説明

自動車用電気エネルギー貯蔵装置

【課題】自動車の本体構造に着脱可能に連結することのできる自動車用電気エネルギー貯蔵装置を提供する。
【解決手段】ハウジングを有し、且つハウジングに収容される貯蔵モジュール12を有する、自動車用の電気エネルギー貯蔵装置10、特にハイブリッド車両又は電気車両用の高電圧エネルギー貯蔵装置であって、ハウジングが、ハウジング上部15と、ハウジング下部16と、環状支持フレーム18を備える支持要素17とを有し、ハウジング上部15及びハウジング下部16が、それらの間に位置決めされる支持フレーム18に着脱可能に連結され、及び環状支持フレーム18が締結セクション19、20を有し、それを用いて電気エネルギー貯蔵装置を自動車の本体構造に着脱可能に連結することができる、電気エネルギー貯蔵装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段における自動車用電気エネルギー貯蔵装置、特にハイブリッド車両又は電気車両用の高電圧エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両又は電気車両では、高電圧エネルギー貯蔵装置として設計される電気エネルギー貯蔵装置が利用され、このような装置は、ハイブリッド車両又は電気車両の電気機械がモータモードで動作しているときは比較的集中して放電され、それぞれの電気機械が発電機モードで動作しているときは比較的集中して充電される。電気エネルギー貯蔵装置は、ハウジングと、ハウジングに収容される貯蔵モジュールとを有する。
【0003】
電気エネルギー貯蔵装置を自動車に位置決めして取り付けようとするとき、先行技術ではそのために別個の装置が使用される。このように、(特許文献1)はバッテリの保持装置を開示しており、この装置は、バッテリを収容するトレイ状保持要素と、トレイ状保持要素を囲い込むクリップ要素と、固定要素であって、クリップ要素に締結され、且つバッテリをトレイ状保持要素に固定するために使用される固定要素とを備える。従って、先行技術によれば、自動車用電気エネルギー貯蔵装置を自動車に締結し、又は取り付けるためには、別個の装置が必要である。これにより自動車に設置しなければならない装置の数が増加し、結果として最終的には自動車の重量が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第10 2008 059 680 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の状況を出発点として考えると、自動車用の新規電気エネルギー貯蔵装置を提供することが本発明の基礎となる目的である。この目的は、請求項1に記載の電気エネルギー貯蔵装置により実現される。本発明によれば、ハウジングは、ハウジング上部と、ハウジング下部と、環状支持フレームを備えた支持要素とを有し、ハウジング上部とハウジング下部とは、それらの間に位置決めされる環状支持フレームに着脱可能に連結され、及び環状支持フレームは締結セクションを有し、それを用いてエネルギー貯蔵装置を自動車の本体構造に着脱可能に連結することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置において、環状支持フレームを有する支持要素は電気エネルギー貯蔵装置のハウジングと一体化している部分である。従って、本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置は、ハウジング、すなわちハウジングの支持要素を用いて自動車の本体構造に直接締結することができ、その結果、電気エネルギー貯蔵装置を自動車に締結するための別個の装置は不要となる。
【0007】
ハウジング上部とハウジング下部とは環状支持フレームに着脱可能に連結される。環状支持フレームが、電気エネルギー貯蔵装置に作用する全ての力及びモーメントを吸収する。従ってハウジング上部及びハウジング下部は、軽量で具体化することのできるハウジングの非耐荷重要素として具体化され得る。従って本発明では、一方で設置される装置の数を減らし、他方で自動車の重量を低減することが可能となる。
【0008】
貯蔵モジュールは、好ましくは2つのモジュールパック、すなわち、その貯蔵モジュールが環状支持フレームに対して上側から締結され、且つそこに載置される第1のモジュールパックと、その貯蔵モジュールが環状支持フレームに対して下側から締結され、且つそこから懸下される第2のモジュールパックとを形成し、ハウジング上部が第1のモジュールパックの貯蔵モジュールを被覆し、及びハウジング下部が第2のモジュールパックの貯蔵モジュールを被覆する。貯蔵モジュールが各々環状支持フレームに連結される2つのモジュールパックを備える電気エネルギー貯蔵装置のこの実施形態は、一方で全ての貯蔵モジュールが個別にアクセス可能且つ交換可能であるため、且つ他方で電気エネルギー貯蔵装置のコンパクトで軽い構造を確保することが可能であるため、特に有利である。
【0009】
従属項及び以下の説明から、本発明の好ましい発展形態が明らかとなるであろう。図面を参照して本発明の実施形態がさらに詳細に説明されるが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置の一実施形態の斜視図を示す。
【図2】図1に示される本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置の別の斜視図を示し、貯蔵モジュールは透けて見えている。
【図3】本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置の断面を示す。
【図4】本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置の第1の締結セクションを示す。
【図5】本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置の第2の締結セクションを示す。
【図6】本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置の別の断面を示す。
【図7】図6の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、自動車用電気エネルギー貯蔵装置、特にハイブリッド車両又は電気車両用高電圧エネルギー貯蔵装置に関する。ハイブリッド車両又は電気車両のドライブユニットは、モータとして、且つ発電機として動作することのできる電気機械を含む。電気機械がモータモードで動作するとき、高電圧エネルギー貯蔵装置として設計される電気エネルギー貯蔵装置は、電気機械によって比較的集中して放電される。電気機械が発電機モードで動作するとき、高電圧エネルギー貯蔵装置として設計される電気エネルギー貯蔵装置は、電気機械によって比較的集中して充電される。
【0012】
電気エネルギー貯蔵装置10は、ハウジング11と、ハウジング11に収容される貯蔵モジュール12とを有する。示される本発明の好ましい実施形態において、貯蔵モジュール12は2つのモジュールパック13及び14、すなわち、複数の貯蔵モジュール12からなる第1の上側モジュールパック13と、複数の貯蔵モジュール12からなる第2の下側モジュールパック14とを形成する。
【0013】
電気エネルギー貯蔵装置10のハウジング11は、ハウジング上部15と、ハウジング下部16と、環状支持フレーム18を含む支持要素17とを有する。ハウジング上部15及びハウジング下部16は、ハウジング10の環状支持フレーム18に着脱可能に連結され、この環状支持フレーム18はハウジング上部15とハウジング下部16との間に位置決めされる。
【0014】
ハウジング上部15とハウジング下部16と支持要素17又は支持フレーム18とが合わさって、電気エネルギー貯蔵装置10のハウジング11を形成する。
【0015】
電気エネルギー貯蔵装置10は支持フレーム18のみによって自動車の本体構造に連結することができ、支持フレーム18には、支持フレーム18、ひいては電気エネルギー貯蔵装置10のハウジング11を自動車の本体構造にねじ付けられるようにする締結セクション19、20が形成され、電気エネルギー貯蔵装置10を本体構造に連結することが可能となる。電気エネルギー貯蔵装置を自動車の本体構造に連結できるようにするための、環状支持フレームのこれらの締結セクション19及び20は、張出部として設計され、支持フレーム18と一体化している部分である。締結セクション19及び20は開口21を有し、そこに締付ねじ(図示せず)を貫通させることによって電気エネルギー貯蔵装置10が本体構造に締結される。
【0016】
電気エネルギー貯蔵装置10に作用するあらゆる力及びモーメントは、支持フレーム18又は支持要素17によって吸収される。支持要素17又は環状支持フレーム18は、好ましくは金属、例えば高強度アルミニウム又は高強度アルミニウム合金で作製される。他方で、ハウジング上部15及びハウジング下部16は、いかなる力及びモーメントも吸収しない非耐荷重カバー型部品として具体化される。従って、ハウジング11のハウジング上部15及びハウジング下部16は極めて薄肉で軽量の設計とし得る。ハウジング上部15及びハウジング下部16は、好ましくはプラスチック、特に繊維強化プラスチックで製造される。
【0017】
本発明の示される好ましい実施形態では、貯蔵モジュール12は、既に説明したとおり2つのモジュールパック13及び14を形成する。第1の上側モジュールパック13の貯蔵モジュール12は、環状支持フレーム18、ひいては支持要素17に上側から締結され、そこに載置される。第2の下側モジュールパック14の貯蔵モジュール12は、環状支持フレーム18、ひいては支持要素17に下側から締結され、そこから懸下される。
【0018】
環状支持フレーム18に対する2つのモジュールパック13及び14の貯蔵モジュール12の連結についての好ましい変形例が、図6及び図7に示される。特に図6から、2つのモジュールパック13及び14の貯蔵モジュール12が、ハウジング11の内部に突出する支持フレーム18のセクション22に、より具体的には締付ボルト23及び締付ねじ24を用いて取り付けられることが分かる。このように、締付ボルト23が支持フレーム18の内側に突出したセクション22にねじ付けられ、貯蔵モジュール12の開口部を挿通し、貯蔵モジュール12は、締付ねじ24が締付ボルト23の中に突出してそこにねじ付けられることによって締付ボルト23に取り付けられ、最終的に締付ボルト23によって支持フレーム18にねじ付けられる。各貯蔵モジュール12は個別に支持フレーム18に、より具体的にはその内側に突出したセクション22に、複数のかかる締付ボルト23及び締付ねじ24によって締結される。従ってモジュールパック13、14の貯蔵モジュール12は全て個別にアクセス可能であり、且つ個別に交換可能である。完全に取り付けられた状態では、ハウジング上部15が第1の上側モジュールパック13の貯蔵モジュール12を被覆し、一方、ハウジング下部16が第2の下側モジュールパック14の貯蔵モジュール12を被覆する。
【0019】
支持要素17の環状支持フレーム18は、モジュールパック13及び14の互いに対向するセクションを部分的に取り囲む。これらのセクションに隣接するセクションでは、それぞれのモジュールパック13及び14の貯蔵モジュールが環状支持フレーム18に対して突出している。
【0020】
本発明に係る電気エネルギー貯蔵装置10は、必要なアセンブリ及び必要な設置スペース及び重量を最小限に抑えて自動車に取り付けることができる。あらゆる力及びモーメントは支持要素17により、すなわち環状支持フレーム18により吸収される。ハウジングの他の構成要素、すなわちハウジング上部15及びハウジング下部16は、非耐荷重サブアセンブリとして具体化される。結果として、総重量を低減することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
11 ハウジング
12 貯蔵モジュール
13 第1のモジュールパック
14 第2のモジュールパック
15 ハウジング上部
16 ハウジング下部
17 支持要素
18 環状支持フレーム
19、20 締結セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(11)を有し、且つ前記ハウジングに収容される貯蔵モジュール(12)を有する、自動車用電気エネルギー貯蔵装置、特にハイブリッド車両又は電気車両用高電圧エネルギー貯蔵装置であって、前記ハウジング(11)が、ハウジング上部(15)と、ハウジング下部(16)と、環状支持フレーム(18)を備える支持要素(17)とを有し、前記ハウジング上部(15)及び前記ハウジング下部(16)が、それらの間に位置決めされる前記支持フレーム(18)に着脱可能に連結され、及び前記環状支持フレーム(18)が締結セクション(19、20)を有し、それを用いて前記電気エネルギー貯蔵装置を自動車の本体構造に着脱可能に連結することができることを特徴とする、電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記ハウジング上部(15)及び前記ハウジング下部(16)が、各々、非耐荷重カバー型部品として具体化されることを特徴とする、請求項1に記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記ハウジング上部(15)及び前記ハウジング下部(16)が、各々、プラスチック、特に繊維強化プラスチックで製造されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記支持要素(17)、すなわちその少なくとも前記支持フレーム(18)が、金属、特にアルミニウム又はアルミニウム合金で製造されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記貯蔵モジュール(12)が前記支持要素(17)に着脱可能に連結されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記貯蔵モジュール(12)が2つのモジュールパック(13、14)、すなわち、その前記貯蔵モジュール(12)が前記環状支持フレーム(18)に対して上側から締結され、且つそこに載置される第1のモジュールパック(13)と、その前記貯蔵モジュール(12)が前記環状支持フレーム(18)に対して下側から締結され、且つそこから懸下される第2のモジュールパック(14)とを形成することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
前記環状支持フレーム(18)が前記2つのモジュールパック(13、14)を互いに対向するセクションで部分的に取り囲むことを特徴とする、請求項6に記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
電気エネルギー貯蔵装置を自動車の本体構造に連結できるようにするための、前記環状支持フレーム(18)の前記締結セクション(19、20)が、張出部として設計され、且つ前記支持フレーム(18)と一体化している部分であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気エネルギー貯蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−169275(P2012−169275A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27178(P2012−27178)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】