説明

舶用機器ネットワークシステム

【課題】同種の航法データが複数存在しても、全ての表示器で共有の航法データを利用させる。
【解決手段】ディスプレイユニット12で共有対象のセンサ24が選択され、サーバ装置11でセンサ24を対象とする共有ソース設定指示データが生成、送信される(S601〜S604)と、LAN機器13は、センサ22からの航法データの出力を停止し(S608)、LAN機器14は、センサ24の航法データの第一通信網100への出力を開始する(S609)。また、LAN機器14は、シリアルケーブル301で接続されるディスプレイユニット31へセンサ24の航法データを与える(S613)。LAN機器13は、第二通信網201で接続されるディスプレイユニット21へセンサ24の航法データを与える(S614)。ディスプレイユニット12,21,31は、センサ24の航法データを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、魚群探知機、ソナーおよびGPSユニット等の舶用機器をネットワークで接続してなる舶用機器ネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、船舶には、利用者の利便性や航行の安全性を考慮して、魚群探知器、ソナー、レーダ、およびGPSのような各種の探知装置が搭載され、ネットワークシステム化されている。そして、このような船舶では、同種の探知装置が複数搭載されているものがある。例えば、特許文献1では、複数の超音波探知機(魚群探知機やソナー)が搭載されており、さらに複数の表示器が搭載されており、これら複数の超音波探知機と複数の表示器とがネットワーク接続されている。
【特許文献1】特開2004−150872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような同種の探知装置が複数存在して、表示器が複数存在する舶用機器ネットワークシステムでは、各探知装置が生成する航法データをそれぞれの表示器で個別に選択して表示していた。しかしながら、この方法では、表示器毎に表示される航法データが異なる可能性があるので、オペレータが航法データを統一するための煩雑な作業を行わなければならない。したがって、これを回避するために、同種の航法データを出力する複数の舶用機器をネットワークに同時に接続できないという、装備上の制約があった。
【0004】
したがって、この発明の目的は、上述の装置上の制約を受けず、同種の航法データが複数存在しても、表示器を含む全ての舶用機器で共有の航法データを利用することができる舶用機器ネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、同種の航法データを生成する複数のセンサを含む複数の舶用機器を電気通信網で接続してなる舶用機器ネットワークシステムに関するものである。この舶用機器ネットワークシステムは、一対多の通信を実現する第一通信網と、該第一通信網で相互接続される複数の第一群舶用機器と、該複数の第一群舶用機器をそれぞれの第一通信網へのデータ入出力ゲートとして第一通信網と異なるプロトコルで接続された第二群舶用機器とを備える。また、複数の第一群舶用機器の一台を少なくともサーバ機能を有する機器とする。
【0006】
このような構成において、複数の第一群舶用機器のそれぞれは、自装置をデータ入出力ゲートとする第二群舶用機器の識別情報および出力可能な航法データの種類を取得する。そして、サーバは、複数の舶用機器それぞれの識別情報および出力可能な航法データの種類を取得する。
【0007】
サーバ機能を有する機器は、同種の航法データを生成する複数のセンサの内の一台を選択して、選択した一台のセンサの航法データを共有する指示を第一通信網を介して実行して、複数の第一群舶用機器に共有の指示を送信する。
【0008】
この構成では、それぞれが異なるプロトコルからなる複数の電気通信網が混在する舶用機器ネットワークシステムにおいて、サーバ機能を有する機器は、舶用機器ネットワークシステムを構成する全ての舶用機器を個別に識別するとともに各舶用機器が生成する航法データを一元的に把握する。サーバ機能を有する機器は、ネットワークシステム内に存在する複数の同種航法データから一つを選択し、第一群舶用機器に共有の指示を与え、第一群舶用機器のそれぞれは第二群舶用機器に共有の指示を伝える。
【0009】
また、この発明の舶用ネットワークシステムの複数の第一群舶用機器のそれぞれは、共有の指示がされたセンサと同種の航法データを第一通信網を介して送信していれば、当該航法データの送信を停止する。複数の第一群舶用機器のそれぞれは、共有の指示されたセンサが自装置をデータ入出力ゲートとする第二群舶用機器であることを検出すると、共有の指示されたセンサからの航法データを第一通信網を介して送信する。
【0010】
この構成では、各第一群舶用機器は、自装置を第一通信網の入出力ゲートとする第二群舶用機器が共有指示されたセンサであれば、当該センサからの航法データの出力・送信を行う。この際、各第一群舶用機器は、自装置のグループ内に共有指示されたセンサと別の同種航法データを生成するセンサを検出すると、当該センサの航法データの出力・送信および共有化を停止する。これにより、ネットワークシステム内の全ての舶用機器で、一種類の航法データについて一つの航法データが共有される。
【0011】
また、この発明の舶用機器ネットワークシステムでは、サーバ機能を有する機器を含む複数の舶用機器の少なくとも一台は、センサの選択の操作入力を受け付ける操作入力手段を備え、同種の航法データを生成する複数のセンサの内の一台を選択する操作入力を受け付けると、センサ選択情報をサーバ機能を有する機器に取得させる。サーバ機能を有する機器は、取得したセンサ選択情報に基づいて前記共有の指示を実行する。
【0012】
この構成では、航法データを出力するセンサが手動により選択される。これにより、オペレータが所望とするセンサ(航法データ)を選択すれば、当該選択されたセンサによる航法データがネットワークシステム内で共有される。
【0013】
また、この発明の舶用機器ネットワークシステムでは、サーバ機能を有する機器は、同種の航法データのそれぞれの精度を検出する航法データ精度検出手段を備え、最も高精度な航法データを共有する指示を行う。
【0014】
この構成では、同種の航法データの中で最も高精度な航法データを生成するセンサが選択されて共有される。これにより、ユーザが各航法データの精度を比較して設定することなく、最も信頼性の高い航法データが共有される。すなわち、ネットワークシステム内の全ての舶用機器で最も信頼性の高い航法データが自動で選択されて共有される。
【0015】
また、この発明の舶用機器ネットワークシステムでは、サーバ機能を有する機器は、共有の指示を行ったセンサからの航法データをモニタし、所定時間長に亘り航法データを取得できなければ、共有の指示を行ったセンサと同種の航法データを生成する他のセンサを新たな共有の指示の対象に切り替える。
【0016】
この構成では、選択したセンサから航法データが出力されていなければ、同種の航法データを発する他のセンサが選択されるので、ネットワークシステム内で、この種類の航法データが確実に共有される。
【0017】
また、この発明の舶用機器ネットワークシステムでは、サーバ機能を有する機器は、新たな共有の指示の対象となるセンサを、元の共有の指示の対象となるセンサの属する第二群舶用機器のグループとは別の第二群舶用機器のグループから選択する。
【0018】
この構成では、航法データを取得できないセンサから新たなセンサに切り替える際に、対象となる第一群舶用機器も切り替わるので、センサの切り替えによる航法データの取得が、より確実に実行される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、同種の航法データを生成する複数のセンサを含み、異なるプロトコルからなる複数の電気通信網により接続された舶用機器群からなる舶用機器ネットワークシステムにおいて、全ての舶用機器で、前記同種の航法データの一つのみを確実に共有化することができる。これにより、複数の表示器で、それぞれ異なるセンサから同じ種類の航法データを取得して表示することが防止され、ユーザにとって使い勝手が良い舶用機器ネットワークシステムを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の舶用機器ネットワークシステムについて図を参照して説明する。
図1は、本実施形態の舶用機器ネットワークシステムの主要構成を示すブロック図である。
舶用機器ネットワークシステムには、一対多の通信を可能とする第一通信網100を有する。この第一通信網100は、所謂LANの通信プロトコルを利用したものである。第一通信網100には、サーバ装置11、ディスプレイユニット12、LAN機器13,14がそれぞれ接続しており、これらの間でLANの通信プロトコルに準じたデータ通信が実行される。これらサーバ装置11、ディスプレイユニット12、LAN機器13,14が、本発明の「第一群舶用機器」に相当する。また、第一通信網100は、有線LAN、無線LANのいずれでも良く、例えば無線LANの場合、IEEE802.11規格に基づく無線LAN等が用いられる。
【0021】
LAN機器13は、第一通信網100とともに、第一通信網100と異なるプロトコルからなる一対多の通信を可能とする第二通信網201に接続している。第二通信網201は、舶用のNMEA2000規格である所謂CANのプロトコルに準じた通信網である。この第二通信網201には、NMEA2000機器であるディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23がそれぞれ接続されている。LAN機器13、ディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23は、NMEA2000規格に準じて通信を行う。
【0022】
センサ付き制御ユニット23は、第二通信網201に接続するとともに、シリアルケーブル302を介して、舶用のNMEA0183機器であるセンサ32に接続している。センサ付き制御ユニット21とセンサ32とは、NMEA0183規格に準じてシリアル通信を行う。このシリアル通信は、具体的にUSBやRS−232規格等で実現される。
【0023】
LAN機器14は、第一通信網100とともに、上述のNMEA2000規格に準じた第三通信網202により、NMEA2000機器であるセンサ24に接続している。LAN機器14とセンサ24とは、NMEA2000規格に準じて通信を行う。また、LAN機器14は、シリアルケーブル301を介して、舶用のNMEA0183機器であるディスプレイユニット31に接続している。LAN機器14とディスプレイユニット31とは、NMEA0183規格に準じてシリアル通信を行う。
【0024】
これら舶用機器ネットワークシステムを構成する舶用機器は、それぞれに固有の識別IDが予め設定されている。具体的には、第一通信網100のサーバ装置11、ディスプレイユニット12、LAN機器13,14は、第一通信網100のプロトコルに準じた個別IDを有する。
【0025】
第二通信網201に接続するLAN機器13、ディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23は、第二通信網201のプロトコルに準じた個別IDを有する。LAN機器13は、第二通信網201に接続するディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23の個別IDを第一通信網100の形式に変換して第一通信網100に接続する各装置に与える。そして、センサ32は、第二通信網201に接続するセンサ付き制御ユニット23により個別IDが与えられ、このセンサ32の個別IDもLAN機器13にて第一通信網100の形式に変換され、第一通信網100に接続する各装置に与えられる。
【0026】
第三通信網202に接続するLAN機器14、センサ24は、第三通信網202のプロトコルに準じた個別IDを有する。LAN機器14は、第三通信網202に接続するセンサ24の個別IDを第一通信網100の形式に変換して、第一通信網100に接続する各装置に与える。そして、ディスプレイユニット31は、LAN機器14により個別IDが与えられ、このディスプレイユニット21の個別IDもLAN機器14にて第一通信網100の形式に変換され、第一通信網100に接続する各装置に与えられる。
【0027】
このような個別IDとともに、各舶用機器に対して、出力可能な航法データ(経度緯度データ等)の種類を示す機種区分情報が設定される。この機種区分情報も、プロトコル形式が異なるものの、第一通信網100、第二通信網201、第三通信網202に接続される各舶用機器は、予め自装置内に記憶している。そして、第一通信網100に接続する各舶用機器間では第一通信網100に準じた形式で機種区分情報を送受信する。また、第一通信網100と第二通信網201とのデータ入出力ゲートとなるLAN機器13は、第二通信網201に接続するディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット22の機種区分情報を第一通信網100の形式に変換して、第一通信網100に接続する各装置へ与える。そして、センサ32は、第二通信網201に接続するセンサ付き制御ユニット23により機種区分情報が設定され、このセンサ32の機種区分情報もLAN機器13にて第一通信網100の形式に変換され、第一通信網100に接続する各装置に与えられる。
【0028】
また、第一通信網100と第三通信網202とのデータ入出力ゲートとなるLAN機器14は、第三通信網202に接続するセンサ24の機種区分情報を第一通信網100の形式に変換して、第一通信網100に接続する各装置へ与える。さらに、LAN機器14は、シリアル接続されるディスプレイユニット31の機種区分情報を設定し、このディスプレイユニット31の機種区分情報もLAN機器14にて第一通信網100の形式に変換され、第一通信網100に接続する各装置に与えられる。
【0029】
このような構成および仕様において、本実施形態の舶用機器ネットワークシステムは、次に示すフローおよび処理を用いて、航法データの共有化を実現する。なお、以下の説明では、単に航法データと称するが、航法データは、例えば、GPS受信機・ロラン受信機等の測位装置による位置データ、ジャイロ装置による船首方位データやピッチング・ローリング・ヒーブ等の船体動揺に関するデータ、船速計による対地・対水船速データ、音響測深機による水深データ、水温計による水温データ、風向・風速計からの風向・風速データ、エンジンからの種々のデータ、舵角計からの舵角データ、レーダ・魚群探知機・スキャニングソナーからの探知画像データ、AIS受信機等による他船情報、気象ファクシミリの気象情報等がある。
図2は、航法データ共有化処理の際のサーバ装置11の処理フローを示すフローチャートである。図3は、航法データ共有化処理の際のディスプレイユニット12の処理フローを示すフローチャートである。図4は、航法データ共有化処理の際のLAN機器13,14の処理フローを示すフローチャートである。
図5は、機種区分情報の取得フローを示すシステムフロー図である。
まず、第一通信網100に接続されるサーバ装置11、ディスプレイユニット12、LAN機器13は、それぞれ自装置が接続する他装置との接続状態を検出する(図2〜図4のS100)。図1の構成であれば、サーバ装置11は、第一通信網100を介してディスプレイユニット12、LAN機器13,14との接続確認を行い、ディスプレイユニット12は、第一通信網100を介してサーバ装置11、LAN機器13,14との接続確認を行う。LAN機器13は、第一通信網100を介して、サーバ装置11,ディスプレイユニット12、LAN機器14との接続確認を行うとともに、第二通信網201を介してディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23の接続確認を行う。なお、この際、センサ付き制御ユニット23は、シリアルケーブル302を介してセンサ32の接続確認を行う。LAN機器14は第三通信網202を介してセンサ24の接続確認を行うとともに、シリアルケーブル301を介してディスプレイユニット31との接続確認を行う。
【0030】
また、サーバ装置11は、図5に示すように、舶用機器ネットワークシステム内の全ての舶用機器の個別IDと機種区分情報とを取得する。まず、サーバ装置11は、第一通信網100に接続するディスプレイユニット12、LAN機器13,14に対して、各舶用機器の個別IDと機種区分情報を含む機器情報をサーバ装置11へ送信する指示として機器情報要求を送信する。
【0031】
ディスプレイユニット12は、サーバ装置11からの機器情報要求を受信すると、自装置の機器情報をサーバ装置11へ送信する。サーバ装置11は、ディスプレイユニット12から機器情報を受信して、ディスプレイユニット12の機器情報を取得する。
【0032】
LAN機器13は、サーバ装置11からの機器情報要求を受信すると、自装置の機器情報をサーバ装置11へ送信する。サーバ装置11は、LAN機器13から機器情報を受信して、LAN機器13の機器情報を取得する。LAN機器13は、自装置の機器情報のサーバ装置11への送信とともに、第二通信網201に接続するディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23へ機器情報要求を送信する。
【0033】
ディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23は、LAN機器13から機器情報要求を受信すると、LAN機器13へそれぞれの機器情報を送信する。LAN機器13は、これらの機器情報を受信すると、自装置内に記憶するとともに、第一通信網100の形式に変換して、サーバ装置11へ送信する。サーバ装置11は、LAN機器13からの機器情報を受信して、ディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23の機器情報を取得する。
【0034】
センサ付き制御ユニット23は、自装置の機器情報をLAN機器13へ送信するとともに、シリアルケーブル302に接続するセンサ32へ機器情報要求を送信する。センサ32は、機器情報要求を受信するとセンサ付き制御ユニット23へ機器情報を送信し、センサ付き制御ユニット23は、センサ32の機器情報を第二通信網201の形式に変換して、LAN機器13へ送信する。LAN機器13は、第二通信網201の形式からなるセンサ32の機器情報を第一通信網11の形式に変換して、サーバ11へ送信する。サーバ11は、LAN機器13からの機器情報を受信して、センサ32の機器情報を取得する。
【0035】
LAN機器14は、サーバ装置11からの機器情報要求を受信すると、自装置の機器情報をサーバ装置11へ送信する。サーバ装置11は、LAN機器14から機器情報を受信して、LAN機器14の機器情報を取得する。LAN機器14は、自装置の機器情報のサーバ装置11への送信とともに、第三通信網202に接続するセンサ24へ機器情報要求を送信する。
【0036】
センサ24は、LAN機器14から機器情報要求を受信すると、LAN機器14へ機器情報を送信する。LAN機器14は、これらの機器情報を受信すると、自装置内に記憶するとともに、第一通信網100の形式に変換して、サーバ装置11へ送信する。サーバ装置11は、LAN機器14からの機器情報を受信して、センサ24の機器情報を取得する。
【0037】
LAN機器14は、シリアルケーブル301に接続するディスプレイユニット31へ機器情報要求を送信する。ディスプレイユニット31は、機器情報要求を受信するとLAN機器14へ機器情報を送信し、LAN機器14は、ディスプレイユニット31の機器情報を第一通信網100の形式に変換して、サーバ11へ送信する。サーバ11は、LAN機器14からの機器情報を受信して、ディスプレイユニット31の機器情報を取得する。
【0038】
上述の処理により、サーバ装置11は、異なるプロトコルが混在する舶用機器ネットワークシステム内の全ての舶用機器の機器情報(個別IDや機種区分情報等)を一元管理することができる。
【0039】
(1)航法データ共有化に対するサーバ装置11の処理
サーバ装置11は、上述の各舶用機器の機器情報を取得すると、航法データの共有化モードの選択を受け付ける。この際、サーバ装置11は、ネットワークシステム全体の舶用機器の機器情報に基づいて、同種の航法データを発生する舶用機器(センサ)群を抽出する。そして、サーバ装置11は、同種の航法データを発生する舶用機器群の情報をディスプレイユニット12へ送信し、ディスプレイユニット12は、この情報を表示する。ディスプレイユニット12には、航法データ共有化のモード選択を受け付ける操作入力手段が備えられており、後述する図3のS201のように、ユーザによりディスプレイユニット12で航法データ共有化のモード選択が入力される。航法データ共有化モード選択が入力されると、ディスプレイユニット12は、サーバ装置11へ自動モードであるか手動モードであるかを示すモード選択データを送信する。サーバ装置11は、モード選択データを受信して、自動モードであれば航法データの自動共有化処理の実行を開始し(S101:自動)、手動モードであれば共有対象となるソースの選択指示を受け付ける(S101:手動)。ディスプレイユニット12から共有対象ソース情報を受け付けると、サーバ装置11は、上記機器情報から共有対象となる舶用機器(センサ)を選択する(S102)。サーバ装置11は、当該共有対象として設定する舶用機器(センサ)および航法データの種類に基づく共有ソース設定指示データを生成して、第一通信網100を介して出力する(S103)。
【0040】
サーバ装置11は、共有ソース設定指示データで指示した後、当該共有指示の対象となる舶用機器(センサ)からの航法データをモニタする(S104)。サーバ装置11は、該当する航法データが得られれば(S105:Yes)、次にモード選択データや共有対象ソース情報を受け付けるまで、共有指示した対象となる舶用機器からの航法データをモニタし続ける。一方、サーバ装置11は、該当する航法データが得られなければ(S105:No)、選択ソースの変更要求をディスプレイユニット12へ出力する(S106)。そして、ディスプレイユニット12から自動モードの選択を受けなければ(S107:No)、サーバ装置11は共有対象となるソースの選択指示を待つ。一方、ディスプレイユニット12から自動モードの選択を受け付ければ(S107:Yes)、サーバ装置11は自動モードに切り替える。
【0041】
自動モードが選択されると、サーバ装置11は、ネットワークシステム全体の舶用機器の機器情報に基づきデフォルトの設定に従って同種の航法データを生成する複数の舶用機器から一台の舶用機器を選択する。そして、サーバ装置11は、選択した舶用機器を指示する共有ソース設定指示データを生成して、第一通信網100を介して出力する(S108)。この際、デフォルトの設定としては、機器情報の個別IDを昇順や降順に並べ、先頭の個別IDとなる舶用機器を選択する方法がある。また、サーバ装置11に、各航法データの精度を検出する機能部を備えさせ、当該機能部で算出した精度が最も高い舶用機器を選択する方法もある。このような精度に基づく方法では、自動で最も高精度な航法データを生成する舶用機器が選択されるので、信頼性の高い舶用機器ネットワークシステムを構築することができる。
【0042】
サーバ装置11は、共有指示の対象として選択した舶用機器(センサ)からの航法データをモニタする(S109)。サーバ装置11は、該当する航法データが得られれば(S110:Yes)、当該共有指示した対象の舶用機器からの航法データをモニタし続ける。一方、サーバ装置11は、該当する航法データが得られなければ(S110:No)、予め設定したルールに基づいて、同種の航法データを生成する他の舶用機器から一台を選択して、選択した舶用機器を指示する共有ソース設定指示データを生成し、第一通信網100を介して出力する(S111)。ここで、選択切り替えのルールとしては、上述の昇順であれば次の順の舶用機器を指定し、上述の精度を用いる場合であれば次に高精度な航法データを生成する舶用機器を指定するものである。
(2)航法データ共有化に対するディスプレイユニット12の処理
ディスプレイユニット12は、他装置との接続状態を検出すると(S100)、サーバ装置11からの同種の航法データを生成する舶用機器群の情報を取得し、表示部(図示せず)に表示する。ディスプレイユニット12は、ユーザから自動モードの操作入力を受け付けると(S201:Yes)、自動モードを示すモード選択データをサーバ装置11へ送信する。ディスプレイユニット12は、サーバ装置11からの共有ソース設定指示データに指示された舶用機器からの航法データを受信して、当該航法データに基づく表示制御を行う(S206)。
【0043】
一方、ディスプレイユニット12は、ユーザから手動モードの操作入力を受け付けると(S201:No)、ユーザからのソース設定入力を受け付け(S202)、サーバ装置11へ、共有対象ソース情報を送信する(S203)。ディスプレイユニット12は、共有指示された対象の舶用機器からの航法データを受信し、サーバ装置11から選択ソース変更要求を受信しなければ(S204:No)、当該航法データに基づく表示制御を行う(S205)。一方、ディスプレイユニット12は、サーバ装置11から選択ソース変更要求を受信すれば(S204:Yes)、ソース設定切り替え要求表示を表示器に表示し(S206)、新たなソース設定入力を受け付ける(S202)。
(3)航法データ共有化に対するLAN機器13,14の処理
LAN機器13,14は、他装置との接続状態を検出すると(S100)、サーバ装置11から共有ソース設定指示データを受け付け(S301)、共有設定対象のソースが自装置グループ内に存在するかどうかを検出する。例えば、図1の場合、LAN装置13であれば、共有設定対象のソースが、自装置であるLAN機器13、ディスプレイユニット21、センサ22、センサ付き制御ユニット23、センサ32のいずれかに該当するかどうかを検出する。LAN機器14であれば、共有設定対象のソースが、自装置であるLAN機器14、センサ24、ディスプレイユニット31のいずれかに該当するかどうかを検出する。
【0044】
LAN機器13,14は、共有設定対象のソースが自装置グループ内に存在することを検出すると(S302:Yes)、この切り替え前のソースが自装置グループ内であるかを検出する。LAN機器13,14は、切り替え前のソースが自装置グループ内であることを検出すると(S303:Yes)、当該切り替え前のソースによる航法データの出力停止制御を行う(S305)。ここで、出力停止制御とは、実際に切り替え前のソースからの出力を停止するようにしても良く、LAN機器13,14が第一通信網100に出力を停止し、且つ自装置が属するグループ内での共有を停止するようにしてもよい。LAN機器13,14は、切り替え前のソースが自装置グループ内にないことを検出するか(S303:No)、切り替え前のソースの出力を停止すると(S305)、自装置グループ内の共有設定対象のソースからの航法データを、自装置グループ内で共有設定するとともに、第一通信網100を介して出力する(S304)。
【0045】
LAN機器13,14は、共有設定対象のソースが自装置グループ内に存在しないことを検出すると(S302:No)、この切り替え前のソースが自装置グループ内であるかを検出する。LAN機器13,14は、切り替え前のソースが自装置グループ内であることを検出すると(S306:Yes)、当該切り替え前のソースによる航法データの出力停止制御を行う(S307)。ここでも、出力停止制御とは、実際に切り替え前のソースからの出力を停止するようにしても良く、LAN機器13,14が第一通信網100に出力を停止し、且つ自装置が属するグループ内での共有を停止するようにしてもよい。LAN機器13,14は、切り替え前のソースが自装置グループ内にないことを検出するか(S306:No)、切り替え前のソースの出力を停止すると(S307)、自装置を航法データの出力源として、第一通信網100を介して受信した航法データを自装置グループ内で共有化する制御を行う(S308)。
次に、手動入力による航法データの共有化の具体例を、図6を用いて説明する。なお、以下の説明では、図1に示すような舶用機器ネットワークシステムの構成で、共有する航法データのソースを、センサ22からセンサ24へ切り替える場合を例に説明する。
図6は、手動入力による航法データの共有化フローを示すシステムフロー図である。
【0046】
ユーザがセンサ24の航法データを共有化する選択操作を行うと(S601)、ディスプレイユニット12は、これを検出してサーバ装置11へセンサ24を選択ソースとする指示(共有ソース設定指示データ)を送信する(S602)。
サーバ装置11は、この指示を受信して(S603)、センサ24を対象とする共有ソース設定指示データを、第一通信網100を介して、ディスプレイユニット12、LAN機器13,14へ送信する(S604)。
ディスプレイユニット12、LAN機器13,14は、センサ24を対象とする共有ソース設定指示データを受信する(S605,S606,S607)。
LAN機器13は、共有ソース設定指示データに基づいて、この受信の時点でセンサ24と同種の航法データを自装置グループ内のセンサ22が出力していることを検出して、当該センサ22からの航法データの出力、送信を停止する(S608)。
【0047】
LAN機器14は、共有ソース設定指示データに基づいて、自装置グループ内のセンサ24の航法データの出力、送信を開始する(S609)。
【0048】
サーバ装置11、ディスプレイユニット12、LAN機器13は、LAN機器14からセンサ24の航法データを受信開始する(S610,S611,S612)。
【0049】
サーバ装置11は、この航法データのモニタを継続的に行う。ディスプレイユニット12はこのセンサ24の航法データに基づく表示を行う(S615)。
LAN機器13は、自装置を出力源として、センサ24の航法データを、第二通信網201で接続されるディスプレイユニット21に与え(S614)、ディスプレイユニット21は、この航法データに基づく表示を行う。
LAN装置14は、シリアルケーブル301で接続されるディスプレイユニット31に、センサ24の航法データを与え(S613)、ディスプレイユニット31は、この航法データに基づく表示を行う。
【0050】
以上のようにして、センサ24の航法データを共有化して、舶用機器ネットワークシステム内の全てのディスプレイユニット12,21,31で表示することができる。そして、ユーザの手動により選択されたセンサ(ソース)の航法データが共有化されるので、ユーザの所望に応じた最適な航法データを舶用機器ネットワークシステム内で共有化することができる。
【0051】
次に、自動による航法データの共有化の具体例を、図7を用いて説明する。なお、以下の説明では、図1に示すような舶用機器ネットワークシステムの構成で、共有する航法データのソースを、デフォルト設定であるセンサ22に設定する場合を例に説明する。
図7は、自動による航法データの共有化フローを示すシステムフロー図である。
【0052】
ユーザが航法データを自動共有化する選択操作を行うと(S701)、ディスプレイユニット12は、これを検出してサーバ装置11へソース選択自動モードとする指示(モード選択データ)を送信する(S702)。
サーバ装置11は、この指示を受信して(S703)、デフォルト設定されたセンサ22を共有対象とする共有ソース設定指示データを、第一通信網100を介して、第一通信網100に対するセンサ22のデータ入出力ゲートとなるLAN機器13へ送信する(S704)。
LAN機器13は、センサ22を対象とする共有ソース設定指示データを受信する(S705)と、共有ソース設定指示データに基づいて、自装置グループ内のセンサ22の航法データの出力、送信を開始する(S706)。
【0053】
サーバ装置11は、センサ22の航法データをモニタして(S707)、航法データが出力されていることを検出すると(S708)、センサ22を対象とする共有ソース設定指示データを、第一通信網100を介して、ディスプレイユニット12、LAN機器13,14へ送信する(S709)。
ディスプレイユニット12、LAN機器13,14は、センサ22を対象とする共有ソース設定指示データを受信し(S710,S711,S712)、上述の手動の場合と同様に、センサ22の航法データを共有化する。
【0054】
このような処理を行うことで、ユーザが各航法データを比較する等の煩雑な処理を行うことなく、舶用機器ネットワークシステムにおいて、自動で航法データを共有化することができる。
【0055】
なお、この説明では、一度で指定したソース(センサ)からの出力が検出できた場合を示したが、一度で検出できない場合もある。図8は、一度指定したソース(センサ)からの出力が検出できず、自動で切り替えた場合を示す。
【0056】
ユーザが航法データを自動共有化する選択操作を行うと(S801)、ディスプレイユニット12は、これを検出してサーバ装置11へソース選択自動モードとする指示(モード選択データ)を送信する(S802)。
サーバ装置11は、この指示を受信して(S803)、デフォルト設定されたセンサ22を共有対象とする共有ソース設定指示データを、第一通信網100を介して、第一通信網100に対するセンサ22へのデータ入出力ゲートとなるLAN機器13へ送信する(S804)。
LAN機器13が、この共有ソース設定指示データを受信できない等の理由で、センサ22の航法データを出力、送信しない(S805)と、サーバ装置11は、センサ22の航法データをモニタしても(S806)、航法データを検出できず(S807)、次の優先度(選択順)に基づくセンサ24を対象とする共有ソース設定指示データを、第一通信網100を介して、LAN機器14へ送信する(S808)。
LAN機器14は、センサ24を対象とする共有ソース設定指示データを受信する(S809)と、共有ソース設定指示データに基づいて、自装置グループ内のセンサ24の航法データの出力、送信を開始する(S810)。
【0057】
サーバ装置11は、センサ24の航法データをモニタして(S811)、航法データが出力されていることを検出すると(S812)、センサ24を対象とする共有ソース設定指示データを、第一通信網100を介して、ディスプレイユニット12、LAN機器13,14へ送信する(S813)。
ディスプレイユニット12、LAN機器13,14は、センサ22を対象とする共有ソース設定指示データを受信し(S814,S815,S816)、上述の手動の場合と同様に、センサ24の航法データを共有化する。
【0058】
このような処理を行うことで、航法データをより確実に共有化することができる。さらに、この際、図8のシステムフローに示すように、切り替えるセンサ(ソース)を、第一通信網100へのデータ入出力ゲートとなる装置が異なるように設定することで、さらに確実に切り替えを行うことができる。
【0059】
なお、前述の説明では、LAN機器13,14の機能について詳述していないが、前述のようなプロトコル変換のみを行うものであっても、センサを内蔵するものであっても良い。また、サーバ装置11やディスプレイユニット12も同様にセンサを内蔵する構造であっても良い。このように、本実施形態の舶用機器は、上位通信網と下位通信網とに接続する舶用機器にあっては、プロトコル変換のみを行うものであっても、他の機能をさらに有するものであっても良い。また、舶用機器は、例えば、ディスプレイとセンサのような複数の機能を有するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態の舶用機器ネットワークシステムの主要構成を示すブロック図である。
【図2】航法データ共有化処理の際のサーバ装置11の処理フローを示すフローチャートである。
【図3】航法データ共有化処理の際のディスプレイユニット12の処理フローを示すフローチャートである。
【図4】航法データ共有化処理の際のLAN機器13,14の処理フローを示すフローチャートである。
【図5】機種区分情報の取得フローを示すシステムフロー図である。
【図6】手動入力による航法データの共有化フローを示すシステムフロー図である。
【図7】自動による航法データの共有化フローを示すシステムフロー図である。
【図8】一度指定したソース(センサ)からの出力が検出できず、自動で切り替えた場合のシステムフロー図である。
【符号の説明】
【0061】
11−サーバ装置、12,21,31−ディスプレイユニット、13,14−LAN機器、22,24,32−センサ、23−センサ付制御ユニット、100−第一通信網、201−第二通信網、202−第三通信網、301,302−シリアルケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種の航法データを生成する複数のセンサを含む複数の舶用機器を電気通信網で接続してなる舶用機器ネットワークシステムであって、
一対多の通信を実現する第一通信網と、
該第一通信網で相互接続される複数の第一群舶用機器と、
該複数の第一群舶用機器をそれぞれの前記第一通信網へのデータ入出力ゲートとして、前記第一通信網と異なるプロトコルで接続された第二群舶用機器とを備え、
前記複数の第一群舶用機器の一台を少なくともサーバ機能を有する機器とし、
前記複数の第一群舶用機器のそれぞれは、自装置をデータ入出力ゲートとする第二群舶用機器の識別情報および出力可能な航法データの種類を取得するとともに、前記サーバ機能を有する機器は、前記複数の舶用機器それぞれの識別情報および出力可能な航法データの種類を取得し、
前記サーバ機能を有する機器は、前記同種の航法データを生成する複数のセンサの内の一台を選択して、選択した一台のセンサの航法データを共有する指示を前記第一通信網を介して実行し、
前記複数の第一群舶用機器のそれぞれは、自装置をデータ入出力ゲートとする第二群舶用機器に前記共有の指示を与える、舶用機器ネットワークシステム。
【請求項2】
前記複数の第一群舶用機器のそれぞれは、
該共有の指示がされたセンサと同種の航法データを前記第一通信網を介して送信していれば当該航法データの送信を停止し、
前記共有が指示されたセンサが自装置をデータ入出力ゲートとする第二群舶用機器であることを検出すると、前記共有が指示されたセンサからの航法データを前記第一通信網を介して送信する、
舶用機器ネットワークシステム。
【請求項3】
前記サーバ機能を有する機器を含む前記複数の舶用機器の少なくとも一台は、前記センサの選択の操作入力を受け付ける操作入力手段を備え、前記同種の航法データを生成する複数のセンサの内の一台を選択する操作入力を受け付けると、センサ選択情報を前記サーバ機能を有する機器に取得させ、
該サーバ機能を有する機器は、取得した前記センサ選択情報に基づいて前記共有の指示を実行する、
請求項1または請求項2に記載の舶用機器ネットワークシステム。
【請求項4】
前記サーバ機能を有する機器は、前記同種の航法データのそれぞれの精度を検出する航法データ精度検出手段を備え、
最も高精度な航法データを共有する指示を行う、
請求項1または請求項2に記載の舶用機器ネットワークシステム。
【請求項5】
前記サーバ機能を有する機器は、前記共有の指示を行ったセンサからの航法データをモニタし、所定時間長に亘り航法データを取得できなければ、前記共有の指示を行ったセンサと同種の航法データを生成する他のセンサを新たな共有の指示の対象に切り替える、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の舶用機器ネットワークシステム。
【請求項6】
前記サーバ機能を有する機器は、前記新たな共有の指示の対象となるセンサを、元の共有の指示の対象となるセンサの属する第二群舶用機器のグループとは別の第二群舶用機器のグループから選択する、請求項5に記載の舶用機器ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−58246(P2009−58246A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223624(P2007−223624)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】