自己位置認識方法及び自己位置認識装置
【課題】ランドマーク、磁気マーカ等の設置を行なわなくても、自己位置を認識できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】移動体が自己の位置を認識する方法であって、移動体が移動する環境において基準磁気を測定し、基準磁気と基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を予め記憶するステップ(a)と、前記環境において移動体が備える磁気センサにより直流の実測磁気を測定するステップ(b)と、ステップ(a)で記憶された基準磁気と、ステップ(b)により測定された実測磁気と、を対比して実測磁気が測定された位置を特定するステップ(c)と、を備える。
【解決手段】移動体が自己の位置を認識する方法であって、移動体が移動する環境において基準磁気を測定し、基準磁気と基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を予め記憶するステップ(a)と、前記環境において移動体が備える磁気センサにより直流の実測磁気を測定するステップ(b)と、ステップ(a)で記憶された基準磁気と、ステップ(b)により測定された実測磁気と、を対比して実測磁気が測定された位置を特定するステップ(c)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人で走行するロボット、車輌等の移動体が、自己位置を認識するのに好適な方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な場面において、多種多様なロボットが活動している。中でも移動中に自己位置を認識しながら、作業を行うことができるロボットは、工場内やオフィス内、病院内などでの人間の手助けになるものとして期待され、その研究が盛んに行われている。現在、ロボットに対して、様々な自己位置認識法が提案されている。建屋内で一般的に使用されている方法は、車輪の移動量の累積で自己位置を認識する方法である。デッド・レコンニング法の一種であるこの方法は、よく知られているように、累積誤差が大きくなるという問題がある。
【0003】
そこで、環境中に人工的にランドマークを設置し、このランドマークに基づいて自己位置を認識する方法が提案されている(例えば、非特許文献1)。
また、移動経路上に例えば磁気テープからなる磁気マーカを設置し、ロボットに磁気マーカを検出するセンサを設け、センサにより磁気マーカを検知することにより、自己位置を認識する方法が知られている。そして、デッド・レコンニング法と磁気マーカを検知する方法とを組合せた走行制御方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】竹内一雅,太田順、池田和生、相山康道、新井民夫 “人工ランドマークを利用した移動ロボットのナビゲーション”,日本機械学会[No.99−9] ロボティクス・メカトロニクス講演会 ’99講演論文集 1P1-40-052
【特許文献1】特開2002−73171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ランドマークは美観上、その設置に問題がある場合もある。また、ランドマークを設置するには、作業及び費用にかかる負担が大きい。
一方、磁気マーカを設置する方法は、事前に環境の磁場分布を求め、磁気的なノイズの少ないところに磁気マーカを設置しなければならない。したがって、この方法においても、磁気マーカを設置する作業にかかる負担が大きい。この負担は、走行路を変更する際にも生ずる。また、磁気マーカは、一般に床に設置されるが、床面上に磁気マーカを設置することが、美観上好ましくない場合がある。
そこで本発明の目的は、ランドマーク、磁気マーカ等の設置を行なわなくても、自己位置を認識できる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
建屋を構成する鉄骨や鉄節、建屋内に設置される装置、家具、電器製品等の構成要素である鉄部材などの強磁性体は製造及び施工の過程で不可避的に着磁され残留磁気を帯びている。この残留磁気は、時間の経過に対して強さがほとんど変動しない直流磁気である(非特許文献2)。本発明は、磁気を自己位置認識の目印として利用することを前提とするが、環境下に磁気マーカを新たに設置して生ずる磁気を利用するのではなく、以上のように環境に依存して生じている磁気を利用する。
【0007】
【非特許文献2】新納敏文 “環境磁場計測方法の事例調査(その3)”,日本建築学会大会学術講演梗概集,1996年9月
【0008】
本発明は、ロボット等の移動体が移動する環境に依存する磁気とこの磁気が測定された位置とを対応付けて記憶する。そして本発明は、対応付けられた情報である磁気−位置情報と、自己位置を認識する際に測定される磁気とを対比することにより自己位置を認識する。
すなわち移動体が自己の位置を認識するための本発明の方法は、移動体が移動する環境において基準磁気を測定し、基準磁気と基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を予め記憶するステップ(a)と、前記環境において、移動体が備える磁気センサにより実測磁気を測定するステップ(b)と、ステップ(a)で記憶された磁気−位置情報の基準磁気と、ステップ(b)により測定された実測磁気と、を対比して磁気−位置情報から実測磁気が測定された位置を特定するステップ(c)と、を備えることを特徴とする。
本発明の自己位置認識方法は、環境に依存する磁気を利用して自己位置を認識できるので、磁気マーカを新たに設置する作業が不要である。
【0009】
本発明の自己位置認識方法は、移動体が建屋内の環境を移動するものである場合、基準磁気及び実測磁気は、建屋を構成する強磁性体及び建屋に設置されている強磁性体が有する磁気に基づいて測定される。前述したように、建屋を構成する鉄骨や鉄節、建屋内に設置されている装置、家具、電器製品の構成要素である鉄部材などの強磁性体は製造及び施工の過程で不可避的に着磁され残留磁気を帯びている。この残留磁気に基づいて環境内に生じている磁気を測定して、基準磁気及び実測磁気とする。
【0010】
本発明の自己位置認識方法において、磁気−位置情報は、各々直交するX軸、Y軸及びZ軸の3つの軸に沿った基準磁気の強度と位置とが対応付けられたものであることが好ましい。
1つの軸に沿った基準磁気の強度と位置とが対応付けられた磁気−位置情報と実測磁気との対比を行う場合、基準磁気の変化が小さいと、磁気−位置情報から実測磁気が測定された位置を特定することが困難な場合がある。これに対して、X軸、Y軸及びZ軸の3つの軸に沿った基準磁気を用いれば、いずれか1つの軸に沿った基準磁気の強度の変化が大きければ、磁気−位置情報から実測磁気が測定された位置を特定し易いからである。
【0011】
本発明の自己位置認識方法のステップ(c)において、磁気−位置情報の基準磁気のデータ列と実測磁気のデータ列とを線形マッチングすることにより、磁気−位置情報と実測磁気との対比を行うことが好ましい。磁気−位置情報から実測磁気が測定された位置を精度よく特定できるからである。
【0012】
本発明の自己位置認識方法において、磁気−位置情報は、前記環境において設定された所定の経路に沿って測定された基準磁気によるものとすることが好ましい。記憶する磁気−位置情報のデータ数を減らすことにより、基準磁気のデータ列と実測磁気のデータ列との対比に要する時間を短くするためである。一方で、ロボットを移動させる場合、所定の経路に沿って移動できれば、通常はロボットを移動させる目的が達せられるからである。
【0013】
本発明による自己位置認識方法を実施する装置として、移動体が移動する環境において測定された基準磁気と基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を記憶する記憶手段と、前記環境において実測磁気を測定する磁気センサと、記憶手段に記憶された磁気−位置情報の基準磁気と、磁気センサで測定された実測磁気と、を対比して実測磁気が測定された位置を特定する位置特定手段と、を備える自己位置認識装置を本発明は提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、環境依存して元々生じている磁気を利用して自己位置を認識できるので、磁気マーカを新たに設置する作業が不要で、移動経路を変更する際にも磁気マーカを再設置する作業を行なう必要もない。また、床面上に磁気マーカを設置する必要がないので、環境の美観を害することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における車輪型の移動ロボット(移動体、以下単にロボットという)1の概略構成を示す側面図である。
ロボット1は、箱状の本体2の前後方向中央下部に左右一対の駆動輪3,4を備えると共に、本体2のほぼ四隅下部に夫々補助輪5を備えている。また、本体2の前方(図中右側)側面には磁気・ジャイロセンサ20及びCCDカメラ30が設置されている。磁気・ジャイロセンサ20及びCCDカメラ30は、本体2の内部に設置された制御部10と電気的に接続されている。
磁気・ジャイロセンサ20は、互いに直交する3軸に沿った直流磁気(以下、単に磁気)を測定できる。ここで、3軸は、ロボット1の進行方向に沿ったX軸、床面に平行でX軸に直行するY軸、鉛直方向に平行でX軸に直行する方向をZ軸とからなる。測定される磁気は、後述する磁気−位置情報の作成及び自己位置認識に用いる。磁気・ジャイロセンサ20は、磁気の他に、角速度を測定できる。角速度はロボットの直進走行制御に用いることができる。本実施形態では、磁気センサとジャイロセンサとが一体となった磁気・ジャイロセンサ20を用いた例を示しているが、各々を別体として設けることもできる。
【0016】
図2は、ロボット1の制御系の構成を示すブロック図である。
図2において、各駆動輪3,4は、夫々駆動モータ6,7により図示しない減速機を介して回転駆動されるようになっている。また、駆動モータ6,7には、駆動輪3,4の回転速度(回転数)を検出するためのエンコーダ8,9が夫々付設されている。さらに、これら駆動モータ6,7は、走行コントローラ11により、モータ駆動回路12を介して夫々独立して駆動制御されるようになっている。走行コントローラ11は、駆動モータ6,7を異なる回転数で回転させることにより、ロボット1の向きを変えることができる。
【0017】
走行コントローラ11は、例えば、CPU、ROM、RAM等及び入出力回路等を備えたコンピュータから構成され、位置特定手段11a、記憶手段11bを有している。
走行コントローラ11は、磁気・ジャイロセンサ20で測定された磁気(基準磁気)と、この磁気が測定された位置とを対応付けて記憶手段11bに記憶する。対応付けられたデータ(磁気−位置情報)は、ロボット1が自己位置を認識するのに先立って、予め記憶手段11bに記憶される。記憶手段11bには、走行コントローラ11が行う種々の制御に関するプログラムが記憶されている。
走行コントローラ11の位置特定手段11aは、ロボット1が自己位置を認識する際に、磁気・ジャイロセンサ20で測定された磁気(実測磁気)を取得する一方、記憶手段11bに記憶されている磁気−位置情報を読み出す。位置特定手段11bは、読み出した基準磁気と、取得した実測磁気と、を対比して実測磁気が測定された位置を特定する。
走行コントローラ11は、エンコーダ8,9で検出した駆動輪3,4の回転数に基づいて、公知のデッド・レコンニング法により自己位置を認識し、また、所定の径路に沿ってロボット1が移動するように駆動モータ6,7を制御するが、この点は公知技術であるから、詳細は省略する。
【0018】
図3に、磁気−位置情報のデータ構造の一例を示す。
図3に示すように、磁気−位置情報は、二次元座標(x,y)上の任意の位置と、当該位置における磁気(基準磁気)とが対応付けられている。つまり、位置(x1,y1)において測定された基準磁気が、Magx1、Magy1、Magz1であり、また、位置(x2,y2)において測定された基準磁気が、Magx2、Magy2、Magz2であることを図3は示している。なお、Magx1は磁気・ジャイロセンサ20のX軸に沿った磁気の強度、Magy1は磁気・ジャイロセンサ20のY軸に沿った磁気の強度、Magz1は磁気・ジャイロセンサ20のZ軸に沿った磁気の強度を示している。
【0019】
磁気−位置情報に基づく自己位置認識法では、ロボット1の移動環境のあらゆる位置において磁気強度と位置座標とを対応付けて記憶し、これに基づいて位置座標がリアルタイムで認識できることが望ましい。しかし、この方法は現在の技術レベルでは現実的ではない。ロボットの移動環境が広いほど記憶するデータ数が多くなり、位置座標を認識する処理(例えば線形マッチング処理)にも相当の時間がかかってしまうからである。そこで、より容易に、そしてより早く自己位置を認識できるようにするために、本実施の形態では、図4に示す手順で、磁気−位置情報を記憶する。すなわち、ロボット1の移動空間においてロボット1の移動経路を決定する(図4 S101)。決定した移動経路の原点から終点まで、ロボット1を一定速度で直進走行(図4 S103)させながら、磁気・ジャイロセンサ20で磁気(直流磁気)を測定する(図4 S105)。同時に、エンコーダ8,9により原点からの移動距離を測定する(図4 S107)。磁気・ジャイロセンサ20からの出力である磁気強度と、エンコーダ8,9からの出力である移動距離により特定される位置座標とを対応付けて、メモリ11bに記憶する(図4 S109)。
【0020】
以上の手順に従って実際に行った磁気−位置情報の記憶処理の一例について以下説明する。
移動経路は、図5に示すように、y方向において2経路(y1、y2)、x方向においてy方向のスタート地点(S)から1m毎に7経路(x1、x2、x3、x4、x5、x6、x7)とした。ロボット1を全ての移動経路上を移動させて磁気−位置情報を記憶した。記憶した磁気−位置情報に基づいて作成した磁気マップを図6(磁気・ジャイロセンサ20のX軸で検出)、図7(磁気・ジャイロセンサ20のY軸で検出)及び図8(磁気・ジャイロセンサ20のZ軸で検出)に示す。なお、図6、図7及び図8において、縦軸は直流磁気の強度、x−y平面は位置座標を示している。
【0021】
詳しくは後述するが、本実施形態は、磁気−位置情報の基準磁気のデータ列と、磁気・ジャイロセンサ20が検出した実測磁気のデータ列とを線形マッチングし、基準磁気と対応付けられた位置座標を特定することにより、自己位置を認識する。そのため、実測磁気の強度の変化がロボットの移動距離に対して大きいほど位置認識は容易と言える。
このことを念頭に、図6〜図8を参照すると、図6〜図8はいずれもy方向の経路(y1、y2)に沿った基準磁気の変化が大きい。y方向の経路の場合、X軸(図6(a))、Y軸(図7(a))及びZ軸(図8(a))を介して得られた磁気−位置情報のうち、いずれか1つを用いて実測磁気と対比すれば自己位置認識は可能である。もちろん、3つ全ての磁気−位置情報を用いることもできるが、実測磁気と対比(線形マッチング)に時間がかかってしまう。
一方、図6〜図8を参照すると、特に図7、図8においてx方向の経路における基準磁気の変化が小さい。このような場合は、磁気・ジャイロセンサ20の3つの軸(X軸、Y軸、Z軸)に対応する磁気−位置情報の各々について、実測磁気との対比を行なうことが必要である。
【0022】
次に、磁気−位置情報を用いてロボット1が自己位置を認識する手順を、図9を参照しつつ説明する。なお、この手順は、予め磁気−位置情報が記憶手段11bに記憶されていることを前提としている(図9 S401)。また、図9に示す手順は、両側が壁に囲まれた通路を移動するロボット1が、自己位置を認識することを想定している。
自己位置認識を行なうに際して、通路周囲の画像をCCDカメラ30で撮影する。位置特定手段11aは、撮影された画像を取り込む(図9 S201)。位置特定手段11aは、取り込んだ画像を処理して、Hough変換を用いて、通路の壁と床との境界に対応するエッジ直線を抽出する(図9 S203)。また、位置特定手段11aは、エッジ直線からロボット1(CCDカメラ30)までの距離(ρ)を特定する。この距離は、Hough変換によるエッジ直線の抽出の過程で求められる。
【0023】
Hough変換は、画像などからパラメトリックモデルを抽出する手法である。Hough変換では各点から、その点が存在する可能性のあるパラメータ投票空間全てに有意に高くなるパラメータを選択することでパラメータを推定する。
Hough変換による直線(エッジ直線)検出の原理は以下の通りである。
直線検出の場合、図10(a)に示すように、直角座標上の点(x,y)を通るすべての直線は、その直線と直交する直線のx軸との角度θと長さ(距離)ρとで表される。図10(b)から、ρを求めると次式(1)になる。
ρ=xcosθ+ysinθ…(1)
式(1)は、直角座標上の点(x,y)を角度θと距離ρの極座標二次元空間に変換したものである。角度θと距離ρごとに、その個数を加算していくと、個数が最大になった組み合わせ(角度θと距離ρ)を元の直角座標に戻したものが最も直線らしい点の集まりとなる。この点の集まりがエッジ直線である。
【0024】
次に、測定した距離(ρ)と磁気・ジャイロセンサ20から検出したロボット1の方位を用いて、ロボット1に一番近い移動経路を選択する(図9 S207)。この移動経路は、磁気−位置情報を記憶する際に決定された複数の中から選択される。
次に、線形マッチングを行なう(図9 S209)。線形マッチングは、選択した経路上で測定する実測磁気(図9 S301)と、予め当該経路について記憶された磁気−位置情報(図9 S401)とを対比することにより行なわれる。
【0025】
線形マッチングの手法を図11に基づいて説明する。
図11は、選択された経路に対応する磁気−位置情報のデータ列の一例を示すもので、縦軸が磁気強度、横軸が経路上の位置を示している。図11(a)の実線で示される曲線は、磁気・ジャイロセンサ20のX軸の磁気に対応している。同様に、図11(b)の曲線(実線)はY軸の磁気に対応し、また、図11(c)の曲線(実線)はZ軸の磁気に対応している。
図11(a)〜(c)中の、点線で示される曲線が、位置認識を行う際に磁気・ジャイロセンサ20で測定された実測磁気のデータ列を示しているものとする。
【0026】
線形マッチングとは、データ列の先頭から末尾に向かって、データ列を一定のステップでずらして行き、データマッチングを行う手法である。図11は1つのステップについて示しており、点線で示される曲線(データ列)の形態が、直線で示される曲線(データ列)の形態に一致(又は近似)する部分を特定する(図9 S211)。図11の場合、X軸及びY軸については一致する部分を特定できるが、Z軸については一致する部分を特定できないおそれがある。これは、Z軸(図11(c))の場合、経路に沿った磁気の変化が小さいために、測定された磁気曲線と一致すると判断される部分が複数存在するためである。
図11に示される例の場合、X軸及びY軸については一致する部分を特定できたので、一致するデータ列の最後のデータに対応付けられた位置座標を読み取り(図9 S213)、この座標をロボット1の現在の位置として特定する(図9 S215)。
X軸〜Z軸のいずれについても一致する部分を特定できない場合には、ロボット1を移動させながら磁気・ジャイロセンサ20による磁気の測定を継続する(図9 S301)。そして、新たに測定された磁気を含むデータ例を用いて、かつステップをずらして上記と同様にマッチング処理を行う。
【0027】
本実施の形態によれば、ロボット1に対して位置の初期化を行わなくても、どんな位置にあっても自己位置を認識することが可能である。
また、本実施の形態によれば、磁気・ジャイロセンサ20の3軸で検出された実測磁気の各々について線形マッチングを行っているので、ミスマッチング、つまり一致する部分を特定できないという可能性が極めて小さい。もっとも本発明は、X軸、Y軸及びZ軸の3軸で測定された基準磁気を全て用いて線形マッチングする形態に限らない。
【0028】
次に、以上説明した位置認識方法に基づいてロボット1を移動させる方法の一例について説明する。
本実施の形態による移動方法は、基本的には公知のデッド・レコンニング法により行なわれるものであるが、以上説明した位置認識方法で認識した位置を用いて補正しながら移動するところに特徴がある。
図12の破線で示される経路(x方向において6通り、y方向において3通り)を、磁気−位置情報が作成された経路とし、ロボット1が点Oから目標地Gに移動するものとする。
ロボット1は、まず、自己の現在位置である点O(自分)から一番近いy方向に延びる真中の経路y2を選択する。経路y2の選択は、前述したように、Hough変換による直線(エッジ直線)検出、距離ρ及びロボット1の向きに基づいて行うことができる。
経路y2を選択した後、ロボット1は、経路y2まで移動する。この移動は、本実施の形態による自己位置を認識方法を用いることなく、エンコーダ8,9で得られた車輪の回転数による従来のデッド・レコンニング法に基づいて行えばよい。
経路y2まで移動したロボット1は、経路y2上を点Aまで移動する。点Aまでの移動も、基本的には従来のデッド・レコンニング法に基づいて行なえばよい。しかし、従来のデッド・レコンニング法は、累積誤差が生じるため、長い距離を移動していると、所定の径路から外れてしまう。したがって、本実施の形態では、累積誤差が許容できる距離ごとに、本実施の形態による自己位置認識を行ってロボット1の位置を補正しながら点Aまで移動する。ロボット1は、経路y2と経路x4の交点である点Aまで移動したならば、向きを変えて経路x4上を点Bに向けて移動する。点Aから点Bまでも、点Aまでの移動と同様にロボット1の位置を適宜補正しながら移動すればよい。
【0029】
点Bまで移動したならば、ロボット1は、向きを変えた後に目標地Gまで移動する。この移動は、従来のデッド・レコンニング法に基づいて行うことができる。
従来のデッド・レコンニング法のみを用いた移動では、累積誤差が大きくなる問題がある。しかしながら、本実施の形態による移動方法によれば、磁気−位置情報に基づいて認識した自己位置をデッド・レコンニング法の初期位置として使用できる。このことは、累積誤差がリセットされることを意味しており、したがって、本実施の形態による移動方法によれば、累積誤差が発生しないと言える。
【0030】
次に、実際にロボット1を経路上を移動させる実験を行なった結果について説明する。
この実験は、両側に壁が設けられている幅1.75mの通路に設けられた経路上を、ロボット1を直進移動させて、ロボット1が認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボット1の位置(実測位置)との誤差を求めるものである。
実験は、通路の長手方向(y方向)に沿った2つの経路と、通路の幅方向(x方向)に沿った2つの経路を用いた。結果を図13〜図16に示す。なお、図13、図14は、各々、ロボット1をx=0(壁)から0.5m、1.25m離れた経路上を移動させた実験の結果、図15、図16は、各々、ロボット1をy=0の地点から1m、2m離れた経路上を移動させた実験の結果を示している。
【0031】
また、本実験における磁気−位置情報の作成、マッチング処理は、以下の要領で行った。
y方向については、ロボット1の移動速度を0.06m/sとし、6.0mの経路上の5400地点で基準磁気を測定した(データ個数5400個)。また、x方向については、ロボット1の移動速度を0.03m/sとし、0.75mの経路上の1500地点で基準磁気を測定した(データ個数1500個)。そして、本実験では、線形マッチングの処理速度を考慮して、1つのステップでマッチング処理するデータ個数を100個にした。したがって、1ステップのマッチング処理に用いる磁気−位置情報は、y方向において6.0m/54個≒0.11m、x方向において0.75/15≒0.05mの距離分に相当する。
【0032】
図13(a)、図14(a)、図15(a)、図16(a)において、○は認識位置を、また×は実測位置を示している。
図13(b)、図14(b)、図15(b)、図16(b)に、認識位置と実測位置の誤差を示す。認識位置と実測位置の誤差は、図13(b)の結果では最大で6.2cm、図14(b)の結果では最大で8.2cm、図15(b)の結果では最大で6.5cm、図16(b)の結果では最大で7.8cmであることが確認された。この誤差(最大値)は、デッド・レコンニング法で生じる累積誤差に比べて小さい。
【0033】
次に、図17に示すように、ロボット1をスタート地点Sから出発させ、y方向に6m、x方向に0.75mの矩形の径路に沿って1周だけ移動させ、ロボット1がスタート地点Sに戻れるか否かの実験を行った。実験は、本実施の形態による位置認識によりデッド・レコンニング法を補正して移動させる場合(実施例)と、エンコーダ8,9で得られる車輪の回転数を用いた従来のデッド・レコンニング法のみにより移動させる場合(従来例)とを行なった。結果を図17に示す。
【0034】
図17において、黒実線は移動経路、一点鎖線は実施例の結果、点線は従来例の結果を示している。図17に示すように、従来例では、ロボット1はスタート地点Sに戻ることができない。これは、床のすべりやロボット1の駆動輪3、4の回転ズレが生じ、かつ累積して誤差が大きくなるためである。一方、本実施の形態によれば、ロボットはほぼスタート地点Sに戻ることができる。
【0035】
従来例において、ロボット1の戻ってくる地点とスタート地点Sのズレは、y方向に3cm、x方向に17cmである。もし、ロボット1が同じ経路を繰り返して移動する場合、このズレはだんだん大きくなる。したがって、従来例によると、ロボット1に長い距離を移動させながら自律的に作業させることは困難である。
一方、本実施形態によると、戻ってくる地点と出発地点との間に誤差は生じるが、磁気−位置情報に基づいて自己位置を逐次認識するため、この誤差は累積されない。本実施の形態に基づいて図17に示す経路を8周移動させる実験を行ったが、8周移動までにロボット1の戻ってくる地点とスタート地点Sのズレは、y方向に最大で8cm、x方向に2cmであった。したがって、本実施の形態による自己位置認識方法を用いることによって、ロボット1に長い距離を移動させながら作業させることが十分に可能である。
【0036】
以上説明した本実施の形態は、建屋内を移動するロボット1を想定しているが、本発明はこれに限定されない。磁気が発生しており、かつこの磁気の変動がないか又は小さい環境であれば、屋外であっても本発明の自己位置認識方法を実施できる。
以上説明した本実施の形態では、エンコーダ8,9により得られる駆動輪3,4の回転数を用いる従来のデッド・レコンニング法と組み合せてロボット1を移動させる例を示したが、本発明の自己位置認識方法の利用形態はこれに限らない。他の内界センタで得られる情報、外界センタで得られる情報を用いる従来のデッド・レコンニング法と組み合わせることもできるし、本発明の自己位置認識方法のみを用いてロボット1の移動を制御できる。
【0037】
また、本発明では、磁気・ジャイロセンサ20のX軸,Y軸及びZ軸の3軸に対応する磁気−位置情報を組み合せて線形マッチングを行うことができる。例えば、ロボット1が地点Aから地点Dまで移動する際に、地点B、地点Cを経由する場合を考える。この場合、地点Aから地点BまではX軸に対応する磁気−位置情報について線形マッチング処理を行う。また、地点Bから地点Cまでは、Y軸に対応する磁気−位置情報について線形マッチング処理を行う。さらに、地点Cから地点Dまでは、Z軸に対応する磁気−位置情報について線形マッチング処理を行う。
【0038】
さらに、本発明では、線形マッチングに限らず、動的計画法(Dynamic Programming)によるマッチング手法(DPマッチング)、あるいはより一般的なパターン・マッチング(パターン照合)等の公知の手法によって、磁気−位置情報の基準磁気と実測磁気とを対比して実測磁気が測定された位置を特定することもできる。
さらにまた、本発明では、磁気−位置情報の基準磁気と実測磁気とを対比するものであるから、位置座標を特定する以外に、方位をも特定することができる。したがって本発明における自己位置とは、方位をも含む概念を有している。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上述した本実施の形態に構成を加え、又は構成を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態における移動ロボットの構成を示す側面図である。
【図2】本実施の形態における移動ロボットの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】磁気−位置情報のデータ構造の一例を示す図である。
【図4】磁気−位置情報を記憶する手順を示すフローチャートである。
【図5】移動経路の一例を示す図である。
【図6】磁気・ジャイロセンサのX軸で測定された直流磁気に基づいて作成された磁気マップの一例を示す図である。
【図7】磁気・ジャイロセンサのY軸で測定された直流磁気に基づいて作成された磁気マップの一例を示す図である。
【図8】磁気・ジャイロセンサのZ軸で測定された直流磁気に基づいて作成された磁気マップの一例を示す図である。
【図9】磁気−位置情報を用いて移動ロボットが自己位置を認識する手順を示すフローチャートである。
【図10】Hough変換による直線検出の原理を説明するための図である。
【図11】線形マッチングの方法を説明するための図である。
【図12】磁気−位置情報に基づいて移動ロボットが目標まで移動する様子を示す図である。
【図13】ロボットをx=0の地点か0.5m離れた経路上を直進走行させて、ロボットが認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボットの位置(実測位置)との誤差を示す図である。
【図14】ロボットをx=0の地点から1.25m離れた経路上を直進走行させて、ロボットが認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボットの位置(実測位置)との誤差を示す図である。
【図15】ロボットをy=0の地点から1m離れた経路上を直進走行させて、ロボットが認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボットの位置(実測位置)との誤差を示す図である。
【図16】ロボットをy=0の地点から2m離れた経路上を直進走行させて、ロボットが認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボットの位置(実測位置)との誤差を示す図である。
【図17】ロボットをスタート地点Sから出発させ、矩形の経路に沿って1周だけ移動させたときの結果を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…移動ロボット、2…本体、3,4…駆動輪、5…補助輪、6,7…駆動モータ、8,9…エンコーダ、10…制御部、11…走行コントローラ、12…モータ駆動回路、20…磁気・ジャイロセンサ、30…CCDカメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人で走行するロボット、車輌等の移動体が、自己位置を認識するのに好適な方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な場面において、多種多様なロボットが活動している。中でも移動中に自己位置を認識しながら、作業を行うことができるロボットは、工場内やオフィス内、病院内などでの人間の手助けになるものとして期待され、その研究が盛んに行われている。現在、ロボットに対して、様々な自己位置認識法が提案されている。建屋内で一般的に使用されている方法は、車輪の移動量の累積で自己位置を認識する方法である。デッド・レコンニング法の一種であるこの方法は、よく知られているように、累積誤差が大きくなるという問題がある。
【0003】
そこで、環境中に人工的にランドマークを設置し、このランドマークに基づいて自己位置を認識する方法が提案されている(例えば、非特許文献1)。
また、移動経路上に例えば磁気テープからなる磁気マーカを設置し、ロボットに磁気マーカを検出するセンサを設け、センサにより磁気マーカを検知することにより、自己位置を認識する方法が知られている。そして、デッド・レコンニング法と磁気マーカを検知する方法とを組合せた走行制御方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】竹内一雅,太田順、池田和生、相山康道、新井民夫 “人工ランドマークを利用した移動ロボットのナビゲーション”,日本機械学会[No.99−9] ロボティクス・メカトロニクス講演会 ’99講演論文集 1P1-40-052
【特許文献1】特開2002−73171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ランドマークは美観上、その設置に問題がある場合もある。また、ランドマークを設置するには、作業及び費用にかかる負担が大きい。
一方、磁気マーカを設置する方法は、事前に環境の磁場分布を求め、磁気的なノイズの少ないところに磁気マーカを設置しなければならない。したがって、この方法においても、磁気マーカを設置する作業にかかる負担が大きい。この負担は、走行路を変更する際にも生ずる。また、磁気マーカは、一般に床に設置されるが、床面上に磁気マーカを設置することが、美観上好ましくない場合がある。
そこで本発明の目的は、ランドマーク、磁気マーカ等の設置を行なわなくても、自己位置を認識できる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
建屋を構成する鉄骨や鉄節、建屋内に設置される装置、家具、電器製品等の構成要素である鉄部材などの強磁性体は製造及び施工の過程で不可避的に着磁され残留磁気を帯びている。この残留磁気は、時間の経過に対して強さがほとんど変動しない直流磁気である(非特許文献2)。本発明は、磁気を自己位置認識の目印として利用することを前提とするが、環境下に磁気マーカを新たに設置して生ずる磁気を利用するのではなく、以上のように環境に依存して生じている磁気を利用する。
【0007】
【非特許文献2】新納敏文 “環境磁場計測方法の事例調査(その3)”,日本建築学会大会学術講演梗概集,1996年9月
【0008】
本発明は、ロボット等の移動体が移動する環境に依存する磁気とこの磁気が測定された位置とを対応付けて記憶する。そして本発明は、対応付けられた情報である磁気−位置情報と、自己位置を認識する際に測定される磁気とを対比することにより自己位置を認識する。
すなわち移動体が自己の位置を認識するための本発明の方法は、移動体が移動する環境において基準磁気を測定し、基準磁気と基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を予め記憶するステップ(a)と、前記環境において、移動体が備える磁気センサにより実測磁気を測定するステップ(b)と、ステップ(a)で記憶された磁気−位置情報の基準磁気と、ステップ(b)により測定された実測磁気と、を対比して磁気−位置情報から実測磁気が測定された位置を特定するステップ(c)と、を備えることを特徴とする。
本発明の自己位置認識方法は、環境に依存する磁気を利用して自己位置を認識できるので、磁気マーカを新たに設置する作業が不要である。
【0009】
本発明の自己位置認識方法は、移動体が建屋内の環境を移動するものである場合、基準磁気及び実測磁気は、建屋を構成する強磁性体及び建屋に設置されている強磁性体が有する磁気に基づいて測定される。前述したように、建屋を構成する鉄骨や鉄節、建屋内に設置されている装置、家具、電器製品の構成要素である鉄部材などの強磁性体は製造及び施工の過程で不可避的に着磁され残留磁気を帯びている。この残留磁気に基づいて環境内に生じている磁気を測定して、基準磁気及び実測磁気とする。
【0010】
本発明の自己位置認識方法において、磁気−位置情報は、各々直交するX軸、Y軸及びZ軸の3つの軸に沿った基準磁気の強度と位置とが対応付けられたものであることが好ましい。
1つの軸に沿った基準磁気の強度と位置とが対応付けられた磁気−位置情報と実測磁気との対比を行う場合、基準磁気の変化が小さいと、磁気−位置情報から実測磁気が測定された位置を特定することが困難な場合がある。これに対して、X軸、Y軸及びZ軸の3つの軸に沿った基準磁気を用いれば、いずれか1つの軸に沿った基準磁気の強度の変化が大きければ、磁気−位置情報から実測磁気が測定された位置を特定し易いからである。
【0011】
本発明の自己位置認識方法のステップ(c)において、磁気−位置情報の基準磁気のデータ列と実測磁気のデータ列とを線形マッチングすることにより、磁気−位置情報と実測磁気との対比を行うことが好ましい。磁気−位置情報から実測磁気が測定された位置を精度よく特定できるからである。
【0012】
本発明の自己位置認識方法において、磁気−位置情報は、前記環境において設定された所定の経路に沿って測定された基準磁気によるものとすることが好ましい。記憶する磁気−位置情報のデータ数を減らすことにより、基準磁気のデータ列と実測磁気のデータ列との対比に要する時間を短くするためである。一方で、ロボットを移動させる場合、所定の経路に沿って移動できれば、通常はロボットを移動させる目的が達せられるからである。
【0013】
本発明による自己位置認識方法を実施する装置として、移動体が移動する環境において測定された基準磁気と基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を記憶する記憶手段と、前記環境において実測磁気を測定する磁気センサと、記憶手段に記憶された磁気−位置情報の基準磁気と、磁気センサで測定された実測磁気と、を対比して実測磁気が測定された位置を特定する位置特定手段と、を備える自己位置認識装置を本発明は提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、環境依存して元々生じている磁気を利用して自己位置を認識できるので、磁気マーカを新たに設置する作業が不要で、移動経路を変更する際にも磁気マーカを再設置する作業を行なう必要もない。また、床面上に磁気マーカを設置する必要がないので、環境の美観を害することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における車輪型の移動ロボット(移動体、以下単にロボットという)1の概略構成を示す側面図である。
ロボット1は、箱状の本体2の前後方向中央下部に左右一対の駆動輪3,4を備えると共に、本体2のほぼ四隅下部に夫々補助輪5を備えている。また、本体2の前方(図中右側)側面には磁気・ジャイロセンサ20及びCCDカメラ30が設置されている。磁気・ジャイロセンサ20及びCCDカメラ30は、本体2の内部に設置された制御部10と電気的に接続されている。
磁気・ジャイロセンサ20は、互いに直交する3軸に沿った直流磁気(以下、単に磁気)を測定できる。ここで、3軸は、ロボット1の進行方向に沿ったX軸、床面に平行でX軸に直行するY軸、鉛直方向に平行でX軸に直行する方向をZ軸とからなる。測定される磁気は、後述する磁気−位置情報の作成及び自己位置認識に用いる。磁気・ジャイロセンサ20は、磁気の他に、角速度を測定できる。角速度はロボットの直進走行制御に用いることができる。本実施形態では、磁気センサとジャイロセンサとが一体となった磁気・ジャイロセンサ20を用いた例を示しているが、各々を別体として設けることもできる。
【0016】
図2は、ロボット1の制御系の構成を示すブロック図である。
図2において、各駆動輪3,4は、夫々駆動モータ6,7により図示しない減速機を介して回転駆動されるようになっている。また、駆動モータ6,7には、駆動輪3,4の回転速度(回転数)を検出するためのエンコーダ8,9が夫々付設されている。さらに、これら駆動モータ6,7は、走行コントローラ11により、モータ駆動回路12を介して夫々独立して駆動制御されるようになっている。走行コントローラ11は、駆動モータ6,7を異なる回転数で回転させることにより、ロボット1の向きを変えることができる。
【0017】
走行コントローラ11は、例えば、CPU、ROM、RAM等及び入出力回路等を備えたコンピュータから構成され、位置特定手段11a、記憶手段11bを有している。
走行コントローラ11は、磁気・ジャイロセンサ20で測定された磁気(基準磁気)と、この磁気が測定された位置とを対応付けて記憶手段11bに記憶する。対応付けられたデータ(磁気−位置情報)は、ロボット1が自己位置を認識するのに先立って、予め記憶手段11bに記憶される。記憶手段11bには、走行コントローラ11が行う種々の制御に関するプログラムが記憶されている。
走行コントローラ11の位置特定手段11aは、ロボット1が自己位置を認識する際に、磁気・ジャイロセンサ20で測定された磁気(実測磁気)を取得する一方、記憶手段11bに記憶されている磁気−位置情報を読み出す。位置特定手段11bは、読み出した基準磁気と、取得した実測磁気と、を対比して実測磁気が測定された位置を特定する。
走行コントローラ11は、エンコーダ8,9で検出した駆動輪3,4の回転数に基づいて、公知のデッド・レコンニング法により自己位置を認識し、また、所定の径路に沿ってロボット1が移動するように駆動モータ6,7を制御するが、この点は公知技術であるから、詳細は省略する。
【0018】
図3に、磁気−位置情報のデータ構造の一例を示す。
図3に示すように、磁気−位置情報は、二次元座標(x,y)上の任意の位置と、当該位置における磁気(基準磁気)とが対応付けられている。つまり、位置(x1,y1)において測定された基準磁気が、Magx1、Magy1、Magz1であり、また、位置(x2,y2)において測定された基準磁気が、Magx2、Magy2、Magz2であることを図3は示している。なお、Magx1は磁気・ジャイロセンサ20のX軸に沿った磁気の強度、Magy1は磁気・ジャイロセンサ20のY軸に沿った磁気の強度、Magz1は磁気・ジャイロセンサ20のZ軸に沿った磁気の強度を示している。
【0019】
磁気−位置情報に基づく自己位置認識法では、ロボット1の移動環境のあらゆる位置において磁気強度と位置座標とを対応付けて記憶し、これに基づいて位置座標がリアルタイムで認識できることが望ましい。しかし、この方法は現在の技術レベルでは現実的ではない。ロボットの移動環境が広いほど記憶するデータ数が多くなり、位置座標を認識する処理(例えば線形マッチング処理)にも相当の時間がかかってしまうからである。そこで、より容易に、そしてより早く自己位置を認識できるようにするために、本実施の形態では、図4に示す手順で、磁気−位置情報を記憶する。すなわち、ロボット1の移動空間においてロボット1の移動経路を決定する(図4 S101)。決定した移動経路の原点から終点まで、ロボット1を一定速度で直進走行(図4 S103)させながら、磁気・ジャイロセンサ20で磁気(直流磁気)を測定する(図4 S105)。同時に、エンコーダ8,9により原点からの移動距離を測定する(図4 S107)。磁気・ジャイロセンサ20からの出力である磁気強度と、エンコーダ8,9からの出力である移動距離により特定される位置座標とを対応付けて、メモリ11bに記憶する(図4 S109)。
【0020】
以上の手順に従って実際に行った磁気−位置情報の記憶処理の一例について以下説明する。
移動経路は、図5に示すように、y方向において2経路(y1、y2)、x方向においてy方向のスタート地点(S)から1m毎に7経路(x1、x2、x3、x4、x5、x6、x7)とした。ロボット1を全ての移動経路上を移動させて磁気−位置情報を記憶した。記憶した磁気−位置情報に基づいて作成した磁気マップを図6(磁気・ジャイロセンサ20のX軸で検出)、図7(磁気・ジャイロセンサ20のY軸で検出)及び図8(磁気・ジャイロセンサ20のZ軸で検出)に示す。なお、図6、図7及び図8において、縦軸は直流磁気の強度、x−y平面は位置座標を示している。
【0021】
詳しくは後述するが、本実施形態は、磁気−位置情報の基準磁気のデータ列と、磁気・ジャイロセンサ20が検出した実測磁気のデータ列とを線形マッチングし、基準磁気と対応付けられた位置座標を特定することにより、自己位置を認識する。そのため、実測磁気の強度の変化がロボットの移動距離に対して大きいほど位置認識は容易と言える。
このことを念頭に、図6〜図8を参照すると、図6〜図8はいずれもy方向の経路(y1、y2)に沿った基準磁気の変化が大きい。y方向の経路の場合、X軸(図6(a))、Y軸(図7(a))及びZ軸(図8(a))を介して得られた磁気−位置情報のうち、いずれか1つを用いて実測磁気と対比すれば自己位置認識は可能である。もちろん、3つ全ての磁気−位置情報を用いることもできるが、実測磁気と対比(線形マッチング)に時間がかかってしまう。
一方、図6〜図8を参照すると、特に図7、図8においてx方向の経路における基準磁気の変化が小さい。このような場合は、磁気・ジャイロセンサ20の3つの軸(X軸、Y軸、Z軸)に対応する磁気−位置情報の各々について、実測磁気との対比を行なうことが必要である。
【0022】
次に、磁気−位置情報を用いてロボット1が自己位置を認識する手順を、図9を参照しつつ説明する。なお、この手順は、予め磁気−位置情報が記憶手段11bに記憶されていることを前提としている(図9 S401)。また、図9に示す手順は、両側が壁に囲まれた通路を移動するロボット1が、自己位置を認識することを想定している。
自己位置認識を行なうに際して、通路周囲の画像をCCDカメラ30で撮影する。位置特定手段11aは、撮影された画像を取り込む(図9 S201)。位置特定手段11aは、取り込んだ画像を処理して、Hough変換を用いて、通路の壁と床との境界に対応するエッジ直線を抽出する(図9 S203)。また、位置特定手段11aは、エッジ直線からロボット1(CCDカメラ30)までの距離(ρ)を特定する。この距離は、Hough変換によるエッジ直線の抽出の過程で求められる。
【0023】
Hough変換は、画像などからパラメトリックモデルを抽出する手法である。Hough変換では各点から、その点が存在する可能性のあるパラメータ投票空間全てに有意に高くなるパラメータを選択することでパラメータを推定する。
Hough変換による直線(エッジ直線)検出の原理は以下の通りである。
直線検出の場合、図10(a)に示すように、直角座標上の点(x,y)を通るすべての直線は、その直線と直交する直線のx軸との角度θと長さ(距離)ρとで表される。図10(b)から、ρを求めると次式(1)になる。
ρ=xcosθ+ysinθ…(1)
式(1)は、直角座標上の点(x,y)を角度θと距離ρの極座標二次元空間に変換したものである。角度θと距離ρごとに、その個数を加算していくと、個数が最大になった組み合わせ(角度θと距離ρ)を元の直角座標に戻したものが最も直線らしい点の集まりとなる。この点の集まりがエッジ直線である。
【0024】
次に、測定した距離(ρ)と磁気・ジャイロセンサ20から検出したロボット1の方位を用いて、ロボット1に一番近い移動経路を選択する(図9 S207)。この移動経路は、磁気−位置情報を記憶する際に決定された複数の中から選択される。
次に、線形マッチングを行なう(図9 S209)。線形マッチングは、選択した経路上で測定する実測磁気(図9 S301)と、予め当該経路について記憶された磁気−位置情報(図9 S401)とを対比することにより行なわれる。
【0025】
線形マッチングの手法を図11に基づいて説明する。
図11は、選択された経路に対応する磁気−位置情報のデータ列の一例を示すもので、縦軸が磁気強度、横軸が経路上の位置を示している。図11(a)の実線で示される曲線は、磁気・ジャイロセンサ20のX軸の磁気に対応している。同様に、図11(b)の曲線(実線)はY軸の磁気に対応し、また、図11(c)の曲線(実線)はZ軸の磁気に対応している。
図11(a)〜(c)中の、点線で示される曲線が、位置認識を行う際に磁気・ジャイロセンサ20で測定された実測磁気のデータ列を示しているものとする。
【0026】
線形マッチングとは、データ列の先頭から末尾に向かって、データ列を一定のステップでずらして行き、データマッチングを行う手法である。図11は1つのステップについて示しており、点線で示される曲線(データ列)の形態が、直線で示される曲線(データ列)の形態に一致(又は近似)する部分を特定する(図9 S211)。図11の場合、X軸及びY軸については一致する部分を特定できるが、Z軸については一致する部分を特定できないおそれがある。これは、Z軸(図11(c))の場合、経路に沿った磁気の変化が小さいために、測定された磁気曲線と一致すると判断される部分が複数存在するためである。
図11に示される例の場合、X軸及びY軸については一致する部分を特定できたので、一致するデータ列の最後のデータに対応付けられた位置座標を読み取り(図9 S213)、この座標をロボット1の現在の位置として特定する(図9 S215)。
X軸〜Z軸のいずれについても一致する部分を特定できない場合には、ロボット1を移動させながら磁気・ジャイロセンサ20による磁気の測定を継続する(図9 S301)。そして、新たに測定された磁気を含むデータ例を用いて、かつステップをずらして上記と同様にマッチング処理を行う。
【0027】
本実施の形態によれば、ロボット1に対して位置の初期化を行わなくても、どんな位置にあっても自己位置を認識することが可能である。
また、本実施の形態によれば、磁気・ジャイロセンサ20の3軸で検出された実測磁気の各々について線形マッチングを行っているので、ミスマッチング、つまり一致する部分を特定できないという可能性が極めて小さい。もっとも本発明は、X軸、Y軸及びZ軸の3軸で測定された基準磁気を全て用いて線形マッチングする形態に限らない。
【0028】
次に、以上説明した位置認識方法に基づいてロボット1を移動させる方法の一例について説明する。
本実施の形態による移動方法は、基本的には公知のデッド・レコンニング法により行なわれるものであるが、以上説明した位置認識方法で認識した位置を用いて補正しながら移動するところに特徴がある。
図12の破線で示される経路(x方向において6通り、y方向において3通り)を、磁気−位置情報が作成された経路とし、ロボット1が点Oから目標地Gに移動するものとする。
ロボット1は、まず、自己の現在位置である点O(自分)から一番近いy方向に延びる真中の経路y2を選択する。経路y2の選択は、前述したように、Hough変換による直線(エッジ直線)検出、距離ρ及びロボット1の向きに基づいて行うことができる。
経路y2を選択した後、ロボット1は、経路y2まで移動する。この移動は、本実施の形態による自己位置を認識方法を用いることなく、エンコーダ8,9で得られた車輪の回転数による従来のデッド・レコンニング法に基づいて行えばよい。
経路y2まで移動したロボット1は、経路y2上を点Aまで移動する。点Aまでの移動も、基本的には従来のデッド・レコンニング法に基づいて行なえばよい。しかし、従来のデッド・レコンニング法は、累積誤差が生じるため、長い距離を移動していると、所定の径路から外れてしまう。したがって、本実施の形態では、累積誤差が許容できる距離ごとに、本実施の形態による自己位置認識を行ってロボット1の位置を補正しながら点Aまで移動する。ロボット1は、経路y2と経路x4の交点である点Aまで移動したならば、向きを変えて経路x4上を点Bに向けて移動する。点Aから点Bまでも、点Aまでの移動と同様にロボット1の位置を適宜補正しながら移動すればよい。
【0029】
点Bまで移動したならば、ロボット1は、向きを変えた後に目標地Gまで移動する。この移動は、従来のデッド・レコンニング法に基づいて行うことができる。
従来のデッド・レコンニング法のみを用いた移動では、累積誤差が大きくなる問題がある。しかしながら、本実施の形態による移動方法によれば、磁気−位置情報に基づいて認識した自己位置をデッド・レコンニング法の初期位置として使用できる。このことは、累積誤差がリセットされることを意味しており、したがって、本実施の形態による移動方法によれば、累積誤差が発生しないと言える。
【0030】
次に、実際にロボット1を経路上を移動させる実験を行なった結果について説明する。
この実験は、両側に壁が設けられている幅1.75mの通路に設けられた経路上を、ロボット1を直進移動させて、ロボット1が認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボット1の位置(実測位置)との誤差を求めるものである。
実験は、通路の長手方向(y方向)に沿った2つの経路と、通路の幅方向(x方向)に沿った2つの経路を用いた。結果を図13〜図16に示す。なお、図13、図14は、各々、ロボット1をx=0(壁)から0.5m、1.25m離れた経路上を移動させた実験の結果、図15、図16は、各々、ロボット1をy=0の地点から1m、2m離れた経路上を移動させた実験の結果を示している。
【0031】
また、本実験における磁気−位置情報の作成、マッチング処理は、以下の要領で行った。
y方向については、ロボット1の移動速度を0.06m/sとし、6.0mの経路上の5400地点で基準磁気を測定した(データ個数5400個)。また、x方向については、ロボット1の移動速度を0.03m/sとし、0.75mの経路上の1500地点で基準磁気を測定した(データ個数1500個)。そして、本実験では、線形マッチングの処理速度を考慮して、1つのステップでマッチング処理するデータ個数を100個にした。したがって、1ステップのマッチング処理に用いる磁気−位置情報は、y方向において6.0m/54個≒0.11m、x方向において0.75/15≒0.05mの距離分に相当する。
【0032】
図13(a)、図14(a)、図15(a)、図16(a)において、○は認識位置を、また×は実測位置を示している。
図13(b)、図14(b)、図15(b)、図16(b)に、認識位置と実測位置の誤差を示す。認識位置と実測位置の誤差は、図13(b)の結果では最大で6.2cm、図14(b)の結果では最大で8.2cm、図15(b)の結果では最大で6.5cm、図16(b)の結果では最大で7.8cmであることが確認された。この誤差(最大値)は、デッド・レコンニング法で生じる累積誤差に比べて小さい。
【0033】
次に、図17に示すように、ロボット1をスタート地点Sから出発させ、y方向に6m、x方向に0.75mの矩形の径路に沿って1周だけ移動させ、ロボット1がスタート地点Sに戻れるか否かの実験を行った。実験は、本実施の形態による位置認識によりデッド・レコンニング法を補正して移動させる場合(実施例)と、エンコーダ8,9で得られる車輪の回転数を用いた従来のデッド・レコンニング法のみにより移動させる場合(従来例)とを行なった。結果を図17に示す。
【0034】
図17において、黒実線は移動経路、一点鎖線は実施例の結果、点線は従来例の結果を示している。図17に示すように、従来例では、ロボット1はスタート地点Sに戻ることができない。これは、床のすべりやロボット1の駆動輪3、4の回転ズレが生じ、かつ累積して誤差が大きくなるためである。一方、本実施の形態によれば、ロボットはほぼスタート地点Sに戻ることができる。
【0035】
従来例において、ロボット1の戻ってくる地点とスタート地点Sのズレは、y方向に3cm、x方向に17cmである。もし、ロボット1が同じ経路を繰り返して移動する場合、このズレはだんだん大きくなる。したがって、従来例によると、ロボット1に長い距離を移動させながら自律的に作業させることは困難である。
一方、本実施形態によると、戻ってくる地点と出発地点との間に誤差は生じるが、磁気−位置情報に基づいて自己位置を逐次認識するため、この誤差は累積されない。本実施の形態に基づいて図17に示す経路を8周移動させる実験を行ったが、8周移動までにロボット1の戻ってくる地点とスタート地点Sのズレは、y方向に最大で8cm、x方向に2cmであった。したがって、本実施の形態による自己位置認識方法を用いることによって、ロボット1に長い距離を移動させながら作業させることが十分に可能である。
【0036】
以上説明した本実施の形態は、建屋内を移動するロボット1を想定しているが、本発明はこれに限定されない。磁気が発生しており、かつこの磁気の変動がないか又は小さい環境であれば、屋外であっても本発明の自己位置認識方法を実施できる。
以上説明した本実施の形態では、エンコーダ8,9により得られる駆動輪3,4の回転数を用いる従来のデッド・レコンニング法と組み合せてロボット1を移動させる例を示したが、本発明の自己位置認識方法の利用形態はこれに限らない。他の内界センタで得られる情報、外界センタで得られる情報を用いる従来のデッド・レコンニング法と組み合わせることもできるし、本発明の自己位置認識方法のみを用いてロボット1の移動を制御できる。
【0037】
また、本発明では、磁気・ジャイロセンサ20のX軸,Y軸及びZ軸の3軸に対応する磁気−位置情報を組み合せて線形マッチングを行うことができる。例えば、ロボット1が地点Aから地点Dまで移動する際に、地点B、地点Cを経由する場合を考える。この場合、地点Aから地点BまではX軸に対応する磁気−位置情報について線形マッチング処理を行う。また、地点Bから地点Cまでは、Y軸に対応する磁気−位置情報について線形マッチング処理を行う。さらに、地点Cから地点Dまでは、Z軸に対応する磁気−位置情報について線形マッチング処理を行う。
【0038】
さらに、本発明では、線形マッチングに限らず、動的計画法(Dynamic Programming)によるマッチング手法(DPマッチング)、あるいはより一般的なパターン・マッチング(パターン照合)等の公知の手法によって、磁気−位置情報の基準磁気と実測磁気とを対比して実測磁気が測定された位置を特定することもできる。
さらにまた、本発明では、磁気−位置情報の基準磁気と実測磁気とを対比するものであるから、位置座標を特定する以外に、方位をも特定することができる。したがって本発明における自己位置とは、方位をも含む概念を有している。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上述した本実施の形態に構成を加え、又は構成を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態における移動ロボットの構成を示す側面図である。
【図2】本実施の形態における移動ロボットの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】磁気−位置情報のデータ構造の一例を示す図である。
【図4】磁気−位置情報を記憶する手順を示すフローチャートである。
【図5】移動経路の一例を示す図である。
【図6】磁気・ジャイロセンサのX軸で測定された直流磁気に基づいて作成された磁気マップの一例を示す図である。
【図7】磁気・ジャイロセンサのY軸で測定された直流磁気に基づいて作成された磁気マップの一例を示す図である。
【図8】磁気・ジャイロセンサのZ軸で測定された直流磁気に基づいて作成された磁気マップの一例を示す図である。
【図9】磁気−位置情報を用いて移動ロボットが自己位置を認識する手順を示すフローチャートである。
【図10】Hough変換による直線検出の原理を説明するための図である。
【図11】線形マッチングの方法を説明するための図である。
【図12】磁気−位置情報に基づいて移動ロボットが目標まで移動する様子を示す図である。
【図13】ロボットをx=0の地点か0.5m離れた経路上を直進走行させて、ロボットが認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボットの位置(実測位置)との誤差を示す図である。
【図14】ロボットをx=0の地点から1.25m離れた経路上を直進走行させて、ロボットが認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボットの位置(実測位置)との誤差を示す図である。
【図15】ロボットをy=0の地点から1m離れた経路上を直進走行させて、ロボットが認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボットの位置(実測位置)との誤差を示す図である。
【図16】ロボットをy=0の地点から2m離れた経路上を直進走行させて、ロボットが認識した位置(認識位置)と、実測して得られたロボットの位置(実測位置)との誤差を示す図である。
【図17】ロボットをスタート地点Sから出発させ、矩形の経路に沿って1周だけ移動させたときの結果を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…移動ロボット、2…本体、3,4…駆動輪、5…補助輪、6,7…駆動モータ、8,9…エンコーダ、10…制御部、11…走行コントローラ、12…モータ駆動回路、20…磁気・ジャイロセンサ、30…CCDカメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が自己の位置を認識する方法であって、
前記移動体が移動する環境において基準磁気を測定し、前記基準磁気と前記基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を予め記憶するステップ(a)と、
前記環境において前記移動体が備える磁気センサにより実測磁気を測定するステップ(b)と、
前記ステップ(a)で記憶された前記磁気−位置情報の前記基準磁気と、前記ステップ(b)により測定された前記実測磁気と、を対比して前記実測磁気が測定された位置を特定するステップ(c)と、
を備えることを特徴とする自己位置認識方法。
【請求項2】
前記移動体は、建屋内の前記環境を移動し、
前記基準磁気及び前記実測磁気は、前記建屋を構成する強磁性体及び前記建屋内に設置されている強磁性体が有する磁気に基づくものであることを特徴とする請求項1に記載の自己位置認識方法。
【請求項3】
前記磁気−位置情報は、各々直交するX軸、Y軸及びZ軸の3つの軸に沿った前記基準磁気の強度と前記位置とが対応付けられたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自己位置認識方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)は、前記磁気−位置情報のデータ列と前記実測磁気のデータ列とを線形マッチングすることにより、前記磁気−位置情報と前記実測磁気との対比を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自己位置認識方法。
【請求項5】
前記磁気−位置情報は、前記環境において設定された所定の経路に沿って測定された前記基準磁気によるものである請求項1〜4のいずれかに記載の自己位置認識方法。
【請求項6】
移動体に搭載され、前記移動体の自己位置を認識する装置であって、
前記移動体が移動する環境において測定された基準磁気と前記基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を予め記憶する記憶手段と、
前記環境において磁気を測定して実測磁気を測定する磁気センサと、
前記記憶手段に記憶された磁気−位置情報の前記基準磁気と、前記磁気センサで測定された前記実測磁気と、を対比して前記実測磁気が測定された位置を特定する位置特定手段と、
を備えることを特徴とする自己位置認識装置。
【請求項1】
移動体が自己の位置を認識する方法であって、
前記移動体が移動する環境において基準磁気を測定し、前記基準磁気と前記基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を予め記憶するステップ(a)と、
前記環境において前記移動体が備える磁気センサにより実測磁気を測定するステップ(b)と、
前記ステップ(a)で記憶された前記磁気−位置情報の前記基準磁気と、前記ステップ(b)により測定された前記実測磁気と、を対比して前記実測磁気が測定された位置を特定するステップ(c)と、
を備えることを特徴とする自己位置認識方法。
【請求項2】
前記移動体は、建屋内の前記環境を移動し、
前記基準磁気及び前記実測磁気は、前記建屋を構成する強磁性体及び前記建屋内に設置されている強磁性体が有する磁気に基づくものであることを特徴とする請求項1に記載の自己位置認識方法。
【請求項3】
前記磁気−位置情報は、各々直交するX軸、Y軸及びZ軸の3つの軸に沿った前記基準磁気の強度と前記位置とが対応付けられたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自己位置認識方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)は、前記磁気−位置情報のデータ列と前記実測磁気のデータ列とを線形マッチングすることにより、前記磁気−位置情報と前記実測磁気との対比を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自己位置認識方法。
【請求項5】
前記磁気−位置情報は、前記環境において設定された所定の経路に沿って測定された前記基準磁気によるものである請求項1〜4のいずれかに記載の自己位置認識方法。
【請求項6】
移動体に搭載され、前記移動体の自己位置を認識する装置であって、
前記移動体が移動する環境において測定された基準磁気と前記基準磁気が測定された位置とが対応付けられた磁気−位置情報を予め記憶する記憶手段と、
前記環境において磁気を測定して実測磁気を測定する磁気センサと、
前記記憶手段に記憶された磁気−位置情報の前記基準磁気と、前記磁気センサで測定された前記実測磁気と、を対比して前記実測磁気が測定された位置を特定する位置特定手段と、
を備えることを特徴とする自己位置認識装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−289145(P2009−289145A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142792(P2008−142792)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
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