自動車の側部構造
【課題】簡単な構成で車体側面部の強度を充分に確保できるようにする。
【解決手段】車体の側面部に形成された側面開口部4と、この側面開口部4の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドア3と、このスライドドア3のドア本体43よりも上方に設置されるサイドウインドガラス45と、上記側面開口部4の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール49と、上記側面開口部4の下辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシル9とを備えた自動車の側部構造であって、上記スライドドア3の前後方向中間部には、ルーフサイドレール49の設置部からサイドウインドガラス45の内方側を通ってサイドシル9の設置部まで上下方向に延びるピラー部材46を配設した。
【解決手段】車体の側面部に形成された側面開口部4と、この側面開口部4の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドア3と、このスライドドア3のドア本体43よりも上方に設置されるサイドウインドガラス45と、上記側面開口部4の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール49と、上記側面開口部4の下辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシル9とを備えた自動車の側部構造であって、上記スライドドア3の前後方向中間部には、ルーフサイドレール49の設置部からサイドウインドガラス45の内方側を通ってサイドシル9の設置部まで上下方向に延びるピラー部材46を配設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側面部に形成された側面開口部の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドアを有する自動車の側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロントドアの設置部に設けられた前部席乗員用の開口部と、リヤドアの設置部に設けられた後部席乗員用の開口部とが、これらのフロントドアとリヤドアとを開いたときに、仕切(センターピラー)のない一つの側面開口部を形成するように構成された車両のドア構造において、上記フロントドアの後端部またはリヤドアの前端部の一方または両方に、上下方向に延びるインパクトバー部材を設けることにより、センタピラーを設けることなく車体側面部の強度を充分に確保することが行われている。
【特許文献1】特開2003−252057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、前部席乗員用の開口部を覆うフロントドアと、後席部乗員用の開口部を覆うリヤドアとを備えた車体側部構造において、フロントドアの後辺部またはリヤドアの前辺部の一方またはその両方に、上下方向に延びるインパクトバーを設置するように構成した場合には、上記両ドアの閉止時における車体側面部の強度を充分に確保しつつ、これらのドアをそれぞれ開放状態とすることにより、仕切のない広い側面開口部を車体の側面に形成することができる。
【0004】
しかし、車体の側面部に形成された側面開口部の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位する単一のスライドドアを備えた自動車の側部構造では、このスライドドアの前辺部または後辺部に上記インパクトバーを設けたとしても、車体側面部の強度を充分に確保することが困難である。すなわち、車室内に設置された前席シートおよび後席シートに着座する乗員が昇降するための大きな側面開口部を車体の側面部に形成するとともに、この側面開口部を単一のスライドドアで閉止するように構成した場合、このスライドドアの面積が大きくなるとともに、そのドア本体の上方にサイドウインドガラスが設置されているため、自動車の側面衝突時等における衝撃を上記スライドドアだけでは充分に支持することが困難である等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で車体側面部の強度を充分に確保することができる自動車の側部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体の側面部に形成された側面開口部と、この側面開口部の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドアと、このスライドドアのドア本体よりも上方に設置されるサイドウインドガラスと、上記側面開口部の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、上記側面開口部の下辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシルとを備えた自動車の側部構造であって、上記スライドドアの前後方向中間部には、ルーフサイドレールの設置部からサイドウインドガラスの内方側を通ってサイドシルの設置部まで上下方向に延びるピラー部材を配設したものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車の側部構造において、上記ピラー部材の外側面とサイドウインドガラスの内側面とを互いに離間させることにより、その間に見通し用空間を形成したものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の自動車の側部構造において、上記ピラー部材に、シートベルト装置のショルダーアンカーを設置したものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車の側部構造において、左右のルーフサイドレール間を車幅方向に延びるルーフクロスメンバを、スライドドアの閉止時にピラー部材の上端部が対向する位置に設置したものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車の側部構造において、左右のサイドシル間を車幅方向に延びるフロアクロスメンバを、上記スライドドアの閉止時にピラー部材の下端部が対向する位置に設置したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、スライドドアの前後方向中間部にピラー部材を設けるとともに、このピラー部材をルーフサイドレールの設置部からサイドウインドガラスの内方側を通ってサイドシルの設置部まで上下方向に延びるように配設したため、前席シートおよび後席シートに着座する乗員が昇降するための大きな側面開口部を車体の側面部に形成した場合においても、自動車の側突時等に、車体の側面部に入力される衝撃荷重を上記ピラー部材により効果的に支持することができるとともに、上記衝撃荷重をピラー部材からルーフサイドレールおよびサイドシルに伝達して効果的に吸収することができる。しかも、上記スライドドアを開放した場合には、このスライドドアとともにピラー部材が車体の後方側に移動するため、センタピラーのない大きな開口を車体の側面部に形成することができ、乗員の乗り降りおよび車室内に対する荷物の出し入れ等を容易に行うことができるとともに、サイドウインドガラスをスライドドアの全体に亘り連続して設置できるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、ピラー部材の外側面とサイドウインドガラスの内側面とを互いに離間させることにより、その間に見通し用空間を形成したため、前席シートまたは後席シートに着座した乗員がサイドウインドガラスを介して車外を視認する際における視界を効果的に確保できるとともに、上記ピラー部材が車外から視認されるのを抑制して車体の外観が悪化するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、上記側面開口部を前席シートの後方側まで延設することにより後席シートに対する乗降を容易に行い得るように構成した場合においても、上記ショルダーアンカーを適正位置に配設することにより、上記シートベルト装置を介して前席シートに着座した乗員を適正に保護できるという利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、左右のルーフサイドレール間を車幅方向に延びるルーフクロスメンバを、スライドドアの閉止時にピラー部材の上端部が対向する位置に設置したため、自動車の側突時等に、上記ピラー部材を介してルーフサイドレールの設置部に入力された衝撃荷重を上記ルーフクロスメンバによって支持することができるため、車体側面部の強度を、より効果的に向上できるという利点がある。
【0015】
請求項5に係る発明では、左右のサイドシル間を車幅方向に延びるフロアクロスメンバを、上記スライドドアの閉止時にピラー部材の下端部が対向する位置に設置したため、自動車の側突時等に、上記ピラー部材を介してサイドシルの設置部に入力された衝撃荷重を上記フロアクロスメンバによって支持することができるため、車体側面部の強度を、より効果的に向上できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図4は、本発明の係る自動車の側部構造の実施形態を示している。この自動車は、車室内に運転席および助手席からなる前席シート1が配設されるとともに、その後方側に後席シート2が配設されたクーペタイプの車両である。上記自動車の車体側面には、前席シート1および後席シート2に着座する乗員が昇降する際に使用される大きな開口面積を備えた単一の側面開口部4が形成され、この側面開口部4は、スライドドア3により開閉されるようになっている。
【0017】
上記側面開口部4の車体後方側には、スライドドア3のベルトライン付近、つまりスライドドア3の上下方向中央部付近を支持するアッパレール5が車体の前後方向に延びるように設置されるとともに、上記側面開口部4の下辺部には、スライドドア3の下方部を支持するロアレール6が車体の前後方向に延びるように設置されている。そして、上記スライドドア3に設けられたアッパローラ部(図示せず)およびロアローラ部7が上記アッパレール5およびロアレール6に沿ってスライド自在に支持されている。
【0018】
上記ロアレール6は、車両の前方側でかつ車両の外方側に配設された第1ロアレール6Aと、この第1ロアレール6Aよりも車両の後方側でかつ車両の内方側に配設された第2ロアレール6Bとを有している。具体的には、図5に示すように、フロアパネル8の側辺部に沿って設置された左右一対のサイドシル9の下方に、上記第1,第2ロアレール6A,6Bが左右に並設された状態で車体の前後方向に延びるように設置されている。また、上記第1,第2ロアレール6Bの前方部は、その前端が車体の内方側に延びるように屈曲している。これにより、スライドドア3の開放操作時に、このスライドドア3が一旦、車体の外方側に移動した後、車体の後方側にスライドして上記側面開口部4の開放位置に変位するように構成されている。
【0019】
上記第1,第2ロアレール6A,6Bは、図6に示すように、側面に開口61,62が形成された断面コ字状のレール部材からなり、第1ロアレール6Aの開口61が車幅方向の外方側に形成されるとともに、第2ロアレール6Bの開口62が車幅方向の内方側に形成されている。上記ロアローラ部7は、図3および図5に示すように、スライドドア3の前端部下方に固定されて車体の内方側に突出するローラ保持ブラケット20と、このローラ保持ブラケット20の前端側に設置されて第1ロアレール6Aによりスライド自在に支持される第1ローラユニット30と、ローラ保持ブラケット20の内端側に設置されて第2ロアレール6Bによりスライド自在に支持される第2ローラユニット40とからなっている。
【0020】
上記ローラ保持ブラケット20は、図5に示すように、スライドドア3に固定される基部21と、この基部21から車体の前方側に突出する第1ローラ保持片22と、車体の内方側に突出する第2ローラ保持片23とを有している。上記ローラ保持ブラケット20の基部21には、図6に示すように、上方に隆起する締結部21aが形成され、この締結部21aを介してローラ保持ブラケット20の外側端部がスライドドア3の下部にボルト止めされている。また、上記第1,第2ローラ保持片22,23の上面には連結アーム22a,23aが立設され、この連結アーム22a,23aの先端部が上記開口61,62を介して第1,第2ロアレール6A,6B内にそれぞれ導入されている。なお、図5および図6において、符号10は、フロアパネル8の下面に接合されて車体の前後方向に延びるフロアメンバーであり、このフロアメンバー10に上記ロアレール6の前端部が支持されるようになっている。
【0021】
上記第1ローラユニット30は、図7に示すように、上記連結アーム22aに固定された円盤状のベース体31と、このベース体の31の上面および下面に固定された上下一対のローラ支持体32と、このローラ支持体32に支持された第1,第2水平ローラ33,34と、上記ローラ支持体32の上下両面に形成された凹部に回転自在に支持された上下一対のボール体35とを有している。そして、上記第1水平ローラ33がロアレール6の内方側壁面に当接するとともに、第2水平ローラ34がロアレール6Aの外方側壁面に当接して転動することにより、スライドドア3の水平方向における位置決めがされ、かつ、上記上下のボール体35がロアレール6Aの上下両面に当接して転動することにより、スライドドア3の上下方向における位置決めがされるように構成されている。
【0022】
上記第2ローラユニット40は、第1ローラユニット30と同様に構成されており、その具体的構成の説明は省略する。また、上記アッパレール5と、これに支持されるアッパローラ部とは、例えば鉛直軸を支点として回転自在に支持された一般的な水平ローラ等と、これを支持するコ字状断面のレール等とからなっている。
【0023】
上記スライドドア3は、図8〜図12に示すように、アウタパネル41と、インナパネル42とからなるドア本体43と、その上方部に設置されたドアサッシュ44と、ドア本体43内に設けられた昇降駆動機構により昇降駆動されるサイドウインドガラス45とを有し、上記スライドドア3の前後方向中間部には、ピラー部材46が設けられている。このピラー部材46は、略矩形の断面形状を有する角パイプ材等により形成され、上記側面開口部4の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール49の設置部から、サイドウインドガラス45の内方側を通って上記サイドシル9の設置部まで上下方向に延びるように配設されている。
【0024】
すなわち、上記ピラー部材46の上端部は、図10に示すように、ドアサッシュ44の下端部に接合され、このドアサッシュ44内には、基板50と前後一対の節板51とを有するとともに平面から見て断面コ字状に形成された補強部材52が、上記ピラー部材46の接合部に対応した位置に配設されることにより、上記補強部材52を介してピラー部材46の上端部がルーフサイドレール49の設置部に対向するように構成されている。このルーフサイドレール49内において、スライドドア3の閉止時に上記ピラー部材46の上端部が対向する位置には、上記補強部材52と同様に基板53と前後一対の節板54とを有する補強部材55が配設されている。さらに、左右のルーフサイドレール49の間であって、スライドドア3の閉止時に上記ピラー部材46の上端部が対向する位置には、車幅方向に延びる断面ハット状のルーフクロスメンバ56が設置されている。
【0025】
上記ピラー部材46の上方部は、サイドウインドガラス45の内側面との間に見通し用空間57が形成されるように、サイドウインドガラス45から所定距離だけ離間して配設されるとともに、車体の前面および後面から見て円弧状に湾曲して形成されている。また、上記ピラー部材46の下方部は、ドア本体43のアウタパネル41とインナパネル42との間に配設されるとともに、ピラー部材46の下端部がインナパネル42の下方部に位置する車内側壁面に接合されている。さらに、左右のサイドシル9の間であって、スライドドア3の閉止時に上記ピラー部材46の下端部が対向する位置には、車幅方向に延びる断面ハット状のフロアクロスメンバ80がフロアパネル8の上方に設置されている。
【0026】
上記ピラー部材46の上方部には、図10に示すように、前席シート1に着座した乗員を拘束するシートベルト装置58のショルダーアンカー59が取り付けられるとともに、ピラー部材46の下方部には、図11に示すように、上記シートベルト装置58のベルトリトラクタ63およびベルトラップアンカ64が取り付けられている。なお、図11において、符号65は、ドア本体43の内壁面を覆うドアトリム材であり、符号66,67は、ドア本体43内において車体の前後方向に延びるように設置されたインパクトバーである。また、上記ピラー部材46の上方部内面側には、図時を省略したピラートリム材が設置されている。
【0027】
上記のように車体の側面に形成された側面開口部4と、この側面開口部4の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドア3と、このスライドドア3のドア本体43よりも上方に設置されるサイドウインドガラス45と、上記側面開口部4の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール49と、上記側面開口部4の下辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシル9とを備えた自動車の側部構造において、上記スライドドア3の前後方向中間部に、ルーフサイドレール49の設置部からサイドウインドガラス45の内方側を通ってサイドシル9の設置部まで上下方向に延びるピラー部材46を配設したため、上記スライドドア3の閉止時における車体側面部の強度を上記ピラー部材46により充分に確保することができる。
【0028】
すなわち、上記スライドドア3の前後方向中間部にピラー部材46を設けるとともに、このピラー部材46がルーフサイドレール49の設置部からサイドウインドガラス45の内方側を通ってサイドシル9の設置部まで延びるようにピラー部材46の上下寸法を設定したため、前席シート1および後席シート2に着座する乗員が昇降するための大きな側面開口部4を車体の側面部に形成した場合においても、自動車の側突時等に、車体の側面部に入力される衝撃荷重を上記ピラー部材46により効果的に支持することができるとともに、上記衝撃荷重をピラー部材46からルーフサイドレール49およびサイドシル9に伝達して効果的に吸収することができる。
【0029】
そして、上記スライドドア3を開放した場合には、このスライドドア3とともにピラー部材46が車体の後方側に移動するため、センタピラーのない大きな開口面積を有する側面開口部4を形成することができる。したがって、乗員の乗り降りおよび車室内に対する荷物の出し入れ等を容易に行うことができる。
【0030】
しかも、上記ピラー部材46をサイドウインドガラス45の内方側に配設したため、このサイドウインドガラス45をスライドドア3の全体に亘り連続して設置することにより、車体のデザイン性を効果的に向上させることができるという利点がある。すなわち、上記スライドドア3の外方側に、上下方向に延びるピラー部材を配設した場合には、このピラー部材によってサイドウインドガラスが前後に分割されることになり、車体の側面視においてサイドウインドガラスが存在する領域であるいわゆるガラスエリアの一体感が損なわれることが避けられない。これに対して上記のようにピラー部材46をサイドウインドガラス45の内方側に配設した場合には、ガラスエリアの一体感が確実に得られるとともに、車体側面が平滑になって風切り音や空気抵抗を効果的に低減できるという利点がある。
【0031】
特に、上記実施形態に示すように、ピラー部材46の外側面とサイドウインドガラス45の内側面とを互いに離間させることにより、その間に見通し用空間57を形成した場合には、前席シート1に着座した乗員がサイドウインドガラス45を介して車体の後部外方側を視認する際および後席シート2に着座した乗員がサイドウインドガラス45を介して車体の前部外方側を視認する際に、上記見通し用空間57を介して視界を充分に確保することができる(矢印参照)とともに、上記ピラー部材46が車外から視認されるのを抑制して車体の外観が悪化するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0032】
また、上記実施形態では、ピラー部材46に、シートベルト装置58のショルダーアンカー59を設置したため、上記側面開口部4を前席シート1の後方側まで延設することにより後席シート2に対する乗員の乗降を容易に行い得るように構成した場合、つまりショルダーアンカーの設置部として一般的に利用されるクォータパネル等が前席シート1よりもかなり後方側に位置している場合においても、上記ショルダーアンカー59を適正位置に配設することにより、上記シートベルト装置58を介して前席シート1に着座した乗員を適正に保護できるという利点がある。
【0033】
なお、上記のようにシートベルト装置58のショルダーアンカー59をピラー部材46に設置した場合には、シートベルト装置58の使用状態でスライドドア3が開放されるのを防止するため、シートベルト装置58が使用状態にあるか否かを検知する検知手段と、シートベルト装置58による乗員の拘束状態を解放する操作が行われたことが検知されるまで、上記スライドドア3のロック機構をロック状態に維持する規制手段とを設けた構造とすることが好ましい。
【0034】
また、上記実施形態に示すように、左右のルーフサイドレール49間を車幅方向に延びるルーフクロスメンバ56を、スライドドア3の閉止時にピラー部材46の上端部が対向する位置に設置した場合には、自動車の側突時等に、上記ピラー部材46を介してルーフサイドレール49の設置部に入力された衝撃荷重を上記ルーフクロスメンバ56によって支持することができるため、車体側面部の強度を、より効果的に向上できるという利点がある。
【0035】
さらに、上記実施形態では、左右のサイドシル9間を車幅方向に延びるフロアクロスメンバ80を、スライドドア3の閉止時にピラー部材46の下端部が対向する位置に設置した場合には、自動車の側突時等に、上記ピラー部材46を介してサイドシル9の設置部に入力された衝撃荷重を上記フロアクロスメンバ80によって支持することができるため、車体側面部の強度を、より効果的に向上できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る自動車の側部構造の実施形態を示す側面図である。
【図2】スライドドアを開放した状態を示す側面図である。
【図3】本発明に係る自動車の側面構造の実施形態を示す平面図である。
【図4】スライドドアを開放した状態を示す平面図である。
【図5】ロアレールの具体的構成を示す斜視図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】ローラユニットの具体的構成を示す断面図である。
【図8】ピラー部材に設置状態を示す側面図である。
【図9】スライドドアの具体的構成を示す斜視図である。
【図10】スライドドア上部の具体的構成を示す断面図である。
【図11】スライドドア下部の具体的構成を示す断面図である。
【図12】本発明に係る自動車の側部構造の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
3 スライドドア
4 側面開口部
9 サイドシル
45 サイドウインドガラス
46 ピラー部材
49 ルーフサイドレール
56 ルーフクロスメンバ
57 見通し用空間
58 シートベルト装置
59 ショルダーアンカー
80 フロアクロスルンバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側面部に形成された側面開口部の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドアを有する自動車の側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロントドアの設置部に設けられた前部席乗員用の開口部と、リヤドアの設置部に設けられた後部席乗員用の開口部とが、これらのフロントドアとリヤドアとを開いたときに、仕切(センターピラー)のない一つの側面開口部を形成するように構成された車両のドア構造において、上記フロントドアの後端部またはリヤドアの前端部の一方または両方に、上下方向に延びるインパクトバー部材を設けることにより、センタピラーを設けることなく車体側面部の強度を充分に確保することが行われている。
【特許文献1】特開2003−252057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、前部席乗員用の開口部を覆うフロントドアと、後席部乗員用の開口部を覆うリヤドアとを備えた車体側部構造において、フロントドアの後辺部またはリヤドアの前辺部の一方またはその両方に、上下方向に延びるインパクトバーを設置するように構成した場合には、上記両ドアの閉止時における車体側面部の強度を充分に確保しつつ、これらのドアをそれぞれ開放状態とすることにより、仕切のない広い側面開口部を車体の側面に形成することができる。
【0004】
しかし、車体の側面部に形成された側面開口部の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位する単一のスライドドアを備えた自動車の側部構造では、このスライドドアの前辺部または後辺部に上記インパクトバーを設けたとしても、車体側面部の強度を充分に確保することが困難である。すなわち、車室内に設置された前席シートおよび後席シートに着座する乗員が昇降するための大きな側面開口部を車体の側面部に形成するとともに、この側面開口部を単一のスライドドアで閉止するように構成した場合、このスライドドアの面積が大きくなるとともに、そのドア本体の上方にサイドウインドガラスが設置されているため、自動車の側面衝突時等における衝撃を上記スライドドアだけでは充分に支持することが困難である等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で車体側面部の強度を充分に確保することができる自動車の側部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体の側面部に形成された側面開口部と、この側面開口部の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドアと、このスライドドアのドア本体よりも上方に設置されるサイドウインドガラスと、上記側面開口部の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、上記側面開口部の下辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシルとを備えた自動車の側部構造であって、上記スライドドアの前後方向中間部には、ルーフサイドレールの設置部からサイドウインドガラスの内方側を通ってサイドシルの設置部まで上下方向に延びるピラー部材を配設したものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車の側部構造において、上記ピラー部材の外側面とサイドウインドガラスの内側面とを互いに離間させることにより、その間に見通し用空間を形成したものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の自動車の側部構造において、上記ピラー部材に、シートベルト装置のショルダーアンカーを設置したものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車の側部構造において、左右のルーフサイドレール間を車幅方向に延びるルーフクロスメンバを、スライドドアの閉止時にピラー部材の上端部が対向する位置に設置したものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車の側部構造において、左右のサイドシル間を車幅方向に延びるフロアクロスメンバを、上記スライドドアの閉止時にピラー部材の下端部が対向する位置に設置したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、スライドドアの前後方向中間部にピラー部材を設けるとともに、このピラー部材をルーフサイドレールの設置部からサイドウインドガラスの内方側を通ってサイドシルの設置部まで上下方向に延びるように配設したため、前席シートおよび後席シートに着座する乗員が昇降するための大きな側面開口部を車体の側面部に形成した場合においても、自動車の側突時等に、車体の側面部に入力される衝撃荷重を上記ピラー部材により効果的に支持することができるとともに、上記衝撃荷重をピラー部材からルーフサイドレールおよびサイドシルに伝達して効果的に吸収することができる。しかも、上記スライドドアを開放した場合には、このスライドドアとともにピラー部材が車体の後方側に移動するため、センタピラーのない大きな開口を車体の側面部に形成することができ、乗員の乗り降りおよび車室内に対する荷物の出し入れ等を容易に行うことができるとともに、サイドウインドガラスをスライドドアの全体に亘り連続して設置できるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、ピラー部材の外側面とサイドウインドガラスの内側面とを互いに離間させることにより、その間に見通し用空間を形成したため、前席シートまたは後席シートに着座した乗員がサイドウインドガラスを介して車外を視認する際における視界を効果的に確保できるとともに、上記ピラー部材が車外から視認されるのを抑制して車体の外観が悪化するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、上記側面開口部を前席シートの後方側まで延設することにより後席シートに対する乗降を容易に行い得るように構成した場合においても、上記ショルダーアンカーを適正位置に配設することにより、上記シートベルト装置を介して前席シートに着座した乗員を適正に保護できるという利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、左右のルーフサイドレール間を車幅方向に延びるルーフクロスメンバを、スライドドアの閉止時にピラー部材の上端部が対向する位置に設置したため、自動車の側突時等に、上記ピラー部材を介してルーフサイドレールの設置部に入力された衝撃荷重を上記ルーフクロスメンバによって支持することができるため、車体側面部の強度を、より効果的に向上できるという利点がある。
【0015】
請求項5に係る発明では、左右のサイドシル間を車幅方向に延びるフロアクロスメンバを、上記スライドドアの閉止時にピラー部材の下端部が対向する位置に設置したため、自動車の側突時等に、上記ピラー部材を介してサイドシルの設置部に入力された衝撃荷重を上記フロアクロスメンバによって支持することができるため、車体側面部の強度を、より効果的に向上できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図4は、本発明の係る自動車の側部構造の実施形態を示している。この自動車は、車室内に運転席および助手席からなる前席シート1が配設されるとともに、その後方側に後席シート2が配設されたクーペタイプの車両である。上記自動車の車体側面には、前席シート1および後席シート2に着座する乗員が昇降する際に使用される大きな開口面積を備えた単一の側面開口部4が形成され、この側面開口部4は、スライドドア3により開閉されるようになっている。
【0017】
上記側面開口部4の車体後方側には、スライドドア3のベルトライン付近、つまりスライドドア3の上下方向中央部付近を支持するアッパレール5が車体の前後方向に延びるように設置されるとともに、上記側面開口部4の下辺部には、スライドドア3の下方部を支持するロアレール6が車体の前後方向に延びるように設置されている。そして、上記スライドドア3に設けられたアッパローラ部(図示せず)およびロアローラ部7が上記アッパレール5およびロアレール6に沿ってスライド自在に支持されている。
【0018】
上記ロアレール6は、車両の前方側でかつ車両の外方側に配設された第1ロアレール6Aと、この第1ロアレール6Aよりも車両の後方側でかつ車両の内方側に配設された第2ロアレール6Bとを有している。具体的には、図5に示すように、フロアパネル8の側辺部に沿って設置された左右一対のサイドシル9の下方に、上記第1,第2ロアレール6A,6Bが左右に並設された状態で車体の前後方向に延びるように設置されている。また、上記第1,第2ロアレール6Bの前方部は、その前端が車体の内方側に延びるように屈曲している。これにより、スライドドア3の開放操作時に、このスライドドア3が一旦、車体の外方側に移動した後、車体の後方側にスライドして上記側面開口部4の開放位置に変位するように構成されている。
【0019】
上記第1,第2ロアレール6A,6Bは、図6に示すように、側面に開口61,62が形成された断面コ字状のレール部材からなり、第1ロアレール6Aの開口61が車幅方向の外方側に形成されるとともに、第2ロアレール6Bの開口62が車幅方向の内方側に形成されている。上記ロアローラ部7は、図3および図5に示すように、スライドドア3の前端部下方に固定されて車体の内方側に突出するローラ保持ブラケット20と、このローラ保持ブラケット20の前端側に設置されて第1ロアレール6Aによりスライド自在に支持される第1ローラユニット30と、ローラ保持ブラケット20の内端側に設置されて第2ロアレール6Bによりスライド自在に支持される第2ローラユニット40とからなっている。
【0020】
上記ローラ保持ブラケット20は、図5に示すように、スライドドア3に固定される基部21と、この基部21から車体の前方側に突出する第1ローラ保持片22と、車体の内方側に突出する第2ローラ保持片23とを有している。上記ローラ保持ブラケット20の基部21には、図6に示すように、上方に隆起する締結部21aが形成され、この締結部21aを介してローラ保持ブラケット20の外側端部がスライドドア3の下部にボルト止めされている。また、上記第1,第2ローラ保持片22,23の上面には連結アーム22a,23aが立設され、この連結アーム22a,23aの先端部が上記開口61,62を介して第1,第2ロアレール6A,6B内にそれぞれ導入されている。なお、図5および図6において、符号10は、フロアパネル8の下面に接合されて車体の前後方向に延びるフロアメンバーであり、このフロアメンバー10に上記ロアレール6の前端部が支持されるようになっている。
【0021】
上記第1ローラユニット30は、図7に示すように、上記連結アーム22aに固定された円盤状のベース体31と、このベース体の31の上面および下面に固定された上下一対のローラ支持体32と、このローラ支持体32に支持された第1,第2水平ローラ33,34と、上記ローラ支持体32の上下両面に形成された凹部に回転自在に支持された上下一対のボール体35とを有している。そして、上記第1水平ローラ33がロアレール6の内方側壁面に当接するとともに、第2水平ローラ34がロアレール6Aの外方側壁面に当接して転動することにより、スライドドア3の水平方向における位置決めがされ、かつ、上記上下のボール体35がロアレール6Aの上下両面に当接して転動することにより、スライドドア3の上下方向における位置決めがされるように構成されている。
【0022】
上記第2ローラユニット40は、第1ローラユニット30と同様に構成されており、その具体的構成の説明は省略する。また、上記アッパレール5と、これに支持されるアッパローラ部とは、例えば鉛直軸を支点として回転自在に支持された一般的な水平ローラ等と、これを支持するコ字状断面のレール等とからなっている。
【0023】
上記スライドドア3は、図8〜図12に示すように、アウタパネル41と、インナパネル42とからなるドア本体43と、その上方部に設置されたドアサッシュ44と、ドア本体43内に設けられた昇降駆動機構により昇降駆動されるサイドウインドガラス45とを有し、上記スライドドア3の前後方向中間部には、ピラー部材46が設けられている。このピラー部材46は、略矩形の断面形状を有する角パイプ材等により形成され、上記側面開口部4の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール49の設置部から、サイドウインドガラス45の内方側を通って上記サイドシル9の設置部まで上下方向に延びるように配設されている。
【0024】
すなわち、上記ピラー部材46の上端部は、図10に示すように、ドアサッシュ44の下端部に接合され、このドアサッシュ44内には、基板50と前後一対の節板51とを有するとともに平面から見て断面コ字状に形成された補強部材52が、上記ピラー部材46の接合部に対応した位置に配設されることにより、上記補強部材52を介してピラー部材46の上端部がルーフサイドレール49の設置部に対向するように構成されている。このルーフサイドレール49内において、スライドドア3の閉止時に上記ピラー部材46の上端部が対向する位置には、上記補強部材52と同様に基板53と前後一対の節板54とを有する補強部材55が配設されている。さらに、左右のルーフサイドレール49の間であって、スライドドア3の閉止時に上記ピラー部材46の上端部が対向する位置には、車幅方向に延びる断面ハット状のルーフクロスメンバ56が設置されている。
【0025】
上記ピラー部材46の上方部は、サイドウインドガラス45の内側面との間に見通し用空間57が形成されるように、サイドウインドガラス45から所定距離だけ離間して配設されるとともに、車体の前面および後面から見て円弧状に湾曲して形成されている。また、上記ピラー部材46の下方部は、ドア本体43のアウタパネル41とインナパネル42との間に配設されるとともに、ピラー部材46の下端部がインナパネル42の下方部に位置する車内側壁面に接合されている。さらに、左右のサイドシル9の間であって、スライドドア3の閉止時に上記ピラー部材46の下端部が対向する位置には、車幅方向に延びる断面ハット状のフロアクロスメンバ80がフロアパネル8の上方に設置されている。
【0026】
上記ピラー部材46の上方部には、図10に示すように、前席シート1に着座した乗員を拘束するシートベルト装置58のショルダーアンカー59が取り付けられるとともに、ピラー部材46の下方部には、図11に示すように、上記シートベルト装置58のベルトリトラクタ63およびベルトラップアンカ64が取り付けられている。なお、図11において、符号65は、ドア本体43の内壁面を覆うドアトリム材であり、符号66,67は、ドア本体43内において車体の前後方向に延びるように設置されたインパクトバーである。また、上記ピラー部材46の上方部内面側には、図時を省略したピラートリム材が設置されている。
【0027】
上記のように車体の側面に形成された側面開口部4と、この側面開口部4の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドア3と、このスライドドア3のドア本体43よりも上方に設置されるサイドウインドガラス45と、上記側面開口部4の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール49と、上記側面開口部4の下辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシル9とを備えた自動車の側部構造において、上記スライドドア3の前後方向中間部に、ルーフサイドレール49の設置部からサイドウインドガラス45の内方側を通ってサイドシル9の設置部まで上下方向に延びるピラー部材46を配設したため、上記スライドドア3の閉止時における車体側面部の強度を上記ピラー部材46により充分に確保することができる。
【0028】
すなわち、上記スライドドア3の前後方向中間部にピラー部材46を設けるとともに、このピラー部材46がルーフサイドレール49の設置部からサイドウインドガラス45の内方側を通ってサイドシル9の設置部まで延びるようにピラー部材46の上下寸法を設定したため、前席シート1および後席シート2に着座する乗員が昇降するための大きな側面開口部4を車体の側面部に形成した場合においても、自動車の側突時等に、車体の側面部に入力される衝撃荷重を上記ピラー部材46により効果的に支持することができるとともに、上記衝撃荷重をピラー部材46からルーフサイドレール49およびサイドシル9に伝達して効果的に吸収することができる。
【0029】
そして、上記スライドドア3を開放した場合には、このスライドドア3とともにピラー部材46が車体の後方側に移動するため、センタピラーのない大きな開口面積を有する側面開口部4を形成することができる。したがって、乗員の乗り降りおよび車室内に対する荷物の出し入れ等を容易に行うことができる。
【0030】
しかも、上記ピラー部材46をサイドウインドガラス45の内方側に配設したため、このサイドウインドガラス45をスライドドア3の全体に亘り連続して設置することにより、車体のデザイン性を効果的に向上させることができるという利点がある。すなわち、上記スライドドア3の外方側に、上下方向に延びるピラー部材を配設した場合には、このピラー部材によってサイドウインドガラスが前後に分割されることになり、車体の側面視においてサイドウインドガラスが存在する領域であるいわゆるガラスエリアの一体感が損なわれることが避けられない。これに対して上記のようにピラー部材46をサイドウインドガラス45の内方側に配設した場合には、ガラスエリアの一体感が確実に得られるとともに、車体側面が平滑になって風切り音や空気抵抗を効果的に低減できるという利点がある。
【0031】
特に、上記実施形態に示すように、ピラー部材46の外側面とサイドウインドガラス45の内側面とを互いに離間させることにより、その間に見通し用空間57を形成した場合には、前席シート1に着座した乗員がサイドウインドガラス45を介して車体の後部外方側を視認する際および後席シート2に着座した乗員がサイドウインドガラス45を介して車体の前部外方側を視認する際に、上記見通し用空間57を介して視界を充分に確保することができる(矢印参照)とともに、上記ピラー部材46が車外から視認されるのを抑制して車体の外観が悪化するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0032】
また、上記実施形態では、ピラー部材46に、シートベルト装置58のショルダーアンカー59を設置したため、上記側面開口部4を前席シート1の後方側まで延設することにより後席シート2に対する乗員の乗降を容易に行い得るように構成した場合、つまりショルダーアンカーの設置部として一般的に利用されるクォータパネル等が前席シート1よりもかなり後方側に位置している場合においても、上記ショルダーアンカー59を適正位置に配設することにより、上記シートベルト装置58を介して前席シート1に着座した乗員を適正に保護できるという利点がある。
【0033】
なお、上記のようにシートベルト装置58のショルダーアンカー59をピラー部材46に設置した場合には、シートベルト装置58の使用状態でスライドドア3が開放されるのを防止するため、シートベルト装置58が使用状態にあるか否かを検知する検知手段と、シートベルト装置58による乗員の拘束状態を解放する操作が行われたことが検知されるまで、上記スライドドア3のロック機構をロック状態に維持する規制手段とを設けた構造とすることが好ましい。
【0034】
また、上記実施形態に示すように、左右のルーフサイドレール49間を車幅方向に延びるルーフクロスメンバ56を、スライドドア3の閉止時にピラー部材46の上端部が対向する位置に設置した場合には、自動車の側突時等に、上記ピラー部材46を介してルーフサイドレール49の設置部に入力された衝撃荷重を上記ルーフクロスメンバ56によって支持することができるため、車体側面部の強度を、より効果的に向上できるという利点がある。
【0035】
さらに、上記実施形態では、左右のサイドシル9間を車幅方向に延びるフロアクロスメンバ80を、スライドドア3の閉止時にピラー部材46の下端部が対向する位置に設置した場合には、自動車の側突時等に、上記ピラー部材46を介してサイドシル9の設置部に入力された衝撃荷重を上記フロアクロスメンバ80によって支持することができるため、車体側面部の強度を、より効果的に向上できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る自動車の側部構造の実施形態を示す側面図である。
【図2】スライドドアを開放した状態を示す側面図である。
【図3】本発明に係る自動車の側面構造の実施形態を示す平面図である。
【図4】スライドドアを開放した状態を示す平面図である。
【図5】ロアレールの具体的構成を示す斜視図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】ローラユニットの具体的構成を示す断面図である。
【図8】ピラー部材に設置状態を示す側面図である。
【図9】スライドドアの具体的構成を示す斜視図である。
【図10】スライドドア上部の具体的構成を示す断面図である。
【図11】スライドドア下部の具体的構成を示す断面図である。
【図12】本発明に係る自動車の側部構造の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
3 スライドドア
4 側面開口部
9 サイドシル
45 サイドウインドガラス
46 ピラー部材
49 ルーフサイドレール
56 ルーフクロスメンバ
57 見通し用空間
58 シートベルト装置
59 ショルダーアンカー
80 フロアクロスルンバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面部に形成された側面開口部と、この側面開口部の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドアと、このスライドドアのドア本体よりも上方に設置されるサイドウインドガラスと、上記側面開口部の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、上記側面開口部の下辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシルとを備えた自動車の側部構造であって、上記スライドドアの前後方向中間部には、ルーフサイドレールの設置部からサイドウインドガラスの内方側を通ってサイドシルの設置部まで上下方向に延びるピラー部材を配設したことを特徴とする自動車の側部構造。
【請求項2】
上記ピラー部材の外側面とサイドウインドガラスの内側面とを互いに離間させることにより、その間に見通し用空間を形成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車の側部構造。
【請求項3】
上記ピラー部材に、シートベルト装置のショルダーアンカーを設置したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の側部構造。
【請求項4】
左右のルーフサイドレール間を車幅方向に延びるルーフクロスメンバを、スライドドアの閉止時にピラー部材の上端部が対向する位置に設置したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車の側部構造。
【請求項5】
左右のサイドシル間を車幅方向に延びるフロアクロスメンバを、上記スライドドアの閉止時にピラー部材の下端部が対向する位置に設置したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車の側部構造。
【請求項1】
車体の側面部に形成された側面開口部と、この側面開口部の閉止位置から前後にスライドして開放位置に変位するスライドドアと、このスライドドアのドア本体よりも上方に設置されるサイドウインドガラスと、上記側面開口部の上辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、上記側面開口部の下辺部に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシルとを備えた自動車の側部構造であって、上記スライドドアの前後方向中間部には、ルーフサイドレールの設置部からサイドウインドガラスの内方側を通ってサイドシルの設置部まで上下方向に延びるピラー部材を配設したことを特徴とする自動車の側部構造。
【請求項2】
上記ピラー部材の外側面とサイドウインドガラスの内側面とを互いに離間させることにより、その間に見通し用空間を形成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車の側部構造。
【請求項3】
上記ピラー部材に、シートベルト装置のショルダーアンカーを設置したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の側部構造。
【請求項4】
左右のルーフサイドレール間を車幅方向に延びるルーフクロスメンバを、スライドドアの閉止時にピラー部材の上端部が対向する位置に設置したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車の側部構造。
【請求項5】
左右のサイドシル間を車幅方向に延びるフロアクロスメンバを、上記スライドドアの閉止時にピラー部材の下端部が対向する位置に設置したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車の側部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−161076(P2007−161076A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359496(P2005−359496)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]