説明

自動車用ガラスラン

【課題】 自動車用ガラスランのコーナー部への装着を容易にして、カバーリップの噛みこみをなくし、シール性と美観を向上させることを課題とする。
【解決手段】 ガラスラン10は、車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40とからなる断面略U字形をなし、車外側側壁と車内側側壁の先端からそれぞれの側壁に沿って底壁との連結方向に向けて車外側カバーリップ24と車内側カバーリップ34を延設し、ドアフレームのコーナー部は、アウターパネル2c及びインナーパネル2dの先端部をそれぞれ車外側側壁と車外側カバーリップの間及び車内側側壁と車内側カバーリップの間に挿入してガラスランのコーナー部12を保持し、コーナー部の車内側側壁30の外面に車内方向に突出する車内側側壁突起部36を設けたことを特徴とする自動車用ガラスランである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、自動車のドア1のドアフレーム2の内周にドアガラス5の昇降を案内するガラスラン110が取付けられている。その従来の取付構造を図6〜図8に示す。
図6は、図5におけるA−A線に沿った断面図である。図7は、ドアフレーム2のコーナー部の斜視図である。図8は、そのドアフレーム2のコーナー部に対応する部分のガラスラン110コーナー部の斜視図である。
【0003】
従来、ガラスラン110は、図6に示すようにドアフレーム2のチャンネル3内に取付けられて、ドアガラス5の昇降を案内するとともにドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。さらに、ガラスラン110は、押出成形により成形された直線状の直線部111からなるドア1の上辺部とフロント側縦辺部及びリヤ側縦辺部を、ドアフレーム2の形状に合わせて型成形するコーナー部112で接続している。
なお、ドア1と車体との間のシールは、ドアフレーム2の外周に取付けられたドアウエザストリップ108および/または車体の開口部のフランジに取付けられたオープニングトリムウエザストリップ109によりなされている。
【0004】
ガラスラン110は、図6に示すように、車外側側壁120と、車内側側壁130と、底壁140からなる断面略U字状をなしている。車外側側壁120の先端付近から車外側シールリップ150が上記断面略U字状の内側に向けて延出するように設けられている。また、車内側側壁130にもその先端付近から車内側シールリップ160が断面略U字状の内側に向けて延出するように設けられている。さらに、車外側側壁120の先端から車外側の外面に沿って底壁140方向に延びる車外側カバーリップ124が延設され、車内側側壁130の先端から車内側の外面に沿って底壁140方向に延びる車内側カバーリップ134が延設されている。
【0005】
車外側側壁120、車内側側壁130と底壁140はドアフレーム2に設けられたチャンネル3内に挿入され、各壁の外面がチャンネル3の内面に当接される。車外側側壁120と車外側カバーリップ124の間にドアフレーム2のアウターパネル2cの先端部が挿入され、車内側側壁130と車内側カバーリップ134の間にインナーパネル2dの先端部が挿入され、ガラスラン110を保持している。
【0006】
ドアガラス5は、このガラスラン110の断面略U字状の内側を摺動するとともに、上記車外側シールリップ150と車内側シールリップ160によってガラスラン110の端部の両側面がシールされて保持されている(例えば、特許文献1参照。)。
このガラスラン110をドアフレーム2に装着するときは、まずガラスラン110のコーナー部112をドアフレーム2のコーナー部2bに装着し、位置決めをして、その後ガラスラン110の直線部111をドアフレーム2に装着している。
【0007】
コーナー部においてガラスラン110を装着するときは、図8に示すように、ガラスラン110の底壁140をドアフレーム2の開口部にガイドさせ、ドアフレーム2のコーナー部の曲がりに対応してガラスラン110を回転させながら、底壁140からコーナー部に嵌め込んでいる。
なお、図8の141は、底壁140に設けられたガラスラン110のズレ防止用の突起である。
また、図7に示すように、ドアフレーム2のインナーパネル2dのコーナー部2bに凹部2gを設け、インナーパネル2dを車内側側壁113と車内側カバーリップ134の間に挿入するときに、その凹部2gに、図8に示すように、コーナー部112における車内側側壁113と車内側カバーリップ134の間に設けた突起112bを嵌め込んでいるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
このとき車外側側壁120は車内側側壁130に比べて底壁140からの高さが低く、車外側側壁120から延設される車外側カバーリップ124もその先端が底壁140の近傍まで延びている。
そのため、底壁140からコーナー部に嵌め込むときに、ドアフレーム2の先端が車外側カバーリップ124と車外側側壁120の間に挿入されずに、車外側カバーリップ124を車外側側壁120と一緒にドアフレーム2に噛みこんで装着する場合があった。特に、このガラスラン110の装着はドア1の内側から嵌め込むため、コーナー部では手探りとなるため、装着し難かった。
車外側カバーリップ124がドアフレーム2に噛みこまれると美感が損なわれるとともに、シール性が低下する場合があった。
なお、車外側カバーリップ124の噛み込み防止対策として底壁140からガイドリップを延設させる技術も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この技術のものは、チャンネルが設けられている部位からの装着ができないという不具合があるとともに、ガイドリップの剛性を高めないと(厚肉にする)ガイドの役目を果たさないという不具合がある。
【特許文献1】特開2000−25462号公報(第2−3頁、図2)
【特許文献2】特開昭59−89249号公報(第4、5図)
【特許文献3】特開平08−310235号公報(第2頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ドアフレームのコーナー部において、自動車用ガラスランのコーナー部への装着を容易にして、カバーリップの噛みこみをなくし、シール性と美観を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車ドアのドアフレームの内周に取付けられ、ドアガラスの昇降を案内するとともに、押出成形により成形された直線部と、ドアフレームのコーナー部に取付けられる型成形により成形されたコーナー部を有する自動車用ガラスランにおいて、
ガラスランは、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略U字形をなし、車外側側壁と車内側側壁の先端から、それぞれ断面略U字状の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、車外側シールリップと車内側シールリップによりドアガラスの両側端部の車外側面及び車内側面をシールし、車外側側壁と車内側側壁の先端からそれぞれの外面に沿って底壁との連結方向に向けて車外側カバーリップと車内側カバーリップを延設し、
ドアフレームのコーナー部では、ドアフレームのアウターパネル及びインナーパネルの先端部をそれぞれ車外側側壁と車外側カバーリップの間及び車内側側壁と車内側カバーリップの間に挿入してガラスランのコーナー部を保持し、ガラスランのコーナー部の車内側側壁の外面に車内方向に突出する車内側側壁突起部を設けたことを特徴とする自動車用ガラスランである。
【0011】
請求項1の本発明では、ガラスランは、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略U字形をなし、車外側側壁と車内側側壁の先端から、それぞれ断面略U字状の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、車外側シールリップと車内側シールリップによりドアガラスの両側端部の車外側面及び車内側面をシールした。
【0012】
そのため、ドア閉時に、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略U字状の内側にドアガラスの端部を収納することができ、ドアガラスを確実に保持することができる。車外側シールリップと車内側シールリップによりドアガラスの両側端部の車外側面および車内側面をシールするようにしたため、ドアガラスの昇降に応じて、シールリップがドアガラスに当接し、車外側シールリップと車内側シールリップによりドアフレームとドアガラスとの間のシールをすることができる。
【0013】
車外側側壁と車内側側壁の先端からそれぞれの外面に沿って底壁との連結方向に向けて、車外側カバーリップと車内側カバーリップを延設した。そのため、車外側カバーリップと車内側カバーリップにより、ドアフレームのアウターパネルとインナーパネルのフランジの先端部を覆い、先端部を保護するとともに、パネルの先端における車外と車内からの見栄えを向上させることができる。
【0014】
ドアフレームのコーナー部では、ドアフレームのアウターパネル及びインナーパネルの先端部をそれぞれ車外側側壁と車外側カバーリップの間及び車内側側壁と車内側カバーリップの間に挿入してガラスランのコーナー部を保持した。そのため、車外側カバーリップと車外側側壁及び、車内側カバーリップと車内側側壁をドアフレームのコーナー部に沿って取付けることができ、コーナー部のドアフレームのアウターパネルとインナーパネルの先端部を挟持してガラスランをドアフレームのコーナー部に沿って確実に取付けることができる。
【0015】
コーナー部の車内側側壁の外面に車内方向に突出する車内側側壁突起部を設けたため、ガラスランをドアフレームのコーナー部に装着するときに、ドアフレームのインナーパネルが車内側側壁に設けられた車内側側壁突起部に当接して、ガラスランが車外側に押される。このため、車外側側壁と車外側カバーリップの間の隙間がアウターパネルの先端と対向する位置まで押されて、アウターパネルの先端がその隙間に容易に挿入される。このため、車外側カバーリップがドアフレームのアウターパネルと車外側側壁の間に挟み込まれることなく、ガラスランをコーナー部に装着することができる。
【0016】
請求項2の本発明は、ガラスランのコーナー部では、車内側側壁の底壁から先端までの高さが、車外側側壁における底壁から先端までの高さよりも高く形成され、車内側側壁突起部は、車内側側壁外面のコーナー部の底壁と連結する付け根部に近接して設けられている自動車用ガラスランである。
【0017】
請求項2の本発明では、ガラスランのコーナー部では、車内側側壁の底壁から先端までの高さが、車外側側壁における底壁から先端までの高さよりも高く形成されるため、車内側シールリップを幅広く形成することができ、コーナー部におけるドアガラスの車内側面とガラスラントの間のシールを確実に行うことができ、ドアガラスを車外側に位置させることができる。また、車内側側壁突起部は、車内側側壁外面のコーナー部の最外周部に設けられたため、ガラスランをドアフレームのコーナー部に装着するときに、最初に車内側側壁突起部がインナーパネルの先端に当接することができ、コーナー部の装着の最初から、ガラスランを車外方向に寄せることができる。
また、車内側側壁突起部は、車内側側壁外面のコーナー部の底壁と連結する付け根部に近接して設けられることにより、車外側カバーリップにアウターパネルの先端が当接する前に、車内側側壁突起部によりガラスランを車外方向に寄せることができ、確実に、アウターパネルの先端が車外側側壁と車外側カバーリップの間の隙間に容易に挿入される。
【0018】
請求項3の本発明は、ドアフレームのインナーパネルのコーナー部には、ガラスランの車内側側壁突起部と対向する部位に空間部を設けた自動車用ガラスランである。
【0019】
請求項3の本発明では、ドアフレームのインナーパネルのコーナー部において、ガラスランの車内側側壁と対向する面に車内側側壁突起部を収納する空間部を設けたため、ガラスランをドアフレームのコーナー部に装着した後は、車内側側壁突起部はインナーパネルのコーナー部の空間部に収納されるので、車内側側壁とインナーパネルの先端の間に隙間が生ずることがなく、インナーパネルとガラスランとの間のシール性を確保することができる。
【0020】
請求項4の本発明は、車内側側壁突起部は、円錐形又は多角錐形である自動車用ガラスランである。
【0021】
請求項4の本発明では、車内側側壁突起部は、円錐形又は多角錐形であるため、ガラスランの装着時にインナーパネルと車内側側壁の車内側側壁突起部との接触面積が小さく、摺動抵抗が小さいため、ガラスランの装着が容易である。また、車内側側壁突起部は、円錐形又は多角錐形であるため、インナーパネルの先端が円錐形又は多角錐形の斜面を摺動することができ、挿入抵抗を小さくすることができる。
【0022】
請求項5の本発明は、ガラスランのコーナー部は、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成された自動車用ガラスランである。
【0023】
請求項5の本発明では、ガラスランのコーナー部は、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、加硫が必要でなく、成形が容易であり、柔軟性もあり、ガラスランの直線部分がEPDM又はオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成された場合は、直線部との接着性がよく、耐候性のよい、リサイクル容易な製品を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、コーナー部の車内側側壁の外面に車内方向に突出する車内側側壁突起部を設けたため、ガラスランをドアフレームのコーナー部に装着するときに、ドアフレームのインナーパネルが車内側側壁に設けられた車内側側壁突起部に当接して、ガラスランを車外方向に押し、車外側側壁と車外側カバーリップの間の隙間が、アウターパネルの先端と対向する位置まで押されることとなり、ドアフレームのアウターパネルが車外側カバーリップと車外側側壁の間に確実に挿入され、車外側カバーリップが挟み込まれることなく、ガラスランをコーナー部に装着されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態を図1〜図5に基づき説明する。
図5は自動車のドア1の側面図である。図1は、ドアフレーム2のコーナー部2bにおける断面図であり、図5のB−B線に沿った部分の断面図である。図2は、ガラスラン10のコーナー部12の部分平面図である。図3は、ドアフレーム2の上辺部の断面図であり、図5のA−A線に沿った部分の断面図である。図4は、ドアフレーム2のコーナー部2bの斜視図である。
【0026】
図5に示すように、自動車のドア1の上部にはドアフレーム2が設けられ、ドアガラス5が昇降自在に取付けられる。即ち、ドアフレーム2の内周には、ガラスラン10が取付けられ、ドアガラス5の昇降を案内するとともに、ドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。
【0027】
ガラスラン10は、全体として押出成形で形成された略直線状の直線部11と、ドアフレーム2のコーナー部に取付けられ、その直線部11を接続し型成形で形成されるコーナー部12からなる。
直線部11は、ドアフレーム2の上辺に取付けられる部分と、ドアフレーム2のリヤ側縦辺に取付けられる部分と、ドアフレーム2のフロント側縦辺に取付けられる部分とからなる。直線部11が装着されるドアフレーム2には、図4に示すように、ガラスラン10を装着する断面略U字形のチャンネル3が設けられている。
【0028】
これらの直線部11をドアフレーム2に対応した形状となるように、コーナー部分において型成形により成形して接続して、コーナー部12を形成しており、コーナー部12は、ドアフレーム2のコーナー部2bに装着される部分となる。
ドアフレーム2のコーナー部2bには、図4に示すように、上記のチャンネル3が設けられていなく、ドアフレーム2のアウターパネル2cとインナーパネル2dのみでガラスラン10を保持している。
【0029】
ドアフレーム2の上辺に取付けられるガラスラン10の直線部11の断面形状は、図3に示すように、車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40とから断面略U字状に形成されている。
ガラスラン10はドアフレーム2の上辺部に取付けられる部分も縦辺部に取付けられる部分も基本的には、ほぼ同様な断面略U字形の断面形状を有している。
車外側側壁20の先端から車外側シールリップ50が上記断面略U字状の内側に向けて延設されている。また、車外側カバーリップ24が車外側側壁20の先端から車外側側壁20の外面に沿って底壁40との連結方向に向けて延設されている。車内側側壁30の先端から車内側シールリップ60が上記断面略U字状の内側に向けて延設されており、また、車内側カバーリップ34が車内側側壁30の先端から車内側側壁30の外面に沿って底壁40との連結方向に向けて延設されている。
【0030】
車外側側壁20と車外側カバーリップ24とは略U字形に連続してその間には、ドアフレーム2のアウターパネル2cとチャンネル3の先端が挿入され、その先端部を車外側側壁20と車外側カバーリップ24とで挟持するようにしてガラスラン10の車外側部分が保持される。
車外側カバーリップ24は、アウターパネル2cの外面を覆って、その先端はアウターパネル2cの段部に当接して、ガラスラン10とアウターパネル2cの間をシールするとともに、上記先端部の先端を保護している。
【0031】
車外側側壁20の底壁40との連続部分に近い根元付近に、車外側保持リップ22が設けられている。この車外側保持リップ22は、チャンネル3とアウターパネル2cの折り返し部に当接して、チャンネル3の内面との間をシールしている。さらに、この車外側保持リップ22が、ドアフレーム2のアウターパネル2cの先端の折り返し部の先端に係止して、ガラスラン10がチャンネル3から外れることを防止している。
【0032】
車内側側壁30と車内側シールリップ60は、車外側側壁20と車外側シールリップ50よりも大きく、斜めに延びて厚肉に形成される。このため、ドアガラス5を車外側に位置させることができ、ドアガラス5とドアフレーム2の段差を少なくすることができる。このため、空気抵抗や風切音の発生が減少し、デザイン的にも好ましい。
車内側側壁30と車内側カバーリップ34とは略U字形に連続して形成される。車内側側壁30と車内側カバーリップ34の間にドアフレーム2のインナーパネル2dの先端が挿入され、車内側側壁30と車内側カバーリップ34とでチャンネル3とインナーパネル2dの先端部を挟持して、ガラスラン10の車内側が保持される。
【0033】
車内側側壁30から車内側保持リップ32が延設されている。インナーパネル2dの先端部が挿入されたときに、チャンネル3の車内側側壁が屈曲部を有しているため、車内側保持リップ32がその屈曲部に係止されて、ガラスラン10の車内側側壁30がチャンネル3から外れることを防止することができる。また、車内側保持リップ32は、チャンネル3に当接して、ガラスラン10を保持するとともにチャンネル3とガラスラン10との間をシールしている。
さらに、車内側カバーリップ34の先端は、インナーパネル2dの段部に当接して、インナーパネル2dとガラスラン10の間のシール性を向上させている。
【0034】
この車外側シールリップ50と車内側シールリップ60のドアガラス5が当接する表面には、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等の低摺動部材が塗布されている。このため、ドアガラス5がガラスラン10内を摺動するときに、その摺動抵抗を減少させることができ、ガラスランのずれを防止することができる。
また、車外側側壁20の内面と車外側シールリップ50の裏面に低摺動部材を貼付してもよい。この場合車外側シールリップ50と車外側側壁20との密着を防止できる。
底壁40の断面略U字形の内面には、シールリップ50、60と同様にウレタン樹脂等の低摺動部材が塗布されている。このため、ドアガラス5との摺動抵抗を減少させることができる。
【0035】
次に、ガラスラン10のコーナー部12について説明する。
ドアフレーム2は、図4に示すように、直線部分ではガラスラン10を装着するチャンネル3がドアフレーム2の間に取付けられているが、コーナー部2bにおいてはチャンネル3は存在せずに、アウターパネル2cとインナーパネル2dのみが存在する。このアウターパネル2cとインナーパネル2dにガラスラン10が直接組付けられている。アウターパネル2cのコーナー部には、その先端の部分に切欠部2fが設けられている。
【0036】
ガラスラン10のコーナー部12は、図2に示すように、ドアフレーム2の上辺部と縦辺部に取付けられる直線部11を接続し、ドアフレーム2のコーナー部2bに沿った形状に形成するために型成形で形成される。ガラスラン10のコーナー部12の断面形状は、直線部11の断面形状と略同じであるが、コーナー部12の車内側側壁30に設けられた車内側側壁突起部36と、アウターパネル2cの切欠部2fに対応する車外側側壁20の側壁低部20bの部分は、図1に示すように他の部分とは異なる。
また、ガラスラン10のコーナー部12での断面図では、図2に示すように、車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40とから断面略U字状に形成されているが、上辺部と縦辺部の断面形状の相違をコーナー部で連続的に変化させることにより接続している。
【0037】
さらに、上辺部と縦辺部の断面形状に合わせて、車外側側壁20の先端から車外側シールリップ50が上記断面略U字状の内側に向けて延設されている。また、車外側カバーリップ24が、車外側側壁20の先端からその車外面に沿って底壁40方向に車外側側壁20と略平行に延設されている。車内側側壁30の先端から車内側シールリップ60が上記断面略U字状の内側に向けて延設されており、また、車内側カバーリップ34が車内側側壁30の先端からその外面に沿って底壁40方向に車内側側壁30と略平行に延設されている。このシールリップとカバーリップも上記と同様にコーナー部で上辺部と縦辺部の形状の相違を連続的に変化させて接続している。なお、図2中の41は、底壁40に設けられたガラスラン10のズレ防止用の突起である。
【0038】
ガラスラン10のコーナー部12においては、車内側側壁30の外面の底壁40との連結部分に近い部分である付け根部のコーナー部12の最外周部に、円錐形又は多角錐形の突起である車内側側壁突起部36が設けられている。図1及び図2の実施の形態では四角錐形の突起が設けられている。なお、車外側側壁20と比べて車内側側壁30は底壁40との連結部分である付け根部からの高さが、高いので車内側シールリップ60は車外側シールリップ50の幅よりも大きく形成されている。このため、ガラスラン10の車内側面との間のシールを確実に行うことができるとともに、ドアガラス5をガラスラン10内で車外方向に位置させることができる。
【0039】
この車内側側壁突起部36は、ガラスラン10のコーナー部12において車内側側壁30がコーナー部12に沿って曲がったその最外周部の部分、即ち最も底壁40に近い付け根部に形成されている。この車内側側壁突起部36の底壁40からの高さは、底壁40を挟んで反対側の車外側側壁20の底壁40からの高さとほぼ同じ位置である。これは、車外側側壁20が車内側側壁30と比べて高さが低いためである。
【0040】
ガラスラン10をドアフレーム2に取付ける場合は、まず、ガラスラン10のコーナー部12をドアフレーム2のコーナー部2bに装着する。
図4に示すように、ドアフレーム2のコーナー部2bではチャンネル3が途切れており、上辺部と縦辺部のそれぞれのチャンネル3の先端がコーナー部2bにおいて向き合っている。ガラスラン10をコーナー部2bに装着するときは、ガラスラン10の底壁40をドアフレーム2の開口部にガイドさせ、そして、ガラスラン10を回転させつつドアフレーム2内に挿入し、ドアフレーム2の切欠部2fにガラスラン10の側壁低部20bと車外側カバーリップ24を勘合させて、ガラスラン10を装着、位置決めする。その後、ガラスラン10の直線部11をチャンネル3の中に挿入して、ガラスラン10を装着することができる。
【0041】
このとき、ドアフレーム2のインナーパネル2dの先端がガラスラン10の車内側側壁30に当接する。そして、インナーパネル2dが車内側側壁30に設けられた車内側側壁突起部36に当接して、ガラスラン10が全体として車外側に押される。
さらに、ガラスラン10はドアフレーム2のコーナー部2bの開口に対して斜めに装着されるため、車内側側壁突起部36により、アウターパネル2cの先端が車外側側壁20の底壁40との連結部分である付け根部を押すこととなり、車外側側壁20と車外側カバーリップ24の間に隙間が生じて、アウターパネル2cの先端がその隙間に容易に挿入される。このため、車外側カバーリップ24がアウターパネル2cの外側に出て、車外側カバーリップ24がドアフレーム2のアウターパネル2cと車外側側壁20の間に挟み込まれることなく、ガラスラン10のコーナー部12がドアフレーム2のコーナー部2bに装着されることができる。
【0042】
なお、車内側側壁突起部36は、コーナー部において、車内側側壁20外面の最外周部に設けられたため、ガラスラン10をドアフレーム2のコーナー部2bに装着するときに、最初に車内側側壁突起部36がインナーパネル2dの先端に当接することができ、コーナー部12の装着の最初から、ガラスラン10を車外方向に寄せることができる。
また、車外側カバーリップ24にアウターパネル2cの先端が当接する前に、車内側側壁突起部36によりガラスラン10を車外方向に寄せることができ、確実に、アウターパネル2cの先端が車外側側壁20と車外側カバーリップ24の間の隙間に挿入される。
【0043】
インナーパネル2dのコーナー部2bにおいて、図1に示すように、ガラスラン10の車内側側壁30と対向する面に車内側に膨出する空間部2hが設けられている。このため、ガラスラン10をドアフレーム2のコーナー部2bに装着した後は、車内側側壁突起部36はこの空間部2hに収納されるので、車内側側壁30と底壁40に不要な力が残留せずガラスラン10の取付安定性を確保することができる。
【0044】
車内側側壁突起部36は、円錐形又は多角錐形に形成する。本実施の形態では四角錐である。このため、ガラスラン10の装着時にインナーパネル2dと、車内側側壁30の車内側側壁突起部36の頂点との接触面積が小さく、摺動抵抗が小さいため、ガラスラン10がインナーパネル2dの裏面を摺動し、ガラスラン10の装着が容易である。また、円錐形又は多角錐形であるため、インナーパネル2dの先端が円錐形又は多角錐形の斜面を摺動することができ、挿入抵抗を小さくすることができる。
【0045】
ドアフレーム2の切欠部2fに対応する部分の形状は、図1に示すように、車外側側壁20の側壁低部20bは、その高さが低く、アウターパネル2cのフランジ部分の高さと略同じ高さにすることができる。この場合は、側壁低部20bの先端から断面略L字形の車外側カバーリップ24が延設される。側壁低部20b先端から延設される車外側カバーリップ24と側壁低部20bとで溝部を形成して、その溝部にアウターパネル2cの切欠部2fが挿入される。このため、溝部の奥まで切欠部2fの先端が入り込むことができる。これによって、ガラスラン10のコーナー部12の取付けの位置決めをすることができ、断面L字形の先端の1辺の部分で側壁低部20bを挟持することができる。
【0046】
ガラスラン10の成形においては、直線部11とコーナー部12の成形材料はいずれも、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂が使用され、例えば合成ゴムでは、EPDMゴム、熱可塑性エラストマーでは、オレフィン系エラストマー、軟質合成樹脂では、軟質塩化ビニル等が使用される。
直線部11は、押出成形機により直線状に成形される。
合成ゴムの場合は、押出成形後に加硫槽に搬送されて、熱風や高周波等により加熱されて加硫が行われる。熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂の場合は、冷却され固化される。その後所定の長さに切断されて、押出成形部分は製造される。
【0047】
次に、コーナー部12を形成する型成形部分の成形は、上記により製造された直線部11を形成する押出成形部材を所定寸法に切断して、その切断した押出部分の端部を、型成形部分を成形する金型に挟持して、その金型のキャビティーに型成形部分を形成するソリッド材を注入する。型成形部分の断面形状は押出成形部分の断面形状と略同じである。成形材料は、押出成形部分に使用した材料と同じ種類のものを使用することが好ましい。熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂の場合は、金型に注入されたときに注入材料は溶融されているため、その熱と圧力とで押出成形部分と型成形部分は一体的に融着される。
【0048】
合成ゴムの場合は、金型に注入した後に金型を加熱して加硫する。このとき、押出成形部分と型成形部分は同じ材料あるいは同種類の材料を使用して加硫接着をすることができるため、一体的に固着する。なお、押出成形部分を合成ゴムで形成した場合は、型成形部分を熱可塑性エラストマーで形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態であるガラスランのドアフレームのコーナー部における断面図であり、図5のB−B線に沿った部分の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態であるガラスランのコーナー部の部分平面図である。
【図3】本発明の実施の形態であるガラスランのドアフレームの上辺部における断面図であり、図5のA−A線に沿った部分の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるドアフレームのコーナー部の斜視図である。
【図5】自動車ドアの側面図である。
【図6】従来のドアフレームにおけるウエザストリップの取付関係図である。
【図7】従来のドアフレームのコーナー部の斜視図である。
【図8】従来のガラスランのコーナー部の斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
2 ドアフレーム
2b コーナー部
5 ドアガラス
10 ガラスラン
11 直線部
12 コーナー部
20 車外側側壁
24 車外側カバーリップ
30 車内側側壁
36 車内側側壁突起部
40 底壁
50 車外側シールリップ
60 車内側シールリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアのドアフレームの内周に取付けられ、ドアガラスの昇降を案内するとともに、押出成形により成形された直線部と、上記ドアフレームのコーナー部に取付けられる型成形により成形されたコーナー部を有する自動車用ガラスランにおいて、
上記ガラスランは、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略U字形をなし、上記車外側側壁と車内側側壁の先端から、それぞれ上記断面略U字状の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、該車外側シールリップと車内側シールリップにより上記ドアガラスの両側端部の車外側面及び車内側面をシールし、上記車外側側壁と車内側側壁の先端からそれぞれの外面に沿って上記底壁との連結方向に向けて車外側カバーリップと車内側カバーリップを延設し、
上記ドアフレームのコーナー部では、ドアフレームのアウターパネル及びインナーパネルの先端部をそれぞれ上記車外側側壁と車外側カバーリップの間及び上記車内側側壁と車内側カバーリップの間に挿入して上記ガラスランのコーナー部を保持し、
上記ガラスランのコーナー部の車内側側壁の外面に車内方向に突出する車内側側壁突起部を設けたことを特徴とする自動車用ガラスラン。
【請求項2】
上記ガラスランのコーナー部では、上記車内側側壁の底壁から先端までの高さが、上記車外側側壁における底壁から先端までの高さよりも高く形成され、上記車内側側壁突起部は、上記車内側側壁外面のコーナー部の底壁と連結する付け根部に近接して設けられている請求項1に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項3】
上記ドアフレームのインナーパネルのコーナー部には、ガラスランの上記車内側側壁突起部と対向する部位に空間部を設けた請求項1又は請求項2に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項4】
上記車内側側壁突起部は、円錐形又は多角錐形である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動車用ガラスラン。
【請求項5】
上記ガラスランのコーナー部は、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成された請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自動車用ガラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−7995(P2006−7995A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189343(P2004−189343)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】