説明

自己蛍光を低減させた多孔性ガラス基板

生物学的、生化学的または化学的反応を実施する際に支持体として使用する、多孔性無機性基板を提供する。着色剤を用いて基板の多孔性層に色を付けたところ、この多孔性基板の自己蛍光バックグラウンドは、従来から使用されている「白色」多孔性基板と比較して約15〜20%減少した。色を付けた多孔性層は、シグナルのノイズに対する比が向上したが、このことは、生物学的または化学的結合アッセイを行う場合の検出測定において重要である。多孔性層を官能化すると、プローブ分子を多孔性層の上部または内部に固定し、マイクロアレイを作成することができる。該マイクロアレイは、従来から用いられている非多孔性無機性基板よりもプローブ濃度および保持能力が高く、非着色多孔性基板に共通の現象である比較的高い自己蛍光およびその他の損害に妨げられることもない。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本発明は、2003年7月29日に受理された米国特許出願第10/629,444号「自己蛍光を低減させた多孔性ガラス基板(Porous Glass Substrates With Reduced Auto-Fluorescence)」の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生物学的または生化学的アッセイに使用される多孔性基板の少なくとも一部として使用されるガラス材料に関する。特に、本発明は、特定の光波長下において、自己蛍光のレベルの低下を示すような材料組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、固相マイクロアレイ技術の発展にはめざましいものがある。生物学、薬剤学、およびその他の研究分野においては、マイクロアレイは、多様な生物学的もしくは生化学的作用の測定に有効なハイスループット研究ツールであることが認識されている。マイクロアレイ様式は幅広い分野で受け入れられていることから、当面の間、重要な研究ツールとして使用されると考えられる。マイクロアレイ技術の適用範囲は、薬剤の発見および開発、診断アッセイ、ならびに生物学的研究などの分野に拡大していくものと思われる。
【0004】
生物学的または化学的なプローブ分子は、アッセイの多様な種類に応じて固体表面に固定することができる。例えば、高密度アレイは、薬剤研究者および遺伝子学者にとっては、遺伝子発現の情報を入手するなどの多様な結合アッセイにおいて極めて重要な手段になっている。核酸分析物を含むマイクロアレイを用いた一塩基多型(SNP)アッセイにおいて、遺伝子発現の変化をモニターすることができる。臨床および研究実験においては、乳癌、心臓病、アルツハイマー病などのような疾患に対する遺伝的リスクファクターを判断する手段として、DNA試験を用いることが増えている。同一基板上にDNAの多数の「マイクロドット」をプリントすることにより、多数のリスクファクターを同時にスクリーニングすることが可能であり、このときの基板としては、一般的には、多孔性の有機性膜、または平板非多孔性ガラススライドを用いて高密度アレイを形成している。一般的に、高密度アレイは、2,000〜50,000個のプローブを有し、約80,000または100,000個までのプローブを有することも可能あり、それらは単鎖DNAであり、既知および別異の配列が、予め定めたパターンで基板上に並べられている。
【0005】
選択された試験条件下において、核酸配列などの標的分子にアレイを接触させた後、スキャンデバイスを用いてアレイ上の各位置を調べ、相補的プローブに結合している標的の量を測定する。高密度アレイ上の各位置における、蛍光強度の基準に対する比から、特定の遺伝子に対する相対的ディファレンシャル発現が示される。DNAアレイを用いることにより、遺伝子の制御活性を研究することができ、このとき、特定の遺伝子はスイッチが入っている、または「促進制御されている」状態であり、他の遺伝子は止められた、または「抑制制御されている」状態である。例えば、正常な結腸細胞を腫瘍性の結腸細胞と比較することができ、それによって異常細胞内でどの遺伝子が発現しているか、あるいはしていないかを判断することができる。遺伝子の制御部位は、薬物治療の重要な標的である。
【0006】
DNAアレイの適正な実施には、2つの基本的因子が関与している:1)固定化したプローブ核酸配列の基板上での保持、および2)固定したプローブ配列への標的配列のハイブリダイゼーション(これは、タグ付けされた標的配列からの蛍光発光によって測定される)。DNAプローブ材料は、DNAハイブリダイゼーションアッセイにおいては常道である、洗浄、ブロック、ハイブリダイゼーションおよびリンスという一連の操作を通して、基板の表面上に保持されていなければならない。プローブDNA配列が過剰消失すると、蛍光シグナルのノイズに対する比が下がり、不確定もしくは誤った結果が導かれる。
【0007】
これまで、DNAアレイは、ナイロンまたはニトロセルロースなどの有機性微小多孔性膜上にプリントしていた。そのようなタイプの有機性微小多孔性膜上にプリントできるDNA溶液の密度には限界があるが、その理由は、DNA溶液は膜を通過して横にはじき出される傾向があり、従って、隣接位置間の混線および汚染が生じるからである。その他の材料としては、ガラス製の平板非孔性基板が用いられている(例えば、特許文献1を参照。該文献を参照として本明細書中に取り入れておく)。顕微鏡用スライドガラスなどのような非孔性平面固体基板を官能化層で被覆したものは、マイクロアレイ用の多様なプローブ分子の沈積またはプリントに適した表面である。
【0008】
しかしながら、有機性または非孔性無機性の基板は、多孔性基板と同程度の強度でプローブ分子を保持することができないので、不十分であることが明らかになった。先頃、研究者らは、マイクロアレイの分析に使用する特定の光波長または認識パラメーター下における被覆多孔性基板の検出能を向上させた。総表面積が増加したことにより、三次元多孔性基板は、従来から使用されていた平面二次元被覆スライドガラスよりも約10〜25倍の強度のシグナルを発することができた。典型的な多孔性基板は、微小多孔性もしくは非孔性であって、いずれの小孔も内部に形成されている基本基板、または、基本基板の表面に結合している多孔性層を有する。好ましくは、基本基板は適切なガラス製である。
【0009】
多孔性ガラス基板は高強度のシグナルを発することができるが、残念なことに、バックグラウンド自己蛍光またはノイズのレベルも上昇してしまい、このことは、全シグナルに対するノイズの比に関しては好ましくない。アッセイの検出段階においては、特定の光波長下における基板表面由来のバックグラウンド蛍光は、固定化されたプローブ分子に対する蛍光ラベルした結合対分子から放出されるシグナルを覆い隠す、または視覚的に「消して」しまう。基板中の自己蛍光レベルが高いことにより、蛍光のベースラインレベルを正確に判断することができなくなる。故に、アッセイの検出および分析が困難になる。
【0010】
着色剤の添加以外の方法で自己蛍光を低減させようとするこれまでの試みは不成功に終わっている。ひとつの例は、酸素不含中性雰囲気下、約705℃においてスライドガラスを焼成することによって多孔性ガラス基板の色を暗色化させることである。期待された効果は、焼成中に有機性バインダーが熱分解し、不完全酸化することにより、ガラスが黒化することであった。しかしながら、暗色化するよりも、自己蛍光の増加が観察された。第二の試みでは、予め焼成した2枚の多孔性ガラス基板を、水素−窒素雰囲気下、約720℃で60時間かけて再度焼成した。そのような熱処理により、還元可能なイオン(例えば、As、Sb、Pbなど)を含有する市販のガラスが暗色化された。得られたガラスの色は、不透明白色から半透明褐色に変化した。自己蛍光バックグラウンドシグナルは低下したが、残念なことに、多孔性構造も影響を受けていた。多孔性層ガラスが溶融し、多孔性を消失しており、故に、H2−N2−焼成スライドは、従来の二次元平板スライド表面とはわずかに異なる構造を有していた。
【特許文献1】米国特許第5,744,305号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術による弊害に妨げられることなく、多孔性基板中の自己蛍光または反射率の高さに関する問題を解決するものである。本発明に従えば、マイクロアレイ基板の本質的な自己蛍光のレベルを低減させる試みにおいて、ガラスフリット組成物を変形して反射率を低下させた。迷反射光を吸収および減弱させることを目的として、ガラス組成物中に着色剤イオンを取り入れたが、所望されるような蛍光シグナルの全体的な大幅な低減は生じなかった。コバルトまたはニッケル(II)の酸化物を用い、別々に、または、互いにもしくはその他の遷移金属種と組み合わせて多孔性ガラス組成物に添加することによってほのかな色が得られ、この色が散乱を起こすために反射率およびバックグラウンドシグナルが低下した。「白色」または色が付いていない多孔性スライドと比較すると、色の付いた多孔性基板におけるCy5およびCy3ラベルに対する真のシグナルは、いずれも少なくとも20〜25%低下していた。Cy5由来のバックグラウンドの低下は、マイクロアレイ分析におけるシグナル−ノイズ比に大きな影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ひとつの態様において、支持体、および該支持体の表面上の多孔性領域を有する多孔性基板に関する。多孔性領域は、主として無機材料から構成されており、多数のプローブ分子を固定化することができる表面を有する。多孔性領域はほのかに色が付いており、約400もしくは420nm〜約700もしくは720nmの波長範囲においては、非着色多孔性基板表面よりも、相対反射率および自己蛍光レベルが少なくとも約15%もしくは20%、好ましくは約50%低下している。色が付いた多孔性領域は、遷移金属イオンを含む着色構成成分を組成物中に含む。色が付いている多孔性領域の組成物中の基本的な含有重量%は、53〜67%のSiO2;3〜10%のAl2O3;12〜14%のB2O3;0〜5%のK2O;0〜2%のMgO;0.5〜3%のCaO;0〜3%のSrO;2〜7%のBaO;0〜2%のSb2O3、ならびに次のもののうちの少なくともひとつ(単独または組み合わせ)0.1〜9%のCo3O4;0.1〜10%のNiO;もしくは0〜10%のRxOy、このとき、Rは遷移金属であり、xおよびyはそれぞれ≧0である。遷移金属Rとしては、Fe、VまたはCuなどが挙げられる。より好ましくは、多孔性層は基本的に次のものを含む組成物である:55〜65%のSiO2;4〜9%のAl2O3;14〜21%のB2O3;1〜5%のK2O;0.1〜2%のMgO;1〜2.5%のCaO;0.5〜1.75%のSrO;3〜5%のBaO;0〜2%のSb2O3、ならびに次のもののうちの少なくともひとつ(単独または組み合わせ)0.1〜8%のCo3O4;0.1〜10%のNiO;0〜10%のRxOy、コバルトとニッケルの両方が存在することが好ましい。ガラス組成物は化学的および機械的に耐久性であり、熱膨張率(CTE)は約35〜44×10-7/℃、好ましくは38〜40×10-7/℃であり、典型的な非孔性ガラススライドまたは基板への確実な結合に適している。
【0013】
生物学的アッセイ用には、多数の生物学的または化学的プローブを用いて多孔性基板を調製する。プローブ種または分子は、色を付けた多孔性層の既定の位置上または内部に結合させる。既定の位置に存在する一組のプローブは、プローブマイクロスポットからなるマイクロアレイを成し、その密度は、少なくとも1マイクロスポット/cm2、好ましくは少なくとも10マイクロスポット/cm2、より好ましくは約20〜100マイクロスポット/cm2またはそれ以上である。
【0014】
本発明のさらなる特徴および長所については、以下の詳細な説明において明らかになるであろう。上述の概要および以下の詳細な説明ならびに実施例は、本発明の代表例を示したものであり、請求項に記載した本発明を理解するための概略を述べたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1.定義
本発明の詳細な記載に先立ち、本発明は、特定の組成物、反応試薬、反応段階または用具に限定される必要はなく、変化を持たせることができる。本明細書および請求項において使用されているように、単数形の「ひとつの(a、an)」および「それ(the)」には、特に明言していない限り、複数の指示対象を含む。本明細書において使用している専門用語は、特定の実施態様を記述することのみに用いられており、制限するためのものではない。本明細書において使用している全ての技術および科学用語は、本発明の属する分野の当業者において、従来から理解されている通常の意味を有しており、別の意味を定義するものではない。
【0016】
「生物学的分子」または「生体分子」とは、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質ドメイン、タンパク質、融合タンパク質、抗体、膜タンパク質脂質、脂質膜、細胞膜、細胞溶解物、オリゴ糖もしくは多糖類、またはレクチンなどを含む任意の生物学的存在物をさす。
【0017】
「バイオスポット」または「マイクロスポット」とは、基板表面上の別個もしくは限定された領域、位置、またはスポットをさし、生物学的または化学的材料の沈積物を含有している。
【0018】
「補体」または「相補的関係にあるもの」とは、分子の相互補足的または対応する部位をさす。例えば、受容体−リガンド対または相補的核酸配列などが挙げられ、相補的核酸配列においては、ワトソン−クリック塩基対(A/T、G/C、C/G、T/A)対応に従い、向かい合っている鎖上のヌクレオチドは、互いに正しく塩基対合している。
【0019】
本明細書において使用している「流体」または「流体フィルム」とは、気体、液体もしくは半固体などのような流動可能な材料または媒体をさす。
【0020】
本明細書において使用している「官能化」とは、固体基板を変形することにより、基板表面に複数の官能基を作出することをさす。本明細書において使用している「官能化された表面(官能化表面)」とは、変形されてその表面に複数の官能基を有する基板表面をさす。
【0021】
「ヌクオレシド」および「ヌクレオチド」とは、既知のプリンおよびピリミジン塩基のみならず、変形された複素環式塩基を有するその他の部位をも含む。そのような変形としては、プリン類もしくはピリミジン類またはその他の複素環式化合物のメチル化またはアシル化などが挙げられる。さらに、「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」という語には、従来から知られているリボースおよびデオキシリボース糖類のみならず、その他の糖類を有する部位も含まれる。また、変形ヌクレオシドまたはヌクレオチドには、糖部位を変形したものも含まれ、そのような場合には例えば、水酸基の1個もしくはそれ以上がハロゲン原子もしくは脂肪族基に置換されている、または、エーテル類、アミン類などに官能化されている。本明細書において使用しているように、「アミノ酸」という語は、天然に存在するL−、D−、および非キラル体のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)のみならず、変形アミノ酸、アミノ酸アナログ類、ならびに、従来からオリゴペプチド合成に使用されているその他の化合物(例えば、4−ニトロフェニルアラニン、イソグルタミン酸、イソグルタミン、ε−ニコチノイル−リジン、イソニペコチン酸、テトラヒドロイソキノリン酸、α−アミノイソブチル酸、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、4−アミノブチル酸など)をも含む。
【0022】
「プローブ」とは、天然または合成の分子をさし、B.フィミスター(Phimister)によって推奨される学術用語(Nature Genetics,1999,21巻,pp.1-60)に従えば、基板表面に固定されたものである。対応するマイクロスポットは「プローブマイクロスポット」と称され、これらのマイクロスポットは特定位置のアドレスが指定できるような様式で配置され、マイクロアレイを形成している。マイクロアレイを対象サンプルに接触させると、サンプル中の分子(「標的」)は、マイクロアレイ内の結合対(すなわち、プローブ)に選択的かつ特異的に結合する。マイクロスポットへの「標的」の結合は、「標的」分子の濃度、および特定のプローブマイクロスポットへの親和性によって規定された範囲で生じる。
【0023】
「受容体」とは、リガンドに対して親和性を有する分子をさす。受容体は、天然の分子または人工の分子のいずれも用いることができる。それらは、未変形の状態または他の種との凝集体の状態で使用することができる。本発明に従って利用可能な受容体の例としては、抗体、モノクローナル抗体、ならびに特定の抗原決定因子と反応する抗血清、薬剤または毒性分子、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質ドメイン、タンパク質、融合タンパク質、補因子、レクチン、オリゴ糖、多糖類、ウイルス、細胞、細胞膜、細胞膜受容体および細胞小器官などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。当該分野においては、受容体は抗リガンドと称される場合がある。2つの分子が細胞認識を介して結合してコンプレックスを形成した場合に、「リガンド−受容体対」が形成される。
【0024】
本明細書において使用している「サンプル」とは、材料または材料の混合物をさすが、一般的には、液体である必要はないが、1つもしくはそれ以上の目的の構成成分を含む。
【0025】
「基板(支持体)」、「マイクロアレイ基板(支持体)」または「基板(支持体)表面」とは、多孔性もしくは半多孔性の固体または半固体材料をさし、固定化されたプローブ分子に対して安定した支持体を形成することができる。基板表面は、多様な材料から選択することができる。例えば、生物学的材料(例えば、植物細胞壁など)、非生物学的有機性材料(例えば、シラン類、ポリリジン、ヒドロゲル類など)、無機性材料(例えば、ガラス、セラミックス、SiO2、金もしくはプラチナ、または、金もしくはプラチナ被膜など)、ポリマー材料(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリエステルなど)またはこれらの任意のものの組み合わせをスライド、平板、フィルム、粒子、ビーズもしくはスフェアなどの状態で用いることができる。好ましくは、基板表面は二次元かつ比較的平らであり、バイオスポットのプリントができるように十分に多孔性であるが、別の表面構造をとることもできる。例えば、隆起または陥没領域を有するように、基板を押し出し成形することができる。好ましくは、基板表面は、その上面に、少なくとも1種類の官能基または反応性基を有するが、そのような基としては、アミノ、カルボニル、ヒドロキシル、チオール基、アミン反応性基、チオール反応性基、Ni−キレート形成基、抗His抗体基などが用いられる。
【0026】
本明細書において使用している「標的(ターゲット)」、「標的(ターゲット)部位」、「標的(ターゲット)分析物」、「生物学的標的(ターゲット)」または「化学的標的(ターゲット)」とは、サンプル中で溶媒和した対象の粒子、分子または化合物をさし、検出、確認されるものである。適切な標的としては、有機性および無機性分子、生体分子などが挙げられる。好ましい実施態様においては、標的は、環境汚染物質(例えば、農薬、殺虫剤、毒素など);化学物質(例えば、溶媒、ポリマー、有機性材料など);治療用分子(例えば、治療および濫用薬物、抗生物質など);生体分子(例えば、ホルモン、サイトカイン、タンパク質、ペプチド、タンパク質ドメイン、融合タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ゲノム性DNA、脂質、脂質膜、炭化水素、細胞膜抗体、受容体およびそれらのリガンドなど);細胞全体(例えば、病原菌、真核細胞など);ウイルス;または胞子などである。
【0027】
2.詳細な説明
米国特許出願公開第2003-0003474号または同第2002-0142339号明細書、国際公開第00/61282号パンフレット、またはM.グラザー(Glazer)らによる文献(「高能力DNAプローブアッセイ用のコロイドシリカフィルム(Colloidal Silica Films for High-Capacity DNA Probe Assays)」、Chem.Mater.,2001,13,4773-4782)に記載されているような多孔性基板は、近年、固相生物学的アッセイの分野における研究および開発の中心領域である(これらの文献の内容を参考として本明細書中に取り入れておく)。多孔性基板は、非孔性支持体に塗布または接着された実質的に平らな多孔性の無機層を有する。多孔性基板の長所は、高密度アレイ用の核酸および/またはその他のプローブ部位の保持能力が高められていることである。多孔性表面は、DNAプローブ分子を固定化するための表面積が大きくなり、例えば、基板の単位断面積あたりの核酸結合部位の密度が高くなっている。単位面積あたりの結合可能部位数が増加することにより、固定化ヌクレオチドプローブをより多く保持でき、標的分子とハイブリダイズした場合に、より高レベルのシグナルを放出する。ポリシランまたは陽イオン性ポリマーなどのような結合剤被膜で適切に処理した多孔性無機性表面も、横からの混線を避けることができる。
【0028】
DNA結合用の多孔性のセラミックまたはガラス基板は、他の多孔性または非孔性平面基板よりも一様によい結果が得られ、さらに、化学的および機械的耐久性などのその他の要件も満たす。好ましい実施態様に従えば、多孔性表面は、セラミックもしくはガラスを含むスリップまたはペースト/インクを用い、テープキャスティングまたはスクリーン印刷法によって製造する。焼成温度、焼成時間、ならびにセラミックもしくはガラス粒子の大きさを調整することにより、微小構造の大きさを調節することができる。従って、多孔性層の多孔度の範囲は、約0もしくは1または2%〜99%の範囲である。好ましい多孔度の範囲は、約55%〜約80または90%である。カルシウムアルミノケイ酸ガラススライド(コーニング(Corning)社、コード1737)上にテープキャストした多孔性ホウケイ酸ガラス(コーニング(Corning)社、コード7761)層は、プリント後、ならびに洗浄、ブロッキング、ハイブリダイゼーションおよびリンス段階の全てを通して最大絶対量のヌクレオチドを保持する傾向を示した。テープキャストされた多孔性ホウケイ酸上に結合している、プリントされたDNAは、ハイブリダイゼーションを行いやすく、多孔性ガラススライドまたはゾル−ゲル被覆スライドよりも高い絶対シグナル、およびシグナルのノイズに対する比を示した。
【0029】
HDAの性能は、基板の組成および純度、基板に塗布された表面化学、ならびに製造および使用の全ての段階で用いられた生物学的分子の質などのいくつかの因子によって決まる。一般的に、デバイスの観点からは、マイクロアレイはセンサーであり、その応答は、標準的な基準を用いて標準化することができる。任意のセンサーの長所を判断する3つの基準点は、検出閾値、感度、およびダイナミックレンジである。検出閾値は、出力応答として検出できる最小の入力値である。感度は、入力シグナルをダイナミックレンジ内のセンサーの出力シグナルに関連付ける。ダイナミックレンジは、検出閾値と組み合わせて、デバイスの応答の上限を定める。閾値より大きい入力ではセンサーの出力は変化しない。
【0030】
これらの基準を用い、別異の型のマイクロアレイの性能を比較することができる。優れたマイクロアレイは、検出閾値が最も低く、感度が最も高く、さらにダイナミックレンジが最も広いものである。検出閾値が低いことの利点は、すぐに明らかになる。生物学的分子の濃度が低い状態で発現した遺伝子に関してディファレンシャル発現を測定することができた。ディファレンシャル発現の試験における測定の正確さは、感度の影響を受ける。感度が高ければ、特に、検出閾値付近の濃度において正確度が高まる。感度が高ければ、励起レーザーおよびスキャナー内の光電子増倍管検出器に関連する因子が原因である、強度の不確定性またはエラーが減少する。従って、遺伝子のディファレンシャル発現において、高い精度で低濃度間の識別をすることができる。ダイナミックレンジが広いことも魅力的な特徴であるが、これは、高感度マイクロアレイに適し、適応可能なスキャン装置を正確に修正、調節することができれば達成可能である。
【0031】
本発明に従えば、多孔性無機性基板は、従前の無機性および有機性基板よりも高密度DNAアレイに関して優れた利点を備えている。アレイ用の多孔性無機性基板は、平板非孔性表面と比較した場合に、より感度が高く、検出閾値が低い。特定の型の微小構造を有する多孔性無機性基板は、平板非孔性スライドよりも10〜102倍の蛍光分子感度を示す。蛍光分子の検出が必要な生物学的用途においては、感度は重要な特性である。高感度基板はこのような用途に対して魅力的であるが、これは、濃度の小さな変化および全体的に低濃度の場合でもより容易に検出できるからである。感度を上げ、検出閾値を下げることにより、アレイ製造者および使用者の費用を軽減することができる。製造過程ではプリントする材料が少なくてすみ、あるいは、平板スライドよりも性能レベルが高くなくても性能が同レベルに維持されていれば、ハイブリダイゼーション溶液のプローブ濃度を下げることができる。
【0032】
そのような利点を有するものの、不運なことに、多孔性基板は、特定の波長、特に可視光スペクトル(約400nm〜700nm)においては、被覆した非孔性平板ガラス基板よりもバックグラウンドまたは自己蛍光が高いことがわかった。多孔性基板の良い面を保持しながらこの問題を克服する過程において、発明者らは本発明を開発した。本発明に従い、ガラス組成物にある種の無機性構成成分を添加して多孔性ガラス層に色を付けることにより、多孔性ガラス材料の自己蛍光または本質的なバックグラウンドを効果的に低減することができた。このことは、シグナル強度が高くてバックグラウンドが低い状態を必要とする多孔性基板の使用者にとって、より魅力的である。さらに、本発明により、感度が上昇し、蛍光マーカーの閾値検出が改良された。
【0033】
本発明に従えば、多孔性無機性構成成分を含む組成物または多孔性基板上の被覆層に混入された着色剤により、反射率および自己蛍光の相対レベルが低下した。特定の実施態様においては、従来から使用されている照明装置用のBlack Light Blue ガラスに用いられている酸化コバルトまたは酸化ニッケル(II)構成成分をガラス組成物に混入することによって色を付けた。それを塗布し、焼成することによって非孔性背面または支持体に結合させると、灰色がかった層として暗色のガラスフリットが現れた。理論に裏付けられてはいないが、多孔性無機性基板の感度の増強は、光の散乱に基づくものと考えられる。しかしながら、制御されていない光の散乱は問題である。生物学的分子またはプローブを用いて準備した基板に関しては、本発明に従う着色により、被覆またはむき出しの多孔性ガラス層内で光が自由に散乱することによってバックグラウンドが一様に低減した。
【0034】
発明者らは、多様なガラス組成物について評価を行った。ホウケイ酸ガラスまたはアルミノホウケイ酸ガラス類に属する基本の「白色」または色の付いていないガラスから始め、表1に示す本来ガラス組成物を本発明に従って変化させた。
【表1】

【0035】
発明者らは、コバルト/ニッケル量が異なるガラスフリットが、バックグラウンド蛍光を首尾良く抑制することを発見した。これらの添加剤の組み合わせ、またはさらにその他の物質を加えることにより、標的−プローブ結合アッセイのために所望される蛍光のシグナル強度に影響を与えることなく、バックグラウンドが低減する。表2は、本発明に従ういくつかのガラスの組成例をまとめたものである。
【表2】

【0036】
表3は、いくつかの実施態様に従い、色付き多孔性ガラスの主要構成成分の範囲を示したものである。
【表3】

【0037】
着色剤としては、好ましい組成物はコバルトおよびニッケルの酸化物を含んでいるが、Fe、VまたはCuなどのその他の遷移金属元素も用いることができ、これらは、CoおよびNiのような強い自己蛍光吸収剤ではないが、自己蛍光の増加はほとんどあるいは全く示さなかった(2.54cm×7.62cmのスライドにおいて)。CrおよびMnからは追加の蛍光が観察された。故に、これらの元素は除外する。また、これらのガラスはSb清澄剤を用いずにつくることもでき、ある条件下においてはその方が望ましい。
【0038】
実施例においては、多孔性層としてホウケイ酸ガラスを選択したが、これは、ホウケイ酸ガラスが透明で、入手しやすいからであるが、類似した物理的特性を有するその他のガラスで代用することもできる。基板および多孔性層のガラス遷移/焼結温度は、両者の間で強い接着が得られるように、同程度でなければならない。さらに、理想的な条件下においては、負に帯電しているDNA分子が結合するように、中性水溶液中では表面が正の電荷を帯びている。
【実施例】
【0039】
表4は、始めの、もしくは本来の「白色」ホウケイ酸組成物の例と着色剤構成成分を含む本発明に従う例との間の比較を示す。
【表4】

【0040】
砕いたホウケイ酸ガラス粒子をふるいにかけ、湿式磨砕して粒子径を小さくした(平均粒子径の範囲は約0.07〜3.5μm)。24〜72時間ボールミル粉砕を行ったが、このとき、1ガロン瓶(ナルジーン(Nalgene)社)に砕いたホウケイ酸ガラス、ZrO2、ミルシリンダーを入れ、容量が瓶の約85%になるようにイソプロパノールを加えた。粉砕後、スラリーを撹拌し、粒子が沈澱するように静置した。沈殿させることにより、バインダーの添加前にガラス粒子の粒径分布をさらに制御することができる。液状スラリーをNalgene瓶から出し、ホットプレート上でイソプロパノールを蒸発させてガラス粉末を回収した。瓶の底の沈殿物を乱さないように注意した。沈殿後に得られたホウケイ酸粉末の平均粒子径の範囲は、約0.05〜1.5μmであった。ホウケイ酸粉末は、テープキャスティング用のスリップの調製に使用した。
【0041】
米国特許第5,089,455号明細書は、ジルコニア(酸化ジルコニウム)を主剤とするスリップの調製について詳細に記載している(該特許を参考として本明細書中に取り入れておく)が、これは、燃料電池などに利用される、希薄なジルコニア電解液をテープキャスティングするためのものである。多孔性層をキャスティングするためのホウケイ酸スリップの調製は、該特許に記載されている方法に従い、同様に行った。ZrO2とホウケイ酸との間に密度差があることから、製法を調整し、粒子径分布を狭めるための静置は行わなかった。概説すると、100gの粉砕ホウケイ酸粉末、90.9gのエタノール、21.98gの1−ブタノール、5.0gのプロピレングリコール、6.25gの蒸留水、2.5gのEmphos、および1125gの1cmのZrO2ミルボールを計り取って500mlのNalgene瓶に入れ、72時間振動粉砕した。粉砕したスリップは、粉砕媒体を含まないようにして新しい250mlのNalgene瓶に注いだ。スリップ調製の最終段階では、氷酢酸とイソプロパノールとの50w/o混合物を5.0g、8.75gのジブチルフタレートおよび15gのポリビニルブチラール、ならびに5もしくは6個の1cmのジルコニアミルボールを加えた。次に、1回転/秒以下の速度で瓶を緩やかに転がして十分に混合し、テープキャスティングの少なくとも72時間前に泡を除去した。
【0042】
スリップをテープキャストすることによるマイクロアレイ用多孔性基板の形成は、比較的容易である。カルシウムアルミノケイ酸ガラス(コーニング(Corning)社、コード1737)で形成された非孔性下部構造を使用し、2.54cm×7.62cmの顕微鏡スライドガラスを得るための、切れ目を入れたガラス板の主要両面を清浄にした。テープキャスティング用の多様な厚さの金属ドクターブレードを使用することにより、層厚が異なる色つき多孔性ガラス層を作成することができる。例えば、ひとつの実施態様においては4milのブレードを使用するが、別の実施態様においては2milのブレードを使用し、あるいは、2milのブレード+テープ層を用いている。始めに、非孔性表面に接着層を塗布する。しかしながら、基板と、フリット層もしくは多孔性層の熱膨張率(CTE)が同程度である場合には、多孔性層が基板から離層しないようにするためのこのような接着層は不要である。次の操作に移る前に被膜を乾燥させねばならない。別のテープキャスティングブレードを用い、上部にフリットガラススリップをキャストした。被覆したスライドを放置して乾燥させた。いくつかの実施態様においては、多孔性層の実際の層厚を制限する必要はない。テープキャスティングブレードを用いて塗布を数回繰り返すことにより、厚さ約2.5mmまでの多孔性層を形成することができる。乾燥し、焼成した多孔性層の厚さは約1mmである。好ましい実施態様における多孔性層の最終的な層厚は、約5または6μm〜約100もしくは150μmである。より好ましくは層厚は、約10〜75μm、または約15〜50μmの範囲である。焼成後の多孔性層の層厚として最も好ましいのは、約30±5μmである。
【0043】
多孔性被膜を乾燥させると、1737−ガラス板を個別のスライドに切り分けて焼成した。テープキャストしたこれらのスライドは、アルミナ繊維板上でアルミナ繊維板用カバーを用いて焼成した。被覆したスライドは、接着層が溶融し、上部のフリットガラスが多孔性層内に焼結するような温度で焼成した。焼成の正確な温度(例えば、〜650−735℃など)および時間(例えば、〜2−3時間など)は、ガラスの組成または多孔性層に所望される性質に応じて変わる。一般的に、被膜の多孔度は焼成温度が上昇するにつれて低下する。焼成後、基板を放置して周囲温度に4時間さらした。
【0044】
実験例スライドは、本来の白色多孔性スライドおよび平板非被覆1737−ガラスLCDパネルの各サンプルと一緒に約705℃で焼成した。焼成後、スキャンしてバックグラウンドを測定した。焼成したスライドは半透明で、光の散乱のために濁りを帯びていた。色を付けた多孔性層は灰色がかった色をしていた。多孔性層は、カルシウムアルミノケイ酸ガラス基板にしっかりと結合していなければならない。大きな孔は〜5μmであり、小さな孔の平均径は〜0.5μmから〜1.0μmであった。
【0045】
多孔性層の小孔と固体材料との間の屈折率が異なることによって生じる光の散乱は、孔径が蛍光マーカーの波長と同程度である場合に最大になった。生物学的アッセイに用いられる一般的な化学マーカーは、可視領域(300〜800nm)で蛍光を発し、この範囲には、テープキャストした多孔性層に固有の孔径が含まれる。多孔性層内におけるランダムな屈折率の変化によって生じる光の散乱は、局所的に高い励起強度を生み出すと考えられている。蛍光団分子と相互作用するための光子励起の機会が1回のみである通常の平板非孔性ガラススライドとは異なり、多孔性被覆基板では、多孔性層を抜ける前に励起が何度も分散する。この光の散乱効果は、一部には、多孔性層の微小構造の特徴によるものと考えられ、そのような特徴としては、層厚、粒子径、粒子の形状、孔径、孔の形状、多孔度、ガラスと多孔性層との連続性、結合部位の表面密度などが挙げられる。これらのパラメーターを調整することにより、光散乱の効果を最適化することができる。従って、2段階蛍光システムが飽和していない場合には、多孔性層内において、蛍光分子からの光の放出率をより高くすることができる。光散乱の効果および感度の増強は、グリセロールなどのように屈折率が一致する液体が被膜の孔に侵入することによって消失する。
【0046】
本発明に従う多孔性スライドのセンサーとしての優れた特性は、生物学的分子が結合できる表面積が大きいこと、多孔性表面を介して励起が散乱することにより、蛍光団の励起が高められること、およびハイブリダイゼーション速度が迅速であることに基づいていると考えられる。多孔性表面は、比較した平板非孔性基板よりも、単位面積あたりのDNA結合部位の密度が高い。従って、DNA分析過程の全段階を通して、絶対的に多数のプリントDNA分子を保持することができる。保持されるDNAの絶対数が増加することは、処理段階におけるDNAの損失を最小限に抑えることになるので、重要である。また、プリントされた既知のDNA鎖およびハイブリダイズした任意の未知のDNA鎖上の蛍光タグから発せられる光学シグナルは、DNA分子の絶対数に比例しているので、強められる。
【0047】
さらに、基板上の有効結合部位数は、粒子径が小さくなるにつれ、また、多孔性層の厚みが増すにつれて増加すると考えられる。DNAの保持力は、多孔性の核酸結合表面の微小構造の特徴によって高めることができる。前述したように、洗浄、ブロック、ハイブリダイゼーションおよびリンス操作中にプリントしたDNAを保持することは重要である。プリントしたDNAを過剰に消失することにより、シグナルのノイズに対する比が低下し、分析の信頼を失う。多孔性表面は、横断単位面積あたりのDNA結合可能部位の数および密度を効率的に高める。さらにまた、表面化学、インク組成、プリントピンのサイズおよびインク量は、光散乱とは関係ないが、感度に影響を及ぼすことを念頭に置いておかねばならない。
【0048】
感度を高めることを目的として、別の2つのパラメーターを満たすことが好ましい。第一は、多孔性ガラス基板の内表面上の蛍光分子の分布は、励起強度の高い部分に重なっていなければならない。第二は、蛍光分子から発せられた光は、観察、測定される多孔性構造から逃避できなければならない。多孔性被膜の厚さの関数としての蛍光分子分布は、感度に劇的な影響を与える。この分布は、結合部位の密度、または、インク中に存在している結合する分子の数を変えることによって変化させることができる。プリントインク中の生物学的分子の濃度が如何様であろうとも、従来型の基板と比較して、本発明の多孔性基板では感度を高めることができる。
【0049】
既に記載しているように、焼成後、バックグラウンド自己蛍光測定のためにサンプルをスキャンした。図1に表されているように、色を付けた多孔性ガラスのバックグラウンド蛍光は、本来の白色多孔性層と比較して、相対蛍光ユニット(RFU)で50%以上も減少していた。実際、色を付けた多孔性スライドの自己蛍光バックグラウンドは、二次元平板GAPS被覆対照スライドおよび非被覆1737−ガラスLCDパネルと同等であった。
【0050】
次に、5%のGAPS溶液を用いて多孔性スライドを浸漬被覆し、ヌクレオチドが結合できるように準備した。GAPS被覆した多孔性スライドを再度スキャンし、被覆工程による自己蛍光バックグラウンドを比較した。CVD−製造対照スライドと共に、GAPS−被覆色つきスライドに遺伝子(pBR500mer)DNAをプリントした。2種類のインクを使用したが、S.パル(Pal)らによる共願の米国特許出願第10/244898号明細書に記載されているように、ひとつはDMSO/クエン酸溶液を含み、他方はエチレングリコール/水溶液を含んでいた。
【0051】
ハイブリダイゼーションには、Cy3およびCy5タグ付けpBR500プローブを1ピコモル使用した。使用したハイブリダイゼーション溶液には、25%のホルムアミド、5×SSCおよび0.1%のSDSを含んでいた。ブロッカーとしてサケ精巣のDNAを使用した。多孔性スライドのうちの1枚をNaBH4などの還元剤で処理したが、これは、Cy3のバックグラウンドシグナルを減少させるためであり、多孔性スライドのうちの1枚はNaBH4処理を行わなかった。42℃の水浴中で一晩かけてマイクロアレイをハイブリダイズさせた。その後、ハイブリダイズしたスライドを洗浄し、分析のためにGenepix4000Bスキャナーを用いてスキャンした。平均バックグラウンドを計算した。色を付けた多孔性スライドのバックグランド反射は、本来の白色多孔性ガラスと比較して顕著に低下していた。結果を図2に示すが、色を付けた多孔性基板では、Cy5シグナルに関しては、シグナルのノイズに対する比が下がったことを示している。色を付けた多孔性基板は、「白色」多孔性基板が示したバックグラウンド蛍光よりも約20〜25%低い値を示した。換言すれば、色を付けた基板では、白色基板のバックグラウンドの約1/4〜約1/5しかなかった。この現象は、色を付けた多孔性ガラス基板の長所、ならびに、部分的には、Cy3シグナルについては、NaBH4処理することによってGAPS被覆に由来する有機性自己蛍光不純物を除去したことに起因する。
【0052】
図3Aおよび3Bには、本来の白色多孔性ガラスと比較した場合に、色を付けた多孔性ガラスでは、Cy3およびCy5の両方について、真のシグナル(平均シグナル−平均バックグラウンド)が低いことを示している。
【0053】
比較を容易にするために、図4A〜4Cには、焼成後の3種類の基板の画像をまとめて掲載している。図4Aは、本実験において対照として使用した一般的な1737−ガラス板の表面を示す。前出のグラフが支持しているように、非孔性基板は、自己蛍光レベルが比較的低かった。図4Bの本発明に従う色を付けた多孔性ガラスの例は、相対バックグラウンドシグナルに関しては、非孔性平板ガラス基板との比較において遜色なかった。対照的に、図4Cの「白色」多孔性ガラス基板は、前出のグラフで確認されているように、バックグラウンド蛍光が比較的高かった。「白色」多孔性表面は発光スポット(luminous spots)が少ないのみならず、特に画像の左側においては、検出可能なスペックルが表面上に現れている。
【0054】
Cy3およびCy5下において、「白色」および色を付けた多孔性基板サンプルの偽色彩法画像を並べて比較することにより、色を付けた基板は、パラメーターの操作に留まらず、バックグラウンドの減少促進において、元々優れているという事実を確認した。図5A、5B、6Aおよび6Bは、GenePixスキャナーによって得られた画像である。図5Aからわかるように、還元剤NaBH4で処理していない「白色」多孔性基板は、図5Bの色を付けた多孔性ガラス基板に比べて、明白かつ顕著なバックグラウンド蛍光を示している。かすんだような白っぽいバックグラウンドが明らかにわかり、非着色多孔性ガラス基板のマイクロアレイドット領域を取り囲んでいるが、色を付けた基板では、バックグラウンド蛍光はほとんどわからない。このバックグラウンド現象およびコントラストは、NaBH4で処理して基板表面の残留有機性不純物を除去した後の図6Aと図6Bとを比較した場合にも明らかである。非着色多孔性基板は、色を付けた多孔性基板の自己蛍光レベルよりも高い、ある程度の蛍光を残していた。画像を比較することにより、スライドをNaBH4処理するか否かにかかわらず、色を付けた多孔性基板はバックグラウンドを下げることが示された。
【0055】
色を付けたガラス内に存在する着色剤は、Cy5バックグラウンド蛍光を実質的に低下させる。このバックグラウンドシグナルの低下は、シグナルのノイズに対する相対比に顕著な影響を与える。そのようなシグナルのノイズに対する比は、真のシグナルをバックグラウンドシグナルで除することによって計算される。数値計算の結果のいくつかを図7に示すが、白色多孔性ガラスにおいて観察された高いバックグラウンド蛍光を低下させることにより、色を付けた多孔性基板におけるシグナルのノイズに対する比は、全体を通して上昇していることがデータから示唆される。
【0056】
その他のアレイ種およびそれらに関連する結合アッセイ
本発明に従うデバイスは、サンプル中の標的を検出する結合アッセイに役立つ。標的分析物は、基板の表面上に固定されたプローブ分子に結合することが好ましい。本発明に従うデバイスおよび方法は、例示としてヌクレオチド反応について記載しているが、本発明はヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイに限定する必要はない。本発明から利益を受ける別の用途としては、その他の生物学的結合アッセイ様式反応が含まれる。多孔性層に固定化されるプローブ分子類は、多様な生物学的もしくは化学的な種または分子から選択することができる。例えば、プローブ分子としては、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、新興のプロテオミクス分野に有用なタンパク質膜、G−結合タンパク質受容体、ガングリオシド類、細胞もしくは細胞膜、細胞溶解物、または薬物分子相互作用のためのタンパク質低分子リガンドなどが挙げられる。別異の種類のマイクロアレイについてのいくつかの実施例およびそれらの多様な用途を以下に記載する。
【0057】
DNAマイクロアレイ内の限られた位置の表面上に、既知の配列を含む一連のプローブ核酸分子を繋ぎ止めた、または固定した場合には、標的分析物は核酸である。標的配列としては、遺伝子の一部分、制限配列、ゲノム性DNA、cDNA、RNA(mRNAおよびrRNAを含む)などが挙げられる。標的配列は一本鎖型で用いることが好ましいが、二本鎖型の標的配列(例えば、ゲノム性DNAなど)は、変性させてから使用することができる。好ましくは、標的配列は、検出可能な部位を用いてラベルするが、そのような部位としては、蛍光画像法を用いることにより、プローブマイクロスポットへの標的配列の結合が直接検出できるような蛍光染料分子、あるいは、プローブマイクロスポットへの標的配列の結合検出には、ラベルした抗ビオチンもしくは抗ビオチン被覆金ナノ粒子を用いた段階的検出段階を要するビオチン部位(バオ(Bao)ら、Anal.Chem.2002,74,1792-1797)などが挙げられる。「プローブ核酸」または「プローブ配列」とは、既知の、または明らかにされた配列を伴う核酸配列をさす。好ましくは、プローブ核酸配列は、cDNA、明らかにされた配列を伴うオリゴヌクレオチド、または明らかにされた配列を伴う変形オリゴヌクレオチドである。一般的に、本発明に従う核酸は、ホスホジエステル結合を有するが、以下に概説するようないくつかの場合においては、核酸アナログ類が含まれており、それらは例えば、ホスホルアミド(ビューケージ(Beaucage)ら、Tetrahedron,1993,49,1925)、ペプチド核酸骨格および結合(イグホルム(Egholm)、J.Am.Chem.Soc.,1992,114,1895;ニールセン(Nielsen)、Nature,1993,365,566)などを含む代替骨格を有する場合がある。当業者に認識されているように、これらの核酸アナログは全て、本発明に使用することができる。
【0058】
ひとつの実施態様に従えば、プローブタンパク質マイクロアレイを用いた場合には、薬剤学的化合物またはリガンドが標的化合物またはリガンドとなり得る。本明細書においては、「標的化合物」または「標的リガンド」とは、本質、存在量、または結合アフィニティーおよび特異性が確認されている化学的もしくは生化学的もしくは生物学的化合物をさす。標的化合物としては、合成品、天然に存在するもの、または生物学的に産生されたものを用いることができる。標的化合物としては、乱用薬物、薬剤候補、化学物質(イオン性塩を含む有機性または無機性化合物)、生化学物質(例えば、合成脂質、オリゴ糖類、ペプチド類、アミノ酸類、ヌクレオチド類、ヌクレオシド類など)、または生物学的物質(例えば、天然に存在する脂質、タンパク質、抗原、抗体、増殖因子など)を用いることができる。標的化合物としては、プローブタンパク質の活性化物質、阻害剤、作動因子、結合対または酵素基質を用いることができる。標的化合物は、選択された、またはランダムな化合物ライブラリーの一部である場合がある。「プローブタンパク質」または「プローブポリペプチド」とは、既知の配列を伴うポリペプチドをさす。プローブタンパク質は、天然源から、あるいは、追加として、組換えDNA法を用いて過剰発現させることによって得ることができる。プローブタンパク質は、従来法に従って精製されたもの、あるいは未精製のもの(例えば、細胞溶解物など)のいずれも用いることができる。プローブタンパク質としては、細胞内タンパク質、細胞表面タンパク質、可溶性タンパク質、毒性タンパク質、合成ペプチド、対生物活性ペプチドおよびタンパク質ドメインなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。細胞内タンパク質の例としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ類、異性化酵素、リガーゼ類、キナーゼ類、リンタンパク質、およびミューテータートランスポゾン類、DNAもしくはRNA関連タンパク質(例えば、ホメオボックス、HMG、PAX、ヒストン、DNA修復、p53、RecA、リボソームタンパク質など)、電子送達タンパク質(例えば、フラボドキシン類など);アダプタータンパク質;開始カスパーゼ(caspases)、エフェクターカスパーゼ、炎症カスパーゼ、サイクリン類、サイクリン依存性キナーゼ類、サイトケレタール(cytokeletal)タンパク質、G−タンパク質調節物質、低分子G−タンパク質、ミトコンドリア関連タンパク質、PDZアダプタータンパク質、PI-4キナーゼ類など。機能がわかっていない組換えタンパク質も用いることができる。適切な細胞表面タンパク質としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:G−タンパク質共役受容体(例えば、アドレナリン受容体、アンギオテンシン受容体、コレシストキニン受容体、ムスカリン様アセチルコリン受容体、ニューロテンシン受容体、ガラニン(galanin)受容体、ドーパミン受容体、モルヒネ受容体、セロトニン受容体、ソマトスタチン受容体など)、G−タンパク質、イオンチャンネル(例えば、ニコチン様アセチルコリン受容体、ナトリウムおよびカリウムチャンネルなど)、受容体チロシンキナーゼ類(例えば、上皮増殖因子(EGF)受容体など)、免疫受容体、インテグリン類、およびその他の膜結合タンパク質など。そのようなタンパク質もしくはタンパク質機能性ドメインの突然変異体または変形体、あるいは、そのようなタンパク質の任意の組換え型も用いることができる。毒性タンパク質としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:コレラ毒素、破傷風毒素、シガトキシン、熱不安定性毒素、ボツリヌス毒素AおよびE、デルタ毒素、百日咳毒素など。毒素のドメインまたはサブユニットも用いることができる。本実施態様においては、プローブタンパク質マイクロアレイを用いることにより、低分子結合タンパク質を確認することができ(ツー(Zhu),H.、ビルギン(Bilgin),M.、バンガム(Bangham),R.、ホール(Hall),D.、カサメイヤー(Casamayor),A.、バートーン(Bertone),P.、ラン(Lan),N.、ヤンセン(Jansen),R.,、ビドリングマイアー(Bidlingmaier),S.、ホウフェク(Houfek),T.ら、「プロテオームチップを使用して行ったタンパク質の包括的分析(Global analysis of protein activities using proteome chips)」、Science,2001,293,1201-1205)、または、プロテインキナーゼ活性を測定することができ(ハウスマン(Houseman),B.T.フー(Huh),J.H.、クロン(Kron),S.J.、マーキシュ(Mrksich),M、「プロテインキナーゼ活性定量用のペプチドチップ(Peptide chips for the quantitative evaluation of protein kinase activity)」、Nature Biotechnology,2002,20,270-274)、または、薬理学的に使用される化合物のプロファイル(結合アフィニティー、選択性および特異性)を作成して化合物をスクリーニングすること(ファン(Fang),Yら、「膜タンパク質マイクロアレイ(Membrane protein microarrays)」、J.Am.Chem.Soc.2002,124,2394-2395;ファン(Fang),Y.ら、「膜バイオチップ(Membrane biochips)」、BioTechniques,2002,33,S62-S65)ができる。
【0059】
さらなる実施態様においては、プローブ抗体マイクロアレイを用いる場合には、標的分析物として抗原、ホルモン、サイトカイン、免疫抗体、タンパク質、脂質、または未精製細胞溶解物の混合物を使用することができる。本明細書において使用している「標的生体物質(biologicals)」とは、本質/存在量がわかっている体液(biofluid)または細胞内小器官または生細胞を意味する。プローブ抗体としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:免疫グロブリン(例えば、IgE類、IgG類、IgM類など)、治療用もしくは診断用の関連抗体(例えば、ヒトアルブミン、アポリポプロテインEを含むアポリポプロテイン類、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、コルチゾール、α−フェトプロテイン、チロキシン、甲状腺刺激ホルモン、抗トロンビンに対する抗体;抗てんかん薬(フェニトイン、プリミドン、カルバマゼピン、エトスクシミド、バプロン酸およびフェノバルビタール)、心作用性薬(ジゴキシン、リドカイン、プロカインアミドおよびジソピラミド)、気管支拡張剤(テオフィリン)、抗生物質(クロラムフェニコール、スルホンアミド類)、抗鬱薬、免疫抑制剤、濫用薬物(アンフェタミン、メタンフェタミン、カンナビノイド類、コカインおよびアヘン薬)に対する抗体);任意のウイルスに対する抗体(例えば、インフルエンザウイルスなどのオルソミクソウイルス、パラミクソウイルス(例えば、RSウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、レオウイルス、トガウイルス(例えば、風疹ウイルス)、パルボウイルス、ポックスウイルス(例えば、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス)、エンテロウイルス(例えば、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、肝炎ウイルス(A型、6型およびC型を含む)、ヘルペスウイルス(例えば、単純へルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス)、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、ハンタウイルス、アレナウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)、レトロウイルス(HIV、HTLV-Iおよび-IIを含む)、パポバウイルス(例えば、パピローマウイルス)、ポリオーマウイルスおよびピコルナウイルスなど、ならびに炭疽菌に対する抗体);バクテリアに対する抗体(例えば、次のものを含む広範な感染性および非感染性原核細胞:バチルス(Bacillus)属、ビブリオ(Vibrio)属(ビブリオ・コレラ(V.cholerae)など)、エシェリキア(Escherichia)属(腸毒素産生性大腸菌(E . coli)など)、赤痢菌(Shigella)属(志賀赤痢菌(S.dysenteriae)など)、サルモネラ(Salmonella)属(チフス菌(S.typhi)など)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属(結核菌(M.tuberculosis)、癩菌(M.leprae)など)、クロストリジウム(Clostridium)属(ボツリヌス菌(C.botulinum)、破傷風菌(C.tetani)、クロストリジウム・デフィシレ(C.difficile)、ウェルシュ菌(S.perfringens)など)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属(ジフテリア菌(C.diphtheriae)など)、ストレプトコッカス(Streptococcus)属(化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、肺炎球菌(S.pneumoniae)など)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属(黄色ブドウ球菌(S.aureus)など)、ヘモフィルス(Haemophilus)属(インフルエンザ菌(H.influenzae)など)、ナイセリア(Neisseria)属(髄膜炎菌(N.meningitidis)、淋菌(S.gonorrhoeae)など)、エルシニア(Yersinia)属(エルシニア・ランブリア(E.lamblia)、ペスト菌(E.pestis)など)、シュードモナス(Pseudomonas)属(緑膿菌(P.aeruginosa)、シュードモナス・プチーダ(S.putida)など)、クラミジア(Chlamydia)属(トラコーマクラミジア(C.trachomatis)など)、ボルデテラ(Bordetella)属(百日咳菌(B.pertussis)など)、トレポネーマ(Treponema)属(梅毒トレポネーマ(T.palladium)など)などに対する抗体);バクテリア毒素に対する抗体(例えば、ジフテリア毒素、炭疽毒素、テトロドトキシン、サキシトキシン、バクトラコトキシン(bactrachotoxin)、グラヤノトキシン(grayanotoxin)、ベラトリジン、アコニチン、サソリ、イソギンチャク毒液、サソリカリュブドトキシン(scorpion charybdotoxin)、デンドロトキシン類、ハナトキシン類(hanatoxins)、イソギンチャク毒素、ホロレナ(hololena)、カルシクルディン(carcicludin)、ブンガロトキシン、コレラ毒素、コナントキン(conantokin)などに対する抗体)。
【0060】
特定の実施態様においては、プローブ抗体アレイは、タンパク質のプロファイリング、血中のタンパク質量の測定、サイトカイン量の測定、サンプル(環境水、または食物原料など)中のバクテリア毒素の検出、ならびに、白血球の捕獲/白血病の表現型分類に使用することができる。これらの標的種は、任意の数の別異のサンプル中に存在しており、そのようなサンプルとしては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:血液、リンパ液、唾液、膣および肛門分泌物、尿、糞、汗および涙などの体液、ならびに肝臓、脾臓、骨髄、肺、筋肉、脳などの固体組織。逆に、「プローブ」に抗原を用いることもでき、そのような場合には、抗原アレイは、免疫抗体およびアレルゲンを測定するためのリバースイムノアッセイに用いることができる。
【0061】
別の実施態様においては、表面上の既定の位置にオリゴ糖または多糖類が固定されている炭化水素マイクロアレイを用い、サンプル中の炭化水素結合性タンパク質標的を検出することができ(フクイ(Fukui),S.、フェイツィ(Feizi),T.、ガルスティアン(Galustian),C.、ローソン(Lawson),A.M.およびチャイ(Chai),W.、「炭化水素−タンパク質相互作用のハイスループット検出および特異性帰属のためのオリゴ糖マイクロアレイ(Oligosaccharide microarrays for high-throughput detection and specificity assignments of carbohydrate-protein interactions)」、Nature Biotechnology,2002,20,1011-1017)、あるいは、細菌および宿主細胞の交差反応性分子マーカーの確認をすることができ(ワン(Wang),D.、リウ(Liu),S.、トラマー(Trummer),B.J.、デン(Deng),C.およびワン(Wang),A.、「細菌および宿主細胞の交差反応性分子マーカーの認識のための炭化水素マイクロアレイ(Carbohydrate microarrays for recognition of cross-active molecular markers of microbes and host cells)」、Nature Biotechnology,2002,20,275-281)、あるいは、特定のウイルスもしくはバクテリアもしくは胞子の確認をすることができる。
【0062】
本発明を一般的に、および実施例に基づいて詳細に記載してきた。当業者であれば、本発明は、開示されている特定の実施態様にのみ限定されるわけではないことは自明である。先に記載している請求項またはそれらと等価のもの(現在わかっている等価な構成要素、または、本発明の範ちゅうで使用することができる開発された構成要素を含む)によって定義される本発明の範ちゅうを超えることなく変形および変更を加えることができる。従って、本発明の範ちゅうを超えないような変更は、本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に従う基板(I)上の非被覆色付きガラス層の相対的バックグラウンド蛍光の平均を、対照(A)、色を付けていない「白色」多孔性層(B)、および平板非孔性基板表面(C)と比較したグラフ(A〜Cはいずれも被覆していない)。表1にはこのグラフのデータをまとめている。
【図2】基板上の色付き多孔性ガラス層の相対的局所バックブラウンド自己蛍光の平均を、対照(A)、色を付けていない「白色」多孔性層(B)、および平板非孔性基板表面(C)と比較したグラフ(A〜Cはいずれも5%のγ−アミノプロピルシラン(GAPS)で被覆し、NaHBH4などの還元剤で処理した)。表2にはこのグラフのデータをまとめている。
【図3A】シアニン染色Cy5に対する真の蛍光シグナル(すなわち、平均シグナル−平均バックグラウンド)を表すグラフ。
【図3B】シアニン染色Cy3に対する真の蛍光シグナル(すなわち、平均シグナル−平均バックグラウンド)を表すグラフ。
【図4】3種類の基板をスキャンして得られた偽色彩画像。比較の目的で、対照として用意したものが4Aであり、平面パネルディスプレイまたはLCDデバイスに使用されるような非孔性ガラスの平面の画像である。4Bは、本発明に従い、色を付けた多孔性ガラス表面の画像である。4Cは、色付け前の「白色」多孔性ガラス表面の画像である。
【図5】ハイブリダイゼーションを実施したアレイの偽色彩画像であり、Cy5−チャンネル波長を用い、色を付けた多孔性層と色を付けていないそれとを比較して示しており、いずれも、NaHBH4を含むプレハイブリダイゼーション緩衝液で処理していない。
【図6】ハイブリダイゼーションを実施したアレイの偽色彩画像であり、Cy3−チャンネル波長を用い、色を付けた多孔性層と色を付けていないそれとを比較して示しており、いずれも、NaHBH4を含むプレハイブリダイゼーション緩衝液で処理した。
【図7】別異のタイプの基板サンプルにおけるシグナル−ノイズ比を比較したグラフ。グラフを見てわかるように、色を付けた基板は、どの基板タイプよりも高い相対Cy5シグナルを示した。NaHB4未処理の色を付けた多孔性基板におけるシグナルのノイズに対する比は、対応する未処理「白色」多孔性表面におけるそれの少なくとも5倍であり、処理着色基板におけるシグナルのノイズに対する比は、処理白色表面の約2倍以上であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および該支持体の表面上の多孔性領域を有することを特徴とする多孔性基板であって、該多孔性領域は主として無機性材料からなり、その上に多数のプローブ分子を固定することができ、また、該多孔性領域は色が付いており、非着色多孔性基板表面と比較して、自己蛍光レベルが少なくとも約15%減少していることを特徴とする多孔性基板。
【請求項2】
前記多孔性基板は、RFUで表した相対自己蛍光レベルが、前記非着色多孔性基板表面よりも少なくとも1桁以上減少していることを特徴とする請求項1記載の多孔性基板。
【請求項3】
前記の自己蛍光の減少が、約400nm〜約720nmの波長範囲にわたって生じることを特徴とする請求項1記載の多孔性基板。
【請求項4】
前記の自己蛍光の減少が、約420nm〜約700nmの波長範囲にわたって生じることを特徴とする請求項3記載の多孔性基板。
【請求項5】
前記の色を付けた多孔性領域は、遷移金属イオンを含有する着色剤を含んでいることを特徴とする請求項1記載の多孔性基板。
【請求項6】
前記の色を付けた多孔性領域は、基本的に以下の重量%からなる組成物中に着色剤を含んでおり、
【表1】

さらに、次のうちの少なくともひとつを単独または組み合わせて含み、
【表2】

ここで、Rは遷移金属であり、xおよびyはそれぞれ≧0である
ことを特徴とする請求項1記載の多孔性基板。
【請求項7】
前記ガラス組成物が化学的および機械的に耐久性であり、熱膨張率(CTE)が約35〜44×10-7/℃であることを特徴とする請求項6記載の多孔性基板。
【請求項8】
GAPS被覆工程を行う前においては、Cy3およびCy5チャンネルに対する前記の色を付けた領域の自己蛍光バックグラウンドの平均は、前記非着色多孔性基板のRFUの約50%以下であることを特徴とする請求項1記載の多孔性基板。
【請求項9】
前記プローブ分子は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ヌクレオシド、RNA、DNA、ペプチド核酸(PNA)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質ドメイン、タンパク質、融合タンパク質、抗体、タンパク質膜、G−結合タンパク質受容体、ガングリオシド、脂質、脂質膜、細胞もしくは細胞膜、細胞溶解物、またはタンパク質−低分子リガンドを含む群から選択される種のうちの少なくともひとつを含むことを特徴とする請求項1記載の多孔性基板。
【請求項10】
生物学的または化学的アッセイを行うためのツールであって、該ツールは、非多孔性支持体および該支持体の表面上の多孔性領域を有し、該多孔性領域は主として無機性材料からなり、その上に多数のプローブ分子を固定することができ、また、該多孔性領域は色が付いており、非着色多孔性基板表面と比較して、自己蛍光レベルが少なくとも約15%減少していることを特徴とするツール。
【請求項11】
前記の色を付けた多孔性領域は、基本的に以下の重量%からなる組成物中に着色剤を含んでおり、
【表3】

さらに、次のうちの少なくともひとつを単独または組み合わせて含み、
【表4】

ここで、Rは遷移金属であり、xおよびyはそれぞれ≧0である
ことを特徴とする請求項10記載のツール。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−500122(P2007−500122A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521833(P2006−521833)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/019751
【国際公開番号】WO2005/016841
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】