説明

自動車用空調装置

【課題】空調運転の終了後に、乗員に不快感を与えることなく、着実にエバポレータの乾燥運転を行うことができる自動車用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内気または外気が流通されるエバポレータ7を備え、該エバポレータ7で温調された空気を吹出すことにより車室内を空調する自動車用空調装置1において、空調運転の終了後に、車両搭載のバッテリの残量および乗員の有無を検知し、バッテリ残量が規定量以上でかつ乗員がいないとき、電動圧縮機2を駆動してエバポレータ7にホットガスを供給することにより該エバポレータ7の乾燥運転を行う制御部25を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットガスによりエバポレータの乾燥運転を行うことができる自動車用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置では、冷房運転時、HVACユニット(Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)内に配設されているエバポレータの表面で空気中の水分が凝縮し、これが水滴となってエバポレータの表面に付着する。この状態で空調運転が終了され、エバポレータの表面に凝縮水が残留されたままになっていると、エバポレータ表面で空気中に含まれていた雑菌等が繁殖し、カビが発生する等により異臭が発生する原因となる。
【0003】
そこで、冷却運転の終了後に、空気調和装置によりヒータやホットガスによる加熱作用を発生させ、空気調和装置内に残留しているドレン水を乾燥させる乾燥運転を行うことによって、ドレン水を排除して空気調和装置内をカビ等が発生することのない低湿状態となすようにした車両用空気調和装置の制御方法が特許文献1により提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−280898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されている技術は、電車等の鉄道車両に適用される空気調和装置に係るものである。このため、エンジンやモータを駆動源に走行する自動車、特に走行用モータの電源となるバッテリを搭載しており、その充電量が自動車の運転走行に直接影響を及ぼすハイブリッド車や電気自動車等に搭載される空調装置に対して、そのまま適用することは困難であった。
また、従来の自動車用空調装置であって、エンジンによりクラッチを介して圧縮機を駆動するタイプのものでは、駐車時等にエンジンを自動起動しながら、圧縮機を駆動してホットガスによりエバポレータの乾燥運転を行うことは、実質的に困難であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ハイブリッド車や電気自動車等に搭載される空調装置では電動圧縮機が用いられている点に着目し、空調運転の終了後に、乗員に不快感を与えることなく、着実にエバポレータの乾燥運転を行うことができる自動車用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の自動車用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる自動車用空調装置は、内気または外気が流通されるエバポレータを備え、該エバポレータで温調された空気を吹出すことにより車室内を空調する自動車用空調装置において、空調運転の終了後に、車両搭載のバッテリの残量および乗員の有無を検知し、バッテリ残量が規定量以上でかつ乗員がいないとき、電動圧縮機を駆動して前記エバポレータにホットガスを供給することにより該エバポレータの乾燥運転を行う制御部を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、空調運転の終了後に、バッテリ残量が規定量以上でかつ乗員がいないとき、電動圧縮機を駆動してエバポレータにホットガスを供給し、該エバポレータの乾燥運転を行うようにしているため、空調運転(冷房運転)終了時、エバポレータの表面に残留している凝縮水をホットガスにより蒸発させてエバポレータを乾燥状態とすることができる。従って、エバポレータ表面でのカビの発生等を抑制し、異臭発生の原因を解消することができる。また、エバポレータの乾燥運転をバッテリの残量と共に乗員がいないことを確認して行うようにしているため、次回の自動車の運転走行に支障を来たしたり、乗員に不快感を与えたりすることなく、着実にエバポレータの乾燥運転を行うことができる。
【0009】
さらに、本発明の自動車用空調装置は、上記の自動車用空調装置において、前記乾燥運転は、前記バッテリ残量が規定量未満のときでも、バッテリの充電中には実施されるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、バッテリ残量が規定量未満のときでも、バッテリの充電中には乾燥運転が実施されるようになっているため、バッテリを充電中であって乗員が乗っていない場合には、必ずエバポレータの乾燥運転が実施されることになる。従って、バッテリ残量を気にする必要のないバッテリ充電時を利用して着実にエバポレータの乾燥運転を行うことができる。
【0011】
さらに、本発明の自動車用空調装置は、上述のいずれかの自動車用空調装置において、前記乾燥運転は、予め設定されている時間後に、自動停止されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、乾燥運転が、予め設定されている時間後に、自動停止されるように構成されているため、駐車等によって自動車から離れている間等に、自動的にエバポレータの乾燥運転を実施することができる。従って、乗員がエバポレータを乾燥運転している際の不快感を被ることがなく、また、車室内環境を長期にわたり良好に維持、継続することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の自動車用空調装置は、上述のいずれかの自動車用空調装置において、前記乾燥運転中、前記バッテリ残量が規定値以下になったとき、該乾燥運転が自動停止されるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、乾燥運転中、バッテリ残量が規定値以下になったとき、乾燥運転が自動停止されるようになっているため、エバポレータの乾燥運転によるバッテリ消費を規定値迄に止め、次回の自動車の運転走行に影響を及ぼさない範囲で行うことができる。従って、エバポレータの乾燥運転を行ったが故に、バッテリの充電量不足で自動車が運転不能に陥る事態を回避することができる。
【0015】
さらに、本発明の自動車用空調装置は、上述のいずれかの自動車用空調装置において、前記乾燥運転時、前記空調装置用のファンが運転されるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、乾燥運転時、空調装置用ファンが運転されるように構成されているため、乾燥運転によりエバポレータの表面から蒸発した水蒸気を空調装置から外部に排出することができる。従って、空調装置内における水蒸気の滞留を防止し、空調装置の内部をも乾燥することができる。
【0017】
さらに、本発明の自動車用空調装置は、上記の自動車用空調装置において、前記乾燥運転時、温調風を車室内に吹出すための吹出しダンパのすべてが全閉とされるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、乾燥運転時、温調風を車室内に吹出すための吹出しダンパのすべてが全閉とされるようになっているため、乾燥運転によりエバポレータの表面から蒸発した水蒸気の車室内への吹出しを防止し、水蒸気をドレン排出部より外部へと排出することができる。従って、水蒸気を含んだ空気の車室内への吹出しを防止し、車室内環境を長期にわたり快適な状態に維持、継続することができる。
【0019】
さらに、本発明の自動車用空調装置は、上述のいずれかの自動車用空調装置において、前記乾燥運転時、内外気切替えダンパが外気導入モードに切替えられるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、乾燥運転時、内外気切替えダンパが外気導入モードに切替えられるようになっているため、乾燥運転時におけるファンからの送風を外部に排出しやすくすることができる。これによって、エバポレータの表面から蒸発された水蒸気を速やかに外部に排出し、空調装置の内部を素早く乾燥状態とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、空調運転(冷房運転)終了時、エバポレータの表面に残留している凝縮水をホットガスにより蒸発させてエバポレータを乾燥状態とすることができるため、エバポレータ表面でのカビの発生等を抑制し、異臭発生の原因を解消することができる。また、エバポレータの乾燥運転をバッテリの残量と共に乗員がいないことを確認して行うようにしているため、次回の自動車の運転走行に支障を来たしたり、乗員に不快感を与えたりすることなく、着実にエバポレータの乾燥運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】図1に示す自動車用空調装置のエバポレータ乾燥運転時の制御フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1および図2を用いて説明する。
自動車用空調装置1は、冷媒を圧縮する電動圧縮機2、ファン3により送風される外気との熱交換によって冷媒を凝縮するコンデンサ4、HVACユニット5内に配置され、ファン6により流通される内気または外気との熱交換によって冷媒を蒸発させ、内気または外気を冷却するエバポレータ7、冷媒循環量の調整および気液分離を行うアキュームレータ8、前記電動圧縮機2からの吐出配管と前記コンデンサ4の出入口配管と前記エバポレータ7の入口配管との間で冷媒の流れを切換える四方切換弁9、第1膨張弁10および第2膨張弁11等を冷媒配管12により接続して形成される閉サイクルの冷媒回路13を備えている。
【0024】
電動圧縮機2は、自動車に搭載のバッテリ(電源ユニット)から供給される電力により駆動される電動モータを内蔵した構成とされている。また、HVACユニット5は、エバポレータ7の下流側に配置されているヒータコア14を備えており、このヒータコア14には、車両走行用のエンジン、モータ、インバータおよびバッテリ等を冷却する冷却回路15から冷却媒体が図示省略のポンプおよび開閉弁16を介して循環されるようになっている。冷却回路15には、ラジエータ17が並設されている。
【0025】
更に、HVACユニット5には、ファン6の上流側に内気導入または外気導入の切替えを行う内外気切替えダンパ18が設けられているとともに、ヒータコア14の下流側に車室内に対して開口されているデフ吹出し口19、フェイス吹出し口20およびフット吹出し口21が設けられている。このデフ吹出し口19、フェイス吹出し口20およびフット吹出し口21には、それぞれデフ吹出しダンパ22、フェイス吹出しダンパ23およびフット吹出しダンパ24が設けられており、各吹出し口19,20,21の開閉により吹出しモードが選択的に切替えられるようになっている。
【0026】
上記自動車用空調装置1において、冷房運転時、電動圧縮機2から吐出された高圧冷媒ガスは、四方切換弁9により破線矢印方向に切換えられてコンデンサ4に導かれ、ここで外気と熱交換されて凝縮液化される。この冷媒は、固定または可変絞りとされている第1膨張弁10により減圧された後、四方切換弁9を介して固定絞りとされている第2膨張弁11に導かれ、更に減圧されることにより低温低圧の二相冷媒とされてエバポレータ7に導入される。この冷媒は、ファン6を介して流通される外気または内気と熱交換されて蒸発され、空気を冷却した後、アキュームレータ8を経て電動圧縮機2に吸い込まれ、以下同様のサイクルが繰り返される。エバポレータ7で冷却された空気は、その下流側に設けられているデフ、フェイスおよびフットの各吹出し口19,20,21の何れかから車室内へと吹出され、車室内の冷房に供される。
【0027】
一方、暖房運転時、ファン6を介してHVACユニット5内に導入された外気または内気は、ヒータコア14で冷却回路15から開閉弁16を経て導入された冷却媒体と熱交換されて加熱され、上記吹出し口19,20,21の何れかから車室内へと吹出されることにより車室内の暖房に供される。この際、冷媒回路13は、四方切換弁9を介して電動圧縮機2から吐出された高圧冷媒ガスが実線矢印方向に流れる暖房サイクルに切換えられるように構成されている。この暖房サイクルでは、第2膨張弁11に導かれた冷媒は、固定絞りによって減圧された後、エバポレータ7に導入され、ファン6により流通される外気または内気に対して放熱し、該空気を加熱することにより、補助暖房装置として機能されるようになっている。
【0028】
また、自動車用空調装置1は、空調装置用ECU(制御部)25を備えており、操作パネル26からの操作情報が入力されるようになっている。また、空調装置用ECU(制御部)25には、外気温センサ27、冷却媒体温度センサ28、エバポレータ吹出温度センサ29、吐出圧力センサ30等からの検出信号が入力されるようになっており、それら検出値と操作パネル26の入力情報とに基づく演算結果によって、電動圧縮機2、四方切換弁9、ファン3、第1および第2膨張弁10,11、ファン6、内外気切替えダンパ18および吹出しダンパ22,23,24等の機器が制御されるように構成されている。
【0029】
さらに、空調装置用ECU(制御部)25には、自動車に搭載されているバッテリの充電量を検出するバッテリ充電量検出センサ31および乗員の有無を検出する乗員検出センサ32の検出値が入力されるようになっている。なお、乗員検出センサ32には、赤外線を用いた人体検知パッシブセンサや座席に設けられるリミットスイッチ等の接触式センサ等を用いることができる。空調装置用ECU(制御部)25は、これらバッテリ充電量検出センサ31および乗員検出センサ32からの入力情報等に基づいて、空調運転(冷房運転)終了後に、図2に示される制御フローに従って、以下に説明するエバポレータ7の乾燥運転が実施されるように構成されている。
【0030】
空調装置用ECU(制御部)25は、ステップS1において、空調運転(冷房運転)の停止が確認されると、ステップS2に移行し、空調運転が停止されてからの時間をカウントする。一定時間経過したらステップS3に移行し、バッテリの充電量(残量)が規定値以上か否かを判断する。バッテリ残量が規定値以上(YES)の場合は、ステップS4に移行し、バッテリ残量が規定値未満(NO)の場合は、ステップS5に移行する。ステップS5では、或る時間経過後にバッテリを充電するためのコンセントが入っているか否かを判断し、コンセントが「ON」になっておれば、ステップS4に移行し、「NO」であれば、ステップS6に移行して全停止状態とされる。
【0031】
上記によりバッテリの充電量(残量)が規定値以上またはバッテリが充電中である判断された場合は、ステップS4において、自動車における乗員の有無が判断され、乗員がいる(YES)と判断されると、ステップS6に移行し、全停止の状態とされる。一方、乗員がいない(NO)と判断された場合は、ステップS7に移行し、冷媒回路13が上記した暖房サイクルで運転開始される。これによって、電動圧縮機2から吐出されたホットガスは、四方切換弁9を介してエバポレータ7に導入され、その顕熱でエバポレータ7を内部側から加熱し、表面に残留されている水滴を蒸発させるように作用する。この暖房サイクル運転は、ファン6を低速で運転するとともに、フット吹出しダンパ24を開としたフットモードで行うことができる。
【0032】
暖房サイクルでの運転中、ステップS8において、バッテリ残量がチェックされ、引き続きステップS9において、規定時間が経過したか否かがチェックされる。ステップS8において、バッテリ残量が規定値以下に低下したと判断(YES)された場合、ステップS6に移行し、エバポレータの乾燥運転が途中であっても運転が中断され、全停止の状態とされる。これはエバポレータ7の乾燥運転を行ったが故に、バッテリが充電量不足となり自動車が運転不能に陥る事態を回避するためである。
【0033】
バッテリ残量が規定値以上である限り、暖房サイクルでの運転は、予め設定されている時間継続され、ステップS9において、規定時間が経過したと判断されると、ステップS10に移行し、エバポレータの乾燥運転が自動終了され、全停止の状態とされる。以上の乾燥運転により、エバポレータ7は、空調運転(冷房運転)が終了した後において、カビ等が発生することのない低湿状態に乾燥されるようになる。
【0034】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
自動車用空調装置1において、車室内の冷房運転は、電動圧縮機2から吐出された高圧冷媒ガスが、四方切換弁9、コンデンサ4、第1膨張弁10、四方切換弁9、第2膨張弁11、エバポレータ7、アキュームレータ8を経て電動圧縮機2の戻る閉サイクル内を循環され、この間にエバポレータ7において蒸発される冷媒により、ファン6を介してHVACユニット5に流通される外気または内気を冷却し、この空気を車室内に吹出すことによって実施される。
【0035】
この冷房運転により、エバポレータ7の表面において空気中の水分が凝縮され、水滴となってエバポレータ7の表面に付着する。この状態で冷房運転が終了され、そのまま放置されると、エバポレータ7の表面は多湿状態に維持され、雑菌が繁殖してカビが発生する等によって、異臭の原因となる。しかるに、本実施形態では、空調運転(冷房運転)の終了後、一定時間が経過し、更にバッテリの残量および乗員の有無を確認して、バッテリ残量が規定値以上またはバッテリが充電中であって、かつ乗員がいないことが確認された場合に、冷媒回路13を暖房サイクルに切換え、電動圧縮機2を運転してエバポレータ7の乾燥運転を行うようにしている。
【0036】
この乾燥運転は、電動圧縮機2から吐出されたホットガスを、四方切換弁9を介して直接エバポレータ7に導入し、その顕熱でエバポレータ7を内部から加熱するもので、この運転によって、エバポレータ7の表面に付着されている水滴を蒸発させ、エバポレータ7を乾燥状態とすることができる。
【0037】
従って、本実施形態によれば、エバポレータ7の表面でのカビの発生等を抑制し、異臭発生の原因を解消することが可能となる。また、エバポレータ7の乾燥運転をバッテリの残量を確認し、更に乗員がいないことを確認して行うようにしているため、次回の自動車の運転走行に支障を来たしたり、乗員に不快感を与えたりすることなく、着実にエバポレータ7の乾燥運転を実施することができる。
【0038】
また、バッテリ残量が規定量未満のときであっても、バッテリを充電している時には乾燥運転が実施されるようにしているため、バッテリを充電中であって乗員が乗っていない場合には、必ずエバポレータ7の乾燥運転が実施されることになる。従って、バッテリ残量を気にする必要のないバッテリ充電時を利用して着実にエバポレータ7の乾燥運転を行うことができる。さらに、上記乾燥運転は、予め設定されている時間後に、自動停止されるようになっているため、駐車等により自動車から離れている間等に、自動的にエバポレータ7の乾燥運転を実施することができ、従って、乗員がエバポレータ7を乾燥運転している際の不快感を被ることがなく、また、車室内環境を長期にわたり良好に維持、継続することが可能となる。
【0039】
また、エバポレータ7の乾燥運転中に、電動圧縮機2等の運転によりバッテリの電力を消費し、バッテリ残量が規定値以下になったとき、乾燥運転を自動停止するようにしているため、エバポレータ7の乾燥運転によるバッテリの消費を規定値迄に止め、次回の自動車の運転走行に影響を来たさないようにすることができる。これによって、エバポレータ7の乾燥運転を行ったが故に、バッテリが充電量不足となり自動車が運転不能に陥る事態を回避することができる。
【0040】
さらに、エバポレータ7の乾燥運転中、ファン6を低速で運転し、フット吹出しダンパ24を開とすることにより、ファン6からの送風をフット吹出し口21から吹出すようにしているため、乾燥運転によりエバポレータの表面から蒸発した水蒸気をHVACユニット2から外部に排出することができる。従って、HVACユニット2内における水蒸気の滞留を防止し、HVACユニット2の内部をも乾燥状態にすることができる。
【0041】
[他の実施形態]
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
上記した第1実施形態に加えて、あるいはその一部に代えて、以下の形態を採用することができる。
(1)エバポレータ7の乾燥運転時、デフ吹出しダンパ22、フェイス吹出しダンパ23およびフット吹出しダンパ24をすべて全閉とする。
(2)エバポレータ7の乾燥運転時、内外気切替えダンパ18を外気導入モードに切替えるようにする。
(3)冷媒回路13を四方切換弁により冷媒循環方向を正逆サイクルに切換えるリバースサイクル方式またはホットガスバイパス回路を設けたホットガスバイパス方式とする。
【0042】
上記(1)のように、エバポレータ7の乾燥運転時、温調風を車室内に吹出すためのデフ吹出しダンパ22、フェイス吹出しダンパ23およびフット吹出しダンパ24をすべて全閉とすることによって、乾燥運転時にエバポレータ7の表面から蒸発した水蒸気の車室内への吹出しを防止し、水蒸気をHVACユニット2のエバポレータ7の下部に設けられているドレン排出部から外部へと排出することができる。このため、水蒸気を含んだ空気の車室内への吹出しを防止し、車室内環境を長期にわたり快適な状態に維持、継続することができる。
【0043】
また、上記(2)のように、エバポレータ7の乾燥運転時、内外気切替えダンパ18を外気導入モードに切替えることにより、乾燥運転時におけるファン6からの送風を外部に排出しやすくすることができる。これによって、エバポレータ7の表面から蒸発された水蒸気を速やかに外部に排出し、HVACユニット2の内部を素早く乾燥状態とすることができる。
【0044】
さらに、上記(3)のように、冷媒回路13をリバースサイクル方式あるいはホットガスバイパス方式とすることによっても、第1実施形態と同様に、エバポレータ7の乾燥運転時、電動圧縮機2から吐出されたホットガスをエバポレータ7に導入し、エバポレータ7を加熱することができる。従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、ヒータコア14に冷却媒体を供給する冷却回路15中にPTCヒータ等の電気ヒータを設けてもよいし、あるいは冷媒回路13側にエバポレータ7と並列に冷却媒体/冷媒熱交換器を設け、補助暖房時、コンデンサ4をエバポレータとして機能させ、外気から吸熱した熱を冷却媒体/冷媒熱交換器を介して冷却媒体に放熱し、暖房に供するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 自動車用空調装置
2 電動圧縮機
5 HVACユニット
6 ファン
7 エバポレータ
18 内外気切替えダンパ
22 デフ吹出しダンパ
23 フェイス吹出しダンパ
24 フット吹出しダンパ
25 空調装置用ECU(制御部)
31 バッテリ充電量検出センサ
32 乗員検出センサ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内気または外気が流通されるエバポレータを備え、該エバポレータで温調された空気を吹出すことにより車室内を空調する自動車用空調装置において、
空調運転の終了後に、車両搭載のバッテリの残量および乗員の有無を検知し、バッテリ残量が規定量以上でかつ乗員がいないとき、電動圧縮機を駆動して前記エバポレータにホットガスを供給することにより該エバポレータの乾燥運転を行う制御部を備えていることを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項2】
前記乾燥運転は、前記バッテリ残量が規定量未満のときでも、バッテリの充電中には実施されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用空調装置。
【請求項3】
前記乾燥運転は、予め設定されている時間後に、自動停止されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用空調装置。
【請求項4】
前記乾燥運転中、前記バッテリ残量が規定値以下になったとき、該乾燥運転が自動停止されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の自動車用空調装置。
【請求項5】
前記乾燥運転時、前記空調装置用のファンが運転されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の自動車用空調装置。
【請求項6】
前記乾燥運転時、温調風を車室内に吹出すための吹出しダンパのすべてが全閉とされるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の自動車用空調装置。
【請求項7】
前記乾燥運転時、内外気切替えダンパが外気導入モードに切替えられるように構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の自動車用空調装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−184579(P2010−184579A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29615(P2009−29615)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】