説明

自己潤滑性有機シリコーンゴム材料、その製造方法、及び自己潤滑性有機シリコーンゴム材料で製造される製品

【課題】様々なガラスクリーニング具、特に自動車のフロントガラスワイパーの製造に利用できる自己潤滑性有機シリコーンゴム材料を提供すること。
【解決手段】有機シリコーンゴム、自己潤滑性添加剤、充填剤及び加硫剤並びにオプションでの剥離剤と顔料を含ん成る自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。前記自己潤滑性添加剤は、グラファイト、フッ素含有化合物、窒化ホウ素、ジメチコーンオイル、メチル水素含有シリコーンオイル、エチルシリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル、ステアリン酸塩並びにそれら混合物から成る群から選択される。前記充填剤は、水晶微粉末、カオリン及びそれらの混合物から選択される。前記加硫剤は過酸化ベンゾイルが好ましい。
【効果】優れた自己潤滑性と製造容易性を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機シリコーンゴム材料に関し、特に自己潤滑性固形添加剤を含有した自己潤滑性有機シリコーンゴム材料に関する。本発明はそのようなシリコーンゴム材料の製造方法と、自動車のフロントガラスワイパーのごときその利用法にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスワイパーは雨中や雪中で車を運転する際にフロントガラスの視界を改善させることができる。通常のワイパーブレードは天然ゴムで提供されるが、劣化が激しく、効果が徐々に薄れてくる。加えて、ワイパーには“跳ね現象”が発生し、不快音を発生させることがある。
【0003】
それら諸問題を解消させるべく多くの試みが、特許文献1あるいは特許文献2においてなされている。例えば、ゴムブレードに種々なコーティング剤を塗布し、ブレードとガラスとの接触面を向上させている。天然ゴムをシリコーンゴムに置換する試みもなされている。なぜなら、シリコーンゴムは耐久性に優れ、劣化を効果的に防止するからである。しかし、シリコーンゴムとガラスとの間には大きな摩擦力が発生し、その利用は限定的である。
【特許文献1】台湾特許第412487号公報
【特許文献2】国際公開公報03/050191号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、シリコーンゴムとガラスとの間の大きな摩擦の弱点を克服すべくフッ素含有化合物とガラス微粒子とが添加されたシリコーンゴム製のシリコーンゴムスクリーン(ガラス表面)ワイパーを開示する。しかし、ガラス微粒子の添加は混合を困難とし、ガラス微粒子とシリコーンゴムとの結合は困難である。加えて、ガラス微粒子は破損することがあり、ワイパーの安全性能を損ないかねない。
【0005】
特許文献2は、低摩擦ワイパーを開示する。このワイパーの素材にはメチルビニルシロキサン樹脂、充填剤及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の摩擦低減添加剤が含まれる。PTFEの添加で摩擦は減少するが、材料の可塑性が増強され、成型が困難または不可能になる。
【0006】
本発明の発明者は自己潤滑性有機シリコーンゴム材料が、有機シリコーンゴムと自己潤滑性固形添加剤とを混合し、その他の補助剤を同時に混合することで提供されることを発見した。そのようなシリコーンゴム材料は優れた自己潤滑特性と製造容易性とを提供し、従来の弱点を克服し、多様な利用法を提供する。
【0007】
よって、本発明の第1目的は、自己潤滑特性を有した有機シリコーンゴム材料の提供である。
【0008】
本発明の別目的はそのようなシリコーンゴム材料の製造方法の提供である。
【0009】
本発明のさらに別な目的はそのような自己潤滑性有機シリコーンゴム材料で製造される製品の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は有機シリコーンゴム、自己潤滑性添加剤、充填剤及び加硫剤、並びにオプションでの剥離剤や顔料等を含んで成る自己潤滑性有機シリコーンゴム材料を提供する。
【0011】
本発明はそのような自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の製造法も提供する。この方法は有機シリコーンゴムと、自己潤滑性添加物と、充填剤とを混合し、続いて加硫剤を混入し、オプションで剥離剤や顔料等を入れる。本発明を以下で詳述する。
【0012】
すなわち、本発明に係る自己潤滑性有機シリコーンゴム材料は、有機シリコーンゴム、自己潤滑性添加剤、充填剤、加硫剤及びオプションでの剥離剤並びに顔料を含んで成るものである。
【0013】
上記の自己潤滑性添加剤は、グラファイト、フッ素含有化合物、窒化ホウ素、ジメチコーンオイル、メチル水素含有シリコーンオイル、エチルシリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル、ステアリン酸塩、並びにそれら混合物で成る群から選択されるものである。
【0014】
また、この自己潤滑性添加剤は、フッ化物処理グラファイト、フッ素樹脂粉末、メチル水素含有シリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム並びにそれら混合物で成る群から選択されるものである。さらに、この自己潤滑性添加剤はMD−188Aである。
【0015】
一方、充填剤は水晶微粉末、カオリン及びそれらの混合物から選択されるものであり、この充填剤は、自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の20から70重量%であることが好ましい。
【0016】
加硫剤は、過酸化ベンゾイルであり、有機シリコーンゴムは、自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の10から70重量%であることが好ましい。そして、自己潤滑性添加剤は、自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の2から30重量%であることが好適であり、さらに3から20重量%であることが好ましい。
【0017】
以上の本発明に係る自己潤滑性有機シリコーンゴム材料は、有機シリコーンゴムと、自己潤滑性添加剤と、充填剤とを混合し、続いて加硫剤と、オプションでの剥離剤及び顔料を混入することによって製造するものである。
【0018】
この場合、
(1)有機シリコーンゴムと、自己潤滑性添加剤と、充填剤とを密閉式混合器に投入し、それらを混合し、得られた混合物を1から24時間寝かせるステップと、
(2)ステップ1で得られた混合物を開放型混合器に投入し、加硫剤と、剥離剤と、顔料とを加えて混合するステップと、
(3)ステップ2で得られた混合物を12時間以上寝かせるステップと、
をさらに含んでいることが好適である。
【0019】
以上の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料でガラスワイパーを製造すると、このガラスワイパーは、優れた自己潤滑特性と製造容易性とを提供し、従来の弱点を克服することができるものである。
有機シリコーンゴム:
本発明に適した有機シリコーンゴムに特別な規制はない。普通に利用されているジメチコーン樹脂、メチルビニルシロキサン樹脂、メチルスチリルシロキサン樹脂、メチルトリフルオロプロピルシロキサン樹脂等の有機シリコーンゴムが利用できる。この有機シリコーンゴムは単独であっても、複数種の混合物であってもよい。
【0020】
好適な有機シリコーンゴムは末端基がメチル、ビニルまたはそれらの組み合わせ物である。例えば、
Me3SiO(Me2SiO)nSiMe3
Me3SiO(Me2SiO)n(MeViSiO)mSiMe2R;
RMe2SiO(Me2SiO)n(MePhSiO)l(MeViSiO)mSiMe3
Me3SiO[Me(CF3CH2CH2)SiO]nSiMe3
である。ここで、Meはメチルであり、nとmとlは0以上の同一または異なる整数であり、Rはメチルまたはビニルであり、Viはビニルである。
【0021】
本発明の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の有機シリコーンゴム含有量は全重量の10〜70重量%であり、好適には30〜60重量%である。
自己潤滑性添加剤:
自己潤滑性添加物は有機シリコーンゴムに自己潤滑特性を与えるものであり、有機シリコーンゴムとガラスが接触して滑る際にシリコーンゴムとガラスとの摩擦を軽減し、及び/又は引っ掛かりを防止して騒音の発生を抑えるものである。
【0022】
本発明に適した自己潤滑性添加剤は、グラファイト、フッ素含有化合物、窒化ホウ素、ジメチコーン、メチル水素含有シリコーンオイル、エチルシリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル、ステアリン酸塩、それらの混合物で成る群から選択されるものである。特に好適な自己潤滑性添加剤はフッ素処理グラファイト、フッ素樹脂粉末、メチル水素含有シリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、それらの混合物から成る群から選択されるものである。
【0023】
望む自己潤滑性を提供するかぎり自己潤滑性添加剤の含有量は特に問わない。一般的に、その含有量は全体の2〜30重量%であり、好適には3〜20重量%である。
充填剤:
有機シリコーンゴムの物理特性を向上させる一般的に知られた充填剤は全て利用が可能である。本発明の好適充填剤には合成シリカ微粉末、天然水晶微粉末、珪藻土、カオリン等が含まれる。
【0024】
充填剤の含有量は自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の20から70重量%、好適には30から60重量%である。
加硫剤:
全ての一般的に知られた加硫剤が利用できる。好適な加硫剤には様々な有機過酸化物が含まれる。好適には本発明は過酸化ベンゾイルを利用する。一般的に、1から2重量%の加硫剤を必要とする。
剥離剤:
全ての良く知られた剥離剤が使用できる。剥離剤の含有量は適宜決定できる事項である。
顔料:
入手可能な種々な顔料で有機シリコーンゴムに添加できる顔料が望む色彩に合わせて利用できる。
【0025】
本発明の自己潤滑性有機シリコーンゴムは次のステップで製造できる。
【0026】
(1)有機シリコーンゴム、自己潤滑性添加剤及び充填剤を密閉式混合器に加え、混合する。
【0027】
(2)加硫剤と、オプションの剥離剤並びに顔料をステップ(1)の混合物に加える。
【0028】
(3)ステップ(2)の混合物を寝かせる。
【0029】
(4)ステップ(3)の混合物を製品化する。
【0030】
有機シリコーンゴム、自己潤滑性添加剤及び充填剤を密閉式混合器に入れて混合し、1から24時間寝かせて充填剤内に自己潤滑性添加剤を充分に分散させる。続いて、得られた混合物を開放型混合器に入れ、加硫剤や、オプションでの剥離剤及び顔料を加える。その混合物を12時間以上寝かせて加硫剤を均等に分散させる。
【0031】
本発明の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料を従来式の成型及び押し出し法で製品化できる。
【0032】
本発明の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料は、ガラスクリーニング器具や蠕動ポンプチューブ等の自己潤滑性材料の製造に利用できる。
【0033】
本発明の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料は車のフロントガラスワイパーに特に適している。本発明の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料で製造されたワイパーは優れた自己潤滑性、水滴拭い取り性能及びガラス表面クリーニング性能を有する。さらに、耐熱性、耐紫外線性及び耐オゾン性を有し、理想的な天候耐久性、防水性及び耐劣化性を有し、短期使い捨て形態ではなくする。通常のガラスワイパーと比べて本発明のワイパーは次の表の優れた点を有する。
【0034】
通常ワイパー 本発明ワイパー
耐久性 不良 良
水滴拭取性 普通 自己潤滑(円滑)性拭取り
跳性 普通 無
色彩 黒 選択可
【発明の効果】
【0035】
本発明は、有機シリコーンゴムと自己潤滑性固形添加剤とを混合し、その他の補助剤を同時に混合することで提供される自己潤滑性有機シリコーンゴム材料である。このようなシリコーンゴム材料は優れた自己潤滑特性と製造容易性とを提供し、従来の弱点を克服し、多様な利用法を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
一般的製造法:
特定量の有機シリコーンゴム、自己潤滑性添加剤及び充填剤を密封式混合器に入れて均質に混合し、24時間寝かせて自己潤滑性添加剤を充填剤内に分散させる。続いて混合物を開放型混合器に入れ、適量の加硫剤、剥離剤、及び顔料を加えて混合する。得られた混合物を24時間以上寝かせる。
【0037】
以下の表は本発明の実施例である。

実施例1 実施例2 実施例3
有機シリコーン QT−040U QT−060U QT−080U
ゴム 800g 850g 850g
自己潤滑性 MD−188A MD−188A MD−188A
添加剤 150g 70g 300g
充填剤 PD−30 30μ水晶 珪藻土
300g 粉末585g 520g
水晶微粉末 10μ水晶 PD−30
300g 粉末585g 520g
加硫剤 過酸化 過酸化 過酸化
ベンゾイル ベンゾイル ベンゾイル
20g 36g 40g
剥離剤 QA−850B QA−850B QA−850B
1.5g 2.1g 2.5g
顔料 黒1.5g ―― 青2.5g
QT−040U:ブリティッシュコンドルサイエンステクノロジー社製
QT−060U:ブリティッシュコンドルサイエンステクノロジー社製
QT−080U:ブリティッシュコンドルサイエンステクノロジー社製
MD−188A:台湾ジンゾン社のフッ素含有化合物とステアリン酸塩との混合物
QT−850B:ブリティッシュコンドルサイエンステクノロジー社製
PD−30:リヤングエレクトロニックサイエンステクノロジー社の30μか焼カオリン
自己潤滑性効果試験
上記実施例で製造された自己潤滑性有機シリコーンゴム材料は成型によって製品化された。1から2週間寝かせて放置した後に、製品の表面には拭った水分とグリース感触が少々残っていた。
【0038】
上記実施例は本発明の解説用であって、本発明を限定するものではない。本発明の技術範囲内でのそれらの変形や改良は可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機シリコーンゴム、自己潤滑性添加剤、充填剤、加硫剤及びオプションでの剥離剤並びに顔料を含んで成ることを特徴とする自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項2】
前記自己潤滑性添加剤は、グラファイト、フッ素含有化合物、窒化ホウ素、ジメチコーンオイル、メチル水素含有シリコーンオイル、エチルシリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル、ステアリン酸塩、並びにそれら混合物で成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項3】
前記自己潤滑性添加剤は、フッ化物処理グラファイト、フッ素樹脂粉末、メチル水素含有シリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム並びにそれら混合物で成る群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項4】
前記自己潤滑性添加剤はMD−188Aであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項5】
前記充填剤は水晶微粉末、カオリン及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項6】
前記充填剤はカオリンであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項7】
前記加硫剤は過酸化ベンゾイルであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項8】
前記有機シリコーンゴムは自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の10から70重量%であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項9】
前記自己潤滑性添加剤は自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の2から30重量%であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項10】
前記自己潤滑性添加剤は自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の3から20重量%であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項11】
前記充填剤は自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の20から70重量%であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料。
【請求項12】
有機シリコーンゴム、自己潤滑性添加剤、充填剤、加硫剤及びオプションでの剥離剤並びに顔料を含んで成る自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の製造方法であって、有機シリコーンゴムと、自己潤滑性添加剤と、充填剤とを混合し、続いて加硫剤と、オプションでの剥離剤及び顔料を混入することを特徴とする自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の製造法。
【請求項13】
請求項12記載の製造法について、
(1)有機シリコーンゴムと、自己潤滑性添加剤と、充填剤とを密閉式混合器に投入し、それらを混合し、得られた混合物を1から24時間寝かせるステップと、
(2)ステップ1で得られた混合物を開放型混合器に投入し、加硫剤と、剥離剤と、顔料とを加えて混合するステップと、
(3)ステップ2で得られた混合物を12時間以上寝かせるステップと、
をさらに含んで成ることを特徴とする自己潤滑性有機シリコーンゴム材料の製造法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の自己潤滑性有機シリコーンゴム材料で製造されるガラスワイパー。


【公開番号】特開2007−63518(P2007−63518A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255248(P2005−255248)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(505330398)サー ホールディングス インターナショナル リミテッド (4)
【Fターム(参考)】