説明

自己調整色度を持つ蛍光体組成物

本明細書において開示するのは、フォトルミネッセンスを誘起するために受ける励起放射に変動があっても、放出の色度を実質的に一定の値に調節することができる「スマート」蛍光体組成物である。スマート組成物の一つの蛍光体は、励起放射の波長が増加するにつれ、放出強度の増加が増加することを実証する。他の蛍光体は、励起波長の増加と共に放出強度の減少を示す。この文脈での一定の色度とは、CIE xまたはy座標の変化が励起波長の10nm範囲にわたっておよそ5パーセント未満であることとして画定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2006年8月10日に出願された、「Two−phase yellow phosphor with self−adjusting emission wavelength」と題する米国仮特許出願第60/837,178号および2007年5月23日に提出された、「Phosphor Composition With Self−Adjusting Chromaticity」という表題を付された米国特許出願第11/805,808号に対する優先権の利益を主張するものである。米国仮特許出願第60/837,178号および米国特許出願第11/805,808号の両方とも、全体を引用例として本明細書に取り込む。
【0003】
発明の背景
【0004】
発明の分野
【0005】
本発明の態様は、光放出ダイオード(LED)またはレーザダイオードを含む光放出デバイスにおける蛍光体組成物および励起可能な蛍光体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0006】
GaN系エピタキシャル構造の出現は、本明細書において両方を一般的に「LED」と呼ぶ、光放出ダイオードおよびレーザを包含する、光放出デバイスの形態でのUVおよび/または青色(「UV/青色」)放射源の開発につながってきた。概して、放射源により、蛍光体または二つ以上の蛍光体を含む蛍光体組成物を励起し、スペクトルの赤色、緑色または青色領域の可視光を発生させる。その後、赤色、緑色および青色光を組み合わせ、白色光を作ることができる。下方変換として公知のプロセスにおいて、蛍光体がUVおよび/または青色光の一部をより長い波長の光に転換する。例として、蛍光体、例えば、YAl12:Ce3+(通例、YAG−Ceと呼ぶ)からの黄色光を青色LEDからの青色光と組み合わせることにより、白色光を作るプロセスが日亜化学工業株式会社によって開示されている。
【0007】
白色光を形成するには、YAG−Ce蛍光体により、青色LEDチップからの青色光の一部を黄色光に変換し、蛍光体によって吸収されなかったLEDからの青色光と組み合わせる。これは、演色評価数(CRI)がおよそ77であり、色温度がおよそ6,000〜8,000Kの範囲に及ぶ白色光をもたらす。いくつかの用途では、蛍光体を使用し、LEDからのUV/青色光をより長い波長の光に下方変換する(およびその後、青色LEDからの光を、蛍光体によって放出される光と組み合わせる)ことによる白色光の発生は、使用者にとって、それぞれ赤色、緑色および青色LEDからの赤色、緑色および青色光を直接的に組み合わせることによって作られる白色光よりも魅力的な白色光であることができる。そのようなUV/青色蛍光体デバイスは、例として、ディスプレイだけでなく照明用途のためにも重要である、より広く利用可能な色範囲を可能にする。日亜の黄色蛍光体に異なる蛍光体を追加し、UV/青色LED光を黄色以外の波長に変換することが公知であり、したがって、組成物における個別の蛍光体を調整することにより、LED/蛍光体システムからの生成光の組み合わせられた全体的な色を修正することができることが公知である。
【0008】
多くの場合、これらの手法によって白色光を発生させるときに直面する困難は、青色/UV LEDの製造中に起こる統計的なばらつきの結果としてもたらされる、白色光の品質の変動である。半導体材料のウェーハ上に様々な材料を層の形式で堆積することにより、青色および/またはUV放出LEDデバイスを作製する。ウェーハを加工し、数十、数百または数千ものLEDの配列を作る。その後、ダイシングとして公知の手法によってそれらを分離し、個別のLED「チップ」を形成する。しかし、この形式でLEDチップを製造することは、固有の問題を惹起する:それらをすべて完全に同等に作ることができず、ダイシングされたLEDチップのなかでいくつかの変動があることに拘束される。そのような変動は、例として、スペクトルの電力分布およびピーク放出波長によって特徴付けられるような、LEDの色出力によって明示することができる。これらの量は、LEDの活性層のバンドギャップ幅のばらつきのため、変動することができる。青色/UV光出力が可変であるもう一つの原因として、運転中にLEDの駆動に使用するために供給される電力がばらつくことができるという事実もある。
【0009】
生産中、ある割合のLEDは、実際のバンドギャップ幅が所望されるよりも大きいか、小さいかのいずれかである、活性層を持って製造される。したがって、そのようなLEDの色出力は、所望のパラメータから逸脱する。さらに、特定のLEDのバンドギャップが所望の幅を有する場合でも、運転中にLEDに印加される電力が変化することができる。これも、LED色出力が所望のパラメータから外れることを引き起こす。いくつかのシステムによって放出される光は、LEDからの青色成分を含有することから、LEDの色出力も変化する。所望のパラメータからの有意な逸脱は、システムの色出力が非白色(すなわち、青色がかったまたは黄色がかったのいずれか)に見えることを引き起こすことができる。
【0010】
この問題に対する過去の解決策は、ウェーハ上に配列された各青色/UV LEDのエレクトロルミネッセンス特徴をダイシングに先行して測定した後、1)LEDによって放出される光のピーク放出波長、2)LEDによって放出される光のピーク強度および3)順電圧のうち、任意の観点から個別のLEDを分類(または「区分」)する、「ビニング」手順を包含している。ビニングは、LEDが電流デバイスであるという事実に依拠する。これは、LEDによって放出される光の強度が、「順電流」と呼ぶ、LEDに供給される電流によって調節されることを意味する。多くの場合、回路内において電圧源に近接して直列抵抗器が設置され、この抵抗器がLEDを過剰な電流過負荷から保護する。順電圧の値は、この直列抵抗、回路に供給される電圧および(光出力が直接的に順電流に比例することから、所望の強度から計算される)LEDを通る所望の順電流に依存する。
【0011】
通常の商用ビニングプロセスでは、順電圧、ピーク放出波長およびピーク放出強度のうち、製造者にとってのそれらのパラメータの重要性に依存する任意のものにより、作製後のLEDを区分する。先に説明したように、回路に印加される電圧は、一方ではデバイスから放出される光の強度に作用する、ダイオードを通って流れる電流を決定する。したがって、LEDを支持する回路の一部、特に、電力を供給する一部における変動は、LEDの活性層に送達される電流に作用する「直列抵抗」に明示される。図1に概略的に実証するように、仮想ウェーハをダイシングして個別のLED回路に分離し、一般的にVFl、VF2およびVF3として記載される、三つの順電圧グループ分けによって区分する。
【0012】
LEDの接合領域のバンドギャップ幅は、一方では色出力および色度に作用する、放出される光のピーク放出波長を決定する。順電流の任意の一つの値について、ピーク放出波長の範囲(例を挙げれば、色出力)を観察することができる。これを図1に概略的に例証する。順電圧値の各グループについて、LEDを放出波長に基づくサブグループに配置することにより、区分化がさらに進む。図1では、第一に、LEDを横断する順電圧の値により、五つのビニングされたピーク放出波長を最初にグループ分けし;その後、三つの各順電圧ビンについて、LEDをピーク放出波長によってさらに分類する。図1の例では、ピーク波長ビンは、それぞれ、452.5、455.0、457.5、460.0および462.5nmを中心とする。ビン自体は、:450nm未満、450〜425.5nm、425.5〜455nm、455〜457.5nm、457.5〜460nmおよび460nmを上回る範囲を有することができる。
【0013】
いくつかの製造運転は、LED区分化のさらなる精密化を要することができる。例として、図1に記載したそれらのビン(2.5nmの広さ)のそれぞれを色度によって追加的な五つのビンに分割し、そこで、結果として合計で75ビンにすることができる。ビニングプロセスは、無限に続けることができる。例として、各2.5nm幅を有する75ビンを、輝度により、さらに三つのグループに分割することができる。図1の例では、そこで、仮説的なウェーハ上にもともと作製されたLEDチップのすべてについて、合計で225ビンが画定されている。
【0014】
いくつかの事例では望ましいものの、励起源の波長範囲上でビニングを予測することは求められない。いくつかのプロセスでは、各LEDチップ(または「ダイ」)が二つの電極を介して外部回路に電気的に接続され、その後、デバイスの順電圧または照明システムからの光出力電力について、ダイシングされたLEDウェーハが試験される。順電圧による四つのビンへのビニングのための例示的な分類は、3ボルト未満、3.0〜3.2ボルト、3.2〜3.4ボルトおよび3.4〜3.6ボルトである。あるいは、ビニングが光出力電力に基づくとき、そのようなビン分類は、8mW未満、8〜10mW、10〜12mWおよび12〜14mWとして配置することができる。
【0015】
青色/UV LEDの光出力は、照明システム(LEDプラス蛍光体を意味する)の色出力を部分的に決定する。青色GaN系光放出ダイオード(LED)が黄色蛍光体に励起放射を提供することによってもたらされる白色LEDのための色座標評価数(CIE)は、主に、青色LEDからの光の放出波長によって制御される。したがって、個別のLEDチップを蛍光体とペアにすることに関与するマッチングプロセスがある。これまでのところ、産業では、概して、およそ550nm〜およそ575nmの範囲に及ぶ放出波長を有する黄色蛍光体を選択し、それぞれ、およそ450nm〜およそ470nmの範囲に及ぶ青色LED波長にマッチングさせてきたと言うことができる。そのようなマッチングは、所望の色座標評価数、例として、CIE(0.300,0.300)を達成してきた。しかし、多分に、部分的には、青色/UVチップからの放出光波長の変動のため、今日の青色LEDチップ出力を白色LED系照光システムに加工するには、大きいビン/区分化運転が必要である。
【0016】
当技術分野において要望されるのは、放出する光の色度を励起放射における波長/エネルギ変動に応じて補正または「自己調整」する能力を持って設計された蛍光体組成物である。
【発明の概要】
【0017】
本明細書において開示するのは、相伴う青色/UV LEDチップの励起波長の変動に応じて色度を自己調整することができる、「スマート」蛍光体組成物である。蛍光体組成物によって放出される光を、青色/UV LEDチップのライブラリによって放出される光と組み合わせて形成される照明生成は、実質的に一定の色度を有する。この文脈での「一定の色度」という用語は、生成照明の各xおよびy CIE色度座標が参照値の5パーセント以内で変動することを意味する。
【0018】
「スマート」蛍光体組成物は、そのルミネッセンスを引き起こすために使用される放射の波長が増加するにつれて放出強度が減少する第一の蛍光体と、励起波長が増加するにつれて放出強度が増加する第二の蛍光体との組み合わせとして画定することができる。そのような蛍光体組成物の効果は、変動する励起波長の条件下で実質的に一定の色度を実証する、照光方式の実現を包含する。異なる青色LEDチップから放出される光の波長のそのような変動は、主として、青色LEDチップの生産中に起こった製造変動の結果として生起する。製造変動は、バンドギャップ幅の範囲を有する青色LEDチップのバッチにつながることができ、商用運転への帰結は、本開示で前に記載した例示的な手続きであるビニング要求である。
【0019】
本発明の態様は、自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、励起波長の増加と共にその放出強度が増加するように構成された第一の蛍光体;および励起波長の増加と共にその放出強度が減少するように構成された第二の蛍光体を含む、蛍光体組成物に関する。蛍光体組成物によって放出されるフォトルミネッセンスの色度の変動が、励起波長のおよそ10nm範囲にわたり、およそ5パーセント以内である。励起波長の10nm範囲は、およそ450〜およそ460nmにまたがることができる。
【0020】
本発明の一つの態様では、第一の蛍光体が式(Sr,Aχ(Si,A)(O,A2+χ:Eu2+を有するシリケート系橙色蛍光体であり、ここで、Aが2+カチオン、1+および3+カチオンの組み合わせまたはそれらの組み合わせの少なくとも一つであり;Aが3+、4+または5+カチオンであり;Aが1−、2−または3−アニオンであり;およびxが2.5〜3.5の両方を包括する間の任意の値である。この態様では、AがMg、Caおよび/またはBaであり;AがB、Al、Ga、C、Geおよび/またはPであり、AがF、Clおよび/またはBrである。シリケート系橙色蛍光体の特有の例は、SrEu0.06Si1.02(F,Cl)0.18、Sr2.94Ba0.06Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18および(Sr0.9Ba0.12.76Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18である。
【0021】
この態様では、第二の蛍光体が式(Sr,Aχ(Si,A)(O,A2+χ:Eu2+を有するシリケート系緑色蛍光体であることができ、ここで、AがMg、Ca、Ba、Zn、K、Na、Li、Bi、Y、Laおよび/またはCeであり;AがB、Al、Ga、C、Ge、Nおよび/またはPであり;ならびにAがF、Cl、Br、Nおよび/またはSであり、xが1.5〜2.5の両方を包括する間の任意の値である。第二の蛍光体の特有の例は、Sr0.925Ba1.025Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12、Sr1.025Ba0.925Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12およびSr1.125Ba0.825Mg0.05Eu0.06Sil.03(F,Cl)0.12である。
【0022】
フッ素(F)および塩素(Cl)ハロゲンドーパントの使用は、ハロゲンの選定が蛍光体組成物の自己調節特性に対してほとんどか、まったく関連性を有さないので、これらの組成物において交換可能である。
【0023】
本態様によると、白色LED系照明システムは、従来の蛍光体パッケージで可能であったであろうよりも広い、青色/UV放出源の広い配列にマッチングされた、自己調整スマート蛍光体組成物を含む。励起における5nm範囲の例は、照明システムの所望の色度をx±0.01およびy±0.01の狭い範囲内に維持することができる、452.5nm〜457.5nmである。CIE図上の生成照明の変動は、x値でおよそ0.300±0.01およびy値で0.300±0.01から変動するであろう。目下、それらの青色LEDチップを区分するには、青色/UV励起波長の2.5nm変動ごとに少なくとも五つのビンを要し;その後には、存在する白色LED要望を満たすため、五つの異なる画定されたCIE領域にもう一つの少なくとも五つのビンを要するであろう。現在の方法では、各ビンで輝度および電圧を区分することが求められることを要し、最後には、LEDパッケージング集団が168ビンを有する。
【0024】
もう一つの態様では、ピーク放出波長範囲が5nmよりも大きい(ここでもまた、452.5nm〜457.5nmの例示的な範囲を使用する)、青色/UV LEDチップの配列(数千以上であることができる)を含有する、青色/UV LEDウェーハ上に新規のスマート蛍光体を塗布することにより、白色LEDウェーハを製造することができる。そのようなウェーハからもたらされる個別の白色LEDチップのCIE(x,y)値をx±0.01およびy±0.01の範囲内、ここでもまた、xが0.300±0.01およびyが0.300±0.01であるCIE図の領域内に制御することができる。本技術は、ウェーハにわたって青色/UVの変動がおよそ5nmを超える状況、例えば、今日の産業において存在する10nm変動に対して適用可能であると想定される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】堆積状態のウェーハからダイシングした青色LEDチップをスペクトルの出力によって異なるビンに「ビニング」または分類し、その後、ビンを蛍光体にマッチングさせ、ここでもまた一度、今度は白色光出力のCIE領域によってビニングし;その後、各CIEビンを輝度によって区分し、結果的に合計で225ビンになる、順電圧、輝度および励起波長による区分化プロセスの概略である。
【図2】本態様による例示的な蛍光体組成物の二つの個別の蛍光体の放出スペクトルであり;グラフは、a)青色LED励起により、450nm、455nmおよび460nmのピーク放出波長で励起された緑色放出シリケート系蛍光体の放出;b)同じ三つのピーク放出波長によって励起された橙色放出シリケート系蛍光体の放出スペクトル;およびc)緑色および橙色蛍光体の両方を含む二成分シリケート系自己調整蛍光体組成物の放出スペクトルである。
【図3】ピーク放出波長が450、455および460nmである三つの異なる青色LEDから放出される青色光の位置だけでなく、スマート蛍光体組成物がその450、455および460nm光によって励起されたときに緑色/橙色「スマート蛍光体」組成物から放出される光の三つの位置も示すCIE図であり;本態様は、450nmデータ、455nmデータおよび460nmデータを接続することにより形成される三つの各線が、同じCIE目標点(この場合は座標x=0.300およびy=0.300を有する)を通過するという予期せぬ観察に基づく。
【図4A】452〜462の範囲に及ぶ励起波長に対してプロットしたCIE色度座標(それぞれ、xおよびy)のグラフであり、データは、例示的なスマート蛍光体組成物である(0.8)Sr1.025Ba0.925Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12および(0.2)Sr2.94Ba0.06Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18のCIE座標がこの波長範囲内では実質的に一定であり、いずれかの座標においてもおよそ1パーセント以内で変動しているのに対し、黄色蛍光体であるSr1.5Ba0.45Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12がxで4パーセントの変化およびyで8パーセントの変化を示すことを示す。
【図4B】452〜462の範囲に及ぶ励起波長に対してプロットしたCIE色度座標(それぞれ、xおよびy)のグラフであり、データは、例示的なスマート蛍光体組成物である(0.8)Sr1.025Ba0.925Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12および(0.2)Sr2.94Ba0.06Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18のCIE座標がこの波長範囲内では実質的に一定であり、いずれかの座標においてもおよそ1パーセント以内で変動しているのに対し、黄色蛍光体であるSr1.5Ba0.45Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12がxで4パーセントの変化およびyで8パーセントの変化を示すことを示す。
【図5A】様々な蛍光体について放出の主な色を与え、さらに、それらの蛍光体を、励起波長の増加と共に放出強度が増加するグループと、励起波長の増加と共に放出強度が減少するグループ(および増加、中立および減少挙動の両方が実証された一つの場合)とに類別するチャートである。
【図5B】青色/UVチップ作製変動の結果として励起波長が変動するにつれても、その放出の色度を自己調整する能力がある蛍光体ペア(または組成物)として記載することもできる、励起波長に変動があっても実質的に一定である色度の特性を実証する蛍光体ペアとなるよう、同じ一覧の蛍光体が列だけでなく行にも配置されたチャートである。
【図6A】400〜500nm(図6A)および400〜およそ570nm(図6B)の波長範囲にわたる、MSiO:Eu2+タイプ(図6A)の三つの例示的なシリケート系緑色蛍光体およびMSiO:Eu2+形態(図6B)の三つの橙色蛍光体の励起スペクトルの集合である。
【図6B】400〜500nm(図6A)および400〜およそ570nm(図6B)の波長範囲にわたる、MSiO:Eu2+タイプ(図6A)の三つの例示的なシリケート系緑色蛍光体およびMSiO:Eu2+形態(図6B)の三つの橙色蛍光体の励起スペクトルの集合である。
【図7A】図6Aおよび6Bと同じ緑色および橙色蛍光体の励起スペクトルであるが、しかし、いわゆる「グループA蛍光体」からの例示的な蛍光体が放出強度において15パーセントの増加を示すのに対し、「グループB蛍光体」の代表が同じ波長範囲にわたって25パーセントの減少を実証することを示すため、440〜470nmの励起波長範囲にわたってプロットした集合である。
【図7B】図6Aおよび6Bと同じ緑色および橙色蛍光体の励起スペクトルであるが、しかし、いわゆる「グループA蛍光体」からの例示的な蛍光体が放出強度において15パーセントの増加を示すのに対し、「グループB蛍光体」の代表が同じ波長範囲にわたって25パーセントの減少を実証することを示すため、440〜470nmの励起波長範囲にわたってプロットした集合である。
【図8】市販されている蛍光体であるGP−4、YAGおよびTAGの励起スペクトルである。
【0026】
発明の詳細な記載
【0027】
本明細書において開示するのは、相伴う青色/UV LEDチップの励起波長の変動に応じて自らの色度を受動的に調整する(以降、「自己調整」という用語)ことができる「スマート」蛍光体組成物である。蛍光体組成物によって放出される光を、青色/UV LEDチップのライブラリまたは選択によって放出される多様な光と組み合わせることにより、形成される照明生成は、実質的に一定の色度を有する。この文脈での「一定の色度」という用語は、生成照明の各xおよびy CIE色度座標が参照値の5パーセント以内で変動することを意味する。
【0028】
一般的な運転原理
【0029】
図2および3のデータを調査することにより、「スマート」蛍光体組成物の運転の原理を例証することができる。図2は、例示的なスマート蛍光体組成物の放出スペクトルであり;一つが「緑色」、他が「橙色」と標記された、その二つの成分蛍光体を伴ってプロットされている。組成物は、「緑色+橙色」である。組成物のピーク放出波長は、個別の緑色および橙色成分のそれに対していくぶん中間の位置にあることが観察される。「緑色」および「橙色」という用語を使用し、蛍光体の実際の色にかかわらず、黄色に対して相対的により高いおよびより低いエネルギを指し示すことが理解される。図2の左側には、三つの各サンプルを励起した際の三つの波長を表す三つの高く狭いピークがあり;これらのピークは、450、455および460nmを中心とする。
【0030】
図2のデータは、緑色蛍光体への励起放射の波長が450から460nmに5nm刻みで増加するにつれ、それに応じて、緑色蛍光体によって放出される光の強度が減少することを示す。あるいは、橙色蛍光体を励起するために使用される光の波長が450から460nmに増加するにつれ、それに応じて、橙色蛍光体によって放出される光の強度が増加する。予期せぬなお好ましい帰結は、橙色および緑色光の結果的な組み合わせに生じるものである:励起放射の波長の増加と共に、組み合わせられた放出の波長が増加するのみならず、組み合わせられて放出される光の強度も増加する。
【0031】
任意の特定の理論によって拘束されることは望まないものの、個別の緑色および橙色蛍光体の観察された挙動は、励起光からの光子のエネルギと蛍光体の電気バンドギャップとの間のマッチングの性質によって説明することができ;マッチングの「質」は、蛍光体が光を放出する際の効率に関連する。緑色蛍光体によって放出される光は、橙色蛍光体によって放出されるそれに対して相対的により高いエネルギおよびより短い波長を有し、緑色蛍光体がより大きいバンドギャップを有することを指し示す。したがって、ピーク励起波長が増加するにつれ、この励起放射のエネルギが減少し、緑色蛍光体の(橙色に対して相対的に)大きいバンドギャップに対してますます最適にマッチングしなくなり、放出の強度が減少する。対照的に、橙色蛍光体のバンドギャップは、緑色蛍光体よりも小さく、励起波長が増加するにつれ、光子のエネルギが減少し、励起は、橙色蛍光体の(緑色に対して相対的に)より小さいバンドギャップに対してますます良くマッチングするようになる。橙色蛍光体が放出する際の効率は、青色LED光の波長が増加するにつれて増加し、より低いエネルギ励起に対し、橙色蛍光体のより低いバンドギャップがより適切にマッチングされることを指し示す。
【0032】
「スマート」蛍光体組成物は、そのルミネッセンスを引き起こすために使用される放射の波長が増加するにつれて放出強度が減少する第一の蛍光体と、励起波長が増加するにつれて放出強度が増加する第二の蛍光体との組み合わせとして画定することができる。そのような蛍光体組成物の効果は、変動する励起波長の条件下で実質的に一定の色度を実証する、照光方式の実現を包含する。異なる青色LEDチップから放出される光の波長のそのような変動は、主として、青色LEDチップの生産中に起こった製造変動の結果として生起する。製造変動は、バンドギャップ幅の範囲を有する青色LEDチップのバッチにつながることができ、商用運転への帰結は、本開示で前に記載した例示的な手続きであるビニング要求である。
【0033】
ここでもまた、これらの概念を特有のデータで例証する図2に戻ると、例示的なスマート蛍光体組成物の二つの個別の蛍光体の放出スペクトルを観察することができる。グラフは、:a)青色LED励起により、450nm、455nmおよび460nmのピーク放出波長で励起された緑色放出シリケート系蛍光体の放出;b)同じ三つのピーク放出波長によって励起された橙色放出シリケート系蛍光体の放出スペクトル;およびc)個別の緑色および橙色蛍光体を含む二成分シリケート系スマート蛍光体組成物の放出スペクトルである。二成分組成物のフォトルミネッセンスは、二つの個別の緑色および橙色蛍光体と同じ様態;つまり、450、455および460nmで誘起した。
【0034】
図2を参照すると、緑色蛍光体は、励起波長が450から460nmに増加するにつれ、強度において少なくとも10パーセント減少することが見られ、緑色光放出のピーク放出波長は、およそ530〜540nmを中心としていた。対照的に、橙色蛍光体は、励起波長が同じく変動するにつれ、強度において少なくとも10パーセント増加することが見られた。合成光は、励起波長の増加と共に放出強度においておよそ5パーセントの増加を実証し、緑色蛍光体が橙色よりも高強度であるにもかかわらず、およそ580nmを中心とする黄色−橙色であった。
【0035】
本態様の効果は、おそらく、データをCIE色度図上で図示的に視認するとより良く認識される。図3に示すのは、放出されたエレクトロルミネッセンス光のそれぞれ450、455および460nmのピーク波長によって明示される、異なるバンドギャップ幅を有する三つの異なる青色/UV LEDから放出された青色光についてプロットした色度座標である。図3には、450、455および460nmで励起したスマート蛍光体から放出された光のCIEのxおよびy座標もプロットしている。
【0036】
ここでもまた図3を参照すると、CIE色度図上の第一の線は、xおよびy座標が青色/UV LEDから放出された450nm光に対応する点と、座標が図の黄色領域にある点とを接続する。図の黄色がかった領域における点は、青色チップからの450nm光による励起時の「緑色/橙色」スマート蛍光体組成物からの光の放出によって発生する。同じように、455nm青色光に特有のxおよびy座標を有する線の一つの終端における点と、455nm放射による励起時のスマート蛍光体の放出を表す線の他の終端における点とを接続し、第二の線を引くことができる。最後に、460nm青色LEDからの460nm青色光の座標と、460nm光でのスマート蛍光体の励起によって発生させた光の座標とを接続し、第三の線を引くことができる。本態様は、これらの三つの各線(450nmデータを接続する第一の線、455nmデータを接続する第二の線および460nmデータを接続する第三の線)が実質的にCIE図上の共通点、この場合、xおよびy座標(0.300,0.300)を有する望ましい目標色を通過するという予期せぬ観察に基づく。
【0037】
本態様の有意な効果として、励起波長の望ましくないばらつきがあっても、蛍光体組成物の広い範囲内で実質的に一定の色度が実現される。本態様の効果のなかでも、スマート蛍光体組成物にLED可変性に応じてその光出力の色度を「自己調整」する能力があるため、もはや(少なくとも以前の程度では)青色/UV LEDチップを「区分」または「ビニング」することが要望されない。図3の例では、色度は、励起波長における10nmの変化にわたって実質的に一定であった。450〜460nm範囲内では、励起波長にかかわらず同じ色度仕様が達成されることから、青色/UV LEDチップの任意のさらなる区分化が要望されることはなかったであろう。
【0038】
およそ(0.3,0.3)およびおよそ(0.45,0.4)を通過する曲線的な線に沿ってある色度座標の軌跡は、黒体軌跡(BBL)に沿ってあると言われるため、色度を実質的に一定の値に維持する機能が重要である。これは、プランクの方程式:
【数1】


によって画定される点の軌跡である。ここで、Eが蛍光体組成物の放出強度であり、λが放出波長であり、Tが黒体の色温度であり、AおよびBが定数である。BBL軌跡の点上または近くにある色座標は、人間の観察者にとって心地よい白色光を生み出す。したがって、図3に示すように、色座標が実質的にBBL曲線と重なるか、近傍であるような位置付けに保持される組成物を設計することができる。この特質は、青色/UVチップの光学性能が相当な範囲にわたって変動することができる、白色光照明用途において特に望ましい。
【0039】
色度を自己調整し;それにより、励起波長の変動下であっても色度を実質的に一定の値に維持する、本組成物の能力のさらなる実証を図4Aおよび4Bに示す。図4Aは、「SMP」および「黄色蛍光体」と標記された、二つの異なる蛍光体についてのCIE「x」座標対励起波長(452から462nmに変動)のプロットである。試験した黄色蛍光体は、式Sr1.5Ba0.45Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12を有した。ここで試験した例示的なスマート蛍光体(SMP)は、式(0.8)Sr1.025Ba0.925Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12および(0.2)Sr2.94Ba0.06Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18を有する二つの蛍光体成分の混合であった。これらの式では、(F,Cl)という記述は、自己調整色度の特性に関わる限り、フッ素(F)および塩素(Cl)ハロゲンドーパントが交換可能であることを指し示す意図がある。換言すると、これらの組成物におけるハロゲンの選定は、蛍光体組成物の自己調節特性に対してほとんどか、まったく関連性を有さない。
【0040】
図4Aおよび4Bの考査は、黄色蛍光体のx色度座標値がおよそ0.301から0.288に、またはおよそ4パーセント減少したのに対し、y座標がおよそ0.297から0.323にか、またはおよそ8パーセント増加したことを示す。対照的に、スマート蛍光体(SMP)のx座標は、同じ波長範囲にわたる変動が1パーセント未満であり、およそ0.303から0.305にわずかに増加した。同じように、スマート蛍光体のy座標は、およそ0.294から0.292に、ここでもまた1パーセント未満と非常にわずかにのみ減少した。
【0041】
スマート蛍光体のグループAおよびグループB成分
【0042】
概して、自己調整色度を有する蛍光体組成物は、励起波長の増加と共に放出強度が減少するという共通の傾向を構成物が共有する、いわゆるグループ「A」からの蛍光体と、構成物が逆の傾向を示す:励起波長が増加するつれ、放出強度が増加する、グループ「B」蛍光体とを混合することによって発生させることができる。例示的な波長範囲は、450〜460nmである。
【0043】
相反する傾向を使用して蛍光体をグループ分けすることは、直感的に有意義である。蛍光体の放出強度は、その励起放射を吸収する際の効率に関連し、一方で、この効率は、励起放射からの光子と蛍光体のバンドギャップ幅との間のエネルギのマッチングに関連する。この場合、UV/青色LEDからの光は、蛍光体に励起放射を提供し、一つの態様では、UV/青色LEDが450〜460nmの波長範囲にわたる励起放射を提供する。
【0044】
グループAおよびグループB蛍光体の間の分割は、一般的に、黄色光の光子のエネルギと実質的に等価であるバンドギャップエネルギで作ることができる。したがって、グループA蛍光体は、黄色蛍光体のより高いエネルギ側にあると言うことができ、青色、緑色および黄色−緑色蛍光体を包含する。グループB蛍光体は、黄色蛍光体のより低いエネルギ側にあると言うことができ、黄色−橙色、橙色および赤色蛍光体を包含する。フォトルミネッセントプロセスにおいて、蛍光体は、励起放射の光子から、蛍光体から放出される光子へと吸収されるエネルギを「下方変換」しており、放出のエネルギは、電子の緩和プロセスが起こる蛍光体のバンドギャップに関連し、このエネルギ差は、放出される光子のエネルギに等しい。
【0045】
より大きいバンドギャップを持つグループA蛍光体の下方変換は、より短い波長の光を意味する、より高いエネルギの励起放射でより効率的である。したがって、励起のエネルギが低減するにつれ、放出強度が減少する(450から460nmへの励起波長の増加がエネルギにおける減少であることに留意する)。
【0046】
対照的に、グループB蛍光体は、黄色の橙色側にあり、より小さいバンドギャップ幅のため、グループA蛍光体に対して相対的により低いエネルギ(より長い波長)の光を放出する。この場合、少なくとも指定された波長範囲内では、蛍光体がますます低いエネルギによって励起されるにつれ、下方変換プロセスがより効率的に起こる。したがって、グループB蛍光体の放出強度は、励起波長の増加と共に増加する。
【0047】
自己調整蛍光体を設計するために使用することができる原理を図5Aおよび5Bに示す。図5Aは、(表の左方の四つの列にある標記:緑色、黄色、橙色および赤色によって見られるように)蛍光体の放出の色により、例示的な蛍光体の選択を類別する表である。図5Aの表には、グループA蛍光体(励起波長が増加するにつれ、放出強度が減少する)またはグループB蛍光体(励起波長が増加するにつれ、放出強度が減少する)としての特徴付けも示す。この方式によって類別される例示的な蛍光体は、左端列に一覧化されており、市販されている蛍光体、科学および/または特許文献に記載される蛍光体および本発明者らに属する新規の蛍光体を包含する、異なる種類の蛍光体を包含する。「EM色」(「EM」は放出を表現する)の下の緑色、黄色、橙色および赤色と標記された四つの列は、フォトルミネッセンスの色を参照する。
【0048】
左端列の上部にある三つの蛍光体は、「Gシリーズ」、「Yシリーズ」および「Oシリーズ」と標記されており、本発明者らが開発した蛍光体組成物を参照し、各シリーズは、それぞれ、実質的にスペクトルの緑色、黄色および橙色領域で放出する。YAGは、通例に公知の材料であるイットリウムアルミニウムガーネットであり、式YAl12:Ce3+を有し、テルビウムアルミニウムガーネットTAGの式は、TbAl12:Ce3+である。YAGおよびTAGは、それぞれスペクトルの黄色および橙色領域で放出する、市販されている蛍光体である。GP−4は、緑色放出YAG蛍光体であり、市販もされており、式Y(AlGa)12:Ce3+を有し、YAGおよびTAGのように、それも三価セリウムによって活性化される。
【0049】
左端列におけるそれら上部の三つの蛍光体の下に三つの硫化物系蛍光体があり、それらの下に窒化ケイ素および酸窒化ケイ素に基づく三つの蛍光体がある。硫化物のうち、二つは、相対的に狭いスペクトルの範囲で放出し、SrGa:Euが緑色であり、CaS:Euが赤色である。それと区別されるのが、緑色、黄色、橙色および赤色の色を包含する広範なスペクトルの範囲で放出するように構成することができる、硫化物であるZnSe1−x:Cuである。窒化ケイ素および酸窒化ケイ素は、相対的に大きいスペクトルの範囲にわたって放出することもでき、アルカリ土類成分の相対的な量において組成物上の変化を作ると、SrSi:Euが緑色および黄色で放出し、(Sr,Ba,Ca)Si:Euが黄色、橙色および赤色で放出する。単一の元素を使用してアルカリ土類成分を固定した少なくとも一つの場合、蛍光体は、スペクトルのより狭い範囲、主として単一の色の範囲内で放出した。例として、窒化ケイ素系蛍光体であるSiSi:Euは、赤色で放出した。
【0050】
ここでもまた図5Aを参照すると、標記「EX曲線(450〜460nm)」を見出しとする、表の右方端側にある三つの列は、さらに、三つの条件:1)上方および右に向かって傾斜する矢印、2)水平線および3)下方および右に向かって傾斜する矢印によって識別される。これらの標記は、450〜460nmの範囲内で励起波長が増加するにつれ、特定の蛍光体がそれぞれ:1)放出強度の増加、2)強度の無変化または3)強度の減少を示すかどうかを参照する。例として、図5Aの上部の行における減少する矢印の下のある影付きの枠は、励起波長が増加するにつれ、Gシリーズ蛍光体が放出強度の減少を実証することを意味する。対照的に、第三の行にある影付きの枠は、励起放射の波長が増加するにつれ、Oシリーズ蛍光体が放出強度の増加を呈することを言う。この挙動により、蛍光体を本態様のグループAまたはグループBのいずれかに類別する。
【0051】
図5Aの橙色および緑色蛍光体によって実証された傾向は、いくぶん予測可能であるものの、容易に明白でないのが黄色蛍光体の挙動である。黄色蛍光体は、グループAおよびグループBの中間のパターンを呈する;換言すれば、励起波長の増加と共に放出強度の変化を示さないと予期することができる。このシナリオを予期することができるは、これらの黄色蛍光体が、可視で放出するすべてのフォトルミネッセント蛍光体によって画定される範囲の中間であるバンドギャップエネルギを有することから、励起エネルギの変動に対する黄色蛍光体の感度がいくぶん劣るためである。しかし、これは、黄色蛍光体がときにはグループA分類に、ときにはグループB分類に入り、ときには挙動があまりにも複雑で分類できないことが明らかであるにので、該当しない。
【0052】
グループB蛍光体として分類することができる黄色蛍光体の例は、本発明者らが開発したYシリーズ(ただし、これらは、下に記載するように、より的確に「黄色−緑色」として記載することができる)および酸窒化ケイ素であるSrSi:Euである。グループAに入る蛍光体の一つの例は、ごく従来の市販されている、Ceドーピングされた蛍光体である黄色YAGであり;もう一つは、窒化ケイ素化合物である(Sr,Ba,Ca)Si:Euである。前者の観察は、黄色YAGをより的確に黄色−橙色蛍光体として考慮することができるのに対し、アルカリ土類元素の比率を介して窒化ケイ素の出力を調整できることを示唆することができる。銅で活性化した硫化物蛍光体であるZnSe1−x:Cuは、緑色、黄色、橙色および赤色の任意の色を放出するように構成することができることにおいて解釈が困難な挙動を有し、この蛍光体の特有のグループへの分類化は、図5Aには示さない。
【0053】
特に色度を自己調節する能力の観点から、他のグループA/グループBのペアを判定することができる基準は、MSiOタイプの「Gシリーズ」蛍光体をMSiOタイプの「Oシリーズ」蛍光体と組み合わせることによって作られる組成物であり、Mは、両方のタイプのシリケートにおけるアルカリ土類元素であり、GおよびOシリーズの蛍光体は、本発明者らによって開発された。Gシリーズ蛍光体は、Yシリーズの蛍光体がMSiO構成を有する、ここでもまた本発明者らに属するYシリーズの蛍光体と組み合わせて使用することもできる。後者は、図5Aでは黄色で放出するように表されるが、これらの化合物についてこれまでに出願された開示は、それらが黄色よりも「黄色−緑色」であることを示す実験データを提供しており、より高いエネルギの緑色寄与により、それらにはグループB類別が与えられている。スマートペアのもう一つの例は、GまたはYシリーズ蛍光体と従来のセリウムドーピングされた黄色YAG蛍光体とによって与えられ、後者がグループA蛍光体として振る舞い、したがって「黄色−橙色」として考慮することができることに留意する。なおもう一つのスマート蛍光体は、グループB(GまたはYシリーズ)蛍光体と橙色TAG蛍光体との組み合わせによって示唆され、確かにこれが正しいことが証明されている。
【0054】
これまでに指摘したように、グループA蛍光体とグループBとの組み合わせのすべてが一定の色度特性をもたらすことに成功するわけではない。組み合わせにより、任意の有意な「スマートな働き」をもたらさない、グループA蛍光体とグループB蛍光体とのペアの例は、図5Bの「YAG」を見出しとする列および「GP−4(緑色YAG)」と標記された行の影付きでない欄として示す、市販されている緑色YAG(GP−4とも称する)およびセリウムドーピングされた黄色YAG蛍光体である。
【0055】
励起スペクトルによって対照したグループAおよびBの挙動
【0056】
励起スペクトルに関して対照的な挙動を有する本発明のグループAおよびグループB蛍光体をさらに図6A、6B、7Aおよび7Bに例証する。図6Aおよび6Bは、400〜500nmの間で測定した励起スペクトルであり、緑色蛍光体であるG525、G530およびG535は、特におよそ450から500nmの波長において、励起波長の増加と共に放出強度の減少を示す。対照的に、橙色シリーズの蛍光体であるO5446、O5544およびO5742の放出強度は、一般的に、励起がおよそ450nmからおよそ520〜540nmに増加するにつれ、増加する。540nmよりも長い波長では、橙色シリーズの蛍光体であっても、励起波長の増加と共に放出強度が減少する。図6A、6B、7Aおよび7Bの励起曲線をもたらすために使用したこれらの例示的な橙色蛍光体の組成物は、:O5446ではSrEu0.06Si1.02(F,Cl)0.18であり;O5544ではSr2.94Ba0.06Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18であり、O5742では(Sr0.9Ba0.12.76Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18である。ここでもまた、「(F,Cl)」という記述は、これらのハロゲンが交換可能であることを意味する。
【0057】
グループAおよびグループB蛍光体の挙動のさらなる定量化を図7Aおよび7Bに示す。このデータ一式は、青色/UV励起源の青色領域内では、励起波長が440から470nmに増加するにつれ、O5742、O5746およびO5544の標記によって具体的に識別される橙色タイプ蛍光体一式が放出強度において増加することを示す。これは、放出強度におけるおよそ15パーセントの増加を表す。他方、緑色タイプ蛍光体であるG530、G535およびG525は、図7Bに例証するように、放出強度においておよそ25パーセント減少する。
【0058】
市販されている蛍光体であるYAG、TAGおよびGP−4の励起スペクトルを図8に与える。
【0059】
スマート蛍光体ペアの特有の例
【0060】
本発明者らのGおよびOシリーズ蛍光体が与えるスマート蛍光体性能の基準に追加して、そこで、少なくとも一つの市販されているおよび/または先行技術による成分蛍光体を利用する例を提供する。蛍光体のペアを試験した結果を図5Bに要約し、影付きの欄は、その特定の組み合わせの蛍光体が少なくともいくつかの度合いの自己調節能力を呈することを指し示す。本発明の一つの態様では、スマート蛍光体は、グループBの緑色YAG蛍光体とグループAの橙色TAG蛍光体とを含む。本発明者らのグループBのYシリーズ蛍光体は、グループAの橙色TAG蛍光体と組み合わせることもできる。
【0061】
もう一つの態様では、スマート蛍光体は、グループBの緑色SrGa:Eu蛍光体と、本発明者らが発明し、これまでに開示したグループAのOシリーズ蛍光体とを含む。緑色SrGa:Eu蛍光体は、グループAの黄色YAGまたは橙色TAG蛍光体のいずれかと組み合わせることもできる。
【0062】
本発明のもう一つの態様では、スマート蛍光体は、グループAの赤色CaS:Eu蛍光体と、本発明者らが提供するGまたはYシリーズのシリケート系緑色および黄色−緑色蛍光体のいずれかからの蛍光体とを組み合わせることによって作られる。赤色CaS:Euは、他のグループB蛍光体、例えば、GP−4緑色YAGおよび緑色SrGa:Eu蛍光体と組み合わせることもできる。
【0063】
銅で活性化した蛍光体であるZnSe1−x:Cuは、緑色、黄色、橙色および赤色の四つのうちの任意の色で放出するように構成することができることにおいて、これらの例のなかでいくぶん異例である。これらの特に構成された蛍光体を緑色ZnSe1−x:Cu、黄色ZnSe1−x:Cu、橙色ZnSe1−x:Cuおよび赤色ZnSe1−x:Cuと呼ぶ。本発明のもう一つの態様では、スマート蛍光体は、グループAの赤色ZnSe1−x:Cuと、グループBのGまたはYシリーズ蛍光体のいずれかの一つ以上とを含む。緑色または黄色ZnSe1−x:Cu蛍光体は、理論に沿い、黄色YAG、橙色TAGおよび赤色CaS:Eu蛍光体からなるグループから選択される、任意のグループA蛍光体と組み合わせることができる。
【0064】
そこで、酸窒化ケイ素に目を向けると、グループBの緑色(および/または黄色)SrSi:Eu化合物は、一つの態様では、これまでに開示された本発明者らのOシリーズのシリケート系蛍光体、黄色(場合によっては黄色−橙色)YAG、橙色TAG、赤色CaS:Euおよび赤色ZnSeχ1−x蛍光体からなるグループから選択される、任意のグループA蛍光体と組み合わせることができる。
【0065】
窒化ケイ素化合物である(Sr,Ba,Ca)Si:Euの周辺では、多数のスマート蛍光体組成物を設計することができる。この化合物におけるアルカリ土類元素の相対的な含有量を変動させ、緑色、黄色、橙色または赤色のいずれかの色を放出する蛍光体の「ファミリー」を所望のように構築することができる。それに応じて、この蛍光体の緑色および黄色放出バージョンがグループBの挙動を実証し;橙色および赤色バージョンがグループAの挙動を実証する。シリーズの各構成物は、その放出色によって識別することができる:(Sr,Ba,Ca)Si:Euであれば、黄色(Sr,Ba,Ca)Si:Eu、橙色(Sr,Ba,Ca)Si:Eu、赤色(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体など。
【0066】
本発明のいくつかの態様では、スマート蛍光体は、グループBの緑色および/または黄色(Sr,Ba,Ca)Si:Eu窒化ケイ素蛍光体と、本発明者らがこれまでに開示したグループAのYシリーズまたはOシリーズのシリケート系蛍光体とを含む。あるいは、緑色および/または黄色(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体をグループAの黄色YAGまたは橙色TAG蛍光体とペアにすることができる。それは、グループAの硫化物、赤色CaS:EuまたはZnSe1−x:Cuのいずれかとペアにすることもできる。
【0067】
広いスペクトルの範囲にわたって放出するように構成することができる蛍光体組成物に共通しているのは、緑色または黄色バージョンの蛍光体を橙色または赤色バージョンの同じ蛍光体とペアにする能力であり、この状況でも、有利には、窒化ケイ素ファミリーである(Sr,Ba,Ca)Si:Euを使用する。この態様では、グループBの緑色または黄色(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体をグループAの橙色または赤色(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体とペアにし、この態様の組成物の大部分が(Sr,Ba,Ca)Si:Euである。
【0068】
スマート蛍光体は、橙色(Sr,Ba,Ca)Si:Euおよび赤色(Sr,Ba,Ca)Si:Euによって指定される、そのグループA構成における(Sr,Ba,Ca)Si:Euの周辺で設計することもできる。本発明の一つの態様では、スマート蛍光体は、グループAの赤色(Sr,Ba,Ca)Si:Euと、Gシリーズのシリケート系蛍光体、Yシリーズのシリケート系蛍光体および緑色SrSi:Eu蛍光体からなるグループから選択されるグループBの蛍光体とを組み合わせることによって作られる。
【0069】
GシリーズおよびYシリーズのシリケート系蛍光体組成物
【0070】
そこで、本態様のGシリーズおよびYシリーズ蛍光体のより一般的な記載を与える。Gシリーズの蛍光体は、式(Sr,A(Si,A)(O,A2+x:Eu2+を有するシリケート系化合物を含み、ここで、Aがマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは亜鉛(Zn)を包含する少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)であるか、1+カチオンがK、NaおよびLiを包含することができ、3+カチオンがCs、Y、Ce、BiおよびLiを包含することができる、1+および3+カチオンの組み合わせである。Aカチオン成分は、いくつかの2+カチオンと、実質的に等しい数の1+および3+カチオンとの組み合わせを含むことができる。Aは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)およびリン(P)の少なくとも一つを包含する、3+、4+または5+カチオンである。Aは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、窒素(N)および硫黄(S)を包含する、1−、2−または3−アニオンである。Xの値は、1.5〜2.5の両方を包括する間の任意の整数または非整数である。本発明の一つの態様では、xが2ではない。式は、Aカチオンがストロンチウム(Sr)を置換し;Aカチオンがケイ素(Si)を置換し、Aアニオンが酸素(O)を置換することを指し示すように書かれる。本発明の一つの態様では、Aが硫黄(S)であることができ、蛍光体が酸化物ではなく、むしろ実質的に硫化物であるように化合物中に酸素がほとんどか、まったくないことができる。
【0071】
G.Blasseらにより、Philips Research Reports Vol.23、No.1、pp.1−120で教示されるように、Eu2+が2原子パーセント濃度であるβ−CaSiO:Eu、SrSiO:EuまたはBaSiO:Eu組成物の結晶構造は、KSOのようである。したがって、本Gシリーズの緑色シリケート蛍光体は、同じようなホスト格子を有すると想定される。
【0072】
これらのGシリーズ蛍光体の光学特性は、他の方法のなかでも、ストロンチウムに対するAカチオンの比率を調整することによって制御することができ、ここで、Aがアルカリ土類元素もしくは遷移金属元素またはそれらの組み合わせであることができる。例として、(Sr1−xBaSiO蛍光体システムでは、ピーク放出が起こる波長位置は、x=l(換言すると、アルカリ性金属含有量が100パーセントBaであるとき)の500nmにおける緑色から、x=0(100パーセントSr)のときの580nmにおける黄色に変化する。450nmでの同じ光源からの変換効率は、Baが0からおよそ90パーセントに増加するとき、継続的な増加を示す。x=0.3のときに得られた545nmのピーク放出波長は、YAG:Ceのピーク放出波長のそれに接近する。
【0073】
本発明者らの自らのGシリーズ緑色シリケート系蛍光体にAアニオンを包含するための様々な方途がある。一つの態様では、加工の液体相工程中の蛍光体組成物、例えば、ゾルゲルまたは共沈加工方法中に直面するものにハロゲンを追加する。この液体加工では、分子レベルで攪拌を行うことができ、後段の結晶化工程(例を挙げれば、焼結)に先行し、組成物内でAアニオンが良く分散する。本発明者らは、これまでに、A3アニオンが放出強度およびピーク波長の両方に影響することを確認している。任意の特定の理論によって拘束されることは望まないものの、これらの蛍光体Euドーピングされたシリケート系蛍光体のルミネッセンスは、Euドーピングされた蛍光体のため、Eu2+付活剤における4f5dから4fへの電子の遷移のためであると思われる。放出波長は、5dレベルの結晶場分裂に依存する。結晶場の強さの増加と共に、放出波長が増加する。5dから4fへの遷移のルミネッセンスピークエネルギは、結晶内の電子間反発に作用するパラメータ;換言すると、Eu2+カチオンとそれを囲むアニオンとの間の距離およびカチオンとイオンとの間の平均距離に最も作用される。
【0074】
液体加工は、少なくともいくつかのAアニオンがホストシリケートのO2−アニオンを置換し、結晶格子に取り込まれるようになることを可能にする。Aアニオンがハロゲンの場合のように一価であるとき、その後、結晶格子にカチオン空孔を作り、電気電荷中立性を維持することができる。カチオン位置の空孔により、カチオンとアニオンとの間の平均距離が低減することから、結晶場の強さが増加する。そのため、放出曲線のピークは、ハロゲン含有量が増加し、よりカチオン空孔が作られるにつれ、より長い波長に移動する。放出波長は、当該電子の基底状態と励起された状態との間のエネルギギャップに直接的に関連し、一方で、これは、結晶場の強さによって決定される。
【0075】
本シリケート系蛍光体の場合、(ハロゲン含有量のある範囲内で)増加するハロゲン含有量の関数として放出波長が増加するという事実は、ハロゲンがホスト格子に取り込まれる、最も高い可能性としては、酸素格子サイト上に置き換えで置かれることの強い証拠である。本発明の一つの態様では、Aアニオンがフッ素または塩素である。ハロゲンが格子に取り込まれることの追加的な証拠は、少なくともGシリーズ蛍光体の場合にAカチオンであるリン(P)を組成物に追加するときのデータによって提供される。リンの追加により、放出波長が実質的に変化することはなく、これは、ここでもまた、リンがカチオンとして振る舞い、そのため、ホスト結晶の酸素を置換しないという証拠である。したがって、蛍光体の追加は、本質的に酸素サイトからなる、Eu2+イオンを囲む結晶場において、ホスト材料の結晶場の強さを認識可能に変化させない。
【0076】
Yシリーズの蛍光体は、式ASiO:Eu2+Dを有するシリケート系化合物を含み、ここでは、AがSr、Ca、Ba、Mg、ZnおよびCdからなるグループから選択される二価金属の少なくとも一つであり、Dがおよそ0.01〜20モルパーセントの範囲に及ぶ量で蛍光体に存在する、負電荷を帯びたイオンである。任意の一つの蛍光体において、一つを超える二価金属Aが存在することができる。本態様によると、Dは、F、Cl、BrおよびIからなるグループから選択されるドーパントイオンであることができるが、しかし、Dは、元素、例えば、N、S、P、AsおよびSbであることもできる。シリケート系蛍光体は、およそ280〜およそ520nmの範囲に及ぶ波長を有する励起放射を吸収するように構成される。
【0077】
およそ460〜590nmの範囲に及ぶ波長を有する光を放出するように構成された例示的なYシリーズ蛍光体は、組成物(Sr1−x−yBaCaEu0.02SiO4−zを有し、ここで、0<x≦1.0、0<y≦0.8および0<z≦0.2である。例示的なYシリーズ蛍光体の代替式は、(Sr1−x−yBaMgEu0.02SiO4−zであり、ここで、0<x≦1.0、0<y≦0.2および0<z≦0.2である。代替態様では、Yシリーズ蛍光体が(Sr1−x−yBaEu0.02SiO4−zであり、ここで、0<x≦1.0であり、MがCa、Mg、AnおよびCdの一つ以上である。この態様では、MがCaであるときには条件0<y≦0.5を;MがMgであるときには0<y≦1.0を、MがZnまたはCdのいずれかであるときには0<z≦0.5を適用する。一つの態様では、ドーパントDがFもしくはClのいずれかまたは両方であり、この態様では、少なくともいくつかのFまたはClがホスト結晶格子の酸素を置換する。
【0078】
Oシリーズのシリケート系蛍光体組成物
【0079】
Oシリーズの蛍光体は、式(Sr,A(Si,A)(O,A2+x:Eu2+を有するシリケート系化合物を含み、ここで、Aがマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは亜鉛(Zn)を包含する少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)であるか、1+および3+カチオンの組み合わせであり、Aがホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)およびリン(P)の少なくとも一つを包含する3+、4+または5+カチオンであり;およびAがフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)を包含する1−、2−または3−アニオンであり;ならびにxが2.5〜3.5を包括する間の任意の値である。Gシリーズ蛍光体と同様に、Yシリーズ蛍光体の式は、Aカチオンがケイ素(Si)を置換し、Aアニオンが酸素(O)を置換することを指し示すように書かれる。
【0080】
これらのOシリーズのシリケート系蛍光体の蛍光体は、概して、式(Sr1−xEuSiOによって記載することもでき、ここでは、MがBa、MgおよびCaからなるグループから選択される二価アルカリ土類金属の少なくとも一つであるが、しかし、他の二価元素、例えば、Znを包含することもできる。x、yおよびzの値は、以下の関係:0<x≦0.5、2.6<y<3.3および0.001<z≦0.5に従う。蛍光体は、およそ565nmを上回る波長を有する光を放出するように構成される。いくつかの態様では、Oシリーズ蛍光体が式SrEuSiOを有する。代替態様では、蛍光体は、(Ba0.05Mg0.05Sr0.92.7EuSiOまたは(Ba0.075Mg0.025Sr0.9EuSiOまたは(Ba0.05Mg0.05Sr0.9EuSiOであることができる。代替態様では、蛍光体は、式(MgSr1−xEuSiO、(CaSr1−xEuSiOおよび(BaSr1−xEuSiOを有し、ここでは、xおよびyの値が0<x≦lおよび2.6<y<3.3の規則に従い、ここでは、y+zが3におよそ等しいようなyとzとの間の関係となる。
【0081】
G.Blasseらにより、Philips Research Reports Vol.23、No.1、pp.1−120で教示されるように、MeがCa、SrまたはBaのいずれかである、MeSiOシステムに属する蛍光体のホスト格子は、結晶構造CsCoClを有する(または結晶構造に関連する)。したがって、本Oシリーズの橙色シリケート系蛍光体は、同じようなホスト格子を有すると想定される。
【0082】
付活剤含有量の所望の量を記載するため、Oシリーズ蛍光体は、概して、式(Sr1−xEuSiOによって表すことができ、ここで、ユーロピウム付活剤のレベルは、およそ0.001<z<0.5の範囲に及ぶことができる「z」パラメータによって記載される。ハロゲンをOシリーズ蛍光体に包含させることの効力は、式(M1−xEuSiO6zを有する態様によって記載することができる。この態様では、HがF、ClおよびBrからなるグループから選択されるハロゲンアニオンであり、組成物に包含されるハロゲンの量は、ここでもまた、パラメータ「z」によって記載される。ここで、zは、0<z<0.1の範囲に及ぶ。
【0083】
一定の色度のための自己調整スマート蛍光体および白色照明システムのビニングのためのその含意
【0084】
本態様によると、白色LED系照明システムは、従来の蛍光体パッケージで可能であったであろうよりも広い、青色/UV放出源の広い配列にマッチングされた、自己調整スマート蛍光体組成物を含む。励起における5nm範囲の例は、照明システムの所望の色度をx±0.01およびy±0.0lの狭い範囲内に維持することができる、452.5nm〜457.5nmである。CIE図上の生成照明の変動は、x値でおよそ0.300±0.01およびy値で0.300±0.01から変動するであろう。目下、それらの青色LEDチップを区分するには、青色/UV励起波長の2.5nm変動ごとに少なくとも五つのビンを要し;その後には、存在する白色LED要望を満たすため、五つの異なる画定されたCIE領域にもう一つの少なくとも五つのビンを要するであろう。現在の方法では、各ビンで輝度および電圧を区分することが求められることを要し、最後には、LEDパッケージング集団が168ビンを有する。
【0085】
もう一つの態様では、ピーク放出波長範囲が5nmよりも大きい(ここでもまた、452.5nm〜457.5nmの例示的な範囲を使用する)、青色/UV LEDチップの配列(数千以上であることができる)を含有する、青色/UV LEDウェーハ上に新規のスマート蛍光体を塗布することにより、白色LEDウェーハを製造することができる。そのようなウェーハからもたらされる個別の白色LEDチップのCIE(x,y)値をx±0.01およびy±0.01の範囲内、ここでもまた、xが0.300±0.01およびyが0.300±0.01であるCIE図の領域内に制御することができる。本技術は、ウェーハにわたって青色/UVの変動がおよそ5nmを超える状況、例えば、今日の産業において存在する10nm変動に対して適用可能であると想定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
励起波長の増加と共にその放出強度が増加するように構成された第一の蛍光体、および
励起波長の増加と共にその放出強度が減少するように構成された第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項2】
蛍光体組成物によって放出されるフォトルミネッセンスの色度の変動が、励起波長のおよそ10nm範囲にわたり、およそ5パーセント以内である、請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項3】
励起波長の10nm範囲がおよそ450〜およそ460nmである、請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項4】
第一の蛍光体が式(Sr,A(Si,A)(O,A2+x:Eu2+を有するシリケート系橙色蛍光体であり、ここで、
が2+カチオン、1+および3+カチオンの組み合わせまたはそれらの組み合わせの少なくとも一つであり、
が3+、4+または5+カチオンであり、
が1−、2−または3−アニオンであり、および
xが2.5〜3.5の両方を包括する間の任意の値である、
請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項5】
がMg、CaおよびBaからなるグループから選択され、AがB、Al、Ga、C、GeおよびPからなるグループから選択され、AがF、ClおよびBrからなるグループから選択される、請求項4記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項6】
第一の蛍光体が式(Sr1−x,MEuSiOを有するシリケート系橙色蛍光体であり、ここで、
MがBa、Mg、CaおよびZnからなるグループから選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0<x<0.5、
2.6<y<3.3、および
0.001<z<0.5
である、請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項7】
第一の蛍光体が式(M1−xEuSiO:Aを有するシリケート系橙色蛍光体であり、ここでは、
MがSr、Ca、Ba、ZnおよびMgからなるグループから選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.001<x<0.5、
2.6<y<3.3、および
がF、ClおよびBrからなるグループから選択されるハロゲンアニオンである、
請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項8】
第一の蛍光体が、SrEu0.06Si1.02(F,Cl)0.18、Sr2.94Ba0.06Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18および(Sr0.9Ba0.12.76Eu0.06Si1.02(F,Cl)0.18からなるグループから選択されるシリケート系橙色蛍光体である、請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項9】
第二の蛍光体が式(Sr,A(Si,A)(O,A2+x:Eu2+を有するシリケート系緑色蛍光体であり、ここで、
が2+カチオン、1+および3+カチオンの組み合わせまたはそれらの組み合わせの少なくとも一つであり、
が3+、4+または5+カチオンであり、
が1−、2−または3−アニオンであり、および
xが1.5〜2.5の両方を包括する間の任意の値である、
請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項10】
がMg、Ca、Ba、Zn、K、Na、Li、Bi、Y、LaおよびCeからなるグループから選択され、AがB、Al、Ga、C、Ge、NおよびPからなるグループから選択され、およびAがF、Cl、Br、NおよびSからなるグループから選択される、請求項6記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項11】
第二の蛍光体が式(Sr,A(Si,A)(O,A2+x:Eu2+を有するシリケート系緑色蛍光体であり、ここで、
が2+カチオン、1+および3+カチオンの組み合わせまたはそれらの組み合わせの少なくとも一つであり、
が3+、4+または5+カチオンであり、
が1−、2−または3−アニオンであり、および
xが1.5〜2.5の両方を包括する間の任意の値である、
請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項12】
第二の蛍光体が、Sr0.925Ba1.025Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12、Sr1.025Ba0.925Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12およびSr1.125Ba0.825Mg0.05Eu0.06Si1.03(F,Cl)0.12からなるグループから選択されるシリケート系緑色蛍光体である、請求項1記載の自己調整蛍光体組成物。
【請求項13】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
Oシリーズ蛍光体、YAG蛍光体、TAG蛍光体、CaS:Eu蛍光体、ZnSe1−x:Cu蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体およびSrSi:Eu蛍光体からなるグループから選択される第一の蛍光体、ならびに
Gシリーズ蛍光体を含む第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項14】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
Oシリーズ蛍光体、YAG蛍光体、TAG蛍光体、CaS:Eu蛍光体、ZnSe1−x:Cu蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体およびSrSi:Eu蛍光体からなるグループから選択される第一の蛍光体、ならびに
Yシリーズ蛍光体を含む第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項15】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
Oシリーズ蛍光体を含む第一の蛍光体、ならびに
GP−4緑色YAG蛍光体、ZnSe1−x:Cu蛍光体、SrGa:Eu蛍光体、SrSi:Eu蛍光体および(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体からなるグループから選択される第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項16】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
YAG蛍光体を含む第一の蛍光体、ならびに
SrGa:Eu蛍光体、ZnSe1−x:Cu蛍光体、SrSi:Eu蛍光体および(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体からなるグループから選択される第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項17】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
TAG蛍光体を含む第一の蛍光体、ならびに
GP−4緑色YAG蛍光体、SrGa:Eu蛍光体、ZnSe1−x:Cu蛍光体、SrSi:Eu蛍光体および(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体からなるグループから選択される第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項18】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
CaS:Eu蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体、ZnSe1−x:Cu蛍光体およびSrSi:Eu蛍光体からなるグループから選択される第一の蛍光体、ならびに
GP−4緑色YAG蛍光体を含む第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項19】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
CaS:Eu蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体、ZnSe1−x:Cu蛍光体およびSrSi:Eu蛍光体からなるグループから選択される第一の蛍光体、ならびに
SrGa:Eu蛍光体を含む第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項20】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
CaS:Eu蛍光体を含む第一の蛍光体、ならびに
ZnSe1−x:Cu蛍光体、SrSi:Eu蛍光体および(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体からなるグループから選択される第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項21】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
ZnSe1−x:Cu蛍光体を含む第一の蛍光体、および
SrSi:Eu蛍光体を含む第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項22】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体を含む第一の蛍光体および
ZnSe1−x:Cu蛍光体を含む第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項23】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体を含む第一の蛍光体および
SrSi:Eu蛍光体を含む第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項24】
自己調整色度を持つ蛍光体組成物であって、
SrSi:Eu蛍光体を含む第一の蛍光体および
(Sr,Ba,Ca)Si:Eu蛍光体を含む第二の蛍光体
を含む、蛍光体組成物。
【請求項25】
自己調整蛍光体組成物および青色/UV放出励起源を含む、白色LED系照明システム。
【請求項26】
自己調整蛍光体組成物が、
励起波長の増加と共にその放出強度が増加するように構成された第一の蛍光体、および
励起波長の増加と共にその放出強度が減少するように構成された第二の蛍光体
を含む、請求項25記載の白色LED系照明システム。
【請求項27】
励起における452.5nm〜457.5nmの5nm範囲において、照明システムの色度変動が、
x±0.01、および
y±0.01
の範囲内でもたらされるように構成された、請求項25記載の白色LED系照明システム。
【請求項28】
CIE図上の生成照明の変動が、x値ではおよそ0.300±0.01およびy値では0.300±0.01である、請求項27記載の白色LED系照明システム。
【請求項29】
白色LEDウェーハを加工する方法であって、青色/UV LEDチップの配列を含有する青色/UV LEDウェーハ上に自己調整蛍光体組成物を塗布する工程を含み、青色/UV LEDチップの配列のピーク放出波長範囲が、およそ5nm以上である、方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法によってもたらされる生成白色LEDウェーハ。
【請求項31】
そのようなウェーハからもたらされる任意の個別の白色LEDチップのCIE(x,y)値をx±0.01およびy±0.01の範囲内に制御することができる、請求項30記載の生成白色LEDウェーハ。
【請求項32】
青色/UV LEDチップの配列のピーク放出波長範囲が、452.5nm〜457.5nmである、請求項31記載の生成白色LEDウェーハ。
【請求項33】
CIE図の領域が、xでおよそ0.300±0.01およびyでおよそ0.300±0.01である、請求項32記載の生成白色LEDウェーハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−500444(P2010−500444A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523753(P2009−523753)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/014305
【国際公開番号】WO2008/020913
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】