説明

自動車のパーキングブレーキ取付構造

【課題】自動車のパーキングブレーキ取付構造において、パーキングブレーキの引っ張り操作力に対する取付け構造の剛性・強度を高めること。
【解決手段】フロアトンネル2に対する補強ブラケット9の前壁部13の取付け部位14a,14bと、パーキングブレーキ11がオフセットして取付けられる右側の側壁部22の前部の取付け部位31aがボルト・ナットにより締結されると共にその他の取付け部位31bが溶接により接合されるため、パーキングブレーキ11のブレーキレバー11aを後方かつ上方へ引っ張る際の操作力を前壁部13の取付け部位14a,14bと右側の側壁部22の前部の取付け部位31aを締結するボルト・ナット締結部25により強力に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパーキングブレーキ取付構造に関し、特にパーキングブレーキの引っ張り操作力に対する取付け剛性・強度を高め、部品点数を節減したものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のパーキングブレーキは、通常フロアトンネル上に取付けられたブラケット部材に取付けられるが、パーキングブレーキのレバー部材を後方かつ上方へ引っ張り操作する際のブレーキ操作力が大きい関係上、十分な取付け剛性を確保する必要がある。
特に、ミニバン型自動車のように、フロントフロア面からシートの座面までの高さの大きな自動車では、フロアトンネル上に取付けられる上記ブラケット部材の高さが大きくなるため、高さの大きなブラケット部材が必要となる。
【0003】
特許文献1の従来技術の欄には、フロアトンネル上にパーキングブレーキレバーブラケットを取付け、このブラケットの上にパーキングブレーキレバーブラケットエキステンションを取付け、このエキステンションにパーキングブレーキレバーを取付ける構造が記載されている。
【0004】
特許文献1の実施例の欄に記載のパーキングブレーキレバーの取付構造においては、パーキングブレーキレバーを取付けるブラケット部材が、左右1対のサイドパネルと、アッパパネルと、後面側のアジャスタパネルとから構成され、左右のサイドパネルの下端部がフロアトンネルにボルト・ナット締結により固定され、ブレーキレバー支持部材はアッパパネルにボルト・ナット締結により固定されている。
【特許文献1】特開平10−203328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来技術の欄のパーキングブレーキレバー取付構造では、パーキングブレーキレバーブラケットの下端部のフランジ部をフロアトンネルの上面に溶接接合する構造の上方への引っ張り強度を確保するために溶接接合の打点数を多くする必要があり、コスト増加要因となる。
【0006】
特許文献1の実施例に係るパーキングブレーキレバー取付構造では、ブラケット部材が左右のサイドパネルと、アッパパネルと、アジャスタパネルの4部品で構成するため、部品点数が多くなり、製造コスト(部品費と取付け費)を低減することが難しい。
ブラケット部材が1階建ての構造であるため、ブラケット部材の高さが大きくなる。そのため、高さの大きなブラケット部材の剛性・強度を確保するために、サイドパネルやアッパパネルの形状・構造が複雑化し、板厚が大きくなり、製造コストの面で不利である。
【0007】
本発明の目的は、自動車のパーキングブレーキ取付構造において、パーキングブレーキの引っ張り操作力に対する取付け構造の剛性・強度を高めること、組付け作業性を高めること、部品点数を節減すること、製造コストの低減を可能にすること、などである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の自動車のパーキングブレーキ取付構造は、フロアトンネルと、上壁部と下端に取付フランジを有する左右の側壁部と下端に取付フランジを有する前壁部とから一体部品に構成されてフロアトンネル上に固定される補強ブラケットと、上記補強ブラケットの一方の側壁部側にオフセットして設けられるパーキングブレーキとを備え、上記フロアトンネルに対する補強ブラケットの前壁部の取付け部位と上記一方の側壁部の前部の取付け部位がボルト・ナットにより締結される共にその他の取付け部位が溶接により接合されたことを特徴としている。
【0009】
補強ブラケットが上壁部と左右の側壁部と前壁部とから一体部品に形成されているため、部品点数を少なくして、製造コスト(部品製作費と組付け費)を低減できる。
パーキングブレーキは、補強ブラケットの一方の側壁部側にオフセットして設けられるが、フロアトンネルに対する補強ブラケットの前壁部の取付け部位と上記一方の側壁部の前部の取付け部位がボルト・ナットにより締結されると共にその他の取付け部位が溶接により接合されるため、パーキングブレーキのブレーキレバーを後方かつ上方へ引っ張る際の操作力を上記の前壁部の取付け部位と一方の側壁部の前部の取付け部位を締結するボルト・ナット締結部により強力に支持することができるため、パーキングブレーキの取付け剛性・強度を確保することができる。また、フロアトンネルに対する補強ブラケットのその他の取付け部位が溶接により接合されるため、補強ブラケットの取付けの作業性を高め、製造コストの節減を図ることができる。
【0010】
請求項2の自動車のパーキングブレーキ取付構造は、請求項1の発明において、上記補強ブラケットの前半部分と平面視にてラップするように上記フロアトンネル上に接合されるレインフォースメントを設け、上記一方の側壁部の前部のボルト・ナット締結部と上記前壁部のボルト・ナット締結部を結ぶ直線上の近傍部位に上記レインフォースメントとフロアトンネルとを締結するボルト・ナット締結部を設けたことを特徴としている。
【0011】
請求項3の自動車のパーキングブレーキ取付構造は、請求項1又は2の発明において、上記パーキングブレーキのレバー支持部材がボルト・ナットで締結される座面部とこの座面部から下方へ延びる脚部とからなる取付ブラケットを設け、上記取付ブラケットは、その座面部と上記上壁部との間に所定間隔を空けて補強ブラケットを上方から覆うように配設され、上記取付ブラケットの脚部を補強ブラケットの側壁部に固定するボルト・ナット締結部を設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項4の自動車のパーキングブレーキ取付構造は、請求項3の発明において、上記補強ブラケットの前壁部の端部から側壁部側へ折曲されて側壁部に接合されるフランジ部を設け、このフランジ部と側壁部との接合部に上記取付ブラケットの脚部を締結するボルト・ナット締結部が配設されたことを特徴としている。
【0013】
請求項5の自動車のパーキングブレーキ取付構造は、請求項3の発明において、上記取付ブラケットの脚部の後部に補強ブラケットの上壁部側へ切り起した切り起し片が形成され、この切り起し片を上記上壁部に上方から係合させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、補強ブラケットが上壁部と左右の側壁部と前壁部とから一体部品に形成されているため、部品点数を少なくして、製造コスト(部品製作費と取付けけ費)を低減できる。
【0015】
フロアトンネルに対する補強ブラケットの前壁部の取付け部位と、パーキングブレーキがオフセットして取付けられる側の一方の側壁部の前部の取付け部位がボルト・ナットにより締結されると共にその他の取付け部位が溶接により接合されるため、パーキングブレーキのブレーキレバーを後方かつ上方へ引っ張る際の操作力を上記の前壁部の取付け部位と一方の側壁部の前部の取付け部位を締結するボルト・ナット締結部により強力に支持することができるため、パーキングブレーキの取付け剛性・強度を確保することができる。 フロアトンネルに対する補強ブラケットのその他の取付け部位が溶接により接合されるため、補強ブラケットの取付けの作業性を高め、製造コストの節減を図ることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、補強ブラケットの前半部分と平面視にてラップするようにフロアトンネル上に接合されるレインフォースメントを設けるため、パーキングブレーキからの操作力が作用するフロアトンネルの部分をレインフォースメントで補強して、パーキングブレーキの取付け剛性・強度を高めることができる。
【0017】
一方の側壁部の前部のボルト・ナット締結部と前壁部のボルト・ナット締結部を結ぶ直線(前後方向に対して傾斜している)上の近傍部位にレインフォースメントとフロアトンネルとを締結するボルト・ナット締結部を設けたので、補強ブラケットの前部とその前側付近において、補強ブラケットとレインフォースメントとを強固に固定して、パーキングブレーキの取付け剛性・強度(特に、対剥離強度)を高めることができる。上記の2つのボルト・ナット締結部を結ぶ直線が前後方向に対して傾斜状であるため、パーキングブレーキが左右方向に倒れないように支持する剛性も確保することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、パーキングブレーキのレバー支持部材が取付けられる座面部とこの座面部から下方へ延びる脚部とからなる取付ブラケットを設け、取付ブラケットは、その座面部と補強ブラケットの上壁部との間に所定間隔を空けて補強ブラケットを上方から覆うように配設され、取付ブラケットの脚部を補強ブラケットの側壁部に固定するボルト・ナット締結部を設けたので、補強ブラケットの高さを適正な高さに維持でき、補強ブラケットの製作費を節減できる。
【0019】
また、取付ブラケットの座面部を広く形成して、パーキングブレーキのレバー支持部材を座面部にボルト・ナットで締結する締結ピッチを大きくしてパーキングブレーキの取付け剛性・強度を向上することができる。そして、取付ブラケットの脚部を補強ブラケットの側壁部に固定するボルト・ナット締結部を設けたので、取付ブラケットの取付け剛性・強度を確保することができるうえ、取付ブラケットの取付けの作業性を高めることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、補強ブラケットの前壁部の端部から側壁部側へ折曲されて側壁部に接合されるフランジ部を設け、このフランジ部と側壁部との接合部に取付ブラケットの脚部を締結するボルト・ナット締結部が配設されたので、取付ブラケットの脚部を側壁部に締結する締結強度を向上することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、上記取付ブラケットの脚部の後部に補強ブラケットの上壁部側へ切り起した切り起し片が形成され、この切り起し片を上記上壁部に上方から係合させたので、パーキングブレーキの取付け時に、取付ブラケットの脚部の切り起し片を補強ブラケットの上壁部に上方から係合させて一時預けが可能となるうえ、パーキングブレーキの操作力により上記取付ブラケットの後部に作用する圧縮荷重に対する補強を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る自動車のパーキングブレーキ取付構造は、フロアトンネルと、上壁部と下端に取付フランジを有する左右の側壁部と下端に取付フランジを有する前壁部とから一体部品に構成されてフロアトンネル上に固定される補強ブラケットと、上記補強ブラケットの一方の側壁部側にオフセットして設けられるパーキングブレーキとを備え、上記フロアトンネルに対する補強ブラケットの前壁の取付け部位と上記一方の側壁部の前部の取付け部位がボルト・ナットにより締結される共にその他の取付け部位が溶接により接合されたことを特徴とするものである。
【実施例】
【0023】
以下、本発明をミニバン型自動車のパーキングブレーキ取付け構造に適用したバインダーの実施例について図面に基づいて説明する。尚、この自動車は左ハンドル車である。
図1〜図4に示すように、自動車のフロントフロア1には、車幅方向の中央部に位置するように上方へ凸形のフロアトンネル2が形成され、フロントフロア1の前端には車幅方向に延びる閉断面のダッシュクロスメンバ3が配設され、このダッシュクロスメンバ3の後方においてフロントフロアパネル4の上面のうちフロアトンネル2とサイドシルの間には、フロントフロアパネル4と閉断面をなすクロスメンバ5が設けられ、このクロスメンバ5の上に前席のシート装置が取付けられる。
【0024】
上記ダッシュクロフメンバ3とクロスメンバ5の間に対応する位置において、フロアトンネル2には、フロアトンネル2の上半部を覆う第1補強パネル6が接合されている。上記クロスメンバ5よりもやや前方の位置において、フロアトンネル2の上壁8上に補強ブラケット9が設けられ、この補強ブラケット9に取付けブラケット10が取付けられ、この取付けブラケット10にパーキングブレーキ11のレバー支持部材12が右側へオフセットさせて取付けられている。
【0025】
上記第1補強パネル6の上面には、第2補強パネル7(レインフォースメントに相当する)が接合されているが、第2補強パネル7は、補強ブラケット9の前半部よりも大きな前後幅を有すると共に、第1補強パネル6の左右方向全幅に亙るものであり、第2補強パネル7の後端は補強ブラケット9の前後方向中央よりやや後側に位置し、第2補強パネル7の前端は補強ブラケット9の前壁部13の取付けフランジ部14の前端よりも前側に位置している。第2補強パネル7は、補強ブラケット9の前半部分と平面視にてラップしている。第1,第2補強パネル6,7及び補強ブラケット9は、予めサブアッシされてフロアトンネル2に取付けられる。
【0026】
第2補強パネル7の側壁部15は複数の溶接接合部によりフロアトンネル2と第1補強パネル6の側壁部に溶接接合されている。第2補強パネル7の上壁部16の前端の突出部17は、1つのボルト・ナット締結部18で第1補強パネル6に締結されると共に2カ所の溶接接合部19で第1補強パネル6に溶接接合されている。尚、第2補強パネル7の上壁16の前端部分の2つの開口穴20は第1補強パネル6をフロアトンネル2に溶接接合するための開口穴である。
【0027】
図5,図8〜14に示すように、補強ブラケット9は、フロアトンネル2の上壁8の左右幅の約半分の左右幅を有するものであり、前後に細長い上壁部21と、左右の側壁部22と、ほぼ台形状の前壁部13とから後方解放の倒立箱状の一体部品(板厚約1〜2mmの鋼板部品)に構成され、フロアトンネル2の上壁8に固定されている。各側壁部22の下端には車幅方向外側へ折曲された取付フランジ30,31が一体形成され、前壁部13の下端にも前方へ折曲された取付フランジ14が一体形成されている。
【0028】
フロアトンネル2に対する、左側の側壁部22の取付フランジ30の取付け部位30a,30b,30cは、複数の溶接接合部により第1,第2補強パネル6,7に接合されている。フロアトンネル2に対する、右側(パーキングブレーキ11がオフセットしている側)の側壁部22の取付フランジ31の前部の取付け部位31aはボルト・ナットにより第2補強パネル7に締結されてボルト・ナット締結部25を構成している(図2参照)。右側の取付フランジ31の後部の取付け部位31bは複数の溶接接合部により第1,第2補強パネル6,7に接合されている(図2参照)。
【0029】
フロアトンネル2に対する、前壁部13の取付フランジ14は、左右に離隔した2個所の取付け部位14a,14bは、夫々ボルト・ナットにより締結され、ボルト・ナット締結部26a,26bを構成している。
右側の側壁部22の下端の前部のボルト・ナット締結部25と、前壁部13の下端のボルト・ナット締結部26bを結ぶ直線上の近傍部位に第2補強パネル7(レインフォースメント)と第1補強パネル6(つまり、第2補強パネル7とフロアトンネル2)とを締結するボルト・ナット締結部18が設けられている。
【0030】
図6,図8〜図14に示すように、パーキングブレーキ11のブレーキレバー11aを支持するレバー支持部材12を取付けるための取付ブラケット10は、パーキングブレーキ11のレバー支持部材12がボルト・ナットで締結される座面部28と、この座面部28から下方へ延びる脚部29とからなる一体部品(板厚約1.5〜2.3mmの鋼板部品)に構成されている。この取付ブラケット10は、その座面部28と、補強ブラケット9の上壁部21との間に所定間隔を空けて補強ブラケット9を上方から覆うように配設され、取付ブラケット10の脚部29を補強ブラケット9の側壁部22に固定するボルト・ナット締結部32が設けられている。
【0031】
取付ブラケット10は、補強ブラケット9の前後長よりもやや長い前後長を有し、後端部が補強ブラケット9の後端部に一致させ、前端を補強ブラケット9の前壁部13よりもやや前側に位置するように配設されている。座面部28は、前後方向に細長い矩形状をなし、パーキングブレーキ11のケーブル11bが挿通する開口28bと、その他の開口穴が形成されている。座面部28の外周部には、その外周部から折曲されて下方へ所定幅だけ延びた外周フランジ部28aが形成され、座面部28と外周フランジ部28aとで倒立箱状に形成されて座面部28の剛性・強度が高められている。
【0032】
取付ブラケット10の左側の側面には1対の脚部29a, 29bが形成され、右側の側面には1対の脚部29a, 29bが形成され、左側の脚部29a,29bの下部が補強ブラケット9の左側の側壁部22に重ねてボルト・ナット締結部32a ,32bにて側壁部22に締結され、右側の脚部29a , 29bの下部が補強ブラケット9の右側の側壁部22に重ねてボルト・ナット締結部32a ,32bにて側壁部22に締結されている(図2参照)。上記の取付ブラケット10は、パーキングブレーキ11が予めサブアッシイされる部材であり、上記のボルト・ナット締結部32a,32bにより取付ブラケット10に締結することで、パーキングブレーキ11の取り付けの作業性を高め、パーキングブレーキ11から作用する上方への引っ張り操作力に対する強度を確保することができる。
【0033】
左右の前側の脚部29aの前端には、前面側へ折曲された折曲フランジ部33aが形成されて、脚部29aの剛性・強度の向上が図られている。左右の後側の脚部29bの後端には、後面側へ折曲された折曲フランジ部33bが形成されて脚部29bの剛性向上が図られている(図3参照)。
補強ブラケット9の前壁部13の端部から右側の側壁部22側へ折曲されて右側の側壁部22に接合されるフランジ部34が設けられて側壁部22に溶接接合され、このフランジ部34と側壁部22との接合部に取付ブラケット10の右側の脚部29aを側壁部22に締結するボルト・ナット締結部32aが配設されている。これにより、パーキングブレーキ11からボルト・ナット締結部32aに作用する上方への引っ張り操作力に対する強度を一層向上できる。
【0034】
図1〜図3,図6,図12に示すように、取付ブラケット10の後部の左右の脚部29bに補強ブラケット9の上壁部21側へ切り起した切り起し片35a,35bが夫々形成され、この切り起し片35a,35bが上壁部21に上方から当接状に係合させてある。これにより、パーキングブレーキ11の取付け時に、上記の切り起し片35a,35bを上壁部21に上方から係合させて一時預けが可能となるうえ、パーキングブレーキ11の操作力により取付ブラケット10の後部に作用する圧縮荷重に対する補強を行うことができる。
【0035】
図1,図3,図13に示すように、パーキングブレーキ11のレバー支持部材12は、ブレーキレバー11aを支持する縦向きの本体板部12aと、パーキングブレーキ11のケーブル11bがガイドされるケーブルガイド部材36が固定される縦向きのケーブル支持部12bと、取付ブラケット10の座面部28の上面に固定される連結部12c,12dを有する。レバー支持部材12の下端部の前端部の連結部12cは、取付ブラケット10の座面部28の上面に当接させた状態にして2つのボルト・ナット締結部37a,37bにより座面部28に締結され、レバー支持部材12の下端部の後端部の連結部12dは、取付ブラケット10の座面部28の上面に当接させた状態にして1つのボルト・ナット締結部37cにより座面部28に締結されている。
【0036】
図7,図8に示すように、レバー支持部材12には、合成樹脂製のカバー部材38が設けられている。フロアトンネル2の上面側を覆うセンターコンソール38aが設けられ、補強ブラケット9と、取付ブラケット10と、ケーブル支持部12b及び連結部12c,12dなどは、センターコンソール38aで覆われる。センターコンソール38aの内部には、変速操作レバーを取付ける取付け部が設けられ、センターコンソール38aの上壁部には変速操作レバーが挿通されてガイドされるシフトガイド部材が装着される円形の開口部40が形成されている。
【0037】
次に、以上説明したパーキングブレーキ11取付構造の作用について説明する。
補強ブラケット9が上壁部21と左右の側壁部22と前壁部13とから一体部品に形成されているため、部品点数を少なくして、製造コスト(部品製作費と取付けけ費)を低減できる。
【0038】
フロアトンネル2に対する補強ブラケット9の前壁部13の取付け部位14a,14bと、パーキングブレーキ11がオフセットして取付けられる右側の側壁部22の前部の取付け部位31aがボルト・ナットにより締結されると共にその他の取付け部位30a,30b,30c,31bが溶接により接合されるため、パーキングブレーキ11のブレーキレバー11aを後方かつ上方へ引っ張る際の操作力を前壁部13の取付け部位14a,14bと右側の側壁部22の前部の取付け部位31aを締結するボルト・ナット締結部25,26a,26bにより強力に支持することができるため、パーキングブレーキ11の取付け剛性・強度を確保することができる。
【0039】
フロアトンネル2に対する補強ブラケット9のその他の取付け部位30a,30b,30c,31bが溶接により接合されるため、補強ブラケット9の取付けの作業性を高め、製造コストの節減を図ることができる。補強ブラケット9の前半部分と平面視にてラップするようにフロアトンネル2上に接合される第2補強パネル7(レインフォースメント)を設けるため、パーキングブレーキ11からの操作力が作用するフロアトンネル2の部分を第2補強パネル7で補強して、パーキングブレーキ11の取付け剛性・強度を高めることができる。
【0040】
右側の側壁部22の下端部の前部のボルト・ナット締結部25と前壁部13の下端部のボルト・ナット締結部26bを結ぶ直線(前後方向に対して傾斜している)上の近傍部位に第2補強パネル7とフロアトンネル2とを締結するボルト・ナット締結部18を設けたので、補強ブラケット9の前部とその前側付近において、補強ブラケット9と第2補強パネル7とを強固に固定して、パーキングブレーキ11の取付け剛性・強度(特に、対剥離強度)を高めることができる。上記の2つのボルト・ナット締結部25,26bを結ぶ直線が前後方向に対して傾斜状であるため、パーキングブレーキ11が左右方向に倒れるないように支持する剛性も確保することができる。
【0041】
上記の取付ブラケット10を設け、取付ブラケット10は、その座面部28と補強ブラケット9の上壁部21との間に所定間隔を空けて補強ブラケット9を上方から覆うように配設され、取付ブラケット10の脚部29a,29bを補強ブラケット9の側壁部22に固定するボルト・ナット締結部32a,32bを設けたので、補強ブラケット9の高さを適正な高さに維持でき、補強ブラケット9の製作費を節減できる。
【0042】
取付ブラケット10の座面部28を広く形成して、パーキングブレーキ11のレバー支持部材12の前後の連結部12c,12dを座面部28にボルト・ナット締結部37a,37cで締結する締結ピッチを大きくしてパーキングブレーキ11の取付け剛性・強度を向上することができる。取付ブラケット10の脚部29a,29bを補強ブラケット9の側壁部22に固定するボルト・ナット締結部32a,32bを設けたので、取付ブラケット10の取付け剛性・強度を確保することができるうえ、取付ブラケット10の取付けの作業性を高めることができる。
【0043】
補強ブラケット9の前壁部13の右端部から側壁部22側へ折曲されて側壁部22に接合されるフランジ部34を設け、このフランジ部34と側壁部22との接合部42に取付ブラケット10の右側の前部の脚部29aを締結するボルト・ナット締結部32aが配設されたので、その脚部29aを側壁部22に締結する締結強度を向上することができる。
【0044】
取付ブラケット10の後部の脚部29bに補強ブラケット9の上壁部21側へ切り起した切り起し片35a,35bが夫々形成され、この切り起し片35a,35bを上壁部21に上方から係合させたので、パーキングブレーキ11の取付け時に、それら切り起し片35a,35bを上壁部21に上方から係合させて一時預けが可能となるうえ、パーキングブレーキ11の操作力により取付ブラケット10の後部に作用する圧縮荷重に対する補強を行うことができる。
【0045】
次に、上記パーキングブレーキ11取付構造を部分的に変更する例について説明する。(1)前記実施例ではミニバン型の左ハンドル車に本発明を適用した場合の例を説明したが、本発明はミニバン型以外の自動車、右ハンドルの自動車等にも同様適用可能である。(2)補強ブラケット9の左側の側壁部22の下端の前部の取り付け部位は溶接接合ではなく、ボルト・ナット締結部により締結してもよい。また、取付ブラケット10の左右両側の脚部29は前後に分断状ではなく一体的な側板状の形状に構成してもよい。
【0046】
(3)取付ブラケット10の後部の脚部29bに切り越し片35a,35bを形成すると共に、取付ブラケット10の前部の脚部29aにも切り越し片を形成してもよい。
(4)その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱することなく前記実施例に種々の変更を付加して実施することができ、本発明はそのような種々の変更形態うも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例に係る自動車のパーキングブレーキ取付け構造の左斜め前方から視た斜視図である。
【図2】パーキングブレーキ取付け構造の右斜め前方から視た斜視図である。
【図3】パーキングブレーキ取付構造の左側側面図である。
【図4】パーキングブレーキ取付構造の平面図である。
【図5】補強ブラケットとその周辺部の斜視図である。
【図6】取付ブラケットとその周辺部の斜視図である。
【図7】フロントフロアとセンターコンソールの斜視図である。
【図8】バーキングブレーク取付構造の前部及びセンターコンソールの縦断面図である。
【図9】取付ブラケットの前部断面を含む図4のIX−IX線断面図である。
【図10】パーキングブレーキ取付構造の前部断面を示す図4のX −X 線断面図である。
【図11】図8の要部拡大図である。
【図12】パーキングブレーキ取付構造の後部断面を示す図4のXII −XII 線断面図である。
【図13】パーキングブレーキ取付構造の幅方向の中央部断面を示す図4のXIII−XIII線断面図である。
【図14】パーキングブレーキ取付構造の左部断面を示す図4のXIV −XIV 線断面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 フロントフロア
7 レインフォースメント
9 補強ブラケット
10 取付ブラケット
11 パーキングブレーキ
13 前壁部
14a,14b 取付け部位
18 ボルト・ナット締結部
21 上壁部
22 側壁部
25,26a,26b ボルト・ナット締結部
28 座面部
29a,29b 脚部
30,31 取付フランジ
30a,30b,30c,31a,31b 取付け部位
32a,32b ボルト・ナット締結部
34 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のパーキングブレーキ取付構造において、
フロアトンネルと、
上壁部と、下端に取付フランジを有する左右の側壁部と、下端に取付フランジを有する前壁部とから一体部品に構成されてフロアトンネル上に固定される補強ブラケットと、
上記補強ブラケットの一方の側壁部側にオフセットして設けられるパーキングブレーキとを備え、
上記フロアトンネルに対する補強ブラケットの前壁部の取付け部位と上記一方の側壁部の前部の取付け部位がボルト・ナットにより締結される共にその他の取付け部位が溶接により接合されたことを特徴とする自動車のパーキングブレーキ取付構造。
【請求項2】
上記補強ブラケットの前半部分と平面視にてラップするように上記フロアトンネル上に接合されるレインフォースメントを設け、
上記一方の側壁部の前部のボルト・ナット締結部と上記前壁部のボルト・ナット締結部を結ぶ直線上の近傍部位に上記レインフォースメントとフロアトンネルとを締結するボルト・ナット締結部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のパーキングブレーキ取付構造。
【請求項3】
上記パーキングブレーキのレバー支持部材がボルト・ナットで締結される座面部とこの座面部から下方へ延びる脚部とからなる取付ブラケットを設け、
上記取付ブラケットは、その座面部と上記上壁部との間に所定間隔を空けて補強ブラケットを上方から覆うように配設され、上記取付ブラケットの脚部を補強ブラケットの側壁部に固定するボルト・ナット締結部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車のパーキングブレーキ取付構造。
【請求項4】
上記補強ブラケットの前壁部の端部から側壁部側へ折曲されて側壁部に接合されるフランジ部を設け、このフランジ部と側壁部との接合部に上記取付ブラケットの脚部を締結するボルト・ナット締結部が配設されたことを特徴とする請求項3に記載の自動車のパーキングブレーキ取付構造。
【請求項5】
上記取付ブラケットの脚部の後部に補強ブラケットの上壁部側へ切り起した切り起し片が形成され、この切り起し片を上記上壁部に上方から係合させたことを特徴とする請求項3に記載の自動車のパーキングブレーキ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−253856(P2007−253856A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82600(P2006−82600)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】