説明

自動車用の電気アド・ヒータを作動する方法

【課題】自動車用の電気アド・ヒータ(add−heater)を作動する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、電源としての少なくとも1つの再充電可能な電気化学的電池と、その電池に接続され、且つ自動車のエンジンによって駆動される発電機とを有し、この発電機によりエンジンが稼動中に電流を電気アド・ヒータに供給できる、自動車用の電気アド・ヒータを作動する方法に関する。
本発明によれば、必要な場合は、発電機によって電流が供給されない場合にも、アド・ヒータを電源としての少なくとも1つの電気化学的電池に切り換えることにより、電気アド・ヒータに電流を供給可能であり、少なくとも1つの電気化学的電池の充電状態を監視し、少なくとも1つの監視される電気化学的電池の充電状態が下限値を下回ったときに、少なくとも1つの監視される電気化学的電池により実現される電気アド・ヒータの電力供給を中止する、ことが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文において定義されている特徴を有する方法に関する。このような方法は特許文献1から知られている。この公知の方法を利用して、電気補助ヒータ、以下簡単に電気アド・ヒータ(add−heater)と称される、を用いて空調システムを操作する。
【背景技術】
【0002】
現代のディーゼルエンジンは極めて高い熱/機械効率を有しているため、それらエンジンの廃熱は自動車内を急速に加熱するには十分でない。この問題に対処するために、電気アド・ヒータを装備することが知られており、このアド・ヒータは加熱素子として主にPTC素子を使用する。エンジンが稼動している限りは、必要な電流は車の発電機により供給される。エンジンが停止すると、電流は発電機により供給されなくなる。エンジンが停止状態であっても自動車内を加熱可能にするために、補助ヒータシステムが使用されている。従来の補助ヒータシステムは、車に利用可能な燃料、すなわちディーゼル燃料またはガソリンを燃焼させ、これにより、ブロワによって自動車内に送り込まれる空気を加熱するか、または、車のヒータ回路内に存在する水を加熱し、その水の熱を熱交換機を介して空気に伝達し、次にこの空気をブロワによって車内に誘導する。
【0003】
このような従来の補助ヒータシステムは比較的高価であり、十分に広い空間を必要とし、有害な排気ガス、時には煙を発生することもあり、したがって実質的に野外条件下のみで作動でき、私有のガレージ、公共の屋内駐車場、または地下の駐車場では使用できない。
【0004】
特許文献1から、公共の交流電源からの電流を供給することにより、PTCアド・ヒータもまた補助ヒータとして使用することが知られている。しかし、PTCヒータが12Vの直流電圧を用いて自動車内で正常に作動する場合、これらのヒータは230Vの交流では容易に作動できない。この点に関しては、特許文献1は、車の走行中は並列に接続されるPTC素子を、補助ヒータとして使用するためには直列に接続し(例えば、16のPTC素子を直列に接続し)、これによりコンセント電圧230Vを16のPTC素子全体にわたって均一に分散させなければならないことを提案している。この解決策の不都合な点は、このような電気ヒータは、コンセントが手元にある場合にのみ、補助ヒータとして使用可能であることである。しかし、これはほとんどの場合、特に車が屋外に駐車されている場合は期待できない。一方、補助ヒータを適切に作動させる必要は、これらの場合において特に最も緊急性を要することである。
【0005】
特許文献2から、補助駆動装置として小型ディーゼルエンジンを備えた補助空調ユニットを有する空調システムが知られている。しかし、これらのシステムは比較的騒音が大きく、重量が大きく、高価であり、また望ましくない有害な排気ガスを発生する。この状況に対処するために、特許文献2は、補助エネルギー供給装置または緊急エネルギー供給装置を装備することを提案し(詳しくは説明しないが)、これは公共の交流コンセントから電気モータを介して供給され、これにより過剰なエネルギーは、発電機として作用する電気モータを介して車内の他の電力消費要素により利用可能にすることができる。この提案は、特許文献1から知られている提案と類似する不都合点を有する。
【0006】
特許文献3は、自動車内を加熱するための可動式ヒータを開示している。この可動式ヒータは、貯蔵媒体、例えば耐火れんがを含むことによって、手元に主電源のコンセントを有する必要を回避する。この耐火れんがは原位置(home)で加熱され、次に耐火れんがの熱がブロワにより自動車内に放出され、その後に耐火れんがは可動式ヒータに配置され、自動車バッテリからの電流を使用して作動される。このような可動式ヒータは、製造するには高価であり、取扱いが複雑であり、寸法が大きく、したがって必要に応じて携帯するには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国公開特許出願第103 55 396号
【特許文献2】独国公開特許出願第103 55 397号
【特許文献3】独国公開特許出願第199 12 764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、停止状態の自動車を加熱するための、より簡単でありより安価な方法を提供することである。
【0009】
本発明の目的は請求項1に定義されている特徴を有する方法により達成される。本発明のさらに有利な実現形態は従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、電源としての少なくとも1つの再充電可能な電気化学的電池と、その電池に接続され、且つ自動車のエンジンによって駆動され、さらにエンジンが稼動中に電流を電気アド・ヒータに供給可能である発電機とを有する自動車で、前記電気アド・ヒータを作動する方法において、
発電機により電流が供給されないときでも、必要な場合には、前記アド・ヒータを電源としての少なくとも1つの電気化学的電池に切り換えることにより、電流を前記電気アド・ヒータに供給でき、
少なくとも1つの電気化学的電池の充電状態が監視され、
前記少なくとも1つの監視される電気化学的電池により実現される電気アド・ヒータの電力供給は、前記少なくとも1つの監視される電気化学的電池の充電状態が下限値を下回ったときに再度中止されるようにしたものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、エンジンの温度が測定され、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値は、そのようにして測定された温度に応じて選択されるようにしたものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、水冷エンジンの場合、冷却水の温度が測定され、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値は、測定された冷却水の温度に応じて選択されるようにしたものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項の発明において更に、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値は、前記監視される電気化学的電池の利用可能な充電量が、前記充電状態の前記限界値に達したときにも、前記内燃エンジンを起動するのに十分であるように事前に選択されるようにしたものである。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項の発明において更に、オットーエンジンまたはディーゼルエンジンにより主として駆動される自動車の場合、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値は、自動車メーカーの仕様に従って決定されるようにしたものである。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項の発明において更に、前記電気アド・ヒータは、無線信号によって少なくとも1つの電気化学的電池に切り換えられるようにしたものである。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項の発明において更に、自動車内の空気の温度に応答する温度センサが、事前に選択された温度しきい値を超えていることを信号で送ると、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値に達する前に、前記電気アド・ヒータがオフに切り換えられるようにしたものである。
【0017】
請求項8の発明は、請求項7の発明において更に、前記温度しきい値は個別に選択できるようにしたものである。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれか1項の発明において更に、加熱時間が事前に選択された限界値を超えると、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値に達する前に、前記電気アド・ヒータが前記監視される電気化学的電池から切り離されるようにしたものである。
【0019】
請求項10の発明は、請求項9の発明において更に、前記加熱時間の限界値は個別に事前に選択できるようにしたものである。
【0020】
請求項11の発明は、請求項1から10のいずれか1項の発明において更に、前記監視される電気化学的電池は蓄電池、特にスタータ・バッテリであるようにしたものである。
【0021】
請求項12の発明は、請求項1から11のいずれか1項の発明において更に、前記監視される電気化学的電池は燃料電池であるようにしたものである。
【0022】
請求項13の発明は、請求項1から12のいずれか1項の発明において更に、前記監視される電気化学的電池は、金属水素化物電池またはリチウムイオン蓄電池であるようにしたものである。
【0023】
請求項14の発明は、請求項11の発明において更に、前記スタータ・バッテリに、他の電気化学的電池、特に燃料電池、金属水素化物電池またはリチウムイオン蓄電池が追加して備えられている場合、前記スタータ・バッテリだけが監視されるようにしたものである。
【0024】
請求項15の発明は、請求項1から14のいずれか1項の発明において更に、前記エンジンが停止しているとき、前記電気アド・ヒータは閉じた空気循環回路として作動するようにしたものである。
【0025】
本発明は自動車用の電気アド・ヒータを提供するものであり、自動車は電源としての少なくとも1つの再充電可能な電気化学的電池と、その電池に接続され、且つ自動車のエンジンによって駆動される発電機とを有し、この発電機によりエンジンが稼動中に電流を電気アド・ヒータに供給でき、電気アド・ヒータは、発電機により電流が供給されないときでも、必要に応じて電流を供給される。その場合、アド・ヒータは電源としての少なくとも1つの電気化学的電池に切り換えられ、少なくとも1つの電気化学的電池の充電状態が監視され、少なくとも1つの監視される電気化学的電池により実現される電気アド・ヒータの電力供給は、少なくとも1つの監視される電気化学的電池の充電状態が下限値を下回ったときに再度中止される。このような方法で、自動車が停止している状態(自動車のエンジンにより駆動される発電機により供給される電流が存在しないとき)でも所望の熱を生成することが可能であり、この熱の生成は、電気化学的電池の充電状態を考慮して、および所定の残留充電量が保持されていることを前提として、実現可能である。このような電気化学的電池として使用するのに適する電池は、例えば鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン蓄電池および燃料電池がある。
【0026】
本発明は、以下のような大きな利益を提供する。
・本発明は最小入力により実現できる。
【0027】
・自動車の多くは電気化学的電池の充電状態を監視できる可能性をすでに備えている。その場合には、本発明は、いずれにせよ自動車に設けられた制御手段を、本発明により提案される方法で電気アド・ヒータに対して、およびおそらくは換気システムおよび/または空調システムに対して単に適合させることにより実現可能であり、これにより制御手段は本発明による方法を追加的に実行できる。
【0028】
・今日、自動車における制御システムは主として、例えば、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラまたは特定用途向け集積回路(ASIC)を備える、電子演算モジュールを使用する。これらの場合には、本発明は該当する演算モジュールのプログラミングを調整することにより実現できる。これらの場合においては、電気化学的電池の充電状態を監視するためのセンサ(自動車が特定の場合においてこのようなセンサを装備してはならない場合、必要であることもある)を除いて、追加のハードウェアを必要としない。
【0029】
・本発明による方法は、単独または基本的にソフトウェアを適切に適合させることにより実現できることを考慮して、自動車メーカーにより要求されるそれぞれの自動車の種類に本発明を専用に適合させることは容易である。したがって本発明は、本発明の特定の実現形態に対してより高度な柔軟性を使用者または供給者に提供する。
【0030】
・自動車に設けられた電気アド・ヒータは二重機能を果たしてもよい。自動車が停止しているときは補助ヒータとして役立ち、自動車が走行中は自動車の発電機から(「オルタネータ」から)、電流を供給されるアド・ヒータとして機能してもよい。
【0031】
・本発明は極めて低コストで実現できる。
・既存のアド・ヒータの二重使用のため、自動車内の装置の空間および重量を節減できる。
【0032】
・従来の燃料燃焼補助ヒータの不都合点、例えば、欠陥さらに火災の危険の場合における、有害な排気ガス、有害な煙の発生、不快な臭いが回避される。
【0033】
・停止中および走行中の両方において補助ヒータとして電気アド・ヒータを使用する可能性は、まだ電気アド・ヒータを装備していない自動車においてこのようなアド・ヒータを使用するのに好都合であり、これにより、アド・ヒータの販売が増加し、その結果として、多量のアド・ヒータをより効率的に生産できることから、アド・ヒータをより安くできる。
【0034】
・本発明は、ディーゼルエンジンを備える自動車に対してだけではなく、オットーエンジンを備える自動車に対して、燃料電池により電流を供給される電気モータを備える自動車に対して、およびハイブリッド駆動装置を備える自動車、すなわち燃料電池、またはニッケル水素電池といった、最新のバッテリから供給される電気モータを備えるオットーまたはディーゼルエンジンの組み合わせに対しても適合する。駆動装置として燃料電池から供給される電気モータを装備した自動車は特に、本発明の用途に最適である。この理由は、燃料電池が、オットーエンジンまたはディーゼルエンジンにより主として駆動される自動車における補助ヒータとしてアド・ヒータを作動するのに利用可能である、従来の鉛蓄電池に比べてより多くの熱エネルギーを供給することが可能であるためである。
【0035】
請求項1は、必要な場合には、自動車に装備された発電機により電流が供給されないときには、電気アド・ヒータは、電源として自動車に装備された1つ以上の電気化学的電池に切り換えできることを提示する。発電機はいずれの自動車にも通常は装備されたオルタネータであってもよい。しかし、この機能はまた、自動車が走行中に電流を供給し、自動車が停止中は電流を供給しない、任意の他の発電機により実行されてもよい。オットーエンジンまたはディーゼルエンジンにより主として駆動される自動車の場合、発電機により電流が供給されないとき、アド・ヒータが電気化学的電池に切り換えられる。この電気化学的電池、その主な機能が内燃エンジンを起動することであるため、通常はスタータ・バッテリと呼ばれる自動車バッテリである。スタータ・バッテリは通常は、鉛蓄電池または別のガルバニック電池から成り、充電状態により許可されることを前提として、停止中にはこれら電池から電流を引き出すことができ、自動車が走行中にはこれら電池は発電機「オルタネータ」により再充電される。1つ以上の電気モータにより主として駆動される自動車か、あるいは、燃料電池から電流を供給される少なくとも1つの電気モータと組み合わせ、オットーエンジンまたはディーゼルエンジン(ハイブリッド駆動装置)と組み合わされた1つ以上の電気モータにより主として駆動される自動車では、アド・ヒータはこのような燃料電池から電流を供給されてもよい。その場合は、燃料電池は本発明の意味における電池を構成する。水素の低温燃焼から電流を引き出す燃料電池は一般に、自動車を駆動するための電池として知られている。ハイブリッド駆動装置を装備した自動車では、自動車の電気駆動装置のための電源として、燃料電池を使用する代わりに再充電可能な金属水素化物電池、特にニッケル水素電池またはリチウム蓄電池を使用してもよい。これらはまた、本発明の意味における電気化学的電池である。
【0036】
電気化学的電池の充電状態(本発明に従って監視される)という用語は、電池の電気充電状態(通常アンペア−アワー(ampere−hours)で示される)として理解されるべきであり、スタータ・バッテリの場合には、これら電気化学的電池は、金属水素化物電池およびリチウムイオン蓄電池である。燃料電池を使用する自動車の駆動装置に関しては、本発明の意味における電池の充電状態は燃料電池における低温燃焼に利用可能な燃料供給状態である。今日、自動車が燃料電池により駆動されている範囲内では、自動車は水素を燃焼する燃料電池を使用する。水素は、液化ガスフラスコ内、圧縮ガスシリンダ内、または金属水素化物(例えば水素化ジルコニウム)をベースにする固体の貯蔵体、のいずれかで自動車に搭載される。このとき利用可能な水素供給は、本発明の意味における電気化学的電池の充電状態を構成する。
【0037】
オットーエンジンまたはディーゼルエンジンにより主として駆動され、モータがオフのときにスタータ・バッテリのみがアド・ヒータに電力を供給するために利用可能である、自動車の場合は、充電状態の下限値は、好都合には、バッテリの残留充電量が自動車を安全に起動できることを保証するのに十分であるように選択される。
【0038】
燃料電池駆動装置を備える自動車の場合は、充電状態の下限値は、好都合には、残留水素量が、自動車を、水素供給量を満たすことができるサービスステーションに到達可能にするのに十分であることを保証するように選択される。
【0039】
ハイブリッド駆動装置および燃料電池を備える自動車の場合は、水素供給量は、オットーエンジンまたはディーゼルエンジンのための燃料タンクが、自動車が次のサービスステーションに到達するだけの十分な燃料をさらに含むことが保証される前提で、補助ヒータとしてアド・ヒータを作動するのに完全に使い果たされる。
【0040】
2つのバッテリシステム、例えばスタータ・バッテリおよび水素電池を有するハイブリッド駆動装置を備える自動車の場合は、バッテリの充電量は、補助ヒータとしてアド・ヒータを作動するのに完全に使い果たされてもよい。現在市場で入手可能であるハイブリッド車は2つのバッテリ、1つは12Vスタータ・バッテリであり、1つは電気モータ用の201.6Vニッケル金属水素化物電池を有する。好ましくは、金属水素化物電池の充電量は、スタータ・バッテリが自動車の安定性を維持するための予備である場合は、使い果たされる。
【0041】
スタータ・バッテリの起動能力は、充電状態だけではなく温度にも依存する。バッテリが冷えるほど、バッテリから引き出すことができる電力は減少する。したがって、好ましくは、アド・ヒータ用にバッテリから電力を引き出すことができるまでの充電状態の限界値は、温度依存性を有する。好ましくは、これは、エンジンの温度、特に冷却水の温度を測定することによりなされる。自動車が長期間にわたり停止状態である場合、冷却水の温度およびバッテリの温度は屋外の温度と均衡している。エンジンが短時間のみ停止状態にあり、依然として少し暖かい場合、冷却水の温度はバッテリの温度とは異なる。しかしこの場合は同様に、バッテリは依然として、エンジンから間接的に吸収される熱を有するか、または充電動作により加熱されるかのいずれかのために、先の走行動作からの残留熱の一部を有する。冷却水の温度を測定することは、この場合は同様に、一方ではバッテリの起動能力を保証するために、他方では可能な限り多くの熱エネルギーをバッテリから引き出すことを可能にするために、有利である。
【0042】
しかしまた、温度に関係なくスタータ・バッテリの充電状態の限界値を特定することにより、予測される最低温度(例えば摂氏マイナス30℃)であってもバッテリの起動能力を保証することも可能である。このような温度依存限界値を決定するために、限界値をバッテリの公称容量の数分の1に固定してもよい。この決定は自動車メーカーにより決定され、自動車メーカーはアド・ヒータに対する最大加熱時間を特定してもよい。
【0043】
現代の自動車は無線操作ロックシステムを装備している。特にこのような自動車に対する本発明のさらに有利な実現形態では、電気アド・ヒータを無線信号により自動車電池に接続できる。次に、通信信号により、屋外に一晩中駐車された自動車において、家から出ることなく、アド・ヒータを電気化学的電池に接続することができる。対応する可能性は、移動無線システムを装備した自動車により提供される。その場合は、無線信号を転送することにより、電気アド・ヒータを電気化学的電池に接続することができる。
【0044】
アド・ヒータのために使用されるバッテリの能力または燃料電池駆動装置の水素貯蔵量が、選択された下限値にまだ達していない場合、アド・ヒータは、事前に選択された加熱時間の終了時、または、自動車の車内温度が事前に選択されたしきい値に達したときのいずれかにおいて、従来はオフに切り換えられる。この場合は、温度のしきい値または加熱時間の限界値は好ましくは個別に事前に選択される。バッテリの充電状態または燃料電池駆動装置の水素貯蔵量により許可される範囲内で、自動車内の空気温度はまた、運転手が予定より遅く車に到達する場合であっても、事前に選択された値を調整して、事前に選択された温度が維持されるようにすることもできる。
【0045】
アド・ヒータを補助ヒータとして作動している間は、好ましくは、アド・ヒータは閉じた空気循環加熱として作動する。その場合は、空気は、自動車内で単に循環され、環境との空気交換が一切防止される。これは、環境に対して可能な限り小さい熱エネルギー損失を実現するのに好都合である。
【0046】
さらなる機能および利点は、ブロック図の形の、添付図面を参照する2つの実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】自動車の既存の構成要素に本発明を組み込んだ図である。
【図2】個別の制御ユニットを使用する、およびその他の点に関しては自動車の既存の構成要素に組み込むことによる、本発明の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、内蔵デコーダを備える無線操作遠隔制御レシーバ1と、電力管理タスク、例えば高電流消費要素の優先的な切断によりおよび/または無負荷のエンジン運転速度の増加により、スタータ・バッテリの十分な充電状態を保証する制御ユニット2とを、ブロック図の形で示している。図1はさらに、自動車に装備された空調システム3と、フラップアクチュエータ(flap actuators)6と、ファン7と、アド・ヒータ8とに対する、制御ユニット4を示している。制御ユニット4は、自動車の空気温度に応答する温度センサ9からの信号を受信する。さらに、測定システム11(例えばHella社のIBSインテリジェントバッテリセンサ)により充電状態が監視される自動車バッテリ10が提供され、この測定システム11は電力管理のために制御ユニット2に接続されている。データバス5、例えばCANバスまたはLINバスは、自動車の他の制御ユニットへの通信リンクを提供する。
【0049】
走行動作中は、アド・ヒータは、自動車の発電機から電流を供給される。この目的のために、アド・ヒータ8は、遠隔制御レシーバ1によって受信された無線信号によりオンに切り換えできる。受信された無線信号は遠隔制御レシーバ1で解読され、次に起動する制御ユニット2に転送されるか、または、測定システム11が連続的に作動している場合、測定システム11に問い合わせる。測定システム11はバッテリ10の充電状態を測定する。適切な測定システム11は、例えば、Hella社のIBSインテリジェントバッテリセンサにより提供される。測定システム11は、バッテリ11の充電状態に関する情報を含む信号を制御ユニット2に転送する。制御ユニット2は、測定システム11から受信した信号からバッテリ11の充電状態を測定し、この充電状態を制御ユニット2に記憶された限界値と比較する。測定システム11により測定される充電状態が記憶された限界値を上回る場合、制御ユニット2は、空調システム3の制御ユニット4に解除信号を転送し、引き続いて、フラップアクチュエータ6を操作して閉じた空気循環動作に空調3を接続し、アド・ヒータ8およびファン7をオンに切り換え、これにより、アド・ヒータ8により発生する熱が自動車内に輸送される。この場合、アド・ヒータ8はバッテリ10から電流を供給される。
【0050】
パーク加熱(park heating)は、温度センサ9が空調システムの制御ユニット4に信号を送り、自動車内が所定の空気温度に達すると終了するが、遅くとも、測定システム11が依然として作動しているか、または規則的な間隔で起動される場合、温度センサ9は制御ユニット2に信号を送り、バッテリ10の充電状態が制御ユニット2に記憶された限界値より低下したことを伝える。
【0051】
あるいは、充電状態が制御ユニット2に記憶された限界値に達するまで、バッテリ10から引き出されるエネルギーを、電力管理制御ユニット2において、バッテリ10の初期に測定された充電状態から決定することもできる。パーク加熱として作動している間における電流、バッテリ電圧および時間を測定することにより、アド・ヒータ8によりバッテリ10から引き出されるエネルギーを監視し、バッテリ10の初期の充電状態およびバッテリの充電状態の所定の限界値から前もって計算されているエネルギー量であって、エンジンの独立したヒータとして作動するのに利用可能なエネルギー量が使い果たされると、アド・ヒータ8をオフに切り換えることができる。
【0052】
前もって決定されたバッテリの充電状態および充電状態の所定の限界値に基づき、およびアド・ヒータ8のバッテリ電圧および設計上の典型的な電流消費量を知ることにより、電力管理制御ユニット2は一方で、アド・ヒータ8がオンに切り換えられた後に、バッテリ10の充電状態の事前決定された限界値に達するであろう後に、期間を計算することができる。計算された加熱時間に達すると、制御ユニット2はアド・ヒータ8をオフに切り換え、いずれの場合にもエンジンを起動するのに十分なだけのバッテリ10の残留充電量を保証する。
【0053】
さらに、パーク加熱としての動作に含まれる構成要素の適正な機能を監視することが可能であり、いずれかの構成要素の不具合が確認される場合、予防措置としてアド・ヒータ8をオフに切り換えることができる。
【0054】
図2に示した第2の実施形態では、同一の構成要素または他の構成要素に対応する構成要素は、第1の実施形態と同一の参照符号により示されている。第2の実施形態は、自動車が従来の電力管理制御ユニット2ではなく、エンジンの独立したパーク加熱としてアド・ヒータ8の作動のための特別な制御ユニット2を装備している点で、第1の実施形態とは異なる。遠隔制御レシーバ1Aは、補助ヒータとしてアド・ヒータ8の作動を起動する、無線信号に対するデコーダを含まず、代わりに、デコーダ1Bはパーク加熱としての作動のための特別な制御ユニット2に組み込まれている。さらに、バッテリ10の充電状態を監視する測定システム11はこの制御ユニット2に組み込まれている。同様にこの構成では、遠隔制御レシーバ1A、バッテリ10および空調システム3は、デコーダ1Bおよび測定システム11を備える個別の制御ユニット2を実装することにより本発明による方法を実行可能な、従来の自動車の構成要素である。第2の実施形態の機能は第1の実施形態の機能と完全に同一である。
【符号の説明】
【0055】
1 内蔵デコーダを備えた遠隔制御レシーバ
1A デコーダを備えない遠隔制御レシーバ
1B デコーダ
2 制御ユニット
3 空気調和システム
4 制御ユニット
5 データバス
6 フラップアクチュエータ
7 ファン
8 アド・ヒータ
9 温度センサ
10 自動車バッテリ
11 測定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源としての少なくとも1つの再充電可能な電気化学的電池と、その電池に接続され、且つ自動車のエンジンによって駆動され、さらにエンジンが稼動中に電流を電気アド・ヒータに供給可能である発電機とを有する自動車で、前記電気アド・ヒータを作動する方法において、
発電機により電流が供給されないときでも、必要な場合には、前記アド・ヒータを電源としての少なくとも1つの電気化学的電池に切り換えることにより、電流を前記電気アド・ヒータに供給でき、
少なくとも1つの電気化学的電池の充電状態が監視され、
前記少なくとも1つの監視される電気化学的電池により実現される電気アド・ヒータの電力供給は、前記少なくとも1つの監視される電気化学的電池の充電状態が下限値を下回ったときに再度中止されることを特徴とする方法。
【請求項2】
エンジンの温度が測定され、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値は、そのようにして測定された温度に応じて選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水冷エンジンの場合、冷却水の温度が測定され、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値は、測定された冷却水の温度に応じて選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値は、前記監視される電気化学的電池の利用可能な充電量が、前記充電状態の前記限界値に達したときにも、前記内燃エンジンを起動するのに十分であるように事前に選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
オットーエンジンまたはディーゼルエンジンにより主として駆動される自動車の場合、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値は、自動車メーカーの仕様に従って決定されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記電気アド・ヒータは、無線信号によって少なくとも1つの電気化学的電池に切り換えられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
自動車内の空気の温度に応答する温度センサが、事前に選択された温度しきい値を超えていることを信号で送ると、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値に達する前に、前記電気アド・ヒータがオフに切り換えられることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記温度しきい値は個別に選択できることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
加熱時間が事前に選択された限界値を超えると、前記監視される電気化学的電池の充電状態の前記限界値に達する前に、前記電気アド・ヒータが前記監視される電気化学的電池から切り離されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱時間の限界値は個別に事前に選択できることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記監視される電気化学的電池は蓄電池、特にスタータ・バッテリであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記監視される電気化学的電池は燃料電池であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記監視される電気化学的電池は、金属水素化物電池またはリチウムイオン蓄電池であることを特徴とする、請求項1からの12いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記スタータ・バッテリに、他の電気化学的電池、特に燃料電池、金属水素化物電池またはリチウムイオン蓄電池が追加して備えられている場合、前記スタータ・バッテリだけが監視されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記エンジンが停止しているとき、前記電気アド・ヒータは閉じた空気循環回路として作動することを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−506777(P2010−506777A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532709(P2009−532709)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008862
【国際公開番号】WO2008/046558
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(504260324)ベルー アクチェンゲゼルシャフト (13)
【Fターム(参考)】