説明

自動車用内装部品

【課題】車両の側壁パネルの室内面側に取り付けられ、略中央部にアームレストを備えた自動車用内装部品であって、アームレスト取付部分の衝撃吸収性能を高める。
【解決手段】ドアトリム(内装部品)10は、ドアトリム本体20のアームレスト支持部30の上面にアームレスト40を係止片44の係着作用により取り付ける。そして、アームレスト支持部30の内面にパネル側に向けて斜め上方に傾斜する突き上げ用リブ34を突設し、側突時、アームレスト支持部30の表面に圧縮荷重が加わった際、突き上げ用リブ34がアームレスト40の底面を上方に突き上げることで、アームレスト支持部30からアームレスト40を離脱させる。よって、アームレスト芯材41の反発応力やアームレストパット42の潰れ残り、アームレスト表皮43の伸び応力等の問題点を解消するとともに、アームレスト支持部30の撓み変形を促進させて衝撃荷重を有効に吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤサイドトリム、ラゲージサイドトリム等、車両の側壁パネルの室内面側に内装される自動車用内装部品に係り、特に、側突時における衝撃吸収性能を高めた自動車用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、車両の側壁パネルの室内面側には、ドアトリム、リヤサイドトリム、ラゲージサイドトリム等の内装部品が装着され、車室内の美観を高めるとともに、側突時等、車両に側方からの衝撃荷重が加わった際、内装部品自体が撓み変形することで衝撃荷重の一部を吸収し、乗員に加わる負荷を軽減している。
【0003】
図11は、従来のドアトリム1を示すもので、ドアトリム1は、ポリプロピレン樹脂等、汎用の合成樹脂のモールドプレス成形体、あるいは射出成形体等からなるドアトリム本体2と、このドアトリム本体2の肘掛け部付近に膨出形成されるアームレスト支持部3の上面に装着されるアームレスト4とから構成されている。
【0004】
そして、従来では、図12に示すように、アームレスト4としては、アームレスト芯材4aにクッション性能に優れたアームレストパット4bを積層し、更に、その外表面に手触り感や外観意匠性に優れたアームレスト表皮4cを被包して構成されている。また、ドアトリム本体2に対してアームレスト4を取り付けるには、アームレスト4の下面に下方に向け突出する係止片5をアームレスト芯材4aと一体成形し、この係止片5をアームレスト支持部3に開設されている取付孔6内に係着することでアームレスト4を取り付けているのが実情である(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−175242号公報(第2頁、図3,図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のドアトリム1においては、アームレスト4の下面に設けた係止片5をアームレスト支持部3の上面に開設した取付孔6内に係着固定するという構成であるため、例えば、側突時や車両横転時等、車両の側方から衝撃が加わった際、図13の側突台上試験で示すように、アームレスト4におけるアームレストパット4bが圧縮変形する際、アームレストパット4bの潰れ残りが生じたり、また、アームレスト芯材4aが突っ張り、更に、アームレスト表皮4cの伸び応力が作用する。その結果、図14に示すF−S波形(衝撃荷重と変形ストローク量との相関関係を示すグラフ)では、理想波形とはかけ離れた右上がりの波形を示し、乗員に加わる反力が大きく、理想的な衝撃吸収性能が得られないという欠点があった。
【0007】
また、衝撃吸収性能を高めるために、アームレスト4におけるアームレスト芯材4aや、アームレスト4の剛性を低下させた場合、あるいはアームレストパット4bにおける潰れ残りを回避するために、パット厚みを薄く設定した場合、アームレスト4の取付強度や緩衝性が犠牲にならざるを得ない。従って、アームレスト4の取付強度、クッション性能、衝撃吸収性能の3者を満足させるような自動車用内装部品が望まれていた。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドアトリム、リヤサイドトリム、ラゲージサイドトリム等、車両の側壁パネルの室内面側に取り付けられる自動車用内装部品であって、乗員の肘掛け部分にアームレストを備えた自動車用内装部品において、側突時における衝撃吸収性能に優れるとともに、アームレストの取付強度並びにクッション性能を充分確保できる自動車用内装部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、車両の側壁パネルの室内面側に取り付けられる自動車用内装部品であって、所要形状に成形され、車室内側に膨出するアームレスト支持部を有する内装トリム本体と、この内装トリム本体のアームレスト支持部の上面側に取り付けられるアームレストとからなる自動車用内装部品において、前記内装トリム本体におけるアームレスト支持部の内面には、パネル側に向けて斜め上方に延びるプレート状の突き上げ用リブが形成され、側突時、アームレスト支持部に加わる外力により、上記突き上げ用リブがアームレストの底面を上方に突き上げ、アームレストがアームレスト支持部から外れることで、アームレスト支持部が撓み変形して衝撃荷重を吸収するようにしたことを特徴とする。
【0010】
内装部品としては、車両の側壁パネルの室内面側に取り付けられるドアトリム、リヤサイドトリム、また、ワゴン車等のラゲージサイドトリム等に適用できる。更に、内装部品は、内装トリム本体とは別体のアームレストとから構成されているが、内装トリム本体は、合成樹脂のモールドプレス成形体、あるいは射出成形体等を使用でき、この内装トリム本体には、アームレストを支持するアームレスト支持部が室内側に向けて膨出状に形成されている。
【0011】
一方、アームレストは、アームレスト芯材の表面にポリウレタンフォーム等のアームレストパットを積層して、クッション性能を高め、かつアームレストパットの外表面をクロス、不織布、合成樹脂シート等のアームレスト表皮により被包して構成された積層構造体が使用できるが、合成樹脂成形体単体構造のものや、合成樹脂成形体の表面に表皮のみを貼付した構造のものを使用することもできる。
【0012】
そして、内装トリム本体にアームレストを取り付けるアームレストの取付構造としては、アームレストの手前側縁部及び内奥側縁部に沿ってアームレストの下面から下方向に係止片が突設形成され、この係止片は、取付孔やフランジ等、アームレスト支持部に設けられた係止部に係着固定される。
【0013】
更に、内装トリム本体のアームレスト支持部の内面には、パネル側に向けて斜め上方に延びるプレート状の突き上げ用リブが突設形成されており、この突き上げ用リブは、側突時、アームレスト支持部に圧縮荷重が加わった際、突き上げ用リブが斜め上方に向けて変形し、アームレストを上方に突き上げてアームレスト支持部からアームレストを脱落させる機能をもつ。上記突き上げ用リブの傾斜角度としては、水平面を基準として45°以上で、85°以下の傾斜角度に設定するのが好ましい。この突き上げ用リブの傾斜角度が45°未満の場合には、アームレスト支持部に圧縮荷重が加わった際、突き上げ用リブが変形しても、アームレストを上方に突き上げる力が生まれない。一方、傾斜角度が85°を越えた場合には、突き上げ用リブが変形してもアームレストと垂直になり、アームレストを突き上げできない。
【0014】
そして、本発明によれば、アームレスト支持部の内面にパネル側に向けて斜め上方に延びる突き上げ用リブが突設形成され、側突時にはこの突き上げ用リブがアームレストを上方に突き上げ、アームレスト支持部からアームレストを脱落させることができるため、アームレストの潰れ残りがなくなり、かつアームレスト芯材の反発力やアームレスト表皮の伸び応力が作用しないため、アームレスト支持部が有効に撓み変形する。
【0015】
更に、本発明の好ましい実施の形態においては、前記アームレスト支持部の内面に形成されている突き上げ用リブの傾斜面にパネル側から対峙するように、ガイド用リブが設けられており、側突時、アームレスト支持部に加わる外力により、突き上げ用リブがガイド用リブの先端縁にガイドされて突き上げ用リブの変形方向が斜め上方に制御されることを特徴とする。
【0016】
そして、この実施の形態によれば、アームレスト支持部の内面に傾斜状に設けられた突き上げ用リブの傾斜面にパネル側から対向して、ガイド用リブが形成されており、アームレスト支持部の表面側に圧縮荷重が加わった際、突き上げ用リブの傾斜面はガイド用リブの先端縁に摺接するように突き上げ用リブが変形するため、側突時等、突き上げ用リブの変形方向を斜め上方に適正に制御することが可能となり、簡単にアームレストが外れ、アームレスト支持部の有効な撓み変形が期待できる。
【0017】
更に、本発明の更に別の実施の形態においては、前記アームレスト支持部の内面に形成される突き上げ用リブの先端が、アームレストの底面の段部に係止されており、側突時、アームレスト支持部に加わる外力により、突き上げ用リブが斜め上方に突き上げられる際、突き上げ用リブの先端がアームレストの底面を摺接するのを回避させたことを特徴とする。
【0018】
そして、この実施の形態によれば、アームレストの底面に段部が形成され、この段部に突き上げ用リブの先端を係着させるという構成であるため、側突時等、アームレスト支持部の表面に圧縮荷重が加わった際、突き上げ用リブの変形時、突き上げ用リブがアームレスト底面を摺接することがなく、迅速にアームレストを脱落させることができ、アームレスト支持部が有効に撓み変形する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品によれば、側突時等、車両の側方に外部からの衝撃が加わった際、内装トリム本体におけるアームレスト支持部の表面側から圧縮荷重が加わることにより、アームレスト支持部内面に設けた突き上げ用リブが斜め上方に向けて変形するため、突き上げ用リブによりアームレストが上方に突き上げられ、アームレスト支持部からアームレストが外れることで、アームレスト芯材の反発力が作用せず、かつアームレストパットの潰れ残りやアームレスト表皮の伸び応力発生という問題も解消でき、アームレスト支持部がアームレストの束縛から解放され、容易に撓み変形することから、衝撃荷重を有効に吸収でき、乗員に加わる負荷を軽減できるという効果を有する。
【0020】
更に、本発明に係る自動車用内装部品によれば、側突時、アームレスト支持部の内面に形成した突き上げ用リブがアームレストを上方に押し上げ、アームレスト支持部からアームレストを離脱させるという構成であるため、アームレストの構成として、アームレスト芯材を適宜肉厚に設定できるとともに、アームレストパットを増厚することもでき、アームレストの取付強度及びクッション性能を良好に維持しながら衝撃吸収性能を高めることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る自動車用内装部品の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1乃至図6は本発明の第1実施例を示すもので、図1は本発明を適用したドアトリムを示す正面図、図2は同ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同ドアトリムにおけるアームレストの取付構造を示す説明図、図4は同ドアトリムにおける側突試験状況を示す説明図、図5は同ドアトリムにおける衝撃吸収機能を示すグラフ、図6は第1実施例の変形例を示すアームレストの断面図である。
【0023】
図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、所要の曲面形状に成形され、ドアパネルの室内面側に図示しないクリップ等の固着手段を介して取り付けられるドアトリム本体20と、このドアトリム本体20の表面略中央部に車室内側に向けて膨出状に形成されるアームレスト支持部30に取り付けられるアームレスト40とから大略構成されている。
【0024】
更に詳しくは、ドアトリム本体20は、PP樹脂、ABS樹脂等、汎用の合成樹脂の射出成形体、あるいはモールドプレス成形体等から構成され、所望ならば、合成樹脂成形体の表面にクロス、不織布等の表皮を直接、あるいはクッション層を介して貼付して、クッション性や外観見栄え、手触り感を高めることもできる。上記ドアトリム本体20は、アームレスト40の上部側(中接部)に装飾性を更に高める布地シート等の中接シート21を貼付しても良い。また、アームレスト支持部30の下方には、備品を収容できるドアポケット用開口22が開設され、ドアポケット用開口22のフロント側にスピーカグリル23がドアトリム本体20と一体、あるいは別体に設けられている。
【0025】
ところで、本発明に係る自動車用ドアトリム10は、アームレスト40の取付構造に工夫を加え、特に、アームレスト40の取付強度並びにクッション性能を良好に維持しつつ、側突時等、衝撃荷重が加わった際の衝撃吸収性能を高めることを課題としている。第1実施例に係るアームレスト40の構成並びにアームレスト40の取付構造について、図3を基に説明すると、アームレスト40は、合成樹脂板からなるアームレスト芯材41の表面にポリウレタンフォーム等のクッション材を素材としたアームレストパット42を積層し、更に、製品表面に沿ってアームレスト表皮43(織布、不織布、合成樹脂シート等を素材とする)を被包することにより構成されており、このアームレスト40における取付部として、アームレスト40の内奥側縁部並びに手前側縁部に沿って、アームレスト芯材41に複数の係止片44(手前側に位置する係止片44A、内奥側に位置する係止片44Bとする)が下方向に向け突設形成されている。
【0026】
一方、アームレスト支持部30は、アームレスト40を取り付けるために、アームレスト40の手前側に位置する係止片44Aを係着するフランジ31がアームレスト支持部30の手前側に設けられており、かつ内奥側に位置する係止片44Bについては、取付孔32が対応して開設されている。
【0027】
そして、アームレスト支持部30の上面開口33を蓋するように、アームレスト40が図3に示すように取り付けられるが、アームレスト支持部30の内面には、パネル側に向けて斜め上方に傾斜するように延びるプレート状の突き上げ用リブ34が一体化されている。この突き上げ用リブ34の先端34aは、開口33内に臨んでいる。上記突き上げ用リブ34は、傾斜状に設定されているが、この傾斜角度としては、水平面を基準として図中θで示す傾斜角度は、45°≦傾斜角度(θ)≦85°の範囲が良い。傾斜角度θが45°未満では側突時、アームレスト支持部30に圧縮荷重が加わっても、アームレスト40を上方に突き上げる機能をもたない。同様に、傾斜角度θが85°を越えた場合、アームレスト40の底面に対してほぼ垂直状であるため、側突時、アームレスト支持部30に圧縮荷重が加わっても、アームレスト40を上方に突き上げる機能をもたない。
【0028】
そして、ドアトリム本体20のアームレスト支持部30の上面にアームレスト40を取り付けた状態において、図4に示す側突試験結果(図4(a)側突試験前、図4(b)側突試験後の状態をそれぞれ示す)について説明する、まず、図4(a)に示す状態から、インパクター50によりアームレスト支持部30の表面側に所定荷重を加えた場合、図4(b)に示すように、突き上げ用リブ34が変形して、アームレスト40を上方に突き上げ、この実施例では、アームレスト40の底面における奥側部分が上方に突き上げられ、アームレスト40の緩衝面40aが室内側を向くような傾斜姿勢で外れることになる。
【0029】
従って、第1実施例におけるアームレスト40の取付構造を採用した場合、突き上げ用リブ34の突き上げ動作により、アームレスト40がアームレスト支持部30から外れ、アームレスト40におけるアームレスト芯材41の反発応力や、アームレストパット42の潰れ残り、あるいはアームレスト表皮43の伸び応力等が障害とならず、アームレスト支持部30がパネル側に有効に撓み変形することで、図5に示すように、衝撃荷重Fに対する変形ストローク量Sが有効に確保でき、良好な衝撃吸収機能が得られる理想波形に近い形状の波形となる。
【0030】
また、上述した実施例は、側突時等、アームレスト支持部30の表面に圧縮荷重が加わった際、突き上げ用リブ34の突き上げ動作により、アームレスト40における内奥側縁部の係止片44Bがアームレスト支持部30の取付孔32から外れ、アームレスト40の緩衝面40aが室内側を向くように傾斜姿勢で外れるが、図6に示すように、突き上げ用リブ34の上昇動作により、まずアームレスト40の手前側縁部の係止片44Aが外れ、アームレスト40がアームレスト支持部30から脱落するという形態を採用することもできる。そして、アームレスト40の前部側を上方に突き上げて、アームレスト40をアームレスト支持部30から脱落させる構造では、突き上げ用リブ34の先端34aをアームレスト40底面の前部側に位置させれば良いため、突き上げ用リブ34を小型化することができる。尚、緩衝性を考慮すれば、側突時等、アームレスト支持部30の表面に圧縮荷重が加わった際、突き上げ用リブ34により、アームレスト40底面の内奥側を押圧して、緩衝面40aが室内側を向くような傾斜姿勢でアームレスト40を脱落させるのが好ましい。
【実施例2】
【0031】
図7乃至図10は本発明に係る自動車用内装部品をドアトリム10に適用した第2実施例を示すもので、図7はアームレストとアームレスト支持部のそれぞれの構成を示す要部断面図、図8は同アームレスト支持部における衝撃吸収時の状態を示す説明図、図9は第2実施例の変形例を示すアームレストの取付構造を示す断面図、図10は図9に示すアームレスト取付構造における衝撃吸収性能を示すグラフである。尚、実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0032】
この第2実施例では、アームレスト支持部30における上面開口33を塞ぐように、アームレスト40を係止片44A,44Bを介してアームレスト支持部30に取り付ける構造は第1実施例と同様であるが、この第2実施例においては、アームレスト支持部30の内面に傾斜状に設けられた突き上げ用リブ34に対して、その内側に先端がやや上方に向け緩やかに傾斜したガイド用リブ35が設けられている。従って、側突時等、アームレスト支持部30の表面に圧縮荷重が加わった際、図8に示すように、突き上げ用リブ34が変形するが、その際、突き上げ用リブ34の傾斜面34bは、ガイド用リブ35の先端縁35aを摺接することで、突き上げ用リブ34は、パネル側にスライドすることなく、斜め上方に適正にその変形方向が制御され、アームレスト40を効率良く突き上げることができる。
【0033】
このように、第2実施例によれば、アームレスト支持部30の表面に加わる圧縮荷重に対して、突き上げ用リブ34が変形する際、ガイド用リブ35にガイドされてアームレスト40を突き上げ用リブ34により効率良く上方に突き上げることができ、即座にアームレスト40がアームレスト支持部30から離脱し、アームレスト40がアームレスト芯材41の剛性、アームレストパット42の潰れ残り、アームレスト表皮43の伸び応力等により衝撃吸収性能を阻害することなく、アームレスト支持部30が有効に撓み変形することで、第1実施例同様の作用効果が得られる。
【0034】
次いで、図9は第2実施例の変形例を示すもので、側突時等、アームレスト支持部30の表面に圧縮荷重が加わった際、突き上げ用リブ34がパネル側にスライドすることなく、上方に向くように変形して、アームレスト40を上方に即座に突き上げることで、アームレスト40をアームレスト支持部30から離脱させることができるために、アームレスト40の底面に段部45を形成し、アームレスト支持部30内面に形成した突き上げ用リブ34の先端34aを上記段部45に係止させる構成を採用している。
【0035】
すなわち、側突時等、アームレスト支持部30の表面に圧縮荷重が加われば、突き上げ用リブ34が斜め上方に向けて変形するが、その際、突き上げ用リブ34がパネル側にスライドする力が働いても、段部45によりスライド方向への変形が規制でき、アームレスト40を上方に突き上げる力により、アームレスト40は即座にアームレスト支持部30から離脱することになり、アームレスト支持部30が有効に撓み変形する。
【0036】
また、図10のグラフは、図9の構成による衝撃荷重/変形ストローク量の相関関係を示すもので、図9の構成における衝撃吸収波形をグラフ中1点鎖線で示すように、実線で示す第1実施例に比べ、より少ない衝撃荷重で変形ストローク量を稼ぐことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
実施例1、実施例2で説明したドアトリム10の他に、リヤサイドトリム、あるいはワゴン車等のラゲージサイドトリム等に設けられるアームレストの取付構造に本発明を適用することができる。更に、アームレストの構造としては、実施例1、実施例2では、アームレスト芯材41の表面にアームレストパット42を積層し、更にその表面をアームレスト表皮43で被包した構成のものを使用したが、例えば、合成樹脂成形体単体や、合成樹脂成形体の表面に厚手仕様のアームレスト表皮のみを貼付する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明をドアトリムに適用した第1実施例を示す正面図である。
【図2】図1に示すドアトリムの構成を示す断面図である。
【図3】図2に示すドアトリムにおけるアームレストの取付構造を示す説明図である。
【図4】図2に示すドアトリムにおける側突試験を示すもので、(a)側突試験前の状態、(b)側突試験後の状態をそれぞれ示す説明図である。
【図5】図2に示すドアトリムにおける衝撃荷重/変形ストローク量の相関関係を示すグラフである。
【図6】本発明をドアトリムに適用した第1実施例の変形例を示す要部断面図である。
【図7】本発明をドアトリムに適用した第2実施例の構成を示す要部断面図である。
【図8】図7に示すアームレストの取付構造における衝撃吸収時の状態を示す説明図である。
【図9】本発明をドアトリムに適用した第2実施例の変形例を示す要部断面図である。
【図10】図9に示すドアトリムにおける衝撃荷重/変形ストローク量の相関関係を示すグラフである。
【図11】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図12】図11中XII −XII 線断面図である。
【図13】従来のドアトリムにおけるアームレスト部の側突試験の状態を示す(a)側突試験前の状態、(b)側突試験後の状態をそれぞれ示す説明図である。
【図14】従来のアームレスト部における衝撃荷重/変形ストローク量の相関関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
10 ドアトリム
20 ドアトリム本体
30 アームレスト支持部
31 フランジ
32 取付孔
33 開口
34 突き上げ用リブ
34a 先端
34b 傾斜面
35 ガイド用リブ
35a 先端縁
40 アームレスト
40a 緩衝面
41 アームレスト芯材
42 アームレストパット
43 アームレスト表皮
44(44A,44B) 係止片
45 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側壁パネルの室内面側に取り付けられる自動車用内装部品(10)であって、所要形状に成形され、車室内側に膨出するアームレスト支持部(30)を有する内装トリム本体(20)と、この内装トリム本体(20)のアームレスト支持部(30)の上面側に取り付けられるアームレスト(40)とからなる自動車用内装部品(10)において、
前記内装トリム本体(20)におけるアームレスト支持部(30)の内面には、パネル側に向けて斜め上方に延びるプレート状の突き上げ用リブ(34)が形成され、側突時、アームレスト支持部(30)に加わる外力により、上記突き上げ用リブ(34)がアームレスト(40)の底面を上方に突き上げ、アームレスト(40)がアームレスト支持部(30)から外れることで、アームレスト支持部(30)が撓み変形して衝撃荷重を吸収するようにしたことを特徴とする自動車用内装部品。
【請求項2】
前記アームレスト支持部(30)の内面に形成されている突き上げ用リブ(34)の傾斜面(34b)にパネル側から対峙するように、ガイド用リブ(35)が設けられており、側突時、アームレスト支持部(30)に加わる外力により、突き上げ用リブ(34)がガイド用リブ(35)の先端縁(35a)にガイドされて突き上げ用リブ(34)の変形方向が斜め上方に制御されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装部品。
【請求項3】
前記アームレスト支持部(30)の内面に形成される突き上げ用リブ(34)の先端(34a)が、アームレスト(40)の底面の段部(45)に係止されており、側突時、アームレスト支持部(30)に加わる外力により、突き上げ用リブ(34)が斜め上方に突き上げられる際、突き上げ用リブ(34)の先端(34a)がアームレスト(40)の底面を摺接するのを回避させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用内装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−96085(P2006−96085A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281912(P2004−281912)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】