説明

自動車の車体構造

【課題】溶接適合要件を満たして、レインフォースメント、ガセットを、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームに接合し、これらレインフォースメント、ガセットにより、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームを補強して車体剛性を確保することができる、自動車の車体構造を提供する。
【解決手段】レインフォースメント10の下部フランジ部30をフロアパネル1、第1ボディーフレーム8の上端フランジ部8aに重畳的に接合するとともに第1フロアクロスメンバ8の下端フランジ部8a、フロアパネル1に重畳的に接合し、レインフォースメント10の縦壁部31を第1フロアクロスメンバ8の前壁8bに接合し、ガセット11を第1フロアクロスメンバ8の下端フランジ部8a、フロアパネル1に重畳的に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体剛性を高め得るように構成した自動車の車体構造に関するものである。
【0002】
従来、自動車の車体構造において、床面を形成するフロアパネルと、フロアパネルの前端から後方へ延びるようにフロアパネルの下面側に配設され、フロアパネルの下面に1対の上端フランジ部が接合されて、フロアパネルとで閉断面を形成する断面逆ハット状の1対のサイドフレームと、フロアパネルの前端よりも後方において車幅方向に延びるようにフロアパネルの上面側に配設され、フロアパネルの上面に1対の下端フランジ部が接合されて、フロアパネルとで閉断面を形成する断面ハット状のフロアクロスメンバを備えたものが周知である。
【0003】
上記車体の接合構造においてはスポット溶接が一般的であり、上記従来の構造では、フロアクロスメンバの直下においてフロアパネルとサイドフレームとを接合させることは困難、もしくは、接合させたとしてもフロアクロスメンバの上壁に開口を設け片側について1点をスポット溶接できるに過ぎず、この部分における接合強度に不安が残る。そこで、フロアパネル上にフロアクロスメンバの前部からフロアクロスメンバに亙って補強板を設けることにより接合強度不足を補う構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−192978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、フロアクロスメンバ部分において、サイドフレーム、フロアパネル、フロアクロスメンバ、補強板を4枚重ねでスポット溶接されるが、この4枚重ねのスポット溶接は技術的に難しく、被溶接物を重ね合わせて溶接を行う場合の溶接適合要件は、被溶接物の重ね合わせ枚数が2枚又は3枚であり、補強板は、フロアクロスメンバ、フロアパネル、サイドフレームの重なった部位に配設されることになるため、溶接適合要件を満たして補強部材をフロアクロスメンバ、フロアパネル、サイドフレームに接合することは難しい。
【0005】
また、本願出願人は、自動車の空調ユニットに接続された空調ダクトをフロントシートの下側に配設し、リヤシート側に空調ダクトの吹出口を向けてエアが吹き出すようにした構造において、フロントシートの下側に位置するフロアクロスメンバの前壁と後壁に開口部を夫々形成し、これら開口部に空調ダクトを挿設するものを実用化しつつある。
【0006】
前記のように、フロアクロスメンバの前壁と後壁に空調ダクトを挿設する開口部を夫々形成すると、フロアクロスメンバの強度が低下し、車体剛性が低下するため、フロアクロスメンバ等を補強する必要があるが、特許文献1のように、補強板をフロアクロスメンバのフランジ部にのみ接合させる構造では十分な補強にはならない。
【0007】
本発明の目的は、溶接適合要件を満たして、レインフォースメント、ガセットを、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームに接合し、これらレインフォースメント、ガセットにより、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームを補強して車体剛性を確保することができ、特に、フロアクロスメンバに空調ダクトを挿設する開口部を形成した場合等、フロアクロスメンバの強度が低くなる場合に有効になる、自動車の車体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の自動車の車体構造は、自動車の車体構造において、床面を形成するフロアパネルと、前記フロアパネルの前端から後方へ延びるようにフロアパネルの下面側に配設され、フロアパネルの下面に上端フランジ部が接合されて、フロアパネルとで閉断面を形成する断面逆ハット状のボディーフレームと、前記フロアパネルの前端よりも後方において車幅方向に延びるようにフロアパネルの上面側に配設され、フロアパネルの上面に下端フランジ部が接合されて、フロアパネルとで閉断面を形成する断面ハット状のフロアクロスメンバと、前記フロアパネルの上面側に配設され、前部がフロアパネル及びボディーフレームの上端フランジ部に重畳的に接合されるとともに後部がボディーフレームの車幅方向両側においてフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合される水平な下部フランジ部と、この下部フランジ部の後端から上方へ延びてフロアクロスメンバの前壁に接合される縦壁部とを有するレインフォースメントと、前記フロアクロスメンバの下方におけるフロアパネルとボディーフレームとの間にボディーフレームの上端開口部を覆うように配設され、前端部分がフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合されるガセットとを備えたことを特徴とする。
【0009】
この自動車の車体構造では、ボディーフレームが、フロアパネルの下面側にフロアパネルの前端から後方へ延びるように配設され、そのボディーフレームの上端フランジ部がフロアパネルの下面に接合されて、フロアパネルとで閉断面を形成し、フロアクロスメンバが、フロアパネルの上面側にフロアパネルの前端よりも後方において車幅方向に延びるように配設され、そのフロアクロスメンバの下端フランジ部がフロアパネルの上面に接合されて、フロアパネルとで閉断面を形成している。
【0010】
レインフォースメントがフロアパネルの上面側に配設され、レインフォースメントは水平な下部フランジ部と下部フランジ部の後端から上方へ延びる縦壁部とを有し、下部フランジ部の前部がフロアパネル及びボディーフレームの上端フランジ部に重畳的に接合され、下部フランジ部の後部がボディーフレームの車幅方向両側においてフロアパネル及びフロアクロスメンバの下端フランジ部に重畳的に接合され、縦壁部がフロアクロスメンバの前壁に接合される。
【0011】
ガセットがフロアクロスメンバの下方におけるフロアパネルとボディーフレームとの間にボディーフレームの上端開口部を覆うように配設され、ガセットの前端部分がフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合される。こうして、レインフォースメント、ガセットが溶接適合要件を満たして、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームに接合され、これらレインフォースメント、ガセットにより、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームが補強されて車体剛性が確保される。
【0012】
請求項1の発明には次の構成を採用可能である。
前記レインフォースメントの縦壁部がフロアクロスメンバの上壁の高さ位置まで延ばされ、縦壁の上端から後方へ延びてフロアクロスメンバの上壁部に接合される水平な上部フランジ部を設ける(請求項2)。前記レインフォースメントは、その下部フランジ部と縦壁部とに亙って形成され且つフロアパネルとフロアクロスメンバの前壁とで閉断面を形成する傾斜部を有し、この傾斜部が下部フランジ部の後端部分と縦壁部の下端部分に一体的に繋がっている(請求項3)。前記フロアクロスメンバの前壁と後壁及びレインフォースメントの縦壁部に、空調ダクトが挿設される開口部が夫々形成され、前記レインフォースメントの下部フランジ部に、空調ダクトが載置支持される棚部が形成される(請求項4)。前記ガセットの後端部分がフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合されるとともに、ガセットの車幅方向両端部分がフロアパネル及びボディーフレームの上端フランジ部に重畳的に接合され、このガセットとフロアパネルとで閉断面が形成される(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の自動車の車体構造によれば、前記のように、フロアパネル、ボディーフレーム、フロアクロスメンバを備え、特に、フロアパネルの上面側に配設され、前部がフロアパネル及びボディーフレームの上端フランジ部に重畳的に接合されるとともに後部がボディーフレームの車幅方向両側においてフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合される水平な下部フランジ部と、この下部フランジ部の後端から上方へ延びてフロアクロスメンバの前壁に接合される縦壁部とを有するレインフォースメントと、フロアクロスメンバの下方におけるフロアパネルとボディーフレームとの間にボディーフレームの上端開口部を覆うように配設され、前端部分がフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合されるガセットとを備えたので、溶接適合要件を満たして、レインフォースメント、ガセットを、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームに確実に接合し、これらレインフォースメント、ガセットにより、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームを補強して車体剛性を確保でき、フロアクロスメンバ付近のボディーフレームの接合強度を高めて、衝突時のボディーフレームのフロアパネルからの剥離を抑制でき、フロアクロスメンバに空調ダクトを挿設する開口部を形成した場合等、フロアクロスメンバの強度が低くなる場合に有効になる。
【0014】
請求項2の自動車の車体構造によれば、レインフォースメントの縦壁部をフロアクロスメンバの上壁の高さ位置まで延ばし、縦壁部の上端から後方へ延びてフロアクロスメンバの上壁に接合される水平な上部フランジ部を設けたので、フロアクロスメンバを確実に補強し、衝突時にボディーフレームが下方へ変形しようとする引っ張り荷重に対して車体剛性を高めることができる。
【0015】
請求項3の自動車の車体構造によれば、レインフォースメントは、その下部フランジ部と縦壁部とに亙って形成され且つフロアパネルとフロアクロスメンバの前壁とで閉断面を形成する傾斜部を有し、この傾斜部が下部フランジ部の後端部分と縦壁部の下端部分に一体的に繋がっているので、レインフォースメント自体の剛性を高め、衝突時にフロアクロスメンバの前端部を起点とするボディーフレームのフロアパネルからの剥離を確実に抑制することができる。
【0016】
請求項4の自動車の車体構造によれば、フロアクロスメンバの前壁と後壁及びレインフォースメントの縦壁部に、空調ダクトが挿設される開口部を夫々形成し、レインフォースメントの下部フランジ部に、空調ダクトが載置支持される棚部を形成したので、フロアクロスメンバの強度が低下するが、レインフォースメント、ガセットにより、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームを補強して車体剛性を確保でき、レインフォースメントの下部フランジ部に形成された棚部により、下部フランジ部の剛性を高めると共に、空調ダクトのガタツキを防止することができる。
【0017】
請求項5の自動車の車体構造によれば、ガセットの後端部分をフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合するとともに、ガセットの車幅方向両端部分をフロアパネル及びボディーフレームの上端フランジ部に重畳的に接合し、このガセットとフロアパネルとで閉断面を形成したので、ガセットにより、フロアクロスメンバ、フロアパネル、ボディーフレームを確実に補強して車体剛性を確実に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の自動車の車体構造は、特に、フロアパネルの上面側に配設され、前部がフロアパネル及びボディーフレームの上端フランジ部に重畳的に接合されるとともに後部がボディーフレームの車幅方向両側においてフロアパネル及びフロアクロスメンバの下端フランジ部に重畳的に接合される水平な下部フランジ部と、この下部フランジ部の後端から上方へ延びてフロアクロスメンバの前壁に接合される縦壁部とを有するレインフォースメントと、フロアクロスメンバの下方におけるフロアパネルとボディーフレームとの間にボディーフレームの上端開口部を覆うように配設され、前端部分がフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合されるガセットとを備えている。
【実施例】
【0019】
図1〜図6に示すように、自動車の車体構造BSは、フロアパネル1、左右1対のサイドシル2、ダッシュパネル3、左右1対のフロントサイドフレーム4、左右1対のサイドフレーム5(ボディーフレーム5)、左右1対の縦フレーム6、トンネル補強メンバ7、第1フロアクロスメンバ8、第2フロアクロスメンバ9、左右1対のレインフォースメント10、左右1対のガセット12、等を備えている。
【0020】
フロアパネル1は、床面を形成し、フロアパネル1の車幅方向中央部分に車両前後方向に延びる上方凸状のトンネル部1aが形成されている。左右1対のサイドシル2は、車両前後方向に延び、これらサイドシル2にフロアパネル1の左右両端部が接合されている。ダッシュパネル3は、車室とその前方のエンジンルームとの間を仕切り、ダッシュパネル3の下端部にフロアパネル1の前端部が接合されている。
【0021】
左右1対のフロントサイドフレーム4は、車両前後方向に延び、その大部分がエンジンルーム側にフロアパネル1よりも高い位置に配設され、その後端部分がダッシュパネル3に沿って下方且つ後方へ湾曲し、フロアパネル1の前端部分の下面側に配設されて、断面逆ハット状に形成され、フロアパネル1の下面に接合されている。フロントサイドフレーム4の後端部分とフロアパネル1とで閉断面が形成されている。
【0022】
左右1対のサイドフレーム5は、その前端部が1対のフロントサイドフレーム4に接合されて、1対のフロントサイドフレーム4(フロアパネル1の前端)から後方へ延び、フロアパネル1の下面側に配設されて、断面逆ハット状に形成され、その1対の上端フランジ部5aがフロアパネル1の下面に接合されている。サイドフレーム5とフロアパネル1とで閉断面が形成されている。
【0023】
左右1対の縦フレーム6は、車両前後方向に延び、第1フロアクロスメンバ8の前側においてフロアパネル1の上面側に配設されて、フロアパネル1のうち1対のサイドフレーム5が接合された部分の上面に接合され、縦フレーム6の後端部は、第1フロアクロスメンバ8から前方へ所定間隔空けて位置している。
【0024】
トンネル補強メンバ7は、トンネル部1aに沿って車両前後方向に延び、トンネル部1aの上面側に配設されて、断面門形に形成され、トンネル補強メンバ7の左右両側壁部の下端部分がトンネル部1aの側壁部に接合されている。トンネル補強メンバ7とトンネル部1aとで閉断面が形成されている。
【0025】
第1フロアクロスメンバ8は、フロアパネル1の前端よりも後方においてフロアパネル1の上面側に配設されて、断面ハット状に形成され、その1対の下端フランジ部8aがフロアパネル1の上面に接合されるとともに、第1フロアクロスメンバ8の左右両端部が1対のサイドシル2に接合されている。第1フロアクロスメンバ8とフロアパネル1とで閉断面が形成されている。第1フロアクロスメンバ8は左右1対のメンバ部材20に分割され、各メンバ部材20の車幅方向外端部がサイドシル2に接合され、車幅方向内端部がトンネル部1aの側壁部に接合されている。
【0026】
第2フロアクロスメンバ9は、第1フロアクロスメンバ8よりも後方においてフロアパネル1の上面側に配設されて、断面ハット状に形成され、その1対の下端フランジ部9aがフロアパネル1の上面に接合されるとともに、第2フロアクロスメンバ9の左右両端部が1対のサイドシル2に接合されている。第2フロアクロスメンバ9とフロアパネル1とで閉断面が形成されている。第2フロアクロスメンバ9は左右1対のメンバ部材25に分割され、各メンバ部材25の車幅方向外端部がサイドシル2に接合され、車幅方向内端部がフランジ部材26を介してトンネル部1aの側壁部に接合されている。
【0027】
第1,第2フロアクロスメンバ8,9の右側のメンバ部材20,25に、右側のフロントシート15の1対の前脚部及び後脚部が載置状に連結され、第1,第2フロアクロスメンバ8,9の左側のメンバ部材20,25に、左側のフロントシート15の1対の前脚部及び後脚部が載置状に連結されている。第1フロアクロスメンバ8の左右両側部分の略鉛直な前壁8bと後壁8cのうち、1対のサイドフレーム5の上側に位置する部分に、左右1対の合成樹脂製の空調ダクト16が前後貫通状に挿設される左右方向に長い長円形の開口部8ba,8caが夫々形成されている。
【0028】
図2〜図5、図7〜図9に示すように、左右1対のレインフォースメント10は、第1フロアクロスメンバ8の前側の左右の開口部8ba付近におけるフロアパネル1の上面側に配設されている。各レインフォースメント10は、サイドフレーム5よりも大きな左右方向幅を有し、水平な下部フランジ部30と、下部フランジ部30の後端から上方へ延びる縦壁部31と、縦壁部31の上端から後方へ延びる上部フランジ部32とを有し、縦壁部31と下部フランジ部30に、空調ダクト16が挿設される、第1フロアクロスメンバ8の開口部8ba,8caよりも大きな開口部33が形成されている。尚、図5において一点鎖線で示した部材は、その断面位置よりも後方に見えるものである。
【0029】
下部フランジ部30は、第1フロアクロスメンバ8の前側の下端フランジ部8a及びその前側のフロアパネル1の上面側に配設され、下部フランジ部30の前部がフロアパネル1及びサイドフレーム5の1対の上端フランジ部5aにスポット溶接により重畳的に接合され、下部フランジ部30の後部がサイドフレーム5の車幅方向両側において第1フロアクロスメンバ8の1対の下端フランジ部8a及びフロアパネル1にスポット溶接により重畳的に接合されている。
【0030】
下部フランジ部30は平面視にて前方へ膨らむ門形に形成され、下部フランジ部30の内側縁部分に、その外側部分に対して上方へ膨らむ平面視門形の棚部34が形成され、この棚部34に空調ダクト16が載置支持され、下部フランジ部30の棚部34よりも前側部分の左右両端部分が、フロアパネル1及びサイドフレーム5の1対の上端フランジ部5aに重畳的に接合され、下部フランジ部30の棚部34の左右両側部分が第1フロアクロスメンバ8の1対の下端フランジ部8a及びフロアパネル1に重畳的に接合されている。
【0031】
縦壁部31は、下部フランジ部30に繋がる左右1対のサイド縦壁部31aと、これらサイド縦壁部31aに繋がる上縦壁部31bとを有し、第1フロアクロスメンバ8の上壁8dの高さ位置まで延ばされ、1対のサイド縦壁部31aが第1フロアクロスメンバ8の前壁8bにスポット溶接により接合され、上縦壁部31bに繋がる上部フランジ部32が第1フロアクロスメンバ8の上壁8dの前部にスポット溶接により接合されている。
【0032】
また、レインフォースメント10は、その下部フランジ部30と縦壁部31(1対のサイド縦壁部31a)とに亙って形成され且つフロアパネル1と第1フロアクロスメンバ8の前壁8bとで閉断面を形成する左右1対の傾斜部35を有し、これら傾斜部35が下部フランジ部30の後端部分と縦壁部31の下端部分に一体的に繋がっている。
【0033】
図4〜図6、図10に示すように、左右1対のガセット11は、第1フロアクロスメンバ8の下方におけるフロアパネル1と1対のサイドフレーム5との間にサイドフレーム5の上端開口部を覆うように配設されている。各ガセット11は、第1フロアクロスメンバ8の前後幅と略同じ前後長を有するとともに、サイドフレーム5の左右幅と略同じ左右長を有する、平面視にて幅広十字形状に形成されている。
【0034】
ガセット11は、矩形中央部40と、矩形中央部40の前後両側に張り出す前後1対の張出部41と、これら張出部41に上方膨出状に夫々形成された前後1対の膨出部42と、矩形中央部40の左右両側に且つ少し上方位置に延びる左右1対のフランジ部43とを有し、1対のフランジ部43がフロアパネル1とサイドフレーム5の1対の上端フランジ部5aとで挟持された状態で、1対の膨出部42が第1フロアクロスメンバ8の1対の下端フランジ部8aの下側のフロアパネル1の下面に当接し、矩形中央部40がフロアパネル1から下方へ所定間隔空けて配置されている。
【0035】
そして、ガセット11の前端部分及び後端部分の1対の膨出部42が、第1フロアクロスメンバ8の1対の下端フランジ部8a及びフロアパネル1にスポット溶接により重畳的に接合され、ガセット11の車幅方向両端部分の1対のフランジ部43がフロアパネル1及びサイドフレーム5の1対の上端フランジ部5aにスポット溶接により重畳的に接合され、このガセット11とフロアパネル1とで閉断面が形成されている。
【0036】
ここで、図1、図2に示すように、フロアパネル1の前端と第1フロアクロスメンバ8との間におけるトンネル部1aの上側に、空調ユニット(図示略)に接続される空調ダクト分岐部材17が配設され、この空調ダクト分岐部材17から左右1対のダクト部材18がトンネル部1aの左右両側において下方へ延び、これらダクト部材19に1対の空調ダクト16の上流側端部が接続されている。
【0037】
各空調ダクト16は、ダクト部材18からトンネル部1aに沿って後方へ延び、第1フロアクロスメンバ8に沿って車幅方向外側へ向きを変えて延び、サイドフレーム5の上側において後方へ向きを変えて延び、レインフォースメント10の開口部33及び第1フロアクロスメンバ8の開口部8ba,8caを通るように配設され、リヤシート側に空調ダクト16の吹出口16aを向けてエア(温風や冷風)が吹き出すようにしてある。尚、空調ダクト16のうちレインフォースメント10の棚部34に載置支持された部分から後方へ固定板16bが延び、その固定板16bの前端部がビス等の固定金具16cにより縦フレーム6の後端部に固定されている。
【0038】
ここで、レインフォースメント10、ガセット11等の組み付けについて説明すると、1対のレインフォースメント10の縦壁部31を第1フロアクロスメンバ8の前壁8bに接合すると共に、上部フランジ部32を第1フロアクロスメンバ8の上壁8dに接合して、第1フロアクロスメンバ8に1対のレインフォースメント10を取り付けてサブアッシー化しておく。そして、1対のサイドフレーム5上に1対のガセット11を載置し、必要に応じて部分的に溶接し固定した状態で、1対のサイドフレーム5上にフロアパネル1を載置し、フロアパネル1上に第1フロアクロスメンバ8を載置する。
【0039】
そして、ガセット11の1対の膨出部42を、第1フロアクロスメンバ8の1対の下端フランジ部8a及びフロアパネル1にスポット溶接により重畳的に接合し、その際、フロアパネル1に下側から当接する溶接ガンがサイドフレーム5と干渉しないように、サイドフレーム5の下壁5bに溶接ガン通過穴5cが形成されている(図5参照)。また、ガセット11の1対のフランジ部43を、フロアパネル1及びサイドフレーム5の1対の上端フランジ部5aにスポット溶接により重畳的に接合し、その際、フロアパネル1に上側から当接する溶接ガンが第1フロアクロスメンバ8と干渉しないように、第1フロアクロスメンバ8の上壁8dに溶接ガン通過穴8eが形成されている(図1、図2参照)。
【0040】
以上のスポット溶接以外に、必要な箇所にスポット溶接を行って、フロアパネル1、1対のサイドシル2、ダッシュパネル3、1対のフロントサイドフレーム4、1対のサイドフレーム5、左右1対の縦フレーム6、トンネル補強メンバ7、第1フロアクロスメンバ8、第2フロアクロスメンバ9、1対のレインフォースメント10、1対のガセット12等が組み付けられ、自動車の車体構造BSが構成される。
【0041】
以上説明した自動車の車体構造BSによれば、特に、フロアパネル1の上面側に配設され、前部がフロアパネル1及びサイドフレーム5の上端フランジ部5aに重畳的に接合されるとともに後部がサイドフレーム5の車幅方向両側において第1フロアクロスメンバ8の下端フランジ部8a及びフロアパネル1に重畳的に接合される水平な下部フランジ部30と、この下部フランジ部30の後端から上方へ延びて第1フロアクロスメンバ8の前壁8bに接合される縦壁部31とを有するレインフォースメント10と、第1フロアクロスメンバ8の下方におけるフロアパネル1とサイドフレーム5との間にサイドフレーム5の上端開口部を覆うように配設され、前端部分が第1フロアクロスメンバ8の下端フランジ部8a及びフロアパネル1に重畳的に接合されるガセット11とを備えた。
【0042】
従って、溶接適合要件を満たして、レインフォースメント10、ガセット11を、第1フロアクロスメンバ8、フロアパネル1、サイドフレーム5に確実に接合し、これらレインフォースメント10、ガセットにより11、第1フロアクロスメンバ8、フロアパネル1、サイドフレーム5を補強して車体剛性を確保でき、第1フロアクロスメンバ8付近のサイドフレーム5の接合強度を高めて、衝突時のサイドフレーム5のフロアパネル1からの剥離を抑制することができる。
【0043】
レインフォースメント10の縦壁部31を第1フロアクロスメンバ8の上壁8dの高さ位置まで延ばし、縦壁部31の上端から後方へ延びて第1フロアクロスメンバ8の上壁8dに接合される水平な上部フランジ部32を設けたので、第1フロアクロスメンバ8を確実に補強し、衝突時にサイドフレーム5が下方へ変形しようとする引っ張り荷重に対して車体剛性を高めることができる。
【0044】
レインフォースメント10は、その下部フランジ部30と縦壁部31とに亙って形成され且つフロアパネル1と第1フロアクロスメンバ8の前壁8bとで閉断面を形成する傾斜部35を有し、この傾斜部35が下部フランジ部30の後端部分と縦壁部31の下端部分に一体的に繋がっているので、レインフォースメント10自体の剛性を高め、衝突時に第1フロアクロスメンバ8の前端部を起点とするサイドフレーム5のフロアパネル1からの剥離を確実に抑制することができる。
【0045】
第1フロアクロスメンバ8の前壁8bと後壁8c及びレインフォースメント10の縦壁部31に、空調ダクト16が挿設される開口部8ba,8ca,33を夫々形成し、レインフォースメント10の下部フランジ部30に、空調ダクト16が載置支持される棚部34を形成したので、第1フロアクロスメンバ8の強度が低下するが、レインフォースメント10、ガセット11により、第1フロアクロスメンバ8、フロアパネル1、サイドフレーム5を補強して車体剛性を確保でき、レインフォースメント10の下部フランジ部30に形成された棚部35により、下部フランジ部30の剛性を高めると共に、空調ダクト16のガタツキを防止することができる。
【0046】
ガセット11の後端部分を第1フロアクロスメンバ8の下端フランジ部8a及びフロアパネル1に重畳的に接合するとともに、ガセット11の車幅方向両端部分をフロアパネル1及びサイドフレーム5の上端フランジ部5aに重畳的に接合し、このガセット11とフロアパネル1とで閉断面を形成したので、ガセット11により、第1フロアクロスメンバ8、フロアパネル1、サイドフレーム5を確実に補強して車体剛性を確実に高めることができる。
【0047】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示事項以外の種々の変更を付加して実施可能であり、また、種々の自動車の車体構造に本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例の自動車の車体構造の要部の斜視図である。
【図2】自動車の車体構造(空調ダクト装着時)の要部の斜視図である。
【図3】自動車の車体構造(空調ダクト未装着時)の要部の斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】レインフォースメントの斜視図である。
【図8】レインフォースメントの平面図である。
【図9】レインフォースメントの正面図である。
【図10】ガセットの斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
BS 自動車の車体構造
1 フロアパネル
5 サイドフレーム
5a 上端フランジ部
8 第1フロアクロスメンバ
8a 下端フランジ部
8b 前壁
8c 後壁
8d 上壁
8ba,8ca 開口部
10 レインフォースメント
11 ガセット
16 空調ダクト
30 下部フランジ部
31 縦壁部
32 上部フランジ部
33 開口部
34 棚部
35 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体構造において、
床面を形成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの前端から後方へ延びるようにフロアパネルの下面側に配設され、フロアパネルの下面に上端フランジ部が接合されて、フロアパネルとで閉断面を形成する断面逆ハット状のボディーフレームと、
前記フロアパネルの前端よりも後方において車幅方向に延びるようにフロアパネルの上面側に配設され、フロアパネルの上面に下端フランジ部が接合されて、フロアパネルとで閉断面を形成する断面ハット状のフロアクロスメンバと、
前記フロアパネルの上面側に配設され、前部がフロアパネル及びボディーフレームの上端フランジ部に重畳的に接合されるとともに後部がボディーフレームの車幅方向両側においてフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合される水平な下部フランジ部と、この下部フランジ部の後端から上方へ延びてフロアクロスメンバの前壁に接合される縦壁部とを有するレインフォースメントと、
前記フロアクロスメンバの下方におけるフロアパネルとボディーフレームとの間にボディーフレームの上端開口部を覆うように配設され、前端部分がフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合されるガセットと、
を備えたことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
前記レインフォースメントの縦壁部がフロアクロスメンバの上壁の高さ位置まで延ばされ、縦壁部の上端から後方へ延びてフロアクロスメンバの上壁に接合される水平な上部フランジ部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体構造。
【請求項3】
前記レインフォースメントは、その下部フランジ部と縦壁部とに亙って形成され且つフロアパネルとフロアクロスメンバの前壁とで閉断面を形成する傾斜部を有し、この傾斜部が下部フランジ部の後端部分と縦壁部の下端部分に一体的に繋がっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車の車体構造。
【請求項4】
前記フロアクロスメンバの前壁と後壁及びレインフォースメントの縦壁部に、空調ダクトが挿設される開口部が夫々形成され、
前記レインフォースメントの下部フランジ部に、空調ダクトが載置支持される棚部が形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動車の車体構造。
【請求項5】
前記ガセットの後端部分がフロアクロスメンバの下端フランジ部及びフロアパネルに重畳的に接合されるとともに、ガセットの車幅方向両端部分がフロアパネル及びボディーフレームの上端フランジ部に重畳的に接合され、このガセットとフロアパネルとで閉断面が形成されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動車の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−269054(P2007−269054A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93941(P2006−93941)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】