自己修復性層を備えた複合材積層物
複合材の複数の層および少なくとも1つの自己修復性材料の層を含む第1の積層体であって、該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含でいる第1の積層体、ならびに複合材の複数の層を含む第2の積層体を含み、これらの積層体は接合線で互いに結合されている、複合材構造。自己修復性材料の層を、積層体の一方(好ましくは比較的に接合線の近く)の中に配置することによって、自己修復性材料の層は、第1の積層体と第2の積層体との間の割れの成長を阻止することができる。好ましくは、第1の積層体の全体的な強度は、第2の積層体の全体的な強度よりも大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材積層構造体、および一対の複合材構造体の間の結合を形成する方法に関する。
【0002】
図1aは、第1構造体40および第2構造体41の間の接合された結合を示している。疲労荷重によって、割れが成長し、そして予め定めることができない進路がそれに続く。3種類の異なる筋立てを認定することができる。
・割れ43bが第2構造体41を通り、接合線42と平行に成長する(図1b)。このことは、第2構造体41の全体的な破壊を引き起こし、それが第2構造体の、第1構造体40との連携を停止する。一般に、この筋立ては破局的ではない。もしもフェイルセーフ設計原理が用いられる場合には、第2構造体41の破壊は、構造体の全体的な破壊を発生させず、この構造体は外部荷重に耐え続けることができる。
・割れ43cは、第2構造体41の外側表面に向けて成長し、そして消滅する(図1c)。この筋立ては、第2構造体41の全体的破壊を起こすか、またはその能力を部分的に低減させるかのいずれかである可能性がある。両方の場合において、第1構造体40は初期のままであるので、この筋立ては、全体の構造体の全体的な破局的破壊を起こしはしない。
・割れ43dは、第2構造体41の内部表面に向け、そして次いで第1構造体40を通って成長する(図1d)。この筋立ては、第1構造体40の破局的な破壊をもたらすので受け入れられないし、そして従って回避しなければならない。
【0003】
この破壊を一定の限度内に留める能力は、認証活動を容易にし、信頼性の水準を増大し、リバースファクター(reserve factor)および最終的な全体質量(global weight)を改善し、そして最終的に安全性を向上させる。
【0004】
種々の自己修復性構造体が、R.S. Trask、GJ. WilliamsおよびLP. Bond、"Bioinspired self-healing of advanced composite structures using hollow glass fibres"、J.R. Soc. Interface、2007年、第4巻、p.363〜371、(doi:10.1098/rsif.2006.0194)中に記載されている。16層のガラス繊維積層物が記載されており、その中で自己修復性単繊維が、4つの損傷臨界層界面に導入されている。また、16層の炭素繊維積層物も記載されており、その中で修復性ガラス繊維(HGF)が積層材内部の2つの界面に配置され、積層の前に、未硬化炭素繊維強化プラスチック(CFRP)層上に直接に巻き付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Traskらによれば、CFRP積層物は、効率的にハイブリッドガラス−炭素積層物を生成し、そしてそれらの優れた機械的特性に顕著な低下をもたらすので、HGFの分離した層としての組み込みは、CFRP積層物には好適ではないと思われた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、複合材の複数の層および少なくとも1つの自己修復性材料の層を含む第1の積層体(該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含む)、ならびに複合材の複数の層を含む第2の積層体を含み、これらの積層体は互いに接合線で結合されている、複合材構造体を提供する。
【0007】
本発明の更なる態様は、複合材結合の形成方法であって、複合材の複数の層および自己修復性材料の少なくとも1つの層を含む第1の積層体を集成すること(該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含む)、複合材の複数の層を含む第2の積層体を集成すること、ならびにこれらの積層体を、それらが両方とも集成された後に、接合線で互いに接合すること、を含む方法を提供する。
【0008】
本発明の更なる態様は、本発明の第1の態様の複合材構造体中の割れを偏向させる方法を提供し、この割れは接合線または第2の積層体から始まっており、該方法は自己修復性層中の少なくとも幾つかのコンテナを破壊し、そうして硬化性の修復性液体が破壊されたコンテナから流れ、そして硬化し、それによってこの割れを偏向させることを含んでいる。
【0009】
自己修復性材料の層を、積層体の一方(好ましくは比較的に接合線の近く)の中に配置することによって、自己修復性材料の層は、第1の積層体と第2の積層体との間の割れの成長を阻止することができる。好ましくは、第1の積層体の全体的な強度は、第2の積層体の全体的な強度よりも大きい。
【0010】
通常は、第1の積層体は、1番目の層を、積層順序における接合線に隣接した1つの端に、N番目の層を、積層順序における接合線から離れた他方の端に含む積層順序に配置されたN個の層を含み、自己修復性材料の層は、その位置が積層順序のN/2番目未満であるという意味において、接合線の比較的に近くに配置されている。
【0011】
通常は、自己修復性材料の層は、積層順序において、1番目、2番目、3番目または4番目の層である。好ましくは、自己修復性材料の層は、積層順序において1番目の層ではない。
【0012】
これらの積層体は、互いに接着剤の層によって接合することができる。この場合には、この接合線は、接着剤の層の厚さと同じ厚さを有することになる。あるいは、これらの積層体は、それらを共硬化することによって、互いに接合することができる。この場合には、接合線は0の厚さを有することになる。
【0013】
本発明の更なる態様は、
複合材の層の積層体であって、複合材のそれぞれの層は、マトリックス中に埋め込まれた複数の強化繊維を含んでいる積層体;および
複合材の層の積層体の中に埋め込まれた自己修復性材料の1つもしくは2つ以上の層であって、自己修復性材料のそれぞれの層は、複数のコンテナを含んでおり、それぞれのコンテナは硬化性の修復性液体を含んでいる層、を含む複合材積層構造体を提供し、この積層体はT2の総厚さを有しており、そして自己修復性材料の層はT1の総厚さを有しており、そして比T1/T2は0.1未満である。
【0014】
この比T1/T2を比較的に小さくすることによって、構造体の座屈性能に著しく有害な影響を有することなく、割れの成長を止めることができる。
【0015】
以下の説明を、本発明の全ての態様に適用する。
【0016】
コンテナは、ガラス材料またはいずれかの他の好適な材料から形成することができる。
【0017】
このコンテナおよび強化繊維は、異なる材料から形成することができる。Traskらの教示とは対照的に、異なる材料からコンテナを形成することは、特に比T1/T2が十分に小さい場合には、積層物の機械的強度に著しい低下をもたらさないことが見出された。
【0018】
自己修復性材料の層は、「プリプレグ」層、すなわち、「プリプレグ」層がこの積層体中に集成される前に、複数のコンテナがマトリックスでその中に含浸されている層、を含んでいることができる。あるいは、個別の「プリプレグ」層として積層体中に集成されている代わりに、Traskらの文献中に記載されているように、このコンテナは、積層の前に、複合材の未硬化の層上に直接に巻かれた繊維であることができる。
【0019】
以下に記載した態様では、自己修復性材料の層はコンテナを有しているが、強化繊維は有していない。しかしながら、他の態様では、自己修復性材料の層は、複数の強化繊維と混合された複数のコンテナを含むことができる。
【0020】
このコンテナは、繊維、小胞(vesicles)、またはいずれかの他の好適な中空構造からなることができる。
【0021】
この自己修復性材料の層中のコンテナは、一液系の硬化性の修復性液体を含んでいることができる。あるいは、自己修復性材料の層は、更に、硬化性の修復性液体との接触で硬化性の修復性液体を硬化する硬化剤液をそれぞれが含んでいる、複数のコンテナを含むことができる。更なる選択肢としては、触媒または硬化剤は、マトリックス中に含まれていてもよい。
本発明の態様は、ここに添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】図1a〜1dは、慣用の接合された結合を示している。
【図1b】図1a〜1dは、慣用の接合された結合を示している。
【図2c】図1a〜1dは、慣用の接合された結合を示している。
【図3d】図1a〜1dは、慣用の接合された結合を示している。
【図2】図2は、本発明の第1の態様による接合された結合を示している。
【図3】図3は、CFRPの単一の層を示している。
【図4】図4は、積重ねられた第1の構造体を示している。
【図5】図5は、自己修復性材料の単一の層を示している。
【図6】図6は、2つのHGFを詳細に示している。
【図7】図7は、共硬化に先立って一緒にされる2つの積層体を示している。
【図8】図8は、偏向されている割れを示している。
【図9】図9は、本発明の第2の態様による接合された結合を示している。
【図10】図10は、縦材(stringer)とパネルとの間の、接着剤で接合された結合を通した長手方向の断面を示している。
【図11】図11は、複数の縦材(stringer)を示しているパネルを通した横方向の断面を示している。
【図12】図12は、割れデフレクタ(deflectors)の数の変化が、構造体の機械的特性にいかに影響を与えることができるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図2中に示されている複合材積層構造体は、接合線14で結合された、第1構造体1および第2構造体2を含んでいる。それぞれの構造体1、2は、複合材の層の積層体を集成することによって形成される。複合材のそれぞれ層は、マトリックス中に埋め込まれた複数の強化繊維を含んでいる。例としての層3が、図3中に示されている。この場合には、層3は、いわゆる「プリプレグ」であり、部分的に硬化されたエポキシ樹脂マトリックス5で含浸された一方向性のカーボン繊維の単一の層を備えている。説明を容易にするために、この図中の繊維4は、全てがこのページの外に向けられているように示されている。しかしながら、実際には、繊維の方向は、積層体に所望の機械的特性を与えるように、積層体を通じて変わっていてよい。
【0024】
図4は、第1構造体1がどのように形成されるかを示している。複合材のN個の層の積層体は、1番目の層(i=1)を積層の順番の底に、そしてN番目の層(i=N)を最上部に含む積層順序で、台50の上に配置される。
【0025】
4番目の層6は、自己修復性材料の層である(これ以降、「割れデフレクタ」と称される)。この割れデフレクタ6は、図5および6中に詳細に示されており、そして「プリプレグ」層が積層体中に集成される前に、部分的に硬化されたエポキシ樹脂マトリックス15中に含浸された複数の中空繊維8、9を備えた、「プリプレグ」層を含んでいる。図6中に示されているように、それぞれの繊維8は、液体接着剤11、例えばAraldite(登録商標)2021/A樹脂を含んでいる中空ガラス繊維10を含み、そしてそれぞれの繊維9は、液体触媒13、例えばAraldite(登録商標)2021/B硬化剤を含んでいる中空ガラス繊維12を含んでいる。接着剤および触媒は、異なる中空繊維中に含まれているので、このことがより長い貯蔵寿命を確実にする。
【0026】
説明を容易にするために、この図中の繊維8、9は、繊維4のように、全てが同じ方向で、このページの外に向けられているように示されている。しかしながら、実際には、繊維8、9は、いずれの方向に向かっていてもよい。
【0027】
図4中に示された積層体が集成された後に、それはオートクレーブ中で部分的に硬化される。第2の構造体2は集成され、そして同様の方法で部分的に硬化される。次に、この部分的に硬化された構造体1、2は、図7中に示されているように一緒にされ、そしてオートクレーブ中に置かれ、ここで完全に硬化される。この共硬化工程の間に、構造体1、2は接合線14で互いに接合される。
【0028】
第1構造体1の積層の順序は、図4中に示されたものとは逆にすることができることに注意する必要があり、すなわち、割れデフレタ6がその順序においてN−3番目であり、そして最上(N番目)の層が図2中の接合線14に隣接している。両方の場合において、割れデフレクタ6は、接合線の比較的に近くに配置される。
【0029】
第2構造体2の全体的な強度は、第1構造体1の全体的な強度よりも小さい。従って、結合への周期的な荷重の間に割れが始まった場合は、割れは、第2構造体2内部のいずれかの箇所に位置する可能性が最も高い。
【0030】
割れデフレクタ6が強い影響を与えられる、および/または疲労周期を加えられる場合には、ガラス繊維10、12が壊れ、そして液体接着剤10および触媒13が流出し、割れによって生じた空隙に浸透する。このことが2つの効果を誘発するが、それらは相乗的に作用して、割れの成長を緩和するか、もしくは阻止する。
・液相の、成長衝撃波のダンピング(dumping)によるエネルギーの吸収。
・固化、それによって、割れの成長によって破壊された材料を、固体接着剤系で置き換え、それによって材料の連続性とより円滑な荷重経路を確実にし、そして割れの先端における局部的な応力の集中を緩和する。
【0031】
図8は、接合線14中または第2構造体2中で始まった割れの先端が、割れデフレクタ6と遭遇した時に、局部的に発生する物理的な挙動を示している。
【0032】
割れ16が割れデフレクタ6中の繊維を破壊すると直ぐに、液体接着剤が空隙に浸透し始め、そして固化して、硬化した接着剤20の領域を形成し、それによって割れを偏向させる。明らかに、疲労荷重によって、割れの先端は成長し、そして新たな繊維を破壊し続けて、新たな接着剤を流れ出させて、そして空隙に浸透させる。
【0033】
この接着剤/触媒自己修復系は、単位時間当たりに硬化される体積の量が、単位時間当たりの割れの成長によって生じる空隙の体積に匹敵するように「同調させる」ことができる。図8は、ミクロ空隙21の存在を示しており、これは割れが、図8中に示されているように偏向された後に残っているであろう。このことは、液体系の粘度が、割れの経路の全部への浸透は可能にさせないという事実によるものである。ミクロ空隙21の大きさの最小化は、望ましいものであり、そして修復系の硬化速度と粘度との適正な選択によって確実にすることができる。ミクロ空隙の大きさは、好ましくは、用いられる製造プロセスの結果として割れデフレクタ6の内部に統計的に存在する最大のミクロ空隙と同程度である。
【0034】
図9は、他の結合を示しており、共硬化される代わりに、第1構造体1aは、第2構造体2aに、接着剤16の層によって接合されており、この場合には、接着剤16が構造体の接合線を規定している。この場合には、構造体1a、2aは、それらが互いに接合される前に、完全に硬化されている。この例では、第2構造体2a中の4番目の層中にも、割れデフレクタ6が含まれていることに注意する必要がある。
【0035】
図10には、複合材積層パネル34上に突き出した縦材(stringer)における、一対の埋め込まれた自己修復層30、31が図示されている。パネル34は、多数の強化要素(「縦材(stringers)」として知られている)を保持しており、これはパネルの長さに沿って延びている。この縦材(stringer)は、図11中に示されているようにT形であり、パネル34に接合された基部とパネル34から垂直に延びるブレード35を備えている。それぞれの縦材(stringer)の基部は、図10中に示されているように、ブレードを超えて延びており、いわゆる縦材(stringer)ランアウト33を形成する。
【0036】
上部の自己修復性層30は、「プリプレグ」複合材層の積層体の中に埋め込まれており、それが縦材(stringer)ランアウト33を形成している。縦材(stringer)ランアウト33は、複合材パネル34に、接着剤35の層によって接合されている。この複合材パネル34は、下側の自己修復性層31を含んでいる。これらの2つの層30、31は、これらの間に割れ32を閉じ込める「割れのトンネル」を一緒に形成する。
【0037】
上記に与えられた例においては、それぞれの要素1、2にただ1つの割れデフレクタ6だけが必要とされていることに注意する必要がある。しかしながら、もしも必要であれば、更なる割れデフレクタを積層体中に組み込むことができることに注意する必要がある。図12は、割れデフレクタの数を変えることが、いかに構造体の機械的特性に影響を与えることができるかを示すグラフである。
【0038】
図12中のX軸は、T1とT2との間の比を示しており、T1は割れデフレクタの総厚さであり、そしてT2は構造体の総厚さである。T1およびT2は、例えば図4中に示されている。構造体中に1つ超の割れデフレクタが存在する場合には、T1は全ての割れデフレクタの厚さの合計である。
【0039】
曲線51は、座屈許容曲線を示している。すなわち、曲線51は、積層体中の層に平行に適用された圧縮荷重に応答して、第1要素1が座屈する荷重を示している。この座屈荷重51は、割れデフレクタが1つも存在しない場合に最大であり、そしてT1/T2が増加するに連れて徐々に減少していることがわかる。
【0040】
曲線52は、破壊機構許容曲線である。すなわち、曲線52は、割れの開始および引き続いての第1構造体中への成長に許容しうる荷重を示している。この荷重52は、割れデフレクタが1つも存在しない場合に最小であり、そしてT1/T2が増加するに連れて徐々に増大していることがわかる。第1構造体中への割れの成長の機会が減少するために、曲線52はこのように増大する。
【0041】
これらの曲線が交差する点は、閾値比53を規定しており、この点よりも上では更なる割れデフレクタの追加は、構造体の機械的特性を全体的に低下させる。閾値53は、構造体の形状、層の厚さ、種々の層中の繊維の方向、および種々の層に用いられている材料によって変化する。しかしながら、一般に、この閾値は、大抵の場合において、0.3以下であり、そして0.2未満である可能性が最も高いことが期待される。
【0042】
本発明者は、比T1/T2を閾値53よりも著しく小さくすることによって、割れの成長を、構造体の座屈性能に著しく有害な影響を有することなく、抑制することができることを見出した。図4中に示されたN個の層の積層体を考慮した場合には、ただ1/Nの層だけが割れデフレクタであり、この場合にNは典型的には20〜40の範囲である。割れデフレクタ6が、プリプレグ3の層の1つの厚さと同じ厚さを有していると仮定した場合には、このことは、比T1/T2が0.05以下であると言い換えられる。
【0043】
上記に与えた例においては、割れデフレクタは、積層の順序の中で、接合線に直に隣接している最初の層ではないことに注意する必要がある。このことは次の理由から好ましい。割れデフレクタの効果を最大化するには、割れが割れデフレクタそのものより外側で開始することが好ましい。従って、もしも割れが接合線(これは割れが開始ししそうな領域である)で開始したならば、プリプレグ3の幾つかの層を接合線と割れデフレクタとの間に配置することによって、割れが、第1構造体中に成長するためには、割れデフレクタの全体の厚さを通って進行しなければならないことを確実にする。
【0044】
本発明を、1つまたは2つ以上の好ましい態様を参照して上述してきたが、添付の特許請求の範囲に規定した本発明の範囲から離れることなく、種々の変更または修正がかのうであることが理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材積層構造体、および一対の複合材構造体の間の結合を形成する方法に関する。
【0002】
図1aは、第1構造体40および第2構造体41の間の接合された結合を示している。疲労荷重によって、割れが成長し、そして予め定めることができない進路がそれに続く。3種類の異なる筋立てを認定することができる。
・割れ43bが第2構造体41を通り、接合線42と平行に成長する(図1b)。このことは、第2構造体41の全体的な破壊を引き起こし、それが第2構造体の、第1構造体40との連携を停止する。一般に、この筋立ては破局的ではない。もしもフェイルセーフ設計原理が用いられる場合には、第2構造体41の破壊は、構造体の全体的な破壊を発生させず、この構造体は外部荷重に耐え続けることができる。
・割れ43cは、第2構造体41の外側表面に向けて成長し、そして消滅する(図1c)。この筋立ては、第2構造体41の全体的破壊を起こすか、またはその能力を部分的に低減させるかのいずれかである可能性がある。両方の場合において、第1構造体40は初期のままであるので、この筋立ては、全体の構造体の全体的な破局的破壊を起こしはしない。
・割れ43dは、第2構造体41の内部表面に向け、そして次いで第1構造体40を通って成長する(図1d)。この筋立ては、第1構造体40の破局的な破壊をもたらすので受け入れられないし、そして従って回避しなければならない。
【0003】
この破壊を一定の限度内に留める能力は、認証活動を容易にし、信頼性の水準を増大し、リバースファクター(reserve factor)および最終的な全体質量(global weight)を改善し、そして最終的に安全性を向上させる。
【0004】
種々の自己修復性構造体が、R.S. Trask、GJ. WilliamsおよびLP. Bond、"Bioinspired self-healing of advanced composite structures using hollow glass fibres"、J.R. Soc. Interface、2007年、第4巻、p.363〜371、(doi:10.1098/rsif.2006.0194)中に記載されている。16層のガラス繊維積層物が記載されており、その中で自己修復性単繊維が、4つの損傷臨界層界面に導入されている。また、16層の炭素繊維積層物も記載されており、その中で修復性ガラス繊維(HGF)が積層材内部の2つの界面に配置され、積層の前に、未硬化炭素繊維強化プラスチック(CFRP)層上に直接に巻き付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Traskらによれば、CFRP積層物は、効率的にハイブリッドガラス−炭素積層物を生成し、そしてそれらの優れた機械的特性に顕著な低下をもたらすので、HGFの分離した層としての組み込みは、CFRP積層物には好適ではないと思われた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、複合材の複数の層および少なくとも1つの自己修復性材料の層を含む第1の積層体(該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含む)、ならびに複合材の複数の層を含む第2の積層体を含み、これらの積層体は互いに接合線で結合されている、複合材構造体を提供する。
【0007】
本発明の更なる態様は、複合材結合の形成方法であって、複合材の複数の層および自己修復性材料の少なくとも1つの層を含む第1の積層体を集成すること(該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含む)、複合材の複数の層を含む第2の積層体を集成すること、ならびにこれらの積層体を、それらが両方とも集成された後に、接合線で互いに接合すること、を含む方法を提供する。
【0008】
本発明の更なる態様は、本発明の第1の態様の複合材構造体中の割れを偏向させる方法を提供し、この割れは接合線または第2の積層体から始まっており、該方法は自己修復性層中の少なくとも幾つかのコンテナを破壊し、そうして硬化性の修復性液体が破壊されたコンテナから流れ、そして硬化し、それによってこの割れを偏向させることを含んでいる。
【0009】
自己修復性材料の層を、積層体の一方(好ましくは比較的に接合線の近く)の中に配置することによって、自己修復性材料の層は、第1の積層体と第2の積層体との間の割れの成長を阻止することができる。好ましくは、第1の積層体の全体的な強度は、第2の積層体の全体的な強度よりも大きい。
【0010】
通常は、第1の積層体は、1番目の層を、積層順序における接合線に隣接した1つの端に、N番目の層を、積層順序における接合線から離れた他方の端に含む積層順序に配置されたN個の層を含み、自己修復性材料の層は、その位置が積層順序のN/2番目未満であるという意味において、接合線の比較的に近くに配置されている。
【0011】
通常は、自己修復性材料の層は、積層順序において、1番目、2番目、3番目または4番目の層である。好ましくは、自己修復性材料の層は、積層順序において1番目の層ではない。
【0012】
これらの積層体は、互いに接着剤の層によって接合することができる。この場合には、この接合線は、接着剤の層の厚さと同じ厚さを有することになる。あるいは、これらの積層体は、それらを共硬化することによって、互いに接合することができる。この場合には、接合線は0の厚さを有することになる。
【0013】
本発明の更なる態様は、
複合材の層の積層体であって、複合材のそれぞれの層は、マトリックス中に埋め込まれた複数の強化繊維を含んでいる積層体;および
複合材の層の積層体の中に埋め込まれた自己修復性材料の1つもしくは2つ以上の層であって、自己修復性材料のそれぞれの層は、複数のコンテナを含んでおり、それぞれのコンテナは硬化性の修復性液体を含んでいる層、を含む複合材積層構造体を提供し、この積層体はT2の総厚さを有しており、そして自己修復性材料の層はT1の総厚さを有しており、そして比T1/T2は0.1未満である。
【0014】
この比T1/T2を比較的に小さくすることによって、構造体の座屈性能に著しく有害な影響を有することなく、割れの成長を止めることができる。
【0015】
以下の説明を、本発明の全ての態様に適用する。
【0016】
コンテナは、ガラス材料またはいずれかの他の好適な材料から形成することができる。
【0017】
このコンテナおよび強化繊維は、異なる材料から形成することができる。Traskらの教示とは対照的に、異なる材料からコンテナを形成することは、特に比T1/T2が十分に小さい場合には、積層物の機械的強度に著しい低下をもたらさないことが見出された。
【0018】
自己修復性材料の層は、「プリプレグ」層、すなわち、「プリプレグ」層がこの積層体中に集成される前に、複数のコンテナがマトリックスでその中に含浸されている層、を含んでいることができる。あるいは、個別の「プリプレグ」層として積層体中に集成されている代わりに、Traskらの文献中に記載されているように、このコンテナは、積層の前に、複合材の未硬化の層上に直接に巻かれた繊維であることができる。
【0019】
以下に記載した態様では、自己修復性材料の層はコンテナを有しているが、強化繊維は有していない。しかしながら、他の態様では、自己修復性材料の層は、複数の強化繊維と混合された複数のコンテナを含むことができる。
【0020】
このコンテナは、繊維、小胞(vesicles)、またはいずれかの他の好適な中空構造からなることができる。
【0021】
この自己修復性材料の層中のコンテナは、一液系の硬化性の修復性液体を含んでいることができる。あるいは、自己修復性材料の層は、更に、硬化性の修復性液体との接触で硬化性の修復性液体を硬化する硬化剤液をそれぞれが含んでいる、複数のコンテナを含むことができる。更なる選択肢としては、触媒または硬化剤は、マトリックス中に含まれていてもよい。
本発明の態様は、ここに添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】図1a〜1dは、慣用の接合された結合を示している。
【図1b】図1a〜1dは、慣用の接合された結合を示している。
【図2c】図1a〜1dは、慣用の接合された結合を示している。
【図3d】図1a〜1dは、慣用の接合された結合を示している。
【図2】図2は、本発明の第1の態様による接合された結合を示している。
【図3】図3は、CFRPの単一の層を示している。
【図4】図4は、積重ねられた第1の構造体を示している。
【図5】図5は、自己修復性材料の単一の層を示している。
【図6】図6は、2つのHGFを詳細に示している。
【図7】図7は、共硬化に先立って一緒にされる2つの積層体を示している。
【図8】図8は、偏向されている割れを示している。
【図9】図9は、本発明の第2の態様による接合された結合を示している。
【図10】図10は、縦材(stringer)とパネルとの間の、接着剤で接合された結合を通した長手方向の断面を示している。
【図11】図11は、複数の縦材(stringer)を示しているパネルを通した横方向の断面を示している。
【図12】図12は、割れデフレクタ(deflectors)の数の変化が、構造体の機械的特性にいかに影響を与えることができるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図2中に示されている複合材積層構造体は、接合線14で結合された、第1構造体1および第2構造体2を含んでいる。それぞれの構造体1、2は、複合材の層の積層体を集成することによって形成される。複合材のそれぞれ層は、マトリックス中に埋め込まれた複数の強化繊維を含んでいる。例としての層3が、図3中に示されている。この場合には、層3は、いわゆる「プリプレグ」であり、部分的に硬化されたエポキシ樹脂マトリックス5で含浸された一方向性のカーボン繊維の単一の層を備えている。説明を容易にするために、この図中の繊維4は、全てがこのページの外に向けられているように示されている。しかしながら、実際には、繊維の方向は、積層体に所望の機械的特性を与えるように、積層体を通じて変わっていてよい。
【0024】
図4は、第1構造体1がどのように形成されるかを示している。複合材のN個の層の積層体は、1番目の層(i=1)を積層の順番の底に、そしてN番目の層(i=N)を最上部に含む積層順序で、台50の上に配置される。
【0025】
4番目の層6は、自己修復性材料の層である(これ以降、「割れデフレクタ」と称される)。この割れデフレクタ6は、図5および6中に詳細に示されており、そして「プリプレグ」層が積層体中に集成される前に、部分的に硬化されたエポキシ樹脂マトリックス15中に含浸された複数の中空繊維8、9を備えた、「プリプレグ」層を含んでいる。図6中に示されているように、それぞれの繊維8は、液体接着剤11、例えばAraldite(登録商標)2021/A樹脂を含んでいる中空ガラス繊維10を含み、そしてそれぞれの繊維9は、液体触媒13、例えばAraldite(登録商標)2021/B硬化剤を含んでいる中空ガラス繊維12を含んでいる。接着剤および触媒は、異なる中空繊維中に含まれているので、このことがより長い貯蔵寿命を確実にする。
【0026】
説明を容易にするために、この図中の繊維8、9は、繊維4のように、全てが同じ方向で、このページの外に向けられているように示されている。しかしながら、実際には、繊維8、9は、いずれの方向に向かっていてもよい。
【0027】
図4中に示された積層体が集成された後に、それはオートクレーブ中で部分的に硬化される。第2の構造体2は集成され、そして同様の方法で部分的に硬化される。次に、この部分的に硬化された構造体1、2は、図7中に示されているように一緒にされ、そしてオートクレーブ中に置かれ、ここで完全に硬化される。この共硬化工程の間に、構造体1、2は接合線14で互いに接合される。
【0028】
第1構造体1の積層の順序は、図4中に示されたものとは逆にすることができることに注意する必要があり、すなわち、割れデフレタ6がその順序においてN−3番目であり、そして最上(N番目)の層が図2中の接合線14に隣接している。両方の場合において、割れデフレクタ6は、接合線の比較的に近くに配置される。
【0029】
第2構造体2の全体的な強度は、第1構造体1の全体的な強度よりも小さい。従って、結合への周期的な荷重の間に割れが始まった場合は、割れは、第2構造体2内部のいずれかの箇所に位置する可能性が最も高い。
【0030】
割れデフレクタ6が強い影響を与えられる、および/または疲労周期を加えられる場合には、ガラス繊維10、12が壊れ、そして液体接着剤10および触媒13が流出し、割れによって生じた空隙に浸透する。このことが2つの効果を誘発するが、それらは相乗的に作用して、割れの成長を緩和するか、もしくは阻止する。
・液相の、成長衝撃波のダンピング(dumping)によるエネルギーの吸収。
・固化、それによって、割れの成長によって破壊された材料を、固体接着剤系で置き換え、それによって材料の連続性とより円滑な荷重経路を確実にし、そして割れの先端における局部的な応力の集中を緩和する。
【0031】
図8は、接合線14中または第2構造体2中で始まった割れの先端が、割れデフレクタ6と遭遇した時に、局部的に発生する物理的な挙動を示している。
【0032】
割れ16が割れデフレクタ6中の繊維を破壊すると直ぐに、液体接着剤が空隙に浸透し始め、そして固化して、硬化した接着剤20の領域を形成し、それによって割れを偏向させる。明らかに、疲労荷重によって、割れの先端は成長し、そして新たな繊維を破壊し続けて、新たな接着剤を流れ出させて、そして空隙に浸透させる。
【0033】
この接着剤/触媒自己修復系は、単位時間当たりに硬化される体積の量が、単位時間当たりの割れの成長によって生じる空隙の体積に匹敵するように「同調させる」ことができる。図8は、ミクロ空隙21の存在を示しており、これは割れが、図8中に示されているように偏向された後に残っているであろう。このことは、液体系の粘度が、割れの経路の全部への浸透は可能にさせないという事実によるものである。ミクロ空隙21の大きさの最小化は、望ましいものであり、そして修復系の硬化速度と粘度との適正な選択によって確実にすることができる。ミクロ空隙の大きさは、好ましくは、用いられる製造プロセスの結果として割れデフレクタ6の内部に統計的に存在する最大のミクロ空隙と同程度である。
【0034】
図9は、他の結合を示しており、共硬化される代わりに、第1構造体1aは、第2構造体2aに、接着剤16の層によって接合されており、この場合には、接着剤16が構造体の接合線を規定している。この場合には、構造体1a、2aは、それらが互いに接合される前に、完全に硬化されている。この例では、第2構造体2a中の4番目の層中にも、割れデフレクタ6が含まれていることに注意する必要がある。
【0035】
図10には、複合材積層パネル34上に突き出した縦材(stringer)における、一対の埋め込まれた自己修復層30、31が図示されている。パネル34は、多数の強化要素(「縦材(stringers)」として知られている)を保持しており、これはパネルの長さに沿って延びている。この縦材(stringer)は、図11中に示されているようにT形であり、パネル34に接合された基部とパネル34から垂直に延びるブレード35を備えている。それぞれの縦材(stringer)の基部は、図10中に示されているように、ブレードを超えて延びており、いわゆる縦材(stringer)ランアウト33を形成する。
【0036】
上部の自己修復性層30は、「プリプレグ」複合材層の積層体の中に埋め込まれており、それが縦材(stringer)ランアウト33を形成している。縦材(stringer)ランアウト33は、複合材パネル34に、接着剤35の層によって接合されている。この複合材パネル34は、下側の自己修復性層31を含んでいる。これらの2つの層30、31は、これらの間に割れ32を閉じ込める「割れのトンネル」を一緒に形成する。
【0037】
上記に与えられた例においては、それぞれの要素1、2にただ1つの割れデフレクタ6だけが必要とされていることに注意する必要がある。しかしながら、もしも必要であれば、更なる割れデフレクタを積層体中に組み込むことができることに注意する必要がある。図12は、割れデフレクタの数を変えることが、いかに構造体の機械的特性に影響を与えることができるかを示すグラフである。
【0038】
図12中のX軸は、T1とT2との間の比を示しており、T1は割れデフレクタの総厚さであり、そしてT2は構造体の総厚さである。T1およびT2は、例えば図4中に示されている。構造体中に1つ超の割れデフレクタが存在する場合には、T1は全ての割れデフレクタの厚さの合計である。
【0039】
曲線51は、座屈許容曲線を示している。すなわち、曲線51は、積層体中の層に平行に適用された圧縮荷重に応答して、第1要素1が座屈する荷重を示している。この座屈荷重51は、割れデフレクタが1つも存在しない場合に最大であり、そしてT1/T2が増加するに連れて徐々に減少していることがわかる。
【0040】
曲線52は、破壊機構許容曲線である。すなわち、曲線52は、割れの開始および引き続いての第1構造体中への成長に許容しうる荷重を示している。この荷重52は、割れデフレクタが1つも存在しない場合に最小であり、そしてT1/T2が増加するに連れて徐々に増大していることがわかる。第1構造体中への割れの成長の機会が減少するために、曲線52はこのように増大する。
【0041】
これらの曲線が交差する点は、閾値比53を規定しており、この点よりも上では更なる割れデフレクタの追加は、構造体の機械的特性を全体的に低下させる。閾値53は、構造体の形状、層の厚さ、種々の層中の繊維の方向、および種々の層に用いられている材料によって変化する。しかしながら、一般に、この閾値は、大抵の場合において、0.3以下であり、そして0.2未満である可能性が最も高いことが期待される。
【0042】
本発明者は、比T1/T2を閾値53よりも著しく小さくすることによって、割れの成長を、構造体の座屈性能に著しく有害な影響を有することなく、抑制することができることを見出した。図4中に示されたN個の層の積層体を考慮した場合には、ただ1/Nの層だけが割れデフレクタであり、この場合にNは典型的には20〜40の範囲である。割れデフレクタ6が、プリプレグ3の層の1つの厚さと同じ厚さを有していると仮定した場合には、このことは、比T1/T2が0.05以下であると言い換えられる。
【0043】
上記に与えた例においては、割れデフレクタは、積層の順序の中で、接合線に直に隣接している最初の層ではないことに注意する必要がある。このことは次の理由から好ましい。割れデフレクタの効果を最大化するには、割れが割れデフレクタそのものより外側で開始することが好ましい。従って、もしも割れが接合線(これは割れが開始ししそうな領域である)で開始したならば、プリプレグ3の幾つかの層を接合線と割れデフレクタとの間に配置することによって、割れが、第1構造体中に成長するためには、割れデフレクタの全体の厚さを通って進行しなければならないことを確実にする。
【0044】
本発明を、1つまたは2つ以上の好ましい態様を参照して上述してきたが、添付の特許請求の範囲に規定した本発明の範囲から離れることなく、種々の変更または修正がかのうであることが理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材の複数の層および少なくとも1つの自己修復性材料の層を含む第1の積層体であって、該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含でいる第1の積層体、ならびに複合材の複数の層を含む第2の積層体を含み、これらの積層体は接合線で互いに結合されてなる、複合材構造体。
【請求項2】
前記第1の積層体は、1番目の層を、積層順序における接合線に隣接した1つの端に、N番目の層を、積層順序における接合線から離れた他方の端に含む積層順序に配置されたN個の層を含み、前記自己修復性材料の層は、その位置が積層順序のN/2番目未満であるという意味において、接合線の比較的に近くに配置されてなる、請求項1記載の構造体。
【請求項3】
前記自己修復性材料の層は、積層順序において、1番目、2番目、3番目または4番目の層である、請求項1または2記載の構造体。
【請求項4】
前記自己修復性材料の層が、積層順序において1番目の層ではない、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項5】
前記接合線が接着剤の層からなる、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項6】
前記各積層体が接合線で共硬化されている、請求項1〜4のいずれかに記載の構造体。
【請求項7】
前記第1の積層体はT2の総厚さを有しており、そして前記自己修復性材料の層はT1の総厚さを有しており、そして比T1/T2は0.1未満である、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項8】
複合材の層の積層体であって、複合材のそれぞれの層は、マトリックス中に埋め込まれた複数の強化繊維を含んでいる積層体;および
複合材の層の積層体の中に埋め込まれた自己修復性材料の1つもしくは2つ以上の層であって、自己修復性材料のそれぞれの層は、複数のコンテナを含んでおり、それぞれのコンテナは硬化性の修復性液体を含んでいる層、を含んでなり、
該積層体はT2の総厚さを有しており、そして該自己修復性材料の層はT1の総厚さを有しており、そして比T1/T2は0.1未満である、
複合材積層構造体。
【請求項9】
前記コンテナが、ガラス材料から形成されている、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項10】
前記コンテナおよび前記強化繊維が、異なる材料から形成されている、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項11】
前記自己修復性材料の層が、更に複数のコンテナを含み、それぞれのコンテナが、前記硬化性の修復性液体と接触したときに前記硬化性の修復性液体を硬化する硬化剤液を含んでいる、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項12】
前記強化繊維が炭素繊維である、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項13】
前記比T1/T2が、0.05以下である、請求項7または8記載の構造体。
【請求項14】
複合材結合の形成方法であって、複合材の複数の層および自己修復性材料の少なくとも1つの層を含む第1の積層体を集成すること、ここで該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含んでおり;複合材の複数の層を含む第2の積層体を集成すること;ならびにこれらの積層体を、それらが両方とも集成された後に、接合線で互いに接合すること;を含んでなる方法。
【請求項15】
請求項1記載の前記複合材構造体中の割れを偏向させる方法であって、該割れは前記接合線または前記第2の積層体から始まっており、該方法は前記自己修復性層中の少なくとも幾つかの前記コンテナを破壊し、そうして前記硬化性の修復性液体が破壊された前記コンテナから流れ、そして硬化し、それによって該割れを偏向させることを含んでいる、方法。
【請求項1】
複合材の複数の層および少なくとも1つの自己修復性材料の層を含む第1の積層体であって、該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含でいる第1の積層体、ならびに複合材の複数の層を含む第2の積層体を含み、これらの積層体は接合線で互いに結合されてなる、複合材構造体。
【請求項2】
前記第1の積層体は、1番目の層を、積層順序における接合線に隣接した1つの端に、N番目の層を、積層順序における接合線から離れた他方の端に含む積層順序に配置されたN個の層を含み、前記自己修復性材料の層は、その位置が積層順序のN/2番目未満であるという意味において、接合線の比較的に近くに配置されてなる、請求項1記載の構造体。
【請求項3】
前記自己修復性材料の層は、積層順序において、1番目、2番目、3番目または4番目の層である、請求項1または2記載の構造体。
【請求項4】
前記自己修復性材料の層が、積層順序において1番目の層ではない、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項5】
前記接合線が接着剤の層からなる、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項6】
前記各積層体が接合線で共硬化されている、請求項1〜4のいずれかに記載の構造体。
【請求項7】
前記第1の積層体はT2の総厚さを有しており、そして前記自己修復性材料の層はT1の総厚さを有しており、そして比T1/T2は0.1未満である、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項8】
複合材の層の積層体であって、複合材のそれぞれの層は、マトリックス中に埋め込まれた複数の強化繊維を含んでいる積層体;および
複合材の層の積層体の中に埋め込まれた自己修復性材料の1つもしくは2つ以上の層であって、自己修復性材料のそれぞれの層は、複数のコンテナを含んでおり、それぞれのコンテナは硬化性の修復性液体を含んでいる層、を含んでなり、
該積層体はT2の総厚さを有しており、そして該自己修復性材料の層はT1の総厚さを有しており、そして比T1/T2は0.1未満である、
複合材積層構造体。
【請求項9】
前記コンテナが、ガラス材料から形成されている、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項10】
前記コンテナおよび前記強化繊維が、異なる材料から形成されている、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項11】
前記自己修復性材料の層が、更に複数のコンテナを含み、それぞれのコンテナが、前記硬化性の修復性液体と接触したときに前記硬化性の修復性液体を硬化する硬化剤液を含んでいる、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項12】
前記強化繊維が炭素繊維である、前記いずれかの請求項記載の構造体。
【請求項13】
前記比T1/T2が、0.05以下である、請求項7または8記載の構造体。
【請求項14】
複合材結合の形成方法であって、複合材の複数の層および自己修復性材料の少なくとも1つの層を含む第1の積層体を集成すること、ここで該自己修復性材料の層は、それぞれが硬化性の修復性液体を含んでいる複数のコンテナを含んでおり;複合材の複数の層を含む第2の積層体を集成すること;ならびにこれらの積層体を、それらが両方とも集成された後に、接合線で互いに接合すること;を含んでなる方法。
【請求項15】
請求項1記載の前記複合材構造体中の割れを偏向させる方法であって、該割れは前記接合線または前記第2の積層体から始まっており、該方法は前記自己修復性層中の少なくとも幾つかの前記コンテナを破壊し、そうして前記硬化性の修復性液体が破壊された前記コンテナから流れ、そして硬化し、それによって該割れを偏向させることを含んでいる、方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−518056(P2011−518056A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504535(P2011−504535)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050330
【国際公開番号】WO2009/127852
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508305926)エアバス オペレーションズ リミティド (38)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050330
【国際公開番号】WO2009/127852
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508305926)エアバス オペレーションズ リミティド (38)
【Fターム(参考)】
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