自動車用加飾部品の製造方法、及び自動車用加飾部品
【課題】製造コストを抑えつつ、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することができる自動車用加飾部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂成形体2の上面3上に色合いの異なる複数の着色層11〜14を積層形成する。複数の着色層11〜14は、下層側にいくほど色合いが濃くなっている。レーザ照射加工を行って、各着色層11〜14を選択的にかつ異なる深さで剥離して着色層11〜14を部分的に露出させることにより、木目模様の基絵柄を模した絵柄16を描く。
【解決手段】樹脂成形体2の上面3上に色合いの異なる複数の着色層11〜14を積層形成する。複数の着色層11〜14は、下層側にいくほど色合いが濃くなっている。レーザ照射加工を行って、各着色層11〜14を選択的にかつ異なる深さで剥離して着色層11〜14を部分的に露出させることにより、木目模様の基絵柄を模した絵柄16を描く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾する自動車用加飾部品の製造方法、及び自動車用加飾部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために樹脂成形体(自動車用部品素材)の表面に装飾を加えるようにした加飾部品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。このような自動車用加飾部品に装飾を加える加飾方法としては、水圧転写が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や幾何学模様などの絵柄)を水圧によって樹脂成形体の表面に転写する技術である。この技術によれば、三次元曲面への印刷を行うことができる。
【特許文献1】特開昭54−33115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した水圧転写を行う場合、樹脂成形体への絵柄の転写時に、絵柄が伸びたり歪んだりする。この結果、絵柄を正確に付加することができず、絵柄のバラツキが生してしまう。この場合、製品の歩留まりが悪化して製造コストが嵩んでしまう。また、リアルな木目模様(例えば、導管などの凹部)を実現するために、複数毎の絵柄を水圧転写する手法も検討されているが、三次元曲面に対して行う場合、絵柄の伸びや歪によって各絵柄の位置合わせを正確に行うことができず、実用化することが困難となっている。さらに、立体的な木目模様を実現するために、樹脂成形体の表面に凹凸を設け、その表面上に水圧転写を施すといった手法も検討されている。しかしながら、木目模様のパターンが凹凸の位置からずれてしまい、これらの位置をぴったりと合わせることができない。この場合、木目模様が立体的に見えず違和感が生じて不良品となってしまう。
【0005】
また、水圧転写では、使用後の転写フィルムが廃材となるためその廃棄コストがかかることに加え、脱膜処理や排水処理などの処理コストが必要となる。従って、水圧転写とは異なる手法で自動車用部品素材の曲面上に絵柄を付加して装飾する新たな技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストを抑えつつ、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することができる自動車用加飾部品の製造方法を提供することにある。また、別の目的は、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することにより外観品質を高めた自動車用加飾部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾することにより、自動車用加飾部品を製造する方法であって、前記部品素材の曲面上に色要素の異なる複数の着色層を塗工して積層形成するとともに、積層方向における前記色要素の変化に規則性をもたせるように設定する積層塗工工程と、前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離して前記着色層を部分的に露出させることにより、前記絵柄を描く描画工程とを含むことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法をその要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、積層塗工工程において、部品素材の曲面上に色要素の異なる複数の着色層が塗工されて積層形成される。これら着色層としては、模様のない層(ベタ層)でよいため、位置合わせをする必要がなく容易に形成することができる。そして、描画工程では、絵柄に応じて着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離することにより、異なる色の着色層が露出されることで絵柄が形成される。このようにすると、水圧転写のような絵柄の伸びや歪が生じることがなく、複雑な絵柄を正確に描画することができる。さらに、複数の着色層は積層方向における色要素の変化に規則性をもたせて形成されているので、色の歪みが生じることがなく、基絵柄の実物に近い絵柄を描くことができる。また、本発明では、従来の水圧転写を行う場合のように脱膜処理や排水処理などの処理コストが不要となることに加えて転写フィルムの廃材もなくなるため、製造コストを抑えることができる。
【0009】
なお、前記色要素とは、色合い、彩度、輝度(明度)のうちのいずれかの要素のことをいう。また、積層方向における色要素の変化に規則性をもたせて積層形成された複数の着色層の具体例としては、積層方向に色合いが濃い順に形成された着色層、彩度が高い順に形成された着色層、輝度が高い順に形成された着色層などを挙げることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記描画工程では、レーザ照射加工を行って前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離することをその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、レーザ照射加工を行うことにより、着色層を細かくかつ正確に剥離することができるため、解像度の高い鮮明な絵柄を正確に描くことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記複数の着色層は、下層側にいくほど色合いが濃くなっていることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、レーザ照射加工によって深く加工された凹部が濃い色で表現される。この凹部は影になる部分であり、それをリアルに表現することができるため、基絵柄の実物に近い立体感のある絵柄を確実に表現することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記描画工程では、前記部品素材の曲面も部分的に露出させて、その露出部分と前記複数の着色層との組み合わせにより前記絵柄を表現するようにしたことをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、部品素材の露出部分と複数の着色層との組み合わせにより、複雑な絵柄を確実に表現することができ、立体感や質感を向上させることができる。また、各着色層のみで絵柄を表現する場合と比較して、着色層を1層減らした状態で同じ絵柄を表現することが可能となり、塗装コストを抑えることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記描画工程を行った後に前記複数の着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート形成工程を含むことをその要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、複数の着色層を保護するクリアコート層が形成されるので、自動車用加飾部品の外観品質を長期間にわたって保つことができる。また、クリアコート層は、各着色層の凹凸を平坦化するよう形成されるものでもよいし、各着色層の凹凸を残した状態で形成されるものでもよい。クリアコート層によって各着色層の凹凸を平坦化する場合、その凹凸に蓄積する埃などの汚れを防止することができる。また、各着色層の凹凸を残す場合には、基絵柄の実物に近い触感を再現することが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記積層塗工工程では、メタリック調の光沢を有する顔料を含ませた光輝層、または、前記着色層にメタリック調の光沢を有する顔料を含ませた着色光輝層を塗工して積層形成することをその要旨とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、光輝層または着色光輝層が形成されるので、光の反射による絵柄の変化を持たせることができる。そして、この光輝層または着色光輝層によって、光の入射方向や視線方向に対して方向性を持った絵柄を形成することができる。またこの場合、着色層を所定の方向に沿って平行なライン状に剥離して光輝層または着色光輝層を規則的に露出させることが好ましい。このように、ライン状に凹部を形成することにより、見る方向によって輝度を変えることができる。なお、光輝層または着色光輝層は、各着色層の最上層、最下層、中間層のいずれの位置に形成してもよい。
【0020】
請求項7に記載の発明は、立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾された自動車用加飾部品であって、前記部品素材の曲面上に、色要素の異なる複数の着色層が塗工されて積層形成されるとともに、積層方向における前記色要素の変化が規則性を有しており、前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離して前記着色層を部分的に露出させることにより表現された前記絵柄を備えていることを特徴とする自動車用加飾部品をその要旨とする。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、自動車用部品素材の曲面上に、複雑な絵柄を正確に描画することができる。また、複数の着色層は、積層方向における色要素の変化に規則性をもたせて形成されているので、各着色層によって基絵柄の実物に近い絵柄を描くことができる。従って、自動車用加飾部品の外観品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によると、製造コストを抑えつつ、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することができる。また、請求項7に記載の発明によると、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することにより、外観品質を高めた自動車用加飾部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態における自動車用加飾部品1を示す平面図であり、図2は、その自動車用加飾部品1の断面図である。本実施の形態の自動車用加飾部品1は、例えば、ドアのアームレストを構成する内装部品である。
【0025】
図1及び図2に示されるように、自動車用加飾部品1は、立体形状の樹脂成形体2(樹脂製の自動車用部品素材)を備えている。樹脂成形体の上面3は、凸面状に湾曲した曲面であり、その上面3には、色要素の異なる複数の着色層11,12,13,14が塗工されて積層形成されている。
【0026】
本実施の形態では、色合いが下層側ほど濃くなるように4色(下層側から順に、こげ茶色、茶色、うす茶色、クリーム色)の着色層11〜14が積層形成されている。そして、樹脂成形体2の上面3に形成された複数の着色層11〜14を選択的にかつ異なる深さで剥離して着色層11〜14を部分的に露出させることにより、木目模様の基絵柄を模した絵柄16が描かれている。
【0027】
さらに、樹脂成形体2の上面3の最上層には、各着色層11〜14を保護するための透明なクリアコート層17が形成されている。本実施の形態のクリアコート層17は、各着色層11〜14の凹凸を平坦化するよう形成されている。
【0028】
次に、本実施の形態の自動車用加飾部品1の製造方法について説明する。
【0029】
まず、樹脂材料(例えば、ABS樹脂)を用いて所定の立体形状に成形した樹脂成形体2を用意する。
【0030】
そして、積層塗工工程では、図3に示されるように、樹脂成形体2の上面3(曲面)上に、塗装機21を用いて塗料P1を塗工することでこげ茶色の着色層11を形成する。その後、塗装機21から噴霧する塗料をこげ茶色の塗料P1から茶色の塗料P2に変更して、塗料P2を塗工することでこげ茶色の着色層11上に茶色の着色層12を積層形成する(図4参照)。同様に、塗装機21から噴霧する塗料を茶色の塗料P2からうす茶色の塗料P3に変更して、塗料P3を塗工することで茶色の着色層12上にうす茶色の着色層13を積層形成する(図5参照)。さらに、塗装機21から噴霧する塗料をうす茶色の塗料P3からクリーム色の塗料P4に変更して、塗料P4を塗工することでうす茶色の着色層13上にクリーム色の着色層14を積層形成する(図6参照)。なおここで、積層形成される各着色層11〜14は、模様のないベタパターンの層(ベタ層)であり、位置合わせをすることなく積層形成される。
【0031】
続く、描画工程において、レーザ照射装置22を用い、樹脂成形体2の上面3に形成された各着色層11〜14にレーザLを照射する(図7参照)。このレーザ照射により着色層11〜14を昇華もしくは脆化させることで、絵柄のパターンに応じた着色層11〜14を選択的にかつ異なる深さで剥離して着色層11〜14を部分的に露出させる(図8参照)。具体的には、基絵柄の木目パターンにおいて、最も暗い部分に対応する箇所では、着色層12〜14を隔離して着色層11の表面を露出させ、うす暗い部分に対応する箇所では、着色層13,14を剥離して着色層12の表面を露出させる。さらに、少し明るい部分に対応する箇所では、着色層14を剥離して着色層13の表面を露出させ、最も明るい部分に対応する箇所では、着色層11〜14をそのまま残して着色層14の表面を露出させる。これら着色層11〜14の露出部分によって、樹脂成形体2の上面3に木目模様の絵柄16が描かれる。
【0032】
その後、クリアコート形成工程を行い、複数の着色層11〜14を保護するクリアコート層17を形成する。ここでは、塗装機を用い、木目模様の絵柄16が描かれた樹脂成形体2の上面3に透明なクリア塗料を塗工することにより、クリアコート層17が形成される。以上の工程を経て自動車用加飾部品1が製造される。
【0033】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0034】
(1)本実施の形態の場合、積層塗工工程にて形成される複数の着色層11〜14は模様のないベタ層であるので、位置合わせをする必要がなく各着色層11〜14を容易に形成することができる。また、描画工程において、レーザ照射により、着色層11〜14を選択的にかつ異なる深さで剥離することにより、異なる色の着色層11〜14が露出されることで、絵柄16が形成される。このようにすると、水圧転写のような絵柄の伸びや歪が生じることがなく、複雑な木目模様の絵柄16を正確に描画することができる。また、絵柄16における木目に対応した凹凸を形成することができ、実物の天然木と同様の立体的な絵柄16を描画することができる。さらに、本実施の形態の場合、従来の水圧転写を行う場合のように脱膜処理や排水処理などの処理コストが不要となることに加えて転写フィルムの廃材もなくなるため、製造コストを抑えることができる。
【0035】
(2)本実施の形態の場合、レーザ照射加工を行うことにより、細かいエリアを正確に加工することができるため、解像度の高い鮮明な絵柄16を描くことができる。
【0036】
(3)本実施の形態の自動車用加飾部品1では、複数の着色層11〜14は、下層側にいくほど色合いが濃くなっているので、レーザ照射加工によって深く加工された凹部が濃い色で表現される。従って、凹凸や陰影を有する天然木に近い立体感のある絵柄16を確実に表現することができる。
【0037】
(4)本実施の形態の自動車用加飾部品1では、各着色層11〜14を保護するクリアコート層17が形成されるので、自動車用加飾部品1の外観品質を長期間にわたって保つことができる。また、クリアコート層17は、各着色層11〜14の凹凸を平坦化するよう形成されているので、凹凸に蓄積する埃などの汚れを防止することができる。
【0038】
(5)従来の水圧転写では、基絵柄の形成はグラビア印刷で行うため、基絵柄の変更時には製版の設計変更等が必要となり手間がかかる。これに対して、本実施の形態の製造方法では、レーザ照射加工によって絵柄16を描画しているため、基絵柄の変更を容易に行うことができる。また、水圧転写のように絵柄が伸びたり歪んだりするといったこともなく、同じ絵柄16を正確に描くことができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0040】
・上記実施の形態の自動車用加飾部品1では、こげ茶色、茶色、うす茶色、クリーム色の4色の着色層11〜14で絵柄16を表現するものであったが、着色層11〜14の色要素や層数は、基絵柄に応じて適宜変更することができる。なお、基絵柄としては、木目模様以外に、繊維織物の絵柄や植物の繊維模様の絵柄などを挙げることができる。また、図9に示される自動車用加飾部品1Aのように、4色の着色層11〜14に加えて光輝層15を積層形成して、絵柄16を表現してもよい。具体的には、光輝層15は、メタリック調の光沢を有する顔料(メタリック顔料やパール顔料などの光輝性顔料)を含ませた塗料を塗工することで形成され、図9の自動車用加飾部品1Aでは、茶色の着色層12とうす茶色の着色層13との間の中間層として形成されている。このようにすれば、光の反射によって絵柄16の見え方を変化させることができ、光の入射方向やドラバーの視線方向に対して方向性を持った絵柄16を形成することができる。例えば、光輝層15がライン状に露出するようレーザ照射加工を行うことにより、木目模様の絵柄16の見え方を図10のように変化させることができる。またこの場合、凹凸や陰影に加えて絵柄16の照りを表現することが可能となるため、よりリアル感のある絵柄16を表現することができる。
【0041】
また、図1の自動車用加飾部品1において、絵柄16を構成する複数の着色層11〜14の少なくとも1層を、メタリック顔料やパール顔料などを含ませた着色光輝層に変更してもよい。このようにしても、光の反射によって絵柄16の見え方を変化させることができ、光の入射方向や視線方向に対して方向性を持った絵柄16を形成することができる。
【0042】
・上記実施の形態の自動車用加飾部品1では、複数の着色層11〜14を部分的に露出させることにより絵柄16を描くものであったが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示す自動車用加飾部品1Bのように、樹脂成形体2の上面3を部分的に露出させ、その露出部分と複数の着色層12〜14との組み合わせにより絵柄16を表現してもよい。この自動車用加飾部品1Bでは、レーザ照射加工による露出部分が、例えばこげ茶色になる樹脂成形体2を用いる。これにより、最下層の着色層11(こげ茶色の着色層)を省略することができ、塗装コストを抑えることができる。なお、樹脂成形体2としては、レーザ照射加工の熱によって変色する樹脂材料を用いてもよい。この場合、レーザ照射加工による変色後の樹脂成形体2を考慮して絵柄16が表現できるように複数の着色層12〜14の色を設定する。また、樹脂成形体2の上面3を削って凹部3aを形成し、立体感を向上させるようにしてもよい。
【0043】
・上記実施の形態では、複数の着色層11〜14の凹凸を平坦化するようクリアコート層17(図2参照)が形成されていたが、図12の自動車用加飾部品1Cのように、各着色層11〜14の凹凸を残した状態でクリアコート層17を形成してもよい。このように各着色層11〜14の凹凸を残すことにより、基絵柄の実物(天然木の木目)に近い触感を再現することが可能となる。
【0044】
・上記実施の形態では、積層塗工工程において複数の着色層11〜14を形成した後に、描画工程を行って各着色層11〜14を一括して加工することにより絵柄16を描いていたが、これに限定されるものではない。例えば、着色層11〜14を形成する度に、レーザ照射加工による描画工程を行って絵柄16を描くようにしてもよい。
【0045】
・上記実施の形態の描画工程では、レーザ照射加工を行って着色層11〜14を剥離していたが、これ以外に、例えば、エッチング技術を利用して着色層11〜14を剥離してもよい。なお、上記実施の形態にようにレーザ照射加工で描画工程を行う場合、非接触で着色層11〜14を剥離することができるため、工程を簡略化できるといったメリットがある。
【0046】
・上記実施の形態では、自動車用加飾部品1としてドアのアームレストに具体化するものであったが、これ以外に、コンソールボックス、インストルメントパネルなどの部品に具体化してもよい。
【0047】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0048】
(1)請求項1において、前記着色層を形成する度に前記描画工程を行うことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【0049】
(2)請求項1において、前記複数の着色層を形成した後に一括して前記描画工程を行うことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【0050】
(3)請求項1において、前記積層塗工工程で形成される前記着色層はベタ層であることを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【0051】
(4)請求項5において、前記クリアコート層は、前記複数の着色層の凹凸を平坦化するよう形成されていることを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【0052】
(5)請求項5において、前記クリアコート層は、前記複数の着色層の凹凸を残した状態で形成されていることを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の自動車用加飾部品を示す平面図。
【図2】本発明を具体化した一実施の形態の自動車用加飾部品を示す断面図。
【図3】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図4】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図5】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図6】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図7】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図8】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図9】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図10】別の実施の形態の自動車用加飾部品を示す平面図。
【図11】別の実施の形態の自動車用加飾部品を示す断面図。
【図12】別の実施の形態の自動車用加飾部品を示す断面図。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C…自動車用加飾部品
2…自動車用部品素材としての樹脂成形体
3…曲面としての上面
11〜14…着色層
15…光輝層
16…絵柄
17…クリアコート層
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾する自動車用加飾部品の製造方法、及び自動車用加飾部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために樹脂成形体(自動車用部品素材)の表面に装飾を加えるようにした加飾部品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。このような自動車用加飾部品に装飾を加える加飾方法としては、水圧転写が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や幾何学模様などの絵柄)を水圧によって樹脂成形体の表面に転写する技術である。この技術によれば、三次元曲面への印刷を行うことができる。
【特許文献1】特開昭54−33115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した水圧転写を行う場合、樹脂成形体への絵柄の転写時に、絵柄が伸びたり歪んだりする。この結果、絵柄を正確に付加することができず、絵柄のバラツキが生してしまう。この場合、製品の歩留まりが悪化して製造コストが嵩んでしまう。また、リアルな木目模様(例えば、導管などの凹部)を実現するために、複数毎の絵柄を水圧転写する手法も検討されているが、三次元曲面に対して行う場合、絵柄の伸びや歪によって各絵柄の位置合わせを正確に行うことができず、実用化することが困難となっている。さらに、立体的な木目模様を実現するために、樹脂成形体の表面に凹凸を設け、その表面上に水圧転写を施すといった手法も検討されている。しかしながら、木目模様のパターンが凹凸の位置からずれてしまい、これらの位置をぴったりと合わせることができない。この場合、木目模様が立体的に見えず違和感が生じて不良品となってしまう。
【0005】
また、水圧転写では、使用後の転写フィルムが廃材となるためその廃棄コストがかかることに加え、脱膜処理や排水処理などの処理コストが必要となる。従って、水圧転写とは異なる手法で自動車用部品素材の曲面上に絵柄を付加して装飾する新たな技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストを抑えつつ、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することができる自動車用加飾部品の製造方法を提供することにある。また、別の目的は、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することにより外観品質を高めた自動車用加飾部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾することにより、自動車用加飾部品を製造する方法であって、前記部品素材の曲面上に色要素の異なる複数の着色層を塗工して積層形成するとともに、積層方向における前記色要素の変化に規則性をもたせるように設定する積層塗工工程と、前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離して前記着色層を部分的に露出させることにより、前記絵柄を描く描画工程とを含むことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法をその要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、積層塗工工程において、部品素材の曲面上に色要素の異なる複数の着色層が塗工されて積層形成される。これら着色層としては、模様のない層(ベタ層)でよいため、位置合わせをする必要がなく容易に形成することができる。そして、描画工程では、絵柄に応じて着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離することにより、異なる色の着色層が露出されることで絵柄が形成される。このようにすると、水圧転写のような絵柄の伸びや歪が生じることがなく、複雑な絵柄を正確に描画することができる。さらに、複数の着色層は積層方向における色要素の変化に規則性をもたせて形成されているので、色の歪みが生じることがなく、基絵柄の実物に近い絵柄を描くことができる。また、本発明では、従来の水圧転写を行う場合のように脱膜処理や排水処理などの処理コストが不要となることに加えて転写フィルムの廃材もなくなるため、製造コストを抑えることができる。
【0009】
なお、前記色要素とは、色合い、彩度、輝度(明度)のうちのいずれかの要素のことをいう。また、積層方向における色要素の変化に規則性をもたせて積層形成された複数の着色層の具体例としては、積層方向に色合いが濃い順に形成された着色層、彩度が高い順に形成された着色層、輝度が高い順に形成された着色層などを挙げることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記描画工程では、レーザ照射加工を行って前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離することをその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、レーザ照射加工を行うことにより、着色層を細かくかつ正確に剥離することができるため、解像度の高い鮮明な絵柄を正確に描くことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記複数の着色層は、下層側にいくほど色合いが濃くなっていることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、レーザ照射加工によって深く加工された凹部が濃い色で表現される。この凹部は影になる部分であり、それをリアルに表現することができるため、基絵柄の実物に近い立体感のある絵柄を確実に表現することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記描画工程では、前記部品素材の曲面も部分的に露出させて、その露出部分と前記複数の着色層との組み合わせにより前記絵柄を表現するようにしたことをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、部品素材の露出部分と複数の着色層との組み合わせにより、複雑な絵柄を確実に表現することができ、立体感や質感を向上させることができる。また、各着色層のみで絵柄を表現する場合と比較して、着色層を1層減らした状態で同じ絵柄を表現することが可能となり、塗装コストを抑えることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記描画工程を行った後に前記複数の着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート形成工程を含むことをその要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、複数の着色層を保護するクリアコート層が形成されるので、自動車用加飾部品の外観品質を長期間にわたって保つことができる。また、クリアコート層は、各着色層の凹凸を平坦化するよう形成されるものでもよいし、各着色層の凹凸を残した状態で形成されるものでもよい。クリアコート層によって各着色層の凹凸を平坦化する場合、その凹凸に蓄積する埃などの汚れを防止することができる。また、各着色層の凹凸を残す場合には、基絵柄の実物に近い触感を再現することが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記積層塗工工程では、メタリック調の光沢を有する顔料を含ませた光輝層、または、前記着色層にメタリック調の光沢を有する顔料を含ませた着色光輝層を塗工して積層形成することをその要旨とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、光輝層または着色光輝層が形成されるので、光の反射による絵柄の変化を持たせることができる。そして、この光輝層または着色光輝層によって、光の入射方向や視線方向に対して方向性を持った絵柄を形成することができる。またこの場合、着色層を所定の方向に沿って平行なライン状に剥離して光輝層または着色光輝層を規則的に露出させることが好ましい。このように、ライン状に凹部を形成することにより、見る方向によって輝度を変えることができる。なお、光輝層または着色光輝層は、各着色層の最上層、最下層、中間層のいずれの位置に形成してもよい。
【0020】
請求項7に記載の発明は、立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾された自動車用加飾部品であって、前記部品素材の曲面上に、色要素の異なる複数の着色層が塗工されて積層形成されるとともに、積層方向における前記色要素の変化が規則性を有しており、前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離して前記着色層を部分的に露出させることにより表現された前記絵柄を備えていることを特徴とする自動車用加飾部品をその要旨とする。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、自動車用部品素材の曲面上に、複雑な絵柄を正確に描画することができる。また、複数の着色層は、積層方向における色要素の変化に規則性をもたせて形成されているので、各着色層によって基絵柄の実物に近い絵柄を描くことができる。従って、自動車用加飾部品の外観品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によると、製造コストを抑えつつ、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することができる。また、請求項7に記載の発明によると、自動車用部品素材の曲面上に絵柄を正確に付加して装飾することにより、外観品質を高めた自動車用加飾部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態における自動車用加飾部品1を示す平面図であり、図2は、その自動車用加飾部品1の断面図である。本実施の形態の自動車用加飾部品1は、例えば、ドアのアームレストを構成する内装部品である。
【0025】
図1及び図2に示されるように、自動車用加飾部品1は、立体形状の樹脂成形体2(樹脂製の自動車用部品素材)を備えている。樹脂成形体の上面3は、凸面状に湾曲した曲面であり、その上面3には、色要素の異なる複数の着色層11,12,13,14が塗工されて積層形成されている。
【0026】
本実施の形態では、色合いが下層側ほど濃くなるように4色(下層側から順に、こげ茶色、茶色、うす茶色、クリーム色)の着色層11〜14が積層形成されている。そして、樹脂成形体2の上面3に形成された複数の着色層11〜14を選択的にかつ異なる深さで剥離して着色層11〜14を部分的に露出させることにより、木目模様の基絵柄を模した絵柄16が描かれている。
【0027】
さらに、樹脂成形体2の上面3の最上層には、各着色層11〜14を保護するための透明なクリアコート層17が形成されている。本実施の形態のクリアコート層17は、各着色層11〜14の凹凸を平坦化するよう形成されている。
【0028】
次に、本実施の形態の自動車用加飾部品1の製造方法について説明する。
【0029】
まず、樹脂材料(例えば、ABS樹脂)を用いて所定の立体形状に成形した樹脂成形体2を用意する。
【0030】
そして、積層塗工工程では、図3に示されるように、樹脂成形体2の上面3(曲面)上に、塗装機21を用いて塗料P1を塗工することでこげ茶色の着色層11を形成する。その後、塗装機21から噴霧する塗料をこげ茶色の塗料P1から茶色の塗料P2に変更して、塗料P2を塗工することでこげ茶色の着色層11上に茶色の着色層12を積層形成する(図4参照)。同様に、塗装機21から噴霧する塗料を茶色の塗料P2からうす茶色の塗料P3に変更して、塗料P3を塗工することで茶色の着色層12上にうす茶色の着色層13を積層形成する(図5参照)。さらに、塗装機21から噴霧する塗料をうす茶色の塗料P3からクリーム色の塗料P4に変更して、塗料P4を塗工することでうす茶色の着色層13上にクリーム色の着色層14を積層形成する(図6参照)。なおここで、積層形成される各着色層11〜14は、模様のないベタパターンの層(ベタ層)であり、位置合わせをすることなく積層形成される。
【0031】
続く、描画工程において、レーザ照射装置22を用い、樹脂成形体2の上面3に形成された各着色層11〜14にレーザLを照射する(図7参照)。このレーザ照射により着色層11〜14を昇華もしくは脆化させることで、絵柄のパターンに応じた着色層11〜14を選択的にかつ異なる深さで剥離して着色層11〜14を部分的に露出させる(図8参照)。具体的には、基絵柄の木目パターンにおいて、最も暗い部分に対応する箇所では、着色層12〜14を隔離して着色層11の表面を露出させ、うす暗い部分に対応する箇所では、着色層13,14を剥離して着色層12の表面を露出させる。さらに、少し明るい部分に対応する箇所では、着色層14を剥離して着色層13の表面を露出させ、最も明るい部分に対応する箇所では、着色層11〜14をそのまま残して着色層14の表面を露出させる。これら着色層11〜14の露出部分によって、樹脂成形体2の上面3に木目模様の絵柄16が描かれる。
【0032】
その後、クリアコート形成工程を行い、複数の着色層11〜14を保護するクリアコート層17を形成する。ここでは、塗装機を用い、木目模様の絵柄16が描かれた樹脂成形体2の上面3に透明なクリア塗料を塗工することにより、クリアコート層17が形成される。以上の工程を経て自動車用加飾部品1が製造される。
【0033】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0034】
(1)本実施の形態の場合、積層塗工工程にて形成される複数の着色層11〜14は模様のないベタ層であるので、位置合わせをする必要がなく各着色層11〜14を容易に形成することができる。また、描画工程において、レーザ照射により、着色層11〜14を選択的にかつ異なる深さで剥離することにより、異なる色の着色層11〜14が露出されることで、絵柄16が形成される。このようにすると、水圧転写のような絵柄の伸びや歪が生じることがなく、複雑な木目模様の絵柄16を正確に描画することができる。また、絵柄16における木目に対応した凹凸を形成することができ、実物の天然木と同様の立体的な絵柄16を描画することができる。さらに、本実施の形態の場合、従来の水圧転写を行う場合のように脱膜処理や排水処理などの処理コストが不要となることに加えて転写フィルムの廃材もなくなるため、製造コストを抑えることができる。
【0035】
(2)本実施の形態の場合、レーザ照射加工を行うことにより、細かいエリアを正確に加工することができるため、解像度の高い鮮明な絵柄16を描くことができる。
【0036】
(3)本実施の形態の自動車用加飾部品1では、複数の着色層11〜14は、下層側にいくほど色合いが濃くなっているので、レーザ照射加工によって深く加工された凹部が濃い色で表現される。従って、凹凸や陰影を有する天然木に近い立体感のある絵柄16を確実に表現することができる。
【0037】
(4)本実施の形態の自動車用加飾部品1では、各着色層11〜14を保護するクリアコート層17が形成されるので、自動車用加飾部品1の外観品質を長期間にわたって保つことができる。また、クリアコート層17は、各着色層11〜14の凹凸を平坦化するよう形成されているので、凹凸に蓄積する埃などの汚れを防止することができる。
【0038】
(5)従来の水圧転写では、基絵柄の形成はグラビア印刷で行うため、基絵柄の変更時には製版の設計変更等が必要となり手間がかかる。これに対して、本実施の形態の製造方法では、レーザ照射加工によって絵柄16を描画しているため、基絵柄の変更を容易に行うことができる。また、水圧転写のように絵柄が伸びたり歪んだりするといったこともなく、同じ絵柄16を正確に描くことができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0040】
・上記実施の形態の自動車用加飾部品1では、こげ茶色、茶色、うす茶色、クリーム色の4色の着色層11〜14で絵柄16を表現するものであったが、着色層11〜14の色要素や層数は、基絵柄に応じて適宜変更することができる。なお、基絵柄としては、木目模様以外に、繊維織物の絵柄や植物の繊維模様の絵柄などを挙げることができる。また、図9に示される自動車用加飾部品1Aのように、4色の着色層11〜14に加えて光輝層15を積層形成して、絵柄16を表現してもよい。具体的には、光輝層15は、メタリック調の光沢を有する顔料(メタリック顔料やパール顔料などの光輝性顔料)を含ませた塗料を塗工することで形成され、図9の自動車用加飾部品1Aでは、茶色の着色層12とうす茶色の着色層13との間の中間層として形成されている。このようにすれば、光の反射によって絵柄16の見え方を変化させることができ、光の入射方向やドラバーの視線方向に対して方向性を持った絵柄16を形成することができる。例えば、光輝層15がライン状に露出するようレーザ照射加工を行うことにより、木目模様の絵柄16の見え方を図10のように変化させることができる。またこの場合、凹凸や陰影に加えて絵柄16の照りを表現することが可能となるため、よりリアル感のある絵柄16を表現することができる。
【0041】
また、図1の自動車用加飾部品1において、絵柄16を構成する複数の着色層11〜14の少なくとも1層を、メタリック顔料やパール顔料などを含ませた着色光輝層に変更してもよい。このようにしても、光の反射によって絵柄16の見え方を変化させることができ、光の入射方向や視線方向に対して方向性を持った絵柄16を形成することができる。
【0042】
・上記実施の形態の自動車用加飾部品1では、複数の着色層11〜14を部分的に露出させることにより絵柄16を描くものであったが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示す自動車用加飾部品1Bのように、樹脂成形体2の上面3を部分的に露出させ、その露出部分と複数の着色層12〜14との組み合わせにより絵柄16を表現してもよい。この自動車用加飾部品1Bでは、レーザ照射加工による露出部分が、例えばこげ茶色になる樹脂成形体2を用いる。これにより、最下層の着色層11(こげ茶色の着色層)を省略することができ、塗装コストを抑えることができる。なお、樹脂成形体2としては、レーザ照射加工の熱によって変色する樹脂材料を用いてもよい。この場合、レーザ照射加工による変色後の樹脂成形体2を考慮して絵柄16が表現できるように複数の着色層12〜14の色を設定する。また、樹脂成形体2の上面3を削って凹部3aを形成し、立体感を向上させるようにしてもよい。
【0043】
・上記実施の形態では、複数の着色層11〜14の凹凸を平坦化するようクリアコート層17(図2参照)が形成されていたが、図12の自動車用加飾部品1Cのように、各着色層11〜14の凹凸を残した状態でクリアコート層17を形成してもよい。このように各着色層11〜14の凹凸を残すことにより、基絵柄の実物(天然木の木目)に近い触感を再現することが可能となる。
【0044】
・上記実施の形態では、積層塗工工程において複数の着色層11〜14を形成した後に、描画工程を行って各着色層11〜14を一括して加工することにより絵柄16を描いていたが、これに限定されるものではない。例えば、着色層11〜14を形成する度に、レーザ照射加工による描画工程を行って絵柄16を描くようにしてもよい。
【0045】
・上記実施の形態の描画工程では、レーザ照射加工を行って着色層11〜14を剥離していたが、これ以外に、例えば、エッチング技術を利用して着色層11〜14を剥離してもよい。なお、上記実施の形態にようにレーザ照射加工で描画工程を行う場合、非接触で着色層11〜14を剥離することができるため、工程を簡略化できるといったメリットがある。
【0046】
・上記実施の形態では、自動車用加飾部品1としてドアのアームレストに具体化するものであったが、これ以外に、コンソールボックス、インストルメントパネルなどの部品に具体化してもよい。
【0047】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0048】
(1)請求項1において、前記着色層を形成する度に前記描画工程を行うことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【0049】
(2)請求項1において、前記複数の着色層を形成した後に一括して前記描画工程を行うことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【0050】
(3)請求項1において、前記積層塗工工程で形成される前記着色層はベタ層であることを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【0051】
(4)請求項5において、前記クリアコート層は、前記複数の着色層の凹凸を平坦化するよう形成されていることを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【0052】
(5)請求項5において、前記クリアコート層は、前記複数の着色層の凹凸を残した状態で形成されていることを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の自動車用加飾部品を示す平面図。
【図2】本発明を具体化した一実施の形態の自動車用加飾部品を示す断面図。
【図3】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図4】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図5】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図6】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図7】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図8】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図9】自動車用加飾部品の製造方法を説明するための断面図。
【図10】別の実施の形態の自動車用加飾部品を示す平面図。
【図11】別の実施の形態の自動車用加飾部品を示す断面図。
【図12】別の実施の形態の自動車用加飾部品を示す断面図。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C…自動車用加飾部品
2…自動車用部品素材としての樹脂成形体
3…曲面としての上面
11〜14…着色層
15…光輝層
16…絵柄
17…クリアコート層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾することにより、自動車用加飾部品を製造する方法であって、
前記部品素材の曲面上に色要素の異なる複数の着色層を塗工して積層形成するとともに、積層方向における前記色要素の変化に規則性をもたせるように設定する積層塗工工程と、
前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離して前記着色層を部分的に露出させることにより、前記絵柄を描く描画工程と
を含むことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項2】
前記描画工程では、レーザ照射加工を行って前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離することを特徴とする請求項1に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項3】
前記複数の着色層は、下層側にいくほど色合いが濃くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項4】
前記描画工程では、前記部品素材の曲面も部分的に露出させて、その露出部分と前記複数の着色層との組み合わせにより前記絵柄を表現するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項5】
前記描画工程を行った後に前記複数の着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート形成工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項6】
前記積層塗工工程では、メタリック調の光沢を有する顔料を含ませた光輝層、または、前記着色層にメタリック調の光沢を有する顔料を含ませた着色光輝層を塗工して積層形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項7】
立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾された自動車用加飾部品であって、
前記部品素材の曲面上に、色要素の異なる複数の着色層が塗工されて積層形成されるとともに、積層方向における前記色要素の変化が規則性を有しており、
前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離して前記着色層を部分的に露出させることにより表現された前記絵柄を備えている
ことを特徴とする自動車用加飾部品。
【請求項1】
立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾することにより、自動車用加飾部品を製造する方法であって、
前記部品素材の曲面上に色要素の異なる複数の着色層を塗工して積層形成するとともに、積層方向における前記色要素の変化に規則性をもたせるように設定する積層塗工工程と、
前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離して前記着色層を部分的に露出させることにより、前記絵柄を描く描画工程と
を含むことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項2】
前記描画工程では、レーザ照射加工を行って前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離することを特徴とする請求項1に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項3】
前記複数の着色層は、下層側にいくほど色合いが濃くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項4】
前記描画工程では、前記部品素材の曲面も部分的に露出させて、その露出部分と前記複数の着色層との組み合わせにより前記絵柄を表現するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項5】
前記描画工程を行った後に前記複数の着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート形成工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項6】
前記積層塗工工程では、メタリック調の光沢を有する顔料を含ませた光輝層、または、前記着色層にメタリック調の光沢を有する顔料を含ませた着色光輝層を塗工して積層形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自動車用加飾部品の製造方法。
【請求項7】
立体形状をなす樹脂製の自動車用部品素材の曲面上に、基絵柄を模した絵柄を付加して装飾された自動車用加飾部品であって、
前記部品素材の曲面上に、色要素の異なる複数の着色層が塗工されて積層形成されるとともに、積層方向における前記色要素の変化が規則性を有しており、
前記着色層を選択的にかつ異なる深さで剥離して前記着色層を部分的に露出させることにより表現された前記絵柄を備えている
ことを特徴とする自動車用加飾部品。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図1】
【図10】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図1】
【図10】
【公開番号】特開2010−63993(P2010−63993A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232056(P2008−232056)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
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