説明

自走式作業機械の制御装置及びこれを備えた自走式作業機械

【課題】ウィンチドラムの状態が中立フリーモードに設定された状態で走行する場合であっても安全性を充分に確保すること。
【解決手段】所定の選択指令を受けることにより、ウィンチモータ17が停止しているときの前記ウィンチドラム7aの状態を、前記ウィンチドラム7aの回転が拘束される中立ブレーキモードと、ウィンチドラム7aの自由回転が許容される中立フリーモードとの間で切換えるモード切換手段39と、自走式クレーン1の運転状態が予め設定された走行認定条件を満たすときに前記選択指令にかかわらずウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに強制的に切換える強制モード切換手段40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンチを有する自走式作業機械の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記自走式作業機械としては、ウィンチモータにより駆動されるウィンチドラムにより吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うようにしたクローラ式クレーンやホイール式クレーン等の移動式(自走式)クレーンが知られている。
【0003】
上記移動式クレーンには、吊り荷を巻上げた状態で走行する場合の安全性を向上する技術を採用したものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1のように、吊り荷重が大きい程、走行速度を低速に設定する安全装置を備えた移動式クレーンが知られている。この移動式クレーンでは、吊り荷重に応じて走行速度を制限することにより吊り荷の落下等を抑制して安全性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2004−67301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにウィンチドラム及びウィンチモータを具備する移動式クレーンの中には、前記ウィンチモータが停止しているときのウィンチドラムの状態として、前記ウィンチドラムの回転をブレーキにより拘束する中立ブレーキモードと、前記ウィンチモータから前記ウィンチドラムを切り離してその自由回転を許容する中立フリーモードとを備え、両モードをオペレータの選択操作によって切換えるようにしたものも知られている。
【0006】
そして、前記中立フリーモードでは、オペレータによるブレーキ操作に応じてウィンチドラムに制動力を付与して吊り荷の保持を行うとともに、ブレーキ操作を緩めることによりウィンチドラムを前記制動力から解放して吊り荷を降下させることができる。
【0007】
しかしながら、この種の移動式クレーンでは、ウィンチドラムの状態が中立フリーモードに設定され、かつ、吊り荷又は吊り荷用フックが巻き上げられた状態のまま走行が開始されると、オペレータは、吊り荷の位置を保持するためにブレーキ操作を行いながら走行運転を行わなければならないことになる。このような走行運転中にオペレータが誤ってブレーキ操作を緩めると、吊り荷の位置が下がってしまうことになり、高い安全性を確保することが難しくなる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ウィンチドラムの状態が中立フリーモードに設定された状態で走行する場合であっても安全性を充分に確保することができる自走式作業機械の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、路上を走行する走行体上に、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うためのウィンチドラムと、このウィンチドラムを前記巻上げの方向及び巻下げの方向に回転駆動するためのウィンチモータとが搭載された自走式作業機械を制御する装置であって、所定の選択指令を受けることにより、前記ウィンチモータが停止しているときの前記ウィンチドラムの状態を、前記ウィンチドラムの回転が拘束される中立ブレーキモードと、前記ウィンチドラムの自由回転が許容される中立フリーモードとの間で切換えるモード切換手段と、前記自走式作業機械の運転状態が予め設定された走行認定条件を満たすときに前記選択指令にかかわらず前記ウィンチドラムの状態を前記中立ブレーキモードに強制的に切換える強制モード切換手段とを備えることを特徴とする自走式作業機械の制御装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、走行認定条件を満たすときには選択指令にかかわらずウィンチドラムの状態を中立ブレーキモードに強制的に切換えるようにしているので、走行が開始されるのに先立って、ウィンチドラムの状態を中立ブレーキモードに切換えることができる。
【0011】
したがって、本発明によれば、中立フリーモードに設定された状態で走行を開始する場合であっても、当該走行の際及び走行中には必ず中立ブレーキモードが設定されることになり、オペレータがブレーキ操作を緩めてしまった場合であっても、吊り荷の落下を確実に防止することができる。
【0012】
具体的に、前記強制モード切換手段は、前記自走式作業機械の走行指令用の操作部が操作されたとき、前記自走式作業機械を走行させる走行用モータの駆動力が予め設定された基準値よりも大きいときに前記走行認定条件を満たしたものとして判定するように構成することができる。
【0013】
この構成によれば、走行指令の出力や走行モータの駆動力に基づいて走行条件の成否を判断することができる。
【0014】
また、本発明は、上記制御装置と、路上を走行する走行体と、この走行体上に搭載され、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うウィンチドラム及びこのウィンチドラムを前記巻上げ及び巻下げの方向に回転駆動するウィンチモータとを備えた自走式作業機械を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウィンチドラムの状態が中立フリーモードに設定された状態で走行する場合であっても安全性を充分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るクローラ式クレーンの全体構成を示す側面図である。図2は、図1の上部旋回体に設けられた油圧回路と電気回路とを併せて示す概略図である。
【0018】
図1を参照して、自走式作業機械の一例としてのクローラ式クレーン1は、クローラ2aを有する下部走行体2と、この下部走行体2上に搭載された上部旋回体3と、この上部旋回体3に起伏自在に取り付けられたブーム4とを備えている。
【0019】
上部旋回体3には、フロントウィンチ7、リアウィンチ8及び、ブーム起伏ウィンチ9が装備されている。
【0020】
フロントウィンチ7は、そのウィンチドラム7a(図2参照)によりワイヤ7bを巻上げ又は巻下げることによって、前記ブーム4の先端部から垂下されるフック11を昇降させるようになっている。
【0021】
リアウィンチ8は、図略のウィンチドラムによりワイヤを巻上げ又は巻下げることによって、図示しない補助フックを昇降させるようになっている。
【0022】
ブーム起伏ウィンチ9は、図略のウィンチドラムによりワイヤを巻上げ又は巻下げることによって、前記上部旋回体3に対しブーム4を起伏させるようになっている。
【0023】
また、上部旋回体3は、図2に示すように、前記フロントウィンチ7を駆動する駆動回路12と、この駆動回路12に対する指令を出力する操作部14と、この操作部14の操作に応じて駆動回路12を操作するコントローラ(制御装置)15とを備えている。なお、図2及び以下の説明では、ウィンチ7〜9のうちフロントウィンチ7を一例に挙げて説明するが、駆動回路12、操作部14及びコントローラ15は、各ウィンチ8又は9にも採用することができる。
【0024】
駆動回路12には、前記ウィンチドラム7aの回転軸J1を当該ウィンチドラム7aの巻上げ又は巻下げの方向に回転駆動する油圧モータ(ウィンチモータ)17及び、この油圧モータ17の出力軸17aと回転軸J1とを駆動連結又は解除するクラッチ18が設けられている。
【0025】
油圧モータ17は、ポンプ19からモータ用切換弁20を介して供給された作動油によって駆動する。具体的に、モータ用切換弁20は、そのソレノイド20aの励磁状態で切換位置Aとされる一方、ソレノイド20bの励磁状態で切換位置Bとされ、これら両ソレノイド20a、20bが非励磁の状態で中立位置Cに復帰するようになっており、前記切換位置A又は切換位置Bとされた場合に、ポンプ19からの作動油を油圧モータ17へ供給するようになっている。また、モータ用切換弁20は、各位置A〜Cの何れかに択一的に変位するだけでなく、ソレノイド20a、20bに供給される電流に応じて前記中立位置Cと切換位置A又は切換位置Bとの間の位置に変位させることによりポンプ19から油圧モータ17への流量を調整することも可能とされている。
【0026】
クラッチ18は、前記ウィンチドラム7aの回転軸J1に固定されたクラッチドラム21と、油圧モータ17の出力軸17aに固定されたクラッチシリンダ22とを備えている。このクラッチシリンダ22は、ばね22aの付勢力によってクラッチドラム21に接合される一方、油圧導入時に接合力を解除する油圧シリンダ式のクラッチとして構成され、その油室22bがクラッチ用切換弁23を介してポンプ24に接続されている。
【0027】
クラッチ用切換弁23は、そのソレノイド23aの励磁状態でポンプ24からの作動油を油室22bに供給する切換位置Dとされる一方、ソレノイド23aが非励磁の状態で前記油室22bをタンクT1に開放する切換位置Eに復帰するようになっている。
【0028】
さらに、駆動回路12には、前記クラッチドラム21に制動力を付与することによりウィンチドラム7aの回転軸J1にブレーキをかけるネガブレーキ25及びフットブレーキ26が設けられている。
【0029】
ネガブレーキ25は、ばね25aの付勢力によってクラッチドラム21に制動力を付与する一方、油圧導入時に制動力を解除する油圧シリンダ式のブレーキとして構成され、その油室25bがネガブレーキ用切換弁27を介してポンプ28に接続されている。
【0030】
ネガブレーキ用切換弁27は、そのソレノイド27aの励磁状態でポンプ28から作動油を油室25bに供給する切換位置Fとされる一方、ソレノイド27aが非励磁の状態で油室25bをタンクT2に開放する切換位置Gに復帰するようになっている。
【0031】
一方、フットブレーキ26は、油圧導入時にばね26aの付勢力に抗してクラッチドラム21に制動力を付与する一方、油圧排出時にばね26aの付勢力により前記制動力を解除する油圧シリンダ式のブレーキとして構成され、その油室26bがフットブレーキ用切換弁29を介してポンプ30に接続されている。
【0032】
フットブレーキ用切換弁29は、ブレーキペダル31の踏み込み操作に応じてポンプ30からの作動油を油室26bに供給する切換位置Hとされる一方、踏み込み操作を解除することにより油室26bをタンクT3に開放する切換位置Iに復帰するようになっている。
【0033】
そして、ポンプ30とフットブレーキ26との間にはブレーキ圧センサ32が設けられ、このブレーキ圧センサ32によって前記油室26bへ供給される作動油の圧力が検出されるようになっている。
【0034】
一方、前記操作部14は、油圧モータ17の回転駆動又は停止を指令する巻上レバー33と、油圧モータ17の停止状態におけるウィンチドラム7aの状態を選択操作するためのモード切換スイッチ34と、前記クローラ2aによる走行用の指令を出力する走行レバー35と、この走行レバー35の傾動操作を検出する走行レバーセンサ36とを備えている。
【0035】
巻上レバー33は、予め設定された中立位置に操作されることにより油圧モータ17を停止させる指令をコントローラ15へ出力する一方、前記中立位置から一方又は他方へ傾動操作することによりウィンチドラム7aの巻上げ又は巻下げの方向に油圧モータ17を回転駆動させるための指令をコントローラ15へ出力するようになっている。
【0036】
モード切換スイッチ34は、そのON、OFF操作により前記巻上レバー33が中立位置とされた状態におけるウィンチドラム7aの状態を、ウィンチドラム7aの回転を拘束する中立ブレーキモードと、ウィンチドラム7aの自由回転が許容される中立フリーモードとの間で選択する(選択指令を出力する)ことが可能とされたモード選択手段である。
【0037】
具体的に、モード切換スイッチ34は、押圧操作を受けていない状態においては、ウィンチドラム7aの回転軸J1と油圧モータ17の出力軸17aとを駆動連結させて中立ブレーキモードを実現すべく前記クラッチ用切換弁23のソレノイド23aを非励磁とする指令をコントローラ15へ出力する一方、押圧操作を受けた状態においては回転軸J1と出力軸17aとを切り離して中立フリーモードを実現すべく前記ソレノイド23aを励磁するための指令をコントローラ15へ出力する。
【0038】
なお、本実施形態では、走行レバー35の傾動操作に応じて油圧モータ37を駆動して、この油圧モータ37の出力軸37aと駆動連結された図略の駆動輪を回転させることにより前記クローラ2aによる走行を実行するようになっている。そして、油圧モータ37には、当該油圧モータ37に対する作動油の油圧を検出する走行圧センサ38が接続されている。
【0039】
以下、上述した駆動回路12及び操作部14と電気的に接続されたコントローラ15の具体的構成について図2及び図3を参照して説明する。図3は、図2のコントローラの電気的構成を示すブロック図である。
【0040】
コントローラ15は、各種演算用のCPUや記憶領域として利用されるROM又はRAM等の記憶手段を有し、この記憶手段に予め記憶された設定に基づく処理を実行するようになっている。
【0041】
具体的に、コントローラ15は、巻上レバー33が中立位置から一方又は他方へ傾動操作された場合に、クラッチ18により油圧モータ17の出力軸17aとウィンチドラム7aの回転軸J1とを駆動連結した状態でモータ用切換弁20のソレノイド20a、20bを励磁することにより(切換位置A又はBとすることにより)油圧モータ17の回転駆動力をウィンチドラム7aに伝達する一方、巻上レバー33が中立位置とされた場合に、ウィンチモータ17を停止させるようになっている。
【0042】
さらに、コントローラ15は、巻上レバー33が中立位置とされた状態におけるウィンチドラム7aの状態を前記中立ブレーキモードと中立フリーモードとの間で切換えるモード切替手段39と、予め設定された走行認定条件を満たすときに前記モード選択スイッチ34の操作状態にかかわらずウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに強制的に切換える強制モード切換手段40として主に機能するようになっている。
【0043】
モード切替手段39は、前記操作部14、ブレーキ圧センサ32、走行圧センサ38及び走行レバーセンサ36からの出力信号を受けて前記モータ用切換弁20、ネガブレーキ用切換弁27及びクラッチ用切換弁23を操作することによりウィンチドラム7aの状態を切換えるようになっている。
【0044】
具体的に、モード切替手段39は、巻上レバー33が中立位置とされている状態で、モード切替スイッチ34が押圧操作(以下、ONと称す)とされている場合に、ブレーキペダル31が踏み込み操作されているか否かを判定し、ブレーキペダル31が踏み込み操作されていないと判定された場合にはウィンチドラム7aの状態を前記中立ブレーキモードに維持する一方、踏み込み操作されていると判定された場合には中立フリーモードに設定するようになっている。この中立フリーモードでは、ウィンチドラムの回転軸J1と油圧モータ17の出力軸17aとをクラッチ18により切り離すとともに前記クラッチシリンダ22によるクラッチドラム21に対する接合力を解除した状態とし、ブレーキペダル31の踏み込み操作を緩めることによりウィンチドラムの自由回転が許容される。
【0045】
一方、モード切換手段39は、巻上レバー33が中立位置とされている状態でモード切換スイッチ34が押圧操作されていない場合(以下、OFFと称す)には、ウィンチドラム7aの状態を前記中立ブレーキモードに維持するようになっている。
【0046】
強制モード切換手段40は、前記走行圧センサ38及び走行レバーセンサ36からの出力信号を受けて前記モータ用切換弁20、ネガブレーキ用切換弁27及びクラッチ用切換弁23を操作することによりウィンチドラム7aの状態を切換えるようになっている。
【0047】
具体的に、強制モード切換手段40は、巻上レバー33が中立位置とされている状態で、予め設定された走行認定条件を満たしているか否かを判定し、走行認定条件を満たしていると判定されたときに、前記モード切替スイッチ34のON、OFF操作の有無にかかわらずウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに設定するようになっている。
【0048】
なお、前記走行認定条件には、走行レバー35が傾動動作されたこと、又は油圧モータ37の駆動力が予め設定された基準圧力以上であると判定されたことが含まれる。
【0049】
以下、前記コントローラ15により実行される処理を図2及び図4のフローチャートを参照して説明する。
【0050】
コントローラ15による処理が開始されると、まず、モータ用切換弁20、ネガブレーキ用切換弁27及び、クラッチ用切換弁23をそれぞれ非励磁の状態として、ネガブレーキ25及びクラッチシリンダ22によりクラッチドラム21の自由回転を阻止するとともに油圧モータ17の駆動を停止する、すなわち、ウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに設定する(ステップS1)。
【0051】
次いで、巻上レバー33が中立位置とされているか否かを判定し(ステップS2)、巻上レバー33が傾動操作されていると判定されると(ステップS2でNO)、当該巻上レバー33の操作量に応じた電流をモータ用切換弁20のソレノイド20a、20bへ供給して、ウィンチドラム7aを回転駆動させることによりフック11(図1参照)を昇降させて(ステップS3)、前記ステップS2を繰り返し実行する。
【0052】
一方、巻上レバー33が中立位置とされていると判定されると(ステップS2でYES)、モード切替スイッチ34がONとされているか否かを判定する(ステップS4)。
【0053】
ここで、モード切替スイッチ34がOFFであると判定されると(ステップS4でNO)、前記ステップS1を繰り返し実行する一方、モード切替スイッチ34がONであると判定されると(ステップS4でYES)、ブレーキ圧センサ32により検出された油圧が規定値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0054】
すなわち、このステップS5では、フットブレーキ26によりウィンチドラム7aの回転が確実に阻止された状態にあるか否かを判定し、ここで、油圧が規定値未満であると判定されると(ステップS5でNO)、前記ステップS1を繰り返し実行する。
【0055】
一方、油圧が規定値以上とあると判定されると(ステップS5でYES)、予め設定された走行認定条件を満たしているか否かを判定する(ステップS6)。
【0056】
すなわち、このステップS6では、前記走行圧センサ38により検出された油圧モータ37の駆動圧が予め設定された基準圧力以上であるか否か、又は、走行レバーセンサ36により走行レバー35の傾動操作が検出されたか否かが判定され、これらの何れかを満たしたときに走行認定条件を満たしているものとして判定される。
【0057】
そして、走行認定条件を満たしていると判定されると(ステップS6でYES)、前記ステップS1を繰り返し実行する一方、走行認定条件を満たしていないと判定されると(ステップS6でNO)、ネガブレーキ用切換弁27及びクラッチ用切換弁23をそれぞれ励磁することにより(ステップS7)、油圧モータ17の出力軸17aとウィンチドラム7aの回転軸J1とを切り離してウィンチドラム7aの状態を中立フリーモードに設定する。
【0058】
次いで、巻上レバー33が中立位置にあるか否かを判定し(ステップS8)、ここで、巻上レバー33が傾動操作されていると判定されると(ステップS8でNO)、クラッチ用切換弁23を非励磁とするとともに巻上レバー33の操作量に応じてモータ用切換弁20を励磁して(すなわち、ウィンチドラム7aを回転駆動して:ステップS9)、前記ステップS2を繰り返し実行する。
【0059】
一方、巻上レバー33が未だ中立位置にあると判定されると(ステップS8でYES)、モード切替スイッチ34が依然としてONとされているか否かを判定する(ステップS10)。
【0060】
ここで、モード切替スイッチ34がOFFであると判定されると(ステップS10でNO)、前記ステップS1を繰り返し実行する(ウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに設定する)一方、モード切替スイッチ34が未だONであると判定されると(ステップS10でYES)、前記走行認定条件を満たしているか否かを判定する(ステップS11)。
【0061】
そして、走行認定条件を満たしていないと判定されると(ステップS11でNO)、前記ステップS7を繰り返し実行する一方、走行認定条件を満たしていると判定されると(ステップS11でYES)、前記ステップS1を実行して、ウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに設定する。
【0062】
このように、前記クローラ式クレーン1では巻上レバー33が中立位置とされている状態(ステップS2以降)において、走行認定条件が満たされた場合(ステップS6及びステップS11でYES)に、ウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに切換えるように構成されているので、当該クレーン1の走行中にオペレータが誤ってブレーキペダル31の操作を緩めた場合であっても、フック11に懸架された吊り荷の位置が下がってしまうことを防止することができる。
【0063】
以上説明したように、クローラ式クレーン1によれば、走行認定条件を満たすときには選択指令にかかわらずウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに強制的に切換えるようにしているので、走行が開始されるのに先立って、ウィンチドラム7aの状態を中立ブレーキモードに切換えることができる。
【0064】
したがって、クローラ式クレーン1によれば、中立フリーモードに設定された状態で走行を開始する場合であっても、当該走行の際及び走行中には必ず中立ブレーキモードが設定されることになり、オペレータがブレーキ操作を緩めてしまった場合であっても、吊り荷の落下を確実に防止することができる。
【0065】
なお、前記実施形態では、クローラ式クレーン1を例示して説明したが、クレーンの走行方式はこれに限定されるものではなく、ホイールクレーン等を含む他の自走式クレーンに適用しても上述した効果を奏することができる。
【0066】
さらに、前記実施形態のクラッチ18に湿式多板クラッチ方式のものを採用してもよい。
【0067】
また、図2では、巻上レバー33の操作に応じて電気信号を出力する例について説明しているが、この電気的な操作に代えて、油圧式の操作を採用することもでき、この場合にも上述した効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係るクローラ式クレーンの全体構成を示す側面図である。
【図2】図1の上部旋回体に設けられた油圧回路と電気回路とを併せて示す概略図である。
【図3】図2のコントローラの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図3のコントローラにより実行される処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 クローラ式クレーン(自走式作業機械)
7 フロントウィンチ
7a ウィンチドラム
7b ワイヤ
8 リアウィンチ
9 ブーム起伏ウィンチ
11 フック
12 駆動回路
14 操作部
15 コントローラ(制御装置)
17 油圧モータ(ウィンチモータ)
17a 出力軸
18 クラッチ
19 ポンプ
32 ブレーキ圧センサ
33 巻上レバー
34 モード切替スイッチ
35 走行レバー
36 走行レバーセンサ
38 走行圧センサ
39 モード切替手段
40 強制モード切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上を走行する走行体上に、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うためのウィンチドラムと、このウィンチドラムを前記巻上げの方向及び巻下げの方向に回転駆動するためのウィンチモータとが搭載された自走式作業機械を制御する装置であって、
所定の選択指令を受けることにより、前記ウィンチモータが停止しているときの前記ウィンチドラムの状態を、前記ウィンチドラムの回転が拘束される中立ブレーキモードと、前記ウィンチドラムの自由回転が許容される中立フリーモードとの間で切換えるモード切換手段と、
前記自走式作業機械の運転状態が予め設定された走行認定条件を満たすときに前記選択指令にかかわらず前記ウィンチドラムの状態を前記中立ブレーキモードに強制的に切換える強制モード切換手段とを備えることを特徴とする自走式作業機械の制御装置。
【請求項2】
前記強制モード切換手段は、前記自走式作業機械の走行指令用の操作部が操作されたときに前記走行認定条件を満たしたものとして判定することを特徴とする請求項1に記載の自走式作業機械の制御装置。
【請求項3】
前記強制モード切換手段は、前記自走式作業機械を走行させる走行用モータの駆動力が予め設定された基準値よりも大きいときに前記走行認定条件を満たしたものとして判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の自走式作業機械の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の制御装置と、路上を走行する走行体と、この走行体上に搭載され、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うウィンチドラム及びこのウィンチドラムを前記巻上げ及び巻下げの方向に回転駆動するウィンチモータとを備えた自走式作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−106519(P2007−106519A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296762(P2005−296762)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】