説明

自己形成する熱力学的安定なリポソームおよびその適用

【課題】現在のリポソーム処方に伴う、コロイド不安定性、スケールアップした滅菌における困難さ、および製造におけるバッチ間の可変性などの種々の問題を解決すること。
【解決手段】リポソームを調製する方法であって、以下:水溶液を提供する工程;脂質溶液を提供する工程であって、この溶液が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPvを有し、そしてこの溶液中の少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、工程、および脂質溶液および水溶液を合わせる工程、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の属する技術分野)
本発明は、リポソームに関する。より具体的には、本発明は、脂質と水溶液とを混合することで、自発的に形成するリポソーム、およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
リポソームは、自己閉鎖コロイド粒子であり、その中で、1つ以上の脂質二分子層からなる膜が、それらが懸濁されている水溶液のフラクションをカプセル化している。二分子層の表面は親水性であるが、一方で、二分子層の内部(これは、炭化水素鎖を含む)は疎水性である。それらの構造における異なるミクロ環境のために、リポソームは、親水性分子をカプセル化し得るか、分子を二分子層表面に結合し得るか、または疎水性分子を二分子層の中間に溶解し得る。多くのタイプの分子を組み込むそれらの能力は、薬物送達、診断、化粧品、薬用化粧品(cosmeceutical)および機能性食品のための応用を生じた。
【0003】
リポソームは、いくつかの異なる方法によって作製される。典型的に、プロセスは、脂質または脂質の組み合わせを有機溶媒に溶解して開始される。有機溶媒の除去および水和の際に、大きな多重層ベシクル(MLV)が形成される。いくつかの応用のために、小さな単層ベシクル(SUV)が所望され得る。SUVは、いくつかの技術(例えば、超音波処理、十分に規定された小孔を有する膜を通す押出し、Frenchプレス押出しおよび均質化を含む)によって、MLVから作製され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リポソームに関連した問題には、コロイド不安定性、スケールアップした(scale−up)滅菌における困難さ、および製造におけるバッチ間の可変性が挙げられる。リポソーム調製および製造は、典型的に、有機溶媒の除去、続いて、押出しまたは均質化を含む。これらのプロセスは、リポソーム成分を極端な条件(例えば、高圧、高温、および高剪断条件(これらは、脂質およびリポソームに組み込まれる他の分子を分解し得る))に曝し得る。
【0005】
リポソーム調製は、しばしば、二分子層のサイズおよび数の非常に不均一な分布によって特徴付けられる。小さいスケールに対して最適化された条件は、通常、適切にスケールアップされず、ラージスケールのバッチの調製は厄介であり、そして重労働である。
【0006】
医療用途のためのリポソームに関連した他の問題は、滅菌である。熱滅菌、エタノールオキサイド曝露、γ線照射および滅菌濾過の中で、最後の技術のみがリポソーム、さらにまた約100ナノメートル(nm)より小さいリポソームに対してのみ、適切である。リポソームの濾過は、多くの困難を引き起こす。
【0007】
リポソームの応用に対する他の問題は、コロイド安定性である。懸濁液中のリポソームは、保存、加熱および種々の添加物の添加の際に、凝集および融合し得る。これらの安定性の問題のために、リポソームは、しばしば、凍結乾燥される。凍結乾燥は、費用および時間を浪費する。再構成の際、しばしば、サイズ分布が増加し、そしてカプセル化された物質が、リポソームから漏れ得る。
【0008】
従って、現在のリポソーム処方に伴うこれらの問題を扱う新しい方法および物質を開発することが、所望される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
リポソーム懸濁液は、脂質組成物を水溶液に添加すると、自発的に形成する。この脂質組成物は、適切なパッキングパラメーターを有する単一の脂質または脂質の混合物を含み、ポリエチレングルコールを含み、そして水溶液と混合された場合に、それが液体の形態であることを可能にする融解温度を有する。このようなリポソーム懸濁液は、種々の目的(治療用薬剤の送達を含む)のために有用である。
【0010】
本発明によれば、リポソームを調製する方法であって、以下:水溶液を提供する工程;脂質溶液を提供する工程であって、この溶液が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPvを有し、そしてこの溶液中の少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、工程、およびこの脂質溶液およびこの水溶液を合わせる工程、を包含する、方法、が提供される。このことにより、上記課題が解決される。
【0011】
1つの実施形態によれば、PEG鎖が、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。
【0012】
1つの実施形態によれば、上記方法が、上記脂質溶液および上記水溶液に運動エネルギーを提供する工程、をさらに包含する。
【0013】
1つの実施形態によれば、上記脂質溶液が、単一の脂質を含む。
【0014】
1つの実施形態によれば、上記方法が、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含む。
【0015】
1つの実施形態によれば、上記方法が、以下:活性化合物を提供する工程;および上記活性化合物を上記脂質溶液および上記水溶液と合わせる工程、をさらに包含する。
【0016】
1つの実施形態によれば、上記活性化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗感染剤、胃腸薬剤、生物学的薬剤および免疫学的薬剤、皮膚用薬剤、眼用薬剤および耳用薬剤、診断用補助剤、栄養素および栄養剤、血液学的薬剤、内分泌薬剤および代謝性薬剤、心血管薬剤、腎臓薬剤および尿生殖器薬剤、呼吸器薬剤、中枢神経系薬剤を含む群から選択される。
【0017】
本発明のある局面によれば、リポソーム懸濁液であって、この懸濁液が以下:1つ以上の脂質であって、凝集体としてのこの脂質が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃〜100℃の間の融解温度を有し、そして少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、1つ以上の脂質、を含む、リポソーム懸濁液、が提供される。このことによって、上記課題が解決される。
【0018】
1つの実施形態によれば、上記PEG鎖が、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。
【0019】
1つの実施形態によれば、上記懸濁液が、単一の脂質を含む。
【0020】
1つの実施形態によれば、上記脂質が、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含む。
【0021】
1つの実施形態によれば、上記懸濁液が活性化合物をさらに含む。
【0022】
1つの実施形態によれば、上記活性化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗感染剤、胃腸薬剤、生物学的薬剤および免疫学的薬剤、皮膚用薬剤、眼科薬剤および耳科薬剤、診断用補助剤、栄養素および栄養剤、血液学的薬剤、内分泌薬剤および代謝性薬剤、心血管薬剤、腎臓薬剤および尿生殖器薬剤、呼吸器薬剤、中枢神経系薬剤を含む群から選択される。
【0023】
本発明の別の局面によれば、リポソーム懸濁液を形成するために水溶液と合わせるための組成物であって、この組成物が、以下:1つ以上の脂質であって、凝集体としてのこの脂質が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃〜100℃の間の融解温度を有し、そして少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、1つ以上の脂質、を含む、組成物、が提供される。このことによって上記課題が解決される。
【0024】
1つの実施形態によれば、上記PEG鎖が、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。
【0025】
1つの実施形態によれば、上記組成物が、単一の脂質を含む。
【0026】
1つの実施形態によれば、上記脂質が、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含む。
【0027】
1つの実施形態によれば、上記組成物が、活性化合物をさらに含む。
【0028】
1つの実施形態によれば、上記活性化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗感染剤、胃腸薬剤、生物学的薬剤および免疫学的薬剤、皮膚用薬剤、眼用薬剤および耳用薬剤、診断用補助剤、栄養素および栄養剤、血液学的薬剤、内分泌薬剤および代謝性薬剤、心血管薬剤、腎臓薬剤および尿生殖器薬剤、呼吸器薬剤、中枢神経系薬剤を含む群から選択される。
【0029】
1つの実施形態によれば、上記組成物が密閉された容器内にあり、上記容器がまた不活性ガスを含む。
【0030】
本発明のさらに別の局面によれば、治療用化合物を静脈内投与する方法であって、この方法が以下:1つ以上の脂質を含む組成物を提供する工程であって、凝集体としてのこの脂質が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃〜100℃の間の融解温度を有し、そして少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、工程;活性化合物を提供する工程;水溶液を提供する工程;この組成物、この化合物およびこの溶液を合わせて、リポソーム懸濁液を形成する工程;およびこのリポソーム懸濁液を静脈内に投与する工程、を包含する、方法、が提供される。このことにより上記課題が解決される。
【0031】
1つの実施形態によれば、上記方法は、上記リポソーム懸濁液に運動エネルギーを提供する工程をさらに包含する。
【0032】
1つの実施形態によれば、上記組成物を提供する工程が、不活性ガスを含む密閉された容器内に上記組成物を提供する工程、を包含する。
【0033】
1つの実施形態によれば、上記PEG鎖が、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。
【0034】
1つの実施形態によれば、上記組成物が、単一の脂質を含む。
【0035】
1つの実施形態によれば、上記脂質が、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含む。
【0036】
1つの実施形態によれば、上記活性化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗感染剤、胃腸薬剤、生物学的薬剤および免疫学的薬剤、皮膚用薬剤、眼用薬剤および耳用薬剤、診断用補助剤、栄養素および栄養剤、血液学的薬剤、内分泌薬剤および代謝性薬剤、心血管薬剤、腎臓薬剤および尿生殖器薬剤、呼吸器薬剤、中枢神経系薬剤を含む群から選択される。
【0037】
本発明のなおさらに別の局面によれば、活性化合物を可溶化する方法であって、この方法が以下:1つ以上の脂質を含む組成物を提供する工程であって、凝集体としてのこの脂質が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃〜100℃の間の融解温度を有し、そして少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、工程;この活性化合物を提供する工程;水溶液を提供する工程;およびこの活性化合物、この脂質およびこの水溶液を合わせて、リポソーム懸濁液を形成する工程;を包含する、方法、が提供される。このことにより、上記課題が達成される。
【0038】
1つの実施形態によれば、上記方法が、運動エネルギーを上記リポソーム懸濁液に提供する工程をさらに包含する。
【0039】
1つの実施形態によれば、上記組成物を提供する工程が、不活性ガスを含む密閉された容器内に上記組成物を提供する工程を包含する。
【0040】
1つの実施形態によれば、上記PEG鎖が、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。
【0041】
1つの実施形態によれば、上記組成物が単一の脂質を含む。
【0042】
1つの実施形態によれば、上記脂質が、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含む。
【0043】
1つの実施形態によれば、上記活性化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗感染剤、胃腸薬剤、生物学的薬剤および免疫学的薬剤、皮膚用薬剤、眼用薬剤および耳用薬剤、診断用補助剤、栄養素および栄養剤、血液学的薬剤、内分泌薬剤および代謝性薬剤、心血管薬剤、腎臓薬剤および尿生殖器薬剤、呼吸器薬剤、中枢神経系薬剤を含む群から選択される。
【0044】
本発明の他の局面によれば、治療用化合物を経口投与する方法であって、この方法が以下:1つ以上の脂質を含む組成物を提供する工程であって、凝集体としてのこの脂質が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃〜100℃の間の融解温度を有し、そして少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、工程;活性化合物を提供する工程;水溶液を提供する工程;この組成物、この化合物およびこの溶液を合わせて、リポソーム懸濁液を形成する工程;およびツーピース硬質ゼラチンカプセル、軟質ゼラチンカプセル、またはドロップを含む群から選択される形態で、このリポソーム懸濁液を経口投与する工程、を包含する、方法、が提供される。このことにより、上記課題が達成される。
【0045】
本発明のさらに他の局面によれば、治療用化合物を経口投与または舌下投与する方法であって、この方法が以下:1つ以上の脂質を含む組成物を提供する工程であって、凝集体としてのこの脂質が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃〜100℃の間の融解温度を有し、そして少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、工程;活性化合物を提供する工程;水溶液を提供する工程;この組成物、この化合物および上記溶液を合わせて、リポソーム懸濁液を形成する工程;および上記リポソーム懸濁液を口内に噴霧することによってこのリポソーム懸濁液を経口投与する工程、を包含する、方法、が提供される。このことによって、上記課題が解決される。
【0046】
本発明のなおさらに他の局面によれば、治療用化合物を投与する方法であって、この方法が以下:1つ以上の脂質を含む組成物を提供する工程であって、凝集体としてのこの脂質が、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃〜100℃の間の融解温度を有し、そして少なくとも1つの脂質がポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、工程;活性化合物を提供する工程;水溶液を提供する工程;この組成物、この化合物およびこの溶液を合わせて、リポソーム懸濁液を形成する工程;この組成物を、クリーム、ローション、およびゲルを含む群から選択された形態に組み込む工程;およびこのリポソーム懸濁液を投与する工程、を包含する、方法、が提供される。このことによって、上記課題が解決される。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、新しいリポソームを調製するための方法、リポソーム懸濁液が提供されることによって、現在のリポソーム処方に伴う、コロイド不安定性、スケールアップした滅菌における困難さ、および製造におけるバッチ間の可変性などの種々の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
添付の図面(これらは、本明細書に組み込まれ、そしてその一部を形成する)は、1つ以上の本発明の実施形態を例示し、そして詳細な説明と一緒になって、本発明の原理および実施を説明するように作用する。
【図1】図1は、脂質分子から作製されたリポソームの断面を示す図である。
【図2】図2は、極性のヘッド基および非極性の炭化水素鎖を有する脂質分子の空間充填図である。
【図3】図3は、脂質分子から作製されたミセルの断面を示す図である。
【図4】図4は、ヘッド基に比べて大きなテールを有する脂質分子から作製された構造の断面を示す図である。
【図5】図5は、PEG−12二オレイン酸グリセリルすなわちヘトキサメートGDO−12の分子構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(発明の実施の形態)
本発明の実施形態は、自己形成する、熱力学的に安定なリポソームおよびその応用の内容で、本明細書中に記載される。当業者は、以下の本発明の詳細な説明が例示のみであり、いかなる制限も意図しないことを理解する。本発明の他の実施形態は、本開示の利益を有するこのような当業者に容易に想致させる。ここで、添付の図面において例示される本発明の実施を、詳細に参照する。同じ参照指標を、図面および以下の詳細な説明を通して使用して、同じまたは類似の部分を参照する。
【0050】
明確さの目的で、本明細書に記載される実施の慣用的な特徴の全てが、示され、そして記載されるわけではない。もちろん、任意のこのような実際の実施の開発において、多くの実施−特定の決定(例えば、応用およびビジネスに関連した制限の応諾)が、開発者の特定の目的を達成するためになされなくてはならず、そして、これらの特定の目的が、個々の実施、および個々の開発者において異なることが理解される。さらに、このような開発努力は、複雑かつ時間を浪費し得るが、それにも関わらず、本開示の利益を有する当業者のための工学技術の慣用的な仕事であることが理解される。
【0051】
当業者は、本発明の以下の説明が、例示のみであり、いかなる様式にも制限しないことを理解する。本発明の他の実施形態は、本開示の利益を有するこのような当業者に容易に想致させる。
【0052】
全てでないとしても、ほとんどの公知のリポソーム懸濁液は、熱力学的に安定ではない。その代わり、公知の懸濁液中のリポソームは、それらの形成において使用されるエネルギーによってより高いエネルギー状態に、動力学的にトラップされる。エネルギーは、熱、超音波処理、押出しまたは均質化として、提供され得る。各高エネルギー状態は、その自由エネルギーを低下させようとするので、公知のリポソーム処方物は、リポソーム関連物質の凝集、融合、沈降および漏れの問題を経験する。それによって、これらの問題のいくつかを回避し得る熱力学的に安定なリポソーム処方物が所望される。
【0053】
本発明は、形成の温度において熱力学的に安定なリポソーム懸濁液を教示する。このような懸濁液の処方は、いくつかの基本的な特性を有する脂質の組成物を使用することによって達成される。第1に、脂質組成物は、リポソームの形成を可能にするパッキングパラメーターを有さなければならない。第2に、ヘッド基の一部分として、この脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)または懸濁液中のリポソームを立体的に安定化する類似の特性の任意のポリマーを含まなくてはならない。第3に、この脂質は、水溶液と混合された場合に、それが液体形態にあることを可能にする溶解温度を有さなくてはならない。
【0054】
所望の基本的な特性を有する脂質組成物を使用することによって、脂質および水溶液を混合する場合に、エネルギーをほとんどまたは全く付与する必要がなく、リポソームが形成される。水と混合される場合、系がその自然な低い自由エネルギー状態に落ち着くので、脂質分子は分散し、そして自己集合する。使用される脂質に依存して、最も低い自由エネルギー状態は、小さな単層ベシクル(SUV)リポソーム、多重層ベシクル(MLV)リポソーム、またはSUVとMLVとの組み合わせを含み得る。
【0055】
本発明の使用に適切な脂質組成物は、1つのタイプの脂質分子のみを含む組成物ならびに1つよりも多い脂質から作製される組成物を含み得る。当業者に理解されるように、両方のタイプの組成物が、列挙された基本的な特性に従って数量化され得る。
【0056】
1つの必要とされる基本的な特性は、適切なパッキングパラメーターを有することによってリポソームを形成する能力である。パッキングパラメーターは、所定の脂質組成物の相対的な尺度であり、そして脂質のヘッド基と脂質の炭化水素鎖との間のサイズ関係、電荷、および安定剤(例えば、コレステロール)の存在のような因子に依存する(Israelachvili,DD Lasic,Liposomes:From Physics to Applications,Elsevier 51頁,(1993))。
【0057】
脂質二分子層を形成するために、脂質のヘッド基および炭化水素鎖は、曲率半径がリポソームに生じるようにそれら自体を組織化しなければならない(図1を参照のこと)。炭化水素鎖が、ヘッド基と比較して小さすぎる場合、曲率半径はあまりに大きく、ミセルが生成される(図3を参照のこと)。炭化水素鎖が、ヘッド基に比較して大きすぎる場合、曲率半径は反対の符号になり、リポソームは形成し得ない(図4を参照のこと)。
【0058】
図1は、脂質分子から作製されるリポソームの断面を示す図である。リポソーム10は、脂質分子(例えば、12、14、16、18)から作製されて、水性空間20を囲む脂質二分子層を含む。
【0059】
図2は、極性ヘッド基および非極性炭化水素鎖を有する脂質分子の空間充填(space−filling)図である。脂質分子22は、親水性基24および疎水性テール26からなる。疎水性テール26は、2つの炭化水素鎖32、34を含み得る。その化学結合により脂質分子は可撓性であり得るが、ヘッド基は直径28の面積をほぼ満たし、一方テールは、直径30の面積を満たす。脂質分子は、二分子層に組織化されてリポソームを形成しなければならないので、テール直径に対するヘッド基の直径の比は、リポソーム形成が起こるべき場合には、大き過ぎも小さ過ぎもし得ない。
【0060】
図3は、脂質分子から作製されるミセルの断面を示す図である。ミセル36は、脂質分子(例えば、38、40)からなる。脂質分子のテール基はヘッド基と比較して小さい直径を有するので、脂質分子は小さい曲率半径で組織化し、そして二分子層は形成し得ない。
【0061】
図4は、ヘッド基と比較して大きいテールを有する脂質分子から作製される構造の断面を示す図である。図4において、ヘッド基と比較して大きなテールを有する脂質(例えば、44)が、水溶液中で混合される場合に、構造42が生成するということが示され得る。また、ヘッド基とテールとの間のサイズ比が、二分子層形成を不可能にする。
【0062】
図1、3および4は、単一型の脂質分子を使用するパッキングパラメーターの基本原理を例示したが、同じ原理が脂質の混合物に当てはまるということが理解される。例えば、小さ過ぎて単一種としてリポソームを形成し得ない炭化水素鎖を有する脂質は、コレステロールと混合されて、適切なパッキングパラメーターを有する組成物を生じ得る。別の例として、脂質自身で適切なパッキングパラメーターを有する脂質は、それらの脂質自身では適切なパッキングパラメーターを有していない他の脂質の限られた量を取り込むリポソームを形成し得る。単一の脂質および脂質の混合物の両方は、公知の方法により算出され得るパッキングパラメーターを有する(参考文献)。一般に、リポソーム形成を可能にするリポソーム組成物は、約0.84と0.88との間のPaおよび約0.88と0.93との間のPvというパッキングパラメーター測定値を有する。
【0063】
aは、表面に対するパッキングパラメーターであり、Pvは、体積に対するパッキングパラメーターである(DD Lasic,Liposomes:From Physics to Applications,Elsevier,51頁、1993)。これらのパラメーターは、等式HCa/Ta≡PaおよびHCv/Tv≡Pvから導かれ、ここでHCaは、炭化水素鎖の面積であり、Taは、分子の総面積であり、HCvは、炭化水素鎖の体積であり、そしてTvは、分子全体の体積である。
【0064】
脂質の理想的な混合が個々の特性の相加平均を生じるので、パッキングパラメーターは、脂質の混合物について計算され得る。例えば、二成分混合物のHCa/Ta≡Paは、理想的混合の場合に:
<Pa>=X11+X22,X1+X2=1
と表され得る。
【0065】
より一般的には、所定の混合物を構成するi種の脂質の場合には:
<Pa>=ΣiiiおよびΣii=1
と表され得、ここでXiは、混合物中の脂質のモル分率であり、Piは、その脂質の表面に対するパッキングパラメーターである。
【0066】
図5は、PEG−12二オレイン酸グリセリルすなわちヘトキサメート(Hetoxamate)GDO−12の分子構造を示す図であり、これは、グリセロール骨格46、PEG鎖48、および2つの炭化水素鎖を有するテール基50を含む。骨格46およびPEG鎖48は、共にこの分子のヘッド基を構成する。PEG−12 GDOは、1つの理由としてそのヘッド基がそのテール基との関係で適切なサイズを有するので、本発明における使用のために好ましい脂質分子である。
【0067】
2つの一般的な因子が、脂質分子中のヘッド基のサイズに影響を及ぼす。1つはヘッド基の実際の物理的サイズである。例えば、より長いPEG鎖の使用は、ヘッド基をより長くする。もう1つは、ヘッド基に関連する電荷である。例えば、PEG鎖が、ホスホジエステル結合により骨格に結合される場合、ホスフェートは、ヘッド基に電荷を与え、効果的にそのサイズを増大させる。本発明において、ヘッド基のサイズを変化させる一般的な手段が、PEG鎖の長さを変化させることであるように、非リン脂質が好ましい。しかし、ヘッド基の有効なサイズは、他の方法、例えばグリセロール以外の異なる骨格を使用するか、またはグリセロール骨格とPEG鎖との間にホスフェートのようなリンカーを加えることにより、変化され得るということを、当業者は認識する。
【0068】
脂質のテールのサイズは、主として炭化水素鎖の長さおよび脂質鎖における飽和度に影響される。単鎖脂質は2つの鎖を有する脂質で構成されるリポソーム中に取り込まれ得るが、一般的にリポソームを形成しない。同様に、1つの長い鎖および1つの短い鎖を有する脂質は、比較的小さいテールサイズを有し得る。このような脂質は、特にコレステロールのようなステロールが二分子層を安定化させるために使用される場合に、本発明におけるリポソームを形成するために使用され得るということを、当業者は理解する。
【0069】
本発明における使用に適した脂質組成物の第2の基本的特性は、少なくとも1つの脂質のヘッド基がPEG鎖を含まなければならないということである。PEGは、リポソームの外部表面に立体的バリアを作製することにより、リポソームを安定化する。リポソーム表面上のPEGの異なる濃度および異なる鎖の長さが、リポソームを安定化するために使用され得るということを当業者は理解するが、好ましくは、PEG鎖は、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。
【0070】
第3の基本的な脂質特性は、この脂質組成物が、水溶液と混合される場合に液体形態であることを可能にする融解温度を有していなければならないということである。一般的に、これは、脂質組成物が約0℃と100℃との間の相転移温度を有するべきであるということを意味する。パッキングパラメーターのように、融解温度は、脂質の混合物について決定され得る。
【0071】
曲げ弾性係数は、脂質の融点に関連する。脂質を十分に可撓性にして大きなエネルギーの投入の必要なしに水溶液中でリポソームを形成させることを可能にする曲げ弾性係数を有する脂質が、本発明において一般的に好ましい。曲げ弾性係数が大き過ぎる場合、脂質は硬過ぎて水溶液中で自発的にリポソームを形成できない。好ましくは、曲げ弾性係数は、約0ktと15ktとの間である。より好ましくは、曲げ弾性係数は、約1ktと10ktとの間である。曲げ弾性係数は、主として骨格により決定される。グリセロールは、本発明のために理想的な骨格を提供する。
【0072】
表1は、本発明への適性について単一の脂質として試験された多くの脂質を示す。脂質を、水溶液中で2重量パーセントで試験した。GDLは二ラウリン酸グリセロールを意味し、GDOは二オレイン酸グリセロールを意味し、GDMは二ミリスチン酸グリセロールを意味し、GDPは、二パルミチン酸グリセロールを意味し、そしてGDSは二ステアリン酸グリセロールを意味することに留意すること。各々の脂質について「PEG」の後ろの数字は、PEG鎖中のC24Oサブユニットの数を示す。不飽和二オレイン酸脂質は、飽和二ミリスチン酸脂質と同様のパッキングパラメーターを有する。
【0073】
【表1】

この表は、必要とされる特性を有する脂質が、水溶液中で混合された場合に、自発的にリポソームを形成するということを示す。例えば、PEG−12 GDMは、試験された全ての温度で自発的にリポソームを形成する。なぜならばPEG−12 GDMは、必要とされる範囲内のパッキングパラメーターを有していることに加えて、これらの温度で液体であり、かつPEGを含むためである。同様に、PEG−12 GDO(これは、PEG−12 GDMとほとんど同一の特性を共有する)は、試験された全ての温度で自発的にリポソームを形成する。
【0074】
PEG−12 GDSは、脂質がリポソーム形成の温度において液体であるという必要条件の1つの例を示す。この脂質は必要とされるパッキングパラメーターを有し、かつPEGを含むが、脂質が液体形態で存在するために十分高いリポソーム形成の温度まで自発的にリポソームを形成しない。
【0075】
GDMの系列の脂質は、適切なパッキングパラメーターの重要性を例示する。これらの脂質は全てPEGを含み、かつ60℃で液体形態であるが、PEG−12 GDMのみが自発的なリポソーム形成を可能にする適切なパッキングパラメーターを有する。60℃におけるGDS脂質系列は同じ点を例示する。
【0076】
当業者は、必要とされる特性の知識を用いることによって、本発明を実施して、自発的にリポソームを形成する脂質組成物を予測および作製し得る。例えは、ミセルを形成する特定のPEG脂質は、パッキングパラメーターおよび融点へのコレステロールの効果のために、コレステロールのようなステロールとの混合物でリポソームを形成し得る。例えば、PEG−45 GDSおよびコレステロールの混合物は、リポソームを形成する。同様に、ヘッド基のサイズは、例えば、PEG鎖のサイズを変えることにより、または脂質組成物中のPEG含有脂質の濃度を変えることにより変化され、パッキングパラメーターに影響を及ぼし得る。
【0077】
リポソームは形成の温度において自発的に形成するが、形成後にリポソームを冷却することにより、拘束運動状態(trapped kinetic state)のリポソームを生じることが理解される。このような冷却の際のリポソーム構造の歪みを最小にするために、リポソーム形成の前にコレステロールのようなステロールが、脂質と混合され得る。コレステロールがPEG−12 GDO中に約10重量パーセントまで溶解され得るということが観測された。
【0078】
(利用性)
本発明は、種々の状況において有用であり、かついくつかの異なる様式で従来技術を超える利点を提供する。リポソームの調製、再生可能性、コロイド安定性、滅菌、および貯蔵に伴う問題は、本発明を使用することにより低減され得る。
【0079】
本発明のリポソームは自己形成(self−forming)するので、リポソーム調製は、脂質を水溶液と混合する工程のみを必要とする。一般に、リポソーム形成は、スケール依存性である。本発明の場合には、試験バッチから大バッチへのスケールアップは簡単である。
【0080】
本発明のリポソームは、水溶液中で脂質が存在し得る最も低いエネルギー状態で存在するので、リポソーム形成の再生可能性は問題無い。規定された脂質、脂質混合物、または脂質/化合物混合物は、同じ水溶液と混合される場合、毎回同様のリポソームを形成する。しかし、臨界濃度(大部分の脂質について約20重量/体積%)を超えると、非リポソーム構造が水溶液中で形成し始めることに留意するべきである。
【0081】
凝集および融合が、熱力学的拘束状態においてリポソームで起こり得る。本発明のリポソームは最低エネルギー状態にあるので、これらのリポソームは凝集および融合しない。
【0082】
本発明のリポソームは、小さいので、これらは滅菌濾過され得る。また、脂質はリポソーム形成の前に熱滅菌され得る。
【0083】
任意のリポソーム分散では、これらのリポソームは適切な凍結防止剤の存在下で凍結乾燥され得る。液体形態においてさえ、熱力学的に安定な系であるため、リポソームはコロイド状で安定である。また、自己形成性質のために、リポソームを保管する必要は全く無い。代わりに、脂質は保管され得、そして必要な場合にリポソームに構成される。
【0084】
本発明のリポソームの適用としては、治療剤(therapeutics)および他の化合物の送達、化粧品における使用、および薬物送達スクリーニングにおける使用が挙げられる。
【0085】
リポソームは、水性空間、二重層中の疎水性領域、および(例えば、PEG鎖または骨格への)共有結合のための部位を含むので、多くの型の化合物は、リポソームによってカプセル化され得る。このような化合物は、親水性から疎水性にわたる化合物(多くの不溶性化合物を含む)を含む。これらのリポソームは、現在入手可能なCremophor(登録商標)およびSolutol(登録商標)の代用になり得る。
【0086】
静脈内薬物の送達のために、この薬物は、脂質と共に溶解されるかまたは脂質と共に混合されて、密封容器中に提供され得る。この容器はまた、薬物および脂質の分解を減少させるために、不活性ガスを含み得る。投与の前に、水溶液がこの容器に加えられ、それによってカプセル化された薬物を有するリポソームを形成する。このような投与の様式に適する薬物としては、以下が挙げられる:タンパク質、ペプチド、核酸、抗悪性腫瘍薬、抗炎症薬、抗感染剤、胃腸薬剤、生物学的薬剤および免疫学的薬剤、皮膚科学的薬剤、眼用薬剤および耳用薬剤、診断用補助剤、栄養素および栄養剤、血液学的薬剤、内分泌薬剤および代謝性薬剤、心血管薬剤、腎臓薬剤および尿生殖器薬剤、呼吸器薬剤、中枢神経系薬剤。
【0087】
1つの局面においては、本発明は、リポソームを調製する方法を包含する。この方法は、水溶液を提供する工程;脂質溶液を提供する工程(ここでこの溶液は、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPvを有し、そしてこの溶液中の少なくとも1つの脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む);および脂質溶液と水溶液とを合わせる工程、を包含する。PEG鎖は、好ましくは、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。運動エネルギー(例えば、振とうまたはボルテックス)は、脂質溶液および水溶液に提供され得る。この脂質溶液は、単一の脂質を含み得る。脂質は、単独で、または混合物中の脂質の1つとしてジオレオールグリセロール−PEG−12を含み得る。この方法は、さらに、活性化合物を提供する工程;および活性化合物を脂質溶液および水溶液と合わせる工程を包含し得る。
【0088】
活性化合物は、以下を含む群から選択され得る:タンパク質、ペプチド、核酸、抗悪性腫瘍薬、抗炎症薬、抗感染剤、胃腸薬剤、生物学的薬剤および免疫学的薬剤、皮膚科学的薬剤、眼用薬および耳用薬、診断用補助剤、栄養素および栄養剤、血液学的薬剤、内分泌薬剤および代謝性薬剤、心血管薬剤、腎臓薬剤および尿生殖器薬剤、呼吸器薬剤、中枢神経系薬剤。
【0089】
別の局面においては、本発明は、リポソーム懸濁液を包含する。この懸濁液は、1以上の脂質を含み、ここでこの脂質は、凝集体として、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃と100℃との間の融解温度を有し;そして少なくとも1つの脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む。このPEG鎖は、好ましくは、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。この懸濁液は、単一の脂質を含む得る。この脂質は、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含み得る。この懸濁液は、さらに活性化合物を含み得、この活性化合物は、上記の群から選択され得る。
【0090】
別の局面においては、本発明は、水溶液と組み合わせてリポソーム懸濁液を形成するための組成物を包含する。この組成物は、1以上の脂質を含み、ここでこの脂質は、凝集体として、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃と100℃との間の融解温度を有し;少なくとも1つの脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む。PEG鎖は、好ましくは、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。この組成物は、単一の脂質を含み得る。この組成物は、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含み得る。この組成物は、さらに、上記の群から選択される活性化合物を含み得る。この組成物は、密封容器中で提供され得、この容器はまた、酸化的分解を防ぐために、不活性ガスを含む。
【0091】
別の局面においては、本発明は、治療化合物を静脈内投与する方法を包含する。この方法は、1以上の脂質を含む組成物を提供する工程(ここで、この脂質は、凝集体として、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃と100℃との間の融解温度を有し;少なくとも1つの脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む);活性化合物を提供する工程;水溶液を提供する工程;組成物、化合物および溶液を組み合わせてリポソーム懸濁液を形成する工程;およびリポソーム懸濁液を静脈内に投与する工程を包含する。この方法はさらに、リポソーム懸濁液に運動エネルギーを提供する工程を包含し得る。この方法はまた、この組成物を、不活性ガスを含む密封容器中に提供する工程を包含し得る。PEG鎖は、好ましくは、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。組成物は、単一の脂質を含み得る。脂質は、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含み得る。活性化合物は、上記の群から選択され得る。
【0092】
別の局面においては、本発明は、活性化合物を可溶化する方法を包含する。この方法は、1以上の脂質を含む組成物を提供する工程(ここで、この脂質は、凝集体として、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃と100℃との間の融解温度を有し;少なくとも1つの脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む);活性化合物を提供する工程;水溶液を提供する工程;ならびに、活性化合物、脂質および水溶液を組み合わせてリポソーム懸濁液を形成する工程を包含する。この方法は、さらに、運動エネルギーをリポソーム懸濁液に提供する工程を包含し得る。この方法は、組成物を、不活性ガスを含む密封容器中に提供する工程を包含し得る。PEG鎖は、好ましくは、約300ダルトンと5000ダルトンとの間の分子量を有する。組成物は、単一の脂質を含み得る。脂質は、ジオレオールグリセロール−PEG−12を含み得る。活性化合物は、上記の群から選択され得る。
【0093】
別の局面においては、本発明は、治療化合物を経口投与する方法を包含する。この方法は、1以上の脂質を含む組成物を提供する工程(ここで、この脂質は、凝集体として、約0.84と0.88との間のPa、約0.88と0.93との間のPv、および約0℃と100℃との間の融解温度を有し;少なくとも1つの脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む);活性化合物を提供する工程;水溶液を提供する工程;組成物、化合物および溶液を組み合わせてリポソーム懸濁液を形成する工程;ならびに、リポソーム懸濁液を、ツーピース硬質ゼラチンカプセル、軟質ゼラチンカプセル、またはドロップを含む群から選択される形態で、経口投与する工程を包含する。
【0094】
この組成物は、局所投与、口内投与、膣内投与または直腸内投与され得る。
【0095】
本発明の実施形態および適用を示し、そして記載してきたが、本明細書中の本発明の概念から逸脱することなく、上記よりもさらに多くの変更が可能であることは、本開示の利益を有する当業者にとって明らかである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神における限定以外には限定されない。
【実施例】
【0096】
(実施例1:自発的リポソーム)
単一の脂質を、水溶液と混合したときに自発的にリポソームを形成するそれらの能力について試験した。PEG−12GDOは、Global7(New Jersey)から入手した。他のすべての脂質は、実験のために合成した。各実験について、水および脂質を、適切な温度で別々に平衡化した。2重量%の脂質を水溶液に加え、この水溶液を、光学顕微鏡、極低温TEM、凍結割断TEM、またはホットステージ顕微鏡によって、リポソームの存在について分析した。この実験の結果を、上記の表1に示す。
【0097】
(実施例2:コレステロールを有する多重膜リポソームの形成)
コレステロール(10重量%)を、PEG−12二オレイン酸グリセリルに加え、約60℃〜70℃で15〜20分間加熱した。水(室温)を加熱した脂質溶液に加えた。この混合物を、一晩静置した。100倍および600倍での、偏光を用いる光学顕微鏡下での調製の試験は、多重膜リポソームが20nm〜40nmの範囲の大きさであることを示した。コレステロールの結晶は観察されなかった。
【0098】
(実施例3:治療化合物の静脈内投与のための自発的リポソーム)
(成分) (濃度(重量%))
メトトレキセート 5
PEG−12GDO 10
脱イオン水 85
メトトレキセート(Sigma)を、PEG−12二オレイン酸グリセリルに溶解し、約5分間穏やかに混合した。得られた混合物は、透明な溶液であった。脱イオン水を、この溶液にゆっくり加え、穏やかに攪拌した。得られた混合物は、黄色の不透明な溶液であった。この調製物を、偏光を用いる光学顕微鏡で試験し、リポソームの懸濁液を示した。
【0099】
(実施例4:治療化合物の静脈内投与のため、および薬物可溶化ビヒクルとしての自発的リポソーム)
(成分) (濃度(重量%))
シクロスポリンA 0.77
PEG−12GDO 4.30
脱イオン水 95.23
シクロスポリンA(Sigma 49H4066)を、10分間ボルテックスおよび超音波処理することにより、PEG−12二オレイン酸グリセリルと混合した。水を加え、穏やかに攪拌した。600倍の光学顕微鏡での試験は、多重膜リポソームおよびシクロスポリンAの結晶を示した。
【0100】
(実施例5:皮膚科学のための活性化合物を有する自発的リポソーム)
(成分) (濃度(重量))
PEG−12GDO 18g
二プロピオン酸ベタメタゾン 50mg
コレステロール 100mg
Uniphen−23(登録商標) 1.5mg
水 80.35g
秤量した量のPEG−12二オレイン酸グリセリル、二プロピオン酸ベタメタゾンおよびコレステロールを合わせ、攪拌しながら50℃に加熱した。Uniphen−23(登録商標)および水を合わせ、50℃に加熱した。穏やかに攪拌しながら、混合物が温度に達したときに混合物は混ざり合った。混合物を、攪拌しながら室温まで冷却した。100倍および600倍での光学顕微鏡による試験は、多重膜リポソームの懸濁液を示した。
【0101】
(実施例6:局所麻酔のための活性化合物を有する自発的リポソーム)
(成分) (濃度)
テトラカイン 2g
PEG−12GDO 20g
Uniphen−23(登録商標) 1.5g
水 76.5g
テトラカイン、PEG−12二オレイン酸グリセリル、およびUniphen−23(登録商標)を共に混合し、攪拌しながら40℃に加熱した。水を40℃に加熱し、穏やかに攪拌しながらテトラカイン溶液に加えた。混合物を室温まで冷却した。電子顕微鏡による試験は、LUVおよびMLVを示した。
【0102】
(実施例7:静脈内処方物および局所的処方物のための自発的リポソーム)
トレチノイン(全トランスレチノイン酸)(6mg)を、500μlのPEG−12二オレイン酸グリセリルに溶解した。完全に溶解した。蒸留水(4.5ml)をこの混合物に加え、穏やかに混合した。これは、1mg/mlの濃度を生じた。光学顕微鏡による試験は、100nm〜200nmの範囲の大きさの多重膜リポソームを示した。この溶液を、クリーム剤形、ゲル剤形またはローション剤投薬形態に容易に組み込み得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載のリポソームを調製する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−1318(P2010−1318A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234659(P2009−234659)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【分割の表示】特願2001−255238(P2001−255238)の分割
【原出願日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【出願人】(500107304)バイオゾーン ラボラトリーズ,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】