説明

自然環境を考慮した建物

【課題】建物の内部に通風を積極的を取り込んで、夏場の暑い時期に、自然の通風による涼を効果的に得ることを可能にする自然環境を考慮した建物を提供する。
【解決手段】東側居住部11と西側居住部12との間に、南側が開口面となった中庭14が設けらており、この中庭14の北側部分の北側居住部13が中庭14に面した1.5層分の高さの吹抜け部15を備える。吹抜け部15の上方にスキップ床16が設けられており、中庭14から北側居住部13を介して北側の外壁17を通過する通風路W1が形成されるようになっている。また屋根19の北側部分に、屋根部通風開口20か設けられており、中庭14から北側居住部13を介して屋根部通風開口20を通過する通風路W2が形成されるようになっている。中庭14による通風路W1,W2の流入口部分には、通風方向と対向する鉛直面に沿って散水カーテンを形成する散水カーテン形成装置21が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風や太陽による自然環境を考慮した建物に関する。
【背景技術】
【0002】
気温や湿度などの外部の気候要素は季節や時刻とともに大きく変動するものであり、外部の気候要素のままでは住宅の屋内環境は快適とはいえず、何等かの対策が必要である。電気による冷暖房設備のなかった時代の日本の伝統的な民家では、特に夏場における過し易さに配慮して、日射を遮る厚い屋根や、深い軒や庇を設けると共に、開口を大きく形成して容易に通風が得られるようにするといった工夫がなされていた。
【0003】
一方、近年の住宅では、充実した冷暖房設備によって、夏は涼しく、冬は暖かい快適な屋内環境が得られるようになっており、さらに住宅の高断熱化や高気密化を図ることによって、エネルギー消費を削減する工夫もなされている。
【0004】
また、近年の住宅では、高断熱化や高気密化を図った場合でも、冷暖房設備の稼動によるエネルギー消費は年々増加の傾向にあり、地球温暖化などの環境問題を引き起こす要因の一つにもなっている。このようなことから、高断熱化や高気密化が図られた住宅等の建物においても、風による自然の恵みを利用して、より一層の省エネルギー化に寄与できるようにする工夫がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−120063号公報
【特許文献2】特開2007−132154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載の建物は、春や秋等の気候が良い季節に、建物の内部に導入した外気によって、いわゆるセントラル換気装置を用いることなく、建物の内部の喚気を効率良く行えるようにしたものであるが、エネルギー消費をさらに削減できるように、日本の伝統的な民家の如く、必要に応じて建物の内部に通風をより積極的に取り込み、例えば夏場の暑い時期に自然の通風による涼が効果的に得られるようにして、冷房装置を使用しなくても暑さをしのげるようにすることのできる新たな技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、建物の内部に通風を積極的を取り込んで、例えば夏場の暑い時期に、自然の通風による涼を効果的に得ることを可能にする自然環境を考慮した建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、東側居住部と西側居住部との間に、南側が開口面となった凹部として形成された中庭が設けらており、該中庭の北側部分の北側居住部が該中庭に面した1.5層分の高さの吹抜け部を備えると共に、該吹抜け部の上方にスキップ床が設けられており、且つ前記中庭から前記北側居住部を介して前記北側の外壁を通過する通風路が開閉可能に形成される自然環境を考慮した建物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
ここで、上記記載における1.5層分の高さは、一般に230〜400cm程度の高さを有する建物の1層分の高さに、これの略半分程度の高さを加えて、1層分の高さと2層分の高さの中間部分の高さを略称するものであり、1層分の高さの1.5倍の高さの他、1層分の高さの1.40〜1.75倍程度の高さを含むものである。また、スキップ床は、一般に230〜400cm程度の高さを有する1層分の高さの中間部分の高さ位置に配置される床を略称するものであり、1層分の高さの1/2の高さの他、1層分の高さの40〜75%程度の高さ位置に配置される床を含むものである。
【0009】
そして、本発明の自然環境を考慮した建物は、前記スキップ床が前記中庭の少なくとも一部を覆うように張り出して設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の自然環境を考慮した建物は、前記スキップ床の上方が、屋根裏部屋となっていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の自然環境を考慮した建物は、屋根の北側部分に、屋根部通風開口か開閉可能に設けられており、前記中庭から前記北側居住部を介して前記屋根部通風開口を通過する通風路が開閉可能に形成されるようになっていることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の自然環境を考慮した建物は、前記中庭による前記通風路の流入口部分に、供給された水を通風方向と対向する鉛直面に沿って下方に流下させるように誘導して、散水カーテンを形成する散水カーテン形成装置が設けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の自然環境を考慮した建物は、前記中庭による前記通風路の流入口部分に、植栽が施されていることが好ましい。
【0014】
そして、本発明の自然環境を考慮した建物によれば、東側居住部と西側居住部との間に、南側が開口面となった凹部として形成された中庭が設けらており、この中庭の北側部分の北側居住部が中庭に面した1.5層分の高さの吹抜け部を備えると共に、吹抜け部の上方にスキップ床が設けられており、且つ中庭から北側居住部を介して北側の外壁を通過する通風路が開閉可能に形成されるので、特に夏場の暑い時期において、東側居住部と西側居住部とによって両側を仕切られた中庭を介して、当該中庭を通風の導入路として両側に拡散させることなく、南側からの風を、北側居住部の吹抜け部に向かう通風路に効率良く取り込むことが可能になる。また、中庭に面した北側居住部の1.5層分の高さの吹抜け部には、大きな面積の通風開口や採光面を設けることができるので、中庭に取り込んだ南側からの風を、北側居住部に効率良く取り込むことが可能になると共に、冬場における角度の低い太陽からの日射を、北側居住部に効率良く取り込むことが可能になる。さらに、夏場における角度の高い太陽からの日射は、北側居住部が面している中庭の両側の部分が東側居住部及び西側居住部によって遮られていることと相俟って、北側居住部を覆う屋根の軒や庇によって、効果的に遮断することが可能になる。さらにまた、吹抜け部の上方のスキップ床の上方部分は、収納庫や居住部として効率良く利用することが可能になる。
【0015】
すなわち、本発明によれば、これらによって、北側居住部を、冷暖房設備を特に使用しなくても、通風や太陽光を利用して、夏に涼しさが感じられると共に冬に温かさが感じられる自然環境を考慮した快適な居住空間として、建物に設けることが可能になる。
【0016】
また、本発明の自然環境を考慮した建物は、スキップ床を、中庭の少なくとも一部を覆うように張り出して設けておけば、この張り出した部分によって、夏場における角度の高い太陽からの日射をさらに効果的に遮断することが可能になると共に、スキップ床の上方部分に、収納庫や居住部として利用可能な広い床面積の空間を形成することが可能になる。
【0017】
さらに、スキップ床の上方を屋根裏部分に食い込ませて屋根裏部屋とすれば、スキップ床の上方部分を居住者が立つことのできる空間として、より有効に活用することが可能になる。
【0018】
さらにまた、屋根の北側部分に、屋根部通風開口を開閉可能に設けておき、中庭から北側居住部を介して屋根部通風開口を通過する通風路が開閉可能に形成されるようにすれば、温かい空気は屋内の天井付近にたまりやすいことから、このような温かい空気と共に、北側部分の高い位置に配置された屋根部通風開口を介して通風を屋内から流出させることにより、夏場における屋内からの廃熱機能を効果的に発揮させることが可能になる。
【0019】
また、中庭による通風路の流入口部分に、供給された水を通風方向と対向する鉛直面に沿って下方に流下させるように誘導して、散水カーテンを形成する散水カーテン形成装置を設けておけば、中庭に取り込んだ南側からの風を、散水カーテンを通過させ、水の蒸散作用を利用して冷却した後に、北側居住部に送り込むことが可能になり、北側居住部を、夏場においてより効果的に涼を感じられる居住空間とすることが可能になる。
【0020】
さらに、中庭による通風路の流入口部分に、植栽を施しておけば、中庭に取り込んだ南側からの風を、植栽を通過させ、木の葉の蒸散作用を利用して冷却した後に、北側居住部に送り込むことが可能になり、北側居住部を、夏場においてより効果的に涼を感じられる居住空間とすることが可能になる。なお、植栽として例えば落葉樹を植設しておけば、冬場における角度の低い太陽からの日射を遮らないようにすることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自然環境を考慮した建物によれば、建物の内部に通風を積極的を取り込んで、例えば夏場の暑い時期に、自然の通風による涼を効果的に得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好ましい一実施形態に係る自然環境を考慮した建物10は、図1〜図4に示すように、例えば2階建ての木造の住宅建築物であって、東側居住部11と、西側居住部12と、北側居住部13とからなり、東側居住部11と西側居住部12との間には、南側が開口面となった中庭14が設けられている。また本実施形態の建物10は、自然環境を考慮して、北側居住部13では、冷暖房設備を特に使用しなくても、夏に涼しさを、冬に温かさを感じられるようにすると共に、例えば夏場の暑い時期に、建物の内部に南側からの風を積極的に取り込んで、自然の通風による涼を効果的に得ることができるように構成されている。
【0023】
すなわち、本実施形態の自然環境を考慮した建物10は、東側居住部11と西側居住部12との間に、南側が開口面となった凹部として形成された中庭14が設けらており、この中庭14の北側部分の北側居住部13が中庭14に面した1.5層分の高さの吹抜け部15を備えると共に、この吹抜け部15の上方にスキップ床16が設けられており、且つ中庭14から北側居住部13を介して北側の外壁17を通過する通風路W1が開閉可能に形成されるようになっている。
【0024】
また、本実施形態では、スキップ床16が中庭14の一部を覆うように張り出して設けられており、スキップ床16の上方が、屋根裏部分に食い込ませた屋根裏部屋18となっている。
【0025】
さらに、屋根19の北側部分に、屋根部通風開口20か開閉可能に設けられており、中庭14から北側居住部13を介して屋根部通風開口20を通過する通風路W2が開閉可能に形成されるようになっている。
【0026】
さらにまた、中庭14による通風路W1,W2の流入口部分に、供給した水を通風方向と対向する鉛直面に沿って下方に流下させるように誘導して、散水カーテンを形成する散水カーテン形成装置21が設けられていると共に、植栽22が施されている。
【0027】
本実施形態の建物10の1階部分には、図2に示すように、西側居住部12の南側部分に位置して、玄関ポーチ23から出入り可能な玄関24が設けられており、玄関24の西側には土間25が設けられている。玄関24の北側には、1階ホール26が設けられており、1階ホール26の北側には2階への階段27が設けられている。1階ホール26の西側には、土間25の北側に位置して、和室28が設けられており、和室28の北側には、西側居住部12の北西の角部に位置して、洗面室29やトイレ30が設けられている。
【0028】
本実施形態では、西側居住部12のホール26及び階段27の東側に隣接して、東側居住部11との間には、北側居住部13の1階部分を構成する涼温室31が設けられている。この涼温室31は、その南側の部分が、中庭14に面した1.5層分の天井高さの吹抜け部15となっており、その北側の部分が、北側の外壁17によって外部から仕切られた1層分の天井高さの補助室部32となっている。
【0029】
涼温室31を挟んで西側居住部12とは反対側に位置する東側居住部11の1階部分には、その南側にリビングダイニングキッチン33が、涼温室31及び中庭14の東側に隣接して設けられており、リビングダイニングキッチン32の北側には、洗面室、浴室、トイレ等を含む水廻り室34が、涼温室31の東側に隣接して設けられている。
【0030】
西側居住部12に設けられた階段27を介して1階部分から昇降する建物10の2階部分には、図3に示すように、西側居住部12の階段27の南側部分に2階ホール35が設けられており、階段27及び2階ホール35の西側に隣接して、第1洋室36が設けられている。また、2階ホール35の南側の端部と連設して、小屋裏収納37が、1階部分の土間25の上方に配置されて設けられている。さらに、1階部分の玄関ポーチ23の上方の部分は、2階ホール35の南側の端部から出入り可能な第1バルコニー部38となっている。さらにまた、本実施形態では、玄関ポーチ23及びバルコニー部38の東側の面を中庭14から仕切るようにして、仕切り壁39が、玄関24及び2階ホール35の東側の面に沿うように連続して、第1バルコニー部38よりも0.5層分高くなる高さで設けられている。
【0031】
本実施形態では、西側居住部12の2階ホール35及び階段27の東側に隣接して、東側居住部11との間には、北側居住部13の北側の部分に、作業室40が、1階部分の補助室部32の上方に配置されて設けられている。また作業室40の南側の部分は、涼温室31の吹抜け部15の吹き抜け空間となっていると共に、吹抜け部15の上方を覆って、スキップ床16が設けられることになる(図4参照)。
【0032】
作業室40を挟んで西側居住部12とは反対側に位置する東側居住部11の2階部分には、その北側に第2洋室41が設けられており、第2洋室41の南側には、当該第2洋室41から出入り可能な、ウォークインクロゼット42及び屋根裏部屋18への階段46を備える第3洋室43が設けられている。また、第3洋室43の南側には、当該第3洋室43から出入り可能な第2バルコニー部44が設けられており、この第2バルコニー部44の外周部分は、0.5層分の高さの手摺壁45によって囲まれている。
【0033】
さらに、本実施形態では、第2バルコニー部44の南側の面から西側居住部12の仕切り壁39に渡って、第1バルコニー部38及び第2バルコニー部44の床部と略同じ高さ位置に、中庭14の入り口部分を梁状に横断する給水パラペット47が設けられている。この給水パラペット47は、内部に散水カーテン形成装置21を構成する給水散水部材70を備えている。また給水パラペット47の内部に設けられた給水散水部材70は、例えば建物10に配管された水道管等と接続しており、開閉バルブを操作して、後述する散水ルーバー50の上方に例えば水道水を供給し、複数の散水孔48から適宜散水を行うことができるようになっている(図1、図5参照)。
【0034】
本実施形態では、第3洋室43に設けられた階段46を介して東側居住部11の2階部分から昇降する北側居住部13の屋根裏部屋18は、図4及び図1に示すように、1階部分の涼温室31の吹抜け部15を覆うスキップ床16を、中庭14の北側端部に張り出して設けられている。また、屋根裏部屋18は、その上部を屋根裏部分にドーム形状に食い込ませることにより、略1層分の高さを確保して、居住者が立ったまま動ける空間を形成している。
【0035】
屋根裏部屋18の作業室40の上方に位置する北側の部分は、スキップ床16よりも0.5層分高くなった段部49となっている。この段部49の床面は、作業室40の天井面と共に、格子部材51によって形成されており、これらの格子部材51の間隔部分を介して、作業室40から屋根裏部屋18に向う通風が得られるようになっている。また、段部49の直上部分に位置する屋根19の北側部分には、屋根部通風開口20が、開閉建具によって開閉可能な状態で3箇所に並べて設けられている。さらに、3箇所の屋根部通風開口20のうち、一番西側に位置する1箇所の屋根部通風開口20は、屋根19から上方に立設して設けられた、上端部分に採光換気装置53が設置された採光換気塔54に周囲を覆われて、これの下端部に配置されている。
【0036】
そして、本実施形態の自然環境を考慮した建物10では、東側居住部11と西側居住部12とによって挟まれる中庭14や北側居住部13に、上述の構成に加えて、例えば下記のような種々の構造を備えることにより、風や太陽による自然環境を効果的に利用して、北側居住部13を、冷暖房設備を特に使用しなくても、夏に涼しさが感じられると共に冬に温かさが感じられる快適な居住空間とすることができるようになっている。
【0037】
すなわち、本実施形態では、図1に示すように、中庭14に面した北側居住部13の1.5層分の高さの吹抜け部15には、中庭14に面した略全域に亘って、大きな面積の通風開口や採光面となる、サッシ枠による開閉可能なガラス戸55やガラス窓56が設けられている。また、涼温室31の補助室部32の北側の外壁17には、サッシ枠による開閉可能なガラス窓57が設けられている。これらによって、中庭14から北側居住部13を介して北側の外壁17を通過する通風路W1が、開閉可能に形成されることになる。
【0038】
また、本実施形態では、涼温室31の吹抜け部15と作業室40の下半部分とを仕切る腰壁58の上端部と、吹抜け部15の上方のスキップ床16との間には、細幅開口59が保持されていると共に、作業室40の北側の外壁17には、サッシ枠による開閉可能なガラス窓60が設けられている。これらによって、中庭14から北側居住部13の吹抜け部15及び作業室40を介して北側の外壁17を通過する、通風路W1が開閉可能に形成されることになる。また、中庭14から北側居住部13の吹抜け部15及び作業室40を通過した後に、作業室40の天井部分の格子部材51を介して屋根裏部屋18の段部49に至り、さらに屋根部通風開口20を通過する通風路W2が、開閉可能に形成されることになる。
【0039】
さらに、本実施形態では、屋根裏部屋18の中庭14に面する南側の壁面には、屋根19の軒下部分に配置されて、サッシ枠による開閉可能なガラス窓61が設けられている。これによって、中庭14の上部から屋根裏部屋18を介して段部49に至り、さらに屋根部通風開口20を通過する通風路W3が、開閉可能に形成されることになる。
【0040】
そして、本実施形態では、中庭14による通風路W1,W2の流入口部分に、供給した水を通風方向と対向する鉛直面に沿って下方に流下させるように誘導して、散水カーテンを形成する散水カーテン形成装置21が設けられている。散水カーテン形成装置21は、上述のように、中庭14の入り口部分を梁状に横断する給水パラペット47の内部に設けられた給水散水部材70と、散水ルーバー50とからなる。散水カーテン形成装置21は、例えば屋内に設けられたコントローラによる開閉バルブの開閉操作によって、必要に応じて水道管等から給水散水部材70に水を供給し、複数の散水孔48から、給水散水設備の下方に配置された散水ルーバー50の上端部に水を散水する。また散水した水を、散水ルーバー50に沿って鉛直方向下方に糸水状に流下させ、上下方向に間隔をおいて配置した複数の単位ルーバー63の間隔部分に常時水の流れを生じさせることにより、散水ルーバー50に沿った散水カーテンを形成できるようになっている。
【0041】
ここで、散水ルーバー50は、例えば図5(a)〜(c)に示すように、中庭14の底盤部から鉛直方向に立設固定して設けられたH形鋼による3本の支柱62の各2本に両端を各々支持固定させて、複数の棒状の単位ルーバー63を、上下方向に例えば77mm程度の間隔をおいて、153mm程度の中心間ピッチで水平方向に平行に配置して取り付けることにより、全体として例えば幅が3900mm、高さが2400mm程度の大きさの矩形の正面形状を有するように形成されている。
【0042】
また、本実施形態では、散水ルーバー50を構成する各単位ルーバー63は、例えばセラミック、金属、合成樹脂等からなると共に、縦横55mm程度の大きさの正方形の中空断面形状を備えており、一方の対角方向を鉛直方向に沿わせると共に、他方の対角方向を水平方向に沿わせた状態で、両側の支柱62に両端を支持させて取り付けられている。各単位ルーバー63を、正方形の断面形状に形成すると共に、一方の対角方向を鉛直方向に、他方の対角方向を水平方向に沿わせて取り付けることにより、通風方向と対向する鉛直面に沿った散水カーテンを、より安定した状態で形成することが可能になる。
【0043】
さらに、本実施形態では、散水ルーバー50の背面側に配置されて、中庭14による通風路W1,W2の流入口部分に、植栽22が施されている。本実施形態では、植栽22は、好ましくはハナミズキ、ケヤキ等の落葉樹からなり、中庭14の底盤部に設けた植込み部64に根付かせた状態で、散水ルーバー50の背面側に植設されている。
【0044】
さらにまた、本実施形態では、中庭14の底盤部における散水ルーバー50及び植込み部64の周囲の部分に、水溜め部65が設けられている。この水溜め部65には、散水ルーバー50に沿って流下してきた散水カーテンの水が貯留されるようになっている。また、中庭14の底盤部に水溜め部65が設けられていることにより、中庭14に涼しげな雰囲気をもたらすことが可能になると共に、水溜め部65の水面付近を通過する風を、水の蒸散作用を利用して、涼しい風として北側居住部13に送り込むことが可能になる。水溜め部65に貯留された水は、ポンプ装置等を介して汲み上げることにより、散水カーテン形成装置21の給水散水部材70に供給される水として循環使用することも可能である。
【0045】
なお、本実施形態によれば、涼温室31の補助室部32の北側には、外壁17の外側に縁側66が設けらており、この縁側66の腰壁67の内側面には、壁面緑化用植栽断熱発泡タイルとして、例えばスナゴケ植栽タイル68が取り付けられている。縁側66の腰壁67の内側面にスナゴケ植栽タイル68が取り付けられていることにより、涼温室31の補助室部32の北側の外壁17に設けられたガラス窓57を介して北側居住部13に送り込まれる北側からの風を、スナゴケ植栽タイル68の表面を通過させることによって冷やした後に、北側居住部13に流入させることが可能になる。
【0046】
また、本実施形態によれば、好ましくは、涼温室31の吹抜け部15と作業室40の下半部分とを仕切る腰壁58の上端部や、作業室40の格子部材51による天井面と隣接する部分、或いは屋根裏部屋18の段部49の格子部材51による床面と隣接する部分には、各々間接照明ボックス69が設けられている。これらの間接照明ボックス69には、間接照明用の照明器具が各々配設されることになる。
【0047】
そして、上述の構成を備える本実施形態の自然環境を考慮した建物10によれば、建物10の内部に通風を積極的を取り込んで、例えば夏場の暑い時期に、自然の通風による涼を効果的に得ることが可能になる。
【0048】
すなわち、本実施形態の自然環境を考慮した建物10によれば、東側居住部11と西側居住部12との間に、南側が開口面となった凹部として形成された中庭14が設けらており、この中庭14の北側部分の北側居住部13が中庭14に面した1.5層分の高さの吹抜け部15を備えると共に、この吹抜け部15の上方にスキップ床16が設けられており、且つ中庭14から北側居住部13を介して北側の外壁17を通過する通風路W1が開閉可能に形成されるので、特に夏場の暑い時期において、東側居住部11と西側居住部12とによって両側を仕切られた中庭14を介して、当該中庭14を通風の導入路として両側に拡散させることなく、南側からの風を、北側居住部13の吹抜け部15に向かう通風路W1に効率良く取り込むことが可能になる。また、中庭14に面した北側居住部13の1.5層分の高さの吹抜け部15には、大きな面積の通風開口や採光面としてのガラス戸55やガラス窓56を設けることができるので、中庭14に取り込んだ南側からの風を、北側居住部13に効率良く取り込むことが可能になると共に、冬場における角度の低い太陽からの日射を、北側居住部13に効率良く取り込むことが可能になる。さらに、夏場における角度の高い太陽からの日射は、北側居住部13が面している中庭14の両側の部分が東側居住部11及び西側居住部12によって遮られていることと相俟って、北側居住部13を覆う屋根19の軒部分によって、効果的に遮断することが可能になる。さらにまた、吹抜け部15の上方のスキップ床16の上方部分は、収納庫や居住部として効率良く利用することが可能になる。
【0049】
これらによって、北側居住部13を、冷暖房設備を特に使用しなくても、通風や太陽光を利用して、夏に涼しさが感じられると共に冬に温かさが感じされる自然環境を考慮した快適な居住空間として設けることが可能になる。
【0050】
また、本発明の自然環境を考慮した建物10によれば、スキップ床16が、中庭14の一部を覆うように張り出して設けられているので、この張り出した部分によって、夏場における角度の高い太陽からの日射をさらに効果的に遮断することが可能になると共に、スキップ床16の上方部分に、収納庫や居住部として利用可能な広い床面積の空間を形成することが可能になる。
【0051】
さらに、スキップ床16の上方を屋根裏部分に食い込ませて屋根裏部屋18としているので、スキップ床16の上方部分を居住者が立つことのできる空間として、より有効に活用することが可能になる。
【0052】
さらにまた、屋根19の北側部分に、屋根部通風開口20が開閉可能に設けられており、中庭14から北側居住部13を介して屋根部通風開口20に致る通風路W2が開閉可能に形成されるので、温かい空気は屋内の天井付近にたまりやすいことから、このような温かい空気と共に、北側部分の高い位置に配置された屋根部通風開口20を介して通風を屋内から流出させることにより、夏場における屋内からの廃熱機能を効果的に発揮させることが可能になる。
【0053】
また、中庭14による通風路W1,W2の流入口部分に、供給された水を通風方向と対向する鉛直面に沿って下方に流下させるように誘導して、散水カーテンを形成する散水カーテン形成装置21が設けられているので、中庭14に取り込んだ南側からの風を、散水カーテンを通過させ、水の蒸散作用を利用して冷却した後に、北側居住部13に送り込むことが可能になり、北側居住部13を、夏場においてより効果的に涼を感じられる居住空間とすることが可能になる。
【0054】
さらに、中庭14による通風路W1,W2の流入口部分に、植栽22が施されているので、中庭14に取り込んだ南側からの風を、植栽22を通過させ、木の葉の蒸散作用を利用して冷却した後に、北側居住部13に送り込むことが可能になり、北側居住部13を、夏場においてより効果的に涼を感じられる居住空間とすることが可能になる。また、植栽22として落葉樹が植設されているので、冬場における角度の低い太陽からの日射を遮らないようにすることが可能になる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、スキップ床は、中庭の一部を覆うように張り出して設ける必要は必ずしも無い。また、スキップ床の上方を、屋根裏部分に食い込ませて屋根裏部屋とする必要は必ずしも無く、例えば0.5層分の高さの収納庫等とすることもできる。さらに、中庭による通風路の流入口部分に、水流カーテン形成装置や植栽を設ける必要は必ずしもない。さらにまた、本発明は、木造の住宅建築物に限定されることなく、その他の種々の建物に適用することもできる。また2階建ての建物に限定されることなく、中庭が設けられる1階部分の底盤部を、2階部分又3階部分以上の底盤部に置き換えて、例えば3階建て以上の建物に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る自然環境を考慮した建物の要部を説明する、図2のA−Aに沿った断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る自然環境を考慮した建物の構成を説明する、1階部分の間取り図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る自然環境を考慮した建物の構成を説明する、2階部分の間取り図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係る自然環境を考慮した建物の構成を説明する、屋根裏部分の間取り図である。
【図5】(a)は好ましい一実施形態に係る散水カーテン形成装置の正面図、(b)は(a)のB−Bに沿った部分破断断面図、(c)は(a)のC−Cに沿った部分破断断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 自然環境を考慮した建物
11 東側居住部
12 西側居住部
13 北側居住部
14 中庭
15 吹抜け部
16 スキップ床
17 北側居住部の北側の外壁
18 屋根裏部屋
19 屋根
20 屋根部通風開口
21 散水カーテン形成装置
22 植栽
31 涼温室
32 補助室部
40 作業室
47 給水パラペット
48 散水孔
50 散水ルーバー
51 格子部材
54 採光換気塔
55 ガラス戸
56,57,60,61 ガラス窓
59 細幅開口
62 支柱
63 単位ルーバー
64 植込み部
65 水溜め部
W1,W2,W3 通風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
東側居住部と西側居住部との間に、南側が開口面となった凹部として形成された中庭が設けらており、該中庭の北側部分の北側居住部が該中庭に面した1.5層分の高さの吹抜け部を備えると共に、該吹抜け部の上方にスキップ床が設けられており、且つ前記中庭から前記北側居住部を介して前記北側の外壁を通過する通風路が開閉可能に形成される自然環境を考慮した建物。
【請求項2】
前記スキップ床が前記中庭の少なくとも一部を覆うように張り出して設けられている請求項1に記載の自然環境を考慮した建物。
【請求項3】
前記スキップ床の上方が、屋根裏部屋となっている請求項1又は2に記載の自然環境を考慮した建物。
【請求項4】
屋根の北側部分に、屋根部通風開口か開閉可能に設けられており、前記中庭から前記北側居住部を介して前記屋根部通風開口を通過する通風路が開閉可能に形成される請求項1〜3のいずれかに記載の自然環境を考慮した建物。
【請求項5】
前記中庭による前記通風路の流入口部分に、供給された水を通風方向と対向する鉛直面に沿って下方に流下させるように誘導して、散水カーテンを形成する散水カーテン形成装置が設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の自然環境を考慮した建物。
【請求項6】
前記中庭による前記通風路の流入口部分に、植栽が施されている請求項1〜5のいずれかに記載の自然環境を考慮した建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−155873(P2009−155873A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334119(P2007−334119)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】