説明

自動車用乗員拘束装置

本発明は、車両用の乗員拘束装置に関し、車両に装着された状態において、車両の室外空間(A)に面する外面(2a)と、車両の室内(I)に面する内面(2b)を有する車両の支持構造体(2)と、前記支持構造体(2)の前記内面(2b)に面する外面(3a)を有する車両シート(3)と、前記室外空間(A)から前記支持構造体(2)の前記外面(2a)に作用する外力に対向する乗員を保護するべく展開可能とされたガスサック(4)と、前記車両シート(3)の前記外面(3a)に配設された、前記ガスサック(4)の収容のための収容体(5)と、前記収容体(5)において前記ガスサック(4)の車両の前記室内(I)への展開を許容する開成部(6)と、前記室外空間(A)から前記支持構造体(2)の前記外面(2a)への差し迫った外力を検出するプリクラッシュ検出装置(7)を備え、当該プリクラッシュ検出装置は、差し迫った外力を検出すると、前記エアバッグ(4)の前記収容体(5)を、前記車両シート(3)の前記外面(3a)から前記支持構造体(2)の前記内面(2b)へと向かう移動方向(B)に沿って非作用位置から作用位置へと移動させる構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文によって特徴付けられる、自動車用の乗員拘束装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の乗員拘束装置は、車両に装着された車両の支持構造体と、車両の室外に面する外面と、車両の室内に面する内面と、支持構造体の内面に面する外面を備えた車両シートと、室外から支持構造体の外面へと作用する外力から乗員を保護するべく展開可能なエアバッグと、車両シートに装着されるエアバッグ用の収容体と、収容体のうち車両の室内に展開可能な開成部とを備える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、先に言及したタイプ乗員拘束装置においてエアバッグの展開性能向上を図るという問題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の特徴を備える乗員拘束装置によってこの問題が解決される。
【0005】
本発明によれば、室外から支持構造体の外面への差し迫った外力の入力を検出するように構成されたプリクラッシュ検出装置が設けられ、このプリクラッシュ検出装置は、差し迫った外力の入力を検出すると、エアバッグ用の収容体の非作用位置から作用位置へ移動、すなわち車両シートの外面から支持構造体の内面に向かう移動方向に沿って生じる移動をもたらす。
【0006】
この収容体の配置によって、支持構造体と車両シート(シートバック)との間の接続(連結)が可能とされ、側面衝突時に支持構造体の侵入が発生したときにエアバッグ展開空間がブロックされるのをこの接続によって阻止することが可能とされ、これによりエアバッグが室内へと良好に展開する。
【0007】
エアバッグの作動の信頼性向上を図る配置を実現するべく、更にエアバッグ用の収容体が非作用位置から作用位置へと動作することで、支持構造体の内面と車両シートの外面との間に開成部が配設され、これによりエアバッグは、支持構造体の内面と車両シートの外面との間において車両前方への直進方向に向けて自由(自在)に展開可能とされる。
【0008】
エアバッグ用収容体或いは完全に組み立てられたエアバッグモジュールの可逆的な動作を選択するために動作発生装置が設けられ、この動作発生装置は、プリクラッシュ検出装置に連結されるとともに、プリクラッシュ検出装置が差し迫った外力の入力、例えば他の車両との側面衝突を予知すると、非作用位置から作用位置へと収容体を移動させる。
【0009】
プリクラッシュ検出装置は、室外から支持構造体(車体側部)の外面への差し迫った外力の入力が検出されると、動作発生装置の動作をもたらす第1の出力信号を出力するように構成されることで有利とされる。
【0010】
更にエアバッグを膨張させるためのガス発生器が設けられ、このガス発生装置は、収容体がその作用位置にあるときのエアバッグを膨張させるためにガスを発生させ放出することが必要とされる。
【0011】
プリクラッシュ検出装置は、室外から支持構造体に向かう差し迫った外力が検出されたとき、収容体が作用位置にある場合にエアバッグを膨張させるべくガス発生装置を作動させる第2の出力信号を出力するように構成されるのが好ましい。
【0012】
この変更例として、ガス発生装置を作動させる衝突センサが設けられ、この衝突センサは、支持構造体の外面に実際に外力が入力されたことが衝突センサによって検出されると、エアバッグを作動させる。この場合、開成部が車両シートの外側に配設されたときにのみエアバッグが作動される構成であるのが好ましい。
【0013】
本発明の変更例の1つでは、収容体は、支持構造体との間の物理的な連結によってその作用位置において支持構造体の内面を押圧する構成とされ、支持構造体の外面に外力が作用する際、支持構造体の移動方向と反対方向への変形に対抗し、また支持構造体と車両シートとの間の吸収経路(衝突エネルギーを吸収する経路ともいう)がブロックされるのを低減する。
【0014】
本発明の実施形態の1つでは、収容体は、収容体が作用位置において支持構造体の内面にちょうど接触するような範囲において前記の内面に支持可能とされるべく、動力発生装置によって移動方向に沿って移動される。
【0015】
本発明の他の実施形態では、収容体は、作用位置への移動の間に動作発生装置によって予め定められた力で移動方向に沿って支持構造体に向けて押圧され、これにより車両シートは、エアバッグの展開空間或いは支持構造体と車両シートとの間の吸収経路を広げるべく移動方向と反対方向に変形する。このため、特に車両シートのシートバック或いはそのシートバックから突出するバックレスト側部の変形がもたらされる。
【0016】
本発明の更なる変更例では、作用位置への移動の間において、車両シートは移動方向と反対方向に直線移動可能に車両に配設されるよう準備され、収容体は、車両シートを支持構造体から離間するように移動方向と反対方向に移動させるべく、動作発生装置によって支持構造体の内面に押圧されるのが好ましい。これにより、吸収経路を有利に広げることが可能とされ、これに応じて支持構造体が車両の室内の方向に侵入する間において車両シートに着座している乗員の受傷の危険性が低減する。
【0017】
収容体の開成部に脆弱部(開裂を許容する部位)が設けられるのが好ましく、この収容体は好ましくは硬質(高剛性)のハウジングとして構成され、エアバッグ膨張時に脆弱部に沿って開成部が開裂し、車両の縦軸に沿って開成部を押圧する。この場合、脆弱部を直線状に形成することが可能とさる。特に、開成部の脆弱部は、破断縫合部、接着剤或いは相対的な薄肉部として、フィルム或いは織物(布地)によって構成される。
【0018】
収容体は、作用位置への展開の際にエアバッグが悪影響を受けるのを防止するべく、開成部が開成される前にはエアバッグを完全に取り囲むのが有利とされる。ガス発生器は、同様に収容体に配設されるのが好ましく、具体的にはエアバッグ内に配設されるのが好ましい。
【0019】
本発明の実施形態の1つでは、非作用位置から作用位置への移動のために、収容体は移動方向に沿って直線移動可能に車両シートに、特に具体的には車両シートのうち、車両シートに正規の状態で着座している乗員の背面のための受け面を形成するシートバックに装着されるように準備される。この場合、シートバックは、好ましくはバックレスト側部がシートバックの受け面から移動方向に直交して突出し、またシートに着座した乗員と支持構造体との間において移動方向に沿って配設され、このバックレスト側部は、車両シートに着座している乗員のうち支持構造体に面する身体面を支持するべく構成される。この種の別のバックレスト側部は、(車両における装着状態において)車両の交軸に沿って第1のバックレスト側部とは反対側に配設され、これにより車両シートに着座している乗員の少なくとも一部分が2つのバックレスト側部の間において移動方向(車両の交軸y)に沿って配設される。
【0020】
シートバックに移動可能に配設された収容体は、非作用位置においてシートバックの最外部のカバーによって被覆され、これにより非作用位置にある収容体は、車両シートへの固定時においては認識(視認)できない。
【0021】
本発明の1つの変更例では、収容体が作用位置への移動の際に支持構造体の内面に押圧されたとき、バックレスト側部の変形によって、バックレスト側部が収容体の移動方向と反対方向に関し車両シートに着座している乗員を支持するように、シートバックに収容体が配設される。
【0022】
収容体の非作用位置から作用位置への移動を生じさせるべく、動作発生装置は少なくとも1つの圧縮応力スプリングを備え、その圧縮応力の緩和動作によって収容体の移動が生じる。この目的のために、スプリングはシートバックのうち収容体が装着されるバックレストフレームに連結され、これにより収容体は非作用位置と作用位置との間を往復移動可能とされ、このスプリングは、収容体の非作用位置において収容体にバックレストフレームに対する圧縮応力を付与し、これより収容体は、スプリングの圧縮応力の緩和動作(解放動作)の際に移動方向に沿ってその作用位置まで移動される。
【0023】
収容体を非作用位置に固定(ロック)するべく、収容体には、二位置間を移動可能、特には往復回転動作可能な第1の固定要素が装着され、第1の固定要素は、第1の位置においてスプリングの圧縮応力の緩和動作を防止し、第2の位置へと移動することでスプリングが解放され、これにより収容体はスプリングによって非作用位置から作用位置へと移動される。
【0024】
好ましくは更なる別の動作発生装置が設けられ、この動作発生装置は、第1の固定要素を第2の位置へと回転させるために、プリクラッシュ検出装置(第1の出力信号)と相互作用する。特に、前記の別の動作発生装置は、第1の固定要素が第1の位置から、第1の固定要素がスプリングを解放する第2の位置へと回転されるように、例えばピンの形態の連結要素を第1の固定要素に対して押圧するよう構成される電磁コイルを備える。
【0025】
前記の別の動作発生装置は、電磁コイルと相互作用する電子制御システムが引き金(トリガ)となって作動し、プリクラッシュ検出装置の第1の出力信号を受けると、第1の固定要素を第2の位置へと回転させるための電磁コイルを作動させる。
【0026】
好ましくは、更に第2の固定要素が設けられ、この第2の固定要素は、収容体が非作用位置と作用位置とを移動する間にバックレストフレームの延在部に沿ってスライド動作し、当該延在部との間で応力が付与されるよう構成され、これにより第2の固定要素は、前記の延在部に沿ってスライド動作したとき、当該延在部に形成された少なくとも1つの凹部に係合可能とされる。
【0027】
当該少なくとも1つの凹部は、移動方向と反対方向に収容体に作用する力を吸収する収容体用の当接部を形成し、これにより第2の固定要素が少なくとも1つの凹部に係合しているとき、収容体は作用位置を外れて移動方向と反対方向に移動できない。
【0028】
バックレストフレームの前記の領域には、第2の固定要素が前記の領域に沿ってスライド動作したときに係合可能な複数の凹部が設けられるのが好ましい。
【0029】
本発明の変更例の1つでは、第2の固定要素は、二位置間の往復回転動作が可能なレバーとして構成され、その第1の位置では少なくとも1つの凹部に係合せず、その第2の位置では少なくとも1つの凹部に係合する。この場合、前記のレバーは第1の位置において第2の位置の方向へと応力が付与され、これによりレバーは凹部をスライドする際に少なくとも1つの凹部に押し込まれる。
【0030】
本発明の改良では、収容体は、非作用位置と作用位置との間で可逆的な移動が可能となるように構成され、プリクラッシュ検出装置においては、それによって予知された外力が支持構造体の外面に作用しないとき、第2の出力信号に代えて収容体を作用位置から非作用位置へと戻す動作をもたらす第3の出力信号を用いるのが好ましい。
【0031】
支持構造体は、車体の側部、車両の側方ドア及び車体ピラーの車体部分の中から選択されるのが好ましい。更に、本実施の形態の場合、車両シートは、車両の運転席シート或いは助手席シート(前席乗員シート)として構成されるのが好ましい。
【0032】
本発明の更なる詳細及び利点は、図面を参照しつつ以下に説明する典型的な実施形態から明瞭化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、図2とともに乗員拘束装置1を示しており、図1において乗員シート3として構成される車両シートと、車両シート3に隣接して配置された車両Bピラーとしての支持構造体2を備えている。この支持構造体2は、車両の室外空間Aに面する外面2aと、外面2aとは反対側において車両シート3の外面3aに面する内面2bを有する。
【0034】
乗員拘束装置1は、車両のうち交軸yの少なくとも1つの成分を含む方向に沿って室外空間Aから支持構造体2の外面2aへと作用する外力(荷重ないし力ともいう)の入力に対し、車両シート3に着座している乗員Pを保護する機能を有する。通常そのような外力の入力は、衝突物(例えば(自車両とは別の)車両)が車体側部、本実施の形態では車両のうち支持構造体2の外面2aに衝突するような側面衝突時において生じる。
【0035】
乗員拘束装置1は、乗員Pを保護するべく、ガス発生器(「ガスジェネレータ」ともいう)9からのガスによって膨張可能なエアバッグ4を備えている。エアバッグ4と、このエアバッグ4に対しガス誘導手段を介して接続されたガス発生器9は、1つのハウジング面を除いて、硬質の(高剛性の)ハウジングとして構成された収容体5に収容され、そのハウジング面は、収容体5が車両に装着された状態において車両の縦軸(車両の前後方向に延在する長軸ともいう)xに沿って車両前方へと向かい、また撓み可能な柔軟性を有する開成部(開口部分を開放可能な開放領域ともいう)6として構成されており、エアバッグ4が膨張時にエアバッグ容量の増大によって開成部6を押圧することで当該領域が開裂する(開放される)。
【0036】
車両シート3は、更にシートバック10を備え、当該シートバックは、車両シート3に正規の状態で着座している乗員Pの背面を受ける受け面11を形成するとともに、補強された基体部分(ベース部分)としてのバックレストフレーム14を含む構成とされる。シートバック10のうち支持構造体2に向かう縁部領域においては、バックレスト側部12が車両の縦軸xに沿って受け面11を越えて突出しており、これによりバックレスト側部12は、乗員Pのうち支持構造体2に向かう身体面P’を支持するべく、乗員Pの身体面P’と支持構造体2との間において車両の交軸(車両の縦軸ないし長軸に直交する軸ともいう)yに沿った少なくとも幾つかの部位に配設されている。
【0037】
収容体5は、車両の縦軸xと平行位置にて延在する移動方向Bに沿って直線的に移動されることで車両シート3のバックレストフレーム14に装着され、これにより当該収容体は、車両シート3のシートバック10の中に収容体5が完全に埋設される非作用位置から、収容体5が好ましくは移動方向Bに沿って支持構造体2の内面2bを押圧することで、支持構造体2に物理的に連結される(一体的に動作可能につながれた状態とされる)作用位置へと移動可能とされる。このため、車両の交軸yに沿った動作成分を有する衝突物が、室外空間Aから支持構造体2の外面2aへと衝突するとき、支持構造体2の内面2bと車両シート3の外面3aとの間における(移動方向Bに沿った)吸収経路(衝突エネルギーを吸収する経路ともいう)B’’に関する侵入ないし封鎖が阻止される。更に、収容体5は、作用位置へと移動する間に、移動方向Bとは反対の入力方向B’に沿って外力が車両シート3に入力されるように、支持構造体2の内面2bに押圧される可能性があり、本実施形態の場合では、交軸yに平行に延在する荷重方向B’に沿って前記の外力が車両シートを内側へと移動させる。このため、吸収経路B’’が乗員Pの保護を図るのに有効となるように延びている。
【0038】
支持構造体の内面2bを支持する収容体5の受け面5aは、非作用位置から作用位置への動作の間に支持構造体2との物理的な連結が良好になされるように、部分的にぐらつきのない安定した構造を有するのが好ましい。受け面5aは、非作用位置において車両シート3或いはそのシートバック10のうち支持構造体2に面する外面3aに対し同一平面に(水平状に)埋設されるのが好ましい。
【0039】
更に、開成部6は、収容体5が作用位置へと移動することで、支持構造体2と車両シート3との間において移動方向B(車両の交軸y)に沿って配設され、これによりエアバッグ4は、侵入してくる障害物から乗員Pを保護するべく、(開成される)開成部6を通じて妨害されることなく車両前方への直進方向に向けて自由に(妨害されることなく自在に)展開可能とされる。
【0040】
収容体5を良好なタイミングで移動させるために、(衝突を予め検出する)プリクラッシュ検出装置7が設けられており、このプリクラッシュ検出装置7は、収容体5を非作用位置から作用位置へと駆動する動作発生装置(「駆動装置」ともいう)8及びガス発生器9との間で相互作用する。
【0041】
このプリクラッシュ検出装置7(例えばレーダーによる検出装置)は、差し迫った危急の衝突を検出した場合には、動作発生装置8による収容体5の非作用位置から作用位置への駆動をもたらす第1の出力信号を出力する。このプリクラッシュ検出装置7の第2の出力信号の出力により、ガス発生器9が点火され(ガスの発生が開始され)、その後に作用位置にある収容体5の外部へとエアバッグ4を展開させる。プリクラッシュ検出装置7は、予知された側面衝突が回避可能である場合、動作発生装置8が可逆的な動作が可能なときには、第2の出力信号に代えて、収容体5を作用位置から非作用位置へと戻すような駆動をもたらす第3の出力信号を出力する。
【0042】
図2には、動作発生装置8の変更例が詳細に示されている。収容体5をバックレストフレーム4に直線移動可能に配設するために、前記の収容体は、(収容体5に固定状に接続された)支持部5bを備えており、当該支持部は、非作用位置においては張力性のスプリング13によってバックレストフレーム14に対し応力(「圧縮応力」或いは「弾性付勢力」ともいう)を付与し、このスプリング13の圧縮応力の緩和動作(スプリング13の圧縮が解除されつつ圧縮応力或いは弾性付勢力が緩和(解放)される動作)によって、収容体5は(支持部5bとともに)支持構造体2に向け移動方向Bに沿って移動される。
【0043】
収容体5を非作用位置に固定(ロック)するために、支持部5bに設けられた第1の固定要素15が第1及び第2の位置の間を往復回転動作可能とされており、この第1の固定要素15は、第1の位置においてバックレストフレーム14の凹部14aに係合し、前記の凹部は、スプリング13により移動方向Bに沿って支持部5bへと付与される応力を吸収する。収容体5を作用位置へと移動させるように第1の固定要素15を支持部5bが解放される第2の位置へと回転させるために、磁気コイル16(動作発生装置8とは別の動作発生装置或いは駆動装置としての磁気コイル)が設けられており、当該磁気コイルは、プリクラッシュ検出装置7による第1の出力信号の出力によって、ピン16aを第1の固定要素15に向けて押圧し、これにより第1の固定要素はバックレストフレーム14の凹部14aとの間の係合が解除される。支持構造体2の方向への収容体5の移動制御を可能とするべく、収容体5は、バックレストフレーム14上を長手方向に移動可能となるように支持部5bを介して移動方向Bに沿って誘導される。
【0044】
収容体5が作用位置へと移動する間に、支持構造体2に侵入する衝突物が収容体5に作用して当該収容体5が移動方向Bと反対に向けて非作用位置へと戻されるのが、第2の固定要素17によって防止される。この目的において、第2の固定要素17は、支持部5bに回転可能に配設された回転レバーとして構成され、また収容体5が非作用位置から作用位置へと移動する際に、バックレストフレーム14のうち車両の交軸yに沿って延在する延在部18に応力を付与し、また当該延在部に沿ってスライド可能とされる。この第2の固定要素は、延在部18に沿ってスライドする際に複数の凹部19にラッチ係合(凹部に引っ掛かるように係合)し、これら凹部は延在部18に沿って配設されるとともに、第2の固定要素17が作用位置の方向に移動する際にそのような凹部19から自動的に係合解除されるように構成されており、複数の凹部19のそれぞれが収容体5の支持部5bのための当接部分とされ、前記の支持部は、当該支持部が移動方向Bと反対方向の(衝突物を侵入させる)力を受けるときに第2の固定要素17に接続される。別の方法では、支持部5aが移動方向Bと反対に動作している間に第2の固定要素17は、延在部18の凹部19にラッチ係合し、また第2の固定要素17が移動方向Bと直交する方向の力によって凹部19の外へと回転されない限り、凹部19からもはや係合解除することができない。この係合解除のための分離駆動装置(ラッチ係合している第2の固定要素17及び凹部19を分離させるための駆動装置)が適宜に設けられる。
【0045】
バックレストフレーム14の延在部18にそのような複数の凹部19を、詳しくは移動方向Bに従い支持部5bの動作経路全体に沿って形成することで、侵入衝突物が移動方向Bと反対方向に収容体5に作用するとき、第2の固定要素17には前記の動作経路全体に沿って常に任意の当接部分19が割り当てられる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、展開可能なエアバッグを備える乗員拘束装置を上方からみた図である。
【図2】図2は、図1に示すタイプの乗員拘束装置を後方からみた図である。
【符号の説明】
【0047】
1 乗員拘束装置
2 支持構造体
2a 外面
2b 内面
3 車両シート
3a 外面
4 エアバッグ
5 収容体
5a 受け面
5b 支持部
6 開成部
7 プリクラッシュ検出装置
8 動作発生装置
9 ガス発生器
10 シートバック
11 受け面
12 バックレスト側部
13 スプリング
14 バックレストフレーム
14a 凹部
15 第1の固定要素
16 磁気コイル
16a ピン
17 第2の固定要素
18 延在部
19 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の乗員拘束装置であって、
車両に装着された状態において、車両の室外空間(A)に面する外面(2a)と、車両の室内(I)に面する内面(2b)を有する車両の支持構造体(2)と、
前記支持構造体(2)の前記内面(2b)に面する外面(3a)を有する車両シート(3)と、
前記室外空間(A)から前記支持構造体(2)の前記外面(2a)に作用する外力に対向する乗員を保護するべく展開可能とされたエアバッグ(4)と、
前記車両シート(3)の前記外面(3a)に配設された、前記エアバッグ(4)の収容のための収容体(5)と、
前記収容体(5)において前記エアバッグ(4)の車両の前記室内(I)への展開を許容する開成部(6)と、
を備え、
前記室外空間(A)から前記支持構造体(2)の前記外面(2a)への差し迫った外力を検出するプリクラッシュ検出装置(7)を更に備え、当該プリクラッシュ検出装置は、差し迫った外力を検出すると、前記エアバッグ(4)の前記収容体(5)を、前記車両シート(3)の前記外面(3a)から前記支持構造体(2)の前記内面(2b)へと向かう移動方向(B)に沿って非作用位置から作用位置へと移動させる構成であることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)の前記非作用位置から前記作用位置への移動によって、前記開成部(6)が前記支持構造体(2)の前記内面(2b)と前記車両シート(3)の前記外面(3a)との間に配置され、これにより前記エアバッグ(4)は、前記支持構造体(2)の前記内面(2b)と前記車両シート(3)の前記外面(3a)との間で前記移動方向(B)と直交する方向に展開可能とされることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗員拘束装置であって、
前記エアバッグ(4)は、車両に装着された状態において、膨張時に車両の縦軸(x)に沿って車両前方への直進方向に向けて展開するように構成されていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
動力発生装置(8)を備え、当該動力発生装置は、前記プリクラッシュ検出装置(7)と相互作用するように構成され、また前記プリクラッシュ検出装置(7)による差し迫った外力の検出時に前記収容体(5)を前記非作用位置から前記作用位置へと移動させるように構成されていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項5】
請求項4に記載の乗員拘束装置であって、
前記プリクラッシュ検出装置(7)は、前記支持構造体(2)の前記外面(2a)への差し迫った外力が検出されると、前記動力発生装置(8)の起動をもたらす第1の出力信号を出力するように構成され、これにより前記動力発生装置(8)が前記収容体を非作用位置から作用位置へと移動させることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記エアバッグ(4)を膨張させるためのガス発生器(9)を備え、当該ガス発生器は、前記収容体(5)が前記作用位置にあるときに前記エアバッグ(4)を膨張させるためのガスを放出する構成であることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項7】
請求項6に記載の乗員拘束装置であって、
前記プリクラッシュ検出装置(7)は、前記収容体(5)が前記作用位置にあるとき、前記支持構造体(2)の前記外面(2a)への差し迫った外力が検出されると、前記エアバッグ(4)を膨張させるべく前記ガス発生器(9)を作動させる第2の出力信号を出力するように構成されていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項8】
請求項6に記載の乗員拘束装置であって、
前記ガス発生器(9)と相互作用する衝突センサが設けられており、当該衝突センサは、前記収容体(5)が前記作用位置にあるとき、前記支持構造体(2)の前記外面(2a)への外力の作用が検出されると、前記エアバッグ(4)を膨張させるべく前記ガス発生器(9)を起動させることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記作用位置において前記支持構造体(2)の前記内面(2b)に支持され、前記支持構造体(2)の前記外面(2a)への外力の作用時に、前記移動方向(B)と反対方向の前記支持構造体(2)の変形に対抗する構成であることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項10】
請求項4または、請求項4に従属する請求項5から9のいずれかに記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記作用位置へと移動する間に、前記移動方向(B)に沿って前記支持構造体(2)に向けて押圧され、これにより前記車両シート(3)は、前記エアバッグ(4)の展開空間を維持するべく前記移動方向(B)と反対方向に変形することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項11】
請求項4または、請求項4に従属する請求項5から9のいずれかに記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記作用位置において前記支持構造体(2)の内面(2b)にちょうど接触するような範囲において、前記動力発生装置(8)によって前記移動方向(B)に沿って移動することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項12】
請求項1から10のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記車両シート(3)は、前記移動方向(B)に沿って直線移動するように車両に装着されていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項13】
請求項12に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記作用位置へと移動する間に、前記動力発生装置(8)によって前記支持構造体(2)の前記内面(2b)に向けて押圧され、前記車両シートを前記支持構造体から離間するように前記移動方向(B)と反対方向に移動させることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項14】
請求項1から13のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)の前記開成部(6)は脆弱部を備え、前記エアバッグが膨張時に前記開成部を押圧するとき、前記開成部(6)が前記脆弱部に沿って開裂することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項15】
請求項1から14のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、少なくとも一部が硬質のハウジングとして構成されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項16】
請求項6または、請求項6に従属する請求項7から15のいずれかに記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記エアバッグ及び前記ガス発生器を取り囲む構成であることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項17】
請求項1から16のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記非作用位置から前記作用位置への移動のため、前記移動方向(B)に沿って直線移動可能となるように前記車両シート(3)に装着されていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項18】
請求項1から17のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記車両シート(3)は、前記車両シート(3)に着座している乗員(P)の背面を受ける受け面(11)を形成するシートバック(10)を有することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項19】
請求項18に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記非作用位置から前記作用位置への移動のため、前記移動方向(B)に沿って直線移動可能となるように前記シートバック(10)に装着され、また前記非作用位置において前記シートバック(10)の最外部のカバーによって被覆されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項20】
請求項18または19に記載の乗員拘束装置であって、
前記シートバック(10)は、バックレスト側部(12)を有し、当該バックレスト側部は、前記移動方向(B)と直交する方向に関し前記シートバック(10)の前記受け面(11)を越えて突出するとともに、前記車両シート(3)に着座している乗員(P)と前記支持構造体(2)との間に配設され、また前記車両シート(3)に着座している乗員(P)のうち前記支持構造体(2)に面する身体面(P’)を支持するべく構成されていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項21】
請求項11を除いて従属する請求項20に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記非作用位置から前記作用位置への移動のため、前記移動方向(B)に沿って直線移動可能となるように前記シートバック(10)に装着され、前記収容体(5)が前記作用位置へと移動する間に前記支持構造体(2)の前記内面(2b)を前記移動方向(B)に沿って押圧するとき、前記車両シート(3)に着座している乗員(P)のうち前記支持構造体(2)に面する身体面(P’)に向けて前記移動方向(B)と反対方向に前記バックレスト側部(12)を押圧することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項22】
請求項1から21のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)の前記非作用位置から前記作用位置への動作を発生させるべく、動作発生装置(8)は、圧縮応力スプリング(13)を有し、当該スプリングの圧縮応力の緩和動作によって前記収容体の移動が生じることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項23】
請求項18または、請求項18に従属する請求項19から22のいずれかに記載の乗員拘束装置であって、
前記車両シート(3)は、前記シートバック(10)の基体部分としてのバックレストフレーム(14)を有することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項24】
請求項23に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記非作用位置から前記作用位置への移動のため、前記移動方向(B)に沿って直線移動可能となるように前記バックレストフレーム(14)に装着されていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項25】
請求項22ないし請求項23または24に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)の前記非作用位置において、前記スプリング(13)は前記収容体(5)に前記バックレストフレーム(14)に対する圧縮応力を付与し、これにより前記収容体(5)は、前記スプリング(13)の圧縮応力の緩和動作の間に、前記移動方向(B)に沿って前記作用位置へと移動することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項26】
請求項22、或いは請求項22に従属する請求項23から25のいずれかに記載の乗員拘束装置であって、
二位置間を往復動作可能な第1の固定要素(15)を備え、当該第1の固定要素(15)は、第1の位置において前記スプリング(13)の圧縮応力の緩和動作を防止し、第2の位置へと動作することで前記スプリング(13)を解放し、これにより前記収容体(5)は、前記スプリング(13)によって前記非作用位置から前記作用位置へと移動することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項27】
請求項26に記載の乗員拘束装置であって、
前記第1の固定要素(15)は、前記第1及び第2の位置間を往復回転動作可能となるように前記収容体(5)に配設された構成であることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項28】
請求項22ないし請求項26または27に記載の乗員拘束装置であって、
更なる動作発生装置(16)が設けられており、当該動作発生装置は、前記プリクラッシュ検出装置と相互作用し、前記プリクラッシュ検出装置(7)が前記支持構造体(2)の前記外面(2a)への差し迫った外力を検出すると、前記第1の固定要素(15)を前記第1の位置から前記第2の位置へと回転させることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項29】
請求項23、或いは請求項23に従属する請求項24から28のいずれかに記載の乗員拘束装置であって、
第2の固定要素(17)が設けられ、当該第2の固定要素は、前記収容体(5)が前記非作用位置と前記作用位置とを移動する間に、前記バックレストフレーム(14)の延在部(18)に沿ってスライド動作し、前記延在部(18)に対し応力を付与し、前記第2の固定要素(17)が前記延在部(18)に沿ってスライド動作するとき、前記延在部(18)に形成された少なくとも1つの凹部(19)に係合可能とされていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項30】
請求項29に記載の乗員拘束装置であって、
前記凹部(19)は、前記収容体(5)に対し前記移動方向(B)と反対方向に作用する力を吸収する前記収容体(5)のための当接部を形成し、これにより前記第2の固定要素(17)が少なくとも1つの凹部(19)に係合すると、前記収容体(5)は前記移動方向(B)と反対方向に移動不能とされることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項31】
請求項29または30に記載の乗員拘束装置であって、
前記延在部(18)に複数の凹部(19)が設けられており、前記第2の固定要素(17)は前記延在部(18)に沿ってスライド動作する際に当該凹部に係合可能とされることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項32】
請求項29、或いは請求項29に従属する請求項30または31のいずれかに記載の乗員拘束装置であって、
前記第2の固定要素(17)は、二位置間を往復回転動作可能なレバーとして構成され、第1の位置では少なくとも1つの凹部(19)と係合せず、第2の位置では少なくとも1つの凹部(19)と係合し、前記第1の位置にある前記レバー(17)は前記第2の位置へと応力が付与されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項33】
請求項1から32のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記収容体(5)は、前記非作用位置と前記作用位置との間で可逆的な移動が可能とされた構成であることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項34】
請求項1から33のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記支持構造体(2)の前記外面(2a)への外力の予知が生じない場合、前記プリクラッシュ検出装置(7)は、前記収容体(5)の前記作用位置から前記非作用位置への移動をもたらす第3の出力信号を出力することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項35】
請求項1から34のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記支持構造体(2)は、車体の側部、車両の側方ドア或いは車体ピラーの車体部分によって構成されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項36】
請求項1から35のうちのいずれか1項に記載の乗員拘束装置であって、
前記車両シート(3)は、車両の運転席シート或いは助手席シートとして構成されることを特徴とする乗員拘束装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−520628(P2009−520628A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546296(P2008−546296)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012647
【国際公開番号】WO2007/073944
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(594101503)タカタ・ペトリ アーゲー (146)
【Fターム(参考)】