説明

自動車用内装材

【課題】従来の熱反射エナメルや太陽熱遮蔽塗料組成物は、その性質から、太陽光の当たる塗装物の最表面に塗らなければ効果がないと考えられており、特に自動車等、商品の意匠(外観)が重要なファクターとなる物品については、選定できる塗料が限定されてしまうという難点があった。従って、本発明の目的は、塗膜最表面の意匠に影響を与えない熱遮蔽効果を有する内装材を提供することである。
【解決手段】基体と赤外線反射機能を有する層とからなる自動車用内装材であって、上記赤外線反射機能を有する層は、自動車ボディに相対する面に向けて、直接取り付けられるものであり、350〜2500nmの波長領域における光線反射率が20%以上であり、乾燥膜厚が1μm〜100μmである赤外線反射機能を有する塗膜層である自動車用内装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光等の照射が原因である自動車車内の温度上昇を抑制するのに好適な自動車用内装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炎天下に自動車を放置すると車内温度が上昇する。これを抑制するためにエアコンを使用するとガソリンの使用量が増え、COガスの排出量も増加する。このような、温度上昇抑制のために消費するエネルギー量は膨大なものである。
【0003】
そこで、エネルギーを消費することなく温度上昇を防ぐ一手段として種々の遮熱塗料が提案されている。例えば特公昭59−31545号公報には酸化ニッケル、三酸化アンチモン等の顔料を含む熱反射エナメルが、特許第2593968号公報には重金属を含有しない黒色の太陽熱遮蔽塗料組成物が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記熱反射エナメルや太陽熱遮蔽塗料組成物は、その性質から、太陽光の当たる塗装物の最表面に塗らなければ効果がないと考えられている。そのため特に自動車等、商品の意匠(外観)が重要なファクターとなる物品については、選定できる塗料が限定されてしまうという難点があった。従って、本発明の目的は、塗膜最表面の意匠に影響を与えない熱遮蔽効果を有する内装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基体と赤外線反射機能を有する層とからなる自動車用内装材であって、前記赤外線反射機能を有する層は、自動車ボディに相対する面に向けて、直接取り付けられるものであり、350〜2500nmの波長領域における光線反射率が20%以上であり、乾燥膜厚が1μm〜100μmである赤外線反射機能を有する塗膜層であることを特徴とする自動車用内装材である。
上記赤外線反射機能を有する塗膜層が、アルミニウムフレーク顔料を含む塗料によって形成されたものであることが好ましい。
上記赤外線反射機能を有する塗膜層が、長径1〜150μmの大きさの鱗片状アルミニウム粉末表面をステアリン酸等の処理剤を覆ったリーフィングアルミニウム含有塗膜であることが好ましい。
上記内装材が天井用内装材であることが好ましい。
【0006】
以下、本発明を図1に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明の自動車用内装材を自動車ボディへ取り付けた様子の一例を示す断面図である。本図において、自動車ボディ1のルーフパネル2には本発明の内装材3が図示しない金属やプラスチック製の取付具、例えばボルトやビス等により取り付けられている。内装材3は基体4および赤外線反射層5から構成される。内装材3の赤外線反射層5は、ルーフパネル2側に向けて取り付けられているため、ルーフパネル2の上から太陽光が入射しても、熱は赤外線反射層5で遮蔽される。このため、基体4には熱が伝わらない。
【0007】
本発明に使用する内装材3の基体4は、例えば樹脂板あるいは樹脂発泡体からなる芯材と、この芯材の室内側に積層したクッション材と、クッション材の表面を被覆する表装材とから製造することができる。また、芯材がクッション材を兼ねる素材であれば、その表面に表装材を直接積層することも可能である。この表装材は、発泡性芯材と同じ材質の低発泡化あるいは無発泡化したものでも良い。さらに芯材として、樹脂の替わりに、あるいは樹脂と併用した複合材として有機繊維や無機繊維を使用することも可能である。この他、基体4には制振機能や吸音機能を有する層、例えば合成繊維からなる層を組み込むこともできる。
【0008】
上記樹脂板の例としては、プロピレン・エチレンブロック共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリカーボネート等の樹脂成分に軽量化を目的としてタルク、有機発泡粒子、無機発泡粒子等のフィラーを加えて成形したものが挙げられる。また、樹脂発泡体の例としては、スチレンモノマーと他の共重合性モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸とからなる変性スチレン樹脂発泡体、プロピレンを主体とし、他のオレフィンと共重合させた変性プロピレン樹脂発泡体、変性フェニレンエーテル樹脂発泡体、およびこれら樹脂の混合物からなる発泡体が挙げられる。
【0009】
芯材の厚さは使用する個所によって適宜調整することができるが、ルーフパネル2に取り付ける内装材用としては、2〜10mm程度が好ましい。また、上記クッション材の例としては、ウレタンフォームが挙げられ、表装材としては、シボ模様、レザー加工等を施した合成樹脂シート、織布、不織布等が挙げられる。
【0010】
上記赤外線反射層5の形成手段は2種類あり、その一つは基体4に赤外線反射機能を有する箔等の薄板を貼り付ける方法であり、他の一つは基体4に赤外線反射機能を有する塗膜層を設ける方法である。ここにおいて、赤外線反射機能とは、350〜2500nmの波長領域におけるJIS A 5759に準拠した光線反射率が20%以上、望ましくは50〜90%であることを意味する。
【0011】
先ず、第1の手段である基体4に赤外線反射機能を有する材料を貼り付ける方法について説明する。薄板としては、赤外線反射機能を有するものであれば材質は問わないが、その例としては、アルミニウム箔、アルミニウムシート、ステンレス箔があり、さらにプラスチック等の基材にアルミニウム箔、ステンレス箔を貼り付けたりアルミニウムを蒸着して製造した積層シート等がある。上記アルミニウムに代えてクロム蒸着シート、スズめっきシート等も使用できる。
【0012】
これら薄板の厚さは、赤外線反射機能を有するアルミニウム材料等の部分が少なくとも0.01μm〜10mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.1μm〜1mmである。厚さが0.01μm未満では熱遮蔽効果が低下することがあり、一方10mmを超えると成形性が低下し、また車体総重量が増加する等の問題が生ずることがある。
【0013】
赤外線反射層5を基体4に貼り付けるには、例えばエポキシ樹脂系、スチレン樹脂系、ポリオレフィン系等、基体4の材料に適合する接着剤を用いることができるが、赤外線反射層5は必ずしも基体4に強固に密着させる必要はない。すなわち、内装材3を自動車ボディ1に取り付ける迄に剥がれ落ちない程度の接着性があれば良いため、金属針による打ち付け、部分熱融着、あるいは金属箔への粘着剤塗布等、他の手段を用いることも良い。
【0014】
また別法として、基体4と赤外線反射層5とを同時に成形する方法がある。すなわち、金型内に敷設した赤外線反射層5上に熱可塑性樹脂と発泡剤との混合物を流し込み、積層と発泡体成形とを同時に行う方法、あるいは、表装材上に上記混合物を流し、その上に赤外線反射層5を置き、圧縮下または減圧下に発泡体を硬化させて一挙に積層体を製造する方法等である。
【0015】
次に、他の一つの方法である基体4に赤外線反射機能を有する塗膜層を設ける方法を説明する。赤外線反射機能を有する塗膜は、例えばアルミニウムフレーク顔料を含む塗料によって形成することができる。なかでも好ましいのはリーフィングアルミニウムフレーク顔料を含む塗料である。
【0016】
リーフィングアルミニウムフレーク顔料とは、長径1〜150μmの大きさの鱗片状アルミニウム粉末表面をステアリン酸等の処理剤で覆ったものであり、この顔料を含有する塗料を基体4に塗装すると、塗膜表面にアルミニウム粉末が浮いて来て完全なアルミニウム層を形成する。また、その他の顔料としてはリーフィング機能を持たないアルミニウム粉末顔料等がある。
【0017】
赤外線反射層5の乾燥膜厚は、1〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜50μmである。塗膜厚が1μm未満では熱遮蔽機能が不十分となり、一方100μmを超えても熱遮蔽効果は飽和して経済上不利になることがある。
【0018】
上記顔料の分散に用いるビヒクルとしては、従来公知のアルキド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、およびこれら樹脂の変性体等が挙げられるが、例えばポリプロピレン製の基体4を使用する場合はビヒクルとしてオレフィン系樹脂を選ぶ等、基体4を構成する材料と密着性の良い樹脂を選択する必要がある。
【0019】
塗料形態は、有機溶剤型塗料か水性塗料が好ましく、低温焼付けまたは常温乾燥によって塗膜を形成することが好ましい。なお、塗装方法についてはスプレー塗装、刷毛塗り塗装、浸漬塗装、ロール塗装、流し塗装等どのような方法も使用できる。
【0020】
上記の通り、基体4に赤外線反射層5を設けた内装材3は、自動車ボディ1に赤外線反射層5側を向けて取り付ける。図1ではルーフパネル2への取り付けの例を示したが、その他ピラーやドアー等へも同様に取り付け可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自動車用内装材は、自動車ボディと相対する面に、赤外線反射機能を有する層を設けている。したがって、自動車ボディ上に太陽からの熱が伝わっても、熱は赤外線反射層で遮蔽され内装材の表装材側には伝わりにくい。そのため、室内温度の上昇は抑制されてエアコンディショナーの使用量が減り、無駄なエネルギー消費を防ぐことができる。
さらに、本発明の内装材を使用すれば、内装材の室内から見えない側のみを加工して熱遮蔽機能を付与しているため、熱遮蔽塗料を使用した場合のように自動車外観に影響を与えることがなく、自由な意匠の自動車を作ることができることは固より、自動車内部の装飾についても何ら制約されることなく熱遮蔽効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明する。
実施例1
図2に示すように、厚さ0.3mmのタクシー用ルーフ内装材6の上面に厚さ0.1mmのアルミニウムシート7を敷いたものを試験板とし、遮熱試験を行った。試験方法は、図2に示す木製の温度測定用試験ボックス8を使用した。
【0023】
先ず木製の本体9上に試験板をセットし、枠10で押さえ、さらにその上に塗装外板11を置き、これを枠12で押さえた。なお塗装外板11は、グレー電着塗料(パワーコートV−6、日本ペイント社製)を施した冷延鋼板に中塗り塗膜(オルガP−2 8101、日本ペイント社製)および上塗り塗膜(オルガP−2−1 202B、日本ペイント社製)を重ねて焼き付けた一般的なものである。
【0024】
また、表面温度測定用熱電対13を、試験板の裏面と試験ボックス8の中央とに設けた。それぞれの温度は、図示しない温度計(HR2500E、横河電機社製)で測定する。そして塗装外板11の中央上方15cmの位置に100V、200Wの赤外線ランプ14(東芝レフランプRF、東芝社製)をセットして熱線を照射し、1時間経過後の遮熱効果を測定した。
【0025】
その結果、試験板裏面温度は34.9℃、ボックス中央温度は24.9℃であった。なお、ルーフ内装材6を用いずに塗装外板11のみをセットし、上記と同じ条件で温度測定を行ったところ、塗装外板11の裏面温度は83.7℃、ボックス中央温度は32.6℃であり、関東地方の真夏とほぼ同等の熱射条件であることが判った。
【0026】
実施例2
ルーフ内装材6を厚さ7mmの乗用車用ルーフ内装材に代えた以外は実施例1と同様にして遮熱効果を測定した。その結果、試験板裏面温度は35.4℃、ボックス中央温度は24.2℃であった。
【0027】
実施例3
木製の温度測定用試験ボックス8を、内面をアルミテープで内張りした発泡材製の温度測定用試験ボックス8に代えた以外は実施例1と同様にして遮熱効果を測定した。その結果、試験板裏面温度は45.7℃、ボックス中央温度は35.2℃であった。
【0028】
実施例4
木製の温度測定用試験ボックス8を、内面をアルミテープで内張りした発泡材製の温度測定用試験ボックス8に代えた以外は実施例2と同様にして遮熱効果を測定した。その結果、試験板裏面温度は44.2℃、ボックス中央温度は32.2℃であった。
【0029】
比較例1および2
アルミニウムシートを使用せず、実施例1のタクシー用ルーフ内装材のみを使用した場合を比較例1、実施例2の自家用車用ルーフ内装材のみを使用した場合を比較例2として遮熱効果を測定した。その結果、比較例1では試験板裏面温度が53.1℃、ボックス中央温度が28.9℃、比較例2では試験板裏面温度が48.2℃、ボックス中央温度が26.2℃であった。
【0030】
比較例3および4
木製の温度測定用試験ボックス8を、内面をアルミテープで内張りした発泡材製の温度測定用試験ボックス8に代えた以外は、比較例3では比較例1と同様にして、比較例4では比較例2と同様にして遮熱効果を測定した。その結果、比較例3では試験板裏面温度が63.3℃、ボックス中央温度が43.1℃、比較例4では試験板裏面温度が58.9℃、ボックス中央温度が38.0℃であった。
【0031】
上記各実施例および比較例の結果から明らかなように、本実施例の通り、ルーフ内装材6の塗装外板11側にアルミニウムシート7を配置すれば、真夏と同じ熱射条件下でも遮熱効果が大きいため、冷房効率を上げることができる。一方、従来通りのルーフ内装材のみでは、比較例の結果の通り遮熱効果が低いことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の自動車用内装材を自動車ボディへ取り付けた様子の一例を示す断面図である。
【図2】内装材の熱遮蔽効率を測定するための温度測定用試験ボックスの断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 自動車ボディ
2 ルーフパネル
3 内装材
4 基体
5 赤外線反射層
6 ルーフ内装材
7 アルミニウムシート
8 試験ボックス
9 本体
10 枠
11 塗装外板
12 枠
13 熱電対
14 赤外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と赤外線反射機能を有する層とからなる自動車用内装材であって、
前記赤外線反射機能を有する層は、自動車ボディに相対する面に向けて、直接取り付けられるものであり、
350〜2500nmの波長領域における光線反射率が20%以上であり、
乾燥膜厚が1μm〜100μmである赤外線反射機能を有する塗膜層であることを特徴とする自動車用内装材。
【請求項2】
前記赤外線反射機能を有する塗膜層が、アルミニウムフレーク顔料を含む塗料によって形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の自動車用内装材。
【請求項3】
前記赤外線反射機能を有する塗膜層が、長径1〜150μmの大きさの鱗片状アルミニウム粉末表面をステアリン酸等の処理剤を覆ったリーフィングアルミニウム含有塗膜であることを特徴とする請求項1記載の自動車用内装材。
【請求項4】
前記内装材が天井用内装材である請求項1〜4のいずれか1項記載の自動車用内装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−347542(P2006−347542A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194575(P2006−194575)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【分割の表示】特願平11−344712の分割
【原出願日】平成11年12月3日(1999.12.3)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(399006881)
【Fターム(参考)】