている。なお、シート材46は、デフロスタアッパ26の後壁26D(壁部)よりも柔軟なものであればよく、ビニール製に限らず、厚さ寸法が薄い樹脂シート等を適用することもできる。
【0036】
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
上記構成のデフロスタ装置10では、空調装置18の送風口18Aから送風される空調空気が、デフロスタノズル20によってインストルメントパネル16のデフロスタ吹出口16Aへと導かれ、フロントウインドシールドガラス21へ向けて吹き出す。
【0038】
ここで、本第1実施形態では、デフロスタアッパ26の後壁26Dに左右一対の開口42が形成されており、これらの開口42はデフロスタアッパ26よりも軟質なシート材46によって塞がれている。これにより、開口42からの空調空気の漏れを防止してデフロスタアッパ26の本来の機能を確保しつつ、開口42によってデフロスタアッパ26の剛性を十分に低下させている。これにより、フロントウインドシールドガラス21に衝突体が衝突した際の衝突体保護性能を向上させている。
【0039】
すなわち、例えば図5に示されるように、衝突体50がフロントウインドシールドガラス21に衝突し、衝突体50の衝突荷重Fがインストルメントパネル16の先端部16Bを介して整流部36の上端側に入力された際には、デフロスタアッパ26が開口42を起点として車両下方側へ低荷重で変形する。これにより、インストルメントパネル16の先端部16Bが変形しやすくなり、フロントウインドシールドガラス21の変形量又は変位量が増加するため、衝突体50に作用する減速加速度が低減される。これにより、衝突体保護性能が向上する。
【0040】
しかも、本第1実施形態では、デフロスタアッパ26の開口42が整流部36よりも下方側において後壁26Dの棚部40に形成されている。このため、整流部36に対して衝突荷重Fが入力された際には、開口42を起点としてデフロスタアッパ26が変形し、屈曲部34を中心として前壁26Bが折れ曲がることにより、整流部36が車両後方斜め下方側(衝突体50の衝突方向。図5の矢印F方向)へ倒れ込む。これにより、図5に示されるように、車両前方斜め上方側からの衝突体50の衝突に対して、インストルメントパネル16の先端部16Bを車両後方斜め下方側へ撓ませて、フロントウインドシールドガラス21を車両後方斜め下方側へ大きく退避させることができる。これにより、衝突体50に及ぼす衝撃の吸収量を増加させることができるので、衝突体保護性能を大幅に向上させることができる。
【0041】
さらに、本第1実施形態では、デフロスタアッパ26の後壁26Dに形成された棚部40に左右一対の開口42が形成されており、これらの開口42がシート材46によって塞がれている。このシート材46(棚部40)は整流部36の下端から車両後方側へ延出されており、空調装置18の送風口18Aに対向している。このため、空調装置18側から発する音は、シート材46によって空調装置18側(下方側)へ反射されるが、この反射の際には、シート材46の膜振動による消音効果(吸音効果)が期待できる。したがって、空調装置18側から発する音がデフロスタ吹出口16Aから車室内へ漏れることを抑制することができ、デフロスタ装置10の静音性能を向上させることができる。
【0042】
しかも、本第1実施形態では、デフロスタアッパ26に左右一対の開口42が設定されることにより、デフロスタアッパ26が軽量化している。したがって、デフロスタアッパ26を含めたデフロスタ装置10の全体構成を軽量化することができる。
【0043】
なお、上記第1実施形態では、デフロスタアッパ26に左右一対の開口42が形成され、各開口42が長尺な矩形状に形成された構成にしたが、本発明はこれに限らず、開口の数や形状は適宜設定変更することができる。
【0044】
また、上記第1実施形態では、デフロスタアッパ26の棚部40に開口42が形成された構成にしたが、本発明はこれに限らず、開口42を形成する位置は適宜設定変更することができる。例えば、デフロスタアッパ26を射出成形等により成形する場合、成形不可能なアンダー部に開口を設定し、当該開口を塞ぐシート材によって上記アンダー部を成形することができる。これにより、デフロスタアッパ26の形状制約が少なくなり、設計の自由度が向上する。
【0045】
さらに、上記第1実施形態において、図6に示されるように、開口42内に1乃至複数の桟52を設ける構成にしてもよい。この場合、桟52によって通常時のデフロスタアッパ26の剛性を確保することができると共に、シート材46を桟52に接合することにより、シート材46の振動に起因する異音の発生を抑制することができる。以上の点は、以下に説明する本発明の他の実施形態においても同様である。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0047】
<第2の実施形態>
図7には、本発明の第2実施形態に係るデフロスタ装置の部分的な構成が縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、この実施形態では、デフロスタアッパ26の前壁26Bには、整流部36の下方側において開口54が形成されている。この開口54は、後壁26Dの棚部40に形成された開口42に対向しており、この開口54によって前壁26Bが弱体化している。この開口54は、前壁26Bよりも軟質に形成されて前壁26Bに接合されたビニール製のシート材56(軟質部)によって隙間なく塞がれている。すなわち、この実施形態では、デフロスタアッパ26の前壁26Bの一部が前壁26Bの一般部(開口54以外の部分)よりも軟質なシート材56によって構成されている。
【0048】
この実施形態では、開口42、54によって前壁26B及び後壁26Dの両方が弱体化しており、整流部36の下方側でデフロスタアッパ26の剛性が大幅に低下している。このため、図8に示されるようにフロントウインドシールドガラス21に衝突体50が衝突した際には、デフロスタアッパ26が開口42、54を起点として極低荷重で変形し、整流部36がその姿勢をほぼ保ったまま車両後方斜め下方側へ押し下げられる。これにより、インストルメントパネル16の先端部16Bが衝突体50の衝突方向(図8の矢印F方向)に変形しやすくなり、当該衝突方向におけるフロントウインドシールドガラス21の変形量又は変位量が良好に増加する。これにより、衝突体50に作用する減速加速度を効果的に低減することができるので、衝突体保護性能を一層良好に向上させることができる。しかも、この実施形態では、デフロスタアッパ26の前後両側に開口42、54が形成されているため、デフロスタアッパ26を大幅に軽量化することができる。
【0049】
<第3の実施形態>
図9には、本発明の第3の実施形態に係るデフロスタ装置の部分的な構成が縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、この実施形態では、吸音材としての吸音フェルト58が一体的に接合されたビニール製のシート材46(吸音フェルト付ビニールシート60)によって開口42が塞がれている。この吸音フェルト付ビニールシート60は、吸音フェルト58がデフロスタアッパ26の内側を向いた状態で、シート材46の外周縁がデフロスタアッパ26の内側からデフロスタアッパ26の内壁面に熱溶着、接着、ホットメルト又は両面テープ等により接合されており、シート材46によって開口42が隙間なく塞がれている。吸音フェルト58は、デフロスタアッパ26の内壁面の一部を構成しており、空調装置18の送風口18A(図9では図示省略)に対向している。
【0050】
この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているため、前記第1の実施形態と同様に衝突体保護性能を向上させることができる。しかも、空調装置18側から発する音が吸音フェルト58によって吸収されるため、デフロスタ装置の静音性能を一層向上させることができる。
【0051】
なお、上級車等においては、デフロスタノズル20の内壁面に、標準装備として吸音フェルトが設けられているため、このような車種においては本発明の採用によりコストアップせずに衝突体保護性能を向上させることができる。
【0052】
<第4の実施形態>
図10には、本発明の第4の実施形態に係るデフロスタ装置の部分的な構成が斜視図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、この実施形態では、デフロスタノズル62の構成が前記第1実施形態に係るデフロスタノズル20と異なっている。このデフロスタノズル62は、インストルメントパネル16(図10では図示省略)と一体的に形成されたダクト構造体64の一部を構成している。このダクト構造体64は、デフロスタノズル62の他に、センターダクト66やサイドベントダクト68等を含んで構成されており、空調装置18から送風される空調空気を車室内へ送り出すものである。
【0053】
図11に示されるように、デフロスタノズル62は、デフロスタアッパ70を備えている。デフロスタアッパ70は、前記第1実施形態に係るデフロスタアッパ26と基本的に同様の構成とされているが、このデフロスタアッパ70は、真空成形によって形成された真空成形部72と、射出成形によって形成された射出成形部74とが互いに接合されることで形成されている。真空成形部72は、射出成形部74よりも板厚寸法が薄く形成されている。なお、図10及び図11においては、前記第1実施形態と基本的に同様の構成については、前記第1実施形態と同符号を付与してある。
【0054】
真空成形部72は、デフロスタアッパ70の前壁26Bを含んで構成されており、射出成形部74は、デフロスタアッパ70の後壁26Dを含んで構成されている。このデフロスタ70の後壁26Dでは、前記第1実施形態に係る棚部40が省略されており、整流部36よりも下端側の部分が車両後方側へ向かうに従い緩やか降下するように傾斜している。この傾斜部には、左右一対の開口76が形成されている。各開口76は、略矩形状に形成されており、それぞれシート材78(軟質部)によって隙間なく塞がれている。これらのシート材78は、前記第1実施形態に係るシート材46と基本的に同様の構成のものであり、前記第1実施形態と同様の方法で後壁26Dの外側表面に接合されている。すなわち、このデフロスタアッパ70では、後壁26Dの一部が後壁26Dの一般部(開口76以外の部分)よりも軟質なシート材78によって構成されている。
【0055】
なお、デフロスタアッパ70の下端部は、前記第1実施形態に係るデフロスタロア28と基本的に同様構成のデフロスタロア80を介して空調装置18の送風口18A(図10及び図11では図示省略)に接続されている。
【0056】
この実施形態においても、フロントウインドシールドガラス21への衝突体の衝突により、整流部36の上端側に対して衝突荷重が入力された際には、デフロスタアッパ70が開口76を起点として低荷重で変形することにより、整流部36が車両後方斜め下方側へ倒れ込む。これにより、前記第1実施形態と同様に衝突体保護性能を向上させることができる。しかも、この実施形態では、デフロスタアッパ70の前壁26B側が真空成形によって薄く形成されているため、前壁28Bを低荷重で撓ませることができる。したがって、整流部36の倒れ込みが前壁28Bの剛性によって阻まれることを回避でき、これにより衝突体保護性能を一層向上させることができる。
【0057】
<第5の実施形態>
図12には、本発明の第5の実施形態に係るデフロスタ装置の部分的な構成が斜視図にて示されている。この実施形態は、前記第4実施形態と基本的に同様の構成とされているが、この実施形態では、デフロスタアッパ82の構成が前記第4実施形態に係るデフロスタアッパ70と異なっている。
【0058】
このデフロスタアッパ82は、前記第4実施形態に係る射出成形部74の代わりにシートブロー成形部84を備えている。シートブロー成形部84は、樹脂シートがシートブロー成形されることで形成されたものであり、このシートブロー成形部84と真空成形部72とが互いに接合されることで、デフロスタアッパ82が形成されている。
【0059】
このシートブロー成形部84は、前記第4実施形態に係る射出成形部74と基本的に同様の構成とされており、デフロスタアッパ82の後壁26Dを含んで構成されている。このデフロスタアッパ82の後壁26Dでは、前記第4実施形態に係る開口76及びシート材78が省略されており、その代わりに軟質部としてのシート状の薄肉部86が設けられている。
【0060】
この薄肉部86は、シートブロー成形部84のシートブロー成形時に、シートブロー成形部84の材料である樹脂シートの一部が、他の部位よりも伸び率を増加されること(深絞りされること)により形成されたものであり、シートブロー成形部84の成形と同時に一体成形されたものである。
【0061】
なお、後壁26Dの一般部(薄肉部86以外の部分)の厚さ寸法は、例えば1.2mm程度に設定されている。また、薄肉部86の厚さ寸法は、例えば0.5mm〜0.7mm程度に設定されており、薄肉部86は後壁26Dの一般部よりも軟質に形成されている。すなわち、このデフロスタアッパ82では、後壁26Dの一部が後壁26Dの一般部よりも軟質な薄肉部86によって構成されている。
【0062】
この実施形態においても、フロントウインドシールドガラス21への衝突体の衝突により、整流部36の上端側に対して衝突荷重が入力された際には、デフロスタアッパ70が薄肉部86を起点として低荷重で変形することにより、整流部36が車両後方斜め下方側へ倒れ込む。したがって、前記第4実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【0063】
しかも、この実施形態では、デフロスタアッパ82を構成するシートブロー成形部84の成形時に、軟質部である薄肉部86を同時に成形することができるため、後加工が不要であり、製造が容易である。これにより、デフロスタアッパ82(デフロスタノズル)の生産性を高めることができる。
【0064】
なお、上記第5実施形態では、シート状に形成された薄肉部86によって軟質部が構成された場合について説明したが、請求項1に係る発明はこれに限らず、軟質部が凹凸形状に形成された構成にしてもよい。この場合、凹凸形状には、断面形状が波形形状のものや、連続したハニカム形状のものなどが含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10 デフロスタ装置
12 自動車
16 インストルメントパネル
16A デフロスタ吹出口
18 空調装置
18A 送風口
20 デフロスタノズル
21 フロントウインドシールドガラス
26D 後壁(デフロスタノズルの車両後方側の壁部)
36 整流部
40 棚部
42 開口
46 シート材(軟質部)
54 開口
56 シート材(軟質部)
58 吸音フェルト(吸音材)
62 デフロスタノズル
76 開口
78 シート材(軟質部)
86 薄肉部(軟質部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの内側に配置された空調装置と、
前記インストルメントパネルに穿設されてフロントウインドシールドガラスに対向するデフロスタ吹出口と前記空調装置の送風口との間に上下方向に掛け渡され、前記送風口から送風される空調空気を前記デフロスタ吹出口へ導くと共に、上端側が空調空気を整流するための整流部とされ、前記整流部よりも下方側の壁部の一部が当該壁部の他の部位よりも軟質なシート状又は凹凸形状の軟質部によって構成されたデフロスタノズルと、
を備えた自動車のデフロスタ装置。
【請求項2】
前記壁部には、開口が形成され、前記軟質部は、前記開口を塞いだ状態で前記壁部に取り付けられたシート材によって構成されていること特徴とする請求項1に記載の自動車のデフロスタ装置。
【請求項3】
前記シート材に一体的に接合され、前記デフロスタノズルの内壁面の一部を構成する吸音材を有することを特徴とする請求項2に記載の自動車のデフロスタ装置。
【請求項4】
前記デフロスタノズルは、シートブロー成形によって成形され、前記軟質部は、当該シートブロー成形時に前記デフロスタノズルの材料の一部が他の部位よりも伸び率を増加されることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車のデフロスタ装置。
【請求項5】
前記軟質部は、前記デフロスタノズルの車両後方側の壁部に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の自動車のデフロスタ装置。
【請求項6】
前記デフロスタノズルの車両後方側の壁部には、前記整流部の下端から車両後方側へ延出されて前記送風口に対向した棚部が形成され、前記軟質部は、前記棚部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の自動車のデフロスタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−84166(P2011−84166A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238356(P2009−238356)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】