説明

良好な接着特性を備えたシラン官能性ポリマーおよびアミノシラン付加物を含有する湿気硬化性組成物

本発明は、式(I)の少なくとも2個の末端基を備えた少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPと、少なくとも1個の第1級アミノ基を備えた少なくとも1種のアミノシランASおよび第1級アミノ基と1、4付加反応できる少なくとも1種のシラン基のないアルケンMとから生成された少なくとも1種の反応生成物Rとを含む湿気硬化性組成物に関する。この組成物は、改善された接着特性を有し、接着剤、シーリング材料またはコーティング、特に、弾性接着剤またはシーリング材料として用いるのに特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン官能性ポリマーを含み、弾性接着剤、弾性シール剤または弾性コーティングとして用いるのに好適な良好な接着特性を有する湿気硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン官能性ポリマーがベースの湿気硬化性組成物は公知であり、その用途としては、弾性接着剤、弾性シール剤および弾性コーティングが挙げられる。それらはイソシアネート基がなく、そのため、イソシアネート含有ポリウレタン系の、毒性の面で好ましい代替物となっている。
【0003】
シラン官能性ポリマーの中でも、α−官能性シラン末端基のあるものは、特に、その高い湿気反応性のために、特別な位置を占めている。この種のポリマーおよびそれらを含む組成物は、例えば、(特許文献1)に記載されている。しかしながら、弾性接着剤、弾性シール剤または弾性コーティングとしての用途については、記載された系では、特に、貯蔵安定性や、硬化後の伸展性や基材への接着に関して欠点がある。
【0004】
(特許文献2)には、化学的な水スカベンジャーとして、例えば、アルコキシメチルトリアルコキシシランやカルバメートメチルアルコキシシランのような高反応性α−官能性シランを添加することにより、かかる組成物の貯蔵安定性を高める方法が記載されている。
【0005】
(特許文献3)および(特許文献4)には、α−官能性ジアルコキシシランおよび/またはNCO反応性α−官能性シランの添加により、硬化特性に悪影響を及ぼすことなく、かかる組成物の機械的特性、特に、伸展性を高めることのできる方法が記載されている。
【0006】
特に、弾性接着剤または弾性シール剤としての用途については、組成物が、硬化後、様々な基材に対して良好な接着力を有していることが特に重要である。しかしながら、α−官能性シラン基を備えたシラン官能性ポリマーベースの従来技術の系における大きな欠点は、特に、様々な基材に対するそれらの接着力が不十分なことである。より具体的には、例えば、水に長期間浸漬したり、熱蒸気処理(例えば、70℃、100%湿度)等厳しい湿気への曝露によって、硬化した組成物と基材との間の接着力は、不可逆的に失われることが多い。
【特許文献1】国際公開第03/018658A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/014226A1号パンフレット
【特許文献3】EP1 529 813A1
【特許文献4】国際公開第2005/003201A2号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、α−官能性シラン基を備えたポリマーをベースとし、改善された接着特性を示し、それゆえ特に接着剤、シール剤またはコーティングとして、特に弾性接着剤または弾性シール剤としての使用に好適な湿気硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外にも、請求項1による湿気硬化性組成物が、これらの目的を達成することを見出した。より具体的には、基材に対する接着力が、例えば、水に長期間浸漬したり、熱蒸気処理(例えば、70℃、100%湿度)等厳しい湿気への曝露があっても保持される。
【0009】
さらに提供されるのは、請求項20または21による接着結合またはシーリング方法、そして請求項23、24または25による接着結合物品またはシール物品である。
【0010】
さらなる実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、湿気硬化性組成物であって、
a)式(I)の少なくとも2個の末端基を有する少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP、
【0012】
【化1】

(式中、
は、1〜8個のC原子を有するアルキル基、より具体的にはメチル基またはエチル基であり、
は、1〜5個のC原子を有するアルキル基、より具体的にはメチル基またはエチル基もしくはイソプロピル基であり、
aは、0、1または2であり、
Xは、−NH−CO−N(R)−、−NH−CO−S−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−N(R)−CO−NH−および−S−CO−NH−からなる群から選択される二価の基であり、
ここで、Rは水素原子であるか、または1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状炭化水素基であって、この炭化水素基は場合により環状部分を含んでもよく、また場合によりアルコキシシリル、エーテル、スルホン、ニトリル、ニトロ、カルボン酸エステル、スルホン酸エステルおよびホスホン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を有してもよい)と、
b)少なくとも1個の第1級アミノ基を有する少なくとも1種のアミノシランASと、第1級アミノ基と1,4−付加反応を行える、少なくとも1種のシラン基のないアルケンMとから調製された少なくとも1種の反応生成物Rと
を含む組成物を提供する。
【0013】
本明細書において、「ポリマー」という用語には、一方で、化学的に均一なマクロ分子の集合体であるが、重合度、モル質量および鎖長に関しては異なり、重合反応(付加重合、重付加、重縮合)により調製されたものが包含される。他方で、この用語には、重合反応からのそのようなマクロ分子の集合体の誘導体、言い換えるなら、例えば、すでにあるマクロ分子上の官能基の付加反応や置換反応などの反応によって得られ、かつ化学的に均一又は不均一な化合物も包含される。この用語には、さらに、プレポリマー、すなわち、その官能基がマクロ分子の構築に関与する反応性オリゴマー予備付加体、として知られているものが包含される。
【0014】
本明細書では「シラン」という用語は、オルガノアルコキシシラン、すなわち、(Si−O結合を介して)ケイ素原子に直接結合した少なくとも1個、典型的には、2または3個のアルコキシ基があり、かつ、(Si−C結合を介して)ケイ素原子に直接結合した少なくとも1個の有機基もある化合物のことを指すために用いる。同様に、「シラン基」という用語は、オルガノアルコキシシランの有機基に結合するケイ素を含有する基のことをさす。シランまたはそれらのシラン基は、湿気との接触で加水分解する特性を有する。この加水分解は、オルガノシラノール、すなわち1個以上のシラノール基(Si−OH基)の形成と、それに続く縮合反応による、オルガノシロキサン、すなわち、1個以上のシロキサン基(Si−O−Si基)を含有する有機ケイ素化合物の形成を伴う。「シラン官能性」という用語は、シラン基を含有する化合物、特に、ポリマーを指す。
【0015】
「α−官能性」といわれるシランまたはシラン基は、ケイ素原子に対してα位置(位置1)の有機基が、例えば、イソシアネート基やアミノ基等の官能基で置換されているものである。同様に、シランまたはシラン基は、ケイ素原子に対してγ位置(位置3)の有機基が、官能基で置換されているときは「γ−官能性」といわれる。
【0016】
「アミノシラン」または「イソシアネートシラン」等の接頭辞として官能基のあるシランの名称は、例えば、有機基上の表記された官能基を置換基として有するシランを示している。「α−アミノシラン」や「γ−アミノシラン」等の表示は、例えば、ケイ素原子に対して特定の位置に、表記された官能基があることを示している。
【0017】
「ポリウレタンポリマー」という用語には、ジイソシアネート重付加プロセスにより調製される全てのポリマーが包含される。これにはまた、実質的に、または完全にウレタン基のないポリマーも含まれる。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテル−ポリウレタン、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレア、ポリウレア、ポリエステル−ポリウレア、ポリイソシアヌレートまたはポリカルボジイミドである。
【0018】
本明細書において、「マイケル受容体」という用語は、シラン基のないアルケンMであって、電子受容体基により活性化された、それらが含む二重結合によって、一級アミノ基(NH基)と、マイケル付加(ヘテロマイケル付加)と類似のやり方で1,4−付加反応を行えるアルケンMを示している。マイケル受容体は、単官能性または多官能性、すなわち、1つ以上のそのような活性化された二重結合を有しており、1個以上の第1級アミノ基と1,4−付加反応を行うことができる。
【0019】
本湿気硬化性組成物は、上式(I)の末端基を有する少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPを含む。
【0020】
ポリマーPのタイプのポリマーは、例えば、国際公開第03/018658号パンフレットに記載されている。これらのポリマーはα−官能性シラン末端基を含有しており、シラン官能基はその電子構造によって、非常に速やかに加水分解し、さらに縮合する能力を有している。その結果、このようなポリマーの湿気反応性は非常に高い。従って、それらは湿気硬化性組成物を調製するために用いることができ、その湿気硬化組成物は触媒なしで、または僅かの量の触媒、特に金属触媒を用いるだけで、速い硬化速度を示す。特に、ジ−またはモノアルコキシシラン末端基を含有するこの種のポリマーPを用いると、湿気硬化組成物で得られる硬化速度はそれでも十分なものであり、対応するγ−官能性シラン基を含有するポリマーを用いた場合には可能ではない、または望ましくない大量の触媒を用いるときのみ可能なほどのものである。
【0021】
ポリマーPは、ジアルコキシシラン基を有することが好ましい。すなわち、式(I)中のaが好ましくは1である。そのようなポリマーPを含む組成物には、硬化後、特に良好な機械的特性を有するという利点がある。トリアルコキシシラン基を有するポリマーPを用いるのと比べて、ポリマーの硬化は低い架橋密度を作り出す。その結果、ジアルコキシシラン基をもつポリマーPを含む組成物は、硬化後、特に高い弾性、特に、高引張り強度と共に特に高い伸展性を有する。このことは、弾性接着剤、弾性シール剤および弾性コーティングとしての使用に特に有利である。
【0022】
第1の実施形態で用いるポリマーPは、式(I)中の二価の基Xが、−NH−CO−N(R)−、または−NH−CO−S−、または−NH−CO−O−であるポリマーP1である。ポリマーP1は、イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11と、α−アミノシラン、α−メルカプト−シランまたはα−ヒドロキシシランとの反応より得られ、ポリウレタンポリマーP11のイソシアネート基に対してシランを用いる比率は、化学量論またはやや超化学量論である。
【0023】
イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11との反応に特に好適なα−アミノシランは、
第1級アミノ基(NH基)を有するα−アミノシラン、以降「第1級α−アミノシラン」ともいい、例えば、(アミノメチル)トリメトキシシラン、(アミノメチル)メチルジメトキシシラン、および(アミノメチル)ジメチルメトキシシラン;
第2級アミノ基(NH基)を有するα−アミノシラン、以降「第2級α−アミノシラン」ともいい、例は、窒素原子上の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシルまたはフェニル基等を有する、上述した第1級α−アミノシランの類似体、例えば、(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、(N−フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン、および(N−フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン等;
シラン多官能性第2級α−アミノシラン、例えば、ビス(トリメトキシシリルメチル)アミン等;及び、
上述した第1級α−アミノシランとマイケル受容体〔例えば、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、桂皮酸エステル、イタコン酸ジエステル、ビニルホスホン酸ジエステル、ビニルスルホン酸アリールエステル、ビニルスルホン、ビニルニトリル、1−ニトロエチレンまたはクノーブナーゲル縮合生成物(例えば、マロン酸ジエステルおよびアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはベンズアルデヒドの縮合生成物)〕とのマイケル型付加生成物;並びに、
上述した全α−アミノシランの、ケイ素原子上にメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基をもつ、上述した全てのα−アミノシランの類似体、である。
【0024】
マイケル型付加の上述の生成物の中でも、特に、第1級α−アミノシランと、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルまたはマレイン酸ジブチル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチルまたはホスホン酸ジブチル、アクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、フマロニトリル、またはβ−ニトロスチレンが挙げられる。
【0025】
イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11との反応に好適なα−メルカプトシランの例は、(メルカプトメチル)トリメトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジメトキシシラン、および(メルカプトメチル)ジメチルメトキシシラン、並びに、ケイ素原子上にメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基をもつ上述したα−メルカプトシランの類似体である。
【0026】
イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11との反応に好適なα−ヒドロキシシランの例は、(ヒドロキシメチル)トリメトキシシラン、(ヒドロキシメチル)メチルジメトキシシラン、および(ヒドロキシメチル)ジメチルメトキシシラン、並びにケイ素原子上にメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基をもつ上述したαヒドロキシシランの類似体である。
【0027】
イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11は、例えば、少なくとも1種のポリオールと、少なくとも1種のポリイソシアネート、特にジイソシアネートとの反応により得られる。この反応は、ポリオールとポリイソシアネートを典型的な方法で、例えば、50℃〜100℃の温度で、適切であれば、好適な触媒を用いて反応させることによって行われ、ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基が、ポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的に過剰となるように計量される。
【0028】
イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11を調製するために用いることのできるポリオールとしては、以下の市販されている一般的なポリオール、またはそれらの所望の混合物が挙げられる。
− ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオールまたはオリゴエーテルオールともいわれ、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフランまたはこれらの混合物の重合生成物であり、任意選択により、2個以上の活性水素原子を有する出発分子、例えば、水、アンモニアまたは2個以上のOHまたはNH基を有する化合物、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール異性体類、トリプロピレングリコール異性体類およびポリプロピレングリコール異性体類、ブタンジオール異性体類、ペンタンジオール異性体類、ヘキサンジオール異性体類、へプタンジオール異性体類、オクタンジオール異性体類、ノナンジオール異性体類、デカンジオール異性体類、ウンデカンジオール異性体類、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリンおよび上述した化合物の混合物を用いて重合されたものである。例えば、いわゆるダブルメタルシアン化物錯体触媒(DMC触媒)を用いて調製された、不飽和度が低い(ASTM D−2849−69により測定され、ポリオール1グラム当たりの不飽和度のミリ当量(meq/g))で記録)ポリオキシアルキレンポリオールだけでなく、例えば、NaOH、KOH、CsOHまたはアルカリ金属アルコキシド等のアニオン触媒を用いて調製された、高い不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールも使用できる。
【0029】
特に好適なものは、ポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、特に、ポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオールである。
【0030】
特に好適なものは、不飽和度が0.02meq/g未満、分子量が1000〜30000g/モルの範囲のポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオールおよび分子量が400〜8000g/モルのポリオキシプロピレンジオールおよびトリオールである。本明細書における「分子量」という用語は、平均分子量Mのことを指す。
【0031】
同様に、特に好適なのは、エチレンオキシド末端(「EOエンドキャップ」、エチレンオキシドエンドキャップ)ポリオキシプロピレンポリオールといわれるものである。後者は、特別なポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオールであり、これは例えば、純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特に、ポリオキシプロピレンジオールおよびトリオールに、ポリプロポキシル化反応の終了後に、引き続き、エチレンオキシドによるアルコキシル化を行って、その結果第1級ヒドロキシル基が含まれるようにすることにより得られる。
【0032】
− スチレン-アクリロニトリル-グラフト化またはアクリロニトリル-メチルメタクリレート-グラフト化ポリエーテルポリオール。
【0033】
− ポリエステルポリオール、オリゴエステルオールともいわれ、例えば、二価〜三価のアルコール(例えば、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパンまたは前記のアルコールの混合物)と、有機ジカルボン酸、またはそれらの無水物またはエステル(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸およびヘキサヒドロフタル酸、または前記の酸の混合物)とから調製されたもの、ならびに、例えば、ε−カプロラクトンなどのラクトンから形成されたポリエステルポリオール。
【0034】
− 例えば、ポリエステルポリオールを合成するのに用いられる上述のアルコールと、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートまたはホスゲンとの反応により得られるようなポリカーボネートポリオール。
【0035】
− ポリアクリレートおよびポリメタクリレートポリオール。
【0036】
− ポリ炭化水素ポリオール、オリゴヒドロカルボノールともいわれ、例えば、クラトンポリマーズ(Kraton Polymers)製の種類のポリヒドロキシ官能性エチレン−プロピレン、エチレン−ブチレンまたはエチレン−プロピレン−ジエンコポリマー、または、例えば、1,3−ブタンジエンまたはジエン混合物などのジエンと、スチレン、アクリロニトリルまたはイソブチレンなどのビニルモノマーとのポリヒドロキシ官能性コポリマー、または、例えば、1,3−ブタジエンとアリルアルコールとの共重合によって調製される種類のポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール。
【0037】
− 例えば、エポキシドまたはアミノアルコールと、カルボキシル末端アクリロニトリル/ポリブタジエンコポリマーとから調製可能な種類のポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ポリブタジエンコポリマー(ハンスケミー(Hanse Chemie)社よりハイカー(Hycar)(登録商標)CTBNという名称で市販されている)。
【0038】
これらの上述のポリオールは250〜30000g/モル、特に、1000〜30000g/モルの平均分子量を有し、1.6〜3の範囲の平均OH官能価を有する。
【0039】
好ましいポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールである。ポリオールとしてさらに好ましいのはジオールである。特に好ましいのは、ポリオキシアルキレンジオールであり、特に好ましいのは、不飽和度が0.02meq/g未満、分子量が4000〜30000g/モル、特に、8000〜30000g/モルのものである。
【0040】
これら上述のポリオールに加えて、少量の低分子量二価または多価アルコール、例えば1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール異性体類およびトリプロピレングリコール異性体類、ブタンジオール異性体類、ペンタンジオール異性体類、ヘキサンジオール異性体類、ヘプタンジオール異性体類、オクタンジオール異性体類、ノナンジオール異性体類、デカンジオール異性体類、ウンデカンジオール異性体類、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、脂肪アルコール二量体、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、糖アルコール、例えば、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトール、スクロースなどの糖、その他の多官能性アルコール、前述の二価および多価アルコールの低分子量アルコキシル化生成物、ならびに前述のアルコールの混合物を、ポリウレタンポリマーP11の調製時に共に使用することができる。
【0041】
イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11を調製するためのポリイソシアネートとしては、以下の市販されている一般的なポリイソシアネートを用いることができる。
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびリジンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−および1,4−ジイソシアネート、これらの異性体と所望の混合物、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(すなわち、イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、パーヒドロ−2,4’−および−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4−ジイソシアナト−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−およびp−キシリレンジイソシアネート(m−およびp−XDI)、m−およびp−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジイソシアネート(m−およびp−TMXDI)、ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ナフタレン)、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート、これらの異性体の所望の混合物(TDI)、4,4’−、2,4’−および2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびこれらの異性体の所望の混合物、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル(TODI)、上述のイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、および上述のイソシアネートの所望の混合物。MDI、TDI、HDI、およびIPDIが好ましい。
【0042】
第2の実施形態においてポリマーPとして用いるのは、式(I)中の二価の基Xが、−O−CO−NH−または−N(R)−CO−NH−または−S−CO−NH−であるポリマーP2である。ポリマーP2は、少なくとも2個のイソシアネート反応基を含有するポリマーP21と、少なくとも1種のα−イソシアナトシランとの反応により得られる。この反応は、イソシアネート基とイソシアネート反応性基との間が化学量論比で、20℃〜100℃の温度で、例えば、適切な場合には触媒を用いて、いかなるイソシアネート基も残らないように行われるか、あるいは、やや過剰量のイソシアネート基を用いて、この場合は反応後ポリマーに残るα−イソシアナトシランは、例えば、アルコールとさらに反応されうる。第2の実施形態は、ポリマーP1を用いる第1の実施形態よりも好ましい。なぜなら、ある分子量に対して、ポリマーP2は、典型的には、ポリマーP1より粘度が低く、これは、本発明による用途に有利だからである。
【0043】
好適なα−イソシアナトシランの例は、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、(イソシアナトメチル)ジメチルメトキシシラン、および、ケイ素原子上にメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基のある、上述したα−イソシアナトシランの類似体である。α−イソシアナトシランの中でも好ましいものは、ジアルコキシシラン類、特に(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシランおよび(イソシアナトメチル)メチルジエトキシシランである。
【0044】
少なくとも2個のイソシアネート反応性基を有する好適なポリマーP21の例は、以下の化合物である。
− ポリウレタンポリマーP11の調製に好適であるとして既に上述した種類の、分子量が少なくとも2000g/モルのポリオール。ポリオキシアルキレンポリオールが特に好ましい。少なくとも4000g/モルの分子量のポリオールが好ましい。特に好適なものは、不飽和度が0.02meq/g未満、分子量が4000〜30000g/モル、特に、8000〜30000g/モルのポリオキシプロピレンジオールおよびトリオールである。
【0045】
分子量が少なくとも2000g/モルで、少なくとも2個のアミノ基、第1級および/または第2級のアミノ基を含有するポリアミン、例えば、ジェファミン(Jeffamine)(登録商標)(ハンツマンケミカル(Huntsman Chemicals)製)という商品名で入手可能な種類のポリオキシアルキレンポリアミン。
【0046】
− 末端ヒドロキシル基、第1級または第2級アミノ基、またはメルカプト基を有し、分子量が少なくとも2000g/モル、好ましくは少なくとも4000g/モルのポリウレタンポリマー。
【0047】
末端ヒドロキシル基を有するポリウレタンポリマーは、例えば、少なくとも1種のポリオールと、少なくとも1種のポリイソシアネートとの反応により得られ、OH基は、化学量論的に過剰に存在していて、それにより末端OH基が反応後に残る。この反応に好適なポリオールおよびポリイソシアネートは、イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11の調製に好適な既に上述したような同じ市販されている一般的なポリオールおよびポリイソシアネートである。
【0048】
好ましいポリマーP21は、分子量が少なくとも4000g/モルのポリオキシアルキレンポリオールである。特に好ましいのは、ポリオキシプロピレンジオールおよびトリオール、特に、ポリオキシアルキレンジオールで、不飽和度が0.02meq/g未満、分子量が4000〜30000g/モル、特に、8000〜30000g/モルのものである。これらの好ましいポリオールを用いると、調製し易く且つ特に低粘度のポリマーP2が生成され、特に良好な機械的特性を有する組成物を与えるという利点がある。
【0049】
ある特に好ましい実施形態において、シラン官能性ポリマーPの末端基は、ジアルコキシシラン基である。すなわち、式(I)中のaの値が1であり、シラン官能性ポリマーPが、α−イソシアナトジアルコキシシランと、ポリアルコキシアルキレンジオール、特に、不飽和度が0.02meq/g未満であり、分子量が4000〜30000g/モル、特に、8000〜30000g/モルであるポリマーP21との反応により得られるポリマーP2である。
【0050】
α−官能性シラン基を備えたポリマーPの他に、本湿気硬化性組成物は、少なくとも1種の反応生成物Rを含み、Rは、少なくとも1個の第1級アミノ基を有する少なくとも1種のアミノシランASと、第1級アミノ基と1,4−付加反応を行うことのできる、以降、マイケル受容体といわれる、少なくとも1種のシラン基のないアルケンMとから調製される。
【0051】
少なくとも1個の第1級アミノ基を有し、かつ反応生成物Rを調製するために好適なアミノシランASは、式(II)の化合物であり、
【0052】
【化2】

式中、
は、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状の、場合により環状のアルキレン基で、場合により芳香族部分を有してもよく、また場合によりヘテロ原子、特にエーテル酸素または第2級アミン窒素を有してもよく、
は、1〜8個のC原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基、特にメチル基であり、
10は、1〜5個のC原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基もしくはイソプロピル基、特にメチル基またはエチル基であり、
bは、0、1または2、好ましくは0または1である。
【0053】
反応生成物Rを調製するのに特に好適なアミノシランASは、以下の市販されている一般的なアミノシランである。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルジメトキシメチルシラン、4−アミノ−3−メチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、7−アミノ−4−オキサヘプチルジメトキシメチルシラン、およびケイ素上にメトキシ基の代わりにエトキシまたはイソプロポキシ基を有するそれらの類似体。
【0054】
さらに、特に好適なアミノシランASは、ジアミノシランといわれるものであり、第1級アミノ基とともに第2級アミノ基(NH基)を有するアミノシランの形態であって、第2級アミノ基は、特に、ケイ素原子に対してγ位にある。そのようなジアミノシランの例は、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシラン、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリイソプロポキシシランである。
【0055】
アミノシランASは、好ましくは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランからなる群から選択され、より好ましくは、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリイソプロポキシシランからなる群から選択される。
【0056】
反応生成物Rを調製するために好適なマイケル受容体は、単官能性または多官能性である。好適な単官能性マイケル受容体は、式(III)または(IV)の化合物である。
【0057】
【化3】

式中、
は、水素原子であるか、または−R、−COORおよび−CNからなる群からの基であり、
は、−COOR、−CONH、−CONHR、−CONR、−CN、−NO、−PO(OR、−SOおよび−SOORからなる群からの基であり、
は、水素原子であるか、または−CH、−R、−COORおよび−CHCOORからなる群からの基であり、
は、1〜20個のC原子を有する一価の炭化水素基であり、この基は、場合によりヘテロ原子、特にエーテル酸素原子を含有してもよい。
【0058】
好適な単官能性マイケル受容体の例は、マレイン酸ジエステルまたはフマル酸ジエステル、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル;シトラコン酸ジエステル、例えば、シトラコン酸ジメチル;アクリル酸またはメタクリル酸エステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;アクリルアミドまたはメタクリルアミド、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジブチル(メタ)アクリルアミド;イタコン酸ジエステル、例えば、イタコン酸ジメチル;桂皮酸エステル、例えば、桂皮酸メチル;ビニルホスホン酸ジエステル、例えば、ビニルホスホン酸ジメチル;ビニルスルホン酸エステル、特に、ビニルスルホン酸アリールエステル;ビニルスルホン;ビニルニトリル、例えば、アクリロニトリル、クロトニトリル、2−ペンテンニトリルまたはフマロニトリル;1−ニトロエチレン類、例えば、β−ニトロスチレン;及び、クノーブナーゲル縮合生成物、例えば、マロン酸ジエステルおよびアルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはベンズアルデヒド等の縮合生成物、である。特に好適なものは、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ホスホン酸ジエステル、およびビニルニトリルである。
【0059】
好ましい単官能性マイケル受容体は、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルおよびマレイン酸ジブチル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチルおよびホスホン酸ジブチル、アクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、フマロニトリルおよびβ−ニトロスチレンおよびこれらの化合物の混合物である。
【0060】
好適な多官能性マイケル受容体は、特に、2個以上のアクリロイル、メタクリロイルまたはアクリルアミド基を有する化合物、例えば、脂肪族ポリエーテル、ポリエステル、ノボラック、フェノール、脂肪族または脂環式アルコール、グリコールおよびポリエステルグリコール、および前記の化合物のモノ−及びポリアルコキシル化誘導体の二官能性または多官能性アクリレートおよびメタクリレート、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート;二官能性または多官能性アクリロイル−、メタクリロイル官能性のポリブタジエン、ポリイソプレンまたはこれらのブロックコポリマー;二官能性または多官能性エポキシドとアクリル酸およびメタクリル酸との付加物;二官能性または多官能性ポリウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌレートトリ(メタ)アクリレート、N,N’,N”−トリス(メタ)アクリロイルパーヒドロトリアジン;二価または多価(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,4−ビス(メタ)アクリロイルピペラジンおよびN,N’−ビス(メタ)アクリロイル−1,6−ヘキサンジアミンである。さらに好適な多官能性マイケル受容体は、ジビニルスルホン、及び、グリコールと、ジカルボン酸またはそれらのエステルまたは無水物と、アクリルまたはメタクリル酸またはそれらのエステルとのコポリエステル、例えば、東亞合成(Toagosei)社よりアロニックス(Aronix)(登録商標)という商品名で入手可能な、シリーズM−6000、M−7000、M−8000およびM−9000のタイプのポリエステルアクリレートである。
【0061】
好ましい多官能性マイケル受容体は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびグリコールと、ジカルボン酸またはそれらのエステルまたは無水物と、アクリルまたはメタクリル酸またはそのエステルとのコポリエステル、例えば、東亞合成(Toagosei)社よりアロニックス(Aronix)(登録商標)という商品名で入手可能な、シリーズM−6000、M−7000、M−8000およびM−9000のタイプのポリエステルアクリレート、特に、これらの化合物のアクリレート類、これらの化合物の混合物である。
【0062】
マイケル受容体として好ましいものは、さらに、上述した好ましい単官能性マイケル受容体と上述した好ましい多官能性マイケル受容体との混合物である。
【0063】
反応生成物Rは、アミノシランASとマイケル受容体との付加生成物を表している。マイケル受容体が単官能性の場合、反応生成物は、式(V)を有する。
【0064】
【化4】

式中、R、R、R10、R、R、Rおよびbは、既に記述したとおりの定義を有する。
【0065】
マイケル受容体が多官能性の場合、反応生成物Rは、第2級アミノ基を介して結合した1個以上のシラン基を含有する化合物である。反応の化学量論および変換率に応じて、この反応生成物Rはまた、活性化された二重結合も含有しうる。
【0066】
反応生成物Rを得るためのアミノシランASとマイケル受容体との間の反応は、第1級アミンと活性化アルケンとの間の反応に典型的に用いられる種類の公知の条件下、例えば、20〜150℃、特に、20〜100℃で行われる。この反応は、溶剤を用いて、又は、好ましくは溶剤なしの形態で行われる。必要に応じて、助剤、特に触媒または安定剤を用いることもできる。
【0067】
アミノシランASとマイケル受容体との間の化学量論は自由に選択できる。これは、アミノシランASの第1級アミノ基と、マイケル受容体の活性化された二重結合との間のモル比は、正確に化学量論である必要はないということを意味する。この場合、化学量論未満の比は、多官能性マイケル受容体の場合には、反応生成物Rは、活性化された二重結合が部分的な反応しか行わっていない生成物を含むことを示唆している。化学量論またはやや化学量論より大きな割合、すなわち、やや過剰のアミノ基を用いることが望ましい。
【0068】
少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPと少なくとも1種の反応生成物Rとを含む湿気硬化性組成物は、一段階プロセス(「イン・サイチュ(in situ)」)で調製してもよい。すなわち、反応生成物RをアミノシランASとマイケル受容体から別途調製して、次にポリマーPと混合して調製するのではなく、代わりに、反応生成物Rは、ポリマーP、アミノシランAS、およびマイケル受容体をいずれの場合も互いに適切な比率で一緒に混合しているとき、またはその後に形成される。
【0069】
少なくとも1種の反応生成物Rの存在は、硬化した組成物の接着特性を大幅に向上させるという効果を有する。この効果は、水に長期間浸漬したり、あるいは熱蒸気処理(例えば、70℃および100%湿度)の結果として、湿気に晒された後は特に顕著である。この品質は、特に、反応生成物Rを、全組成物に基づいて、0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.3重量%〜5重量%の範囲で用いることにより達成されることが分かった。反応生成物Rは、シラン官能性ポリマーPに対して、0.2重量%〜10重量%の量で用いると有利である。
【0070】
α−官能性シラン基を含有するポリマーPと組み合わせた反応生成物Rの観察された接着促進効果は、意外なことであり、非自明である。
【0071】
本発明の湿気硬化性組成物は、少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPと少なくとも1種の反応生成物Rに加えて、さらなる成分を含んでいてもよい。しかしながら、貯蔵安定性に悪影響を及ぼさないように、すなわち、貯蔵中に、組成物中に存在するシラン基の反応を大きく誘発して架橋につながらないようにすることが有利である。すなわち、特に、このようなさらなる成分は、水を含有しないか、またはほんの僅かの水しか含有しないことが好ましい。存在してもよい追加の成分としては、以下の助剤および添加剤が挙げられる。
【0072】
可塑剤、例えば、有機カルボン酸またはそれらの無水物のエステル、例えばジオクチルフタレートまたはジイソデシルフタレートなどのフタレート、アジペート、例えば、ジオクチルアジペート、セバケート、ポリオール、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールまたはポリエステルポリオール、有機ホスホン酸およびスルホン酸のエステル、またはポリブテン;溶剤;無機および有機フィラー、例えば、場合によりステアレートでコーティングされていてもよい粉砕または沈降炭酸カルシウム、特に微細コーティング炭酸カルシウム、カーボンブラック、特に、工業的に製造されたカーボンブラック(以下、「カーボンブラック」という)、カオリン、酸化アルミニウム、シリカ、特に、熱分解法による高分散性シリカ、PVC粉末または中空ビーズ;繊維、例えば、ポリエチレンの繊維;顔料、触媒、例えば、ジブチル錫ジラウレートおよびジブチル錫ジアセチルアセトネートなどの有機錫化合物、有機ビスマス化合物またはビスマス錯体;アミノ含有化合物、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、同じく、アミノシラン、特に、上述したアミノシランASおよび第2級アミノシラン、例えば、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルジメトキシメチルシラン、N−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ブチル−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−ブチル−4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−ブチル−4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルジメトキシメチルシラン;レオロジー調整剤、例えば、増粘剤、例えば、尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイト、またはヒュームドシリカ;その他接着促進剤、例えば、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、無水物シラン、または前記のシランと第1級アミノシランとの付加体、および尿素シラン;架橋剤、例えば、シラン官能性オリゴマーおよびポリマー;乾燥剤、例えば、ビニルトリメトキシシラン、α−官能性シラン、例えば、N−(シリルメチル)−O−メチルカルバメート、特に、N−(メチルジメトキシシリルメチル)−O−メチルカルバメート、(メタクリルオキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、N−フェニル−、N−シクロヘキシル−およびN−アルキルシラン、オルトギ酸エステル、酸化カルシウムまたはモレキュラーシーブ;熱、光線およびUV放射線に対する安定剤;難燃剤;界面活性剤、例えば、湿潤剤、流動制御剤、脱気剤または消泡剤;殺菌剤または防黴物質;ならびに、湿気硬化性組成物に典型的に用いられるその他物質。
【0073】
本湿気硬化性組成物は、可塑剤、フィラーおよび触媒を含むことが好ましい。好ましいフィラーは、カーボンブラック、炭酸カルシウム、特に微細コーティング炭酸カルシウム、熱分解法による高分散性シリカおよびこれらフィラーの組み合わせである。組成物は、5重量%〜35重量%、特に、10重量%〜20重量%のカーボンブラックを含有することが好ましい。
【0074】
記載した湿気硬化性組成物は、湿気のない状態で保存される。それは貯蔵安定性であり、すなわち、湿気のない状態で、例えば、数カ月から1年以上に及ぶ使用期限までは、その性能特性や硬化後の特性が変化することなく、ドラム、パウチ、カートリッジ等の好適なパックや設備中で保存できる。貯蔵安定性は、典型的に、粘度、押出し体積または押出し力の測定により求められる。
【0075】
本組成物は、フリーのイソシアネート基を含有しないことが好ましい。この種のイソシアネートを含まない組成物は、毒性学的現地から有利である。
【0076】
記載した湿気硬化性組成物を、少なくとも1つの固体または物品に適用すると、ポリマーおよびシランのシラン基は湿気と接触する。シラン基は、湿気と接触すると加水分解する性質を有している。これは、有機シラノール(1個以上のシラノール基、Si−OH基を含有する有機ケイ素化合物)の形成、続く縮合反応の結果として、オルガノシロキサン(1個以上のシロキサン基、Si−O−Si基を含有する有機ケイ素化合物)の形成を伴う。触媒の使用により促進されるこれらの反応の結果として、組成物は最終的に硬化する。このプロセスは、架橋ともいわれる。硬化反応に必要とされる水は、空気に由来するものであってよく(大気湿度)、または組成物は、例えば平滑剤を用いて塗り広げる、またはスプレーすることによって、水を含有する成分と接触してもよく、または組成物は、適用中、添加水を含有する成分を水性ペーストの形態で有していてもよく、これは例えば、スタティックミキサーで混合される。
【0077】
記載した組成物は、湿気と接触すると急速に硬化する。硬化状態で、組成物は、高伸展性とともに高機械的強度を有し、厳しい湿気に曝露された後でも、良好な接着特性を有する。このことが、この組成物を多くの用途に、特に、弾性接着剤として、弾性シール剤(弾性シーラント)または弾性コーティングとして好適なものにしている。高硬化速度を必要とし、接着特性についての厳しい要求と平行して、強度、初期及び最終強度、ならびに伸展性について厳しい要求が求められる用途に特に好適である。硬化した組成物が、湿気に、特に、熱と湿気の組み合わせに曝露される用途に特に好適である。
【0078】
好適な用途としては、建設または土木工学における構成部材の接着結合、工業製品または消費財、特に、窓、家庭用品、水陸車両、好ましくは自動車、バス、トラック、列車、船等の輸送手段の製造または修理;工業生産や修理における、または建設や土木工学におけるジョイント部、シーム部またはキャビティ部分のシーリング;例えば、オフィス、リビングエリア、病院、学校、倉庫、および駐車場設備のための塗装、ワニス、下塗り剤、シール剤または保護コーティングとして、または床仕上げ剤の形態の、様々な基材のコーティングが例示される。
【0079】
一つの好ましい実施形態において、記載した組成物は、弾性接着剤またはシール剤として用いられる。
【0080】
弾性接着剤として、本組成物は、典型的に、少なくとも200%の破断伸び、弾性シール剤としては、室温で少なくとも500%の破断伸びを有する。
【0081】
接着剤として使用される場合には、本組成物は、基材S1および/または基材S2に適用される。従って、接着剤は、一方の基材、他方の基材、または両基材に適用してよい。その後、結合されるべき部品が接合され、そこで接着剤が硬化する。部品の接合は、両被着体が互いに信頼性よく結合するよう、オープンタイムとして知られている時間内になされるようにしなければならない。
【0082】
シール剤として使用される場合には、本組成物は、基材S1とS2の間に適用され、次に硬化される。典型的に、シール剤は、ジョイント部に注入される。
【0083】
接着剤またはシール剤は、均一に適用されるのが好ましい。
【0084】
両用途において、基材S1は、基材S2と同じであっても異なっていてもよい。
【0085】
好適な基材S1またはS2は、例えば、無機基材、例えば、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、プラスター、および、例えば、花崗岩や大理石などの天然石;アルミニウム、鋼、非鉄金属、亜鉛メッキ金属などの金属または合金;木材、プラスチック、例えばPVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂などの有機基材;粉体塗装された金属または合金などのコーティングされた基材;および塗料や仕上げ剤、特に、自動車のトップコートである。
【0086】
必要であれば、接着剤またはシール剤の適用前、基材を予備処理することができる。この種の予備処理には、特に、物理的および/または化学的クリーニング法、例えば、研磨、サンドブラスト、ブラッシング等、またはクリーナーや溶剤による処理、接着促進剤、接着促進剤溶液または下塗り剤の適用が含まれる。
【0087】
基材S1およびS2が、本発明の組成物により、接着結合またはシールされた後、接着結合またはシールされた物品が得られる。この種の物品は、建築構造物、特に、建設または土木工学における建築構造物、あるいは輸送手段である。この物品は、好ましくは、輸送手段、例えば、水陸車両、特に、自動車、バス、トラック、列車、船またはこれらの構成部材である。特に好ましくは、接着結合またはシールされた物品は、輸送手段、特に、自動車、あるいは、輸送手段の構成部材、特に、自動車である。
【0088】
組成物を、車両構造において弾性結合のための接着剤として用いる場合には、構造粘性特性をもつペースト状の粘稠度(コンシステンシー)を有することが好ましい。この種の接着剤は、好ましくはビードの形態に、適切な装置を用いて基材に適用され、このビードは、実質的に円形または三角形の切断面を有してよい。本接着剤を適用する好適な方法は、例えば、手動または圧縮空気によって行われる従来のカートリッジからの適用、または輸送ポンプまたは押出機による、適切な場合には、適用ロボットによるドラムまたはブリキのペール缶(hobbock)からの適用である。良好な適用特性を有する接着剤は、硬い粘稠度および短い糸引き性を特徴とする。つまり、適用後も適用された形態のままであり、言い換えれば、離れたりすることなく、適用装置を下に戻した後に、あったとしても非常に短い糸引きしか形成せず、そのため、基材は汚染されない。
【0089】
車両構築における弾性結合は、例えば、部品、例えば、プラスチックカバー、トリムストリップ、フランジ、バンパー、運転席またはその他の外装部品の、輸送手段の塗装車体に対する連結箇所の接着、または車体へのガラスの接着取付けである。車両の例には、自動車、トラック、バス、列車および船が含まれる。
【0090】
少なくとも1種のポリマーPと、少なくとも1個の第1級アミノ基を有する少なくとも1種のアミノシランASと少なくとも1つの単官能性または多官能性マイケル受容体とから調製された少なくとも1種の反応生成物Rとを含む本発明の組成物は、意外にも良好な接着特性を有することが分かった。特に、反応生成物Rのない組成物と比べて、例えば、水への長期浸漬や熱蒸気処理(例えば、70℃/100%湿度)の結果として、結合面を厳しい湿気に曝露した後でも、良好な接着特性を示す。
【0091】
[実施例]
試験方法の説明
引張り強度および破断時伸びは、DIN EN 53504(引張り速度:200mm/分)によって、標準条件(23±1℃、50±5%相対湿度)で7日間硬化した厚さ2mmのフィルムで測定した。
【0092】
ラップせん断(重なり剪断)強度は、DIN EN1465に基づく方法で測定した。シーカ(Sika)(登録商標)クリーナー205(シーカシュバイツ(Sika Schweiz)AGより入手可能)で清浄にしておいたフロートガラス板(フロートガラスプラーク)を用いた。ガラス板は、規格に記載されたやり方で配置し、幅10〜12mm、長さ25mm、厚さ4〜5mmの接着剤が充填された重なり部分ができるようにした。硬化のために、試験試料を、7日間、標準条件下(23±1℃、50±5%相対湿度)で保管した。次に、試験試料を破断するまで、20mm/分のクロスヘッド速度により、引き離した。
【0093】
接着力は以下のようにして求めた。
接着力を試験するために、板の形態にある以下の基材を用いた。ドイツ、シェーンブルンのロックオール(Rocholl,Schoenbrunn,Germany)より入手可能な、アルミニウムAlMg3、ガラスセラミックVSG、ESGおよびフロートガラスの組み合わせに基づくガラスセラミック。各板(プラーク)を、シーカ(Sika)(登録商標)クリーナー205で清浄にした。10分のフラッシュオフ時間後、各ポリウレタン組成物の2つのビードをカートリッジから各板に適用した。ビードが付着したその板を、7日間、標準条件下(23±1℃、50±5%相対湿度)で保管し、その後、接着力を1回目に試験した(第1のビード)。次に、その板を完全に水に浸漬して、室温で7日間保管し、接着力を2回目に試験した(第2のビード)。接着力を試験するために、板の表面(結合面)のすぐ上の硬化したビードの一端に切り込みを付けた。ビードの切り込み端を手で保持し、ビードの他端の方向に注意深くゆっくりと板の表面から引いて剥離させた。この剥離の間に、引張った場合に、ビードの端がちぎれるほど接着力が強い場合には、カッターを使用してビードを引く方向に垂直に、切り込みを板の裸の表面まで入れ、こうして一定の区域のビードをはがした。必要な場合には、連続する剥離の間に2から3mmの間隔でこの種の切り込みを繰り返した。こうして、プラーク表面からビード全体を剥離および/または切りとった。ビードを除去した後に、基材表面に残存する硬化した接着剤(凝集破壊)に基づいて、接着特性を評価した。この評価は以下の基準に従って接着領域の凝集部分を概算することにより行った。
1=95%より大きい凝集破壊
2=75〜95%の凝集破壊
3=25〜75%の凝集破壊
4=25%未満の凝集破壊
【0094】
75%未満の凝集破壊の値、すなわち、3と4のスコアの試験結果は不充分と考えられる。
【0095】
用いたポリオールのOH数は、過剰のイソホロンジイソシアネートとの反応、および未反応のイソシアネート基の続いての逆滴定により求めた。OH数の値は、ポリオールに存在する水については補正しなかった。したがって、示したOH数には水が含まれている。
【0096】
〔表1で用いた略記〕
比較は、 比較例
Dynasylan(登録商標)DAMOは、 N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(デグサ(Degussa)社)
【0097】
a)α−官能性シラン基を備えたポリマーPの調製
ポリマー1
湿度なしで、1000gのアクレーム(Acclaim)(登録商標)18200ポリオール(バイエル(Bayer)社、低モノオールポリオキシプロピレンジオール、平均分子量約18000g/モル、OH数7.34mgKOH/g)および21.1gのジェニオシル(Geniosil)(登録商標)XL42(ワッカー(Wacker)社、イソシアナトメチルメチルジメトキシシラン)を、フリーイソシアネートが、FT−IR分光法により検出できなくなくなるまで、90℃で反応させた。α−官能性シラン基を有する得られたポリマーを室温まで冷却し、湿気のない状態に保った。透明無色の生成物の粘度は、20℃で40Pasであった。
【0098】
b)反応生成物Rの調製
反応生成物1
17.9g(100ミリモル)の3−アミノプロピルトリメトキシシラン(シルケスト(Silquest)(登録商標)A−1110、GEアドバンスドマテリアルズ社(GE Advanced Materials)を、湿気なしで、完全に撹拌しながら、徐々に滴下して、17.2g(100ミリモル)のマレイン酸ジエチルと混合し、混合物を2時間攪拌した。これにより、20℃で60mPa・sの粘度の無色の液体が得られた。
【0099】
反応生成物2
17.9g(100ミリモル)の3−アミノプロピルトリメトキシシラン(シルケスト(Silquest)(登録商標)A−1110、GEアドバンスドマテリアルズ社(GE Advanced Materials)を、湿気なしで、完全に撹拌しながら、徐々に滴下して、15.6g(100ミリモル)のテトラヒドロフルフリルアクリレートと混合し、混合物を2時間、60℃で攪拌した。これにより、20℃で270mPa・sの粘度の無色の液体が得られた。
【0100】
反応生成物3
17.9g(100ミリモル)の3−アミノプロピルトリメトキシシラン(シルケスト(Silquest)(登録商標)A−1110、GEアドバンスドマテリアルズ社(GE Advanced Materials)を、湿気なしで、完全に撹拌しながら、徐々に滴下して、13.6g(100ミリモル)の新たに蒸留したジメチルビニルホスホネートと混合し、混合物を2時間、60℃で攪拌した。これにより、20℃で300mPa・sの粘度の無色の液体が得られた。
【0101】
反応生成物4
22.2g(100ミリモル)のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(Dynasylan)(登録商標)DAMO、デグサ社(Degussa))を、湿気なしで、完全に撹拌しながら、徐々に滴下して、5.3g(100ミリモル)のアクリロニトリルと混合し、混合物を2時間、60℃で攪拌した。これにより、20℃で30mPa・sの粘度の無色の液体が得られた。
【0102】
反応生成物5
22.2g(100ミリモル)のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(Dynasylan)(登録商標)DAMO、デグサ社(Degussa))を、湿気なしで、完全に撹拌および水浴冷却しながら、徐々に滴下して、9.9g(100ミリモル)のN,N−ジメチルアクリルアミドと混合し、混合物を2時間、60℃で攪拌した。これにより、20℃で50mPa・sの粘度の無色の液体が得られた。
【0103】
反応生成物6
56重量%のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(Dynasylan)(登録商標)DAMO、デグサ社(Degussa))および44重量%のアロニックス(Aronix)(登録商標)M−8060ポリエステルアクリレート(東亞合成(Toagosei)、日本)を用いて、イン・サイチュで調製した(実施例7の調製)。
【0104】
c)接着剤の製造
ベース処方
真空ミキサー中で、3250gのポリマー1、1170gのジイソデシルフタレート(DIDP、パラチノール(Palatinol)(登録商標)Z、BASF社)、65gのN−(メチルジメトキシシリルメチル)−O−メチル−カルバメート(ジェニオシル(Geniosil)(登録商標)XL65(ワッカー社(Wacker))、975gの微粉砕コーティング炭酸カルシウム(ソカル(Socal)(登録商標)U1S2、ソルベイ社(Solvay)、乾燥したもの)、975gのカーボンブラック(乾燥したもの)および0.4gのジ−n−ブチル錫ジラウレートを、均一なペーストへ加工し、これを湿気のない状態に保った。
【0105】
実施例1〜7
真空ミキサー中で、ベース配合物を、表1中の実施例1〜7について示したシランと室温で均一に混合し、得られた接着剤を、湿気のない状態で、カートリッジに分配した。
【0106】
これらの組成物から、次の日に、記載した上記の方法で、試験試料を作成した。記載した硬化および保管後のこれらの試料の組成物および結果を表1にまとめてある。
【0107】
【表1】

【0108】
表1から、接着剤は全て、硬化した状態で、非常に良好な機械的特性を有していることが分かる。
【0109】
反応生成物Rを含有しない比較例1の接着剤は、標準条件下で7日間保管後、全ての試験基材に対して良好な接着力を示している。しかしながら、その後、試験試料を、室温で水中に7日間入れると、接着力は失われている。
【0110】
実施例2〜7の本発明の接着剤は、比較例1に比べて、水中保管後に、接着力の明らかな改善を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)の少なくとも2個の末端基を有する少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP
【化1】

(式中、
は、1〜8個のC原子を有するアルキル基、特にメチル基またはエチル基であり、
は、1〜5個のC原子を有するアルキル基、特にメチル基またはエチル基もしくはイソプロピル基であり、
aは、0、1または2であり、
Xは、−NH−CO−N(R)−、−NH−CO−S−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−N(R)−CO−NH−および−S−CO−NH−からなる群から選択される二価の基であり、
ここで、Rは水素原子であるか、または1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状炭化水素基であって、前記炭化水素基は場合により環状部分を含んでもよく、また場合によりアルコキシシリル、エーテル、スルホン、ニトリル、ニトロ、カルボン酸エステル、スルホン酸エステルおよびホスホン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を有してもよい)と、
b)少なくとも1個の第1級アミノ基を有する少なくとも1種のアミノシランASと、第1級アミノ基と1,4−付加反応を行える、少なくとも1種のシラン基のないアルケンMとから調製された少なくとも1種の反応生成物Rと
を含む湿気硬化性組成物。
【請求項2】
前記アミノシランASが、式(II)
【化2】

(式中、
は、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状、場合により環状のアルキレン基であり、場合により芳香族部分を有し、また場合によりヘテロ原子、特に、エーテル酸素または第2級アミン窒素を有し、
は、1〜8個のC原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基、特にメチル基であり、
10は、1〜5個のC原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基もしくはイソプロピル基、特にメチル基またはエチル基であり、
bは、0、1または2、好ましくは0または1である)
を有することを特徴とする請求項1に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項3】
前記アミノシランASが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリイソプロポキシシランからなる群から、特に、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリイソプロポキシシランからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項4】
前記シラン基のないアルケンMがマイケル受容体であり、式(III)または(IV)
【化3】

(式中、
は水素原子であるか、または−R、−COORおよび−CNからなる群からの基であり、
は、−COOR、−CONH、−CONHR、−CONR、−CN、−NO、−PO(OR、−SOおよび−SOORからなる群からの基であり、
は水素原子であるか、または−CH、−R、−COORおよび−CHCOORからなる群からの基であり、
ここで、Rは、1〜20個のC原子を有する一価の炭化水素基であり、前記炭化水素基は場合により、ヘテロ原子、特に、エーテル酸素原子を含有してもよい)
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項5】
前記シラン基のないアルケンMがマイケル受容体であり、第1級アミノ基と1,4−付加反応を行える2個以上の官能基を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項6】
前記シラン基のないアルケンMがマイケル受容体であり、2個以上のアクリロイル、メタクリロイルまたはアクリルアミド基を含有することを特徴とする請求項5に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項7】
aが1であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項8】
前記シラン官能性ポリマーPが、式(I)中のXが、−NH−CO−N(R)−または−NH−CO−S−または−NH−CO−O−であり、そして少なくとも1種のポリイソシアネートと少なくとも1種のポリオールとの反応から得られるようなイソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーP11の、α−アミノシラン、α−メルカプトシランまたはα−ヒドロキシシランとの反応から得られるシラン官能性ポリマーP1であって、前記シランは、前記ポリウレタンポリマーP11の前記イソシアネート基に対して化学量論的またはやや超化学量論的に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項9】
前記シラン官能性ポリマーPが、式(I)中のXが、−O−CO−NH−または−N(R)−CO−NH−または−S−CO−NH−であり、そして少なくとも2個のイソシアネート反応基を含有するポリマーP21の、少なくとも1種のα−イソシアネートシランとの反応から得られるシラン官能性ポリマーP2であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項10】
少なくとも2個のイソシアネート反応性基を含有する前記ポリマーP21がポリオール、好ましくはポリオキシアルキレンポリオール、好ましくは不飽和度が0.02meq/g未満、分子量が4000〜30000g/モル、特に8000〜30000g/モルであるポリオール、特にポリオキシアルキレンポリオールであることを特徴とする請求項9に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項11】
前記α−イソシアネートシランが、(イソシアネートメチル)メチルジメトキシシランまたは(イソシアネートメチル)メチルジエトキシシランであることを特徴とする請求項9または10に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項12】
aが1であること、および前記シラン官能性ポリマーPが、α−イソシアネートジアルコキシシランのポリオキシアルキレンジオールP21との反応により調製されるシラン官能性ポリマーP2、特に不飽和度が0.02meq/g未満、分子量が4000〜30000g/モル、特に8000〜30000g/モルであるシラン官能性ポリマーP2であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項13】
前記組成物中の前記反応生成物Rの割合が、0.1重量%〜10重量%、特に0.3重量%〜5重量%であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項14】
前記反応生成物Rが、前記シラン官能性ポリマーPに対して、0.2重量%〜10重量%の量で用いられることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項15】
前記反応生成物Rが、前記アミノシランASおよび前記シラン基のないアルケンMから、イン・サイチュで調製されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の可塑剤および/または少なくとも1種のフィラー、特にカーボンブラックおよび/または前記シラン基の反応のための少なくとも1種の触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項17】
接着剤、シール剤またはコーティング、特に弾性接着剤または弾性シール剤としての、請求項1〜16のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物の使用。
【請求項18】
建設または土木工学における、および工業製品または消費財の、特に輸送手段の、製造または修理における構成部材の接着結合のための請求項17に記載の使用。
【請求項19】
工業生産または修理における、あるいは建設または土木工学における、ジョイント部、シーム部またはキャビティ部分のシーリングのための請求項17に記載の使用。
【請求項20】
基材S1とS2を接着結合する方法であって、
−請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物を、基材S1および/または基材S2に適用する工程と、
−前記基材S1およびS2を、適用した前記組成物を介して接触させる工程と、
−前記組成物を湿気と接触させることにより硬化する工程と
を含み、前記基材S1およびS2が類似している、または互いに異なる、方法。
【請求項21】
−基材S1と基材S2との間に請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物を適用する工程と、
−前記組成物を湿気と接触させることにより硬化する工程と
を含み、前記基材S1およびS2が類似している、または互いに異なる、シーリング方法。
【請求項22】
前記基材S1またはS2の少なくとも一方が、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、プラスター、花崗岩または大理石等の天然石;アルミニウム、鋼、非鉄金属、亜鉛めっき金属等の金属または合金;木材、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂等のプラスチック;粉末コーティング、塗料または仕上げ剤、特に自動車仕上げ剤であることを特徴とする請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
請求項20または22に記載の接着結合方法により製造された接着結合物品。
【請求項24】
請求項21および22のいずれかのシーリング方法により製造されたシール物品。
【請求項25】
建造物、工業製品または輸送手段、特に水陸車両、好ましくは自動車、バス、トラック、列車、船またはこれらの一部であることを特徴とする請求項23または24に記載の接着結合物品またはシール物品。

【公表番号】特表2009−524721(P2009−524721A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551782(P2008−551782)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050700
【国際公開番号】WO2007/085622
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】