説明

自己安定化アンテナベース

【課題】自動安定化および位置決め制御のためのシステムを有するアンテナ装置(18)を提供すること。
【解決手段】このアンテナ装置は、微小電気機械(MEMS)ベースの加速度計およびジャイロスコープ集積回路(IC)センサ(26)を、ビークル搭載アンテナ用途でのアンテナベース(20)内に直接組み込む。これらのセンサは、外部センサ入力を必要とせずに、ビークルの動きと無関係に所望のビーム掃引範囲を達成するように、アンテナ装置が自動的にアンテナ(22)を安定化することを可能にする。本発明は、外部に取り付けられた方位センサへの通信インターフェースを不要にし、ケーブルI/Oを削減し、設置手順を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ビークル搭載アンテナは、通常、それが搭載されたビークルの動きに無関係に指定された方向に向くように、または指定された掃引範囲を追跡するようにアンテナ装置を保つために安定化を必要とする。この要件によりこのようなアンテナは、アンテナがビークルの方位の変化に応答できるように、少なくとも1つの方位センサからの入力を受け取ることが必要となる。
【0002】
方位センサは、しばしば、加速度計とジャイロスコープの何らかの組合せからなる。サイズおよび重量の制約により、これらの検出デバイスは通常、ビークル上で、アンテナユニット自体から物理的に離れた場所に取り付けられる。その結果通常は、アンテナユニットの方位情報を伝達するために、方位センサとアンテナの間に物理的な電気的接続および連携された通信プロトコルが存在しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この設計にはいくつかの好ましくない影響がある。1つは、アンテナと方位センサの通信プロトコルを整合させる必要があることである。設計および製造の時点では、どのような方位センサにアンテナが接続されることになるかは必ずしも分からないので、しばしばアンテナは多くの異なる通信プロトコルを受け入れるように設計される。これは、ユニットの複雑さおよび設計/開発コストへの追加となる。
【0004】
第2の影響は、物理的なI/Oポートを整合させる必要があることである。この要件によりアンテナは、複数のI/Oポート構成を受け入れるように組み立てられるか、またはアンテナが用いることができる方位センサの数を制限することが必要となる。
【0005】
最後に、アンテナと方位センサを物理的に離すことは、アンテナベースとビークルが同じ方位を共有することを確実にするために、それらの設置時に正確な較正が行われなければならないことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
自動安定化および位置決め制御のためのシステムを有するアンテナ装置が開示される。このアンテナ装置は、微小電気機械センサ(MEMS)ベースの加速度計およびジャイロスコープ集積回路(IC)センサを、ビークル搭載アンテナ用途でのアンテナベース内に直接組み込む。これらのセンサは、外部方位センサ入力を必要とせずに、ビークルの動きと無関係に所望のビーム掃引範囲を達成するように、アンテナ装置が自動的にアンテナを安定化することを可能にする。
【0007】
本発明は、MEMSデバイスの向上する能力と縮小するサイズおよびコストを利用する。航空機に搭載された気象レーダアンテナの特定の用途では、MEMSデバイスは、アンテナと一体の方位センサを可能にすると共に、通信プロトコルの複雑さを低減し、配線および物理インターフェースを削減し、アンテナの設置を簡単にするという効果を生じる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態および代替実施形態について、次の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態により形成された自己安定化アンテナを有する航空機の部分的なX線投影図である。
【図2】自己安定化アンテナの構成要素を示すブロック図である。
【図3】ビークル搭載型の自己安定化気象レーダアンテナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ノーズ部分12と、構造要素16とを有するビークル10を示す。構造要素16には、動作時にビーム掃引範囲14を調査するアンテナ装置18が固定される。電磁放射は物体を透過することができるので、構造要素16、およびアンテナ装置18の取り付け点は、ビークル10内の任意の点となり得る。ノーズ部分12は単に、アンテナ装置18を好都合に取り付け得る、ビークル10内のいくつかの都合の良い場所の1つである。
【0011】
通常の水平走査プロセス時には、アンテナ装置18は、指定されたビーム掃引範囲14を維持する方位を維持しようとする。アンテナ装置18は構造要素16に取り付けられ、したがってビークル10に固定されるので、ビークル10の方位が変化するときは、アンテナ装置18が電磁界を収集するビーム掃引範囲14も変化する。この影響により、アンテナ装置18を安定化する必要が生じる。
【0012】
図2は、アンテナ装置18の機能要素の間の関係を示す。アンテナ装置18は、ベース20、アンテナ22、制御装置34、および表示メモリ装置36を含む。ベース20内には、方位モータ24、微小電気機械センサ(MEMS)ベースの方位センサ26、プロセッサ28、データ入出力ポート30、および送受信回路32がある。
【0013】
ベース20は、アンテナ22と、離れて配置された制御装置34および表示メモリ36との間の機械的および電気的接続点の両方として働く。図1に戻ると、機械的にはベース20は構造要素16に固定され、したがってビークル10の残りの部分に固定される。図2においてアンテナ22は、機械的連結部(図示せず)を通じて方位モータ24にてベース20に接続される。MEMSベースの方位センサ26は、共通の取り付け点であるベース20を通じて、方位モータ24に機械的に基準付けられる。
【0014】
アンテナ22は、送受信回路32を通じてプロセッサ28と通信する。制御装置34および表示メモリ36は、データ入出力ポート30を通じてプロセッサ28と通信する。方位モータ24およびMEMSベースの方位センサ26は共に、プロセッサ28と直接通信する。
【0015】
動作時には、所望の掃引範囲14の仕様(すなわち、方向信号)が、制御装置34からデータ入出力ポート30を通じてプロセッサ28に伝達される。しかしベース20は、構造要素16を通じてビークル10に接続されているので、ビークル10が空間を進むに従って、アンテナ22の方位はロールおよびピッチの観点で変化する。ベース20への機械的接続によってMEMSベースの方位センサ26は、ベース20(すなわちビークル10(たとえば航空機))が受けるロールおよびピッチのパラメータを測定し、これらの測定の結果をプロセッサ28に連続的に供給する。プロセッサ28は、制御装置34から所望のビーム掃引範囲14の仕様を受け取り、方位センサ26からロールおよびピッチの測定値を受け取る。プロセッサ28では、方位センサ26からのロールおよびピッチの測定値は、制御装置34からの所望のビーム掃引範囲14の仕様に要素分解され、方位モータ24に送られる。方位モータ24は、従来型の機械的連結部(図示せず)を通じて、それが取り付けられるベース20の方位の変化に関わらず、制御装置34にて指定されたビーム掃引範囲14を達成するようにアンテナ22を方向付ける。アンテナ22は、所望のビーム掃引範囲14に対して所望の放射電磁界を収集し、それを送受信回路32を通じてプロセッサ28に、そしてそこからデータ入出力ポート30を通じて表示メモリ36に渡す。
【0016】
言い換えればプロセッサ28は、水平走査駆動処理の一部として、水平走査平面内のアンテナ位置の知識を有する。プロセッサ28では、方位センサ26からのロールおよびピッチの測定値と、水平走査内の位置は、所望のビーム掃引範囲14を達成するためにピッチおよび/またはロールが補償された修正をもたらすように、制御装置34によって指定された走査仰角と共に要素分解される。
【0017】
一実施形態では、ベース20、アンテナ22、制御装置34、および表示メモリ36は、航空機搭載型気象レーダアンテナ装置18を構成する。ビークル10は、ノーズ部分12内の構造要素16に取り付けられたアンテナ装置18を有する航空機である。ビークル10は、所望のビーム掃引範囲14を確立するように、アンテナ22がノーズ部分12から外側に向けられた状態で大気を通過する。気象についての情報は、アンテナ22によって収集され、送受信回路32を通じてプロセッサ28に渡される。ビークルの姿勢が変化するのに従ってMEMSベースの方位センサ26は、以前の方位からの偏移を測定し、旧方位と新方位の間の方位の差をプロセッサ28に送り戻す。プロセッサ28は、この新方位情報を方位モータ24に渡し、方位モータ24は、制御装置34にて指定されたビーム掃引範囲14を維持するためにアンテナ22を調整するように機械的に応答する。
【0018】
ビークル10の動きによるアンテナ22の方位の調整は、制御装置34から所望のビーム掃引範囲14の仕様が受け取られた後は、ベース20の外側からの何らの入力なしに達成される。アンテナ装置18の外部の方位センサからの方位測定の入力に対する要件はない。これにより、データ入出力ポート30でのケーブル配線および物理インターフェース要件が簡単になる。
【0019】
ベース20内にMEMSベースの方位センサ26を一体化することにより、プロセッサ28に複数の通信プロトコルを組み込まなければならないという要件はなくなる。これは、接続され得る一連の方位センサに適応するために様々な通信プロトコルを用いて構成されなけばならないまたはアンテナ装置が用いることができる方位センサが限定される、現在のアンテナ装置プロセッサからの一歩前進である。
【0020】
またベース20内にMEMSベースの方位センサ26を一体化することにより、これまで設置の時点で必要であった較正が不要になる。較正の要件は、(1)従来、離れて配置された方位センサの出力が、アンテナベース20に対して意味をもつように、アンテナベース20とビークル10が同じ方位座標を共有する必要性、および(2)ビーム掃引範囲14の方位がビークル10の方位に対応するように、方位モータ24とビークル10が同じ方位座標を共有する必要性に由来する。方位センサ26をベース20内に一体化する利点は、第1の較正の要件は完全になくなり、第2の較正の要件は、アンテナ装置18の設置の時点での較正ではなく、工場での較正によって満足することができることである。
【0021】
図3は、航空機のノーズコーン部分の隔壁16−1に取り付けられた、アンテナ装置18−1の一実施形態を示す。ベース20は構造要素16に取り付けられ、アンテナ22は方位モータ24への連結部(具体的には図示せず)を通じてベース20に接続される。ベース20内には、方位モータ24、MEMSベースの方位センサ26、プロセッサ28、データ入出力ポート30、および送受信回路32がある。方位モータ24、MEMSベースの方位センサ26、プロセッサ28、データ入出力ポート30、および送受信回路32は、すべてベース20内に一体化される。
【0022】
図3はまたベース20が、方位モータ24とMEMSベースの方位センサ26の両方に対する共通の機械的基準点として存在することを示す。これにより、これら2つの構成要素は工場にて互いに較正することが可能になり、自己安定化アンテナ装置18の本発明の1つの周辺的な利点である。図3はまた、方位センサ26がプロセッサ28と共にベース20内に一体化されたので方位センサ26のためのI/Oピンを含まない、小型のデータ入出力ポート30を示す。これによりデータ入出力ポート30内のケーブル数が削減され、データ入出力ポート30はここでは、制御装置34および表示メモリ36への接続のためのピンが必要なだけである。図3に示されていないことは、方位センサ26とプロセッサ28の間の通信のための複数の通信プロトコルをなくすことにより、プロセッサ28が簡単になることである。
【0023】
一実施形態では、MEMS加速度計およびMEMSジャイロスコープはハネウェル社によって製造され、Apex統合化コックピットに用いられるエアデータ姿勢方位基準システム(ADAHRS)を含む。代替実施形態では、MEMS加速度計およびMEMSジャイロスコープの市販の在庫品供給業者が用いられる。
【0024】
極端な精度を必要とする実施形態では、方位センサ26は、3つまでの回転(ジャイロスコープ)MEMS集積回路と、4つまでの加速度計集積回路(IC)を含む。1つのパッケージ内で3つの軸を測定する加速度計ICパッケージが存在し、通常はアンテナ安定化は回転の2つの軸だけを占めなければならないので、自己安定化は少ない3つのIC(1つの3軸加速度計MEMS ICと、2つの1軸回転MEMS IC)で達成し得ると考えられる。一実施形態では、1つの3軸加速度計MEMS ICと、2つの1軸回転MEMS ICパッケージがアンテナベース20内に組み込まれる。各ICパッケージは、いくつかの受け入れられた通信プロトコルの1つを用いて、プロセッサ28に方位データを送信する。受け取られた方位データ、および制御装置34からの指定されたビーム掃引範囲14に基づいてプロセッサ28は、ビークル10の方位に無関係に要求されたビーム掃引範囲14を維持するために、方位モータ24にアンテナ22を調整するように命令する。
【0025】
他の実施形態では、送受信回路32は送信器と受信器を含み、プロセッサ28はレーダプロセッサを含む。送信器、受信器、およびレーダプロセッサは、ハネウェル社によって製造されるRDR4000気象レーダシステム内に設けられるものと同様とすることができる。
【0026】
本発明はまた、代替として製造された方位測定センサを用いることもできる。
【符号の説明】
【0027】
10 ビークル
12 ノーズ部分
14 ビーム掃引範囲
16 構造要素
16−1 隔壁
18 アンテナ装置
18−1 アンテナ装置
20 ベース
22 アンテナ
24 方位モータ
26 方位センサ
28 プロセッサ
30 データ入出力ポート
32 送受信回路
34 制御装置
36 表示メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ(22)と、
ベース(20)であって、
1つまたは複数のアンテナ方位モータ(24)と、
方位センサ(26)とを備える、ベース(20)と
を具備するアンテナ装置(18)。
【請求項2】
制御装置(34)と、表示メモリ(36)とをさらに具備し、前記ベースはプロセッサ(28)と、送受信回路(32)と、データ入出力ポート(30)とをさらに備え、前記方位センサは加速度計またはジャイロスコープを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
アンテナ装置のベース部内に含まれたプロセッサにて方向信号を受け取るステップと、
前記アンテナ装置の前記ベース部内に含まれた方位センサから、前記プロセッサにて1つまたは複数の位置センサ信号を受け取るステップと、
前記受け取られた1つまたは複数の位置センサ信号および前記方向信号に基づいて、1つまたは複数のアンテナ位置制御信号を発生するステップと、
発生された1つまたは複数のアンテナ位置制御信号に基づいて、前記アンテナを物理的に方向付けるステップと
を含む方法であって、
1つまたは複数のアンテナ位置制御信号を発生するステップは、前記ベースに対する前記アンテナ方位の設置前較正にさらに基づく、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−259069(P2010−259069A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−94989(P2010−94989)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】