説明

自動車用フロアーカーペット及びその製造方法

【課題】吸音性に優れる上に遮音性にも優れて自動車室内における静粛性を十分に確保し得る自動車用フロアーカーペットの製造方法を提供する。
【解決手段】この発明の製造方法は、不織布4、メルトフローレートが10〜1000g/10分である熱可塑性樹脂を押出機20から押出して得られた押出直後の接着フィルム3、及び表皮材2をこの順に重ね合わせた状態でこれらを一対のロール21、22間で挟圧することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸音性及び遮音性に優れた自動車用フロアーカーペット及びその製造方法に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「メルトフローレート」の語は、JIS K7210に準拠して試験温度190℃、試験荷重2.12Nで測定されたメルトフローレートを意味する。
【背景技術】
【0003】
従来より自動車内のフロアーには、足踏み感を良好にすると共に床側からの振動が伝わらないようにすること等を目的として、フロアーカーペットが敷設されている。例えば、床面側(エンジンルーム等)から車室内に侵入する騒音に対する遮音性能を高めたものとして、熱可塑性樹脂に無機充填材を含有せしめてなるコンパウンドシートをカーペット基材の裏面に裏打ち被覆したフロアーカーペットが公知である(特許文献1参照)。
【0004】
また、自動車内での静粛性を維持するべく、屋根、ドア、窓等から車室内に侵入する騒音に対する吸音性能を高めたものとして、例えば、表皮材とフェルト状吸音部材とを熱可塑性樹脂粉末の溶融により形成された通気性接着層で接着一体化した自動車用フロアーカーペットが公知である(特許文献2参照)。屋根、ドア、窓などを介して車室内に侵入してくる騒音は、この通気性接着層を通過してフェルト状吸音部材に到達してここで吸音される。
【特許文献1】特開平10−276888号公報
【特許文献2】実公平1−7636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、自動車内での快適性をより一層向上させるために、自動車の室内空間における静粛性をさらに高めることが強く求められるようになってきている。しかるに、前者の遮音フロアーカーペットでは屋根、ドア、窓等から車室内に侵入する騒音に対する吸音性が不十分であるし、後者の吸音フロアーカーペットでは床面側(エンジンルーム等)から車室内に侵入する騒音に対する遮音性能が不十分であり、このように従来の自動車用フロアーカーペットでは、吸音性能と遮音性能のいずれかの性能が不十分であるために優れた静粛性を確保することができなかった。そこで、優れた吸音性を有すると共に遮音性にも優れた自動車用フロアーカーペットの開発が望まれていた。
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、吸音性に優れる上に遮音性にも優れて自動車室内における静粛性を十分に確保し得る自動車用フロアーカーペット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]不織布、メルトフローレートが10〜1000g/10分である熱可塑性樹脂を押出機から押出して得られた押出直後の接着フィルム、及び表皮材をこの順に重ね合わせた状態でこれらを一対のロール間で挟圧することを特徴とする自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0009】
[2]前記熱可塑性樹脂は、無機発泡剤、有機発泡剤及び熱膨張性マイクロカプセルからなる群より選ばれる少なくとも1種の発泡成分を含有する前項1に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0010】
[3]前記押出直後の接着フィルムは、1.1〜5倍発泡のフィルムである前項2に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0011】
[4]前記熱可塑性樹脂は、充填材を含有する前項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0012】
[5]不織布、押出温度における溶融粘度が5000〜30000mPa・sである熱可塑性樹脂を押出機から押出して得られた押出直後の接着フィルム、及び表皮材をこの順に重ね合わせた状態でこれらを一対のロール間で挟圧することを特徴とする自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0013】
[6]前記接着フィルムの目付が50〜500g/m2である前項1〜5のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0014】
[7]前記不織布として、構成繊維の繊度が0.1〜30デシテックスであると共に目付が50〜2000g/m2の不織布を用いる前項1〜6のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0015】
[8]前記表皮材として、目付50〜200g/m2の基布の上面に目付200〜4000g/m2のパイルが植設されたカーペット原反を用いる前項1〜7のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0016】
[9]前記表皮材として、目付50〜1000g/m2のニードルパンチ不織布を用いる前項1〜7のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【0017】
[10]前項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で得られた通気抵抗値が600〜12450N・s・m-3の自動車用フロアーカーペット。
【発明の効果】
【0018】
[1]の発明では、接着フィルムを構成する熱可塑性樹脂のメルトフローレートが10〜1000g/10分であり加熱溶融時の流動性が大きいので、ロール間で挟圧した際に接着フィルムに通気孔が多数生じるものとなり、このような通気孔が形成された状態の接着フィルムで不織布と表皮材とを接着することができる。接着フィルムを構成する熱可塑性樹脂の加熱溶融時の流動性が大きいので、ロール間で挟圧した際に接着フィルムが不織布の接着面又は/及び表皮材の接着面の凹凸に十分に馴染んで変形し、この変形時に亀裂、穿孔等によって通気孔が形成されるものと推定される。本製造方法によれば、特にカーペットとしての通気特性を適性な範囲に制御することができるから、得られた自動車用フロアーカーペットは、吸音性に優れる上に遮音性にも優れていて自動車室内における静粛性を十分に確保することができる。
【0019】
[2]の発明では、熱可塑性樹脂は発泡成分を含有しており、接着フィルム内に形成された気泡が通気孔形成の起点(核)となるから、ロール間で挟圧した際に接着フィルムに通気孔がより生じやすくなり、接着フィルムにより多くの通気孔を形成することができ、これにより吸音性を一層向上させることができる。
【0020】
[3]の発明では、1.1〜5倍発泡の接着フィルムを用いて接着するから、十分な接着強度を確保しつつ優れた吸音性も確保することができる。
【0021】
[4]の発明では、熱可塑性樹脂は充填材を含有しており、接着フィルム内の充填材が通気孔形成の起点(核)となるから、ロール間で挟圧した際に接着フィルムに通気孔がより生じやすくなり、接着フィルムにより多くの通気孔を形成することができ、これにより吸音性をさらに向上させることができる。
【0022】
[5]の発明では、接着フィルムを構成する熱可塑性樹脂の押出温度における溶融粘度が5000〜30000mPa・sであるから、ロール間で挟圧した際に接着フィルムに通気孔が多数生じるものとなり、このような通気孔が形成された状態の接着フィルムで不織布と表皮材とを接着することができる。ロール間で挟圧した際に接着フィルムが不織布の接着面又は/及び表皮材の接着面の凹凸に十分に馴染んで変形し、この変形時に亀裂、穿孔等によって通気孔が形成されるものと推定される。本製造方法によれば、特にカーペットとしての通気特性を適性な範囲に制御することができるから、得られた自動車用フロアーカーペットは、吸音性に優れる上に遮音性にも優れていて自動車室内における静粛性を十分に確保することができる。
【0023】
[6]の発明では、接着フィルムの目付量が50〜500g/m2であり、50g/m2以上であることで十分な接着強度を確保できると共に500g/m2以下であることで挟圧時に接着フィルムに通気孔がより形成されやすくなり十分な吸音性能を確保することができる。
【0024】
[7]の発明では、不織布として、構成繊維の繊度が0.1〜30デシテックスであると共に目付が50〜2000g/m2の不織布を用いるから、吸音性能をさらに向上させることができる。
【0025】
[8]の発明では、高級感を付与できると共により吸音性に優れたカーペットを製造できる。
【0026】
[9]の発明では、表皮材として目付50〜1000g/m2のニードルパンチ不織布を用いるから、吸音性能をさらに向上させることができる。
【0027】
[10]の発明では、カーペットの通気抵抗値が600〜12450N・s・m-3であるから、吸音性及び遮音性ともに一層向上した自動車用フロアーカーペットが提供され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
この発明に係る自動車用フロアーカーペット(1)の第1製造方法の一実施形態について説明する。
【0029】
まず、基布(11)の上面にパイル(12)が植設されると共に該基布(11)の下面にプレコート処理によってプレコート層(13)が形成された表皮材(2)を準備する。この表皮材(2)は通気性を有している。
【0030】
次に、図2に示すように、押出機(20)からメルトフローレート(MFR)が10〜1000g/10分である熱可塑性樹脂からなる接着フィルム(3)を押出す一方、図面左方向から前記表皮材(2)を供給しつつ、図面右方向から不織布(4)を供給し、表皮材(2)と不織布(4)の間に押出直後の接着フィルム(3)を介在させた状態でこれらを一対のロール(21)(22)間で挟圧することによって、自動車用フロアーカーペット(1)を得る。なお、この時、表皮材(2)のプレコート層(13)が接着フィルム(3)と接触するように配置する。得られた自動車用フロアーカーペット(1)は、図1に示すように、表皮材層(2)と吸音不織布層(4)とが接着フィルム層(3)を介して接着一体化された構成を備える。
【0031】
前記押出機(20)から押出された直後の接着フィルム(3)は溶融軟化状態にあるが、該接着フィルム(3)を構成する熱可塑性樹脂のメルトフローレートが10〜1000g/10分であり溶融時の流動性が大きいので、ロール(21)(22)間で挟圧した際に接着フィルム(3)に通気孔が多数生じ、このような通気孔が形成された状態の接着フィルム(3)で不織布(4)と表皮材(2)とを接着一体化することができる。このような方法で通気孔が形成された接着フィルム(3)で不織布(4)と表皮材(2)とを接着することで得られた本発明の自動車用フロアーカーペット(1)は、特にカーペットとしての通気特性が適性な範囲に制御され得るから、吸音性に優れる上に遮音性にも優れていて自動車室内における静粛性を十分に確保することができる。なお、前記接着フィルム(3)に通気孔が形成される作用機構は定かではないが、接着フィルム(3)を構成する熱可塑性樹脂の加熱溶融時の流動性が大きいので、ロール(21)(22)間で挟圧した際に接着フィルム(3)が不織布(4)の接着面又は/及び表皮材(2)の接着面の凹凸に十分に馴染んで変形し、この変形の際に亀裂、穿孔等の作用によって通気孔が形成されるものと推定される。
【0032】
また、上記第1製造方法によれば、厚さ方向の通気抵抗値が600〜12450N・s・m-3である自動車用フロアーカーペット(1)を容易に製造することができる。このようにカーペット(1)の厚さ方向の通気抵抗値が600〜12450N・s・m-3である場合には、吸音性及び遮音性ともに一層向上したものとなる。中でも、カーペット(1)の厚さ方向の通気抵抗値が1245〜12450N・s・m-3であるのが特に好ましく、この場合にはより一層優れた遮音性能を確保することができる。
【0033】
上記第1製造方法において、前記押出に用いられる熱可塑性樹脂としては、メルトフローレート(MFR)が10〜1000g/10分である熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。前記熱可塑性樹脂の種類としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−メタクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂等が挙げられる。中でも、前記熱可塑性樹脂のメルトフローレートが100〜1000g/10分であるのが好ましく、特に好ましい範囲は200〜600g/10分である。なお、前記熱可塑性樹脂が、後述する発泡成分や充填材等を含有する場合には、これらを含有した状態でのメルトフローレート(MFR)が10〜1000g/10分の範囲にある必要がある。
【0034】
また、前記熱可塑性樹脂としては、無機発泡剤、有機発泡剤及び熱膨張性マイクロカプセルからなる群より選ばれる少なくとも1種の発泡成分を含有したものを用いるのが好ましい。この場合には、熱可塑性樹脂が発泡成分を含有していることで、該熱可塑性樹脂を押出機(20)から押出して得られる接着フィルム(3)内に気泡が形成されるものとなり、この気泡が通気孔形成の起点(核)となるから、ロール(21)(22)間で挟圧した際に接着フィルム(3)に通気孔がより生じやすくなり、接着フィルム(3)により多くの通気孔を形成することができ、これにより吸音性を一層向上させることができる。この発泡成分は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5〜5質量部含有せしめるのが好ましい。
【0035】
前記無機発泡剤としては、特に限定されるものではないが、例えば炭酸水素ナトリウムなどの無機炭酸塩等が挙げられ、また前記有機発泡剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾジカルボンアミド等が挙げられる。
【0036】
また、前記熱膨張性マイクロカプセルは、低沸点炭化水素等のガスを樹脂からなる殻被膜内に封入せしめたものであり、加熱すると樹脂被膜が軟化すると共に、封入されたガスの圧力が増大して膨張発泡するものである。前記熱膨張性マイクロカプセルの殻被膜に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリアクリロニトリル等が挙げられる。殻被膜にポリアクリロニトリルを使用したものとして、エクスパンセル930MB120(日本フィライト株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
また、前記発泡成分を用いた発泡の発泡倍率は1.1〜5倍に設定するのが好ましい。即ち、前記押出直後の接着フィルム(3)は、1.1〜5倍発泡のフィルムであるのが好ましい。1.1倍以上であることで挟圧時に接着フィルム(3)に通気孔がより形成されやすくなり十分な吸音性能を確保することができると共に、5倍以下であることで十分な接着強度を確保できる。中でも、前記発泡成分を用いた発泡の発泡倍率は1.5〜3倍に設定するのがより好ましい。
【0038】
また、前記押出に用いられる熱可塑性樹脂に充填材を含有せしめた場合には、接着フィルム(3)内の充填材が通気孔形成の起点(核)となるから、ロール間で挟圧した際に接着フィルム(3)に通気孔がより生じやすくなり、接着フィルム(3)により多くの通気孔を形成することができ、これにより吸音性能をさらに向上させることができる利点がある。前記充填材としては、特に限定されるものではないが、例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0039】
前記充填材の配合量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し10〜250質量部の範囲に設定するのが好ましい。10質量部以上であることで挟圧時に接着フィルム(3)に通気孔がより形成されやすくなり十分な吸音性能を確保することができると共に、250質量部以下であることで十分な接着強度を確保できる。
【0040】
前記充填材としては、その粒径(長径)が1〜2000μmであるものを用いるのが好ましい。1μm以上であることで挟圧時に接着フィルム(3)に通気孔がより形成されやすくなると共に2000μm以下であることで十分な接着強度を確保できる。中でも、前記充填材としては、その粒径(長径)が50〜500μmであるものを用いるのがより好ましい。
【0041】
なお、前記熱可塑性樹脂に、例えば、石油樹脂、油脂(ステアリン酸等)、炭化水素系オイル等を添加しても良い。
【0042】
次に、この発明に係る自動車用フロアーカーペット(1)の第2の製造方法の一実施形態について説明する。
【0043】
まず、基布(11)の上面にパイル(12)が植設されると共に該基布(11)の下面にプレコート処理によってプレコート層(13)が形成された表皮材(2)を準備する。この表皮材(2)は通気性を有している。
【0044】
次に、図2に示すように、押出機(20)から押出温度における溶融粘度が5000〜30000mPa・sである熱可塑性樹脂からなる接着フィルム(3)を押出す一方、図面左方向から前記表皮材(2)を供給しつつ、図面右方向から不織布(4)を供給し、表皮材(2)と不織布(4)の間に押出直後の接着フィルム(3)を介在させた状態でこれらを一対のロール(21)(22)間で挟圧することによって、自動車用フロアーカーペット(1)を得る。なお、この時、表皮材(2)のプレコート層(13)が接着フィルム(3)と接触するように配置する。得られた自動車用フロアーカーペット(1)は、図1に示すように、表皮材層(2)と吸音不織布層(4)とが接着フィルム層(3)を介して接着一体化された構成を備える。
【0045】
前記押出機(20)から押出された直後の接着フィルム(3)は溶融軟化状態にあるが、該接着フィルム(3)を構成する熱可塑性樹脂の押出温度における溶融粘度が5000〜30000mPa・sであるので、ロール(21)(22)間で挟圧した際に接着フィルム(3)に通気孔が多数生じ、このような通気孔が形成された状態の接着フィルム(3)で不織布(4)と表皮材(2)とを接着一体化することができる。このような方法で通気孔が形成された接着フィルム(3)で不織布(4)と表皮材(2)とを接着することで得られた本発明の自動車用フロアーカーペット(1)は、特にカーペットとしての通気特性が適性な範囲に制御され得るから、吸音性に優れる上に遮音性にも優れていて自動車室内における静粛性を十分に確保することができる。なお、前記接着フィルム(3)に通気孔が形成される作用機構は定かではないが、接着フィルム(3)を構成する熱可塑性樹脂の押出温度における溶融粘度が5000〜30000mPa・sの範囲にあるので、ロール(21)(22)間で挟圧した際に接着フィルム(3)が不織布(4)の接着面又は/及び表皮材(2)の接着面の凹凸に十分に馴染んで変形し、この変形の際に亀裂、穿孔等の作用によって通気孔が形成されるものと推定される。
【0046】
また、上記第2の製造方法によれば、厚さ方向の通気抵抗値が600〜12450N・s・m-3である自動車用フロアーカーペット(1)を容易に製造することができる。このようにカーペット(1)の厚さ方向の通気抵抗値が600〜12450N・s・m-3である場合には、吸音性及び遮音性ともに一層向上したものとなる。中でも、カーペット(1)の厚さ方向の通気抵抗値が1245〜12450N・s・m-3であるのが特に好ましく、この場合にはより一層優れた遮音性能を確保することができる。
【0047】
上記第2製造方法において、前記押出に用いられる熱可塑性樹脂としては、押出温度における溶融粘度が5000〜30000mPa・sである熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。前記熱可塑性樹脂の種類としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−メタクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂等が挙げられる。中でも、前記熱可塑性樹脂の押出温度における溶融粘度が7000〜10000mPa・sであるのが好ましい。なお、前記押出温度は、通常、160〜250℃の範囲である。また、前記溶融粘度は、JIS K6862 B法に準拠して測定された溶融粘度である。
【0048】
この発明において、前記接着フィルム(3)の目付量は50〜500g/m2であるのが好ましい。50g/m2以上であることで十分な接着強度を確保できると共に500g/m2以下であることで挟圧時に接着フィルム(3)に通気孔がより形成されやすくなり十分な吸音性能を確保することができる。
【0049】
前記不織布(4)としては、特に限定されるものではないが、例えばニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等を用いる。この不織布(4)の目付は50〜2000g/m2の範囲に設定するのが好ましい。50g/m2以上とすることで十分な吸音効果が得られると共に2000g/m2以下とすることで十分な通気性が得られて良好な吸音性能の発現に寄与できる。
【0050】
前記不織布(4)を構成する繊維の繊度は0.1〜30デシテックスであるのが好ましい。0.1デシテックス以上とすることで不織布としての強度を十分に確保できると共に30デシテックス以下とすることで十分な吸音性を確保することができる。中でも、不織布(4)を構成する繊維の繊度は0.1〜15デシテックスの範囲とするのがより好ましい。
【0051】
前記表皮材(2)としては、特に限定されるものではないが、例えば、基布(11)の上面にパイル(12)が植設されたカーペット原反、基布(11)の上面にパイル(12)が植設されると共に該基布(11)の下面にプレコート処理によってプレコート層(13)が形成されたカーペット原反(図1参照)、ニードルパンチ不織布、織りカーペット、編みカーペット、電着カーペット等を用いる。
【0052】
前記基布(11)の目付は50〜200g/m2に設定されるのが好ましい。50g/m2以上に設定することでパイル(12)を基布(11)に安定支持状態に植設できると共に、200g/m2以下に設定するこで通気性が十分に得られて十分な吸音性能を確保することができる。また、前記パイル(12)の目付は200〜4000g/m2の範囲に設定するのが好ましい。前記プレコート層(13)は、合成樹脂又はゴムのエマルジョンや溶液を塗布することによって形成されたコート層からなる。
【0053】
前記表皮材(2)としてニードルパンチ不織布を用いる場合、該ニードルパンチ不織布の目付は50〜1000g/m2の範囲に設定するのが好ましい。このような範囲に設定することで、吸音性能をさらに向上させることができる。
【0054】
上記製造方法において、前記押出機(20)のダイス(25)の押出口から前記一対のロール(21)(22)の圧着点までの距離は、通常、1〜500mmの範囲に設定される(図2参照)。また、前記一対のロール(21)(22)間のクリアランスは、通常、0mmを超えて10mm以下の範囲に設定される。
【実施例】
【0055】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
目付100g/m2 のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなる基布(11)にナイロン糸からなる目付295g/m2 のパイル(12)がタフトされたものの裏面に、SBRラテックスをプレコート処理して乾燥目付50g/m2 のプレコート層(13)を形成せしめて、表皮材(2)を得た。
【0057】
次に、図2に示すように、押出機(20)のTダイ(25)からメルトフローレートが200g/10分であるポリエチレンからなる目付200g/m2 の接着フィルム(3)を下方向に押出す一方、図面左方向から前記表皮材(2)を供給しつつ、図面右方向から目付300g/m2 のポリエステル不織布(4)を供給し、表皮材(2)と吸音不織布(4)の間に接着フィルム(3)を介在させた状態でこれらを一対のロール(21)(22)間で挟圧することによって接着一体化して、図1に示す自動車用フロアーカーペット(1)を得た。
【0058】
<実施例2〜11、比較例1〜6>
表1〜3に示す組成からなり、表1〜3に示すメルトフローレート特性等を有する樹脂を、押出機(20)のTダイ(25)から押出して接着フィルム(3)を形成するものとした以外は、実施例1と同様にして自動車用フロアーカーペット(1)を得た。なお、接着フィルムの目付はいずれも200g/m2 とした。また、熱膨張性マイクロカプセルとしては、エクスパンセル930MB120(日本フィライト株式会社製)を用いた。
【0059】
<比較例7>
目付100g/m2 のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなる基布にナイロン糸からなる目付295g/m2 のパイルがタフトされたものの裏面に、SBRラテックスをプレコート処理して乾燥目付50g/m2 のプレコート層を形成せしめて、表皮材を得た。
【0060】
次に、前記表皮材をそのパイル面を下側にして一定速度で搬送しつつ、この上に平均粒径500μmのポリエチレンパウダーを散布量250g/m2 で塗布し、次いでこのパウダーを加熱した後、この上に目付300g/m2 のポリエステル不織布を重ね合わせた後、冷却加圧ロールで加圧することによって、自動車用フロアーカーペットを得た。
【0061】
<比較例8>
目付300g/m2 のニードルパンチ不織布の裏面にSBRラテックスをプレコート処理して乾燥目付80g/m2 のプレコート層を形成せしめて、表皮材を得た。この表皮材のプレコート層の下面に目付1000g/m2 の遮音コンパウンド層(EVA樹脂100質量部に対して炭酸カルシウムが150質量部混合された樹脂組成物からなるコンパウンド層)を裏打一体化することによって、自動車用フロアーカーペットを得た。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
<実施例12>
押出機(20)のTダイ(25)からメルトフローレートが200g/10分であるポリエチレンからなる目付200g/m2 の接着フィルム(3)を下方向に押出す一方、左方向から目付300g/m2 のニードルパンチ不織布からなる表皮材(2)を供給しつつ、右方向から目付300g/m2 のポリエステル不織布(4)を供給し、表皮材(2)と吸音不織布(4)の間に接着フィルム(3)を介在させた状態でこれらを一対のロール(21)(22)間で挟圧することによって接着一体化して(図2参照)、自動車用フロアーカーペット(1)を得た。
【0066】
<比較例9>
目付300g/m2 のニードルパンチ不織布からなる表皮材(2)を一定速度で搬送しつつ、この上に平均粒径500μmのポリエチレンパウダーを散布量250g/m2 で塗布し、次いでこのパウダーを加熱した後、この上に目付300g/m2 のポリエステル不織布を重ね合わせた後、冷却加圧ロールで加圧することによって、自動車用フロアーカーペットを得た。
【0067】
【表4】

【0068】
<実施例13>
目付100g/m2 のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなる基布(11)にナイロン糸からなる目付295g/m2 のパイル(12)がタフトされたものの裏面に、SBRラテックスをプレコート処理して乾燥目付50g/m2 のプレコート層(13)を形成せしめて、表皮材(2)を得た。
【0069】
次に、図2に示すように、押出機(20)のTダイ(25)から押出温度(240℃)における溶融粘度が26100mPa・sであるポリエチレンからなる目付200g/m2 の接着フィルム(3)を押出温度240℃の条件で下方向に押出す一方、図面左方向から前記表皮材(2)を供給しつつ、図面右方向から目付300g/m2 のポリエステル不織布(4)を供給し、表皮材(2)と吸音不織布(4)の間に接着フィルム(3)を介在させた状態でこれらを一対のロール(21)(22)間で挟圧することによって接着一体化して、図1に示す自動車用フロアーカーペット(1)を得た。
【0070】
<実施例14、15、比較例10、11>
表5に示す組成からなり表5に示す溶融粘度特性を有する樹脂を、押出機(20)のTダイ(25)から押出して接着フィルム(3)を形成するものとした以外は、実施例1と同様にして自動車用フロアーカーペット(1)を得た。なお、接着フィルムの目付はいずれも200g/m2 とした。また、押出温度は240℃に設定した。
【0071】
【表5】

【0072】
上記のようにして得られた各自動車用フロアーカーペット(比較例2、4、6、11を除く)について下記評価法に基づいて評価を行った。なお、比較例2、4、6、11では、均一な押出接着フィルムを得ることができず、このため良好状態に接着することができなかった。
【0073】
<通気抵抗値測定法>
JIS L1096−1999の8.27.1のA法により通気度V(cm3/cm2・sec)を測定し、次の換算式より通気抵抗値R(N・s・m-3)を求めた。
R=12450/V
上記換算式は次のようにして導かれたものである。即ち、通気度測定時、気圧Pは次のとおりである。
P=1.27cmH2O=1.27g/cm2=12.7kg/m2=124.5N/m2=124.5Pa
通気度Vは、通気速度vであると言える。
V=1cm3/cm2・sec
v=1cm/sec
通気抵抗値Rは、通気圧P/通気速度vである。
R=P/v
ここで、通気度、1cm3/cm2・secとすると、
R=P/v=124.5Pa/1cm/sec=124.5Pa/cm/sec=12450Pa/m/sec=12450N/m3/sec
これよりR=12450/Vとなる。
【0074】
<吸音率測定法>
ISO 10534−2に準拠して各周波数での垂直入射吸音率を測定した。
【0075】
<透過損失測定法(遮音性評価法)>
インピーダンス管(音響管)を用いた管内法による透過損失測定を行って各周波数での透過損失(dB)を求めた。
【0076】
表から明らかなように、この発明の実施例1〜15の自動車用フロアーカーペットは、吸音性に優れている上に遮音性にも優れていた。
【0077】
これに対し、表皮材と不織布層がパウダーで接着一体化された比較例7、9のカーペットは、吸音性能は良好であるものの、透過損失が小さく遮音性能に劣っていた。また、比較例8のいわゆる遮音カーペットは、遮音性能は良好であるものの、吸音性能が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明に係る自動車用フロアーカーペットは、自動車室内における例えば運転者や同乗者の足元に敷いて用いられるカーペットとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明の自動車用フロアーカーペットの一実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明の自動車用フロアーカーペットの製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1…自動車用フロアーカーペット
2…表皮材
3…接着フィルム
4…不織布
11…基布
12…パイル
13…プレコート層
20…押出機
21、22…ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布、メルトフローレートが10〜1000g/10分である熱可塑性樹脂を押出機から押出して得られた押出直後の接着フィルム、及び表皮材をこの順に重ね合わせた状態でこれらを一対のロール間で挟圧することを特徴とする自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、無機発泡剤、有機発泡剤及び熱膨張性マイクロカプセルからなる群より選ばれる少なくとも1種の発泡成分を含有する請求項1に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項3】
前記押出直後の接着フィルムは、1.1〜5倍発泡のフィルムである請求項2に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、充填材を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項5】
不織布、押出温度における溶融粘度が5000〜30000mPa・sである熱可塑性樹脂を押出機から押出して得られた押出直後の接着フィルム、及び表皮材をこの順に重ね合わせた状態でこれらを一対のロール間で挟圧することを特徴とする自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項6】
前記接着フィルムの目付が50〜500g/m2である請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項7】
前記不織布として、構成繊維の繊度が0.1〜30デシテックスであると共に目付が50〜2000g/m2の不織布を用いる請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項8】
前記表皮材として、目付50〜200g/m2の基布の上面に目付200〜4000g/m2のパイルが植設されたカーペット原反を用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項9】
前記表皮材として、目付50〜1000g/m2のニードルパンチ不織布を用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車用フロアーカーペットの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で得られた通気抵抗値が600〜12450N・s・m-3の自動車用フロアーカーペット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−203919(P2007−203919A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25999(P2006−25999)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】