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自己免疫疾患を抑制するためのコポリマー、及びその使用方法
説明

自己免疫疾患を抑制するためのコポリマー、及びその使用方法

【課題】14、35、及び50アミノ酸残基の長さを有する3成分及び4成分ランダムアミノ酸コポリマーを提供する。
【解決手段】FEAKの50−merは、MBP85−99又はプロテオリピドタンパク質(PLP)40−60特異的HLA−DR−2制限T細胞クローンに対す効果的な阻害剤である。これらのコポリマーは、全脊髄ホモジェネート(WSCH)又は脳炎誘発性エピトープPLP139−151によってマウスの感受性SJL/J(H−2)菌株において発症したEAEを効果的に抑制する。おおよそY0.8:F0.2のモル比を有するYFAKの50−merは、未標識化MBP85−99又はCopaxone(商標)よりも効果的に、HLA−DR−2分子へのビオチン化MBP85−99エピトープの結合を阻害する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のモル比のアミノ酸を有し、所定の長さのポリペプチドに合成され、自己免疫疾患の症状及び再発の頻度を抑制することができるポリペプチドの設計に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、人工の0.1%に影響を及ぼす中枢神経系の炎症性疾患であり、北欧人種コーカソイドのMS患者においてはHLA−DR−2(DRB11501)ハプロタイプに関係する。MSの動物タイプである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、T細胞性自己免疫疾患である。EAEは、例えば、ミエリン塩基タンパク質(MBP;L.S.Madsenら、Nat.Genet.、23巻、343−347頁、1999年)、プロテオリピドタンパク質(PLP;J.M.Greerら、J.Immunol.、149巻、783−788頁、1992年)、又はミエリン希突起膠糖タンパク質(MOG;I.Mendelら、Eur.J.Immunol.、25巻、1951−1959頁、1995年)等のミエリン成分由来のペプチドを皮下注射によって誘発することができる。
【0003】
EAEの過程では、自己反応性CD4T細胞が、マウスのクラスIIMHC分子(例えば、H−2A)によって表わされる自己抗原を認識し、最終的に、これは疾病の臨床的徴候として観測され得る病理学的変化をもたらす。EAEは、当該疾病を抑制するために有力な治療用化合物の有効性を検証するための広く研究されたシステムを提供する。これらの化合物には、サイトカイン(J.P.Leonardら、Ann.N.Y.Acad.Sci.、795巻、216−226頁、1996年)、アネルギーを誘発するペプチド抗原(A.Gaurら、Science、258巻、1491−1494頁、1992年)、経口免疫寛容を誘発するペプチド抗原(K.J.Kennedyら、J.Immunol.、159巻、1036−1044頁、1997年;H.L.Weiner、Immunol.Today、18巻、335−343頁、1997年)、又は改変ペプチド配位子(C.Pfeifferら、J.Exp.Med.、181巻、1569−1574頁、1995年;L.B.Nicholsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94巻、9279−9284頁、1997年)が含まれる。
【0004】
コポリマー1(Cop1;Copaxone(商標);YEAK)は、約5:3:1.5:1のモル比のアラニン(A)、リシン(K)、グルタミン酸(E)、及びチロシン(Y)からなるランダムアミノ酸コポリマーである。Cop1は、N−カルボキシアミノ酸無水物を用いて、溶液中で合成される(D.Teitelbaumら、Eur.J.Immunol.、1巻、242−248頁、1971年)。当初は、当該コポリマー及びその他の関連するコポリマーを用いて免疫応答性の遺伝的根拠が定められていた。現在、これらはクラスIIMHC遺伝子として知られている(H.O.McDevitt及びM.Sela、J.Exp.Med.、122巻、517−532頁、1965年;H.O.McDevitt及びM.Sela、126巻、969−978頁、1967年)。ポリ(Y、E、A、K)又はYEAKとしても知らているCop1は、実験的アレルギー性脳脊髄炎の抑制(D.Teitelbaumら、Eur.J.Immunol.、1巻、242−248頁、1971年;D.Teitelbaumら、Eur.J.Immunol.、3巻、273−279頁、1973年;D.Teitelbaumら、Clin.Immunol.Immunopathol.、3巻、256−262頁、1974年;R.Aharoniら、Eur.J.Immunol.、23巻、17−25頁、1993年)、及び多発性硬化症の再発の治療(MS;M.B.Bornsteinら、N.Engl.J.Med.、317巻、408−414頁、1987年;K.P.Johnsonら、Neurology、45巻、1268−1276頁、1995年;K.P.Johnsonら、Neurology、50巻、701−708頁、1998年)のいずれにおいても有効であることが判明した。
【0005】
Cop1は、MSに対する療法として認可され、現在では広く用いられている。しかしながら、Cop1はMSの再発率を減少させるが、再発を除去することまではできず、当該疾病に対する治療薬ではない。MS及びその他の自己免疫疾患の治療に対する改善された組成物及びその使用方法を開発することが重要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴の1つは、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)、及びリシン(K)を(Y+F):A:Kが約1:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーYFAKである。ここで、“(Y+F)”という表現は、A及びKの各モル比に対する、YとFのモル比の合計を意味する。
【0007】
当該アミノ酸は、固相反応によって重合される。別の実施態様では、当該アミノ酸は、溶液化学によって重合される。関連する実施態様では、F対Yのモル比は約1であり、例えば、F対Yのモル比は少なくとも約2であり、又は、Yは約4である。
【0008】
別の実施態様では、Yのモル比はFよりも大きく、例えば、F対Yのモル比は少なくとも約2であり、又は、F対Yのモル比は少なくとも約4である。一般に、当該コポリマーの長さは、少なくとも約25アミノ酸残基であり、例えば、当該コポリマーの長さは、少なくとも約35アミノ酸残基、少なくとも50アミノ酸残基、又は少なくとも70アミノ酸残基である。
【0009】
1の実施態様では、本発明は、Y:F:A:Kを約0.2:0.8:5:3のモル比で含む線状ランダムアミノ酸コポリマーを提供するものである。関連する実施態様では、本発明は、Y:F:A:Kを約0.5:0.5:5:3のモル比で含む線状ランダムアミノ酸コポリマーを提供する。別の関連する実施態様では、本発明は、Y:F:A:Kを約0.8:0.2:5:3のモル比で含む線状ランダムアミノ酸コポリマーを提供する。一般に、当該コポリマーアミノ酸は固相反応を用いて重合され、又は、当該コポリマーアミノ酸は溶液化学を用いて重合される。
【0010】
別の側面において、本発明は、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)、及びリシン(K)を含む線状ランダムアミノ酸コポリマーVFAKを提供する。別の側面において、本発明は、バリン(V)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、及びリシン(K)を含む線状ランダムアミノ酸コポリマーVWAKを提供する。別の側面において、本発明は、バリン(V)、チロシン(Y)、アラニン(A)、及びリシン(K)を含む線状ランダムアミノ酸コポリマーVYAKを提供する。別の側面において、本発明は、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)、及びリシン(K)をF:A:Kが約1:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーFAKを提供する。別の側面において、本発明は、バリン(V)、アラニン(A)、及びリシン(K)をV:A:Kが約1:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーVAKを提供する。別の側面において、本発明は、トリプトファン(W)、アラニン(A)、及びリシン(K)をW:A:Kが約1:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーWAKを提供する。別の側面において、本発明は、バリン(V)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、及びリシン(K)を(V+W):A:Kが約1:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーVWAKを提供する。ここで、“(V+W)”という表現は、A及びKの各モル比に対する、VとWのモル比の合計を意味するものである。
【0011】
別の側面において、本発明は、バリン(V)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、及びリシン(K)をV:W:A:Kが約0.5:0.5:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーVWAKを提供する。別の側面において、本発明は、バリン(V)、グルタミン酸(E)、アラニン(A)、及びリシン(K)をV:E:A:Kが約1:1.5:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーVEAKを提供する。別の側面において、本発明は、フェニルアラニン(F)、グルタミン酸(E)、アラニン(A)、及びリシン(K)をF:E:A:Kが約1:1.5:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーFEAKを提供する。別の側面において、本発明は、バリン(V)、チロシン(Y)、アラニン(A)、及びリシン(K)を(V+Y):A:Kが約1:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーVYAKを提供する。ここで、“(V+Y)”という表現は、A及びKの各モル比に対する、VとYのモル比の合計を意味するものである。別の側面において、本発明は、バリン(V)、チロシン(Y)、アラニン(A)、及びリシン(K)をV:Y:A:Kが約0.5:0.5:5:3のモル比で含む、線状ランダムアミノ酸コポリマーVYAKを提供する。さらに、ここに挙げた組成物は、いずれも、薬学的に許容可能な緩衝液において、及び/又は単位用量(unit dosage)において提供され得る。
【0012】
本明細書におけるコポリマーは、上述のアミノ酸からなるが、更に、上述のアミノ酸組成物を共有し、かつ結果として得られるコポリマーがほぼ同一の機能を有するように1以上の更なる置換基(例えば、1以上の更なるアミノ酸)を含むコポリマーと等価であるとみなされる。例えば、FEAK、FAK、VWAK、VYAK、YFAKコポリマー、又は、本明細書に記載される任意のコポリマー組成物のほとんどを含み(すなわち、当該組成物の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%を含み)、かつそれらとほぼ同一の機能特性を有するコポリマーは、本明細書に記載の組成物と等価であるとみなされる。自己免疫疾患の治療に有効な本明細書における組成物の投薬量が、当該組成物とほぼ同じ置換基を含む自己免疫疾患の治療用コポリマーの投薬量とほぼ同一の場合には、機能がほぼ同一であるとみなす。
【0013】
本発明のコポリマー組成物は、少なくとも1の更なる治療薬と組合せることができる。関連する実施態様では、当該更なる治療薬は、抗体、酵素阻害剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、抗代謝剤、サイトカイン、サイトカイン遮断剤、接着分子遮断剤、又は可溶性サイトカインレセプター等である。例えば、サイトカインは、β−インターフェロン、インターロイキン−4、及びインターロイキン−10よりなる群から選択される。
【0014】
本発明の1の実施態様は、上述のコポリマーの少なくとも1単位用量を含むキットである。
【0015】
本発明の特徴の1つは、自己免疫疾患を有する対象の治療に用いる組成物の製造方法であり、ここで、当該組成物は、ランダム線状アミノ酸コポリマーFAK、YFAK、VYAK、VWAK、VEAK、及びFEAKのいずれかを含む。一般に、当該コポリマーは、少なくとも約50残基、例えば、少なくとも約70残基の長さを有する。さらに、そのように場合、当該組成物は、薬学的に許容可能なキャリヤーを更に含む。さらに、当該使用には、効果的な用量で組成物を投与することを含み得る。“効果的な用量”とは、自己免疫疾患の臨床症状及び再発の頻度のいずれか又は両方を改善する組成物の量である。投与の前において、コポリマーは、自己免疫疾患に関連するMHCクラスIIタンパク質への自己抗原性ペプチドの結合を阻害するために選択される。例えば、MHCクラスIIタンパク質−ペプチド複合体に対するクラスII特異的T細胞の応答を阻害するコポリマーが選択される。自己免疫疾患は、橋本甲状腺炎、突発性粘液水腫、重症甲状腺機能低下症、多発性硬化症、脱髄疾患、重症筋無力症、ギラン−バレー症候群、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、自己免疫性卵巣炎、慢性免疫血小板減少性紫斑病、大腸炎、糖尿病、グレーブス病、乾癬、尋常性天疱瘡、関節リウマチ、及びその他よりなる群から選択される。好ましい実施態様では、当該自己免疫疾患は多発性硬化症、関節リウマチ、又は糖尿病である。一緒に投与され得る更なる治療薬は、例えば、抗体、酵素阻害剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、抗代謝剤、サイトカイン、サイトカイン遮断剤、接着分子遮断剤、又は可溶性サイトカインレセプターである。サイトカインは、インターフェロン−β、インターロイキン−4、又はインターロイキン−10である。酵素阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤又はシクロオキシゲナーゼ阻害剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
文脈によって必要とされない限り、本明細書及び特許請求の範囲では、次の語は、以下に説明する意味を有する。
【0017】
“自己免疫疾病(condition)”又は“自己免疫疾患”という語は、自己抗原として知られる自己コード化物に対する不適切な免疫応答によってもたらされる病状を意味する。本発明のコポリマー組成物は、自己免疫疾患の症状を治療するために用いることができる。それらの疾病の種類には、橋本甲状腺炎、突発性粘液水腫、重症甲状腺機能低下症、多発性硬化症、脱髄疾患(脳又は脊髄における斑点又は硬化組織によって特徴付けられる)、重症筋無力症(神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する自己免疫攻撃(attack)に起因する)、ギラン−バレー症候群、多発性神経炎、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、自己免疫性卵巣炎、慢性免疫血小板減少性紫斑病、大腸炎、糖尿病、グレーブス病(甲状腺機能低下症の一形態)、乾癬、尋常性天疱瘡、関節リウマチ(RA)が含まれる。
【0018】
“脱髄疾病”という語には、神経細胞の伸長部分を覆っている細胞膜で構成されるミエリン鞘の一部が分解により除去される病状が含まれる。脱髄疾病は、予防接種後、抗TNF処置後、ウイルス感染後、及びMSにおいて生じ得る。
【0019】
アミノ酸の“誘導体”という語は、当該アミノ酸の原子に結合した更なる置換基、例えば、N−無水カルボキシ基、γ−ベンジル基、ε,N−トリフルオロアセチル基、又はハライド基を有する、アミノ酸の化学的関連物質を意味する。
【0020】
“アナログ”という語は、異なる配置(例えば、異性体、又は、L−構造ではなくD−構造)を有するアミノ酸の化学的関連物質、又は、アミノ酸に近似するサイズ、電荷、形状を有する有機分子、又は、ペプチド結合に含まれる原子を修飾したアミノ酸を意味する。これにより、当該アナログ残基を有するコポリマーは、アナログがコポリマーの内部にあるか末端に位置するかにかかわらず、そのようなアナログを有しないその他の類似のコポリマーよりも優れたプロテアーゼ耐性を有する。
【0021】
“アミノ酸”及び“アミノ酸コポリマー”という語には、アミノ酸誘導体及び/又は本明細書で定義されるアミノ酸アナログである1以上の成分を含まれることができ、当該誘導体又はアナログは、組成物によって示される20の天然アミノ酸のうちの任意の1以上における残基の部分又は全体を含む。例えば、1以上のチロシン残基を有するアミノ酸コポリマー組成物では、これら残基の1以上の部分をホモチロシンで置換することができる。さらに、2つの隣接する残基の間に1以上の非ペプチド又は擬ペプチド(peptidomimetic)結合を有するアミノ酸コポリマーも、当該定義の範囲内に含まれる。
【0022】
“疎水性”アミノ酸という語は、脂肪族アミノ酸であるアラニン(A、又はala)、ギリシン(G、又はgly)、イソロイシン(I、又はile)、ロイシン(L、又はleu)、メチオニン(M、又はmet)、プロリン(P、又はpro)、及びバリン(V、又はval)、及び芳香族アミノ酸であるトリプトファン(W、又はtrp)、フェニルアラニン(F、又はphe)、及びチロシン(Y、又はtyr)を意味する。ここで、かっこ内の1文字記号及び3文字記号は、各アミノ酸の標準コード略語である。これらのアミノ酸は、コポリマー又はその他のポリペプチドに残基として存在する場合、脂肪族側鎖の長さ及び芳香族側鎖の大きさの関数として、疎水性を与える。
【0023】
“荷電”アミノ酸という語は、アミノ酸であるアスパラギン酸(D、又はasp)、グルタミン酸(E、又はglu),アルギニン(R、又はarg)、及びリシン(K、又はlys)を意味する。これらは、当該アミノ酸の1以上の残基を有するコポリマー又はその他のアミノ酸組成物に水溶液におけるpHの生理学的値に正電荷(lys及びarg)又は負電荷(asp、glu)を与える。ヒスチジン(H、又はhis)は、pH7で疎水性であり、pH6で電荷を持つ。
【0024】
“アネルギー”という語は、抗原に対する被験対象の免疫不応答を意味する。
【0025】
本明細書において、“被検体(subject)”という語は、哺乳類(ヒトを含む)を意味する。
【0026】
“異種細胞”という語は、被検体の細胞と無関係のMHCタンパク質生産細胞を意味し、例えば、当該異種細胞は哺乳類の細胞ではない。当該異種細胞は、例えば、冷血動物からのものであり、無脊椎動物からのものであることができる。当該異種細胞は、昆虫の細胞であり、又は、酵母細胞などの微生物の細胞である。
【0027】
“クラスII MHC HLA−DR−2タンパク質の表面”という語は、外部環境と接触し(水性溶媒と相互作用するようなタンパク質の特性を含む)、及びその他の細胞成分(例えば、核酸、他のタンパク質、及びペプチド)と結合することができる、3次元配置におけるタンパク質分子の一部を含む。
【0028】
“P1ポケット”及び“P4ポケット”という語は、結合した自然発生抗原又はエピトープ、及び結合した合成ペプチド又はコポリマーを含む含まれるクラスIIMHCタンパク質と結合するペプチドからのアミノ酸残基側鎖に適合するクラスIIMHCタンパク質分子のペプチド結合表面における3次元多形領域を含む(M.Fridkis−Hareliら、J.Immunol.、160巻、4386−4397頁、1998年;M.Fridkis−Hareliら、Human Immunol.、61巻、640頁、2001年;M.Fridkis−Hareliら、Human Immunol.、62巻、753−763頁、2001年)。
【0029】
“P−1位置”及び“P5位置”という語は、T細胞受容体に直接接触したクラスIIMHCタンパク質分子ペプチド錯体におけるアミノ酸残基を意味する(M.Fridkis−Hareliら、Human Immunol.、61巻、640頁、2001年;M.Fridkis−Hareliら、Human Immunol.、62巻、753−763頁、2001年)。P−1位置という語は、P1ポケットを占有するペプチドのアミノ酸残基の前に存在するアミノ酸について用いられる。P5位置という語は、P4ポケットを占有するアミノ酸残基の後に存在するアミノ酸残基について用いられる。
【0030】
“抗原結合溝”という語は、クラスIIMHCタンパク質分子におけるα及びβサブユニットの両方の表面によって形成される、クラスIIMHCタンパク質分子の表面における3次元抗原相互作用部位について用いられる((L.J.Sternら、Nature、368巻、215頁、1994年)。
【0031】
“薬学的に許容可能なキャリヤー”という語には、生理学的に相溶性である、任意の溶媒、分散媒、コーティング剤、抗微生物剤(例えば、抗菌剤及び抗真菌剤)、等浸透圧及び吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、当該キャリヤーは、静脈内、筋肉内、経口、腹膜内、経皮、又は皮下投与に適しており、さらに、活性化合物は、酸の働き又はその他の不都合な自然条件による不活性化から保護するための物質によって被膜することができる。
【0032】
宿主の免疫応答が自己の分子(自己抗原)と外部の抗原を区別することができず、それにより、異常な免疫応答が発生する場合に、自己免疫疾患がもたらされる。自己免疫疾患における自己の分子に対する免疫応答によって、自己寛容(self−tolerance)の正常状態からの逸脱がもたらされる。これは、自己抗原と反応することができるT細胞及びB細胞の崩壊を伴うものであり、若年期における免疫系の発達で生じた事象によって回避されてきたものである。処理ペプチドをT細胞に結合させて提供(present)する能力によって免疫応答の制御における中心的な役割を担っている細胞表面タンパク質は、主要組織適合性複合体(MHC)分子である(J.B.Rothbardら、Annu.Rev.Immunol.、9巻、527頁、1991年)。
【0033】
MSに加えて、その他の脱髄疾病は、例えば、ウイルス感染後、予防接種後、脳脊髄炎後において(K.W.Wucherpfenningら、Immunol.Today、12巻、277−282頁、1991年)、及び、その後における特定の抗TNF剤の投与において発症することが判明している(FDA Talk Paper、Food and Drug Administration Public Health Service、Rockville、MD、http://.fda.gov/bbs/topics/ANSWERS/ANSDO954.html)。
【0034】
自己免疫疾患に対する治療薬としてのアミノ酸コポリマー
本発明の方法には、特定の対立遺伝子によってコード化されたクラスIIMHCタンパク質に結合し得るような薬剤の使用が含まれる。そのような薬剤は特定のクラスIIMHCタンパク質に結合して、自己免疫疾患に関連する自己抗原の結合を阻害し及び/又は阻止することができ、又は結合の間にアネルギーを導入することができる。その結果、自己抗原に対する免疫応答がなくなる。
【0035】
自己免疫疾患を治療するために、多くの治療薬が開発されてきた。例えば、シクロオキシゲナーゼを阻害することによって低分子量の炎症性化合物の生成を阻止し得る薬剤が開発されている。また、抗TNF特異的モノクローナル抗体断片を用いて、又は当該TNFレセプターの可溶性形態を用いて炎症性タンパク質の腫瘍壊死因子(TNF)を抑制することによって、炎症のタンパク質メディエーターを阻害することで機能し得る薬剤が、市販されている。さらに、T細胞の表面におけるタンパク質(CD4レセプター、又は細胞粘着レセプターICAM−1)の機能を標的として阻害し、それにより、抗原提示細胞(APC)との生産的相互作用を阻止する薬剤が、市販されている。しかしながら、天然に折り畳まれたタンパク質である治療薬は、生産、製剤、貯蔵、及び運搬における問題を招く。さらに、天然タンパク質は、ウイルス及びプリオン等の病原体が混入する可能性がある。
【0036】
自己免疫応答の阻害における更なる標的は、MHC分子に代表されるリンパ球表面タンパク質である。詳細には、これらのタンパク質は、HLA(ヒト白血球抗原)−DR、−DQ、及び−DPとして表わされるクラスIIMHC遺伝子によりコード化される。各MHC遺伝子は、哺乳類群の中における多数の代替形質又は対立形質に見出されている。特定の自己免疫疾患(例えば、MS及び関節リウマチ(RA))にかかっている被検体のゲノムは、当該疾患に連関する1以上の特徴的なクラスIIMHC対立遺伝子を有している傾向が強い。
【0037】
MS及びその他の脱髄疾病の治療薬を得る方法の1つとしては、精製されたクラスIIMHC対立遺伝子タンパク質分子(特に、脱髄疾病に関連するクラスIIMHC対立遺伝子の生産物であるタンパク質)と生体外で選択的に結合するペプチドを特定することである。さらに、当該薬剤は、生体内の抗原提示細胞の表面における場合と同じように当該タンパク質と結合し、それによって、MS等の脱髄疾病の原因であるT細胞類を遮断し、アネルギー化し、又は不活性化するべきである。
【0038】
クラスIIMHCタンパク質は、2つのほぼ等しい大きさのサブユニットα及びβ(これらは、膜貫通タンパク質である)から構成される。α及びβサブユニットの両方のタンパク質特性により形成されるペプチド結合クレフト(cleft)は、T細胞に対する抗原の提示部位である。少なくとも3つのタイプのクラスIIMHC分子、すなわち、HLA−DR、−DQ、及び−DPが存在し、さらに、これらの各タイプには多数の対立形質が存在する。クラスIIMHC分子は、主として、Bリンパ球及び抗原提示細胞(マクロファージ及び樹状細胞など)の表面において発現する(L.Mengle−Gaw、Encyclopedia of Molecular BiologyにおけるThe Major Histocompatibility complex(MHC)、Oxford:Blackwell Science Ltd.、602−606頁、1994年)。
【0039】
本発明の実施態様には、3以上の異なるアミノ酸を含むコポリマーである組成物を用いてクラスIIMHC分子を標的とすることによって、自己免疫疾患を治療する新規な方法が含まれる。
【0040】
本発明のコポリマーは、Fmoc又はt−boc開始アミノ酸アナログ等を用いて合成することができ、それらは、更なる重合(固相合成)のための自動ペプチド合成装置における樹脂上に固定化される。当該アミノ酸は、最適な結合特性を有するコポリマーを提供するためにモル比を調整して重合される。
【0041】
合成手順には、活性化形態の選択されたアミノ酸(例えば、N−カルボキシ無水物として活性化されたアミノ酸)の混合物を、適切に誘導化されたアミノ酸前駆体のそれぞれを適切なモル比で含む溶液を提供する工程が含まれ得る。当該前駆体は、特定の官能基(例えば、L−リシンのεアミノ基)を保護するために誘導化されており、例えば、ε,N−トリフルオロアセチル−L−リシンである。或いは、当該合成手順には、好ましいモル比の選択されたアミノ酸誘導化前駆体の合成手順におけるオンライン混合工程を含まれ得る。ヘテロポリマー合成設備は、例えば、Chiron Technologies(Clayton、オーストラリア)、the Harvard Medical School Biopolymer Laboratory(Boston、マサチューセッツ州)、及びAdvanced ChemTech,Inc.(Louisville、ケンタッキー州)から購入することができる。
【0042】
ペプチド合成のための樹脂支持体の例には、メリーフィールド樹脂(1%のDVB架橋を有するクロロメチル化ポリスチレン)、Fmocアミノ酸Wang樹脂(4−ベンジルオキシベンジルアルコール)が含まれ、当該樹脂はアミノ酸が予め挿入される(例えば、Fmoc−D−trp(boc)−Wang樹脂)。異なるメッシュサイズ(例えば、100−200メッシュ)、及び初期アミノ酸における官能基化における高い又は低い挿入密度(loading densities)の樹脂が入手可能である。
【0043】
本発明の組成物に重合される異なる誘導化アミノ酸溶液(好ましくは、ペプチド合成において通常行われているように保護されている)が、ビーズ試料(例えば、Fmoc)に添加される。樹脂から除去される完全なコポリマー樹脂の合成、非ブロック化、及び開裂のための試薬は、装置の製造者(Applied Biosystems Peptide Synthesizer(Foster City、カリフォルニア州)、又はAdvanced ChemTech(Louisville、ケンタッキー州))から入手可能である。例えば、M.Bodansky、Principles of Peptide Synthesis、第2版、Springer−Verlag、1991年を参照されたい(当該内容は、引用により本明細書中に取り込まれる)。更なるアミノ酸又はアミノ酸アナログ又は誘導体を、コポリマーを構成するために選択された少なくとも3のアミノ酸に添加して、当該アミノ酸のごく一部を置換し、例えば、向上したプロテアーゼ耐性を有し、それゆえ改善された薬理学的特性(例えば、生体内におけるより長い寿命)を有するコポリマーを提供することができる。アナログの例は、ホモチロシン又はその他の置換チロシン誘導体、及びアミノ酪酸であり、これらはいずれもAdvanced ChemtechからFmoc誘導体として市販されている。
【0044】
本発明の方法における治療用組成物
薬学的に許容可能なキャリヤーには、生理学的に相溶性である、任意の溶媒、分散媒、コーティング剤、抗微生物剤(例えば、抗菌剤及び抗真菌剤)、等浸透圧及び吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、当該キャリヤーは、静脈内、筋肉内、経口、腹膜内、経皮、又は皮下投与に適しており、さらに、活性化合物は、酸の働き又はその他の不都合な自然条件による不活性化から保護するための物質によって被膜することができる。
【0045】
本発明の方法には、被検体に投与するのに適切な薬剤組成物中にコポリマーを取り込むことが含まれる。本発明の組成物は、当該技術分野において公知である種々の方法によって投与することができる。活性化合物は、迅速な放出から保護するキャリヤー、例えば、インプラント、経皮貼付、及びマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む放出制御剤形(formulation)を用いて調製することができる。そのような剤形を調製するための多くの方法が特許されており、当該技術分野における当業者に周知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、NY、1978年参照。薬学的に許容可能なキャリヤーにおける輸送用の薬剤組成物は無菌性であり、好ましくは、製造及び貯蔵条件下において安定である。当該組成物は、溶液、微小エマルション、リポソーム、又は高い薬物濃度に適するその他の規則構造として製剤され得る。
【0046】
最適な所望の応答(例えば、治療効果)が得られるように、用量を調節することができる。例えば、単一のボーラスで投与することができ、時間をかけていくつかに分割して投与することもでき、又は、投与量を疾患状況の要求に応じて比例的に増減することもできる。
【0047】
一般に、本発明の1の実施態様は、治療効果(例えば、症状の緩和)をもたらす最少の有効量である、適切な1日量で治療用コポリマー組成物を投与することである。好ましくは、本発明の治療用ヘテロポリマー化合物は、治療開始時における適切な最少投与量として、1の被検体について1日当り、少なくとも約2mg、少なくとも約5mg、少なくとも約10mg、又は少なくとも約20mgの量で投与される。一般に、有効量の本発明における組成物を含む配合物は、被検体1キログラムにつき、1日当り約50乃至約400マイクログラムの範囲で投与することができる。
【0048】
当該技術分野における技術常識を有する医師又は獣医は、所望される薬剤組成物の有効量を容易に決定し及び指示することができるであろう。例えば、医師又は獣医は、薬剤組成物に用いられる本発明の組成物の投与量について、所望の治療効果を達成するために必要な量よりも低いレベルで開始し、その後、所望の効果が得られるまで時間と共に投与量を増加させることができる。
【0049】
別の実施態様では、薬剤組成物は、更なる治療約も含む。従って、本発明の方法において、薬剤コポリマー組成物は、併用療法の一部として、すなわち更なる薬剤と組合せて投与することができる。更なる治療薬として、自己免疫疾患及び関節炎の治療のためのコポリマーと共に併用治療に用いることができる物質の例には、炎症性分子又は不用のサイトカイン(インターロイキン−6、インターロイキン−8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、及び腫瘍壊死因子−α等)へ選択的に結合し得る抗体又は抗体断片;タンパク質であることができる酵素阻害剤(例えば、α−抗トリプシン又はアプロチニン);シクロオキシゲナーゼ阻害剤であることができる酵素阻害剤;人工結合タンパク質(例えば、カリクレインの人工阻害剤等のプロテアーゼ阻害剤である人工タンパク質);抗菌剤(例えば、アモキシシリン、リファンピシン、エリスロマイシン等の抗生物質);抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル等の低分子量化合物;ステロイド(例えば、コルチコステロイド)又は性ステロイド(例えば、プロゲステロン);非ステロイド性抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、又はアセトアミノフェン);メトトレキサート又はアドリアマイシン等の抗がん剤;サイトカイン遮断剤;接着分子遮断剤;又は、サイトカインが含まれる。
【0050】
更なる治療薬は、サイトカイン(本明細書では、自然発生タンパク質又は変異体であって、成長因子として機能する制限剤は含まない)、リンフォカイン、インターフェロン(特に、インターフェロン−β)、腫瘍壊死因子、血管形成誘導因子(angiogenic)又は抗血管形成誘導因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、インターロイキン、成熟因子、走化性タンパク質などであることができる。本発明の実施態様であるアミノ酸コポリマーに添加される更なる薬剤は、別のポリマー、例えば、YEAK又はCop1であるCopaxone(商標)、又は、これらの或いはその他のアミノ酸の一部を含むコポリマー(Aharoniら、WO 00/05250、PCT/US99/16747)、又はオリゴペプチド又はペプチド誘導体を含むコポリマー(Stomingerら、WO 00/05249、PCT/US99/16617;WO 02/59143、PCT/US02/02071)であることができる。本発明の組成物と組み合わせて用いられる好ましい治療薬は、サイトカインであって、インターフェロン−β、インターロイキン−4、及びインターロイキン−10が含まれる。
【0051】
本発明の組成物と共に用いられ得る治療薬は、遺伝子融合の効力によってビリオンコートタンパク質に共有結合しているタンパク質を改造する技術分野における当業者に公知である、人工結合タンパク質であることができ(R.Ladnerら、米国特許第5,233,409号;R.Ladnerら、米国特許第5,403,484号)、これは、当該技術分野において公知の方法によって製造することができる。種々のその他の標的を結合するタンパク質を作り出すことができ、本発明のヘテロポリマーと共に組み合わせた治療薬として用いることができる。
【0052】
当該投与の結果としての症状の改善は、投与開始後の一定期間における、MSの発作における再発頻度の減少、症状の重傷度の減少、及び再発発作の除去を意味する。好ましくは、治療的に有効な投薬量によって、治療されていない被検体と比較して、症状及び再発頻度が少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、及び少なくとも約80%減少し、或いは、1以上の症状又は自己免疫疾患の再発が約100%除去される。当該期間は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約6ヶ月、又は少なくとも約1年間であることができる。
【0053】
ランダム合成コポリマーの使用方法は、HLA−DR遺伝子生産物に関連するその他の自己免疫疾患の治療における基礎とすることもできる。これは、当該タンパク質レセプター分子と結合する候補性自己抗原と競合することにより、T細胞アネルギー又はT細胞アポトーシスを導入することによって、又は、自己抗原に対するその後のT細胞応答を生体内において阻害するようにT細胞を抑制することによってなされる。さらに、1以上の更なる成分、例えば、種々の量で重合反応に添加されるアミノ酸アナログ又は誘導体を有する合成コポリマーは、種々の自己免疫性T細胞応答に対する効果的な阻害剤になり得る。
【0054】
Cop1の活性は、最初のステップとして、抗原提示細胞(APC)、例えば、クラスIIMHCタンパク質(M.Fridkis−Hareiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91巻、4872−4876頁、1994年)の表面に結合し、その後、その有効性は、これらのタンパク質から生じる特異的エフェクターT細胞認識ペプチドエピトープの活性に対するミエリン抗原との競合(A.Ben−Numら、J.Neurol.、243巻、S14−22頁、1996年;D.Teitelbaumら、J.Neuroimmunol.、64巻、209−217頁、1996年)、及び/又は抗原特異的調節T細胞の導入(R.Aharoni、Eur.J.Immunol.、23巻、17−25頁、1993年)のいずれかに依存する。
【0055】
これらの活性に関する更なるコポリマーの評価及びメカニズムの調査によって、治療薬の改善に結びつく情報が得られる可能性がある。最近の研究によって、多岐にわたるコポリマーのほぼ全てが、ヒトHLA−DR1、−DR2、及び−DR4のそれぞれの精製分子に結合するYEAKのランダム混合物に見出されること、及び、YEAKは、一般に、精製クラスIIMHCタンパク質に結合することが明らかとなっている(M.Fridkis−Hareli及びJ.L.Strominger、J.Immunol.、160巻、4386−4397、1998年)。Cop1は、さらに、HLA−DR−2(DRB11501)に対するMBP85−99の結合と競合し、MBP85−99に対するDR−2制限T細胞の応答を阻害する。Cop1における4つのアミノ酸のうちの3つのみを含有するランダムコポリマー(例えば、YAK)の、クラスIIMHC分子に対する結合についての研究によって、YAKが最も効果的であることが判明した(M.Fridkis−Hareliら、Int.Immunol.、11巻、635−641頁、1999年)。
【0056】
MS関連分子であるHLA DR−2(DRB11501)に対するCop1の結合モチーフは、P−2におけるE、P−1におけるK、及びP−1におけるYを示し、その他の位置における選好(preference)は観測されていない(M.Fridkis−Hareliら、J.Immunol.、162巻、4697−4704頁、1999年)。さらに、AはP1において過剰発現(overrepresented)である。P1はアンカー位置なので、当該位置におけるYの結合は予想しなかった。DR−2対立遺伝子でコード化されたタンパク質におけるP1ポケットは小さいものであり(これは、β86Glyではなくβ86Valの存在による)、当該位置におけるAの過剰発現は、この事実に起因するものであろう。P−1におけるKの効果は、α1へリックスの上部における残基とKの相互作用による結合の安定性に依存すると考えられ、これは、Sα53又はEα55におけるα1へリックス残基の側鎖と相互作用し得るHLA−DR1と錯形成するHA306−318のP−1におけるK残基と同様である(L.J.Sternら、Nature、368巻、215−221頁、1994年)。
【0057】
MBP85−99の結合モチーフによって設計されたコポリマー(K.W.Wucherpfenningら、J.Exp.Med.、179巻、279−290頁、1994年)は、Cop1よりも優れた治療薬であろう。本明細書では、それぞれが14−、35−、及び50−merの長さで合成された3種又は4種のアミノ酸を含むいくつかのランダムコポリマーが、固相法により生産される。これらのコポリマーの設計は、第一に、コポリマーの有効性を改善するため、HLA−DR−2(DRB11501)に結合するMBP85−99のアンカー残基(特に、P1アンカー)に関するアミノ酸の選択によってなされる(K.W.Wucherpfenningら、J.Exp.Med.、179巻、279−290頁、1994年;K.J.Smithら、J.Exp.Med.、19巻、1511−1520頁、1998年)。MSにおける自己抗原特異的T細胞応答、及びMSの動物型であるEAEの疾患進行に対する当該コポリマーの効果を、以下の実施例に示す。
【0058】
自己免疫疾患の治療における主な目標は、抗原提示細胞の表面における自己MHCレセプターによって提示される自己抗原性ペプチドと自己反応性T細胞レセプター(TCR)との三分子相互作用を阻害する抗原特異性免疫調節療法の開発である。これらのT細胞性自己免疫疾患の療法は、公知の標的抗原を有する動物モデルについて成功している(例えば、H.L.Weiner、Immunol.Today、18巻、335−343頁、1997年;L.B.Nicholsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94巻、9279−9284頁、1997年を参照)。改変ペプチド配位子(APL)は、矛盾する発見ではあるが、EAEの治療(L.B.Nicholsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94巻、9279−9284頁、1997年;S.Brockeら、Nature、379巻、343−346頁、1996年)、及びMSの治療(B.Bielekovaら、Nat.Med.、10巻、1167−1175頁、2000年;L.Kappos、Nat.Med.、10巻、1176−1182、2000年)のいずれにも用いられる。
【0059】
再発軽減MSに対する認可治療薬であるCop1(Copaxone(商標))は、クラスIIMHC分子に対する乱交雑結合剤として機能し(M.Fridkis−Hareli及びJ.L.Strominger、J.Immunol.、160巻、4386−4397、1998年)、TCRのアンタゴニストとして機能し(R.Aharoniら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96巻、634−639頁、1999年)、及び/又はサプレッサー細胞の誘発物質として機能する(R.Aharoniら、Eur.J.Immunol.、23巻、17−25頁、1993年)と提案されていた。Copaxone(商標)は、現在では広く用いられており、毒性はほとんど又は全く無く、6年間にわたってMS患者への効力が持続する(K.P.Johnsonら、Mult.Scler.、6巻、255−266頁、2000年)。しかしながら、当該試薬は、再発頻度を30%減少させるが、再発を除去することまではできない。新規な化合物の開発によって、MSに対する、或いはその他の自己免疫疾患に対する治療薬の改善が提供され得る。
【0060】
実施例1−6では、14−、35−、又は50merの長さのコポリマーを用いて、本明細書に記載のコポリマーの最適なサイズを決定した。50−merが、HLA−DR−2との結合およびMBP特異的T細胞応答の阻害において最も有効であったので、実施例7−11において用いたコポリマーは、50−merとして合成したものである。抗原の提示の阻害及びEAEの抑制に有効であることが判明した50以上というアミノ酸のサイズは、本発明のランダムコポリマーが、Copaxone(商標)(M.Fridkis−Hareliら、Int.Immunol.、9巻、925−34頁、1997年)又はオリゴマーT細胞エピトープ(O.Rotzschkeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94巻、14642−14647頁、1997年)と同様に、細胞膜の一部のおいてクラスIIMHC分子と結合してクラスターを形成することによって機能するということを示唆するものである。
【0061】
本明細書の実施例7−11におけるランダムコポリマーの残基は、主として、免疫優性T細胞エピトープであるMBP85−99ペプチド(配列番号2)のアンカー残基に基づいて設計されたものである。コポリマー1におけるYは、HLA DR−2(DRB11501)分子(M.Fridkis−Hareliら、J.Immunol.、162巻、4697−4704頁、1999年)の推定されるP1ポケットにおいて見出されたが、Fとぴったりであり、MBP85−99におけるV89に適合する当該ポケットに対して、Yは大きすぎる。さらに、MBP85−99(配列番号2)のF92はP4ポケットに存在するが(K.J.Smithら、J.Exp.Med.、19巻、1511−1520頁、1998年)、Y又はWは当該ポケットには窮屈であろう。本発明のYとF含有コポリマーにおけるこれら2つの残基の相互関係を、異なるY:Fの比で合成されたコポリマーを用いて検証した。さらに、実施例11では、異なるサイズのP1及びP4に適合するための異なるサイズの芳香族基の必要性に基づいて合成のために選択された、V−とW−含有コポリマー及びV−とY−含有コポリマーが、ESE症状の治療に特に有効であることを示している。各P1及びP4のサイズ、形状、及び電荷分布についての知見、及びEAE治療薬としてのV−とW−含有ポリマーのデータを考慮すると、コポリマーの合成においてVとWをそれぞれ置換し得る新規な有機側鎖を有するアミノ酸を設計することができ、それにより、これらの部位に対してVとWと同等又はさらにタイトにフィットする側鎖を有する薬剤を提供することができる。そのような化合物を含むコポリマーは、EAEやMS等の自己免疫疾患に対する治療薬として更に有用であろう。
【0062】
本発明について十分説明してきたが、実施例及び特許請求の範囲において本発明の更なる実施態様を述べる。ただし、当該実施態様は、限定的なものと解釈されるべきではない。引用した文献及び特許の内容は、本明細書中にそっくりそのまま取り込まれる。
【実施例】
【0063】
原料及び方法
コポリマー、ペプチド、及び抗体
Cop1とほぼ等しいモル比のポリ(Y,E,A,K)(これをYEAKと表わす)、ポリ(V,E,A,K)又はVEAK、ポリ(F,E,A,K)又はFEAKを(ここで、V又はFは、Cop1におけるYと同じモル比で存在する)、各サイクルで所望の比で混合されるFmocアミノ酸を用い、14−、35−、及び50−merとして固相法(Chiron Technologies、Clayton、オーストラリア)によって合成した。1Y:1.5E:4.3A:3.3Kのモル比(これは、1:1.5:4.4:3.3のモル比を有するY:E:A:Kを表わす)であって、8150の平均分子量(MW)を有するCop1のバッチ52596(B.Teitelbaumら、Eur.J.Immunol.、1巻、242−248頁、1971年)を、Teva Pharmaceutical Industries(Petach Tikva、イスラエル)から入手した。酢酸グラチラス(Cop1、Copaxone(商標))は、Teva Marion Partners(Kansas City、ミズリー州)から入手した。Cop1のビオチン化は、DMSO中で過剰のN−ヒドロキシサクシンイミドビオチン(Sigma)を用いて行った(M.Fridkis−Hareliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91巻、4872−4876頁、1994年)。未反応のビオチンは、透析により除去した(Spectra/Por(商標)メンブレンMWCO;Spectrum Medical Industries、Laguna Hills、カリフォルニア州)。
【0064】
ペプチドは、Applied Biosystems Peptide Synthesizerにおいて固相技術(G.Barany及びR.Merrifield、Academic Press、New York、NY、1979年)を用いて合成し、逆相HPLC(RP−HPLC)により精製した。ペプチド配列は、MBP(ヒトに基づくミエリンタンパク質)86−100、NPVVHFFKNIVTPRT(配列番号1);MBP085−99、ENPVVHFFKNIVTPR(配列番号2)、MW1795;PLP(ヒトプロテオリピドタンパク質)40−60、TGTEKLIETYFSKNYQDYEYL(配列番号3)、MW2603;及びPLP139−151、HSLGKWLGHPDKF(配列番号4)、MW1520である。これらは、標識化されていない、又はSGSGスペーサー及びC末端の遊離酸によってN末端に連結したビオチンで標識化されている。
【0065】
FAK(モル比1:5:3)、YFAK(モル比0.2:0.8:5:3)、YFAK(モル比0.8:0.2:5:3)、及びYFAK(モル比0.5:0.5:5:3)を、50−merとして固相化学により合成した(Chiron Technologies、Clayton、オーストラリア)。インプットモル比と得られたポリマーのアミノ酸組成物についての約10%の不一致は、当該手順の使用について過去に報告されているデータと一致していた。
【0066】
タンパク質の発現及び精製
可溶性HLA−DR−2分子を、ショウジョウバエS2細胞中で発現させ、上述のように精製した(A.Kalandadzeら、J.Biol.Chem.、271巻、20156−20162頁、1996年)。細胞は、0−5%のウシ胎児血清(Sigma Chemicals、St.Louis、ミズリー州)を補足したExCell401培地(JRH Biosciences、Lenexa、カンザス州)を用いて、回転びん中で26℃において成長させた。細胞は、1mM CuSOの導入の4−5日後に回収した。回収した細胞の上澄みを、順次、タンパク質A、タンパク質B、及びタンパク質A−LB3.1カラムに通し、その後、50mMの3−(シクロへキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸(CAPS)(pH11.5)を用いて結合しているHLA−DRを流出させ、200mMのリン酸(pH6.0)で中和した。タンパク質は、Centriprep10メンブレン(Amicon、Beverly、マサチューセッツ州)で捕集した。
【0067】
HPLC分離及びマイクロシークエンシング
異なるコポリマーを分離し、上述のようにプールを配列決定した(M.Fridkis−Hareliら、J.Immunol.、162巻、4697−4704頁、1999年)。詳細には、1040ダイオードアレイ検出器を有するHewlett−Packard1090HPLCにおけるZorbax C18 1.0mmの逆相カラムを用いて、microboreHPLCにより分画を行った。アセトニトリル中で0.055%のトリフルオロ酢酸(TFA)の勾配(0乃至10分では0%、73分では33%、及び105分では60%)により、54μl/分の流速でコポリマーを流出させた。ピーク選択、逆相分離、及びエドマンマイクロシークエンシングにおける戦略は、既に説明されている(R.M.Chiczら、J.Exp Med.、178巻、27−47頁、1993年)。プールしたフラクションについて、生産者のルーチン3.5を用いるHewlett−Packard G1005A(Palo Alto、カリフォルニア州)のタンパク質シークエンサーにおいて、自動化エドマン分解を行った。
【0068】
クラスIIMHCタンパク質に対するペプチドの結合のアッセイ
(A)溶液
当該分析に用いた溶液は以下のとおりである。結合緩衝液は、特に示さない限り、20mMの2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、140mMのNaCl、0.05%のNaN、pH5.0である。PBSは、150mMの塩化ナトリウム、7.5mMのリン酸水素二ナトリウム、2.5mMのリン酸二水素ナトリウム、pH7.2である。TBSは、137mMの塩化ナトリウム、25mMのトリス、pH8.0、2.7mMの塩化カリウムである。TTBSは、TBSに0.05%のTween−20を加えたものである。
【0069】
(B)マイクロタイターアッセイ用プレートの調製
イムノアッセイ用プレート(96ウェルのマイクロタイター、PRO−BIND(商標)、Falcon、Lincoln Park、ニュージャージー州)を、PBS中で1μg/ウェルの親和性精製LB3.1モノクローナル抗体(総量100μl)を用いて、4℃で18時間コーティングした。その後、37℃で1時間、TBS/3%BSAでウェルをブロックし、TTBSで3回洗浄した。試料の添加の前に、50μlのTBS/1%BSAを各ウェルの添加した。
【0070】
(C)阻害反応
50μlの結合緩衝液中で最終濃度0.13μMのビオチン化ペプチドMBP86−100(配列番号1)を、非標識化阻害剤(ランダムコポリマー又はMBP85−99、配列番号2)及びHLA−DR−2分子と共に、37℃で40時間培養した。
【0071】
(D)クラスIIMHCタンパク質/ペプチド錯体の検出
ストレプタビジン複合アルカリ性ホスファターゼを用いて、結合したペプチド−ビオチンを以下のように検出した。プレートをTTBSで3回洗浄し、100μlのストレプタビジン複合アルカリ性ホスファターゼ(1:3000、BioRad、Richmond、カリフォルニア州)と共に37℃で1時間培養した。その後、トリエタノールアミン緩衝液(BioRad)中のp−ニトロフェニルリン酸を添加した。410nmにおける吸収を、マイクロプレート読み取り機(モデルMR4000、Dynatech、Chantilly、バージニア州)によりモニターした。
【0072】
抗原提示アッセイ
HLA−DR−2制限T細胞は、DR−2(8073、患者Ob(DRB11501)及びHy1B、患者Hy(DRB11602))を有する再発軽減MSの患者から得たTCRに対する遺伝子をBW58TCRα/β細胞に輸送するMBP84−102−特異的形質移入体(M.Fridkis−Hareiら、Human.Immunol.、62巻、753−763頁、2001年);及び、HLA−DR−2トランジェニックマウスからのMBP84−102特異的(2E12)及びPLP40−60特異的(106A)ハイブリドーマ(L.S.Madsenら、Nat.Genet.、23巻、343−347頁、1999年)である。マウスT細胞ハイブリドーマは、PLP139−151特異的H−2−制限されている(hPLP/1及びhPLP/c4、L.Santambrogioら、J.Immunol.、151巻、1116頁、1993年)。抗原提示細胞(APC)は、L466(HLA−DR−2b(DRB11501)で形質移入されたL細胞)、L416(HLA−DR−2a(DRB50101)で形質移入されたL細胞)、MGAR(DRB11501でホモ接合されたEBV形質転換B細胞)、及びSJL/J(H−2)マウスからの脾細胞である。T細胞刺激実験は、96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、200μlの総量で実施した。照射(3000rad)APC(2.5x10/ウェル)を、所定の濃度のコポリマー、及びMBP85−99(配列番号1)、PLP40−60(配列番号3)、又はPLP139−151(配列番号4)と共に、37℃で2時間培養した。その後、T細胞(5x10/ウェル)を添加し、プレートを37℃で24時間培養した。上澄み(30μl)を取り、IL−2−依存CTLL(5x10/ウェル)と共に12時間培養し、その後、H−チミジン(1μCi/ウェル)を用いて12時間標識化した。プレートを回収し、1450microbetaPlus液体シンチレーションカウンタ(Wallac、Gaithersburg、メリーランド州)を用いて放射能をモニターした。
【0073】
マウス菌株
SJL/J(H−2)マウス(8−12週間の年齢)をJackson Laboratories(Bar Harbor、メイン州)から購入し、the Committee on Animals of Harvard University及びthe Committee on Care and Use of Laboratory Animal Resources,National Research Councel(Department of Health and Human Services Publication85−23、1987年改訂)のガイドラインに従ってHarvard Universityの動物施設の保存した。ヒト化マウス(L.S.Madsenら、Nat.Genet.23(3)巻、343−347頁、1999年;及び、D.Altman、D.Hafler、及びV.Kuchroo、未公表文献)は、導入遺伝子HLA DR−2(DRA0101及びDRB11501)及びMS患者ObからのTCR(クローンOb.1A12から増幅したTCRα及びTCRβのV(D)J再構成)を保因する(carry)。
【0074】
EAEの導入及び抑制
マウスの尾の付け根及び首の項部に、上述のように調製した全脊髄ホモジェネート(WSCH、500μg/マウス)(L.Santambrogioら、J.Immunol.、151巻、1116−1127頁、1993年)皮下注射し、又は、同量のPBS及び完全フロイントアジュバント(CFA;Sigma Chemical Co.、St.Louis、ミズーリ州)を含有するエマルション中の結核菌H37Ra(BD Difco Laboratories、Sparks、メリーランド州)とPLP139−151ペプチド(50μg/マウス)を皮下注射した。免疫付与の1日後、百日咳毒素(List Bilogical Laboratories、Campbell、カリフォルニア州、200ng)を尾に静脈注射した。上述の病状の重症度に従って(L.Santambrogioら、J.Immunol.、151巻、1116頁、1993年)、1−5の目盛の範囲でマウスについてのEAE臨床的徴候を毎日記録した。EAEの抑制の評価において、各コポリマー(500μg/マウス)を混合し、上述の脳炎誘発性エマルションを注入した。
【0075】
神経病理学
炎症及び脱髄の評価のために、マウスにおいて、40mlのトランプ固定液(0.1Mリン酸バッファー中(pH7.4)における4%パラホルムアルデヒド、1%グルタルアルデヒド)を麻酔下において上行大動脈を経てかん流させた。脳及び脊髄の薄片を、冷1%四酸化オスミウムで1時間後置し、増大エタノール(increasing ethanol)を有する溶媒で脱水し、エポキシ樹脂に埋め込んだ。1μmの断片を得て、トルイジンブルーで染色し、光学顕微鏡で観測した。
【0076】
実施例1.新規コポリマーの合成及び微量分析
それぞれ14−、35−、及び50−merの長さである、ランダム4成分アミノ酸コポリマーYEAK、VEAK、及びFEAKを固相法で合成した。以下の構造情報に基づいて、Yを置換するものとしてV又はFを選択した。すなわち、DRB11501のP1ポケットが、Yには大き過ぎるが、VやFには適切である小ポケットをもたらすβ86Vを含むこと(ただし、高ペプチド濃度の場合は除く、J.I.Krieger、J.Immunol.、146巻、2331−2340、1991年)。MBP85−99(配列番号2)の結合においてP1に生じる残基はVであり、及び、Fはよりタイトなフィットを提供すると考えられること。MBP85−99においてP4に生じる残基がFであること。
【0077】
固相合成手順によって、アミノ酸組成、分布、疎水性、及び大きさの点において、溶液化学のみを用いてこれまでに生産されてきたコポリマーと類似したコポリマーが生産されるか否かを検証するために、当該新規化合物について、アミン酸分析、RP−HPLC分離、及びマイクロシークエンシングを行った。
【0078】
アミノ酸分析により、各コポリマーのY、V、F、E、及びKのモル比は、A以外は予測された範囲内の比であるが、当該Aのモル比は、全てのコポリマー(特に、35−及び50−mer)において増大していることがわかった。例えば、VEAKの50−merでは、観測されたモル比が、1.0V:2.1E:10.7A:2.9Kであったのに対し、その予想値は1.0V:1.5E:5.0A:3.0Kであった。アセトニトリル勾配を用いたHPLCによるコポリマー分離は、いくつかの小さなピークを有する広いピークを示し、これは、約40乃至約120分の溶出範囲に広がっており、未処理Cop1(M.Fridkis−Hareli及びJ.L.Strominger、Hum.Immunol.、62巻、753−763、2001年)と類似するものであった。最初の10アミノ酸のエドマン配列決定では、各サイクルともアミノ酸分析の結果と類似する一定の比を示した。これは、コポリマーにおけるアミノ酸配列がランダムであることを示唆するものである。
【0079】
実施例2.HLA−DR−2分子に対する新規ランダムコポリマーの結合性
N−カルボキシアミノ酸無水物を用いて溶液中で合成されたCop1及び3つのアミノ酸のランダムコポリマー(D.Teitelbaumら、Eur.J.Immunol.、1巻、242−248頁、1971年)、すなわち、Y、E、A、及びKのうちの3つのアミノ酸を含むコポリマーは、精製HLA−DR−2と結合し、MBP−85−99の結合と競合することがわかっている(M.Fridkis−Hareli及びJ.L.Strominger、J.Immunol.、160巻、4386−4397、1998年;M.Fridkis−Hareliら、Int.Immunol.、11巻、635−641頁、1999年)。
【0080】
固相法によって合成されたコポリマーが、HLA−DR−2との結合において、当該自己抗原エピトープとも競合するか否かを検証するため、ビオチン化MBP86−100(配列番号1)及び非標識化ペプチド及びランダムコポリマーを用いて、競合結合アッセイを行った。HLA−DR−2分子に対するビオチン化MBP86−100(配列番号1)の結合は、YEAKの50−mer、非標識化MBP85−99(配列番号2)ペプチド、又はCop1の場合に最も効果的に阻害された。ここで実験したその他のランダムコポリマー(すなわち、14及び35の長さのアミノ酸残基を有するもの)は、いずれも、当該アッセイにおいてほとんど効果がなかった。
【0081】
実施例3.ランダムコポリマーの存在下におけるMBP特異的T細胞の増殖反応
いくつかのMBP84−102特異的T細胞クローン(上記「原料及び方法」を参照)を有する各ランダムコポリマーの生物活性を評価するために、一連の増殖アッセイを行った。
【0082】
それぞれHLA−DR−2分子を発現させる3つのタイプのAPCを試験して、どれが最も効果的にMBP85−99(配列番号2)ペプチドを提示するかについて評価した。当該ペプチドがヒトB細胞株MGAR(DR−2b(DRB11501)発現)によって提示される場合には、L466(DR−2b−発現L細胞形質移入体)細胞の場合よりも高い増殖レベルが観測された。L416(DR−2a(DRB50101)−発現L細胞)を用いた場合には、全く応答が観測されず、全てのT細胞クローンがDR−2b(DRB11501)対立遺伝子に限定されることを確認した。それゆえ、MGAR細胞(又は、時にはL466細胞)は、その後、以下に述べる抗原提示アッセイにおいて用いた。
【0083】
3つの異なるT細胞クローンの各コポリマーの存在下におけるMBP85−99ペプチドによる増殖阻害を検証した。概ね、試験したT細胞クローンにかかわらず14−merは阻害しなかったが、一方、35−及び50−merは、高い阻害レベルを示した。全てのクローンについて、YEAKの50−merは、(平均70−merである)Cop1とほぼ同等であった。YEAKの35−merでは大幅に阻害が減少し、YEAKの14−merでは非常に低いものであった。
【0084】
2E12T細胞クローンの増殖の阻害は、FEAKの35−及び50−merの存在下、及びCop1の存在下において効果的であった(図1A、左下パネル)。VEAKは、2E12クローンを阻害しなかった(図1A、右下パネル)。FEAKの50−merは、幾分Cop1の阻害よりも低かった。Hy1Bの場合では、Cop1が最も優れた阻害剤であり、FEAK及びVEAKの50−merの阻害は、それより低いレベルであった(図1C)。
【0085】
V、E、A、及びKの組合せでは、HLA−DR−2分子に対する結合親和性が低くなり、及びHLA−DR−2制限MBP85−99特異的T細胞の阻害が低レベルとなった。これは、MBP85−99/HLA−DR−2錯体において、Vが、当該ペプチド(配列番号2)の位置89における残基であり、HLA−DR−2タンパク質のP1ポケットにおいてβ86Valと相互作用するという観測に反する(K.J.Smithら、J.Exp.Med.、19巻、1511−1520頁、1998年)。F側鎖もP4ポケットにフィットするので、FEAKはより優れた結合剤である。残基AはP1ポケットと相互作用し、YはP4ポケットと相互作用する(K.J.Smithら、J.Exp.Med.、19巻、1511−1520頁、1998年)。MBP85−99(配列番号2)は、V89のために、比較的親和性の低いペプチドである。
【0086】
FEAKにおける残基Kは、おそらく、MBP85−99の位置93におけるK(配列番号2;K.W.Wucherpfenningら、J.Exp.Med.、179巻、279−290頁、1994年;K.J.Smithら、J.Exp.Med.、19巻、1511−1520頁、1998年)と同様に、TCRとの相互作用において重要なものであろう。一方、結合部位におけるコポリマーのN末端付近に存在するKは、Sα53又はEα55におけるα1ヘリックスの側鎖と相互作用することができるHLA−DR1に結合したHA306−318(配列番号5)のP1における残基K(L.J.Sternら、Nature、368巻、215−221頁、1994年)と同様に、HLA−DR分子及びTCRとの安定な相互作用に寄与し得る。
【0087】
実施例4.PLP特異的T細胞クローンの増殖
ランダムコポリマーが、MSにおける別の潜在的な自己抗原(すなわち、PLP)の提示を阻害することができるかを検証するため、2つの異なるPLPエピトープを用いた。DRB11501に結合するヒトPLP40−60(配列番号3)(M.Krogsgaardら、J.Exp.Med.、191巻、1395−1412頁、2000年)、及び、H−2と結合し、SJL/Jマウスにおいて脳炎誘発性のマウスPLP139−151(配列番号4)ペプチド(V.K.Tuohyら、J.Immunol.、142巻、1523−1527頁、1989年)。当該アッセイに用いたT細胞は、106A(HLA−DR−2トランスジェニックマウスからのPLP40−60特異的ハイブリドーマ;L.S.Madsenら、Nat.Genet.、23巻、343−347頁、1999年)、及びhPLP/1及びhPLP/c4(SJL/JマウスからのPLP139−151特異的H−2制限ハイブリドーマ;L.Santambrogioら、J.Immunol.、151巻、1116−1127頁、1993年)である。T細胞ハイブリドーマの増殖は、投与量に依存して対応ペプチドによってもたらされる。その後、各コポリマーを抗原提示アッセイに添加した。
【0088】
L466APCによる106A T細胞へのPLP40−60(配列番号3)エピトープの提示は、FEAKの35−mer及び50−merによって最も効果的に阻害された(図2A、下段パネル)。阻害のレベルは、Cop1の存在下よりも幾分高かった。MBP特異的T細胞の場合と同様に、YEAK50−merはCop1とほぼ同様の結果だったが(図2A、上段パネル)、一方、VEAKは、最も高濃度の場合においてのみ、PLP40−60特異的T細胞を阻害した(図2A、中段)。
【0089】
マウスH−2制限PLP139−151特異的T細胞ハイブリドーマであるhPLP/1の増殖は、Cop1によって最も阻害された。FEAK及びVEAKは、それよりも幾分効果が少なかった(図2B)。hPLP/c4ハイブリドーマは、FEAKの50−mer及びCop1によって最も阻害された(図2C)。
【0090】
特定の理論に制限されるわけではないが、コポリマーが自己反応性T細胞応答を制限する際のいくつかのメカニズムが仮定されている。すなわち、それらは、MHC/TCR閉塞(blockage)、競合、アネルギー誘導、アポトーシス、及びバイスタンダー抑制である。最初の2つのメカニズムは、自己反応性T細胞の数が増大し始めた場合の、誘導期の初期段階におけるコポリマーの効果を意味するものである。バイスタンダー抑制は、誘導期及びエフェクター期の両方において機能し、調節T細胞の発達又は交差反応性T細胞の増大を促進し、それによって、自己反応性脳炎誘発性T細胞を抑制することができる。生体外における増殖では、PLP139−151(配列番号4)で免疫付与されたマウスのT細胞は、試験コポリマーに対する交差反応性を用いることなく、免疫付与ペプチドのみに応答を生じた。しかしながら、自己ペプチド及びコポリマーの存在下の生体外におけるPLP139−151T細胞の場合には、PLP139−151(配列番号4)に対するT細胞の応答は、著しく抑えられた。また、いくつかの同時免疫付与(co−immunized)マウスでは、T細胞は、コポリマーと共にPLP139−151(配列番号4)に応答して増殖した。
【0091】
以下の実施例における、生体内に投与されてEAEに対する最も優れた抑制を示すコポリマーは、また、PLP139−151(配列番号4)に対するT細胞の増殖応答に対する最も優れた抑制を示す。すなわち、コポリマーの機能における可能性のあるメカニズムは、MHCの閉塞、及び抗原提示における競合であると考えられる。
【0092】
実施例5.WSCHを導入したEAEに対するVEAK及びFEAKランダムコポリマーの生体内における効果
VEAK及びFEAKランダムコポリマーが、SJL/JマウスにおけるEAEの臨床経過に与える影響を調べるために、いくつかの生体内実験を行った。疾患導入の手順は、皮下注射して、WSCH(500μg)及び各ポリマー(500μg)を両方とも免疫付与することである。これは、Cop1によるEAEの抑制についての過去の研究における手順と同様のものである(D.Teitelbaumら、J.Neuroimmunol.、64巻、209−217頁、1996年)。疾患の導入の後、マウスについて、典型的なEAEの臨床的徴候の様子を40日間毎日観測した(表1)。
【0093】
当該データは、WSCHを注射されたマウスは、14−15日目あたりにEAEを発症し、約2.2の最大臨床スコアを記録した(発生率:18/32、死亡率:3%)。35−及び50−merのVEAKを同時免疫付与したもの(それぞれ、表1の6行目及び4行目)は、EAEの経過にほとんど影響を与えず、WSCHのみを注入した群と同様の発生率と最大スコアとなった。しかしながら、これらの同時免疫付与マウスでは、疾患の発生が、若干遅くなった。
【0094】
一方、それぞれFEAKの35−mer又は50−merで治療したマウスは(それぞれ表1の7行目及び5行目)は、EAEの症状すら発生しなかった。Copaxone(商標)の治療(表1の2行目)によってEAEが抑制された。Copaxone(商標)で治療した14のマウスのうちの1つは、20日目に発症そ、最大スコアは3.0であった。同様に、FEAKの50−merを注射した16のマウスのうちの2つ(表1の3行目)は、14日目で軽度に発症し、最大スコアは1.0であった。
【0095】
各コポリマーを注射したマウスにおける炎症及び脱髄の程度を評価するため、脊髄試料について中枢神経系の免疫組織化学を行った。WSCHのみ、又はWSCHとVEAK50−merを注射した疾患マウスの腰髄から得た試料は、脱髄と共に、広範囲な中髄膜(submeningeal)、血管周囲、及び実質性の浸潤を示した。一方、他のコポリマーによる治療後のおいて全く疾患の徴候を示さなかったマウスから得た試料では、浸潤及び脱髄の症状は検出されなかった。
【0096】
本明細書の実施例において合成し特性評価された各ランダムコポリマーの中では、WSCHを導入されたEAEの抑制において、FEAKが最も有効であった。
【0097】
実施例6.PLP139−151ペプチド(配列番号4)を導入したEAEおけるVEAK又はFEAKランダムコポリマーの治療
本発明のランダムコポリマーが慢性再発性EAEの発症に与える影響を検証するため、50μgのPLP139−151(配列番号4;SJL/J菌株における脳炎誘発性エピトープ)のみ、又は50μgのPLP139−151(配列番号4)と500μgのコポリマーをマウスに皮下注射した。マウスについて、疾患の導入の後90日間毎日測定した。
【0098】
CFAにおいてPLP139−151(配列番号4)エピトープのみで免疫付与した場合のEAEは、WSCHを導入したEAE(表1)と比較して、より重い臨床的徴候(表3)を有していた。例えば、8のマウスのうちの5は、死亡率33%という重症のEAEを発症した。当該初発(first attack)は、免疫付与の約14日後に発症し(最大臨床スコアが4.0)、その後、概ね30日、50日、70日、85日のピークがある疾患発症の事後的な変動(fluctuation)を示した。
【0099】
種々のコポリマーを同時に注射した試料は、それぞれ違った形でEAEの臨床的徴候が減少した。VEAKの50−merで治療した群では(図3B)、8のマウスのうちの4が、EAEの臨床的徴候を示した。初発は、13日目に発生し、約20日目にピークになった(平均最大スコア:1.6)。
【0100】
FEAKの50−mer(図3C)を同時に注射した場合、8のうちの3のマウスは疾患した。ペプチドのみを注射した対照試料やVEAKで治療した群と比較すると、当該初発は遅くなり、症状も重症ではなかった(23−25日目、平均最大スコアは1.1)。臨床的症状は、約40日までにほぼ完全に治った。
【0101】
Copaxone(商標)で治療した場合(図3D)では、FEAKにおける結果と同様に、初発が遅れた(26日目に開始し、34日目にピーク、最大平均スコアは1.25)。Copaxone(商標)の群では、8のうちの2つのマウスが、EAEを発症した(死亡率12%)。
【0102】
表1及び図3のデータは、WSCH又はPLP139−151(配列番号4)ペプチドのいずれかによって誘発されるEAEが、FEAKの50−merによって効果的に抑制されたことを示唆するものである。さらに、当該データは、FEAKの50−merが、Cop1よりも効果的に、WSCH又はPLP139−151(配列番号4)ペプチドのいずれかによって誘発されるEAEを抑制することを示すものである。この観測は、脳炎誘発性物質とコポリマーを同時にSJL/Jマウスに注射した場合に歴然としていた。Cop1は、WSCH又は合成PLPペプチドによって誘発されたEAEを阻害し、両方の抗原を同時にマウスに免疫付与した場合にのみPLP特異的T細胞応答を阻害した(D.Teitelbaumら、J.Neuroimmunol.、64巻、209−217頁、1996年)。これは、それらが、クラスIIMHC分子との結合において競合することを示唆している。
【0103】
特定の理論に制限されるわけではないが、本発明の50−merランダムコポリマーの活性メカニズムは、Cop1の場合と同様であって、それにより、クラスIIMHCタンパク質に対する潜在的自己抗原ペプチドの結合が阻害され、その後、T細胞が抑制されると考えられる。
【0104】
実施例7.Y及びF含有コポリマーの合成及び微量分析
アミノ酸Y、E、A、及びKで構成されるランダムコポリマーの50−merは、14−又は35−merよりも、MS関連HLA−DR−2(DRB11501)へのヒト免疫優性エピトープMBP85−99(配列番号2)の結合に対する強力な阻害剤である。これらのコポリマーのいくつかは、HLA−DR−2制限MBP84−102特異的T細胞の応答を阻害し、さらに、脳炎誘発エピトープPLP139−151(配列番号4)によって誘発された感受性SJL/J菌株におけるEAEを抑制した。
【0105】
ここでは、コポリマーにおけるアミノ酸組成及びアミノ酸比率についての分析を、ランダム3成分コポリマーFAKの50−merにおいて、及び、異なる比率のY:Kを有する4成分アミノ酸コポリマーYFAK(“Y及びF含有”コポリマー)において行った。各50−merコポリマーは、固相法によって合成した。HLA−DR−2(DRB11501)分子に結合するMBP85−99(配列番号2)エピトープのアンカー残基に応じて、これらのコポリマーを構成するアミノ酸を選択した。
【0106】
以下の構造的基準に基づいて、異なる比率のYとFを有するコポリマーを設計した。すなわち、DRB11501のP1ポケットが、Yには大き過ぎるが、VやFには適切である小ポケットをもたらすβ86Vを含むこと。従って、MBP85−99の結合においてP1に生じる残基はVであるが、FはP1に対してタイトなフィットを提供すること。及び、MBP85−99におけるP4に生じる残基がFであるが、当該ポケットはYにとって十分大きく、YはFよりも適切にフィットし得ること。合成手順によって、アミノ酸組成、分布、疎水性、及び大きさの点において、従来技術によって生産されたコポリマーと類似したコポリマーが生産されるか否かを検証するために、当該新規化合物について、アミン酸分析、RP−HPLC分離、及びマイクロシークエンシングを行った。
【0107】
アミノ酸分析により、各コポリマーのY、F、及びKのモル比は、A以外は期待したインプットモル比の範囲内であるが、当該Aのモル比は、全てのコポリマーにおいて増大していることがわかった。Cop1において上述したアセトニトリル勾配を用いた(M.Fridkis−Hareliら、J.Immunol.、162巻、4697−4704頁、1999年)コポリマーのHPLC分離は、いくつかの小さなピークを有する広いピークを示した。これは、約40乃至80分の溶出したものであり、未処理Cop1の溶出と類似するものであった。
【0108】
合成した各コポリマーにおけるいくつかの最初のアミノ酸のプール配列決定は、Y、F、又はKの各レベルよりも著しく高いAのレベルを有するランダムパターンを示した。これは、これらのランダムコポリマー組成の分析において判明した初期におけるAの高いモル比と対応するものである。コポリマーにおけるアミノ酸にはいずれも配列特異性及び優先的位置決め(positioning)は観測されなかったが、これは、当該ポリマーがランダム配列であることを示唆するものである。
【0109】
実施例8.HLA−DR−2分子に対するY及びF含有ランダムコポリマーの結合性
固相法によって合成されたY及びF含有ランダムコポリマーが、HLA−DR−2との結合において、自己抗原MS関連エピトープMBP85−99(配列番号2)と競合するか否かを検証するため、ビオチン化MBP86−100(配列番号1)及び非標識化ランダムコポリマーを用いて、競合結合アッセイを行った。
【0110】
HLA−DR−2分子に対するビオチン化MBP86−100の結合は、FAKの50−mer及びYEAKの50−merコポリマー(Y0.8:F0.2のモル比を有する;図4)によって効果的に阻害された。従って、当該Y及びF含有50−merランダムコポリマーは、MS関連HLA−DR−2分子とに結合において、MS関連エピトープ(配列番号2)と競合する。
【0111】
実施例9.ランダム50−merコポリマーの存在下におけるMBP特異的T細胞の増殖反応
MBP85−99(配列番号2)ペプチドに応答する3つの異なるT細胞クローンの増殖における、各50−merコポリマーFAK、YFAK(0.2:0.8)、YFAK(0.5:0.5)、及びYFAK(0.8:0.2)の存在による効果を検証した。2つの独立した実験の結果を図5に示す。
【0112】
当該データは、3つのMBP特異的HLA−DR−2制限クローンのそれぞれにおいて、Y及びF含有YFAKコポリマー及びFAKコポリマーが効果的な阻害剤であることを示している。これらのコポリマーの中でも、YFAK(0.2:0.8)、YFAK(0.5:0.5)、及びFAKは、YFAK(0.8:0.2)よりも良い阻害剤であり、Cop1よりも優れていた。
【0113】
異なるY:F比率を有する3つのYFAKコポリマー及びFAKコポリマーの優れた窓外活性が、クローン2E12に対しては、当該3つのコポリマーの低濃度条件(例えば、約20μM))において観測され、他のT細胞クローンに対しては、いくつかのポリマーの低濃度条件において観測された。より高い濃度(例えば、約100μMを超える濃度)では、観測された阻害レベルは、当該実施例におけるコポリマー全てで同様なものであった(図5)。
【0114】
実施例10.PLP139−151ペプチド(配列番号4)を導入したEAEおけるY及びF含有ランダムコポリマーによる治療
Y及びF含有50−merランダムコポリマーがSJL/JマウスにおけるEAEの臨床経過に与える影響を調べるために、生体内実験を行った。上記の実施例と同様に、同時免疫付与の手順は、脳炎誘発性エピトープPLP139−151(配列番号4;50μg)とコポリマー製剤(500μg)をSJL/Jマウスに皮下注射することである。疾患の導入の後、マウスについて、典型的なEAEの徴候の様子を70日間毎日観測した。
【0115】
CFAにおいてPLP139−151(配列番号4)エピトープのみで免疫付与した場合、慢性再発性EAEが生じた(図6、表2)。この処理を受けた13のマウスは、全て、死亡率77%という重症のEAEを発症した。初発は11日目付近に発症し(最大臨床スコアが4.6)、その後、概疾患発症の事後的な変動を示した(図6)。
【0116】
本発明のランダムコポリマーを同時に注射した試料は、それぞれ違った形でEAEの臨床的徴候が減少した。YFAK0.2:0.8で処理した群は、16のマウスのうちのわずか2のみが、EAEの臨床的徴候を示した(死亡率6%)。当該臨床的徴候は、未処理群における11日目から遅れて約37日目に初発が生じた(平均最大スコア0.6;図6、表2)。
【0117】
同様に、YFAK0.5:0.5で処理した群は、16のうち1が疾病したマウスであり(死亡率0%)、初発は33日目に生じた。さらに、YFAK0.8:0.2で処理したマウスは、17のうちの8がEAEを発症し、死亡しなかった。この群では、観測された平均最大臨床スコア(1.5)及び発症時期(27日目)は、それぞれ、上記のY対Fの比が低いYFAK製剤で処理したマウスから得られたデータよりも治療上の効果が小さいことを示唆するものである。
【0118】
FAKを同時に注射した場合には、17のうち3つが疾病したマウスであり、死亡率が12%、平均最大臨床スコアが0.9、平均発症時期が25日目であった(表2の5行目)。PLP139−151(配列番号4)とCopaxone(商標)を同時に注射した場合は、16のうち12のマウスがEAEを発症し、平均発症時期は22日目であり、平均臨床スコアは2.6であった(表2の6行目)。
【0119】
別の実験において、個々のマウスについての臨床的症状の観測結果は、YFAK0.5:0.5の治療によって、全ての群のマウスにおける症状を全て除去できることを示している。個々のマウスについての当該データからは、F含有コポリマーはPLP誘発EAEの治療においてCop1よりも効果的であり、F対Yのモル比の大きさがEAEの優れた治療と関連することが明らかである。
【0120】
すなわち、PLP139−151(配列番号4)に誘発されたEAEは、3つの異なるYFAKコポリマー及びFAKによって効果的に抑制された。その効果の順列は、YFAK0.5:0.5>YFAK0.2:0.8>FAK>YFAK0.8:0.2である。F含有コポリマーは、Cop1よりも効果的にPLP誘発EAEを治療した。
【0121】
ここで合成し分析したY及びF含有ランダムアミノ酸コポリマーは、HLA−DR−2分子、自己抗原特異的T細胞の阻害、及びEAEの抑制において、Cop1(Copaxone(商標))よりも効果的である。これらのコポリマーは、主として、MS関連HLA−DR−2(DRB11501)分子と相互作用する免疫優性T細胞エピトープMBP85−99(配列番号2)の残基に基づいて、設計及び合成した。コポリマー製剤の長さは、活性に重要なものであり、50−merが最も効果的である。長いポリペプチドは、隣接するクラスII分子と連結することができる。
【0122】
50−merランダムコポリマーFAK、及びY対Fのモル比が異なるYEAK50−merコポリマーは、以下の機能活性において対照例Copaxone(商標)よりも優れている:すなわち、HLA−DR−2分子への結合、MBP特異的DR−2制限T細胞の阻害、及びEAEの抑制。ランダムコポリマーVEAKは、MBP−99自己抗原(配列番号2)のP1に相当する位置にアミノ酸残基Vを有するにもかかわらず、HLA−DR−2分子に対する低い結合親和性、HLA−DR−2制限MBP85−99特異的T細胞の低い阻害レベル、及びEAEの進行に対する無効果を示した。ここにおけるデータは、VをFで置換することによって、より優れた阻害化合物が得られることを示している。おそらく、これは、FがP1ポケットに対し、及びYがP4ポケットに対しよりタイトにフィットするためと考えられる。
【0123】
脳炎誘発性エピトープPLP139−151(配列番号4)に誘発されたEAEの進行に対する本発明のコポリマーの効果は、著しいものである。脳炎誘発性物質とコポリマーを同時にSJL/Jマウスに注射した場合、EAEの臨床的徴候が、当該YFAKコポリマー又はFAKで治療することによって著しく減少した。
【0124】
特定の理論に制限されるわけではないが、これらのデータは、クラスIIMHC分子による抗原提示の効果的な遮断剤としてのコポリマーを含み、潜在的自己抗原ペプチドの結合を阻害し、それによって自己免疫T細胞の抑制をもたらすランダムコポリマーの活性メカニズムを裏付けるものである。
【0125】
YFAKの50−mer及びFAKの50−merコポリマーは、患者の60%がHLA−DR−2(DRB11501)ハプロタイプであるMSの治療において用いられ得る。ランダムコポリマーの乱交雑な結合性を鑑みると(M.Fridkis−Hareliら、J.Immunol.、160巻、4386−4397頁、1998年;M.Fridkis−Hareliら、Int.Immunol.、11巻、635−641頁、1999年)、本発明のコポリマーは、その他のHLA−DR特異性を有するMS患者にも有効であり、さらには、その他の自己免疫疾病において使用される新規な治療薬を提供し得る。
【0126】
実施例11.バリン(V)及びチロシン(Y)含有、又はバリン(V)及びトリプトファン(W)含有コポリマーの同時免疫付与/予備免疫付与による、ヒト化マウスにおけるMBP85−99(配列番号2)誘発EAEの抑制
HLA−DR−2(DRB11501)のペプチド結合ポケットは、P1にβ86Val残基を有しており、そのサイズは、V又はF残基には適切であるが、Y又はWには十分なサイズではない。一方、大きな疎水性ポケットP4はβ71Alaを有しており、それは、Y又はW等の大きなサイズの残基に適切である。P9ポケットは、乱交雑である。当該構造的考察に基づいて、AとKと共に、バリン(V)及びチロシン(Y)を含有する、又はバリン(V)及びトリプトファン(W)を含有するコポリマーを合成し、MBP85−99(配列番号2)によって誘発されたEAEの進行及び症状における効果を試験した。
【0127】
実験に用いた動物は、トランス遺伝子HLA−DR−2(DRA0101及びDRB11501)及びMS患者ObからのTCR(クローンOb.1A12から増幅したTCRα及びTCRβのV(D)J再構成)を保因するヒト化マウスである。各群のマウスは、MBP85−99(配列番号2)を皮下注射してEAEを誘発させた。図7に示すように、マウス群は、EAEの誘発の2日前にCop1、YFAK0.5:0.5、或いは対照MBP85−99のいずれかを注射して予め免疫付与したもの、又は、Cop1、YFAK0.5:0.5、YFAK0.2:0.8、VYAK0.5:0.5、或いはVWAK0.5:0.5、及びEAE誘発MBP85−99(配列番号2)を同時に免疫付与したものである。50日間に渡って、所定の日に臨床症状をモニターした。
【0128】
MBP85−99(配列番号2)のみを導入した対照マウス群は、約25日目に臨床スコアが4を超える重症度を示した。この群の臨床症状は、8つの測定点(11日目から32日目)で3−4の高い値に上昇し、その後、2乃至3の重症度で安定した。合計で14の測定点(すなわち、7日目から終点の50日目まで)に渡って症状の継続が観測され、当該症状は2乃至3の重症度で安定した。
【0129】
一方、MBP85−99(配列番号2)と共にVWAKを同時に免疫付与したマウスは、最少のEAE臨床症状を示した(図7)。50日間に渡る実験経過において、当該マウスは、37日目までに通常の臨床状況に戻った。約9日目に発生したVWAK処理マウスの症状は、最大で約1以下の臨床スコアを示した。図7におけるその他のコポリマーは、MBP85−99(配列番号2)に比較するとわずかに症状の回復が見られたが、症状の重症度を大幅に減少させるものではなかった。YFAK0.2:0.8を同時免疫付与した群は1乃至約2、YFAK0.5:0.5を予め免疫付与した群は1乃至2、及びYFAK0.5:0.5を同時免疫付与した群はわずかに1より大きいものであった。
【0130】
VWAKを同時免疫付与した群において症状の回復が最も大きく、YFAK0.5:0.5を予備免疫付与した群において症状の継続期間が最も短かった。後者のグループでは、合計で5つの測定点でしか症状は観測されず、その後、臨床症状はなくなった。YFAK0.5:0.5で予備処理した群のデータを図8にプロットする(四角マーク)。これは、YFAK0.5:0.5で処理した群における症状の重症度及び継続期間と、MBP85−99(配列番号2)のみを導入した対照群(菱形マーク)及びCop1で処理した群(三角マーク)との比較を示すものである。ここにおける予備免疫付与の手順は、自己免疫疾患EAEに対する予防接種に相当するものである。
【0131】
YFAK0.5:0.5の予備免疫付与の場合と対照的に、Cop1を予備免疫付与した群又は同時免疫付与した群は、症状を回復させたものの、臨床スコアを約2乃至3(Cop1予備免疫付与)又は3よりわずかに大きい(Cop1同時免疫付与)レベルまで軽減しただけであった。さらに、症状は、マウスが無症状になるまでの7日目から37日目の9つの測定点(Cop1同時免疫付与)の間、又は7日目から50日目の14の測定点(Cop1予備免疫付与)に渡って観測された。YFAK処理群にように症状が除去されることはなく、マウスの症状は、約1より大きい重症度のレベルで安定した。これらのデータは、EAEの疾患状態の発症に対する動物の予備免疫付与において、YFAK0.5:0.5が最も効果的であることを示すものである。
【0132】
これらのデータは、アミノ酸V、A、及びKを有するランダムコポリマーにおけるW又はFの存在が、クラスIIMHCのメジャーグルーブ(例えば、P1及びP4位置)への当該コポリマーのフィットをよりタイトにし得ることを示唆するものである。当該データは、YFAK及びVWAKが、MS、脱髄疾病、及びその他の自己免疫疾患に対する有望な潜在的治療薬であることを示すものである。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、ランダムコポリマーの存在下におけるHLA−DR−2制限MBP特異的T細胞系2E12(パネルA)、8073(パネルB)、及びHy1B(パネルC)の阻害を示すグラフである。照射されたL466(A)又はMGAR(B、C)細胞は、最終濃度が4μM(A)又は12.5μM(B、C)のMBP85−99(配列番号2)及び異なる濃度の各ランダムポリマーと共に、37℃で2時間培養した(2つ培養した)。その後、T細胞を添加し、37℃で24時間培養した。上澄み(30μl)を、IL−2−依存の細胞傷害性T細胞リンパ球(CTLL)と共に培養し、H−チミジン(1μCi/ウェル)を用いて12時間標識化した。
【図2】図2は、ランダムコポリマーの存在下における、HLA−DR−2制限PLP40−60特異的ヒトT細胞106Aの阻害を示す線グラフ(A)、H−2−制限PLP139−151特異的マウスT細胞ハイブリドーマ(それぞれ、hPLP/1及びhPLP/c4)の阻害を示す棒グラフ(B及びC)である。照射されたL466(A)又はSJL/Jマウスからの脾細胞(B及びC)は、最終濃度が60μM(A)のプロテオリピドタンパク質ペプチドPLP40−60(配列番号3)及び横軸に示した濃度の異なるランダムポリマーと共に、又は、最終濃度が24μMのPLP139−151ペプチド(配列番号4;B及びC)及び異なるコポリマー(28μM)と共に、37℃で2時間培養した。その後、T細胞を添加し、37℃で24時間培養した。上澄み(30μl)を、IL−2−依存CTLLと共に培養し、H−チミジン(1μCi/ウェル)を用いて12時間標識化した。「印」は、0%の阻害を示すものである。
【図3】図3は、PLP139−151(配列番号4)ペプチドにより誘発されるEAEについての、異なるランダムコポリマーVEAK、FEAK、及びCopaxone(商標)による抑制を示すグラフである。50μgのPLP139−151(配列番号4)ペプチドと500μgのランダムコポリマーを、又はPLP139−151(配列番号4)のみをSJL/Jマウスに皮下注射した。疾患の進行は、横軸の日数に対する縦軸に示した臨床症状の状況によってモニターした。縦軸に示した結果は、臨床症状の1日平均スコアを表わしている。
【図4】図4は、ランダムコポリマーFAK、YFAK(0.8:0.2)、YFAK(0.2:0.8)、YFAK(0.5:0.5)、及びCop1による、HLA−DR−2分子へのビオチン化MBP86−100(配列番号1)の結合の阻害率を示すものである。組換え水溶性HLA−DR−2分子は、ビオチン化MBP86−100(配列番号1;0.13μM)と共に、及び横軸に示した濃度の非標識化ランダムコポリマー又は合成非標識化ペプチド対照であるMBP85−99(配列番号2)と共に培養した。培養は、37℃で40時間、pH7.0で2つ行った。縦軸に示した結合阻害率の結果は、2つの独立した実験のうちの1つを表わすものである。特異的結合は、次の式を用いて阻害の割合として表わす。阻害率=100%−[(競合剤存在下における410nmの吸収−バックグラウンド)/(競合剤非存在下の吸収−バックグラウンド)X100]。競合剤非存在下における410nmのシグナルは0.8−0.9であり、バックグラウンドは0.1であった。
【図5】図5は、ランダムコポリマーFAK、YFAK(0.8:0.2)、YFAK(0.2:0.8)、YFAK(0.5:0.5)、及びCop1の存在下での、2E12、8073、及びHy1Bの各細胞系におけるHLA−DR−2制限MBP84−102特異的T細胞の阻害を示すグラフである。照射されたMGAR細胞は、最終濃度が12.5μMのMBP85−99(配列番号2)及び異なる濃度の各ランダムポリマーと共に、37℃で2時間培養した(2つ培養した)。その後、T細胞を添加し、37℃で24時間培養した。上澄み(30μl)を、IL−2−依存CTLL細胞系のそれぞれと共に培養し、H−チミジン(1μCi/ウェル)を用いて12時間標識化した。
【図6A】図6は、PLP139−151(配列番号4)ペプチドにより誘発されるEAEについての、異なるランダムコポリマーFAK、YFAK(0.2:0.8)、YFAK(0.8:0.2)、YFAK(0.5:0.5)、及びCopaxone(商標)による抑制を示すグラフである。50μgのPLP139−151(配列番号4)ペプチドと500μgのランダムコポリマーをSJL/Jマウスに皮下注射し、又はPLP139−151(配列番号4)のみで免疫性を与えた。疾患の進行は、横軸に示した疾患導入後の日数に対する、縦軸に示した臨床症状の状況によってモニターした。図6Aは、2つの実験にそれぞれについて、5乃至9のマウスから構成される各グループにおける臨床症状の1日平均スコア(縦軸)の結果を示すものである。
【図6B】図6は、PLP139−151(配列番号4)ペプチドにより誘発されるEAEについての、異なるランダムコポリマーFAK、YFAK(0.2:0.8)、YFAK(0.8:0.2)、YFAK(0.5:0.5)、及びCopaxone(商標)による抑制を示すグラフである。50μgのPLP139−151(配列番号4)ペプチドと500μgのランダムコポリマーをSJL/Jマウスに皮下注射し、又はPLP139−151(配列番号4)のみで免疫性を与えた。疾患の進行は、横軸に示した疾患導入後の日数に対する、縦軸に示した臨床症状の状況によってモニターした。図6Bは、各マウス単体のデータであって、各カラムの最上段は治療に用いたコポリマーであり、代表的な実験において、各グラフの右上隅に表示したマウスについて観測された最大臨床スコアを示すものである。
【図7】図7は、MBP85−89(配列番号2)ペプチドにより誘発されるEAEについての、異なるランダムコポリマーYFAK、VWAK、VWAK、及びCop1による抑制、及びコポリマーで処置していない対照マウスのデータを示すグラフである。ヒト化マウス(L.S.Madsenら、Nat.Genet.23(3)巻、343−347頁、1999年;及び、D.Altman、D.Hafler、及びV.Kuchroo、未公表文献)は、導入遺伝子HLA DR−2(DRA0101及びDRB11501)及びMS患者ObからのTCR(クローンOb.1A12から増幅したTCRα及びTCRβのV(D)J再構成)を保因する(carry)。同時に免疫付与された(co−immunized)マウスは、0日目において、500μgのランダムコポリマー又は表示している対照物質、及び50μgのEAE誘発MBP85−89(配列番号2)を同時に導入したものである。事前に免疫付与された(pre−immunized)マウスは、EAE誘発の2日前にコポリマーを予め導入したものである。コポリマーVYAK及びVWAKは、それぞれ、V:Y:A:K及びV:W:A:Kが0.5:0.5:5:3のモル比を有する。当該データは、3、5、7、9、11、14、16、18、22、25、28、32、37、40、43、及び50日目のそれぞれにおける(横軸)、臨床症状のスコア(縦軸)によって疾患の進行を示すものである。
【図8】図8は、図7における動物群のうちの3つから得たデータを一緒に再プロットした線図である。ひし形は、コポリマーの処置を受けていない対照EAE誘発マウスである。四角形は、YFAK(0.5:0.5)で処置したEAE誘発マウスである。三角形は、Cop1で処置したEAE誘発マウスである。図における処置は、それぞれ、EAE導入の2日前に行った(すなわち、疾患に対する予防接種である)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)、及びリシン(K)を含む線状ランダムアミノ酸コポリマーYFAK。
【請求項2】
前記アミノ酸が固相反応又は溶液化学によって重合される、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
F対Yのモル比が約1である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
F対Yのモル比が少なくとも約2である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項5】
F対Yのモル比が約4である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項6】
Y対Fのモル比が少なくとも約2である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項7】
Y対Fのモル比が少なくとも約4である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項8】
少なくとも約25のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項9】
少なくとも約35のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項10】
少なくとも約50のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項11】
少なくとも約70のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項12】
少なくとも1の更なる治療薬と組み合わされる、請求項1乃至11のいずれか1請求項に記載のコポリマー。
【請求項13】
前記更なる治療薬が、抗体、酵素阻害剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、抗代謝剤、サイトカイン、サイトカイン遮断剤、接着分子遮断剤、又は可溶性サイトカインレセプターよりなる群から選択される、請求項12に記載のコポリマー。
【請求項14】
前記サイトカインが、β−インターフェロン、インターロイキン−4、及びインターロイキン−10よりなる群から選択される、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1に記載のコポリマーを少なくとも1単位用量で含む、キット。
【請求項16】
自己免疫疾患を有する被検体の治療に用いられる組成物の製造方法であって、当該組成物が線状ランダムアミノ酸コポリマーYFAKを含む、当該製造方法。
【請求項17】
前記コポリマーが少なくとも約50残基の長さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コポリマーが少なくとも約70残基の長さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が薬学的に許容可能なキャリヤーを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
MHCクラスIIタンパク質−ペプチド複合体に対するクラスII特異的T細胞応答を阻害するコポリマーを選択することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記自己免疫疾患が、橋本甲状腺炎、突発性粘液水腫、重症甲状腺機能低下症、多発性硬化症、脱髄疾患、重症筋無力症、ギラン−バレー症候群、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、自己免疫性卵巣炎、慢性免疫血小板減少性紫斑病、大腸炎、糖尿病、グレーブス病、乾癬、尋常性天疱瘡、及び関節リウマチから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が関節リウマチである、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記自己免疫疾患が糖尿病である、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記更なる治療薬が、抗体、酵素阻害剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、抗代謝剤、サイトカイン、サイトカイン遮断剤、接着分子遮断剤、可溶性サイトカインレセプター、及び更なる線状ランダムアミノ酸コポリマー組成物よりなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記サイトカインが、β−インターフェロン、インターロイキン−4、及びインターロイキン−10よりなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記酵素阻害剤が、プロテアーゼ阻害剤及びシクロオキシゲナーゼ阻害剤よりなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−162545(P2012−162545A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85538(P2012−85538)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【分割の表示】特願2003−532522(P2003−532522)の分割
【原出願日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願人】(500491786)プレジデント・アンド・フェローズ・オブ・ハーバード・カレッジ (8)
【Fターム(参考)】