説明

船舶用操縦装置

【課題】3機以上の推進機を配置する船舶において、例えば1機の推進機が故障した場合でも、残った複数の推進機を通常と同じような操作感覚で、違和感なく操船ができる。
【解決手段】3機以上の推進機を船舶に並置し、前記各推進機を、隣接する2つの操作レバー14L,14Rに関連付けて電気的に接続し、この2つの操作レバー14L,14Rによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行う船舶用操縦装置であり、各推進機に備えられるエンジンを起動するメインスイッチと、メインスイッチの操作状態を検出するメインスイッチ状態検出手段と、各推進機を制御する制御手段とを有し、制御手段は、いずれかの推進機のメインスイッチをオフにした場合は、操作レバー14L,14Rに関連付けられた推進機の接続を自動的に切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に船舶に3機以上の推進機を並置した船舶用操縦装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶の船尾に3機の船外機やスターンドライブ、あるいは船内外機などの推進機を並置したものがある。従来、このような船舶の場合、シフトレバー及びスロットルレバーは各船外機にそれぞれ対応して個別に設けられていた。しかしながら、ハンドル操作に加えて計6本のシフト及びスロットルレバーを操作するのは操作が煩雑となる。
【0003】
これに対し、近年、左右隣接した2本のレバーで3機の推進機のシフト及びスロットルを操作可能にした船舶用操縦装置が用いられている(特許文献1,2参照)。
【0004】
この特許文献1に記載の操縦装置は、2つの操作レバーの位置が、ともに中立領域内の所定位置の場合に両端2機の推進機の間に配置された推進機のシフトを前進又は後進で且つ予め決められた所定の開度とすることで、レバー2本の操作で操船者の意図する速度で微速航行を可能としている。
【0005】
また、特許文献2に記載の操縦装置は、検出した各レバー位置から左側の推進機と右側の推進機の間の中間の推進機の仮想レバー位置を算出し、レバー2本で違和感なくシフト切替及びスロットル操作ができるようにしている。
【特許文献1】特開2006-29183号公報
【特許文献2】特開2006-35884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、3機の推進機を並置したものでは、レバー2本の操作で操船者の意図する速度で微速航行を可能としたり、違和感なくシフト切替及びスロットル操作ができるようにしたものがあるが、何らかの原因で1機の推進機がエンジンストップすると、ユーザは2本のレバーが中立位置でないと始動しないために、一旦2本のレバーを中立位置に戻し、再度スタートスイッチをオンする。しかし、エンジンが故障した場合には、再始動しないため、しかたなくユーザは故障した推進機のエンジンのメインスイッチをオフし、チルトアップして残りの2機の推進機で操船して帰港することになるが、3機の推進機の内どの推進機のエンジンが故障するかわからず、いずれの推進機のエンジンが故障しても残った2機の推進機のエンジンも同様にシフト切替及びスロットル操作ができれば着岸等が容易になる。
【0007】
この発明は、このような現状を考慮したものであって、3機以上の推進機を配置する船舶において、例えば1機の推進機が故障した場合でも、残った複数の推進機を通常と同じような操作感覚で、違和感なく操船ができる船舶用操縦装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成されている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、3機以上の推進機を船舶に並置し、前記各推進機を、隣接する2つの操作レバーに関連付けて電気的に接続し、この2つの操作レバーによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行う船舶用操縦装置であり、
前記各推進機に備えられるエンジンを起動するメインスイッチと、
前記メインスイッチの操作状態を検出するメインスイッチ状態検出手段と、
前記各推進機を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記いずれかの推進機のメインスイッチをオフにした場合は、前記操作レバーに関連付けられた推進機の接続を自動的に切替えることを特徴とする船舶用操縦装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記制御手段は、
一方側の推進機のみメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は一方の操作レバーのみに追従させ、
他方側の推進機のみメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は他方の操作レバーのみに追従させ、
前記一方側の推進機と前記他方側の推進機の両方のメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は前記一方または他方の操作レバーのみに追従させる操作切替の制御をすることを特徴とする請求項1に記載の船舶用操縦装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記2つの操作レバーによる操作切替の制御では、前記2つの操作レバーが中立位置のときに切り替わることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶用操縦装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記2つの操作レバーによる操作を切り替えるレバー切替スイッチと、
前記レバー切替スイッチの操作状態を検出するレバー切替スイッチ操作状態検出手段と、
前記レバー切替スイッチの操作状態の検出に基づき前記船舶用操縦装置の設定を変更する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記各推進機のメインスイッチがオン状態のとき、
前記レバー切替スイッチの操作状態を検出して前記レバー切替スイッチが操作される毎に、
3機以上の推進機は2つの操作レバーによる操作可能な第1の状態から、
一方側と他方側の推進機のみ操作可能、中央側の推進機は常に中立位置の第2の状態、
中央側の推進機のみ、2つのいずれかの操作レバーによる操作可能で、一方側または他方側の推進機は常に中立位置の第3の状態に、
順次、前記2つの操作レバーのレバー状態を切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶用操縦装置である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記2つの操作レバーによる操作を切り替えるレバー切替スイッチと、
前記レバー切替スイッチの操作状態を検出するレバー切替スイッチ操作状態検出手段と、
前記レバー切替スイッチの操作状態の検出に基づき前記各推進機のエンジンを制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記各推進機のメインスイッチがオン状態のとき、
前記レバー切替スイッチの操作状態を検出して前記レバー切替スイッチが操作される毎に、
3機以上の推進機は2つの操作レバーによる操作可能から、
前記一方側の推進機と前記他方側の推進機は、一方の操作レバーによる操作可能、前記中央側の推進機は、他方の操作レバーによる操作可能に、
順次、前記2つの操作レバーのレバー状態を切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶用操縦装置である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記レバー切替スイッチは、
すべてのメインスイッチがオン、且つ2つの操作レバーが中立位置の時のみ操作可能であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の船舶用操縦装置である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記2つの操作レバーを有するメインステーションと、
前記2つの操作レバーを有するサブステーションとを有し、
前記メインステーションと前記サブステーションは切替可能であり、
操作切替先の前記メインステーションまたは前記サブステーションの前記2つの操作レバーの操作は、操作切替元の前記サブステーションまたは前記メインステーションの前記2つの操作レバーの操作と同じとするリモコンコントローラを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶用操縦装置である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記メインステーションに備えられる前記リモコンコントローラにより前記2つの操作レバーの操作の操作切替処理を一括して行うことを特徴とする請求項7に記載の船舶用操縦装置である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記リモコンコントローラは、
前記2つの操作レバーによる操作切替の判定を行っているときも、現在のレバー状態を常に他のリモコンコントローラに送信することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の船舶用操縦装置である。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記制御手段は、
前記2つの操作レバーを同じ前進方向または後進方向に操作した時にのみ、中央側の推進機はその方向に操作可能に制御することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の船舶用操縦装置である。
【0019】
請求項11に記載の発明は、前記制御手段は、
前記2つの操作レバーが同じ前進方向または後進方向に操作されている状態では、中央側の推進機は前記2つの操作レバーの中間位置を目標として、スロットルを開くように制御することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の船舶用操縦装置である。
【0020】
請求項12に記載の発明は、前記制御手段は、
前記2つの操作レバーの内、一方側の操作レバーが全開で、他方側の操作レバーが中立位置であり、この中立位置の操作レバーを全閉位置まで操作した場合、中央側の推進機は徐々にスロットルを開き、中間のエンジン回転数まで上昇するように制御することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の船舶用操縦装置である。
【0021】
請求項13に記載の発明は、前記制御手段は、
前記2つの操作レバーが同じ方向に操作され、且つ前記2つの操作レバーが全閉位置まで操作されない場合は、中央側の推進機は中立位置に近い方の操作レバーの位置を目標位置にするように制御することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の船舶用操縦装置である。
【発明の効果】
【0022】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0023】
請求項1に記載の発明では、いずれかの推進機のメインスイッチをオフにした場合は、操作レバーに関連付けられた推進機の接続を自動的に切替えることで、例えば3機のうちいずれか1機の推進機のエンジンが故障してメインスイッチをオフした場合に、残った2機の推進機のエンジンを通常の2機掛けと同じように操作ができ、また2機の推進機のエンジンが故障した場合は、通常の1機掛けと同じ感覚で操船でき着岸等が容易になる。
【0024】
請求項2に記載の発明では、一方側の推進機のみメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は一方の操作レバーのみに追従させ、他方側の推進機のみメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は他方の操作レバーのみに追従させることで、例えば3機のうち1機の推進機のエンジンが故障してメインスイッチをオフした場合に、残った2機の推進機のエンジンを通常の2機掛けと同じように操作ができ、また一方側の推進機と他方側の推進機の両方のメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は一方または他方の操作レバーのみに追従させることで、両側の2機の推進機のエンジンが故障した場合は、通常の1機掛けと同じ感覚で操船でき着岸等が容易になる。
【0025】
請求項3に記載の発明では、2つの操作レバーによる操作切替は、2つの操作レバーが中立位置のときに切り替わることで、航走中にメインスイッチを切った場合でも、急に加減速してしまうような状況を防止できる。
【0026】
請求項4に記載の発明では、各推進機のメインスイッチがオン状態のとき、レバー切替スイッチが操作される毎に、順次、各推進機と2つの操作レバーとの関連付けの設定を切り替えることができ、簡単なスイッチ操作により例えば左右機のシフトを入れて微速で前進することができ、また1機の推進機のみシフトを入れて超微速で前進することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明では、各推進機のメインスイッチがオン状態のとき、レバー切替スイッチが操作される毎に、順次、各推進機と2つの操作レバーとの関連付けの設定を切り替えることができ、簡単なスイッチ操作により例えば左右の推進機を前進にし、中央側の推進機を後進にするなどしてエンジン回転数を調整することによりトロールから停止の超低速域を連続的に制御できる。
【0028】
請求項6に記載の発明では、レバー切替スイッチは、すべてのメインスイッチがオン、且つ2つの操作レバーが中立位置の時のみ操作可能であり、レバー切替操作によって船舶が急加減速することがなく、また一方側の推進機と他方側の推進機のメインスイッチ操作によるレバー切替機能と区別して利用できる。
【0029】
請求項7に記載の発明では、操作切り替え先のメインステーションまたはサブステーションの2つの操作レバーの操作は、操作切り替え元のサブステーションまたはメインステーションの2つの操作レバーの操作と同じとすることで、ステーション切替でも、それまでと同じレバー操作で操船できる。
【0030】
請求項8に記載の発明では、メインステーションに備えられるリモコンコントローラにより2つの操作レバーの操作切替処理を一括して行うことで、サブステーションのリモコンコントローラは、2つの操作レバーの位置をメインステーションのリモコンコントローラに送信するだけになるので、システム全体としての処理が単純になる。
【0031】
請求項9に記載の発明では、2つの操作レバーによる操作切替の判定を行っているリモコンコントローラも、現在のレバー状態を常に他のリモコンコントローラに送信することで、瞬断、マイコンリセット、あるいはメインスイッチのオン、オフ操作した場合でも、他の推進機のリモコンコントローラから操作レバー情報を受け取ることによって、瞬断、マイコンリセット、メインスイッチのオン、オフ操作前の操作レバー状態を継続できる。
【0032】
請求項10に記載の発明では、2つの操作レバーを同じ前進方向または後進方向に操作した時にのみ、中央側の推進機はその方向に操作可能に制御することで、通常の前進、後進時には、すべての推進機のエンジンの出力を同じ方向の推進力として使用することができる。また、旋回時には2機掛けと同じ様に2つの操作レバーを逆に倒すことで、推進機のエンジンの出力を逆方向の推進力として旋回できる。
【0033】
請求項11に記載の発明では、2つの操作レバーが同じ前進方向または後進方向に操作されている状態では、中央側の推進機は2つの操作レバーの位置の中間位置を目標として、スロットルを開くように制御することで、航走しながら旋回する場合には、2機掛けと同じように2つの操作レバーをずらすことで旋回することができる。
【0034】
請求項12に記載の発明では、2つの操作レバーのうち、一方の操作レバーが全開で他方の操作レバーが中立位置であり、この中立位置の操作レバーを全閉位置まで操作した場合、中央側の推進機は徐々にスロットルを開き、中間のエンジン回転数まで上昇するように制御することで、中央側の推進機のエンジンは急にエンジン回転数が上昇することがない。
【0035】
請求項13に記載の発明では、2つの操作レバーが同じ方向に操作され、且つ2つの操作レバーが全閉位置まで操作されない場合は、中央側の推進機は中立位置に近い方の操作レバーの位置を目標位置にするように制御することで、中央側の推進機のシフトは中立位置であり、エンジンは急にエンジン回転数が上昇することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、この発明の船舶用操縦装置の実施の形態について説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0037】
[実施の形態1]
図1はこの発明に係る操縦装置を備えた船舶の上面概略図である。この実施例の船舶は船体に3機の推進機を搭載しているが、3機以上の推進機を搭載するものでもよい。
【0038】
図示したように、船舶1は、船体2と、船体2の船尾板3にクランプブラケット4を介して取り付けられる3機の推進機5L,5M,5Rから構成される。この実施の形態では、推進機として船外機を用いているが、スターンドライブ、あるいは船内外機などでもよい。なお、説明上、図1に矢印で示す船舶前進方向に対し左側に位置する推進機を一方側の推進機5Lと呼び、右側に位置する推進機を他方側の推進機5R、中間に位置する推進機を中央側の推進機5Mと呼ぶ。例えば、4機の推進機では、左右の両側の1機を左側に位置する推進機を一方側の推進機5Lと呼び、右側に位置する推進機を他方側の推進機5R、中間に位置する2機の推進機を中央側の推進機5Mと呼び、さらに5機の推進機でも同様である。
【0039】
各推進機5L,5M,5Rにはエンジン6が備わる。このエンジン6の吸気量を調整してエンジン6の回転数やトルクを制御するため、エンジン6の吸気系にはスロットルボディ7(または気化器)が備わる。このスロットルボディ7は電動スロットルバルブ8aを備える。スロットルバルブ8aの弁軸8bはモータ9に連結される。スロットルバルブ8aは、電子制御によりモータ9を駆動して開閉可能である。船体2の運転席10の前方には船舶1の舵取りのための手動操作ハンドル11が備わる。このハンドル11はハンドル軸12を介して船体2に取り付けられている。
【0040】
運転席10の側方には、各推進機5L,5M,5Rの作動を制御するためのリモコンコントローラ13が備わる。リモコンコントローラ13は、船舶前進方向に対し左側に位置する左リモコン操作レバー14Lと、右側に位置する右リモコン操作レバー14Rを備え、さらに各リモコン操作レバー14L、14Rのレバー位置を検出するためのポテンショメータ15L、15Rを備える。各推進機5L,5M,5Rは、隣接する2つのリモコン操作レバー14L、14Rに関連付けて電気的に接続され、このリモコン操作レバー14L、14Rによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行う。
【0041】
すなわち、操船者は、リモコン操作レバー14L、14Rによってリモコンコントローラ13を操作して各推進機5L,5M,5Rのシフト切替及びエンジン6のスロットルバルブ8aの開度を調整し、船舶1の航走速度や加減速等の推力制御を行う。左リモコン操作レバー14Lは、左側の推進機5Lのシフト切替及びスロットルバルブ8aの開度調整(推力操作)のために設けられ、右リモコン操作レバー14Rは、右側の推進機5Rのシフト切替及びスロットルバルブ8aの開度調整(推力操作)のために設けられる。2つのリモコン操作レバー14L、14Rは中央位置のときシフトは中立(N)になり、それより前側に倒すと前進(F)シフト、後側に倒すと後進(R)シフトに切替わる。前進(F)シフトでさらにリモコン操作レバー14L、14Rを前に倒すと、スロットルバルブ8aがF全閉からF全開まで徐々に開く。後進(R)シフトでさらにリモコン操作レバー14L、14Rを後側に倒すと、スロットルバルブ8aがR全閉からR全開まで徐々に開く。これにより、操船者は、前・後進時それぞれスロットルバルブ8aを開閉操作して推力操作ができる。
【0042】
リモコンコントローラ13は信号ケーブル16を介して制御部17に接続される。制御部17は、ポテンショメータ15L、15Rから出力される各リモコン操作レバー14L、14Rのレバー位置情報を受信し、所定の演算をして3機の各推進機5L,5M,5Rに駆動信号を出力する。各推進機5L,5M,5Rと制御部17は、信号ケーブル18を介して接続される。各推進機5L,5M,5Rにおいて、前・後進及びシフト切替はエンジン6に付帯して設けられる電動シフト機構19により行われる。
【0043】
また、運転席10の側方には、リモコンコントローラ13の近傍において左側にメインスイッチSWLが、中央側にメインスイッチSWMが、右側にメインスイッチSWRが備えられている。それぞれのメインスイッチSWL,SWM,SWRは、各推進機5L,5M,5Rに対応しており、このメインスイッチSWL,SWM,SWRを操作することによって各推進機5L,5M,5Rに備えられるエンジン6を起動する。なお、船体2にはこの他、手動操作ハンドル11の操作角度によって、推進機のスイベル軸(不図示)廻りに推進機を回転させる操舵駆動装置(不図示)が設けられる。
【0044】
図2は、リモコンコントローラ13、メインスイッチSWL,SWM,SWR、制御部17及び各推進機5L,5M,5Rからなる操縦装置のブロック構成図である。
【0045】
図2において、左右のリモコン操作レバー14L,14RはNで中立、前に倒すとF全閉で前進(F)にシフトインしてスロットル全閉(最小開度)となり、さらに倒すとF全開でスロットル最大開度となる。後進(R)の場合も同様である。したがって、F全閉からR全閉の間の区間はシフトが中立である。リモコンコントローラ13の左リモコン操作レバー14Lのレバー位置は、対応して設けられるポテンショメータ15Lによって検知され、その位置情報は制御部17に備えられる制御手段17cの演算部17Lに入力される。同様に、右リモコン操作レバー14Rのレバー位置も、ポテンショメータ15Rによって検知され、その位置情報は制御手段17cの演算部17Rに入力される。この演算部17L及び演算部17Rの情報は、演算部17Mに送られる。
【0046】
演算部17Lは入力された左リモコン操作レバー14Lの位置情報に基づき、左側の推進機5Lの電子スロットル(即ち、モータ9)と電動シフト機構19に対して駆動信号を演算して出力する。また、演算部17Rは入力された右リモコン操作レバー14Rの位置情報に基づき、右側の推進機5Rの電子スロットル(即ち、モータ9)と電動シフト機構19に対して駆動信号を演算して出力する。
【0047】
さらに、演算部17Mは、左リモコン操作レバー14Lの位置情報と右リモコン操作レバー14Rの位置情報に基づき、後述する各種の規則に応じて中央側の推進機5Mのエンジン6のシフト及びスロットルの目標位置を算出し、中央側の推進機5Mの電子スロットル(即ち、モータ9)と電動シフト機構19に目標位置にする駆動信号を出力する。なお、各推進機5L,5M,5Rのエンジン6には、制御部17からの出力信号を、電子スロットル9と電動シフト機構19の駆動信号に変換する演算部6L,6M,6Rがそれぞれ設けられている。なお、各演算部6L,6M,6Rで各推進機5L,5M,5Rのシフト位置及び推力を算出しても良い。この場合は、リモコン側の制御部17はリモコン操作レバーの位置情報のみを各推進機5L,5M,5Rの演算部6L,6M,6Rに送る。
【0048】
また、制御部17は、メインスイッチSWL,SWM,SWRのオン、オフ状態を検出するメインスイッチ状態検出手段17bを有する。制御部17の制御手段17cは、オン、オフ状態の検出に基づき各推進機5L,5M,5Rのエンジン6を制御し、メインスイッチSWL,SWM,SWRの操作によってオンするとエンジン6に電源を供給し、さらに始動位置にするとエンジン6を起動し、また後で説明する操作レバーに関連付けられた推進機の接続を自動的に切替えるレバー切替制御を行う。
【0049】
以下、中央側の推進機5Mのエンジン制御の目標位置を設定する例について、図3乃至図8に基づいて説明する。図3はリモコンコントローラ13を示し、図4はリモコンコントローラ13とエンジン6とのデータフローを示す。なお、図3において二点鎖線で示された操作レバーは、中央側の推進機5Mの運転制御するものとして、左右のリモコン操作レバー14L、14Rの位置から想定される仮想のリモコン操作レバー14Mである。
【0050】
図4に示すように、リモコンコントローラ13では、左右のリモコン操作レバー14L、14Rの各レバー位置を読み込み、ポテンショメータ15L、15Rは各レバー位置に対応した電圧に変換して出力する。データ変換器16L,16Rは、各電圧に対応したデータに変換して出力し、各データを制御手段17cのレバー切替処理部30に入力する。レバー切替処理部30では、メインスイッチ状態検出手段17bがメインスイッチSWL,SWM,SWRのオン状態を検出し、制御手段17cがメインスイッチSWL,SWM,SWRがオン状態であることから各推進機5L,5M,5Rのエンジン6に電源を供給し、さらに始動位置することで各推進機5L,5M,5Rのエンジン6を起動する共に、左右のリモコン操作レバー14L、14Rの各レバー位置に対応した各データを演算部17L,17Rに出力し、演算部17L,17Rから演算部17Mに入力される。
【0051】
この演算部17L, 17M ,17Rにおいては、シフト目標値演算部31でデータに対応した推進機5L,5M,5Rのエンジン制御の目標シフト位置を演算し、目標シフト位置信号を出力する。スロットル目標値演算部32においては、データに対応した推進機5L,5M,5Rのエンジン制御のスロットルリクエスト値を演算し、目標スロットル位置信号を出力する。
【0052】
エンジン6では、演算部6L,6M,6Lにおいて目標シフト位置判定部40で、シフトアクチュエータの電動シフト機構19からフィードバックされるフィードバック信号に基づく現在シフト位置情報と、シフト目標値演算部31からの目標シフト位置情報とを比較し、目標シフト位置になるように目標シフト位置信号をシフトモータ駆動制御部41へ出力する。シフトモータ駆動制御部41では、さらにシフトアクチュエータの電動シフト機構19からフィードバックされるフィードバック信号に基づく判定後の現在シフト位置情報と、目標シフト位置情報とを比較し、さらに目標シフト位置になるように駆動電流を出力してシフトアクチュエータの電動シフト機構19を駆動し、シフトする。
【0053】
また、エンジン6では、演算部6L,6M,6Lにおいてスロットル制御部42で、スロットルアクチュエータの電子スロットル(即ち、モータ9)からフィードバックされるフィードバック信号に基づく現在スロットル開度情報と、スロットル目標値演算部32からの目標スロットル開度情報とを比較し、目標スロットル開度になるように目標スロットル開度信号を出力する。これにより、目標スロットル開度になるように駆動電流を出力してスロットルアクチュエータの電子スロットル(即ち、モータ9)を駆動し、所定のエンジン回転数にする。
【0054】
図5は制御部17によって実行される処理を説明するフローチャートであり、実行のためのプログラムは制御部17のメモリ(不図示)に格納され、例えば所定時間毎に実行されるルーチンである。
ステップS1:メインスイッチSWL,SWM,SWRの操作でエンジン6が駆動されている。
ステップS2:右リモコン操作レバー14Rの位置を読み込む。
ステップS3:左リモコン操作レバー14Lの位置を読み込む。
ステップS4:右リモコン操作レバー14Rの位置と左リモコン操作レバー14Lの位置が前進方向、または後進方向の同じ方向であるか否かの判断を行い、同じ方向である場合はステップS5に進み、方向が異なる場合にはステップS1に進む。
ステップS5:左右リモコン操作レバー14L、14Rと同じ前進方向、または後進方向にシフト操作し、ステップS6に進む。
ステップS6:左右リモコン操作レバー14L、14R間の中間位置を演算し(中央リモコン操作レバー14Mの想定)、ステップS7に進む。
ステップS7:右リモコン操作レバー14R及び左リモコン操作レバー14Lの位置の中間位置に中央リモコン操作レバー14Mが位置することになり、中央側の推進機5Mのエンジン回転数は中央の仮想リモコンレバー14Mの位置に対応して駆動され、左側の推進機5Lと右側の推進機5Rのエンジン回転数の中間のエンジン回転数となる。
【0055】
この実施の形態では、メインスイッチSWL,SWM,SWRが操作されて各推進機5L,5M,5Rのエンジン6が駆動している状態であり、制御手段17cにおいて、すなわちレバー切替処理部30では、各推進機5L,5M,5Rに対するレバー切替制御が行われていない場合には、図6(a)に示すように、2つのリモコン操作レバー14L,14Rを同じ前進方向、または図6(b)に示すように、後進方向に操作した時にのみ、中央側の推進機5Mのエンジン6の演算部6Mに対しては、同じ前進方向または後進方向にシフト切替及びスロットル操作可能に駆動信号を出力する。すなわち、図4において、シフト目標値演算部31では、データ変換部16L、16Rからの2つのリモコン操作レバーの位置データに対応したエンジン制御の目標シフト位置を演算し、目標シフト位置信号を出力し、スロットル目標値演算部32においては、2つのリモコン操作レバーの位置データに対応したエンジン制御のスロットルリクエスト値を演算し、目標スロットル位置信号を出力する。
【0056】
このようにして、各推進機5L,5M,5Rのエンジン6の演算部6L,6M,6Lに対しては、同じ前進方向または後進方向にシフト切替及びスロットル操作可能にし、中央側の推進機5Mのシフトアクチュエータの電動シフト機構19を駆動してシフトし、またスロットルアクチュエータの電子スロットル(即ち、モータ9)を駆動し、中央側の推進機5Mのエンジン回転数は中央の仮想リモコンレバー14Mの位置に対応し、左側の推進機5Lと右側の推進機5Rのエンジン回転数の中間のエンジン回転数となる。このように通常の前進、後進時には、すべての推進機5L,5M,5Rのエンジン6の出力を同じ方向の推進力として使用することができる。
【0057】
また、2つのリモコン操作レバー14L,14Rが、図7(a)に示すように、同じ前進方向に操作されている場合、または図7(b)に示すように、後進方向に操作されている状態では、中央側の推進機5Mのエンジン6に対しては、制御手段17cにおいて、すなわちレバー切替処理部30では各船外機5L,5M,5Rに対するレバー切替が行われていない場合には、2つのリモコン操作レバー14L,14Rのレバー位置の中間位置を演算し、あたかもこの中間位置に中央リモコン操作レバー14Mがあると仮定して、中央側の推進機5Mのエンジン6の演算部6aに、演算されたレバー中間位置に対応する信号を出力する。航走しながら旋回する場合には、2機掛けと同じように2つのリモコン操作レバー14L,14Rをずらすことで、中央側の推進機5Mは2つのリモコン操作レバー14L,14Rの操作の中間位置を目標として、スロットルを開くように制御するから自然な旋回ができる。
【0058】
また、2つのリモコン操作レバー14L,14Rのうち、図8(a)、(b)に示すように、一方側のリモコン操作レバー、例えばリモコン操作レバー14Rが全開で他方側のリモコン操作レバー、例えばリモコン操作レバー14Lが中立位置であり、この中立位置のリモコン操作レバー14Lを全閉位置まで倒すような操作した場合、中央側の推進機5Mのエンジン6に対しては、演算部17Mにおいて、すなわちレバー切替処理部30では、中央側の推進機5Mのエンジン6の演算部6Mには徐々にスロットルを開くような駆動信号を出力し、スロットルアクチュエータの電子スロットル(即ち、モータ9)を駆動し、エンジン回転数を徐々に上げるようにする。このように、中央側の推進機5Mは徐々にスロットルを開き、エンジン回転数を徐々に上昇するように制御することで、例えばリモコン操作レバー14Lを中立位置から全閉位置まで倒すような操作した場合でも、中央側の推進機5Mのエンジン6は、エンジン回転数が急に上昇することがない。
【0059】
また、2つのリモコン操作レバー14L,14Rが、図9(a)、(b)に示すように、前進、または後進の同じ方向に操作されているが、全閉位置まで操作されないで、中立位置と全閉位置の中間に位置する場合は、中央側の推進機5Mのエンジン6に対しては、演算部17Mでは、中央側の推進機5Mのエンジン6の演算部6Mに、2つのリモコン操作レバー14L,14Rのうち、中立位置に近い方のリモコン操作レバーの位置を目標位置にするようにシフト目標値演算部31で演算して目標シフト位置信号を出力する。エンジン6の演算部6Mでは、目標シフト位置判定部40で、シフトアクチュエータの電動シフト機構19からフィードバックされるフィードバック信号に基づく現在シフト位置情報と、シフト目標値演算部31からの目標シフト位置情報とを比較し、目標シフト位置になるように目標シフト位置信号をシフトモータ駆動制御部41へ出力し、シフトモータ駆動制御部41からの駆動電流で制御する。このように、2つのリモコン操作レバー14L,14Rが中立位置と全閉位置の中間に位置する場合は、中央側の推進機5Mのエンジン6では、シフトが中立位置に位置し、全閉位置になることがない。
【0060】
この実施の形態は、図10に示すように、各推進機5L,5M,5Rのエンジン6に対応してアクテイブランプP,C,Sが設けられ、各推進機5L,5M,5Rのエンジン6が駆動しているときには対応してアクテイブランプP,C,Sが点灯し、各推進機5L,5M,5Rのエンジン6が駆動していないときには対応してアクテイブランプP,C,Sが消灯する。
【0061】
図10(a)に示すように、メインスイッチSWL,SWM,SWRがオンしている場合には、図2及び図4に示すように、メインスイッチ状態検出手段17bがオン状態を検出する。制御手段17cは、メインスイッチSWL,SWM,SWRがオン状態であるときは、このオン状態の検出に基づき各推進機5L,5M,5Rのエンジン6の制御の切り替えは行わないで、図1乃至図9に示した各推進機5L,5M,5Rのエンジン6の制御を行う。
【0062】
制御手段17cは、メインスイッチ状態検出手段17bのメインスイッチSWL,SWM,SWRのオン状態の検出に基づき、図10(b),(c),(d)に示すように、操作レバーに関連付けられた推進機の接続を自動的に切替える。
【0063】
例えば、制御手段17cは、メインスイッチ状態検出手段17bが、図10(b)に示すように、一方側の推進機5LのみメインスイッチSWLをオフした場合は、このオフ状態を検出すると、この検出に基づき、中央側の推進機5Mは一方のリモコン操作レバー14Lのみに追従させる制御をする。
【0064】
また、例えば、制御手段17cは、メインスイッチ状態検出手段17bが、図10(c)に示すように、他方側の推進機5RのみメインスイッチSWRをオフした場合は、このオフ状態を検出すると、この検出に基づき、中央側の推進機5Mは他方のリモコン操作レバー14Rのみに追従させる制御をする。
【0065】
この図10(b), (c)に示すリモコン操作レバー14L,14Rによる制御は、図1及び図2に示すように行われる。
【0066】
また、例えば、制御手段17cは、メインスイッチ状態検出手段17bが、図10(d)に示すように、一方側の推進機5LのメインスイッチSWLと、他方側の推進機5RのメインスイッチSWRをオフした場合は、この両方のオフ状態を検出すると、この検出に基づき、中央側の推進機5Mは一方または他方のリモコン操作レバーのみに追従させる制御をする。この実施の形態では、中央側の推進機5Mは一方のリモコン操作レバー14Lのみに追従させる制御をする。
【0067】
このような2つのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作切替は、2つのリモコン操作レバー14L,14Rが中立位置のときに切り替わる。
【0068】
このように、一方側の推進機5LのみメインスイッチSWLをオフにした場合は、中央側の推進機5Mは一方のリモコン操作レバー14Lのみに追従させ、他方側の推進機5RのみメインスイッチSWRをオフにした場合は、中央側の推進機5Mは他方のリモコン操作レバー14Rのみに追従させることで、例えば3機のうち1機の推進機のエンジン6が故障してメインスイッチをオフした場合に、残った2機の推進機のエンジン6を通常の2機掛けと同じように操作ができる。
【0069】
また、例えば両側の2機の推進機のエンジン6が故障し、一方側の推進機5Lと他方側の推進機5Rの両方のメインスイッチSWL, SWRをオフにした場合は、中央側の推進機5Mは一方または他方のリモコン操作レバーのみに追従させることで、通常の1機掛けと同じ感覚で操船でき着岸等が容易になる。
【0070】
また、このような2つのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作切替は、急に加減速してしまうことがないように、デフォルト状態で、かつ2つのリモコン操作レバー14L,14Rが中立位置のときに切り替わるようにしている。
【0071】
以下、この実施の形態の2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を説明する。
【0072】
図11は、メインスイッチSWL,SWM,SWRのオン状態における2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を示す。図11(a)では、図10(a)に示すように、左側の1機のメインスイッチSWLをオフした場合、2つのリモコン操作レバー14L、14Rを前進方向の全開側に位置し、2機の駆動で最大の推力を得て前進する。図11(b)では、中央側の1機のメインスイッチSWMをオフした場合、2つのリモコン操作レバー14L、14Rを前進方向の全開側に位置し、2機の駆動で最大の推力を得て前進する。図11(c)では、図10(c)に示すように、右側の1機のメインスイッチSWRをオフした場合、2つのリモコン操作レバー14L、14Rを前進方向の全開側に位置し、2機の駆動で最大の推力を得て前進する。図11(d)では、中央側と右側の2機のメインスイッチSWM,SWRをオフした場合、リモコン操作レバー14Lを前進方向の全開側に位置し、1機の駆動で最大の推力を得て前進する。図11(e)では、左側と右側の2機のメインスイッチSWL,SWRをオフした場合、リモコン操作レバー14Lを前進方向の全開側に位置し、1機の駆動で最大の推力を得て前進する。図11(f)では、左側と中央側の2機のメインスイッチSWL,SWMをオフした場合、リモコン操作レバー14Rを前進方向の全開側に位置し、1機の駆動で最大の推力を得て前進する。
[実施の形態2]
図12はこの発明に係る操縦装置を備えた船舶の上面概略図、図13はリモコンコントローラ13、メインスイッチSWL,SWM,SWR、レバー切替スイッチSWU、制御部17及び各推進機5L,5M,5Rからなる操縦装置のブロック構成図、図14はリモコンコントローラ13とエンジン6とのデータフローを示す図である。なお、実施の形態1と同様な構成は同じ符号を付してその説明を省略する。この実施の形態においては、2つの操作レバーによる操作を切り替えるレバー切替スイッチSWUを、メインスイッチSWL,SWM,SWRの近傍に備え、メインスイッチSWL,SWM,SWRがオン状態ではレバー切替スイッチSWUが操作されると、図1乃至図11において説明したメインスイッチSWL,SWM,SWRの操作による切り替え制御は行わないで、レバー切替スイッチSWUによる切替操作が優先される。一方、メインスイッチSWL,SWM,SWRのいずれか1個、または2個のメインスイッチがオフされると、図1乃至図11において説明したメインスイッチSWL,SWM,SWRの操作による切り替え制御が、レバー切替スイッチSWUによる切替操作に優先される。
【0073】
この実施の形態は、図12乃至図15に示すように、リモコンコントローラ13は、レバー切替スイッチSWUの操作状態を検出するレバー切替スイッチ操作状態検出手段17dと、レバー切替スイッチSWUの操作状態の検出に基づき船舶用操縦装置の設定を変更する制御手段17cとを有する。
【0074】
制御手段17cは、レバー切替スイッチSWUの操作状態を検出してレバー切替スイッチSWUが操作される毎に、各推進機5L,5M,5Rは2つのリモコン操作レバー14L、14Rによる操作を順次、切り替える。
【0075】
例えば、図15(a)に示すように、レバー切替スイッチSWUが押されていない状態では、図12及び図13に示すように、レバー切替スイッチ操作状態検出手段17dがレバー切替スイッチSWUが押されていない状態を検出する。制御手段17cは、レバー切替スイッチSWUが押されていない状態であるときは、この状態の検出に基づき各推進機5L,5M,5Rのエンジン6の制御の切り替えは行わないで、図1乃至図11に示した各推進機5L,5M,5Rの制御を行う。
【0076】
例えば、図15(b)に示すように、レバー切替スイッチSWUが押されると、図12及び図13に示すように、レバー切替スイッチ操作状態検出手段17dはレバー切替スイッチSWUが押されたことを検出する。制御手段17cは、レバー切替スイッチSWUが押されたことから、一方側と他方側の推進機のみ操作可能である。すなわち、制御手段17cは、図15(a)に示す2つのリモコン操作レバー14L、14Rによる操作可能な制御から、図15(b)に示す一方側と他方側の推進機5L,5Rのみ操作可能で、中央側の推進機5Mは常に中立位置とする制御に切り替える。
【0077】
また、例えば、図15(c)に示すように、再度レバー切替スイッチSWUが押されると、図12及び図13に示すように、レバー切替スイッチ操作状態検出手段17dはレバー切替スイッチSWUが押されたことを検出する。制御手段17cは、レバー切替スイッチSWUが再度押されたことから、一方側または他方側の推進機5L,5Rは常に中立位置に、中央側の推進機5Mは一方側または他方側の推進機のリモコン操作レバー14L、14Rによる操作可能とする制御に切り替える。
【0078】
このように、レバー切替スイッチSWUが操作される毎に、順次、3機の推進機5L,5M,5Rは2つのリモコン操作レバー14L、14Rによる操作可能な制御から、一方側と他方側の推進機5L,5Rのみ操作可能、中央側の推進機5Mは常に中立位置にする制御に切り替えて、左右機のシフトを入れて微速で前進することができる。また、中央側の推進機5Mのみ、2つのいずれかのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作可能で、一方側または他方側の推進機5L,5Rは常に中立位置にする制御に切り替えて、中央側の推進機5Mのみシフトを入れて超微速で前進することが簡単なスイッチ操作で実現できる。
【0079】
以下、この実施の形態の2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を説明する。
【0080】
図16は、図15(a)に示すようにデフォルト状態における2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を示す。図16(a)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが前進方向の全開側に位置し、3機の駆動で最大の推力を得て前進している。図16(b)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが前進方向の全閉側に位置し、3機の駆動で図15(a)より小さい推力を得て前進している。図16(c)ではリモコン操作レバー14Rだけが前進方向の全閉側に位置し、1機の駆動で図16(b)より小さい推力を得て前進している。図16(d)ではリモコン操作レバー14Lだけが前進方向の全閉側に位置し、1機の駆動で図16(c)より小さい推力を得て前進している。図16(e)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが後進方向の全開側に位置し、3機の駆動で最大の推力を得て後進している。図16(f)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが後進方向の全閉側に位置し、3機の駆動で図16(e)より小さい推力を得て後進している。このように、2つのリモコン操作レバー14L,14Rの操作で、種々の段階の推力を得ることができる。
【0081】
図17は、図15(a)に示すようにデフォルト状態における2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を示す。図17(a)ではリモコン操作レバー14Lが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが中立に位置し、左側の1機の駆動で最大の推力を得て前進して右方向に旋回している。図17(b)ではリモコン操作レバー14Rが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Lが中立に位置し、右側の1機の駆動で最大の推力を得て前進して左方向に旋回している。図17(c)ではリモコン操作レバー14Lだけが後進方向の全開側に位置し、左側の1機の駆動で推力を得て後進して左方向に旋回している。図17(d)ではリモコン操作レバー14Rだけが後進方向の全開側に位置し、1機の駆動で推力を得て後進して右方向に旋回している。図17(e)ではリモコン操作レバー14Lが後進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが前進方向の全開側に位置することで、左側と右側の2機の駆動で最大の推力を得て左方向に旋回している。図17(f)ではリモコン操作レバー14Lが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが後進方向の全開側に位置することで、左側と右側の2機の駆動で最大の推力を得て右方向に旋回している。
【0082】
図18は、図15(b)に示すように2機駆動状態における2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を示す。図18(a)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが前進方向の全開側に位置し、左右の2機の駆動で最大の推力を得て前進している。図18(b)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが前進方向の全閉側に位置し、左右の2機の駆動で図18(a)より小さい推力を得て前進している。図18(c)ではリモコン操作レバー14Rだけが前進方向の全閉側に位置し、右側の1機の駆動で図18(b)より小さい推力を得て前進している。図18(d)ではリモコン操作レバー14Lだけが前進方向の全閉側に位置し、左側の1機の駆動で図18(c)より小さい推力を得て前進している。図18(e)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが後進方向の全開側に位置し、左右の2機の駆動で最大の推力を得て後進している。図18(f)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが後進方向の全閉側に位置し、左右の2機の駆動で図18(e)より小さい推力を得て後進している。このように、2つのリモコン操作レバー14L、14Rの操作で、種々の段階の推力を得ることができる。
【0083】
図19は、図15(b)に示すように2機駆動状態における2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を示す。図19(a)ではリモコン操作レバー14Lが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが中立に位置し、左側の1機の駆動で最大の推力を得て前進して右方向に旋回している。図19(b)ではリモコン操作レバー14Rが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Lが中立に位置し、右側の1機の駆動で最大の推力を得て前進して左方向に旋回している。図19(c)ではリモコン操作レバー14Lだけが後進方向の全開側に位置し、左側の1機の駆動で推力を得て後進して左方向に旋回している。図19(d)ではリモコン操作レバー14Rだけが後進方向の全開側に位置し、1機の駆動で推力を得て後進して右方向に旋回している。図19(e)ではリモコン操作レバー14Lが後進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが前進方向の全開側に位置することで、左側と右側の2機の駆動で最大の推力を得て左方向に旋回している。図19(f)ではリモコン操作レバー14Lが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが後進方向の全開側に位置することで、左側と右側の2機の駆動で最大の推力を得て右方向に旋回している。このように、2つのリモコン操作レバー14L、14Rの操作で、種々の段階の推力を得ることができる。
【0084】
図20は、図15(c)に示すように中央側の1機の駆動状態における2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を示す。図20(a)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが前進方向の全開側に位置し、1機の駆動で最大の推力を得て前進している。図20(b)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが前進方向の全閉側に位置し、1機の駆動で図20(a)より小さい推力を得て前進している。図20(c)ではリモコン操作レバー14Rだけが前進方向の全閉に位置し、1機の駆動であるが推力を得ていないため前進しない。図20(d)ではリモコン操作レバー14Lだけが前進方向の全閉側に位置し、1機の駆動で図20(b)と同様な推力を得て前進している。図20(e)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが後進方向の全開側に位置し、1機の駆動で最大の推力を得て後進している。図20(f)では2つのリモコン操作レバー14L、14Rが後進方向の全閉側に位置し、1機の駆動で図20(e)より小さい推力を得て後進している。このように、2つのリモコン操作レバー14L、14Rの操作で、種々の段階の推力を得ることができる。
【0085】
図21は、図15(c)に示すように中央側の1機の駆動状態における2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を示す。図21(a)ではリモコン操作レバー14Lが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが中立に位置し、左側の1機の駆動で最大の推力を得て前進して右方向に旋回している。図21(b)ではリモコン操作レバー14Rが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Lが中立に位置し、推力を得ないで停止している。図21(c)ではリモコン操作レバー14Lだけが後進方向の全開側に位置し、1機の駆動で推力を得て後進している。図21(d)ではリモコン操作レバー14Rだけが後進方向の全開側に位置し、推力を得ないで停止している。図21(e)ではリモコン操作レバー14Lが後進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが前進方向の全開側に位置することで、1機の駆動で推力を得て後進している。図21(f)ではリモコン操作レバー14Lが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが後進方向の全開側に位置することで、1機の駆動で最大の推力を得て前進している。このように、2つのリモコン操作レバー14L、14Rの操作で、種々の段階の推力を得ることができる。
【0086】
この実施の形態では、レバー切替スイッチSWUが操作される毎に、順次、3機の推進機5L,5M,5Rは2つのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作可能な制御から、一方側と他方側の推進機5L,5Rのみ操作可能、中央側の推進機5Mは常に中立位置にする制御に切り替えることで、左右機のシフトを入れて微速で前進することができる。また、中央側の推進機5Mのみ、2つのいずれかのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作可能で、一方側または他方側の推進機5L,5Rは常に中立位置にする制御に切り替えることで、中央側の推進機5Mのみシフトを入れて超微速で前進することが簡単なスイッチ操作で実現できる。
【0087】
また、レバー切替スイッチSWUは、すべてのメインスイッチSWL,SWM,SWRがオン、且つ2つのリモコン操作レバー14L,14Rが中立位置の時のみ操作可能であり、レバー切替操作によって船舶が急加減速する心配がなく、また一方側の推進機と他方側の推進機5L,5M,5Rのメインスイッチ操作によるレバー切替機能と区別して利用できる。
[実施の形態3]
図22はこの発明に係る操縦装置のレバー切り替えを示す図である。この実施の形態では、実施の形態1と同様な構成は同じ符号を付してその説明を省略する。この実施の形態においては、2つのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作を切り替えるレバー切替スイッチSWUを、メインスイッチSWL,SWM,SWRの近傍に備え、メインスイッチSWL,SWM,SWRがオン状態でレバー切替スイッチSWUが操作されると、図1乃至図11において説明したメインスイッチSWL,SWM,SWRの操作による切り替え制御は行わないで、レバー切替スイッチSWUによる切替操作が優先される。
【0088】
この実施の形態は、実施の形態2の図12乃至図15に示すように、リモコンコントローラ13は、レバー切替スイッチSWUの操作状態を検出するレバー切替スイッチ操作状態検出手段17dと、レバー切替スイッチSWUの操作状態の検出に基づき船舶用操縦装置の設定を変更する制御手段17cとを有する。
【0089】
制御手段17cは、レバー切替スイッチSWUの操作状態を検出してレバー切替スイッチSWUが操作される毎に、各推進機5L,5M,5Rは2つのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作を順次、切り替える。
【0090】
例えば、図22(a)に示すように、レバー切替スイッチSWUが押されていない状態では、図12及び図13に示すように、レバー切替スイッチ操作状態検出手段17dがレバー切替スイッチSWUが押されていない状態を検出する。制御手段17cは、レバー切替スイッチSWUが押されていない状態であるときは、この状態の検出に基づき各推進機5L,5M,5Rのエンジン6の制御の切り替えは行わないで、図1乃至図11に示した各推進機5L,5M,5Rの制御を行う。
【0091】
例えば、図22(b)に示すように、レバー切替スイッチSWUが押されると、図12及び図13に示すように、レバー切替スイッチ操作状態検出手段17dはレバー切替スイッチSWUが押されたことを検出する。制御手段17cは、レバー切替スイッチSWUが押されたことから、一方側の推進機5Lと他方側の推進機5Rは、一方のリモコン操作レバー14Lによる操作可能で、中央側の推進機5Mは、他方のリモコン操作レバー14Rによる操作可能である。すなわち、制御手段17cは、図22(a)に示す2つのリモコン操作レバー14L、14Rによる操作可能な制御から、一方側と他方側の推進機5L,5Rのみ操作可能で、中央側の推進機5Mは常に中立位置とする制御に切り替える。このレバー切替スイッチSWUは、すべてのメインスイッチSWL,SWM,SWRがオン、且つ2つの操作レバー14L、14Rが中立位置の時のみ操作可能である。
【0092】
また、例えば、図22(b)に示すように、再度レバー切替スイッチSWUが押されると、図12及び図13に示すように、レバー切替スイッチ操作状態検出手段17dはレバー切替スイッチSWUが押されたことを検出する。制御手段17cは、レバー切替スイッチSWUが再度押されたことから、図22(a)に示す2つのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作可能とする制御に切り替える。
【0093】
このように、レバー切替スイッチSWUが操作される毎に、順次、3機の推進機5L,5M,5Rは2つのリモコン操作レバー14L,14Rによる操作可能な制御から、一方側の推進機5Lと他方側の推進機5Rは、一方のリモコン操作レバー14Lによる操作可能、中央側の推進機5Mは、他方のリモコン操作レバー14Rによる操作可能な制御に切り替わる。これにより一方側と他方側の推進機5L,5Rは前進、中央側の推進機5Mは後進にすることができるため、2つのリモコン操作レバー14L,14Rでエンジン回転数を調整することによりトロールから停止の超低速域を連続的に制御できるようになる。
【0094】
また、レバー切替スイッチSWUは、すべてのメインスイッチSWL,SWM,SWRがオン、且つ2つのリモコン操作レバー14L,14Rが中立位置の時のみ操作可能であり、レバー切替操作によって船舶が急加減速する心配がなく、また一方側の推進機5Lと他方側の推進機5Rのメインスイッチ操作によるレバー切替機能と区別して利用できる。
【0095】
以下、この実施の形態の2つのリモコン操作レバー14L,14Rと船舶1の動きの関係を説明する。
【0096】
デフォルト状態における2つのリモコン操作レバー14L,14Rと船舶1の動きの関係は、2つのリモコン操作レバー14L,14Rが前進方向の全開側に位置すると、3機の駆動で最大の推力を得て前進し、後進方向の全開側に位置すると、3機の駆動で最大の推力を得て後進する。
【0097】
図23(a)に示す2つのリモコン操作レバー14L,14Rが前進方向の全開側に位置すると、3機の駆動で最大の推力を得て前進する。また、図23(b)に示すように、2つのリモコン操作レバー14L、14Rが後進方向の全開側に位置すると、3機の駆動で最大の推力を得て後進する。また、図23(c)に示すように、リモコン操作レバー14Lが前進方向の全開側に位置すると、2機の駆動で推力を得て前進する。また、図23(d)に示すように、リモコン操作レバー14Rが前進方向の全開側に位置すると、1機の駆動で推力を得て前進する。また、図23(e)に示すように、リモコン操作レバー14Lが前進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが後進方向の全開側に位置すると、2機の駆動で前進する推力を得、1機の駆動で後進する推力を得て前進する。また、図23(f)に示すように、リモコン操作レバー14Lが後進方向の全開側に位置し、リモコン操作レバー14Rが前進方向の全開側に位置すると、2機の駆動で後進する推力を得、1機の駆動で前進する推力を得て後進する。
【0098】
[実施の形態4]
この実施の形態では、図24に示すように、船舶1は1階1aと2階1bを有する。この1階1aには2つのリモコン操作レバー14L、14Rを有するメインステーション51を備え、2階1bには2つのリモコン操作レバー14L、14Rを有するサブステーション52を備える。
【0099】
メインステーション51は、リモコンコントローラ13a1を備え、サブステーション52は、リモコンコントローラ13a2を備え、このリモコンコントローラ13a1, 13a2は相互に情報を送信、受信可能になっている。
【0100】
メインステーション51とサブステーション52は、切替スイッチ51a、52aによって切替可能である。
【0101】
この実施の形態では、例えばメインステーション51からサブステーション52に乗船者が移動して操船することがあると、切替スイッチ51aまたは切替スイッチ52aを押してメインステーション51からサブステーション52に切り替える。メインステーション51とサブステーション52では、リモコンコントローラ13a1, 13a2は相互に情報を送信、受信可能になっており、操作切替先のサブステーション52のリモコンコントローラ13a2はメインステーション51のリモコンコントローラ13a1の情報を受信する。このようにして、乗船者は、サブステーション52に移動して操船する場合、2つのリモコン操作レバー14L、14Rの操作は、操作切替元のメインステーション51の2つのリモコン操作レバー14L、14Rの操作と同じとすることができ、ステーション切替でも、それまでと同じレバー操作で操船できる。
【0102】
また、メインステーション51に備えられるリモコンコントローラ13a1が、メインステーション51とサブステーション52の2つの操作レバー14L、14Rの操作の操作切替処理を一括して行いう。このように、サブステーション52のリモコンコントローラ13a2は、2つのリモコン操作レバー14L、14Rの位置をメインステーション51のリモコンコントローラ13a1に送信するだけになるので、システム全体としての処理が単純になる。
【0103】
メインステーション51では、リモコンコントローラ13a1によりサブステーション52のリモコンコントローラ13a2との相互に情報を送信、受信することで、リモコンコントローラ13a1によってサブステーション52の2つのリモコン操作レバー14L、14Rの切替操作までも処理できる。このように、メインステーション51のリモコンコントローラ13a1により操作切替処理を一括して行うことで、サブステーション52のリモコンコントローラ13a2は、2つのリモコン操作レバー14L、14Rの位置をメインステーション51のリモコンコントローラ13a2に送信するだけになるので、システム全体としての処理が単純になる。
【0104】
また、メインステーション51のリモコンコントローラ13a1と、サブステーション52のリモコンコントローラ13a2は、2つのリモコン操作レバー14L、14Rによる操作切替の判定を行っているときも、現在のレバー状態を常に他のリモコンコントローラに送信する。このように、2つの操作レバー14L、14Rによる操作切替の判定を行っているリモコンコントローラも、現在のレバー状態を常に他のリモコンコントローラに送信することで、瞬断、マイコンリセット、あるいはメインスイッチのオン、オフ操作した場合でも、他のリモコンコントローラから操作レバー情報を受け取ることによって、瞬断、マイコンリセット、メインスイッチのオン、オフ操作前の操作レバー状態を継続できる。
【0105】
[実施の形態5]
以上は3機掛けの船舶1への適用例であるが、4機以上の船外機を備える船舶1に対しても適用できる。図25及び図26は、実施の形態1乃至4の変形例として4機掛け船舶1の推進機の制御例を説明するものであり、図25はリモコンコントローラ、図26はリモコンコントローラによって駆動制御される4機の推進機を備えた船舶を示している。なお、第1実施例と同一の構成要素は同一番号を付す。
【0106】
図25に示すように、ここでは船舶1は4機の推進機を船尾板3に並設しており、これらの推進機は説明上、左側から順に左推進機5L、左中推進機5LM、右中推進機5RM、右推進機5Rと呼ぶ。また、図25において実線で示されたリモコン操作レバー14Lは、左推進機5Lのシフト切替及びスロットルバルブ8aの開度調整(推力操作)のためのレバーであり、リモコン操作レバー14Rは、右推進機5Rのシフト切替及びスロットルバルブ8aの開度調整(推力操作)のためのレバーである。また、図25で二点鎖線で示されたリモコン操作レバー14LMは左中推進機5LMの運転を司り、リモコン操作レバー14RMは右中推進機5RMの運転を司る仮想のリモコンレバーである。
【0107】
この変形例では、制御手段17cが左右のリモコン操作レバー14L、14Rの各レバー位置を読み込み、さらにその演算部17L,17Rにおいて両レバー位置間のレバー回動範囲を3等分する。そして、左中推進機5LMの駆動を司る仮想レバー14LMは、3等分された各位置の内、左リモコンレバー14Lに近い等分割位置にあるように仮定する。一方、右中推進機5RMの駆動を司る仮想レバー14RMは、3等分された各位置の内、右リモコン操作レバー14Rに近い等分割位置にあるように仮定する。制御手段17cは左中推進機5LM及び右中推進機5RMの各エンジン6に、仮想レバー14LM及び14RMに対応した駆動信号を出力する。
【0108】
例えば、図25に示すリモコンコントローラ13では、右リモコン操作レバー14RがF全開位置近くにあり、左リモコン操作レバー14LがF全閉・中立の間にある。このため、演算される左中推進機5LMと右中推進機5RMの駆動信号は、左中推進機5LMの駆動を司る左中央仮想レバー14LMが、また右中推進機5RMの駆動を司る右中央仮想レバー14RMが、あたかもF全閉位置とF全開位置の間に位置するように設定される。これにより、各推進機5L、5LM、5RM及び5Rの推力及び方向は図26の矢印Pに示すようになる。これにより、船体2は矢印F方向に前進旋回する。
【0109】
このように変形例では、左右のリモコン操作レバー14L、14Rの位置間のレバー回動範囲を均等に3分割した位置を仮想のレバー14LM及び14RMの位置に見立てて、左中推進機5ML及び右中推進機5RMの駆動制御するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0110】
この発明は、特に船舶に3機以上の推進機を並置した船舶用操縦装置に適用でき、3機以上の推進機を配置する船舶において、例えば1機の推進機が故障した場合でも、残った複数の推進機を通常と同じような操作感覚で、違和感なく操船ができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】操縦装置を備えた船舶の上面概略図である。
【図2】操縦装置のブロック構成図である。
【図3】リモコンコントローラを示す図である。
【図4】リモコンコントローラとエンジンとのデータフローを示す図である。
【図5】制御部によって実行される処理を説明するフローチャートである。
【図6】2つのリモコン操作レバーが同じ方向に操作されている場合を示す図である。
【図7】2つのリモコン操作レバーが同じ方向に操作されている場合を示す図である。
【図8】2つのリモコン操作レバーが同じ方向に操作されている場合を示す図である。
【図9】2つのリモコン操作レバーが同じ方向に操作されている場合を示す図である。
【図10】メインスイッチ操作によるレバー切替を示す図である。
【図11】メインスイッチのオン状態における2つのリモコン操作レバーと船舶の動きの関係を示す図である。
【図12】他の実施の形態の操縦装置を備えた船舶の上面概略図である。
【図13】他の実施の形態の操縦装置のブロック構成図である。
【図14】他の実施の形態のリモコンコントローラとエンジンとのデータフローを示す図である。
【図15】レバー切替スイッチによるレバー切替を示す図である。
【図16】他の実施の形態の2つのリモコン操作レバーと船舶の動きの関係を説明する図である。
【図17】図15(a)に示すようにデイフォルト状態における2つのリモコン操作レバー14L、14Rと船舶1の動きの関係を示す図である。
【図18】図15(b)に示すように2機駆動状態における2つのリモコン操作レバーと船舶の動きの関係を示す図である。
【図19】図15(b)に示すように2機駆動状態における2つのリモコン操作レバーと船舶の動きの関係を示す図である。
【図20】図15(c)に示すように中央側の1機の駆動状態における2つのリモコン操作レバーと船舶の動きの関係を示す図である。
【図21】図15(c)に示すように中央側の1機の駆動状態における2つのリモコン操作レバーと船舶の動きの関係を示す図である。
【図22】操縦装置のレバー切り替えを示す図である。
【図23】他の実施の形態の2つのリモコン操作レバーと船舶の動きの関係を説明する図である。
【図24】ステーションの切替を示す図である。
【図25】4機掛け船舶の推進機の制御例を説明するリモコンコントローラを示す図である。
【図26】リモコンコントローラによって駆動制御される4機の推進機を備えた船舶を示す図である。
【符号の説明】
【0112】
1 船舶
2 船体
3 船尾板
4 クランプブラケット
5L,5M,5R 推進機
6 エンジン
6L,6M,6R 演算部
7 スロットルボディ
8a スロットルバルブ
8b 弁軸
9 モータ
10 運転席
13 リモコンコントローラ
14L,14R リモコン操作レバー
15L,15R ポテンショメータ
17 制御部
17b メインスイッチ状態検出手段
17c 制御手段
17L,17M,17R 演算部
19 電動シフト機構
30 レバー切替処理部
31 シフト目標値演算部
32 スロットル目標値演算部
40 目標シフト位置判定部
41 シフトモータ駆動制御部
42 スロットル制御部
50 第1のステージ
51 メインステーション
52 サブステーション
60 第2のステージ
61 メインステーション
62 サブステーション
SWL,SWM,SWR メインスイッチ
SWU レバー切替スイッチ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
3機以上の推進機を船舶に並置し、前記各推進機を、隣接する2つの操作レバーに関連付けて電気的に接続し、この2つの操作レバーによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行う船舶用操縦装置であり、
前記各推進機に備えられるエンジンを起動するメインスイッチと、
前記メインスイッチの操作状態を検出するメインスイッチ状態検出手段と、
前記各推進機を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記いずれかの推進機のメインスイッチをオフにした場合は、前記操作レバーに関連付けられた推進機の接続を自動的に切替えることを特徴とする船舶用操縦装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
一方側の推進機のみメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は一方の操作レバーのみに追従させ、
他方側の推進機のみメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は他方の操作レバーのみに追従させ、
前記一方側の推進機と前記他方側の推進機の両方のメインスイッチをオフにした場合は、中央側の推進機は前記一方または他方の操作レバーのみに追従させる操作切替の制御をすることを特徴とする請求項1に記載の船舶用操縦装置。
【請求項3】
前記2つの操作レバーによる操作切替の制御では、前記2つの操作レバーが中立位置のときに切り替わることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶用操縦装置。
【請求項4】
前記2つの操作レバーによる操作を切り替えるレバー切替スイッチと、
前記レバー切替スイッチの操作状態を検出するレバー切替スイッチ操作状態検出手段と、
前記レバー切替スイッチの操作状態の検出に基づき前記船舶用操縦装置の設定を変更する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記各推進機のメインスイッチがオン状態のとき、
前記レバー切替スイッチの操作状態を検出して前記レバー切替スイッチが操作される毎に、
3機以上の推進機は2つの操作レバーによる操作可能な第1の状態から、
一方側と他方側の推進機のみ操作可能、中央側の推進機は常に中立位置の第2の状態、
中央側の推進機のみ、2つのいずれかの操作レバーによる操作可能で、一方側または他方側の推進機は常に中立位置の第3の状態に、
順次、前記2つの操作レバーのレバー状態を切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶用操縦装置。
【請求項5】
前記2つの操作レバーによる操作を切り替えるレバー切替スイッチと、
前記レバー切替スイッチの操作状態を検出するレバー切替スイッチ操作状態検出手段と、
前記レバー切替スイッチの操作状態の検出に基づき前記各推進機のエンジンを制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記各推進機のメインスイッチがオン状態のとき、
前記レバー切替スイッチの操作状態を検出して前記レバー切替スイッチが操作される毎に、
3機以上の推進機は2つの操作レバーによる操作可能から、
前記一方側の推進機と前記他方側の推進機は、一方の操作レバーによる操作可能、前記中央側の推進機は、他方の操作レバーによる操作可能に、順次、前記2つの操作レバーのレバー状態を切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶用操縦装置。
【請求項6】
前記レバー切替スイッチは、
すべてのメインスイッチがオン、且つ2つの操作レバーが中立位置の時のみ操作可能であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の船舶用操縦装置。
【請求項7】
前記2つの操作レバーを有するメインステーションと、
前記2つの操作レバーを有するサブステーションとを有し、
前記メインステーションと前記サブステーションは切替可能であり、
操作切替先の前記メインステーションまたは前記サブステーションの前記2つの操作レバーの操作は、操作切替元の前記サブステーションまたは前記メインステーションの前記2つの操作レバーの操作と同じとするリモコンコントローラを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶用操縦装置。
【請求項8】
前記メインステーションに備えられる前記リモコンコントローラにより前記2つの操作レバーの操作の操作切替処理を一括して行うことを特徴とする請求項7に記載の船舶用操縦装置。
【請求項9】
前記リモコンコントローラは、
前記2つの操作レバーによる操作切替の判定を行っているときも、現在のレバー状態を常に他のリモコンコントローラに送信することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の船舶用操縦装置。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記2つの操作レバーを同じ前進方向または後進方向に操作した時にのみ、中央側の推進機はその方向に操作可能に制御することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の船舶用操縦装置。
【請求項11】
前記制御手段は、
前記2つの操作レバーが同じ前進方向または後進方向に操作されている状態では、中央側の推進機は前記2つの操作レバーの中間位置を目標として、スロットルを開くように制御することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の船舶用操縦装置。
【請求項12】
前記制御手段は、
前記2つの操作レバーの内、一方側の操作レバーが全開で、他方側の操作レバーが中立位置であり、この中立位置の操作レバーを全閉位置まで操作した場合、中央側の推進機は徐々にスロットルを開き、中間のエンジン回転数まで上昇するように制御することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の船舶用操縦装置。
【請求項13】
前記制御手段は、
前記2つの操作レバーが同じ方向に操作され、且つ前記2つの操作レバーが全閉位置まで操作されない場合は、中央側の推進機は中立位置に近い方の操作レバーの位置を目標位置にするように制御することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の船舶用操縦装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−128138(P2008−128138A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315736(P2006−315736)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】