説明

色変換装置および撮影装置

【課題】 色覚障害者にも認識可能な画像を迅速に自動的に表示する。
【解決手段】 輝度、色差Y、Cr、Cbのカラー画像信号を生成し、カラー画像信号に基づいて被写体像をLCDに表示する。輝度変換モード、赤変換モード、緑変換モードのいずれかが設定された場合、撮影により得られる被写体像の色特性が色覚障害者に認識障害となっているか判断される(ステップS204、S209、S213)。認識障害になっていると判断されると、輝度反転を含めて色反転処理を施す(ステップS205、S210、S214)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像表示可能なカメラ等の撮影装置に関し、特に、色覚障害者に対して色認識の障害を取り除く画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる色盲、色弱など、色情報に関して視覚機能に障害をもつ色覚障害者は、特定色の視覚認識が難しく、また、高輝度の被写体像に対して認識障害をもつ。したがって、赤色、緑色などの特定色の割合が大きい、あるいは高輝度の被写体像を画面上で見た場合、表示内容を認識することが難しい。そのため、色覚障害者にもカラー画像を色覚正常者と同様に認識できるように、デジタルカラー画像に対して色変換処理を施すアルゴリズムが提案されている(特許文献1参照)。そこでは、あらかじめ色覚障害者の症状(タイプ)を入力し、記録されたカラー画像に対してYu**空間に基づく色度の座標位置を移動させ、色覚障害者の認識可能な色へ変換する。
【特許文献1】特開2004−266821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
デジタルカメラなどの携帯機器において、観察を目的として撮像した被写体像を表示装置の画面上に表示をする場合、上記色変換処理のアルゴリズム計算が複雑であるため、色変換処理に時間がかかって、色変換処理した画像を迅速に表示することが難しく、また、設計仕様上制約のある携帯機器に上記色変換処理のプログラムを組み込むことが難しい。特に、動画像をリアルタイムで表示する場合、簡易、迅速な計算処理システムが要求される。また一度色変換処理が設定されてしまうと、色変換する必要がない分光反射特性をもつ被写体を撮影している場合、色変換処理によって認識しづらい画像を表示してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の撮影装置は、被写体像を表示装置上で表示可能なデジタルスチルカメラ、ムービーカメラ、カメラ付携帯電話、カメラ付携帯情報端末など携帯型撮影装置に適用される。特に、動画像をリアルタイムで表示可能な撮影装置として適用可能である。撮影装置は、撮像素子から読み出される画素信号に基づいてカラー画像信号を生成する信号処理手段と、カラー画像信号に基づき、被写体像を表示する表示手段とを備える。カラー画像信号としては、例えばR、G、Bの画像信号、あるいは輝度、色差Y、Cr、Cbのカラー画像信号が生成される。
【0005】
本発明の撮影装置は、被写体像の色特性が色覚障害者にとって認識障害となっているか否かを判断する色検出手段を備える。色覚障害者には様々な症状があるが、主な症状としては色盲、色弱に分けられる。色盲の人を考慮する場合、色検出手段は、目の網膜にある3つの錐体(L錐体、M錐体、S錐体)のうち少なくともいずれか1つの錐体に応じた色成分が、被写体像全体の中で所定の割合を超えているか判断すればよい。第1色盲の場合にはL錐体に応じた赤〜黄緑の波長領域の色成分、第2色盲の場合にはL錐体に応じた緑〜黄緑の波長領域の色成分、第3色盲の場合にはL錐体に応じた紫〜青の波長領域の色成分に関して判断すればよい。割合としては、被験者に対する実験等から経験的に所定割合を導けばよいが、例えば、半分の割合を超えれば被写体像の認識が困難と判断する。2つ以上の錐体がない全色盲の場合、各錐体の色成分について別々に割合を判断し、少なくともいずれか一方が所定割合を超えれば色変換するように構成すればよい。
【0006】
一方、色弱である場合、明度変化に敏感であるため、被写体像全体の中で高輝度な画素が多くなると認識障害が生じる。したがって、色検出手段は、被写体像全体の中で高輝度の割合が所定割合を超えているか否かを判断すればよい。ここでの所定割合も経験的に導かれるが、例えば6割に定められる。
【0007】
信号処理手段は、被写体像の色特性が認識障害となる色特性である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施す。色反転処理は、色空間上その空間基準位置、基準軸に対して対照的な位置へ色を移行し、各タイプの色覚障害者にとって認識可能な位置へ移動する。また、ここでの色反転処理は、輝度反転処理を含む。このような簡易なアルゴリズムで実現できる色反転処理により、被写体像のリアルタイムの色情報に基づいて自動的に色反転処理が実行され、認識障害のある画像の場合には色反転処理が施され、そうでない場合にはそのまま表示される。
【0008】
色弱、第1、第2色盲者いずれに対しても対応し、色特性の判別を迅速に行うため、信号処理手段は、カラー画像信号として輝度、色差信号を生成するのがよい。色検出手段は、輝度信号、色差信号に基づいて色成分の割合を判断するのがよい。輝度信号は色弱者用に使用され、色差信号は色盲者について使用される。このとき、色検出手段は、Yu**空間に従って色成分の割合を判断すればよい。例えば、被写体像におけるL錐体、M錐体、S錐体に応じた色成分の割合は、Yu**色空間のその色成分に対応する所定領域内にある画素分布数によって求められる。
【0009】
色反転処理された被写体像を表示している場合、記録する画像も反転処理させた画像であるのがよい。そのため、撮像素子から読み出される画素信号に基づいて記録用カラー画像信号を生成し、画像データとして記録する記録手段を備えた撮影装置において、信号処理手段は、色反転させた被写体像を表示していた場合、記録用カラー画像信号に対して色反転処理を施す。そして、色反転処理させたカラー画像信号を記録する。
【0010】
ユーザが、自身の色覚障害の症状に合わせて色検出判断の仕方をセッティングできるのがよい。例えば、色弱者用に色反転処理の判断を実行する輝度変換モード、色盲者用に色反転処理の判断を実行する特定色変換モードのいずれかを選択、設定するための操作部材を設け、操作部材に対する操作に従い、いずれかの変換モードを設定する設定手段を設ける。色検出手段は、輝度変換モードに設定された場合、被写体像全体の中で高輝度の割合が所定割合を超えているか否かを判断し、色変換モードに設定された場合、被写体像全体の中で3つの錐体のうち少なくともいずれか1つに応じた色成分の割合が所定割合を超えているか否かを判断する。これにより、色弱者が使用する場合には輝度情報だけに基づいて色反転処理の判断が行われ、また、色盲者の使用する場合には色成分だけに基づいて色反転処理の判断が行われる。
【0011】
本発明の色変換装置は、撮像素子から読み出される画素信号に基づいて生成されるとともに、被写体像に対応するカラー画像信号の色特性が色覚障害者にとって認識障害となっているか否かを判断する色検出手段と、認識障害となる色特性である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施す色反転処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の色変換方法は、撮像素子から読み出される画素信号に基づいて生成されるとともに被写体像に対応するカラー画像信号の色特性が、色覚障害者にとって認識障害となっているか否かを判断し、認識障害となる色特性である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施すことを特徴とする。
【0013】
本発明のプログラムは、撮像素子から読み出される画素信号に基づいて生成されるとともに、被写体像に対応するカラー画像信号の色特性が色覚障害者にとって認識障害となっているか否かを判断する色検出手段と、認識障害となる色特性である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施す色反転処理手段とを機能させることを特徴とする。
【0014】
本発明の撮影装置は、撮像素子から読み出される画素信号に基づいてカラー画像信号を生成する信号処理手段と、カラー画像信号に基づき、被写体像を表示する表示手段と、被写体像全体の中で高輝度の割合が認識障害となる所定割合を超えているか否かを判断する色検出手段とを備え、信号処理手段が、認識障害となる割合である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施すことを特徴とする。
【0015】
本発明の撮影装置は、撮像素子から読み出される画素信号に基づいてカラー画像信号を生成する信号処理手段と、カラー画像信号に基づき、被写体像を表示する表示手段と、被写体像全体の中で3つの錐体のうち少なくともいずれか1つに応じた色成分の割合が色覚障害者にとって認識障害となる所定割合を超えているか否かを判断する色検出手段とを備え、信号処理手段が、認識障害となる割合である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、色覚障害者にも認識可能な画像を迅速かつ自動的に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態であるデジタルカメラについて説明する。
【0018】
図1は、デジタルカメラのブロック図である。
【0019】
デジタルカメラ10は、撮影時において動画像(スルー画像)を表示可能なデジタルスチルカメラであり、CPUを含むシステムコントロール回路50は、デジタルカメラ10を制御し、カメラ全体の処理動作を実行するプログラムがROM(図示せず)に格納されている。レリーズ半押しスイッチ12、モードスイッチ13、レリーズ全押しスイッチ14、実行スイッチ16、EEPROM40、その他回路がシステムコントロール回路50に接続されており、メインボタン(図示せず)に対する操作によって電源がONになると、各回路へ電源が供給される。
【0020】
実行スイッチ16、設定スイッチ18では、それぞれカメラ10の背面に設けられた実行ボタン、十字ボタン(いずれも図示せず)に対する操作に応じてシステムコントロール回路50へ信号が送られる。この実行スイッチ16、設定スイッチ18からの信号に基づき、モード設定が行われる。レリーズ半押しスイッチ12、レリーズ全押しスイッチ14では、レリーズボタン(図示せず)の半押し、全押しが検出される。モードスイッチ13では、モードボタン(図示せず)に対する操作に従って信号がシステムコントロール回路50へ出力される。ここでは、撮影モード、撮影設定モード、再生モード、色反転モードなどが選択、設定される。色変換スイッチ20では、カメラ10の上面に設けた色変換ボタン(図示せず)の操作が検出される。
【0021】
色反転モードがモードボタンによって設定された状態において、輝度変換モード、赤変換モード、緑変換モードが選択可能である。色反転モードは、色覚障害を持つ人に対して色覚正常者と同じ画像情報を認識出来るように色変換処理するモードである。色弱の人に対しては輝度変換モード、L錐体の色成分に関する色覚障害(第1色盲)者に対しては赤変換モード、M錐体の色成分に関する色覚障害者(第2色盲)に対しては緑変換モードが設定可能である。色反転モードが設定されると、輝度変換モード、赤変換モード、緑変換モードを選択、設定する画面がLCD34に表示される。
【0022】
撮影モードが設定された場合、動画像を表示するための処理が実行される。撮影光学系22を通った光がCCD24に到達すると被写体像がCCD24に形成され、光電変換によって被写体像に応じたアナログ画像信号(画素信号)が発生する。アナログ画像信号は、CCDドライバ23によってCCD24から所定時間間隔で順次読み出される。ここでは、カメラ背面に設けられたLCD34の画素数に従い、CCD24に蓄積された電荷が間引きされながら読み出される。CCD24から読み出されたアナログ画像信号は、CDS回路26においてノイズ除去され、A/D変換器28においてR、G、Bのデジタル信号に変換される。
【0023】
システムコントロール回路50内の信号処理回路30では、ホワイトバランス調整処理、ガンマ補正処理など様々な処理がデジタル画像信号に対して施される。そして、マトリクス変換処理により、輝度、色差Y、Cb、Crのカラー画像信号が生成される。生成された輝度、色差Y、Cb、Crのカラー画像信号は、DRAM30Aに一時的に格納され、画像データとしてシステムコントロール50内のLCDドライバ32へ送られる。LCDドライバ32は、画像データに基づいてLCD34を駆動する。その結果、被写体像が動画像としてLCD34に表示される。撮影設定モードにおいてグレースケール画像が設定されていると、色差Cb、Crの画像信号の値は0に設定され、輝度信号Yに基づくカラー画像信号によって画像が表示される。
【0024】
レリーズボタンが半押しされると、レリーズ半押しスイッチ12によって半押しが検出され、CCD24から読み出される画像信号に基づいて被写体の明るさが検出されるとともに、露出制御部37において絞り値など露出値が演算される。焦点調整のため撮影光学系22内のフォーカシングレンズが駆動機構36によって駆動される。さらにレリーズボタンが全押しされてレリーズ全押しスイッチ14がONになると、撮影動作が実行される。すなわち、撮影光学系22内のレンズシャッタ21が駆動機構36によって駆動され、被写体像がCCD24に形成されると1フレーム分の画像信号(画素信号)が間引きされることなくCCD24から読み出される。読み出された画像信号は、CDS回路26、A/D変換器28、信号処理回路30において処理され、輝度、色差Y、Cb、Crのカラー画像信号は、一時的に画像データとしてDRAM30Aに格納される。それとともに、システムコントロール回路50では、画像データに対して圧縮処理が施され、圧縮画像データがI/F回路38を介してメモリカード39に格納される。
【0025】
モードボタンに対する操作により再生モードが設定された場合、ユーザによって選択された圧縮画像データがDRAM30Aから読み出され、間引き処理が施される。間引き処理処理された画像データに基づいてLCDドライバ32がLCD34を駆動し、その結果、選択された静止画像がLCD34に表示される。
【0026】
図2は、色反転モードにおけるモード設定処理を示したフローチャートである。モードボタンにおいて色反転モードが設定されると開始される。
【0027】
ステップS101では、モードボタンに対する操作によって色反転モード以外のモードに切り替えられたか否かが判断される。色反転モード以外のモードに切り替えられたと判断されると、このまま処理は終了する。一方、色反転モードが維持されていると判断されると、ステップS102へ進む。
【0028】
ステップS102では、十字ボタンに対する操作によって輝度モードが選択されたか否かが判断される。輝度モードは、3種類の錐体のうち感度曲線がずれている色弱の人のために設定されたモードであり、被写体像の輝度が大きい、すなわち画面表示が明るすぎると、LCD34に表示される被写体像に対して輝度を含めた色反転を施し、色弱の人にも画像が認識可能となる。ステップS102において輝度モードが選択されたと判断されると、ステップS103へ進む。
【0029】
ステップS103では、実行ボタンが操作されたか否かが判断される。実行ボタンが操作されていないと判断されると、ステップS102へ戻る。一方、実行ボタンが操作されたと判断されると、ステップS104へ進み、輝度モードが設定される。ステップS104が実行されると、モード設定処理が終了する。
【0030】
一方、ステップS102において、輝度モードが選択されていないと判断されると、ステップS105へ進む。ステップS105では、十字ボタンに対する操作によって赤変換モードが選択されているか否かが判断される。赤変換モードは、赤色に応じたL錐体がない視覚障害者(第1色盲者)のために設定されたモードである。被写体像の赤色〜黄緑色成分が多くなると、被写体像に対して色反転を施し、第1色盲者にも被写体像が認識可能となる。
【0031】
ステップS105において、赤変換モードが選択されていると判断されると、ステップS106へ進む。ステップS106では、実行ボタンが操作されたか否かが判断される。実行ボタンが操作されていないと判断されると、ステップS105へ戻る。一方、実行ボタンが操作されたと判断されると、ステップS107へ進み、赤変換モードが設定される。ステップS107が実行されると、モード設定処理が終了する。
【0032】
一方、ステップS105において、赤変換モードが選択されていないと判断されると、ステップS108へ進む。ステップS108では、十字ボタンに対する操作によって緑変換モードが選択されているか否かが判断される。緑変換モードは、緑色に応じたM錐体がない視覚障害者(第2色盲者)のために設定されたモードである。被写体像の緑色〜黄緑色成分が多くなると、被写体像に対して色反転を施し、第2色盲者にも被写体像が認識可能となる。
【0033】
ステップS108において、緑変換モードが選択されていないと判断されると、ステップS101へ戻る。一方、ステップS108において緑変換モードが選択されていると判断されると、ステップS109へ進む。ステップS109では、実行ボタンが操作されたか否かが判断される。実行ボタンが操作されていないと判断されると、ステップS108へ戻る。一方、実行ボタンが操作されたと判断されると、ステップS110へ進み、緑変換モードが設定される。ステップS110が実行されると、モード設定処理が終了する。
【0034】
図3、図4は、撮影動作処理を示したフローチャートである。図5は、Yu**色空間において赤変換モードにおける画素分布を示した図である。図6は、Yu**色空間において緑変換モードにおける画素分布を示した図である。撮影モードが設定されると、撮影動作処理が実行開始される。
【0035】
ステップS201では、R、G、Bのデジタル画像信号に基づいてが生成された輝度、色差Y、Cr、Cbのカラー画像信号が抽出される。輝度、色差Y、Cr、Cbカラー画像信号は以下の式に基づいて生成される。

Y=0.2999R+0.587G+0.114B
Cr=0.169R−0.331G−0.500B
Cb=0.500R−0.419G−0.081B
・・・・(1)

ステップS201が実行されると、ステップS202へ進む。
【0036】
ステップS202では、色覚障害者のため色反転モードが設定されているか否かが判断される。色反転モードが設定されていないと判断されていると、ステップS217へ進む。一方、色反転モードが設定されていると判断されていると、ステップS203へ進み、輝度変換モードが設定されているか否かが判断される。
【0037】
ステップS203において輝度変換モードが設定されていると判断されると、ステップS204へ進み、輝度に関して以下の式が満たされているか、すなわち色反転処理が必要であるか否かが判断される。

NYs≧0.6NT ・・・・(2)

ここで、NYsは、カラー画像信号によって構成される被写体像に関して輝度値が180を超えている画素の数を示し、NTは被写体像全体の画素数を示す。輝度Yの値は、256段階で表され、0〜255のうちいずれかの値に定められる。
【0038】
ステップS204において、(2)式が満たされていると判断されると、ステップS205へ進み、色反転処理が実行される。色反転処理は以下の式に従って実行される。

(Y’、Cr’、Cb’)=(255−Y、−Cr、−Cb) ・・・・(3)

そして、ステップS206では、フラグFが1に設定される。フラグFは、画像記録時の色反転処理の実行/非実行を切り替えるために設定される変数である。
【0039】
一方、ステップS204において、(2)式が満たされないと判断された場合、ステップS207へ進み、フラグFが0に設定される。ステップS206もしくはステップS207が実行されると、ステップS217へ進む。
【0040】
一方、ステップS203において輝度変換モードが設定されていないと判断されると、ステップS208へ進み、赤変換モードが設定されているか否かが判断される。赤変換モードが設定されていると判断されると、ステップS209へ進み、被写体像に関してL錐体に応じた赤色〜黄緑色の画素の割合が以下の式を満たすか、すなわち色反転処理が必要であるか否かが判断される。

NYr/NT>0.5 ・・・・(4)

ここで、NYrは、カラー画像信号によって構成される被写体像に関して、図5に示す領域A内の色度を有する画素の数を示し、NTは、被写体像全体の画素数を示す。
【0041】
図5には、Yu**色空間(x,y)(=(Cr/Y,Cb/Y))が示されており、色分布が二次元座標系で規定されている。ただし、(x、y)の値は、(1)式の値そのものではなく、256階調で表され、−128<(x、y)<128のうちいずれかの値に定められる。Yu**色空間において、赤色〜黄緑色成分に応じた領域Aは第2象限内にあり、領域Aは、以下の式によって定められる。

y>−x (y>0) ・・・(5)

ここでは、被写体像の中で領域A内の画素数の割合が半分を超えるか否かが判断される。
【0042】
ステップS209において、被写体像に関して(4)式を満たさない、すなわち領域A内の色をもつ画素の割合が全体の半分以下であると判断されると、ステップS212へ進み、フラグFが0に設定される。一方、ステップS209において、(4)式を満たす、すなわち領域A内の色をもつ画素の割合が半分を超えると判断された場合、ステップS210へ進み、色反転処理が(3)式に基づいて実行される。色反転処理が実行されると、Yu**色空間の色度(x、y)は、色空間の原点に対して対照的な位置へ移動する。そしてステップS211では、フラグFが1に設定される。ステップS211もしくはステップS212が実行されると、ステップS217へ進む。
【0043】
一方、ステップS208において、赤変換モードが設定されていないと判断された場合、ステップS213へ進む。ステップS213では、被写体像に関してM錐体に応じた緑〜黄緑色の画素の割合が以下の式をみたすか否かが判断される。

0.7>RYr/NT>0.5 ・・・・(6)

ここでRYrは、カラー画像信号によって構成される被写体像に関して、図6に示す領域B内の色をもつ画素の数を示し、NTは、被写体像全体の画素数を示す。
【0044】
図6にもYu**色空間(x,y)が示されており、カラー画像信号の分布が示されている。Yu**色空間において、緑〜黄緑色に対応する領域Bは第4象限内にあり、領域Bは、以下の式によって定められる

x<−40
y<−40
・・・・(7)

ここでは、被写体像の中で領域B内にある画素の割合が5割〜7割の範囲内であるか否かが判断される。上限を設けたのは、植物などを撮影している場合を考慮したことによる。
【0045】
ステップS213において、(6)式を満たさないと判断されると、ステップS216へ進み、フラグFが0に設定される。一方、ステップS213において、(6)式を満すと判断された場合、ステップS214へ進み、色反転処理が(3)式に基づいて実行される。そしてステップS215では、フラグFが0に設定される。ステップS215もしくはステップS216が実行されると、ステップS217へ進む。
【0046】
ステップS217では、色反転処理された動画像、もしくは色反転処理されていないそのままの動画像がLCD34に表示される。ステップS218では、レリーズボタンが半押しされてレリーズ半押しスイッチ12がON状態であるか否かが判断される。レリーズ半押しスイッチ12がON状態ではない、すなわち半押しされてないと判断されると、ステップS201へ戻る。一方、レリーズ半押しスイッチ12がON状態であると判断された場合、ステップS219へ進む。
【0047】
ステップS219では、被写体の明るさが検出され、露出値が演算される。それとともに、焦点調整が実行される。ステップS220では、レリーズボタンが全押しされてレリーズ全押しスイッチがON状態であるか否かが判断される。レリーズ全押しスイッチ14がON状態でないと判断されると、ステップS217へ戻る。一方、レリーズ全押しスイッチ14がON状態であると、判断されると、図4のステップS221へ進む。
【0048】
ステップS221では、露出制御が行われる。すなわち、シャッタ、絞りが演算された露出値に従って駆動され、1フレーム分の画像信号がCCD24から読み出される。そして、読み出された画像信号に基づいて輝度、色差Y、Cb、Crのカラー画像信号が生成される。
【0049】
ステップS222では、フラグFが1に設定されているか否かが判断される。フラグFが1に設定されていると判断されると、ステップS223へ進み、記録されるカラー画像信号に対して色反転処理が施される。ステップS223が実行されると、ステップS224へ進む。一方、フラグFが0に設定されていると判断された場合、そのままステップS224へ進む。
【0050】
ステップS224では、画像データであるカラー画像信号に対して圧縮処理が施され、ステップS225では、画像データがメモリカード39に記録される。ステップS226では、フラグFが0にリセットされる。ステップS226が実行されると、撮影動作処理が終了する。
【0051】
このように本実施形態によれば、輝度、色差Y、Cr、Cbのカラー画像信号が生成されるとともに、カラー画像信号に基づいて被写体像がLCD34に動画像表示される。そして、輝度変換モード、赤変換モード、緑変換モードのいずれかが設定された場合、撮影により得られる被写体像の色特性が色覚障害者に認識障害となっているか判断される。認識障害になっていると判断されると、輝度反転を含めて色反転処理が施される。
【0052】
色反転処理実行の判断に関しては、使用者が一般的な白地の書類やチラシなどのシート状原稿を撮影して視認に利用すること(いわゆるテキスト撮影モード)を想定し、上述した式に基づいて色反転の実行/非実行の判別を行なう構成としたが、もちろん、上述した式以外に基づいて判断してもよい。例えば、輝度の場合、50%を超えるか否かで判断してもよく、あるいは、50%〜80%のいずれかの割合を基準にすればよい。L錐体に応じた赤味の色成分の場合、30%を超えるか否かで判断してもよく、あるいは30%〜50%のいずれかの割合を基準にすればよい。M錐体に応じた緑色の領域に応じた色成分の場合、上限を設けなくてもよい。
【0053】
Yu**色空間以外の色空間を使用して色判別してもよく、また、R、G、Bのカラー画像信号など輝度、色差Y、Cb、Cr以外の色成分による画像信号に基づいて色判別してもよい。
【0054】
色覚障害者の各症状(タイプ)に分かれて色判別をおこなっているが、全色盲などの人のため、輝度、赤色成分、緑色成分の色判別をすべて同時に行い、いずれかひとつについて色覚認識に障害があると判断した場合に色反転処理するよう構成してもよい。また、一度色反転処理した後は色反転処理された被写体像を表示し続けるように構成してもよい。この場合、ステップS218はステップS217へ戻るように構成される。
【0055】
本実施形態では、色反転処理の際に、輝度、色差Y、Cr、Cb両方とも色反転させているが、色弱の人のため、輝度だけ反転するように色反転処理を施してもよい。あるいは、第1色盲、第2色盲、全色盲の人のため、輝度、色差Y、Cr、Cbだけ色反転するように構成してもよい。また、リアルタイムの動画像に限定せず、記録用動画像あるいは静止画像についても色変換処理を実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】デジタルカメラのブロック図である。
【図2】色反転モードにおけるモード設定処理を示したフローチャートである。
【図3】撮影動作処理を示したフローチャートである。
【図4】撮影動作処理を示したフローチャートである。
【図5】Yu**色空間において赤変換モードにおける画素分布を示した図である。
【図6】Yu**色空間において緑変換モードにおける画素分布を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
10 デジタルカメラ
24 CCD(撮像素子)
30 信号処理回路
34 LCD
50 システムコントロール回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から読み出される画素信号に基づいてカラー画像信号を生成する信号処理手段と、
カラー画像信号に基づき、被写体像を表示する表示手段と、
被写体像の色特性が色覚障害者にとって認識障害となっているか否かを判断する色検出手段とを備え、
前記信号処理手段が、認識障害となる色特性である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施すことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記色検出手段が、被写体像全体の中で高輝度の割合が所定割合を超えているか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記色検出手段が、被写体像全体の中で3つの錐体のうち少なくともいずれか1つに応じた色成分の割合が所定割合を超えているか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記色検出手段が、被写体像全体の中でL錐体に応じた色成分の割合が所定割合を超えているか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記色検出手段が、被写体像全体の中でM錐体に応じた色成分の割合が所定割合を超えているか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の撮影装置。
【請求項6】
前記信号処理手段が、カラー画像信号として輝度、色差信号を生成し、
前記色検出手段が、色差信号に基づいて色成分の割合を判断することを特徴とする請求項3に記載の撮影装置。
【請求項7】
前記色検出手段が、Yu**色空間に従って色成分の割合を判断することを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
【請求項8】
前記撮像素子から読み出される画素信号に基づいて記録用カラー画像信号を生成し、画像データとして記録する記録手段をさらに有し、
前記信号処理手段が、色反転させた被写体像を表示していた場合、記録用カラー画像信号に対して色反転処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項9】
色弱者用に色反転処理の判断を実行する輝度変換モード、色盲者用に色反転処理の判断を実行する特定色変換モードのいずれかを選択、設定するための操作部材と、
前記操作部材に対する操作に従い、いずれかの変換モードを設定する設定手段とをさらに有し、
前記色検出手段が、
輝度変換モードに設定された場合、被写体像全体の中で高輝度の割合が所定割合を超えているか否かを判断し、
色変換モードに設定された場合、被写体像全体の中で3つの錐体のうち少なくともいずれか1つに応じた色成分の割合が所定割合を超えているか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項10】
撮像素子から読み出される画素信号に基づいて生成されるとともに被写体像に対応するカラー画像信号の色特性が、色覚障害者にとって認識障害となっているか否かを判断する色検出手段と、
認識障害となる色特性である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施す色反転処理手段と
を備えたことを特徴とする色変換装置。
【請求項11】
撮像素子から読み出される画素信号に基づいて生成されるとともに、被写体像に対応するカラー画像信号の色特性が色覚障害者にとって認識障害となっているか否かを判断し、
認識障害となる色特性である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施すことを特徴とする色変換方法。
【請求項12】
撮像素子から読み出される画素信号に基づいて生成されるとともに、被写体像に対応するカラー画像信号の色特性が色覚障害者にとって認識障害となっているか否かを判断する色検出手段と、
認識障害となる色特性である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施す色反転処理手段と
を機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
撮像素子から読み出される画素信号に基づいてカラー画像信号を生成する信号処理手段と、
カラー画像信号に基づき、被写体像を表示する表示手段と、
被写体像全体の中で高輝度の割合が認識障害となる所定割合を超えているか否かを判断する色検出手段とを備え、
前記信号処理手段が、認識障害となる割合である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施すことを特徴とする撮影装置。
【請求項14】
撮像素子から読み出される画素信号に基づいてカラー画像信号を生成する信号処理手段と、
カラー画像信号に基づき、被写体像を表示する表示手段と、
被写体像全体の中で3つの錐体のうち少なくともいずれか1つに応じた色成分の割合が色覚障害者にとって認識障害となる所定割合を超えているか否かを判断する色検出手段とを備え、
前記信号処理手段が、認識障害となる割合である場合、色覚障害者にとって識別可能となるように、カラー画像信号に対して色反転処理を施すことを特徴とする撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−318000(P2006−318000A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136987(P2005−136987)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】