説明

色変換層及び発光素子

発光体の光を、より長波長の光を含む光に効率よく変換でき、より劣化が少なく長寿命な色変換層を提供する。 発光体から発せられた光を、より長波長の光に変換する機能を有する蛍光体を含み、ヘーズ値(曇価)が、50〜95%の範囲である色変換層。この色変換層は、発光体からの光を効率よく色変換できるため、色変換層の薄膜化が可能になり、パターニング等の加工性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換層に関する。さらに詳しくは、発光体と組み合わせて使用され、多色発光装置等を構成する色変換層に関する。
【背景技術】
【0002】
発光体の光から、より長波長の光を有する成分を含む光に変換する場合には、発光体の光(例えば、青色領域色の光)を吸収して、より長波長の蛍光を発する色変換層(蛍光体層)が一般に使用される。
この際、発光体からの光が、色変換層に十分吸収されなかったり、蛍光の外部への取り出しが、色変換層内の蛍光体の自己吸収のため阻害される等の理由により、効率よく色変換することができなかった。
【0003】
ところで、色変換層内に光散乱性の粒子を分散させる構成が検討され、その結果、色変換フィルタの寿命が改善されることが開示されている(例えば、特開2002−216962号公報参照。)。
しかしながら、単に色変換層内に光散乱性の粒子を分散させるだけでは、より効率よく色変換させることはできなかった。
【0004】
また、色変換層内の蛍光材料と光散乱性粒子が相互作用をひきおこし、蛍光の消光を引き起こしたり、発光体の光により、経時的に、色変換効率が低下することがあった。
従って、より効率よく色変換できる物性領域を明確にし、ひいては経時劣化の少ない色変換層が求められている。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、発光体の光を、より長波長の光を含む光に効率よく変換でき、より劣化が少なく長寿命な色変換層を提供することを目的とする。
【0006】
この課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究した結果、色変換層のヘーズ値(曇価)を所定の範囲に制御することによって、色変換層の変換効率を向上できることを見出した。
本発明によれば、以下の色変換層、発光素子及び表示装置が提供される。
1.発光体から発せられた光を、より長波長の光に変換する機能を有する蛍光体を含み、ヘーズ値が50〜95%の範囲である色変換層。
2.前記色変換層が、有機物及び/又は無機物の微粒子を含む1に記載の色変換層。
3.発光体から発せられた光を、より長波長の光に変換する機能を有する蛍光体と、前記蛍光体の消光を抑制する材料で被覆されている有機物及び/又は無機物の微粒子と、を含む色変換層。
4.前記色変換層のヘーズ値が、50〜95%の範囲である3に記載の色変換層。
5.前記蛍光体が、前記発光体の青色領域の光を、より長波長の光に変換する1〜4のいずれかに記載の色変換層。
6.前記無機物の微粒子が、無機酸化物、無機窒化物又は無機酸窒化物を含む2〜5のいずれかに記載の色変換層。
7.前記無機物の微粒子が、SiOx、SiNx、SiOxNy、AlOx、TiOx、TaOx、ZnOx、ZrOx、CeOx及びZrSiOx(式中、xは0.1〜2、yは0.5〜1.3を示す)から選択される物質である6に記載の色変換層。
8.前記有機物及び/又は無機物の微粒子が、中空である2〜7のいずれかに記載の色変換層。
9.前記色変換層が、カラーフィルタを積層している1〜8のいずれかに記載の色変換層。
10.前記色変換層が、蛍光体材料とカラーフィルタ材料の混合層である1〜8のいずれかに記載の色変換層。
11.上記1〜10のいずれかに記載の色変換層と、発光体とを有する発光素子。
12.前記発光体が、発光ダイオードである11に記載の発光素子。
13.前記発光体が、エレクロトルミネッセンス素子である11に記載の発光素子。
14.白色に発光する11〜13のいずれかに記載の発光素子。
15.上記11〜14のいずれかに記載の発光素子を含んで構成される表示画面を有する表示装置。
【0007】
本発明では、より効率よく色変換させる物性領域を特定することによって、色変換効率の高い色変換層を提供できる。また、経時劣化の少ない色変換層を提供できる。さらに、色変換層の薄膜化が可能になり、パターニング等の加工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の色変換層の概念図である。
【図2】実施例1−4及び比較例1−4における、微粒子含量とヘーズ値との関係を示す図である。
【図3】実施例1−4及び比較例1−4における、ヘーズ値と赤色変換効率の関係を示す図である。
【図4】実施例5−7及び比較例5−8における、微粒子含量とヘーズ値との関係を示す図である。
【図5】実施例5−7及び比較例5−8における、ヘーズ値と緑色変換効率の関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。
1.色変換層
本発明の色変換層は、発光体から発せられる光から、より長波長の光を有する成分を含む光に変換する機能を有する層である。例えば、発光体の発する光のうち、青色光の成分(波長が400nm〜500nmの領域)が、色変換層を透過することによって、より波長の長い緑色又は赤色の光に変換する。尚、本発明の色変換層は、発光体の青色光成分を一部透過させるとともに、黄色〜赤色変換光を混合させることによって、発光体から発せられる光を白色光に変換することもできる。
【0010】
この色変換層では、ヘーズ値(曇価)が、50%〜95%の範囲であることに特徴がある。ヘーズ値をこの範囲にすることによって、色変換層の色変換効率を向上することができる。色変換層のヘーズ値は、好ましくは、60%〜90%であり、より好ましくは、65%〜85%である。
【0011】
図1は、本発明の色変換層の概念図である。
本発明の色変換層1は、蛍光体が分散したバインダー樹脂部2と微粒子3からなる。発光体からの光4は、色変換層1を通過する際、蛍光体によって長波長の光に変換される。透過光5は、蛍光体によって変換されなかった光と、変換された長波長の光(変換光)とを含む光、又は変換光のみの光である。
【0012】
本発明の色変換層1は、蛍光体が分散したバインダー樹脂部2に微粒子3を混合することによって、ヘーズ値が高い値となるようにしている。ヘーズ値が高い状態は、全光線透過率に占める拡散光線透過率の割合が高いことを意味する。従って、色変換層に入射した光4の多くが層内部で散乱するので、色変換層1内部での光路41が長くなる。
一方、ヘーズ値が低い状態では、全光線透過率に占める平行光線透過率が高い。従って、色変換層1に入射した光の多くは、層内部で散乱することなく、直線的に通過していくので光路長は短い。
【0013】
このように、色変換層1内部での光路長を伸ばすことによって、発光体からの入射光4が、より色変換層1に吸収されるため、効率よく他の色に変換できるようになる。
また、色変換層1の薄膜化が可能になり、パターニング等の加工性が向上する。
さらに、変換光も散乱するため、外部に取り出される変換光が、空気との界面で全反射することが少なくなり、効率よく外部に取り出される効果もあると考えられる。
【0014】
尚、本発明の色変換層は、図1に示した構成に限られない。例えば、後述するように、バインダー樹脂を用いずに蛍光体のみから形成することもでき、微粒子3を添加しなくとも、ヘーズ値が上述の範囲であればよい。
また、本明細書においてヘーズ値、拡散光線透過率、平行光線透過率とは、JIS K7105の規定により測定した値を意味する。
【0015】
色変換層は、少なくとも、発光体から入射する光の波長を変換する蛍光体を含み、必要に応じて、バインダー樹脂、ヘーズ値を調製する有機物又は無機物の微粒子等を含んでいる。
【0016】
蛍光体としては、一般に使用される蛍光色素等の有機蛍光体及び無機蛍光体が使用できる。
有機蛍光体のうち、発光体における近紫外光から紫色の発光を青色発光に変換する蛍光体としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン(Bis−MBS)、トランス−4,4′−ジフェニルスチルベン(DPS)等のスチルベン系色素、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(クマリン4)等のクマリン系色素を挙げることができる。
【0017】
また、青色、青緑色又は白色の発光を緑色発光に変換する場合の蛍光体については、例えば、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフロルメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)、3−(2′−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2′−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)等のクマリン色素、その他クマリン色素系染料であるベ−シックイエロ−51、また、ソルベントイエロ−11、ソルベントイエロ−116等のナフタルイミド色素を挙げることができる。
【0018】
また、青色から緑色までの発光、又は白色の発光を、橙色から赤色までの発光に変換する場合の蛍光色素については、例えば、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリル)−4H−ピラン(DCM)等のシアニン系色素、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジニウム−パ−クロレ−ト(ピリジン1)等のピリジン系色素、ロ−ダミンB、ロ−ダミン6G、ベーシックバイオレッド11等のロ−ダミン系色素、その他にオキサジン系色素等が挙げられる。
【0019】
さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等)も蛍光性があれば蛍光体として選択することが可能である。
また、蛍光体をポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の顔料樹脂中にあらかじめ練り込んで顔料化したものでもよい。
【0020】
無機蛍光体としては、金属化合物等の無機化合物からなり、紫外光から可視光を吸収し、吸収した光よりも長い蛍光を発するものを用いることができる。蛍光体表面には、後述するバインダー樹脂への分散性向上のため、例えば、長鎖アルキル基や燐酸等の有機物で表面を修飾してあってもよい。無機蛍光体を使用することによって、色変換層の耐久性をより向上することができる。具体的には、以下のものを用いることができる。
【0021】
(a)金属酸化物に遷移金属イオンをドープした微粒子
、Gd、ZnO、YAl12、ZnSiO等の金属酸化物に、Eu2+、Eu3+、Ce3+、Tb3+等の、紫外線から可視光を吸収する遷移金属イオンをドープしたもの。
【0022】
(b)金属カルコゲナイド物に遷移金属イオンをドープした微粒子
ZnS、CdS、CdSe等の金属カルコゲナイド化物に、Eu2+、Eu3+、Ce3+、Tb3+等の可視光を吸収する遷移金属イオンをドープしたもの。SやSe等が、後述するバインダー樹脂の反応成分により引き抜かれることを防止するため、シリカ等の金属酸化物や有機物等で表面修飾してもよい。
【0023】
(c)半導体のバンドギャップを利用し、可視光を吸収、発光する微粒子
CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、InP等の半導体微粒子。これらは、特表2002−510866号公報等の文献で知られているように、粒径をナノサイズ化することにより、バンドギャップを制御し、その結果、吸収−蛍光波長を変えることができる。SやSe等が、後述するバインダー樹脂の反応成分により引き抜かれることを防止するため、シリカ等の金属酸化物や有機物等で表面修飾してもよい。
【0024】
例えば、CdSe微粒子の表面を、ZnSのような、よりバンドギャップエネルギーの高い半導体材料のシェルで被覆してもよい。これにより中心微粒子内に発生する電子の閉じ込め効果を発現しやすくなる。
尚、上記の無機蛍光体は、一種単独で使用してもよく、また、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
バインダ−樹脂は、透明な(可視光における光透過率が50%以上)材料が好ましい。例えば、ポリアルキルメタクリレ−ト、ポリアクリレ−ト、アルキルメタクリレ−ト/メタクリル酸共重合体、ポリカ−ボネ−ト、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス等の透明樹脂(高分子)が挙げられる。
【0026】
また、色変換層を平面的に分離配置するために、フォトリソグラフィ−法が適用できる感光性樹脂も選ばれる。例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト材料が挙げられる。また、印刷法を用いる場合には、透明な樹脂を用いた印刷インキ(メジウム)が選ばれる。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノ−ル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂のモノマ−、オリゴマ−、ポリマ−また、ポリメチルメタクリレ−ト、ポリアクリレ−ト、ポリカ−ボネ−ト、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス等の透明樹脂を用いることができる。
【0027】
色変換層のヘーズ値を制御する微粒子としては、有機物及び/又は無機物の微粒子を配合する方法がある。
有機物の微粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等のビニル重合体、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0028】
また、無機物の微粒子としては、無機酸化物、無機窒化物又は無機酸窒化物からなる微粒子が挙げられる。具体的には、SiOx、SiNx、SiOxNy、AlOx、TiOx、TaOx、ZnOx、ZrOx、CeOx及びZrSiOx(式中、xは0.1〜2、yは0.5〜1.3を示す)から選択される物質が挙げられる。この中で、TiOx、ZnOx、ZrOx、CeOxが好ましい。
【0029】
微粒子の表面には、蛍光体の消光を抑制する被覆層を形成することができる。蛍光体の消光を抑制する被覆層とは、例えば、光触媒作用を有する微粒子による色素やバインダー樹脂の破壊を防止するものや、半導体性を有する微粒子を絶縁化するものが挙げられる。このような被覆層を形成するものとして、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、ケイ酸ジルコニア、ケイ酸アルミナ、ホウケイ酸ガラス等のガラスがある。
【0030】
また、微粒子は中空体であってもよい。中空の微粒子を用いると、空気(中空部)とバインダー樹脂との屈折率が大きく(空気の屈折率は1.0であるのに対し、バインダー樹脂では約1.5〜1.6)、光の散乱効果が大きい。また、空気中の酸素が蛍光体の劣化を抑制する場合があるので好ましい。
【0031】
これらの微粒子のうち、屈折率が高い微粒子又は低い微粒子、具体的には屈折率が、2.0〜2.8又は1.0〜1.2であるものが好ましい。このような微粒子を用いることによって、発光体からの光の、色変換層内における光路長を長くすることができ、色変換層が、発光体からの光を、効率よく吸収することができる。また、変換光を散乱して取り出し効率を向上できる。従って、色変換層の変換効率を向上することができる。このような微粒子として、例えば、TiO微粒子(屈折率=2.7)、ZnO(同=2.0)、CeO(同=2.4)、ZrO(同=2.2)、中空シリカ、中空ガラス等が挙げられる。
【0032】
微粒子の一次平均粒径は、ヘーズ値が上記の範囲内であれば、特に制限されないが、1nm以上、100nm未満が好ましく、特に、5nm以上、80nm未満が好ましい。粒径が100nm以上では、色変換層内に均一に分散されず、均一な発光が得られなかったり、フォトリソ等で高精細にパターニングできないおそれがある。一方、1nm未満では、光散乱が十分に生じないおそれがある。尚、色変換層内では、微粒子が凝集して100nm径以上になる場合があるが、一次平均粒径が1nm以上、100nm未満であれば問題はない。
【0033】
また、色変換層における微粒子の添加量は、ヘーズ値が上記の範囲内であれば、特に制限されないが、通常、5重量%より多く、70重量%未満であることが好ましく、特に、10重量%よりも多く、50重量%未満であることが好ましい。5重量%以下では、光散乱が十分に生じないおそれがあり、70重量%以上では、色変換層が機械的に脆くなるおそれがある。
尚、上記の有機物又は無機物の微粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
色変換層の形成方法は、主に以下の2通りがある。
色変換層が、主に蛍光体のみからなる場合は、ガラス板等の基板上に、所望の色変換層のパターンが得られるマスクを介して、真空蒸着で成膜することが好ましい。
色変換層が、蛍光体とバインダー樹脂からなる場合は、蛍光体、バインダー樹脂及び適当な溶剤を、混合、分散又は可溶化させて液状物とし、当該液状物を基板等の上に、スピンコート、ロールコート、キャスト法等の方法で成膜し、その後、フォトリソグラフィー法で所望の色変換層のパターンにパターニングしたり、インクジェット、スクリーン印刷等の方法で所望のパターンにパターニングして、色変換層を形成するのが好ましい。
【0035】
色変換層の厚さは、発光体の発光を十分に受光(吸収)するとともに、色変換の機能を妨げるものでなければ、特に制限されるものではないが、例えば、10nm〜1,000μmとすることが好ましく、0.1μm〜500μmとすることがより好ましく、2μm〜100μmとすることがさらに好ましい。
この理由は、色変換層の厚さが10nm未満となると、発光体の発光を吸収するために高濃度の蛍光体が必要となり、濃度消光を引き起こす場合があるためである。一方、色変換層の厚さが1mmを超えると、光透過率が著しく低下して、外部に取り出せる光量が低下したり、発光体と組み合わせて発光素子としたときに、素子の薄型化が困難となる場合があるためである。
【0036】
本発明の色変換層は、カラーフィルタと積層して使用することが好ましい。カラーフィルタと積層構造とすることによって、色変換層を透過してきた光の色純度をより向上することができる。
カラーフィルタについて、その材料は特に制限されるものではないが、例えば、染料、顔料及び樹脂からなるもの、又は染料、顔料のみからなるものがある。染料、顔料及び樹脂からなるカラーフィルタには、染料、顔料をバインダー樹脂中に溶解又は分散させた固形状態のものを挙げることができる。
カラーフィルタに用いる染料、顔料については、ペリレン、イソインドリン、シアニン、アゾ、オキサジン、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン、ジケトピロロ−ピロール等が好ましく挙げられる。
【0037】
また、本発明の色変換層は、上述した色変換層に含まれる蛍光体材料とカラーフィルタ材料を混合して形成した層であってもよい。これにより、色変換層に、発光体からの光を変換する機能とともに、色純度を向上するカラーフィルタの機能を付与することができるので、構成が簡単になる。
【0038】
2.発光素子
本発明の発光素子は、上述した色変換層と発光体とを組み合わせたものである。
発光体としては、白色光源や青色光源等、紫外−可視光線領域の光を含むものであればよく、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンスをELと略記する。)、無機EL素子、発光ダイオード、蛍光表示管、CRT、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)等が使用できる。この中で、軽量で高効率で発光するため、発光ダイオード及びEL素子が好ましい。
発光ダイオードとしては、例えば、「光エレクトロニクスの基礎と活用−発光ダイオードからフォト・カプラ、赤外線光ファイバの応用までハードウェアデザインシリーズ(8)」;トランジスタ技術編集部、「発光ダイオードとその応用」;スタンレー電気技術研究所、「発光ダイオード」;奥野保男(産業図書)等に記載のものが使用できる。
【0039】
EL素子としては、例えば、国際公開第02/017689号、国際公開第03/043382号、国際公開第03/069957号、国際出願JP03/02708号等に記載されているEL素子が使用できる。
【0040】
色変換層に発光体と組み合わせる方法は、例えば、色変換層を構成した基板と、発光体を形成した基板を接着剤により結合する方法、前記色変換層を構成した基板に発光体を積層する方法、基板上に色変換層と発光体を並置する方法、発光体を色変換層でモールディングする方法等、発光素子において一般的な方法で組み合わせることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
色変換層の評価は、以下の方法で行った。
(1)ヘーズ値(曇価)
HGM−20DP(スガ試験機社製)を使用し、JIS K7105に基づいて測定した。
(2)発光輝度、CIE色度座標
色彩色差計(CS100、ミノルタ製)により測定した。
(3)発光スペクトル
分光放射輝度計(CS−1000、ミノルタ製)により測定した。
【0042】
実施例1
(1)色変換基板(透明基板と赤色変換層)の作製
赤色変換層の材料として、クマリン6:70mg、ベーシックバイオレット11:30mg、ローダミン6G:30mg、バインダー樹脂として、メタクリル酸とメチルメタクリレートとの共重合体(平均分子量3万、酸価85、屈折率1.5)のプロピレングリコール−メチルエーテル−アセテート溶液(固形分濃度35%):28.4g及びシクロヘキサノン:17gを混合した。
【0043】
この混合液(固形分濃度22%、色素濃度1.3%対固形分):5.0gに、アルミナコートした酸化チタン微粒子(テイカ社製MT500HD、一次平均粒径30nm、酸化チタンは屈折率2.7):90mgを添加し、激しく攪拌して、分散液を調製した。その際の固形分に対するアルミナコートした酸化チタン微粒子の含量は7.5wt%である。
この分散液を、25mm×50mm×1.1mm厚のガラス基板(ジオマテック社製青板)上にスピンコートし、140℃オーブンで30分乾燥させ、色変換基板(色変換層の膜厚10μm)を作製した。
この基板のヘーズ値は、58.5%であった。
【0044】
尚、ガラス基板のヘーズ値は0.1%と低いため、得られる測定値への基板の影響は小さい。従って、得られる測定値は色変換層の値とすることができる。
【0045】
さらに、赤色変換効率の測定を簡易にするため(赤色変換の発光のみを取出すため)、ガラス基板上に赤色カラーフィルタ(富士フィルムアーチ製CRY−S840B)を形成し、その上に前記と同様に、赤色変換層を形成した。
尚、赤色カラーフィルタ基板のヘーズ値は1.9であり、赤色カラーフィルタのヘーズ値はほとんど無視できる。
【0046】
(2)発光体(有機EL素子)の作製
ITO膜(130nm厚、スパッタリング法で成膜)付25mm×75mm×1.1mm厚のガラス基板(ジオマテック社製青板)を準備し、本基板を純水及びイソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、Airブローにて乾燥後、UV洗浄した。
次に、有機蒸着装置(日本真空技術製)に基板を移動し、基板ホルダーに基板を固定した。
尚、あらかじめ、それぞれのモリブテン製の加熱ボートに、正孔注入材料として、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)、発光材料として、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、電子注入材料として、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)をそれぞれ仕込み、さらに、陰極としてAlLi合金(Li濃度:10atm%)をタングステン製フィラメントに装着した。
【0047】
その後、真空槽を5×10−7torrまで減圧にしたのち、以下の順序で正孔注入層から陰極まで、途中で真空を破らず一回の真空引きで順次積層していった。
まず、正孔注入層として、MTDATAを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で、膜厚60nmを形成し、NPDを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で、膜厚20nm形成した。
発光層としては、DPVBiを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で、膜厚50nm形成した。電子注入層としては、Alqを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で、膜厚20nm蒸着し、さらに、陰極としては、AlとLiを、それぞれ蒸着速度0.5〜1.0nm/秒で蒸着し、膜厚を150nmとした。
【0048】
このようにして、基板上に有機EL素子を作製後、乾燥窒素を流通したグローブボックスに、基板を大気にふれないように移動した。このグローブボックス内にて、封止基板の青板ガラスで表示部を被覆し、表示部周辺部にカチオン硬化性の接着剤(TB3102:スリーボンド製)を塗布後、光硬化させて封止した。
次に、ITO電極と陰極の間にDC8Vの電圧を印加(ITO電極:(+)、陰極:(−))したところ、各電極の交差部分(画素)が発光した。
発光輝度は、300cd/mであり、CIE色度座標が、X=0.16、Y=0.15の青色発光が得られた。発光スペクトルを確認すると、発光ピーク波長は470nmであった。
【0049】
(3)発光素子の作製
上記(1)で作製した赤色カラーフィルタ付の色変換基板の色変換層側と、上記(2)で作製した有機EL素子のガラス基板側(ITO電極側)を対向させ、間にシリコーンオイルを介在させて貼り合せ、発光素子とした。
【0050】
有機EL素子を発光させ、色変換基板から取出される発光について測定したところ、CIE色度座標が、X=0.63、Y=0.36である赤色発光が得られた。また、発光輝度が108cd/m(変換効率36.0%)であり、高い変換効率であることが確認できた。
尚、色変換効率は以下の式で計算した。
色変換効率(%)=(変換後の輝度/発光体の輝度)×100
実施例1及び後述する実施例2−4、比較例1−4で作製した色変換層の微粒子含量、ヘーズ値及び色変換効率を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例2〜4 比較例1−4
アルミナコートした酸化チタン微粒子の添加量を変えた他は、実施例1と同様にして赤色変換層を作製し、評価した。
【0053】
実施例1−4及び比較例1−4において、微粒子含量とヘーズ値との関係を図2に示す。また、ヘーズ値と赤色変換効率の関係を図3に示す。
このように、酸化チタン微粒子の含量を調製することによって、ヘーズ値が制御でき、しかも、ヘーズ値が50%以上の領域において、赤色変換効率が高くなっていることが確認できた。
【0054】
実施例5
緑色変換層の材料として、クマリン6:70mg、バインダー樹脂としてメタクリル酸とメチルメタクリレートとの共重合体(平均分子量3万、酸価85)のプロプレングリコール−メチルエーテル−アセテート溶液(固形分濃度35%):28.4g、シクロヘキサノン17gを混合した。
【0055】
この混合液(固形分濃度22%、色素濃度0.7%対固形分):5.0に、アルミナコートした酸化チタン微粒子(テイカ社製MT500HD、一次平均粒径30nm):90mg添加し、激しく攪拌して、分散液を調製した。
この際の固形分に対するアルミナコートした酸化チタン微粒子の含量は7.5wt%である。
以下、実施例1において、変換効率測定用に緑色カラーフィルタ(富士フィルムアーチ製、CG−8510L)を用いた他は、同様に色変換層を作製し、評価を行なった。
【0056】
この色変換層の変換効率は98.8%、CIE色度座標は、X=0.22、Y=0.63であり、高い変換効率で緑色の発光が得られた。
実施例5及び後述する実施例6、7、比較例5−8で作製した色変換層の微粒子含量、ヘーズ値及び色変換効率を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例6,7 比較例5−8
アルミナコートした酸化チタン微粒子の添加量を変えた他は、実施例5と同様にして緑色変換層及び発光素子を作製し、評価した。
【0059】
実施例5−7及び比較例5−8において、微粒子含量とヘーズ値との関係を図4に示す。また、ヘーズ値と緑色変換効率の関係を図5に示す。
このように、酸化チタン微粒子の含量を調製することによって、ヘーズ値が制御でき、しかも、ヘーズ値が50%以上の領域において、緑色変換効率が高くなっていることが確認できた。
【0060】
実施例8
[微粒子表面処理効果]
実施例3の赤色変換基板(赤色変換効率37.8%)を、さらにオーブンで200℃、30分間熱処理した。その結果、赤色変換効率が36.2%と若干低下した。
さらに、この赤色変換基板に、青色LED(GaN系)光(400cd/m)を窒素中で連続照射して、赤色変換効率及び色度の経時変化を測定した。1000時間の青色LED光照射で、赤色変換効率の変化率が−5%以内、色度の変化は、CIEx、CIEyいずれも0.005以内であった。
このように、熱処理及び青色LED光照射試験による赤色変換基板の変換効率及び色の変化は小さいことが確認できた。
【0061】
比較例9
実施例3の赤色変換基板において、アルミナコートしていない酸化チタン微粒子(一次平均粒径20nm)を添加した赤色変換層(固形分に対する酸化チタン微粒子の含量は20wt%)を用いた以外は、同一の条件で赤色変換層を作製した。このときの赤色変換基板のヘーズ値は10.1であり、赤色変換効率は31.2%であった。
この基板を、実施例8と同様に、オーブンで200℃、30分間熱処理した。その結果、赤色変換効率が26.2%と、かなり低下した。
さらに、この赤色変換基板に、実施例8と同じ色LED光照射試験した結果、赤色変換効率の変化率は−10%、色度の変化は、CIExが0.009、CIEyが0.008となり、大きく変化した。
熱処理及び青色LED光照射試験による色変化は、ヘーズ値が小さいことも一因ではあるが、添加した酸化チタン微粒子の表面にアルミナコートされていないため、酸化チタン表面が活性であり、酸化チタンの光触媒作用等により、赤色変換色素の消光や劣化を引き起こしたものと推定される。
【0062】
実施例9
[発光体との組み合わせによる白色発光素子]
実施例3において、赤色変換層の膜厚を10μmから4μmに変更した以外は、同一の条件で色変換基板を作製した。この基板のヘーズ値は、66.3%であった。
この基板を、実施例1と同一条件で有機EL素子と組み合わせて発光素子とした。有機EL素子を発光させ、色変換基板から取り出される発光について測定したところ、CIE色度座標が、X=0.28、Y=0.28である白色発光が得られた。
【0063】
実施例10
実施例9において、青色LED(GaN系)を発光体として用いた他は、同様にして発光素子を得た。
青色LEDを発光させ、色変換基板から取り出される発光について測定したところ、CIE色度座標が、X=0.28、Y=0.28である白色発光が得られた。
【0064】
比較例10
実施例2において、赤色変換層の膜厚を10μmから4μmに変更した以外は、同一の条件で色変換基板を作製した。この基板のヘーズ値は、39.9%であった。
この基板を、実施例1と同一条件で有機EL素子と組み合わせて発光素子とした。有機EL素子を発光させ、色変換基板から取り出される発光について測定したところ、CIE色度座標が、X=0.25、Y=0.25であり、十分な白色発光が得られなかった。
尚、本例において、赤色変換層の膜厚を4μmから5μmに厚膜化すると、CIE色度座標が、X=0.28、Y=0.28の白色光が得られた。即ち、同じ白色光を得るためには、ヘーズ値の高い実施例9では、赤色変換層は4μm、ヘーズ値の低い本例では、赤色変換層は5μm必要ということになり、ヘーズ値を高くすることで色変換層の薄膜化が可能になることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の色変換層は、発光体からの光を効率よく色変換できる。また、色変換層の薄膜化が可能になり、パターニング等の加工性が向上する。さらに、経時劣化の少ない色変換層である。
従って、工業用、民生用(携帯電話、車載、家電)の表示装置(ディスプレイ)、照明、装飾品等に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体から発せられた光を、より長波長の光に変換する機能を有する蛍光体を含み、ヘーズ値が50〜95%の範囲である色変換層。
【請求項2】
前記色変換層が、有機物及び/又は無機物の微粒子を含む請求項1に記載の色変換層。
【請求項3】
発光体から発せられた光を、より長波長の光に変換する機能を有する蛍光体と、
前記蛍光体の消光を抑制する材料で被覆されている有機物及び/又は無機物の微粒子と、
を含む色変換層。
【請求項4】
前記色変換層のヘーズ値が、50〜95%の範囲である請求項3に記載の色変換層。
【請求項5】
前記蛍光体が、前記発光体の青色領域の光を、より長波長の光に変換する請求項1〜4のいずれかに記載の色変換層。
【請求項6】
前記無機物の微粒子が、無機酸化物、無機窒化物又は無機酸窒化物を含む請求項2〜4のいずれかに記載の色変換層。
【請求項7】
前記無機物の微粒子が、SiOx、SiNx、SiOxNy、AlOx、TiOx、TaOx、ZnOx、ZrOx、CeOx及びZrSiOx(式中、xは0.1〜2、yは0.5〜1.3を示す)から選択される物質である請求項6に記載の色変換層。
【請求項8】
前記有機物及び/又は無機物の微粒子が、中空である請求項2〜4のいずれかに記載の色変換層。
【請求項9】
前記色変換層が、カラーフィルタを積層している請求項1〜4のいずれかに記載の色変換層。
【請求項10】
前記色変換層が、蛍光体材料とカラーフィルタ材料の混合層である請求項1〜4のいずれかに記載の色変換層。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれかに記載の色変換層と、
発光体とを有する発光素子。
【請求項12】
前記発光体が、発光ダイオードである請求項11に記載の発光素子。
【請求項13】
前記発光体が、エレクロトルミネッセンス素子である請求項11に記載の発光素子。
【請求項14】
白色に発光する請求項11に記載の発光素子。
【請求項15】
請求項11に記載の発光素子を含んで構成される表示画面を有する表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/034582
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514389(P2005−514389)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013610
【国際出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】