説明

自動車のフェンダカバー構造

【課題】フェンダカバーが太陽光や雨水等により晒されて経年変化したとしても、弾接舌片部による車体のフロントピラーへの弾性力を常時保持できる。
【解決手段】自動車1のフロントフェンダ5に沿って設けられて、ウィンドシールドガラス3の下端隅角部3aを覆う場合、フェンダカバー10の外周端部にフロントフェンダ5の端末部を挟着する挟着凹部12を設けると共に、フェンダカバー10の裏面側に自動車1のフロントピラー2に当接する弾性変形可能な弾接舌片部13を複数個形成しており、さらに、各弾性舌片部13にそれぞれ交差連結する突っ張り片14をフェンダカバー10の裏面側に起立形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体を構成するフロントフェンダに沿って設けられて、ウィンドシールドガラスの下端隅角部を覆うフェンダカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種のフェンダカバー構造は、自動車のフロントフェンダに沿って設けられて、ウィンドシールドガラスの下端隅角部を覆うべく、フェンダカバーの内周端部側にウィンドシールドガラスの下端隅角部を覆う内周縁リップ部を形成すると共に、フェンダカバーの外周部にフロントフェンダの端末部を挟着する挟着凹部を設け、且つ、フェンダカバーの裏面側に車体のフロントピラーに当接する弾性変形可能な弾接舌片部を形成しており、更に、フェンダカバーにおける挟着凹部より先端側にフロントフェンダの裏面側に弾接する当接片部を形成して構成している(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2007−30834号公報
【0003】
そして、上記従来のフェンダカバー構造によれば、フェンダカバーの内周縁部に設けた挟着凹部により、フロントフェンダの端末部を挟着する構成とすると共に、フェンダカバーの裏面側に形成した弾接舌片部を車体のフロントピラーに当接することにより、先ず、フェンダカバーの車体左右方向に対しては、挟着凹部の両対向側壁により強干渉構造となり、また、フェンダカバーの車体上下方向に対しては、挟着凹部の底部がフロントフェンダに対向すると共に弾接舌片部が弾性変形しながら車体側に当接することにより強干渉構造となって、車体組立て上のバラツキに対応できることから、フェンダカバーをフロントフェンダ側に押付けて、安定的に取付けることができるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、弾接舌片部は、弾性変形させた状態で車体側に当接することにより強干渉構造とするようになっているため、特に太陽光や雨水等に対して表出して晒されるフェンダカバーの経年変化により、弾性力が弱くなりへたって弾性変形した状態のままで塑性変形してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、フェンダカバーが太陽光や雨水等により晒されて経年変化したとしても、弾接舌片部による車体のフロントピラーへの弾性力を常時保持できるように構成した自動車のフェンダカバー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動車のフェンダカバー構造は、自動車のフロントフェンダに沿って設けられて、ウィンドシールドガラスの下端隅角部を覆うフェンダカバー構造であって、前記フェンダカバーの裏面側に前記自動車のフロントピラーに当接する弾性変形可能な弾接舌片部を複数個形成しており、さらに、前記各弾性舌片部にそれぞれ交差連結する突っ張り片を前記フェンダカバーの裏面側に起立形成したことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、フロントピラーに弾性変形した状態で当接する弾接舌片部は、当該弾接舌片部に交差連結する突っ張り片をフェンダカバーの裏面側に起立形成したために、その弾性力に突っ張り片の弾性変形による反力が助長されて強干渉構造を呈することになって、太陽光や雨水等により晒されることによるフェンダカバーの経年変化が生じたとしても、突っ張り片側の弾性力の維持による強干渉状態が保持されてフロントピラーに常に所定の圧接力をもって当接していることになって、フロントフェンダに沿っウィンドシールドガラスの下端隅角部を安定的に覆うことができる。
【0008】
また、本発明に係る自動車のフェンダカバー構造は、前記突っ張り片における前記弾性舌片部が交差連結する一方の側面に対向する他方の側面に対して交差連結するように、前記フェンダカバーの裏面側に起立支え片を形成するようにしてもよい。
【0009】
かかる構成により、起立支え片が更に突っ張り片を介して弾性舌片部におけるフロントピラーへの圧接弾性力を助長することになって、更にフロントフェンダに沿っウィンドシールドガラスの下端隅角部を安定的に覆うことができる。
【0010】
また、本発明に係る自動車のフェンダカバー構造における前記弾性舌片部と前記起立支え片とは、前記突っ張り片を挟んで非対向配置にするようにしてもよい。
【0011】
かかる構成により、弾性舌片部が突っ張り片を挟んで非対向配置された起立支え片が弾性舌片部におけるフロントピラーへの弾性圧接力を助長することになって、フロントフェンダに沿っウィンドシールドガラスの下端隅角部を安定的に覆うことができる。
【0012】
また、本発明に係る自動車のフェンダカバー構造における前記突っ張り片は、平面視無端条に形成して、該突っ張り片における側面壁に前記弾性舌片部を形成するようにしてもよい。
【0013】
かかる構成により、突っ張り片を平面視無端条例えばボックス状あるいは円形に形成することにより、突っ張り片における側面壁に形成された弾性舌片部の弾性力を加算することになって、弾性舌片部が経年変化に対向してフロントピラーへの弾性圧接力を助長し、フロントフェンダに沿っウィンドシールドガラスの下端隅角部を更に安定的に覆うことができる。
【0014】
また、本発明に係る自動車のフェンダカバー構造は、無端条に形成した前記突っ張り片における前記側面壁の前記弾性舌片部に対向する位置において、前記フェンダカバーの裏面側に起立支え片を形成するようにしてもよい。
【0015】
かかる構成により、弾性舌片部の弾性力は、突っ張り片を介して起立支え片によって更に助長されることになって、フロントフェンダに沿っウィンドシールドガラスの下端隅角部をフェンダカバーにより更に安定的に覆うことができる。
【0016】
また、本発明は、前記起立支え片を、前記フェンダカバーの外周部に形成され前記フロントフェンダの端末を挟着する挟着凹部に連結させるようにしてもよく、かかる構成により、弾性舌片部の弾性力を更に挟着凹部が助長することになると共に、起立支え片の弾性力の反力が挟着凹部にももたらされ、挟着凹部によるフロントフェンダの端末への挟着力を助長することになって、フェンダカバーが益々フロントフェンダに沿ってウィンドシールドガラスの下端隅角部を安定的に覆うことができることになる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように構成する本発明によれば、フロントピラーに弾性変形した状態で当接する弾接舌片部は、当該弾接舌片部に交差連結する突っ張り片をフェンダカバーの裏面側に起立形成したために、弾接舌片部の弾性力が突っ張り片の弾性力が加わって助長された状態でフロントピラーに強干渉することになって、太陽光や雨水等により晒されることによるフェンダカバーの経年変化が生じたとしても、弾接舌片部の弾性力が実質的に維持されフロントピラーに常に所定の圧接力をもって当接していることになって、フロントフェンダに沿ってウィンドシールドガラスの下端隅角部を安定的に覆うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係る実施の形態について、図を用いて説明する。
【0019】
図1は自動車のフロント部を描画した斜視図、図2は、本発明に係る第1の実施の形態における図1のウィンドシールドガラスの下端隅角部周辺を拡大して描画した斜視図、図3は本発明に係る第1の実施の形態によるフェンダカバー単体を斜め表面側から描画した斜視図、図4は同じく裏面側から描画した斜視図、図5は図3のA−A断面図、図6は図3のB−B断面図である。
【0020】
先ず、図1或いは図2に示すように、自動車1の左右フロントピラー2の間において、ウィンドシールドガラス3は、その周部をフロントピラー2或いはフロントカウルおよびフロントアッパーレール(不図示)等の車体構成メンバーに接着などにより取り付けられており、また、ウィンドシールドガラス3の下端隅角部3aが、フロントピラー2に装着した合成樹脂製のフェンダ5によってカバーされている。
【0021】
ウィンドシールドガラス3の下端部前側には、エンジンフード7との間に沿って、カウルトップカバー8が設けられている。
【0022】
そして、カウルトップカバー8の端末とフロントフェンダ5の下端端末との間におけるウィンドシールドガラス3の下端隅角部3aは、フェンダカバー10によって覆われている。
【0023】
フェンダカバー10は、その内周端部側には、ウィンドシールドガラス3の下端隅角部3aを覆う内周縁リップ部11が形成されており、図3乃至図6に示すように、内周縁リップ部11より外周端部側には、フロントフェンダ5の端末5aを挟着する略コ字状の挟着凹部12が設けられている。
【0024】
また、フェンダカバー10における外周端部の裏面側には、フロントフェンダ5の裏面側に弾接する弾接舌片部13が複数個形成されていると共に、弾接舌片部13を交差連結する突っ張り片14が設けられている。
【0025】
突っ張り片14は、平板状に形成してもよいが、本実施の形態においては、平面視無端条を呈するボックス状に形成されて、側面壁14aに弾接舌片部13が一体形成されている一方、側面壁14aにおける弾接片部13に対向する位置において、フェンダカバー5の裏面側に起立支え片15が形成されている。
【0026】
起立支え片15における突っ張り片14に対して反対側の端部は、挟着凹部12に連設している。
【0027】
更に、突っ張り片14は、その車体上部側に向かって狭くなるようなボックス形状に形成されており、その内壁部が弾接舌片部13の延在方向に沿うような状態で、複数の隔壁14bによって区画されており、各隔壁14bは側面壁14aを挟む状態で弾接舌片部13に対して非対向配置されている。
【0028】
このように構成されたフェンダカバー10は、図4に示すようにその裏面側におけるカウルトップカバー8に対向する位置に、複数のクリップ部10Aを立設して、クリップ部10Aをカウルトップカバー8に設けたクリップ孔(不図示)に係着することによって、ウィンドガラス3の下端隅角部3aを覆うようになっている。
【0029】
このとき、図5に示すように、フェンダカバー10においては、挟着凹部12にフロントフェンダ5の折曲された端末5aが嵌入し、弾接舌片部13はフロントピラー2にある程度弾性変形した状態で弾接していることになる。
【0030】
そして、弾接舌片部13は弾性変形可能に形成されていることから、先端部が屈曲した状態でフロントピラー2に当接することになって、フロントピラー2とフロントフェンダ5との間の組立誤差間隙を吸収している。
【0031】
更に、フロントピラー2に弾性変形した状態で当接する弾接舌片部13は、弾接舌片部に交差連結するようにフェンダカバー10の裏面側に起立形成したボックス状の突っ張り片14の側面壁14aが図6において一点鎖線で記載するたように内方に凹状に弾性変形することにより、その弾性力をもって強干渉構造を呈し、結果的に弾接舌片部13の弾性力を助長することになって、太陽光や雨水等により晒されることによるフェンダカバー5の経年変化が生じたとしても、突っ張り片14側の弾性力の維持による強干渉状態が保持されてフロントピラー2に常に所定の圧接力をもって当接していることになり、フロントフェンダ5に沿っウィンドシールドガラス3の下端隅角部3aを安定的に覆うことができる。
【0032】
また、突っ張り片14は、挟着凹部12に連結形成した起立支え片15を介して挟着凹部12側からの押圧力によって側壁面14aが一点鎖線示のように内方に凹状に弾性変形することになり、この結果、挟着凹部12側に反力をもたらせて、挟着凹部12によるフロントフェンダ5の嵌合力を助長すると共に、突っ張り片14を介して弾接舌片部13の弾性力をも実質的に支えることになる。
【0033】
さらに、突っ張り片14は、その内壁に形成した隔壁14bによっても、その弾性力が経年変化しないように助長されることになる。
【0034】
次に、図7乃至図11を用いて、本発明の他の実施の形態について説明する。
【0035】
先ず、本発明に係る第2の実施の形態を示す図7においては、上記第1の実施の形態においては、突っ張り片14が、車体上部側に向かって狭くなるような平面視ボックス形状に形成したのに対し、平面視長方形となるボックス状に形成すると共に、各弾性舌片部13にそれぞれ対向するように、側面壁14aに複数の起立支え片15を形成した点、相違しており、その他の構成は、ほぼ同一なので、同一符号を付すことにより詳細説明は割愛する。
【0036】
図8に示す本発明に係る第3の実施の形態においては、突っ張り片14が、複数の弾性舌片部13毎に分割された分割突っ張り片14−1により構成したほか、図7で示す第2の実施の形態と同様な構成を有しているものである。
【0037】
図9は本発明に係る第4の実施の形態においては、図8に示す第3の実施の形態のように平面視四角形の分割突っ張り片14−1により構成した点に代わり、平面視円形に形成したものであり、その他の構成は同じであるので、同一符号を付すことにより、詳細説明は割愛する。
【0038】
図10に示す本発明に係る第4の実施の形態においては、突っ張り片14が平板を平面視波形することにより形成し、波形形状の山部および谷部にそれぞれ互い違いになるように、弾接舌片13および起立支え片15を連結形成しており、弾接舌片13は上記の実施の形態と同様にフロントピラー2に弾接しているのに対し、起立支え片15はフロントフェンダ5の端末5aに弾接さえている点異なる。
【0039】
図11に示す本発明に係る第5の実施の形態においては、図7に示す突っ張り片14における側面壁14aが、起立支え片15を挟むような状態で、切欠き部14cを形成したものである。
【0040】
そして、図7乃至図11に描画した各実施の形態は、突っ張り片14による弾接舌片部13への弾性力の助長程度を適宜選択できるように構成したものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、フロントピラーに弾性変形した状態で当接する弾接舌片部は、当該弾接舌片部に交差連結する突っ張り片をフェンダカバーの裏面側に起立形成したために、弾接舌片部の弾性力が突っ張り片の弾性力が加わって助長された状態でフロントピラーに強干渉することになって、太陽光や雨水等により晒されることによるフェンダカバーの経年変化が生じたとしても、弾接舌片部の弾性力が実質的に維持されフロントピラーに常に所定の圧接力をもって当接していることになって、フロントフェンダに沿ってウィンドシールドガラスの下端隅角部を安定的に覆うことができる。
【0042】
この結果、本発明は、自動車車体を構成するフロントフェンダに沿って設けられて、ウィンドシールドガラスの下端隅角部を覆うフェンダカバー構造等に好適であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】自動車のフロント部を描画した斜視図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態における図1のウィンドシールドガラスの下端隅角部周辺を拡大して描画した斜視図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態によるフェンダカバー単体を斜め表面側から描画した斜視図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態によるフェンダカバー単体を斜め裏面側から描画した斜視図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】図3のB−B断面図である。
【図7】本発明に係る第2の実施の形態による図6と同様の断面図である。
【図8】本発明に係る第3の実施の形態による図6と同様の断面図である。
【図9】本発明に係る第4の実施の形態による図6と同様の断面図である。
【図10】本発明に係る第5の実施の形態による図6と同様の断面図である。
【図11】本発明に係る第6の実施の形態による図6と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 自動車
2 フロントピラー
3 ウィンドシールドガラス
3a 下端隅角部
5 フロントフェンダー
10 フェンダカバー
12 挟着凹部
13 弾接舌片部
14 突っ張り片
15 起立支え片





【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントフェンダに沿って設けられて、ウィンドシールドガラスの下端隅角部を覆うフェンダカバー構造であって、前記フェンダカバーの裏面側に前記自動車のフロントピラーに当接する弾性変形可能な弾接舌片部を複数個形成しており、さらに、前記各弾性舌片部にそれぞれ交差連結する突っ張り片を前記フェンダカバーの裏面側に起立形成したことを特徴とする自動車のフェンダカバー構造。
【請求項2】
前記突っ張り片における前記弾性舌片部が交差連結する一方の側面に対向する他方の側面に対して交差連結するように、前記フェンダカバーの裏面側に起立支え片を形成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフェンダカバー構造。
【請求項3】
前記弾性舌片部と前記起立支え片とは、前記突っ張り片を挟んで非対向配置されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車のフェンダカバー構造。
【請求項4】
前記突っ張り片は、平面視無端条に形成して、該突っ張り片における側面壁に前記弾性舌片部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフェンダカバー構造。
【請求項5】
前記突っ張り片における前記側面壁の前記弾性舌片部に対向する位置において、前記フェンダカバーの裏面側に起立支え片を形成したことを特徴とする請求項4に記載の自動車のフェンダカバー構造。
【請求項6】
前記起立支え片を、前記フェンダカバーの外周部に形成され前記フロントフェンダの端末を挟着する挟着凹部に連結させたことを特徴とする請求項2、3または5に記載の自動車のフェンダカバー構造。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−6329(P2010−6329A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170912(P2008−170912)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】