色素レーザー及び光増幅器
【課題】 レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザーを提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1):
【化1】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素レーザー素子と、励起用光源と、共振機とを備えることを特徴とする色素レーザー。
【解決手段】 下記一般式(1):
【化1】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素レーザー素子と、励起用光源と、共振機とを備えることを特徴とする色素レーザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素レーザー及び光増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の色素レーザーにおいては、蛍光発光する色素を水もしくはアルコールを含む溶媒中に溶解させた色素溶液を色素レーザーの材料として用いられていた。そして、このように色素溶液を用いたレーザーでは、多くの場合、有機性のレーザー色素の溶解性を高め、確保する必要から溶媒として、有機溶媒が使われるが、実際に励起光を照射してレーザー発光させる際には、励起光の照射により温度が上昇して引火する危険があるため、色素溶液は、冷却機に接続して冷却、循環して使用されていた。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、特開平6−125150号公報(特許文献1)には、蛍光性色素を含有する色素レーザー素子及びこの色素レーザー素子の蛍光性色素の蛍光を誘導放出させてレーザー発振させる励起用光源を備えたものにおいて、上記色素レーザー素子が、界面活性剤(1〜20重量%)およびシクロデキストリン(0.5〜10重量%)の少なくとも一種を含有する水溶液中にローダミンBおよびローダミン6Gを溶解したものであることを特徴とする色素レーザーが開示されており、明細書中において引火する危険性のない水を溶媒とする色素レーザーが記載されている。
【0004】
しかしながら、これらのように色素溶液を用いる色素レーザーにおいては、レーザー発光量を増やすために色素の濃度を高めていくと比較的低濃度においても会合(色素が互いに集まる現象)を起こし、この会合によって蛍光の消光が起こるために、色素の濃度を高めても十分なレーザー発光量を得られないという問題があった。
【0005】
また、特開2004−2491号公報(特許文献2)には、陽イオン交換性無機層状化合物に対し、特定の脂肪族4級アンモニウムイオンと陽イオン性のレーザー色素とを包接、担持せしめてなることを特徴とする一般式(CjH2j+1NR3)n・(LD)1−n・(LM)mで表される蛍光発光性層状無機有機複合体が開示されており、明細書中において固体色素を無機層状化合物に担持したものを用いる色素レーザーが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の従来の色素レーザーは、用いられている固体色素の耐熱性が十分なものでなく、励起光の強さによっては色素が劣化してしまうために、レーザーの寿命という点で未だ十分なものではなかった。また、色素同士による会合の抑制も十分でないために、レーザー発光量という点で未だ十分なものではなかった。
【0007】
一方、光通信といった分野では、光信号を電気に変換することなしに光信号を増幅できるので、光から電気および電気から光への変換のノイズもなく、また装置の構成が簡単になるという利点があることから、信号光を直接増幅させる装置(光増幅器)が用いられるようになってきている。そして、例えば、特開平10−135547号公報(特許文献3)には、ガラス転移温度が180℃以上のベース樹脂及び色素を含む樹脂組成物から成る光導波を行う部分に、ポンプ光を入射してこの部分を励起状態とすると共にこの部分に信号光を伝搬させることにより、この信号光を増幅させることを特徴とする光増幅器が開示されており、明細書中においてポリイミド樹脂をバインダーとする色素素子を有する光増幅器が記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載のような従来の光増幅器においては、用いられている色素素子の耐熱性が十分なものでなく、光増幅器の使用環境条件が制限され、さらにハンダ実装といった加工プロセスにおいて色素素子に変形が起こる可能性があるという点で未だ十分なものではなかった。
【特許文献1】特開平6−125150号公報
【特許文献2】特開2004−2491号公報
【特許文献3】特開平10−135547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザー、並びに、色素素子の耐熱性に優れる光増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、蛍光又は燐光を示す特定の有機分子を有する有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素レーザー素子と、励起用光源と、共振機とを備えることにより、レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の色素レーザーは、下記一般式(1):
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素レーザー素子と、励起用光源と、共振機とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の色素レーザーにおいては、前記R1が低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基、前記nが3であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の色素レーザーにおいては、前記R1が低級アルコキシ基、前記nが3、前記mが2であり、前記有機ケイ素化合物の重合体が下記一般式(2):
【0016】
【化2】
【0017】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の色素レーザーにおいては、前記蛍光又は燐光を示す有機分子が、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の色素レーザーにおいては、前記有機ケイ素化合物の重合体が、前記蛍光又は燐光を示す有機分子の規則的な配列に起因する5nm以下の周期構造を有するものであることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の色素レーザーにおいては、前記有機ケイ素化合物の重合体が多孔体であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の色素レーザーにおいては、前記有機ケイ素化合物の重合体が、中心細孔直径が1〜30nmのメソ多孔体であることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の色素レーザーにおいては、前記発光材料が、他の発光性化合物を更に備えることが好ましい。
【0023】
また、本発明の色素レーザーにおいては、前記発光材料が、界面活性剤を更に備えることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明の色素レーザーにおいては、前記他の発光性化合物が、前記有機ケイ素化合物の重合体に対して吸着、結合、充填及び混合からなる群から選択されるいずれかの状態となっていることが好ましい。
【0025】
また、本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、蛍光又は燐光を示す特定の有機分子を有する有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素素子と、増幅用光源とを備えることにより、色素素子の耐熱性に優れる光増幅器が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
すなわち、本発明の光増幅器は、下記一般式(1):
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素素子と、増幅用光源とを備えることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の光増幅器においては、前記R1が低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基、前記nが3であることが好ましい。
【0030】
また、本発明の光増幅器においては、前記R1が低級アルコキシ基、前記nが3、前記mが2であり、前記有機ケイ素化合物の重合体が下記一般式(2):
【0031】
【化4】
【0032】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明の光増幅器においては、前記蛍光又は燐光を示す有機分子が、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものであることが好ましい。
【0034】
また、本発明の光増幅器においては、前記有機ケイ素化合物の重合体が、前記蛍光又は燐光を示す有機分子の規則的な配列に起因する5nm以下の周期構造を有するものであることが好ましい。
【0035】
さらに、本発明の光増幅器においては、前記有機ケイ素化合物の重合体が多孔体であることが好ましい。
【0036】
また、本発明の光増幅器においては、前記有機ケイ素化合物の重合体が、中心細孔直径が1〜30nmのメソ多孔体であることが好ましい。
【0037】
さらに、本発明の光増幅器においては、前記発光材料が、他の発光性化合物を更に備えることが好ましい。
【0038】
また、本発明の光増幅器においては、前記発光材料が、界面活性剤を更に備えることが好ましい。
【0039】
さらに、本発明の光増幅器においては、前記他の発光性化合物が、前記有機ケイ素化合物の重合体に対して吸着、結合、充填及び混合からなる群から選択されるいずれかの状態となっていることが好ましい。
【0040】
なお、本発明においてレーザー発光量が十分に高く、更に十分に長寿命な色素レーザーが得られる理由、並びに本発明において色素素子の耐熱性に優れる光増幅器が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来の色素レーザー素子として用いられている蛍光又は燐光を示す有機分子(以下、「蛍光分子」という)は、高濃度の状態では分子間の相互作用により消光し効率的に発光しないため、濃度を高めることによる輝度の向上には限界があった。ところが、本発明にかかる発光材料においては、疎水的な蛍光分子と親水的なケイ素含有基とが化学的に結合されていることにより、分子間の相互作用(疎水性−親水性相互作用或いはπ−π相互作用)に基づき蛍光分子とシリカが規則的に並んだ特異な配列構造が形成される。本発明にかかる発光材料においては、蛍光分子の濃度が通常では濃度消光を起こす高濃度状態にあっても、蛍光分子の特異な配列構造のため消光が抑えられ、それぞれの蛍光分子が効率的に発光するようになるために、レーザー発光量が高くなると推察される。更に、本発明にかかる発光材料においては、蛍光分子と安定性に優れる無機物であるシリカとが化学的に結合することにより、蛍光分子の耐熱性が向上する。よって、長寿命の色素レーザーや色素素子の耐熱性に優れる光増幅器が得られるようになると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザー、並びに、色素素子の耐熱性に優れる光増幅器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0043】
<発光材料>
先ず、本発明の色素レーザー及び光増幅器中において用いられる発光材料について説明する。本発明にかかる発光材料は、下記一般式(1):
【0044】
【化5】
【0045】
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなることを特徴とするものである。
【0046】
上記一般式(1)中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子(以下、「蛍光分子」という)を示し、このような蛍光分子としては、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものが好ましい。このエネルギー差が上記下限未満では蛍光又は燐光の波長が長すぎるため、利用が困難となる傾向にあり、他方、上記上限を超えると蛍光又は燐光の波長が短すぎて利用が困難となる傾向にある。
【0047】
このような本発明にかかる蛍光分子としては、具体的には、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、クァテルフェニル、ベンゾフェノン、フルオレン、アントラキノン、ナフタレン、アセナフテン、カルバゾール、トリフェニレン、フェナントレン、アクリジン、アクリドン、アズレン、クリセン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ビアセチル、ベンジル、フルオレセイン、エオシン、ローダミンB、それらのフッ素化物等が挙げられ、中でもベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ターフェニル、フルオレン、アクリジン、アクリドン、クァテルフェニルが好ましい。
【0048】
上記一般式(1)中、R1は、低級アルコキシ基{好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(RO−)}、ヒドロキシル基(−OH)、アリル基(CH2=CH−CH2−)、エステル基(好ましくは炭素数1〜5のエステル基(RCOO−))及びハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子、沃素原子)からなる群から選択される少なくとも一つを示し、中でも縮合反応が制御し易いという観点から低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基が好ましい。なお、同一分子中に複数のR1が存在する場合、R1は同一でも異なっていてもよい。
【0049】
また、上記一般式(1)中、R2は、低級アルキル基{好ましくは炭素数1〜5のアルキル基(R−)}及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示す。なお、同一分子中に複数のR2が存在する場合、R2は同一でも異なっていてもよい。
【0050】
さらに、上記一般式(1)中のn及び(3−n)はそれぞれケイ素原子(Si)に結合しているR1及びR2の数であり、このようなnは1〜3の整数を示すが、縮合した後の構造が安定であるという観点からn=3であることが特に好ましい。また、上記一般式(1)中のmは前記蛍光分子(X)に結合しているケイ素原子(Si)の数であり、このようなmは1〜4の整数を示すが、安定なシロキサンネットワークを形成し易いという観点からm=2であることが特に好ましい。
【0051】
本発明にかかる発光材料は、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を重合せしめてなるものであり、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物として一種のモノマーを重合せしめても、二種以上のモノマーを共重合せしめてもよい。また、本発明にかかる発光材料は、(i)上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物と、上記一般式(1)中のXが蛍光又は燐光を示さない有機分子である有機ケイ素化合物とを共重合せしめてなるものであってもよく、また、(ii)上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物と、それ以外のモノマーとを共重合せしめてなるものであってもよい。以下、前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物、並びに必要に応じて共重合に供されるモノマーを総称して「モノマー」という。
【0052】
このような蛍光又は燐光を示さない有機分子としては、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン等の炭化水素から1以上の水素がとれて生じる1価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。また、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物以外のモノマーとしては、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等のケイ素化合物が挙げられ、更にはアルミニウム、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、モリブデン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ベリリウム、イットリウム、ランタン、ハフニウム、スズ、鉛、バナジウム、ホウ素等の無機系成分を含む金属化合物であってもよい。なお、前記(i)又は(ii)のような共重合の場合、共重合せしめる全モノマー中の上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の割合が30%以上であることが好ましい。
【0053】
上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を重合せしめると、一般式(1)中のSiにR1が結合している部分においては、加水分解とその後の縮合反応によりシロキサン結合(Si−O−Si)が形成される。この時、一部はシラノール基(Si−OH)となる場合があるが、シラノール基が形成されても発光特性に影響はない。例えば、上記一般式(1)におけるR1がエトキシ基、nが3、mが2である有機ケイ素化合物を重合せしめる場合の反応式は、以下の一般式(3):
【0054】
【化6】
【0055】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、pは繰り返し単位の数に相当する整数を示す。]
のようになる。なお、pの数は特に制限されないが、一般的には10〜1000程度の範囲であることが好ましい。
【0056】
このように上記モノマーを重合せしめてなる重合体は、蛍光分子(X)とケイ素原子(Si)と酸素原子(O)とを主成分として骨格が形成されている有機シリカ系材料であり、蛍光分子に結合しているケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格(−X−Si−O−)を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。
【0057】
上記モノマーを重合せしめる方法は特に制限されないが、水又は水と有機溶媒との混合溶媒を溶媒として使用し、酸又は塩基触媒の存在下で前記モノマーを加水分解及び縮合反応せしめることが好ましい。ここで好適に用いられる有機溶媒としてはアルコール、アセトン等が挙げられ、混合溶媒とする場合の有機溶媒の含有量は5〜50重量%程度であることが好ましい。また、使用される酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸といった鉱酸等が挙げられ、酸触媒を使用する場合の溶液はpHが6以下(より好ましくは2〜5)の酸性であることが好ましい。さらに、使用される塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等が挙げられ、塩基触媒を使用する場合の溶液はpHが8以上(より好ましくは9〜11)の塩基性であることが好ましい。
【0058】
このような重合工程における前記モノマーの含有量は、ケイ素濃度換算で0.0055〜0.33mol/L程度であることが好ましい。また、上記重合工程における諸条件(温度、時間、等)は特に制限されず、用いるモノマーや目的とする重合体等に応じて適宜選択されるが、一般的には0〜100℃程度の温度で1〜48時間程度の時間前記有機ケイ素化合物を加水分解及び縮合反応せしめることが好ましい。
【0059】
(蛍光分子の規則的な配列に起因する周期構造を有する発光材料)
前記モノマーを重合せしめてなる重合体(前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の重合体)は、通常はアモルファス構造であるが、合成条件により前記蛍光分子の規則的な配列に起因する周期構造を有することが可能である。このような周期性は使用するモノマーの分子長に依存するが、5nm以下の周期構造であることが好ましい。この周期構造はモノマーが重合した後も保持される。そして、この周期構造の形成は、X線回折(XRD)測定によりd=5nm以下の領域にピークが出現することにより確認することができる。なお、X線回折測定においてこのようなピークが確認されない場合であっても、部分的に周期構造が形成されている場合がある。このような周期構造は、後述する層状構造に伴って形成されるのが一般的であるが、その場合に限定されるものではない。
【0060】
本発明にかかる発光材料において前記蛍光分子の規則的な配列に起因する周期構造が形成されると、発光強度が大幅に向上する傾向にある。このように周期構造の形成により発光強度が大幅に向上する機構については必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、通常、蛍光分子は高濃度(高密度)状態になると濃度消光を起こし、発光効率が低下する。しかしながら、上記のように蛍光分子が規則的に配列すると、均一なバンド構造が形成されかつ維持され、高濃度でも効率的な発光が可能となり、濃度消光の発生がより十分に抑制されるものと本発明者らは推察する。
【0061】
このような蛍光分子の規則的な配列に起因する周期構造を形成するための好適な合成条件としては、以下の諸条件が挙げられる。
(i)前記周期構造はモノマー間に働く相互作用により形成されるため、モノマー間の相互作用が大きくなる有機基(X)、すなわちベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセンを用いることが好ましい。
(ii)溶液のpHが1〜3(酸性)又は10〜12(塩基性)であることが好ましく、10〜12(塩基性)であることがより好ましい。
【0062】
また、このような周期構造は、S.Inagaki et al.,Nature,(2002年)416巻,304〜307頁等に記載の方法に準拠して得ることが可能である。
【0063】
(多孔体である発光材料)
前記モノマーを重合せしめる際の合成条件を制御することにより、或いは原料に界面活性剤を混合することにより、得られる重合体(前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の重合体)に細孔を形成させることが可能である。前者の場合は溶媒が鋳型となり、後者の場合は界面活性剤のミセル又は液晶構造が鋳型となり、細孔を有する多孔体が形成される。
【0064】
特に、後述する界面活性剤を用いると、細孔径分布曲線における中心細孔直径が1〜30nmのメソ孔を有するメソ多孔体が得られるので好ましい。なお、前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径であり、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
【0065】
このようなメソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。この条件を満たすメソ多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。また、メソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、700m2/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0066】
さらに、このようなメソ多孔体は、そのX線回折(XRD)パターンにおいて1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1.5〜30.5nmの間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0067】
また、このようなメソ多孔体が有する細孔は、多孔体の表面のみならず内部にも形成される。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2D−ヘキサゴナル構造、3D−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
【0068】
ここで、多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki et al., J.Chem.Soc.,Chem.Commun., p.680(1993)、S.Inagaki et al., Bull.Chem.Soc.Jpn., 69,p.1449(1996)、Q.Huo et al., Science, 268,p.1324(1995)参照)。また、多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli et al., Chem.Mater., 6,p.2317(1994)、Q.Huo et al., Nature, 368,p.317(1994)参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev et al., Science, 267,p.865(1995)、S.A.Bagshaw et al., Science, 269,p.1242(1995)、R.Ryoo et al., J.Phys.Chem., 100,p.17718(1996)参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Ia−3d、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
【0069】
このように本発明にかかる発光材料中に細孔がある場合、その多孔体に後述する他の発光性化合物を吸着(物理的吸着及び/又は化学的結合)させることが可能となる。その場合、前述の蛍光分子から他の発光性化合物へのエネルギー移動が起こるようになり、その蛍光分子本来の発光波長とは異なる波長の発光が生じることとなる。それにより、導入する蛍光分子と発光性化合物との組み合わせに応じて多色発光が可能となる。また、このような多孔体の細孔壁に前述の周期構造を形成せしめれば、細孔壁中の蛍光分子から他の発光性化合物へより効率良くエネルギー移動が起こるようになり、異なる波長の強い発光を達成することが可能となる。さらに、このような多孔体の細孔内に後述する電荷輸送材料を導入することにより、細孔壁中の蛍光分子をより効率的に発光させることが可能となる。前記メソ多孔体を得るためには、本発明のモノマーに界面活性剤を添加して重縮合することが望ましい。前記モノマーが重縮合する際、添加した界面活性剤が鋳型となってメソ孔ができるからである。
【0070】
前記メソ多孔体を得る際に用いられる界面活性剤は、特に限定されるものではなく、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリエチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム等の塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上混合して用いられる。
【0071】
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式CnH2n+1(OCH2CH2)mOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。また、このような界面活性剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
【0072】
さらに、このような界面活性剤としては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)x(PO)y(EO)xで表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)5(PO)70(EO)5、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社等から入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。
【0073】
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)x(PO)y)2NCH2CH2N((PO)y(EO)x)2で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0074】
このような界面活性剤の中では、結晶性の高いメソ多孔体を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[CpH2p+1N(CH3)3]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニウム中のアルキル基の炭素数は8〜22であることがより好ましい。このようなものとしては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドコシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0075】
前記モノマーの重合体としてメソ多孔体を得る場合、前記界面活性剤を含有する溶液中で前記モノマーを重合反応せしめるが、その溶液中の界面活性剤の濃度は0.05〜1mol/Lであることが好ましい。この濃度が前記下限未満であると細孔の形成が不完全となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応で溶液中に残留する界面活性剤の量が増大して細孔の均一性が低下する傾向にある。
【0076】
また、このようにして得られたメソ多孔体に含まれる界面活性剤を除去してもよい。このように界面活性剤を除去する方法としては、例えば、(i)界面活性剤に対する溶解度が高い有機溶媒(例えば、エタノール)中に前記メソ多孔体を浸漬して界面活性剤を除去する方法、(ii)前記メソ多孔体を300〜1000℃で焼成して界面活性剤を除去する方法、(iii)前記メソ多孔体を酸性溶液に浸漬して加熱し、界面活性剤を水素イオンに交換せしめるイオン交換法、等を挙げることができる。
【0077】
また、このようなメソ多孔体は、特開2001−114790号公報等に記載の方法に準拠して得ることが可能である。
【0078】
このように本発明にかかる発光材料を多孔体にするメリットとしては、(i)細孔内に他の発光性化合物を導入することにより、細孔壁の励起エネルギーが効率的に発光性化合物に移動して多色発光が可能になること、(ii)細孔内に導入された発光性化合物の耐久性が向上すること、更には(iii)発光層の屈折率が小さくなることにより光の取り出し効率を向上させることができるというメリットがある。例えば、ガラス基板上にITO電極層とその上に発光層を形成した場合、発光層から発した光が、発光層とITO層との界面、ITO層とガラス基板との界面、あるいはガラス基板と空気との界面で反射し、外への取り出し効率が低下するという問題がある。一般に、発光層の屈折率が空気の屈折率に近い方が光の取り出し効率が高いと言われており、発光材料を多孔体化することで、屈折率を空気に近づけることができる。
【0079】
(他の発光性化合物を更に備える発光材料)
本発明にかかる発光材料が他の発光性化合物を更に備える構造としては特に限定されないが、非多孔質又は多孔質の本発明にかかる発光材料において、他の発光性化合物が、吸着、結合、充填、混合のいずれかの状態となっていてもよい。吸着とは、非多孔質の発光材料の場合は発光材料の粒子あるいは膜の表面、多孔質の発光材料の場合は、発光材料の細孔内あるいは細孔外表面に発光性化合物が付着した状態を言う。結合とは、この付着が化学結合を伴う場合をさす。充填とは、多孔質の発光材料の細孔内に他の発光性化合物が存在する状態で、この場合細孔内表面に付着していなくてもよい。細孔内に他の発光性化合物以外の物質が充填されており、その物質中に他の発光性化合物が含まれていてもよい。他の発光性化合物以外の物質には界面活性剤等がある。混合とは、非多孔質又は多孔質の発光材料と他の発光性化合物が物理的に混ざった状態をさす。この時に、発光材料と他の発光性化合物以外の別の物質を更に混合してもよい。
【0080】
他の発光性化合物を更に備える方法としては特に限定されないが、非多孔質又は多孔質の発光材料と他の発光性化合物を混合する方法がある。この時に他の発光性化合物を適当な溶媒に溶解させてから混合するとより均一な混合ができ、効率的に発光させることができる。
【0081】
また、発光材料を合成すると同時に他の発光性化合物を導入する方法がある。すなわち、前記モノマーに他の発光性化合物を添加して重合する。この場合、界面活性剤を更に添加して重合してもよい。界面活性剤を添加した場合は、界面活性剤の鋳型効果により重合体中に多孔体構造が形成されるが、細孔内には界面活性剤と他の発光性化合物が充填されており、実質的な細孔は存在しない。他の発光性化合物の量は、特に制限されないが、前記モノマーに対し1〜10モル%を添加すれば十分に骨格のエネルギーを発光性化合物に移動させることができる。
【0082】
その他の発光性化合物を備えた重合体においては、前記モノマーの重合体から成る骨格が効率的に光を吸収し、そのエネルギーを他の発光性化合物に効率的に移動させることができることから、他の発光性化合物に基づく異なる波長の発光を得ることができる。この時、前記モノマーの重合体から成る骨格は光捕集アンテナの役割を果たし、捕集した光エネルギーを他の発光性化合物に集中的に注入できることから、効率が高く且つ強い発光を実現することができる。
【0083】
本発明にかかる有機ケイ素化合物の重合体に他の発光性化合物を吸着、結合、充填又は混合(以下、場合により「添着」と総称する)させる方法は、特に限定されず、通常の方法が使用できる。例えば、添着する他の発光性化合物の溶液を前記重合体に対して散布、含浸又は浸漬させた後、乾燥するという方法が使用できる。この際、必要に応じて洗浄してもよい。また、添着あるいは乾燥の際、減圧あるいは真空脱気してもよい。このような添着により他の発光性化合物は前記重合体の表面に付着又は細孔に充填され、あるいは吸着される。このような有機ケイ素化合物と他の発光性化合物の種類、組成及び両化合物の距離や結合強度、界面活性剤の有無等に応じて多色発光の原理は同一ではないが、組み合わせに応じて多色発光が可能になる。本発明にかかる発光材料において、前記有機ケイ素化合物の重合体に添着する他の発光性化合物は、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
本発明にかかる発光材料が前記多孔体である場合、前述のように、その多孔体に他の発光性化合物を吸着(物理的吸着及び/又は化学的結合)又は充填させることが好ましい。
【0085】
このような多孔体に吸着している他の発光性化合物を備えている場合、他の発光性化合物は多孔体表面、特に細孔内壁表面に吸着していることが好ましい。このような吸着は、他の発光性化合物と多孔体表面に存在する官能基との相互作用によって生じている物理的吸着であってもよいが、他の発光性化合物の一端が多孔体表面に存在する官能基と化学的に結合することによって固定化されていてもよい。なお、後者の場合、他の発光性化合物がその一端に、多孔体表面に存在する官能基と化学的に結合する官能基(例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基、トリクロロシリル基等)を備えていることが好ましい。
【0086】
多孔体に他の発光性化合物を吸着させる方法としては、他の発光性化合物を溶解せしめた有機溶剤溶液(例えば、ベンゼン、トルエン等)に多孔体を浸漬し、0〜80℃程度の温度で1〜24時間程度攪拌する方法が好適であり、それによって他の発光性化合物が多孔体に物理的吸着及び/又は化学的結合により吸着(固定化)されることとなる。
【0087】
このような他の発光性化合物としては、特に制限されず、ポルフィリン類、アントラセン類、アルミニウム錯体、希土類元素又はその錯体、フルオレセイン、ローダミン(B,6G等)、クマリン、ピレン、ダンシル酸、シアニン色素、メロシアニン色素、スチリル色素、ベンズスチリル色素等の光機能性分子が挙げられる。また、多孔体に吸着される他の発光性化合物の量も特に制限されないが、多孔体100重量部に対して0.6〜50重量部程度であることが一般的に好ましい。
【0088】
また、本発明にかかる他の発光性化合物としては燐光材料が好ましく、このような燐光材料には、蛍光材料と比較して吸収と発光波長の差が大きいものがある。したがって、このような燐光材料を使用することによって、短波長の紫外光を吸収して長波長の赤色発光を効率的に出すことが可能となる。このような燐光材料を紫外光領域に発光を有する有機ケイ素化合物と組み合わせることによって、青色から赤色に渡る幅広い波長領域の発光が可能となる。使用する燐光材料としては、特に限定されないが、室温において比較的高効率の発光が可能な以下の構造式のものが好適なものとして挙げられる。
【0089】
【化7】
【0090】
(薄膜状である発光材料)
前記モノマーを重合せしめてなる重合体(前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の重合体)の形態は、通常は粒子状であるが、薄膜状、更にはその薄膜を所定のパターニングしたパターン状とすることも可能である。
【0091】
このように薄膜状の発光材料を得る場合、先ず、前記モノマーを酸性溶液(塩酸、硝酸等の水溶液又はアルコール溶液等)中で攪拌することにより反応(部分加水分解及び部分縮合反応)せしめてその部分重合体を含むゾル溶液を得る。このようなモノマーの加水分解反応はpHが低い領域で起こりやすいことから、系のpHを低くすることにより部分重合を促進することができる。このとき、pHは2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。また、その際の反応温度は15〜25℃程度とすることができ、反応時間は30〜90分程度とすることができる。
【0092】
次に、このゾル溶液を各種のコーティング方法で基板に塗布することにより、薄膜状の発光材料を作製することができる。なお、各種のコーティング方法としては、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等を用いて塗布することができ、また、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等も可能である。さらに、ゾル溶液をインクジェット法により塗布することにより、基板にパターン状の発光材料を形成することも可能である。
【0093】
次いで、得られた薄膜を40〜150℃程度に加熱して乾燥せしめ、前記部分重合体の縮合反応を進めて三次元的な架橋構造を形成させることが好ましい。得られる薄膜の平均膜厚は1μm以下であることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。膜厚が1μmを超える場合は、電界による発光効率が減少する傾向にある。
【0094】
なお、このような薄膜中に前述の周期構造を形成せしめれば、薄膜中の蛍光分子が周期構造を形成することによって薄膜からの発光強度をより向上させることができる。また、前記ゾル溶液に前述の界面活性剤を添加することにより、薄膜中に規則的な細孔構造を形成することが可能となる。このように薄膜が多孔体である場合、その多孔体に前記他の発光性化合物を吸着させることが可能となり、それによって蛍光分子本来の発光波長とは異なる波長の発光を生じさせることが可能となる。
【0095】
また、このような薄膜状の発光材料は、特開2001−130911号公報等に記載の方法に準拠して得ることが可能である。
【0096】
(層状物質である発光材料)
前記モノマーを重合せしめてなる重合体(前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の重合体)の形態として、1層の厚さが10nm以下のナノシートが積層してなる層状物質とすることも可能である。すなわち、前記モノマーを前記界面活性剤の存在下で重合反応(加水分解及び縮合反応)せしめる際に、合成条件を制御することによりこのような層状物質を得ることができる。
【0097】
このように本発明にかかる発光材料を層状物質にすると、溶媒に浸漬させることによってナノシートを膨潤させることが可能となり、薄膜(好ましくは1層の厚さが10nm以下のナノシート)を容易に作製することができるようになる。
【0098】
<色素レーザー>
次に、本発明の色素レーザーについて説明する。すなわち、本発明の色素レーザーは、前述した発光材料を含有する色素レーザー素子と、後述する励起用光源と、後述する共振機とを備えることを特徴とするものである。
【0099】
ここで、本発明の色素レーザーの好適な一実施形態を例に挙げて励起用光源、色素レーザー素子及び共振機について説明する。図1は本発明の色素レーザーの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【0100】
(励起用光源)
図1中、1は励起用光源である。このような励起用光源1としては、使用する色素レーザー素子の吸収スペクトル、発光スペクトル等を考慮して選択することが好ましいが、例えば、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザー(ArF、KrF、XeCl,XeF)等のガスレーザー;YAGレーザー、ルビーレーザー、ガラスレーザー等の固体レーザー;色素レーザー等の液体レーザー;半導体レーザー;発光ダイオードを挙げることができる。これらの中でも、励起用光源の発光量という観点から、エキシマレーザー、窒素レーザーが好ましい。
【0101】
(色素レーザー素子)
図1中、2は反射鏡であり、3は色素レーザー素子である。本発明においては、励起用光源1からの励起光が反射鏡2で反射された後に色素レーザー素子3に当たることにより、色素レーザー素子3が励起される。そして、その後に蛍光を発生して基底状態に戻ることにより色素レーザー素子3が発光する。
【0102】
このような色素レーザー素子3は、前述した発光材料を含有するものである必要があるが、前述した発光材料のみからなるものであってもよく、前述した発光材料がマトリックス中に分散又は混合されているものであってもよい。このようなマトリックスとしては、特に制限されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ガラスが挙げられる。これらの中でも、色素レーザー素子の耐熱性に優れるという観点から、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。また、前述した発光材料をマトリックス中に分散又は混合させたものを用いる場合には、マトリックス100質量部に対して前述した発光材料を0.5〜50質量部含有させることが好ましい。この含有量が前記下限未満では、色素レーザーとして十分な発光強度が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると色素レーザー素子の光の透過性が悪くなる傾向にある。
【0103】
さらに、このような色素レーザー素子3の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状物、フィルム、ファイバー、粒状物を挙げることができる。また、このような色素レーザー素子3の大きさとしては、特に限定されないが、例えば形状が板状物である場合には、20mm×20mm×0.5mm程度の大きさであることが好ましい。
【0104】
また、このような本発明にかかる色素レーザー素子の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ゾル−ゲル法、沈殿法、キャスト法、引き上げ法を挙げることができる。
【0105】
(共振機)
図1中、4は凹面鏡であり、5は回折格子であり、6はビーム拡大器である。また、凹面鏡4と回折格子5は対向して配置されており、且つ、回折格子の一次回折光が入射方向に戻るように配置されている。本発明にかかる共振機としては、ビーム拡大器により回折格子の回折効率が高まるという観点から、凹面鏡4と回折格子5との間にビーム拡大器6を備えるものであることが好ましい。また、本発明にかかる共振機としては、レーザーの発振波長を変更できるようにするという観点から、凹面鏡4に対して回折格子5の方向を変更できるようにしておくことが好ましい。本発明においては、色素レーザー素子3より発せられた光が凹面鏡4と回折格子5との間で反復反射することにより強度を増しレーザー発振を起こすことができる。なお、共振機の種類としては、以上説明した凹面鏡と回折格子とを対向して配置したものの他に、片方の反射鏡の透過率が高い2つの反射鏡を対向して配置したもの、光導波路型蛍光体の両端に屈折率が周期的に変調する分布帰還型反射鏡を配置したものが挙げられる。
【0106】
<光増幅器>
次に、本発明の光増幅器について説明する。すなわち、本発明の光増幅器は、前述した発光材料を含有する色素素子と、後述する増幅用光源を備えることを特徴とするものである。
【0107】
ここで、本発明の光増幅器の好適な一実施形態を例に挙げて増幅用光源及び色素素子について説明する。図2は本発明の光増幅器の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【0108】
(増幅用光源)
図2中、11は増幅用光源である。このような増幅用光源11としては、使用する色素素子の吸収スペクトル、発光スペクトル等を考慮して選択することが好ましいが、例えば、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザー(ArF、KrF、XeCl,XeF)等のガスレーザー;YAGレーザー、ルビーレーザー、ガラスレーザー等の固体レーザー;色素レーザー等の液体レーザー;半導体レーザー;発光ダイオードを挙げることができる。これらの中でも、光増幅器の小型化、軽量化という観点から、半導体レーザー、発光ダイオードが好ましい。
【0109】
(色素素子)
また、図2中、12はレンズであり、13は色素素子であり、14は光ファイバーであり、15はコネクタである。本発明においては、増幅用光源11からの励起光がレンズ12を通して色素素子13に当たることにより、色素素子13が励起される。一方で、信号光は図2中の矢印の方向に進み、光ファイバー14からコネクタ15を経て、励起状態の色素素子13の中を流れる。そして、色素素子13の中を流れる間に光が増幅されるために、再びコネクタ15を経て光ファイバー14に戻るときには、信号光が増幅されている。
【0110】
このような色素素子13は、前述した発光材料を含有するものである必要があるが、前述した発光材料のみからなるものであってもよく、前述した発光材料がマトリックス中に分散又は混合されているものであってもよい。このようなマトリックスとしては、特に制限されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ガラスが挙げられる。これらの中でも、色素素子の耐熱性に優れるという観点から、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。また、前述した発光材料をマトリックス中に分散又は混合させたものを用いる場合には、マトリックス100質量部に対して前述した発光材料を0.5〜50質量部含有させることが好ましい。この含有量が前記下限未満では、光増幅器として信号光を十分に増幅することができない傾向にあり、他方、前記上限を超えると色素素子の光の透過性が悪くなる傾向にある。
【0111】
さらに、このような色素素子13としては、図2中で説明したようにファイバー形状のものを用いることもできるが、基板上で矩形導波路を形成させたものを用いてもよく、更には基板上でスラブ型導波路を形成させたものを用いてもよい。また、このような色素素子13がファイバー形状のものである場合には、特に制限されないが、色素素子13の長さが5〜10mm程度、色素素子13の直径が50〜200μm程度であることが好ましい。
【0112】
また、このような本発明にかかる色素素子の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ゾル−ゲル法、沈殿法、キャスト法、引き上げ法を挙げることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、蛍光又は燐光スペクトルの測定や励起スペクトルの測定には、JASCO製のFP-6600 Spectrofluorometerを使用した。また、蛍光又は燐光スペクトルの縦軸の強度(Intensity)は、エネルギー量で表示してある。
【0114】
<フェニルシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例1)
イオン交換水(500g)と6規定NaOH水溶液(40g,200mmol NaOH)の混合液にオクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(ODTMA、[C18H37N(CH3)3Cl]、東京化成製)(16.665g,47.88mmol)を50〜60℃で溶解させた。その溶液に1,4-ビストリエトキシシリルベンゼン(BTEB、アズマックス製)(20g,49.67mmol)を激しく攪拌しながら室温で加えた。その混合液を超音波器に20分かけて、分離していた疎水性のBTEBを水溶液中に分散させ、室温で20時間攪拌し続けた。その溶液を95℃で20時間オイルバス中に静置した。生成した白い沈殿をろ過して乾燥することにより、界面活性剤を含んだ状態のメソ多孔体の前駆物質(8.22g)を得た。1gの前駆物質を9gの36%HCl水溶液を加えたエタノール(250ml)に分散させ、70℃で8時間加熱攪拌することにより、前駆物質中の界面活性剤を溶媒で抽出して、0.69gのフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-c)を得た。
【0115】
(実施例2)
水50gとNaOH4gの混合溶液を撹拌し、その中にBTEB2gを素早く入れた。その後20分間超音波にかけた。この時点で溶液が濁り始めた。そして常温で24時間撹拌をすると半透明な液体となった。その後98℃で20時間還流静置した。温度をかけてから溶液が白く濁り始め、その後徐々に沈殿物が生じてきた。その沈殿をろ過して、室温で乾燥して白色の粉末であるフェニルシリカ複合材料(Ph-Si)を得た。
【0116】
(実施例3)
トリブロックコポリマーであるpoly(ethylene oxide)20-poly(propylene oxide)70-poly(ethylene oxide)20;(P123:Mav=5800)としてアルドリッチ社製のものを使用した。0.99gのP123を36mlのイオン交換水に溶解させた後、200mlの塩酸(36wt%)を加えた。0℃(氷浴中)においてこの溶液にBTEB1.01gを加え、1時間攪拌した後、35℃で20時間、加熱攪拌した。これを密閉容器に移し、100℃で24時間、さらに加熱した。室温まで放冷した後、ろ過、洗浄、乾燥させ、界面活性剤を含んだ状態のメソ多孔体の前駆物質を得た。この前駆物質を60倍量のエタノールに分散させ、1時間以上攪拌した後、ろ過、乾燥した後、空気中、350℃で2時間焼成することにより0.3gのフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-a)を得た。
【0117】
実施例1で得られたPh-HMM-cと実施例2で得られたPh-SiのX線回折パターンを図3に示す。テンプレートとしてC18TMA+Cl-を添加して合成したPh-HMM-cにおいては、2θ=1〜3°にメソ構造(2Dヘキサゴナル)を示すピークとともに、骨格内のベンゼンの周期性を示す7.6、3.8、2.5nmのピークが確認できた。界面活性剤を添加せずに合成したPh-Siはメソ構造を示すピークは見られなかったが、骨格内のベンゼンの周期性を示すピークは確認できた。また、それぞれの細孔構造を調べるために、N2吸着等温線を測定した。図3にPh-HMM-cのN2吸着等温線を示す。吸着等温線はIV型であり、典型的なメソ多孔体構造を有していることが確認され、細孔径と比表面積はそれぞれ、3.0nm、835m2/gであった。しかしながら、Ph-Siにおいては比表面積は小さく、メソ細孔を有していないことが確認できた。以上の結果より、Ph-HMM-cは細孔構造及びベンゼンの周期構造をともに有し、Ph-Siは細孔構造はないが、骨格にベンゼンの周期構造を有した材料であることが確認できた。
【0118】
一方、図4に実施例3において酸性条件下で合成したPh-HMM-aのX線回折パターンを示す。2θ=0.5〜1°にメソ構造(2Dヘキサゴナル)を示すピークが見られた。しかし、骨格内のベンゼンの周期性を示すピークは見られなかった。また、図5に示したN2吸着等温線はIV型であり、典型的なメソ多孔体構造を有していることが確認され、細孔径、比表面積はそれぞれ、6.3nm、773m2/gであった。以上の結果から、酸性条件下でP123をテンプレートとして合成したPh-HMM-aは、規則的な細孔構造を有しているものの、細孔骨格内のベンゼンの周期性はないことが確認できた。
【0119】
実施例1〜3における合成条件並びに得られた試料の構造について表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
図6に、実施例2で得られたPh-SiのSEM写真を示す。この物質の粒径は約100nmであることが確認できた。また、Ph-Siは500℃まで構造を保持することが熱重量分析により確認された。
【0122】
実施例1〜3で得られた各試料の可視吸収スペクトルを図7に示す。Ph-HMM-aの吸収スペクトルはブロードで、最大吸収波長(λmax)は285nmであった。またその吸収末端は550nm(2.3eV)の長波長まで観測された。一方、Ph-HMM-cの吸収スペクトルはPh-HMM-aのλmaxと同じ285nmと240nmに大きな吸収が見られた。ピーク幅はPh-HMM-aに比べ狭く、吸収末端は310nm(4.0eV)であった。なお、Ph-HMM-aにおいても240nmのピークは存在していると考えられるが、ピークがブロードなため、280nmと重なっているものと考える。またPh-Siにおいては、Ph-HMM-cと同様な吸収スペクトルが得られたことから、この吸収スペクトルの差は各試料の細孔構造ではなく、骨格中のベンゼンの周期性に強く依存するとしていることが確認された。
【0123】
図8には実施例1〜3で得られた各試料の蛍光スペクトルを示す。メソ細孔構造を有しているものの、骨格中にベンゼンの周期性がほとんどないPh-HMM-aにおいては、強い蛍光を示さなかった。これはPh-HMM-aの以下の特性から説明できる。先ず、Ph-HMM-aにおいては、UV吸収末端が長く、ブロードであったということから、励起状態において様々なエネルギー準位が存在していることが予想される。そのため、260nmで励起された後、基底状態に戻るときに、様々な準位を経るためにその蛍光が弱くなったと考えられる。また骨格内のベンゼンの規則性が低いためにエキシマーが形成されることによる消光や、熱となってエネルギーが系の外へ出てしまった可能性も考えられる。
【0124】
一方、メソ細孔構造を有し、骨格内にベンゼンの周期性も有するPh-HMM-c、並びにメソ細孔を持たないがベンゼン周期性を有するPh-Siにおいては、微弱な励起光であっても、発した蛍光の強度は強かった。また、UV-vis吸収スペクトルにより280nmに鋭い吸収が見られたが、興味深いことに310nm以上の吸収波長は観測されなかった。基底状態及び励起状態間での準位が縮退していること、つまりそれぞれのバンドが狭くなっていることを示している。このような理由によって、骨格内のフェニル基の規則的な配列により、フェニル基でのエネルギー移動が安定的に起っていることが確認された。また、Ph-HMM-cとPh-Siにおいて、微弱な励起光にも関わらず蛍光を示した別の理由として量子井戸効果が挙げることができる。つまり、Ph-HMM-cとPh-Siはともにフェニル基とシリケート層が交互に並んだ規則的な構造を形成していることから、260nmで励起したとき、吸収エネルギーが高いシリケート層には励起されず、フェニル基の層のみに光が作用する。その励起されたフェニル基の層が光吸収に寄与しないシリケート層に挟まれているために、光がフェニル基層内に閉じ込められ、その結果ベンゼンシリカが強い蛍光を発したとも考えられる。
【0125】
<ビフェニルシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例4〜5)
イオン交換水(3.3mol)と6規定NaOH水溶液(30.4mmol)の混合液にODTMA(3.2mmol)を50〜60℃で溶解させた。その溶液に4,4’-ビストリエトキシシリルビフェニル(BTEBP、アズマックス製)(2.5mmol)を激しく攪拌しながら室温で加え、更に室温で20時間攪拌し続けた。その溶液を95℃で22時間オイルバス中に静置した。生成した白い沈殿をろ過して乾燥することにより、界面活性剤を含んだ状態のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-c-s)を得た。0.75gの前駆物質を3.1gの2M塩酸水溶液を加えたエタノール(150ml)に分散させ、室温で8時間攪拌することにより、前駆体中の界面活性剤を溶媒で抽出して、ビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c)を得た。
【0126】
(実施例6)
水(120ml)とNaOH(6g)の混合溶液を撹拌し、その中にBTEBP2gを素早く入れた。その後20分間超音波にかけた。この時点で溶液はまだ透明のままでBTEBPと水が二層に分離していた。そして常温で24時間撹拌をすることで均一な透明な溶液となった。その後98℃で72時間還流静置した。24時間後以降からは白濁し始め、沈殿が起きてきた。固形分をろ過した後、室温で乾燥して、粉末であるビフェニルシリカ複合材料(BiPh-Si-Base)を得た。
【0127】
(実施例7)
水36g(2mol)に12N HClを2ml添加した酸性溶液に、BTEBP0.6g(1.25mmol)を加え、20分間超音波処理を行った後、室温で24時間撹拌した。そして得られた混合液を35℃で24時間攪拌し、ろ過、洗浄後、白色粉末を得た。合成の混合比はBTEBP:H2O:HCl=1:412:4.8であった。この白色粉末を空気中、300℃で2時間焼成することによって、目的のビフェニルシリカ複合材料(BiPh-Si-Acid)を得た。
【0128】
(実施例8〜9)
BTEBP(1.2g)をP123(0.99g)と2N塩酸水溶液(40ml)の混合溶液に激しく攪拌しながら加えた。混合温度は30℃とした。この混合液を30℃で20時間攪拌した後、室温で48時間放置した。次に、この混合液をテフロン製のオートクレーブに入れて、100℃で24時間加熱した。固形分をろ過して、室温で乾燥することにより界面活性剤を含んだ状態のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-a-s)を得た。この前駆物質0.5gをエタノール(200ml)と2N塩酸水溶液(0.5g)の混合液に加え、室温で8時間攪拌した。この操作もう1回繰り返して、界面活性剤を完全に除去したビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-a)を得た。
【0129】
実施例4で得られたBiPh-HMM-cのX線回折パターンを図9に、実施例5で得られたBiPh-HMM-c-sのX線回折パターンを図10に示す。いずれも、2θ=1〜3°にメソ構造(2Dヘキサゴナル)を示すピークとともに、骨格内のビフェニルの周期性を示す1.19nmのピークが確認できた。また、実施例4で得られたBiPh-HMM-cの細孔内構造を調べるために、N2吸着等温線を測定した結果を図11に示す。吸着等温線はIV型であり、典型的なメソ多孔体構造を有していることが確認された。BiPi-HMM-cの細孔径と比表面積はそれぞれ、3.0nm、709m2/gであった。
【0130】
実施例6で得られたBiPh-Si-BaseのX線回折パターンを図12に、実施例7で得られたBiPh-Si-AcidのX線回折パターンを図13に示す。これらにおいては、低角側のメソ構造を示すピークが見られず、ビフェニルの周期性を示す1.19nmのピークのみ見られた。このことから、界面活性剤なしで合成したビフェニルシリカ複合材料も、ビフェニル基が規則的に配列した構造を有することが確認された。実施例6で得られたBiPh-Si-BaseのSEM写真を図14に示す。このSEM写真から、実施例6で得られたBiPh-Si-Baseの1次粒子径は100nm以下と非常に小さいことが確認された。
【0131】
実施例8で得られたBiPh-HMM-aのX線回折パターンを図15に、実施例9で得られたBiPh-HMM-a-sのX線回折パターンを図16に示す。界面活性剤を用いて酸性条件で合成したBiPh-HMM-aとBiPh-HMM-a-sは、2θ=0.5〜1°にメソ構造を示す明瞭なピークが見られたが、骨格内のビフェニルの周期性を示すピークは小さかった。実施例8で得られたBiPh-HMM-aの窒素吸着等温線を図17に示した。比表面積は926m2/gと高かった。細孔径は5.5nmであった。以上の結果から、酸性条件下でP123をテンプレートとして合成した試料は、規則的な細孔構造を有しているが、細孔骨格のビフェニルの周期性は低いことが確認できた。
【0132】
実施例4〜9における合成条件並びに得られた試料の構造について表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例8で得られたBiPh-HMM-aと実施例4で得られたBiPh-HMM-cの可視吸収スペクトルを図18及び図19にそれぞれ示す。BiPh-HMM-aの吸収スペクトルはブロードで、最大吸収波長(λmax)は300nmであった。またその吸収末端は600nmの長波長まで観測された。一方、BiPh-HMM-cの吸収スペクトルはBiPh-HMM-aのλmaxと同じ303nmに大きな吸収が見られた。ピーク幅はBiPh-HMM-aに比べ狭く、吸収末端は325nmであった。なお、BiPh-HMM-aにおいても240nmのピークは存在していると考えられるが、ピークがブロードなため、280nmと重なっているものと考えられる。
【0135】
図20に実施例4〜9で得られた各試料に対し、300nmの励起光で測定した蛍光スペクトルを示す。ビフェニルの規則性の低いメソ多孔体BiPh-HMM-aは強い蛍光を示さなかった。しかし、高いビフェニルの周期構造を有するメソ多孔体BiPh-HMM-cにおいては、強い蛍光を示した。BiPh-HMM-cについては,試料に励起光(250nm)を照射した時に青く光るのが確認された。ビフェニル(C6H5-C6H5)と比較すると、BiPh-HMM-cの蛍光強度の増加と最大発光波長の可視光側へのレッドシフトが確認された。またベンゼンシリカと比較した場合、π共役の違いによる最大発光波長がレッドシフト、及び蛍光強度の増加も見られた。これは蛍光強度の増加はビフェニレンの量子収率(0.69)がベンゼン(0.29)より高いためであると考えられる。
【0136】
一方、メソ細孔内に界面活性剤を含有したままのPh-HMM-a-sとBiPh-HMM-c-sは、界面活性剤を除去したメソポーラス物質よりも強い蛍光を示することが分かった。これはテンプレート(界面活性剤)がメソ細孔内に導入されたままであることによって、酸素がビフェニル基に接触できず、酸素による消光が抑えられたためと考える。
【0137】
また、テンプレートなしで合成したBiPh-Siはどちらとも強い蛍光強度を示した。しかし、酸性条件で合成したBiPh-Si-Acidの方がBiPh-Si-Baseよりも蛍光強度は強かった。これは酸性条件で合成したBiPh-Si-AcidはBiPh-Si-Baseよりもビフェニルの配向が高いためと考えられる。
【0138】
<薄膜状発光材料の合成と発光特性試験(1)>
(実施例10)
エタノール(EtOH)2gに、イオン交換水0.09g、2N塩酸水溶液10μlを添加し、均一溶液とした。この溶液に、BTEBP0.6gを攪拌しながら加えた。1時間室温下で攪拌した後、界面活性剤であるBrij76(C18H37(EO)10)0.43gを2gのEtOHに溶解させた溶液を添加して、更に1時間攪拌し、透明なゾル溶液を得た。ゾル溶液の組成は、BTEBP:Brij76:H2O:HCl:EtOH=1:0.48:4:0.016:69.4であった。このゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。なお、ディップ条件は、ディップ速度2cm/min、浸漬時間2分とした。
【0139】
実施例10で得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMMc-s-film)のX線回折パターン、蛍光スペクトル、並びに254nmのバックライトを照射した時の薄膜の発光状態を示す写真を図21、図22及び図23にそれぞれ示す。X線回折パターンにはd=6.4nmに強いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図21)。しかし、ビフェニルの周期構造に対応するd=1.19nmのピークは観察されなかった。蛍光スペクトルには380nmを中心に強い発光が確認された(図22)。また、薄膜に254nmのライトを照射すると青く光るのが確認された(図23)。
【0140】
(実施例11〜13)
エタノール(EtOH)2g、イオン交換水0.09gの混合溶媒に、2N塩酸水溶液を10μl添加した。この溶液に、BTEBP0.6gを激しく攪拌しながら添加し、室温下で30分攪拌した。ここに、界面活性剤であるBrij76(C18H37(EO)10)0.43gを2gのEtOHに溶解させた溶液を加え、更に30分攪拌し、透明なゾル溶液を得た。ゾル溶液の組成は、BTEBP:Brij76:H2O:HCl:EtOH=1:0.48:4:0.016:69.44であった。このゾル溶液を2.65gのEtOHで希釈し、溶液Aを調製した。一方、ポリビニルカルバゾール(PVK)0.01gを5gのテトラヒドロフランに溶解させ、溶液Bを調製した。
【0141】
得られるPVK含有ビフェニルシリカ複合材料の薄膜(PVK/BiPh-HMM膜)におけるPVKとBiPh-HMMの含有割合(固形分)が表3に示す組成(重量基準)となるように、所定量の溶液A、Bを混合して混合溶液を調製し、得られた混合溶液を回転数3000rpm、回転時間30sでスピンコートを行うことによって、ガラス基板上に均一なコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た。なお、実施例11においては2.65gのEtOH希釈を行わず、デイップコート法によってコート膜を調製した。
【0142】
【表3】
【0143】
実施例11で得られた試料1、実施例12で得られた試料2、実施例13で得られた試料3にそれぞれ254nmのバックライトを照射した時の薄膜の発光状態を示す写真を図24に示す。いずれの試料においても強い発光が確認された。実施例11〜13で得られた試料1〜3のそれぞれの蛍光スペクトルを図25に示した。
【0144】
<従来の発光材料との発光特性の比較試験>
(比較例1〜3)
本発明の発光材料と従来からある代表的な発光材料の発光スペクトルとを比較するため、従来からある代表的な発光材料として以下の3種類の発光材料を用いた。これらの発光物質の粉末とガラス基板に形成したコート膜(膜厚:200nm)を用意した。なお、コート膜については、各発光材料をスパッタ法により製膜した。
比較例1:Bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl]benzidine(NPB)
比較例2:4,4'-Bis(9-carbazolyl)-biphenyl(CBP)
比較例3:Poly(9-vinylcarbazole)(PVK)。
【0145】
実施例5で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(界面活性剤含有、BiPh-HMM-c-s)の粉末と、比較例1〜3の発光材料の粉末の蛍光スペクトルを測定し、得られた結果を図26に示す。なお、励起波長はBiPh-HMM-c-sに対しては300nm、CBP、NBP、PVKに対しては365nmとした。
【0146】
また、実施例10で得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMM-c-s-film)と、比較例1〜3の発光材料の薄膜の蛍光スペクトルを測定し、得られた結果を図27に示す。なお、励起波長はBiPh-HMM-c-s-filmに対しては300nm、CBP、NBP、PVKに対しては256nmとした。
【0147】
図26及び図27に示した結果を比較すると、本発明の発光材料であるBiPh-HMM-c-s及びBiPh-HMM-c-s-filmのいずれも、従来の発光材料と同等あるいはそれ以上に強く発光していることが確認された。
【0148】
<モノマー溶液の発光特性との比較試験>
(比較例4)
ジクロロメタンとモノマー試薬である1,4−ビストリエトキシシリルベンゼン(BTEB)とを図28に示す各混合割合(単位はmM)で混合した溶液を調製し、その試料溶液の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図28に示す。
【0149】
(比較例5)
ジクロロメタンとモノマー試薬である1,4−ビストリエトキシシリルビフェニル(BTEBP)とを図29に示す各混合割合(単位はmM)で混合した溶液を調製し、その試料溶液の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図29に示す。
【0150】
BTEBとBTEBPともに蛍光強度において極大を示す濃度があった。その極大となる濃度前後での消光の原因は、試料の濃度が高い時では濃度消光であり、試料濃度が薄い時では分子数のそのもの発光の減少によるものである。
【0151】
(比較例6)
ジクロロメタンとモノマー試薬であるSi源を含まないベンゼンとを図30に示す各混合割合(単位はmM)で混合した溶液を調製し、その試料溶液の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図30に示す。
【0152】
(比較例7)
ジクロロメタンとモノマー試薬であるSi源を含まないビフェニレンとを図31に示す各混合割合(単位はmM)で混合した溶液を調製し、その試料溶液の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図31に示す。
【0153】
図32に示す最大蛍光強度と濃度との関係から明らかなように、ベンゼンとビフェニレンの最大発光強度は、Si源を含んでいるBTEBとBTEBPよりもともに低かった。これは置換基による影響であると考えられる。
【0154】
また、すべての試料の最大発光波長(λmax)を濃度に対してプロットした結果を図33に示す。シリカ源を有するBTEBとBTEBPの最大発光波長は、低濃度において大きくブルーシフトした。にもかかわらずベンゼンとビフェニレンではその現象は見られなかった。この違いはBTEBとBTEBPの置換基がエトキシ基を有しているために、高濃度においては分子会合体を形成することによる影響であると考えられる。
【0155】
次に、実施例5で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c-s)の粉末と実施例9で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-a-s)の粉末とモノマーであるBTEBPの溶液の蛍光スペクトルを測定し、その結果を図34に示す。その結果、実施例5で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の蛍光強度がモノマー溶液の最大蛍光強度よりも約10倍高く、実施例9で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の蛍光強度もモノマー溶液の最大蛍光強度より高いことが確認できた。
【0156】
図35には、BTEBP溶液の蛍光強度の濃度変化と、実施例5及び9で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の蛍光強度の濃度変化との比較を示す。なお、BiPh-HMM中のビフェニル基密度は、1000mMのビフェニル濃度に相当する。1000mMのビフェニルモノマーでは完全に濃度消光が起こっているにもかかわらず、ビフェニルが規則的に配列した実施例5で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c-s)では強い蛍光を示すことが確認された。一方、ビフェニルの規則構造が見られない実施例9で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-a-s)ではBTEBP溶液と同程度の蛍光強度しか示さず、BiPh-HMM-c-sの強い蛍光にはビフェニルの特異な配列構造が影響していることが確認された。
【0157】
<層状フェニルシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例14)
イオン交換水(500g)と6規定NaOH水溶液(40g,200mmolNaOH)の混合液にODTMA(16.665g,47.88mmol)を50〜60℃で溶解させた。その溶液にBTEB(20g,49.67mmol)を激しく攪拌しながら室温で加えた。その混合液を超音波器に20分かけて、分離していた疎水性のBTEBを水溶液中に分散させ、室温で20時間攪拌し続けた。固形分をろ過して乾燥し、層状フェニルシリカ複合材料(9.5g)を得た。
【0158】
図36に得られた層状フェニルシリカ複合材料の粉末X線回折パターンを示す。2θ=10°以下の低角域に、d=37.2Åと18.6Åの明確な回折ピークが観察されたことから、この物質は層状構造をしていることが確認された。更に、広角域にはd=4.2Åのピークが観察されることから、フェニル基が規則的に配列した構造が形成されていることが確認された。
【0159】
図37に得られた層状フェニルシリカ複合材料の29Si MAS NMRスペクトルを示す。d=−72.7と−81.2ppmに2本のシグナルが観察されるが、それぞれはT2[SiC(OH)(OSi)2]とT3[SiC(OSi)3]に帰属される。これらの結果から、得られた層状フェニルシリカ複合材料は図38に示したように、1枚のフェニルシリカのシートの厚さが約10Åの層状構造をしていることが確認された。また、図39に示した蛍光スペクトル(励起光波長:260nm)から明らかなように、得られた層状フェニルシリカ複合材料は強い蛍光を示すことが確認された。
【0160】
<層状ビフェニルシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例15)
4.5gのODTMAを水50mlに溶解させ、800μlの6規定NaOH水溶液を加えた。この溶液を氷冷により4℃に冷却してから2gのBTEBPを加え、超音波処理を20分行い、氷冷しながら24時間攪拌を行った。白色の沈殿が生成したので、それをろ過により回収し、乾燥して層状ビフェニルシリカ複合材料(8.9g)を得た。
【0161】
図40に得られた層状ビフェニルシリカ複合材料の粉末X線回折パターンを示す。図40に示したXRDパターンから、この試料は層間距離が30.0Åの層状構造をしていることが確認された。この層間距離は、ちょうど界面活性剤のモノレイヤーと架橋有機シランからなる層状構造に相当していた。
【0162】
次に、得られた層状ビフェニルシリカ複合材料(0.08g)にトルエン(10μl)を垂らし、再度粉末X線回折パターンを測定した。図41に示したXRDパターンから明らかなように、層間の拡張が観察された。このことから、得られた層状ビフェニルシリカ複合材料においては、ビフェニルシリカのナノシートをばらばらに分散させることが可能であることが確認された。また、図42に示した蛍光スペクトル(励起光波長:300nm)から明らかなように、得られた層状ビフェニルシリカ複合材料は強い蛍光を示すことが確認された。
【0163】
<アントラセンの導入と発光特性試験>
(実施例16〜18)
9,10−ビストリエトキシシリルアントラセン(BTEA)はアズマックスから購入したものを使用した。実施例1で得られたフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-c)を用い、その細孔表面の−OH基にBTEAを以下の方法によって修飾せしめた。すなわち、トルエン溶媒(65ml)にBTEA(0.1〜0.8g)を溶解させた後、その中にPh-HMM-c(1g)を分散させ、50℃で5時間攪拌した。次いで、室温まで放置した後、濾過し、得られた固体をアセトン、ジエチルエーテルで洗浄して乾燥させ、少し黄色みがかった粉末を得た。このようにして、Ph-HMM-c 1gに対して表4に示すようにBTEAの濃度を変えて、Ant/Ph-HMM0.1(実施例16)、Ant/Ph-HMM0.2(実施例17)、Ant/Ph-HMM0.8(実施例18)の3種類のアントラセンを固定化したフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体を得た。
【0164】
【表4】
【0165】
図43に、実施例16〜18で得られた各試料及び実施例1で得られたPh-HMM-cのX線回折パターンを示す。どの試料においも2θ=2〜5°にヘキサゴナル構造を示すd10,d11,d20のピークが見られ、規則的なメソ構造が構築されていることが確認できた。また、2θ=10〜40°において骨格のフェニル基が周期的に配列していることを示す3つのピークも見られ、結晶性の骨格構造が確認できた。以上の結果から、BTEAを導入することによってピーク強度の低下が見られたものの、細孔構造及び骨格の周期性を保持したままBTEAを導入できたことが確認された。なお、BTEAの導入量のより少ないAnt/Ph-HMM0.1及びAnt/Ph-HMM0.2も同様のX線回折パターンを示し、細孔構造及び骨格の周期性を保持したままBTEAを導入できた。
【0166】
実施例1で得られたPh-HMM-cのN2吸着等温線を図44に、実施例16で得られた試料のN2吸着等温線を図45に、実施例17で得られた試料のN2吸着等温線を図46に、実施例18で得られた試料のN2吸着等温線を図47にそれぞれ示す。これらのN2吸着等温線に基づいて、実施例16〜18で得られた各試料及び実施例1で得られたPh-HMM-cの比表面積をBET法により、中心細孔直径をBJH法により、細孔容量をt-plot法によりそれぞれ算出し、得られた結果を表5に示す。
【0167】
【表5】
【0168】
図44〜47に示した全ての試料においてメソ多孔体特有のIV型の吸着等温線を示しており、中心細孔直径が2.5から3nmの均一な細孔を有していることが確認された。また、BTEAの導入量の増加にしたがって比表面積、細孔容量が低下しており、かつ中心細孔直径が小さくなっていた。これは、アントラセンが細孔内に導入されたことに起因していると考えられる。
【0169】
Ph-HMMにBTEAを導入した実施例18の試料の13C-CP-NMRの結果を図48に示す。BTEAを導入していないPh-HMMのみのNMRの結果と比較すると、60ppm付近に見られるピーク(*)以外は同じであり、BTEA自体のピークはほとんど確認されなかった。
【0170】
また、Ph-HMMにBTEAを導入した実施例18の試料の29Si-MAS-NMRの結果を図49に示す。29Si-MAS-NMRでは60〜70ppm付近にBTEAのアントラセン由来のピークと70〜80ppm付近にPh-HMMのベンゼン由来のピークがそれぞれ確認された。このことから、70ppm付近ではアントラセンのT3とベンゼンのT2サイトが重なっていることが確認された。また、100〜120ppmのQサイトのピークが見られないことから、芳香環とSiは切断されておらず、構造が保持されていることも確認された。
【0171】
次に、BTEAを固定したPh-HMMの光特性を調べるために、吸収スペクトル(反射法)及び蛍光スペクトルを測定した。実施例1で得られたPh-HMM-cの吸収スペクトルを図50に、実施例16で得られた試料の吸収スペクトルを図51に、実施例17で得られた試料の吸収スペクトルを図52に、実施例18で得られた試料の吸収スペクトルを図53にそれぞれ示す。Ph-HMMではベンゼンの吸収(260〜280nm)が見られたのに対し、BTEA固定後ではベンゼンの吸収の他に350〜400nmにアントラセンの吸収が確認された。一方、Ph-HMMとBTEAとの物理混合物の吸収スペクトル(図示せず)においてはアントラセンのピークがシャープで長波長側にシフトしており、BTEAを固定化したものとは傾向が異なっていた。これは、Ph-HMMにBTEAのアントラセンが化学結合していることによって生じた差であると考えられ、単なる物理混合ではないことが確認された。
【0172】
次に、Ph-HMMに固定されたBTEAの量を吸収スペクトルにより定量した。なお、試料をそのまま測定した場合はスペクトルの反射が強すぎて正確なスペクトルが得られないため、ブランクとなる硫酸バリウムで希釈してスペクトル測定を行った。すなわち、先ず、Ph-HMMと硫酸バリウムを種々の割合で混合した試料の反射スペクトルを測定した。硫酸バリウム2gに対してPh-HMM0.03gとした時に、フェニル基特有の2つのピークが270〜290nmに見られたが、それ以上の混合比では吸収が飽和に近くなり2つのピークが不明瞭になった。そこで、硫酸バリウム2gに対してPh-HMMを0.03gで混合して吸収スペクトルを測定することとした。
【0173】
続いて、BTEAの検量線を作成するため、所定量(0.0011〜0.0146g)のBTEAをPh-HMM/BaSO4(0.03g/2g)に混合した試料を調製した。そして、ベンゼンとアントラセンの吸収ピークの極大値比を用いてKubelka-Munk関数でプロットした。その結果を図53に示す。プロットは零点を通るよい直線関係を示した。よってこの検量線を使って定量することとした。なお、Kubelka-Munk関数式は、K/S=(1-R∞)2/2R∞{式中、R∞はアントラセンの吸収ピークの極大値(Max390nm)、Kは吸収係数、Sは散乱係数を示す。}である。
【0174】
また、この検量線からBTEA量が増加するにしたがって反射スペクトルにおけるBTEAのピーク極大値が増加していることが確認された。そこで、実際にBTEAを固定した試料の吸収スペクトル(図51〜図53)のBTEAのピーク極大値から、図54に示す検量線を用いてBTEAが固定されたBTEAの量を算出した。その結果を表6に示す。
【0175】
【表6】
【0176】
次に、ベンゼンからアントラセンへのエネルギー移動を調べるため、蛍光スペクトルの測定を行った。先ず、ベンゼンからアントラセンへのエネルギー移動を観察するのに適した波長を以下のようにして確認した。すなわち、図55に示すBTEAのモノマーでの吸収スペクトルの結果より、BTEAは260nmで吸収は持っておらず、450nm付近にアントラセン由来の吸収を有していることが確認された。また、図56は、励起波長260nmにおけるPh-HMM及びBTEAの蛍光スペクトルであるが、Ph-HMMの蛍光スペクトルにおいては320nm付近に大きなピークを示したが、BTEAの蛍光スペクトルはピークが見られないことが確認された。そのため、励起波長260nmはベンゼンからアントラセンへのエネルギー移動を観察するのに適した波長であることが確認された。
【0177】
次に、実施例16〜18で得られた各試料に対して励起波長260nmで蛍光スペクトルを測定した結果を図57に示す。BTEA導入後の試料ではフェニル基、アントラセンそれぞれのピークが320nm、430nmにそれぞれ見られた。これは、BTEAがPh-HMMの細孔内に固定されたことを示している。また、BTEAの導入量が増えるにしたがってアントラセンのピークが大きくなり、かつフェニル基のピークが小さくなった。Ph-HMMの量そのものに変化はないことから、上記の事実からフェニル基からアントラセンへのエネルギーの受け渡しが行われていたことが確認された。
【0178】
以上の結果から、フェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-c)の細孔内にアントラセン前駆体(BTEA)を導入することができ、それによってフェニル基からアントラセンへのエネルギー移動が起きていることが確認された。
【0179】
<ポルフィリンの導入と発光特性試験>
(実施例19〜20)
実施例1で得られたフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-c)及び実施例4で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c)を用いた。そして、アルミニウムポルフィリン錯体(Al-TPPEt)(0.32g)をベンゼン(100ml)中に溶解させ、その中に実施例1及び実施例4で得られたメソ多孔体(1g)を加え、遮光下で24℃で24時間攪拌して各メソ多孔体にAl-TPPEtを物理吸着せしめた。得られた粉末を十分にエタノール及びベンゼンで洗いながらろ過し、赤色の粉末を得た。それぞれをAl-TPPEt/Ph-HMM(実施例19)、Al-TPPEt/BiPh-HMM(実施例20)とした。
【0180】
Ph-HMM-c、BiPh-HMM-c、Al-TPPEt/Ph-HMM及びAl-TPPEt/BiPh-HMMのX線回折パターンを図58に示す。テンプレートとしてODTMA(C18TMA+Cl-)を添加して合成したPh-HMM-cとBiPh-HMM-cにおいては、2θ=1〜3°にメソ構造(2Dヘキサゴナル)を示すピークとともに、骨格内のベンゼンの周期性を示す0.76と1.19nmのピークが確認された。TPPEtをメソ細孔内に導入したAl-TPPEt/Ph-HMMとAl-TPPEt/BiPh-HMMにおいてもPh-HMM-c及びBiPh-HMM-cと同じ位置にピークが見られたことから、吸着処理によってPh-HMM-c及びBiPh-HMM-cの構造が壊れていないことが確認された。
【0181】
次に、Al-TPPEt/Ph-HMMのUV-visスペクトルを図59に、Al-TPPEt/BiPh-HMMのUV-visスペクトルを図60にそれぞれ示す。260〜320nm付近にメソポーラスシリカ壁面のベンゼンとビフェニルのπ−π*遷移に帰属される吸収が見られた。そして400〜700nmの間では、Al-TSPPのSoretバンドとQバンドに帰属される吸収スペクトルが見られ、複合体においてはそれらの両方が確認された。なお、メソ細孔内でのAl-TPPEtの会合状態はAl-TPPEtのSoretバンドのシフトにより見積もることができる。Al-TPPEt/Ph-HMMとAl-TPPEt/BiPh-HMMにおけるAl-TPPEtのSoretバンドはそれぞれ406と413nmとなり、クロロホルム中で会合状態をもたないバンド(422nm)よりブルーシフトしていた。この結果は、Ph-HMM-c及びBiPh-HMM-c中においてAl-TPPEtはH会合体を形成していることを示している。このようなH会合体を形成する要因としては、細孔内に規則的に並んだ疎水部に疎水性であるポルフィリンが並んで吸着されているためであると考えられる。
【0182】
また、Al-TPPEt/Ph-HMMとAl-TPPEt/BiPh-HMMとを比較した場合、前者の方がAl-TPPEtのSoretバンドのブルーシフトが大きかった。この結果から、Ph-HMM-cの細孔壁面がよりH会合体を取りやすくなっていることが確認された。これは、BiPh-HMM-cの疎水部の幅がPh-HMM-cよりも広いため、Al-TPPEtが傾いて吸着してH会合体を取りにくくなっているためであると推察される。
【0183】
次に、Al-TPPEt/Ph-HMM複合体の蛍光スペクトルを図61に示す。260nmの光でPh-HMM-cを励起すると300nm付近に強い蛍光がみられたが、Al-TPPEtを導入した複合体では消光していた。また、Al-TPPEt/BiPh-HMM複合体の蛍光スペクトルを図62に示す。この場合も、300nmの光でBiPh-HMM-cを励起すると380nm付近に強い蛍光がみられたが、Al-TPPEtを導入した複合体では消光していた。このような結果は、Ph-HMM-c及びBiPh-HMM-cからAl-TPPEtへエネルギー移動したことを示している。しかしながら、Al-TPPEtに由来する蛍光は励起光の2倍波に隠れてしまうか若しくは遠赤外に吸収を持つため、本装置では検出できなかったものと考えられる。
【0184】
そこで紫外光ランプ(254nm)で照射しながら、Al-TPPEt粉末、Al-TPPEt/Ph-HMM粉末、Ph-HMM-c粉末、BiPh-HMM-c粉末及びAl-TPPEt/BiPh-HMM粉末の発光状態を観察し、それらの粉末の発光状態を示す写真を図63〜図67にそれぞれ示す。図63〜図67に示した結果から、Al-TPPEtを担持した試料(Al-TPPEt/Ph-HMM及びAl-TPPEt/BiPh-HMM)のみが発光していることが確認された。この事実も、Ph-HMM-c及びBiPh-HMM-cからAl-TPPEtへのエネルギー移動が生じていることを示している。
【0185】
以上の結果から、Ph-HMM-cからAl-TPPEtへのエネルギー移動の機構について以下のように考察する。すなわち、メソ細孔にAl-TPPEtが存在しているために二つの分子は近い距離にあり、この距離に依存したエネルギー移動のぺランモデルが適応できる。ぺランモデルは剛体溶液中や固相におけるエネルギー移動を考察するときによく用いられる。このモデルにおいてはスペクトルの重なりは重要ではなく、ドナーの消光空間にアクセプターが存在する時、エネルギー移動が効率的に起きるというモデルである。今回の複合体の系では、ドナーであるPh-HMM-cの壁面にAl-TPPEtがH会合体として吸着している。故に十分にPh-HMM-cの消光空間にAl-TPPEtが存在し、Ph-HMM-cからAl-TPPEtへのエネルギー移動が効率的に起こったと考えられる。
【0186】
このように、フェニルシリカ複合材料及びビフェニルシリカ複合材料からメソ細孔中のアルミニウムポルフィリンへ効率よくエネルギー移動することが確認できた。光エネルギーを得たポルフィリンは、CO2の固定や高分子合成等の様々な応用が期待できる。また、紫外線領域に蛍光を発するフェニルシリカ複合材料及びビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体に様々な蛍光材料を吸着させることにより、自在に蛍光の色やエネルギーを制御することが可能となる。
【0187】
<耐熱性試験>
(実施例21及び比較例8〜9)
実施例10と同様にして得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMMc-s-film)(実施例21)と、比較のための従来の膜状蛍光物質{Bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl]benzidine(NPB)(比較例8)及び4,4'-Bis(9-carbazolyl)-biphenyl(CBP)}(比較例9)とを150℃の電気炉中に30分放置した後に、熱処理後の薄膜の外観を肉眼により観察した。
【0188】
実施例21(実施例10)で得られたBiPh-HMMc-s-filmにおいてはその薄膜の透明性に何ら変化はなかったのに対し、比較のための従来の膜状蛍光物質(NPB及びCBP)(比較例8〜9)はいずれも白濁してしまっていた。このような白濁は蛍光物質の結晶化によるものと考えられる。この結果から、本発明の発光材料は耐熱性に優れていることが確認された。したがって、ビフェニルシリカ複合材料を色素レーザーの色素レーザー素子として用いると色素レーザーの長寿命化が図れることが確認された。また、ビフェニルシリカ複合材料は光増幅器の色素素子としても耐熱性に優れることが確認された。
【0189】
<薄膜状発光材料の合成と発光特性試験(2)>
(実施例22)
エタノール(EtOH)4gに、イオン交換水320μl、2N塩酸水溶液10μl及びテンプレートとしてのノニオン性界面活性剤Brij-76(C18H37(EO)10)0.86gを添加した溶液に、下記構造を有するBTEBPを1.2g加え、室温下で1時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、ガラス基板上にコート膜(膜厚:100〜500nm)を得た。なお、コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。さらに、得られた膜を100℃で1時間以上乾燥させた。
【0190】
【化8】
【0191】
実施例22で得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMMc-s-film2)のX線回折パターンを図68に、蛍光スペクトル(実線、励起波長:280nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:360nm)を図69にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいてd=7.2nmに強いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図68)。また、励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、360nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図69)。
【0192】
(実施例23〜24)
表7に示す組成となるように、エタノールにイオン交換水、2N塩酸水溶液及びテンプレートとしての非イオン系界面活性剤P123[(EO)20-(PO)70-(EO)20]をそれぞれ添加した溶液に、Si源として表7に示す量のBTEB(実施例23)又はBTEBP(実施例24)を加え、室温下で1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。このゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。なお、ディップ条件は、ディップ速度2cm/min、浸漬時間2分とした。さらに、得られた膜を空気中250℃で2時間焼成した。
【0193】
【表7】
【0194】
実施例23で得られたフェニルシリカ複合材料の薄膜(Ph-HMM)及び実施例24で得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMM)の焼成前後のX線回折パターンを図70及び図71にそれぞれ示す。焼成前後においてPh-HMM薄膜とBiPh-HMM薄膜はそれぞれ規則的なメソ構造を有することが確認された。
【0195】
次に、Ph-HMM薄膜及びBiPh-HMM薄膜の焼成前後の蛍光スペクトルを図72及び図73にそれぞれ示す。焼成前後においてPh-HMM薄膜とBiPh-HMM薄膜はそれぞれ強い蛍光を示すことが確認された。
【0196】
(実施例25)
エタノール(EtOH)2gに、イオン交換水90μl及び2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液に、BTEBPを0.3g加え、室温下で1時間30分攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜500nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0197】
実施例25で得られたビフェニルシリカ薄膜(BiPh-acid-film)の蛍光スペクトル(実線、励起波長:280nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:360nm)を図74に、UVスペクトルを図75にそれぞれ示す。励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、360nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図74)。また、UVスペクトルの結果から、250〜270nmを中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図74)。
【0198】
(実施例26)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水21μl、2N塩酸水溶液5μl及びBrij-76(C18H37(EO)10)0.07gを添加した溶液に、下記構造を有するBTETP0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で24時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0199】
【化9】
【0200】
実施例26で得られたターフェニルシリカ複合材料の薄膜(TPh-HMMc-s-film)のX線回折パターンを図76に、蛍光スペクトル(実線、励起波長:280nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:420nm)を図77にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、ブロードではあるが、d=7.2nmにピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図76)。また、励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、360nmと410nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図77)。
【0201】
(実施例27)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水43μl及び2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液に、BTETP0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で24時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0202】
実施例27で得られたターフェニルシリカ薄膜(TPh-acid-film)の蛍光スペクトル(実線、励起波長:280nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:400nm)を図78に示す。励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、420nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図78)。
【0203】
(実施例28)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水21μl、2N塩酸水溶液5μl及びBrij-76(C18H37(EO)10)0.07gを添加した溶液に、下記構造を有する1,6-BTEPyr0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で15時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0204】
【化10】
【0205】
実施例28で得られたピレンシリカ複合材料の薄膜(Pyr-HMMc-s-film)のX線回折パターンを図79に、蛍光スペクトル(実線、励起波長:350nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:450nm)を図80に、UVスペクトルを図81にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=6.5nmに強いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図79)。また、励起波長を350nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、450nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図80)。また、UVスペクトルの結果から、245nm、280nm及び350nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図81)。
【0206】
(実施例29)
エタノール1gに、イオン交換水10μl及び2N塩酸水溶液2μlを添加した溶液に、1,6-BTEPyr0.1gをエタノール1gに溶解させた溶液を加え、室温下で1時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0207】
実施例29で得られたピレンシリカ薄膜(Pyr-acid-film)の蛍光スペクトル(実線、励起波長:350nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:450nm)を図82に、UVスペクトルを図83にそれぞれ示す。励起波長を350nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、470nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図82)。また、UVスペクトルの結果から、240nm、280nm及び350nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図83)。
【0208】
(実施例30)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水43μl、2N塩酸水溶液10μl及びBrij-76(C18H37(EO)10)0.07gを添加した溶液に、下記構造を有するBTEAnt0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で20時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0209】
【化11】
【0210】
実施例30で得られたアントラセンシリカ複合材料の薄膜(Ant-HMMc-s-film)のX線回折パターンを図84に、蛍光スペクトル(実線、励起波長:390nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:500nm)を図85に、UVスペクトルを図86にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、ブロードではあるが、d=5.8nmにピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図84)。また、励起波長を390nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、500nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図85)。さらに、UVスペクトルの結果から、250nm及び380nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図86)。
【0211】
(実施例31)
4,4’-ジブロモオクタフルオロビフェニル(1.01g)を含有するTHF(2.9ml)溶液を、マグネシウム(0.22g)、ヨウ素(0.10g)及びクロロトリエトキシシラン(1.05g)を含有するTHF(2.9ml)溶液中に、アルゴン雰囲気下60℃で滴下した。この反応混合物を75℃で18時間還流した後、溶媒を留去した。次いで、残査からヘキサン(30ml)を用いて生成物を抽出し、黄色のオイル状粗生成物を得た。これを減圧下(100hPa)350℃で加熱することによって、茶色のガラス状の固体としてオクタフルオロビフェニルシリカを得た。
【0212】
得られたオクタフルオロビフェニルシリカをサンプルフォルダに固定し、蛍光スペクトル及び励起スペクトルの測定を行ったところ、励起波長を360nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、440nmに蛍光ピークを示すことが確認された(図87)。さらに、測定波長を430nmとして励起スペクトルを測定した場合、370nmを中心とした350nmから400nmにわたるブロードな励起ピークを示すことが確認された(図87)。
【0213】
<粉末状発光材料の合成と発光特性試験>
(実施例32〜36)
イオン交換水6g及び12N塩酸水溶液333μlを混合した溶液を2つ(実施例35,36用)、さらにその溶液に界面活性剤である1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)を0.08g溶解させた溶液を3つ(実施例32〜34用)用意した。次いで、それらの溶液に、それぞれ表8に示す有機ケイ素化合物(有機架橋型シリカ前駆体)0.1gをエタノール1gに溶解させた溶液を激しく攪拌しながら添加し、超音波処理を15分間行った。そして、得られた各混合物を室温で24時間攪拌した後、密閉容器中100℃で20時間加熱し、室温まで冷却した後にろ過、洗浄及び乾燥させて目的とする粉末状の試料を得た。
【0214】
【表8】
【0215】
実施例32〜36で得られた各試料の蛍光スペクトル及び励起スペクトルを測定した。得られた結果を図88(実施例32)、図89(実施例33)、図90(実施例34)、図91(実施例35)、図92(実施例36)に示し、それぞれの最大励起波長と最大発光波長を表8に示す。
【0216】
BTETPを用いて合成した実施例32で得られた試料(Tph-HMM-acid)と実施例35で得られた試料(Tph-acid)はともに、340nmを中心とした励起スペクトルを示し、420nmを中心とした発光スペクトルを示すことが確認された。また、1,6-BTEPyrを用いて合成した実施例33で得られた試料(Pyr-HMM-acid)と実施例36で得られた試料(Pyr-Acid)はともに、390〜410nmを中心とした励起スペクトルを示し、460〜480nmを中心とした発光スペクトルを示すことが確認された。さらに、BTEAntを用いて合成した実施例34で得られた試料(Ant-HMM-Acid)は、420nmを中心とした励起スペクトルを示し、520nmを中心とした発光スペクトルを示すことが確認された。
【0217】
<他の発光性化合物の導入と発光特性試験>
(実施例37)
テンプレートとなるオクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(ODTMA)と光機能性分子であるフルオレセイン(Fl、東京化成工業社製)とをそれぞれ表9に示す組成となるように同表に示す塩基性水溶液(6N NaOH+H2O)に添加し、超音波処理を行って溶解させた。次に、それらの溶液に表9に示す量のBTEBPを加え、20分間超音波を用いて攪拌した。そして、このようにして得られた各混合物を1日室温下で攪拌した後、100℃で一昼夜加熱し、得られた沈殿物をろ過により取り出して蒸留水で洗浄し、目的とする試料を得た。
【0218】
【表9】
【0219】
実施例37で得られた試料1(BiPh-HMM粉末)、試料2(F1(0.5mg)/BiPh-HMM粉末)、試料5(F1(5mg)/BiPh-HMM粉末)のX線回折パターンをそれぞれ図93、図94、図95に示す。Flを担持していない試料1と同様に、試料2及び試料5のいずれにおいても、2θ=2°付近にメソ構造に起因した回折ピーク、2θ=8、15°付近に細孔骨格にビフェニル基が規則的に配列していることを示す周期構造回折ピークが確認できた。このように、Flを添加した系において、結晶骨格を有するBiPh-HMM粉末が調製できたことが確認された。
【0220】
また、実施例37で得られた試料1〜5の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を図96に示す。Flを担持していない試料1の蛍光スペクトルには370nmに極大値を有するピークのみが観察された。一方、Flを担持した試料2〜5においては370nmのピークと530nmに極大値を有するFlのピークの両方が確認された。Flのエタノール溶液は300nmの励起で蛍光を示さなかったことから、BiPh-HMMからFlへのエネルギー移動によって530nmで発光するようになったことが確認された。また、Flの添加量が増加するに従い、370nmのBiPh-HMMの蛍光スペクトルが減少し、530nmのFlの蛍光スペクトルが増加した。このことから、Flが増加するに従い、BiPh-HMMからFlへのエネルギー移動が起こったことが確認された。
【0221】
また、実施例37で得られた試料5からエタノール抽出によって界面活性剤を除去し、その構造及び蛍光特性の変化を調べた結果、メソ構造とビフェニル基の規則構造は全く変化しなかったのに対し、Flの蛍光は全く示さなくなった。このことから、F1が界面活性剤中に取り込まれていたことが確認された。図97に、実施例37で得られた試料(F1/BiPh-HMM粉末)の構造模式図を示す。
【0222】
(実施例38)
テンプレートとなるBrij76(C18H37(EO)10)0.43gと光機能性分子である所定量{0mg(試料1)、11mg(試料2)、30mg(試料3)}のフルオレセイン(F1)とを、イオン交換水0.09g、エタノール3g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、20分間攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に2時間攪拌した。そして、このようにして得られた各溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。なお、BTEBPに対するFlのモル比は、試料1が0mol%、試料2が2mol%、試料3が5mol%となった。
【0223】
実施例38で得られた試料2(F1(2mol%)/BiPh-HMM薄膜)のX線回折パターンを図98に示す。この試料ではメソ構造に帰属されるピークが2θ=1〜2°付近に観測され、規則的なメソ構造を有していることが確認された。
【0224】
また、実施例38で得られた試料1〜3の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を図99に示す。BiPh-HMM薄膜(試料1)は370nmの最大蛍光波長のみを示したのに対し、Flを導入すると370nmの蛍光ピークは減少してFlの530nm付近のピークが増加し、Flの量を増やすとその傾向が顕著になることが確認された。
【0225】
なお、紫外光照射下で実施例38で得られた各試料を観察すると、Flの量が0mol%の場合は青紫、2mol%の時は青、そして5mol%の時は緑色を呈していた。
【0226】
次に、実施例38で得られた試料2(F1(2mol%)/BiPh-HMM薄膜)を用いてビフェニル基の吸収波長の300nmの光とFlの吸収波長の420nmの光で励起した時の蛍光スペクトルの比較を行なった。得られた結果を図100に示す。300nmで励起した場合はFlの強い発光(530nm)が観察されたが、420nmで励起した場合は弱い蛍光しか観察されなかった。このことは、ビフェニル基からのエネルギー移動によりFlを効率的に光らせることができることを示しており、メソポーラス骨格による光捕集効果が確認された。
【0227】
(実施例39〜40)
テンプレートとなるBrij76(C18H37(EO)10)0.5gと光機能性分子である所定量のローダミンB(実施例39、アルドリッチ社製)又はピレン(実施例40、東京化成工業社製)とを、イオン交換水360μl、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。そして、このようにして得られた各ゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0228】
なお、実施例39において、ローダミンの量は、0mg(0mol%)、2.6mg(0.5mol%)、5.2mg(1mol%)、10mg(2mol%)、26mg(5mol%)と変化させた。また、実施例40において、ピレンの量は、12mg(5mol%)、25mg(10mol%)、50mg(20mol%)と変化させた。括弧内はBTEBPに対するローダミン又はピレンのモル比である。
【0229】
実施例39及び40で得られた各試料についてX線構造解析を行ったところ、色素(ローダミン又はピレン)を導入したBiPh-HMM薄膜のいずれにおいてもメソ構造を示すピーク(d=6.5nm)を示すことが確認された。
【0230】
また、実施例39で得られた各試料(ローダミン/BiPh-HMM薄膜)の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を図101に、実施例40で得られた各試料(ピレン/BiPh-HMM薄膜)の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を図102にそれぞれ示す。ローダミンを導入した試料及びピレンを導入した試料のいずれにおいても、色素の導入量の増加に伴ってビフェニル基の蛍光の減少及び色素の蛍光の増加が見られたことから、ビフェニル骨格から色素へのエネルギー移動が起こっていることが確認された。
【0231】
さらに、実施例40で得られた各試料(ピレン/BiPh-HMM薄膜)において、BTEBPに対する色素の導入量が20mol%となるまでピレンを導入してもモノマー発光の強度が高かった。このことから、メソ細孔内において、色素は、高濃度でも会合しにくいことが確認された。
【0232】
(実施例41〜42)
テンプレートとなるBrij76(C18H37(EO)10)0.5gと光機能性分子であるEuCl3(実施例41、和光純薬工業社製)40mg又はTbCl3(実施例42、和光純薬工業社製)38mgとを、イオン交換水360μl、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。そして、このようにして得られた各ゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0233】
実施例41及び42で得られた各試料についてX線構造解析を行ったところ、希土類イオン(EuCl3又はTbCl3)を導入したBiPh-HMM薄膜のいずれにおいてもメソ構造を示すピーク(d=6.3nm)を示すことが確認された。
【0234】
また、EuCl3及びTbCl3は、それらのエタノール溶液の吸収スペクトルを示す図103から明らかなように、それぞれ紫外光領域に吸収(EuCl3:250、270nm、TbCl3:220nm)を持っているが、それらをそれぞれの最大吸収波長で励起しても蛍光スペクトルはほとんど見られなかった。
【0235】
実施例41で得られた試料(EuCl3/BiPh-HMM-film)の蛍光スペクトル(励起波長:280nm)を、BiPh-HMM-film及びEuCl3エタノール溶液の蛍光スペクトルと共に図104に示す。また、実施例42で得られた試料(TbCl3/BiPh-HMM-film)の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を、BiPh-HMM-film及びTbCl3エタノール溶液の蛍光スペクトルと共に図105に示す。EuCl3を導入した試料及びTbCl3を導入した試料のいずれにおいても、色素の導入量の増加に伴ってビフェニル基の蛍光の減少及び色素の蛍光の増加が見られたことから、ビフェニル骨格から色素へのエネルギー移動が起こっていることが確認された。
【0236】
また、これらの試料に紫外線(254nm)を照射したところ、EuCl3/BiPh-HMM-filmが赤紫に、TbCl3/BiPh-HMM-filmが青色に強く発光していることが確認された。
【0237】
(実施例43)
テンプレートとなるBrij76(C18H37(EO)10)0.43gと蛍光色素である所定量の7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン(シグマ-アルドリッチ社製、以下「クマリン」という)とを、イオン交換水0.18g、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に室温で2時間攪拌してゾル溶液を得た。
【0238】
なお、クマリンの量は、0mg(0mol%)、0.188mg(0.06mol%)、0.37mg(0.12mol%)、0.56mg(0.18mol%)、0.75mg(0.24mol%)、0.94mg(0.3mol%)、1.88mg(0.6mol%)、3.7mg(1.2mol%)、5.6mg(1.8mol%)、7.5mg(2.4mol%)、9.4mg(3.0mol%)、18.8mg(6.0mol%)と変化させた。括弧内はBTEBPに対するクマリンのモル比である。
【0239】
また、クマリンの光2量化反応等による劣化を防ぐために、上記のゾル溶液の調製は遮光下で行なった。そして、このようにして得られた各ゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0240】
図106にクマリンを導入していないBiPh-HMM-filmのX線回折パターンを、図107にクマリンを3mol%導入したクマリン(3mol%)/BiPh-HMM-filmのX線回折パターンをそれぞれ示した。どちらの薄膜においてもメソ構造に起因した回折が2θ=1〜2°に観察された。このことから、クマリンを導入してもBiPh-HMM膜のメソ構造が保持されていることが確認された。
【0241】
図108に種々の量のクマリンを導入したクマリン/BiPh-HMM-filmの蛍光スペクトル(励起波長:270nm)を示した。クマリンを導入していないBiPh-HMM-filmの蛍光スペクトルにおいては、370nmにのみビフェニル基による発光が見られた。一方、クマリンを導入すると、クマリンに起因する430nmの発光が見られるようになり、同時にビフェニルに起因する370nmの発光強度の急激な低下が起こった。BiPh-HMM中のビフェニル基に対して1.8mol%以上のクマリンを導入したところで、ビフェニル基の発光はほぼゼロとなった。このクマリン/BiPh-HMM-filmは紫外線の照射下で鋭く青色発光することが確認された。
【0242】
図109に、BiPh-HMM-film、クマリンのエタノール溶液、クマリン(1.8mol%)/BiPh-HMM-filmの蛍光及び励起スペクトルを比較して示した。この図から、BiPh-HMM-filmとクマリンの励起波長がほとんど重なっていないことが分かる。すなわち、270nmの光では、BiPh-HMM-filmが優先的に励起されることが分かる。このことから、BiPh-HMMからクマリンへのエネルギー移動が起こっていることが確認された。
【0243】
また、クマリン(1.8mol%)/BiPh-HMM-filmを270nmと380nmで励起したところ、270nm励起の方が380nm励起よりもクマリンの蛍光強度が8倍(面積比)も強いことが分かった(図109)。更に、クマリンの導入量が0.12mol%の時は、両者の励起波長における蛍光強度の比が48倍となった。すなわち、クマリンの直接励起よりも、BiPh-HMMからエネルギー移動させた方が、クマリンを効率的に発光できることが確認された。これは、BiPh-HMMが効率的に光を捕集し、そのエネルギーを効率的にクマリンに注入できたためと本発明者らは推察する。
【0244】
(実施例44)
蛍光色素である所定量のクマリンを、イオン交換水0.18g、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に室温で2時間攪拌してゾル溶液を得た。
【0245】
なお、クマリンの量は、0mg(0mol%)、0.047mg(0.015mol%)、0.094mg(0.03mol%)、0.47mg(0.15mol%)、0.94mg(0.3mol%)、4.7mg(1.5mol%)、9.4mg(3.0mol%)と変化させた。括弧内はBTEBPに対するクマリンのモル比である。
【0246】
また、クマリンの光2量化反応等による劣化を防ぐために、上記のゾル溶液の調製は遮光下で行なった。そして、このようにして得られた各ゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0247】
実施例44において得られたクマリンとビフェニルシリカとの複合膜(クマリン/BiPh複合膜)のX線回折パターンを確認したところ、明瞭な回折ピークは見られず、規則的なメソ構造は形成されていないことが確認された。
【0248】
図110に種々の量のクマリンを導入したクマリン/BiPh複合膜の蛍光スペクトル(励起波長:270nm)を示した。その結果から、界面活性剤を使用しない系においても、ビフェニル基からクマリンへの励起エネルギーが移動していることが確認された。また、このクマリン/BiPh複合膜も紫外線の照射下で鋭く青色発光することが確認された。
【0249】
(実施例45及び比較例10〜11)
予め一定濃度の燐光錯体Ir(ppy)3溶液(溶媒の混合比率、エタノール:THF=1:4)を以下のようにして作製した。すなわち、先ず、Ir(ppy)3(同仁化学社製)23mg(3.5×10-5mol)を、THF30.7g及びエタノール7.8gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。この溶液をXとする。
【0250】
次に、この溶液Xの濃度をaとした場合、4種類(a、0.75a、0.5a、0.25a)の濃度の溶液(それぞれD、C、B、Aとする)を準備する。但し、各溶液の重量は8gとし、溶媒の混合比率はエタノール:THF=1:4にする。これらA、B、C、Dの各溶液に、界面活性剤としてBrij76(C18H37(EO)10)0.43gと、6N塩酸水溶液10μlと、純水180μlとを混合し、10分間攪拌した(それぞれA’、B’、C’、D’とする)。その後、A’、B’、C’、D’の各溶液にBTEBPを0.6g添加し、1日攪拌して均一なゾル溶液を作製した(それぞれA”、B”、C”、D”とする)。
【0251】
このようにして得られたA”、B”、C”、D”のゾル溶液におけるIr(ppy)3のBTEBPに対するモル比率は、それぞれ、0.14mol%、0.28mol%、0.42mol%、0.58mol%である。
【0252】
そして、このようにして得られた各ゾル溶液に石英基板をディップコートし(ディップ時間は1分間、上下移動にそれぞれ2分間ずつかかる)、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0253】
次に、Ir(ppy)3の燐光発光ピーク波長は511nmであるため、その発光を得るための励起スペクトルを測定した。図111に、Ir(ppy)3を0.14mol%導入したIr(ppy)3/BiPh-HMM薄膜の励起スペクトルを、比較のためのIr(ppy)3を0.1wt%導入したIr(ppy)3/PMMA薄膜(比較例10)及びIr(ppy)3を導入していないPMMA薄膜(比較例11)の励起スペクトルと共に示す。PMMA薄膜(膜厚1.1〜1.2μm)の励起スペクトルから、220nm付近では光学的には不活性である。また、その光学的に不活性なPMMAにIr(ppy)3をドープした薄膜(膜厚1.1〜1.2μm)の励起スペクトルから、220nm付近であればIr(ppy)3は直接励起されないことが分かる。一方、BiPh-HMM薄膜自体は220nm付近でも励起されるため、Ir(ppy)3/BiPh-HMM薄膜の励起波長を220nmに設定した。
【0254】
図112に実施例45で得られた各Ir(ppy)3/BiPh-HMM薄膜の燐光スペクトルを示した。燐光材料Ir(ppy)3が励起されない波長(励起波長:220nm、Photon Energy=5.64eV)で励起しても、Ir(ppy)3由来の緑色発光(ピーク発光波長:511nm)が得られたことから、BiPh-HMMから燐光材料へのエネルギー移動が起きていることが確認された。また、Ir(ppy)3の濃度が増加するに従い、ビフェニル由来の紫外発光ピーク(発光波長:370nm、Photon Energy=3.3eV)の強度が減少し、Ir(ppy)3由来の緑色発光ピーク(発光波長:511nm、Photon Energy=2.4eV)の強度が増加する結果が得られた。なお、励起光のピーク強度で規格化をして発光強度を比較している。
【0255】
(実施例46〜48)
実施例4で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c)と、実施例5で得られた界面活性剤を含んだ状態のビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-c-s)とを用いた。
【0256】
先ず、ローダミン6G(R6G、東京化成工業社製)55mgをエタノール24gに溶解させ、R6G溶液Aを調製した。同様に、R6G55mgをエタノール11.4gに溶解させ、R6G溶液Bを調製した。
【0257】
次に、BiPh-HMM-c1gにR6G溶液A2.56gを注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温でエタノールを蒸発させて、BiPh-HMM-cの表面にR6Gを添着(付着又は細孔に充填)させた試料1(実施例46、R6Gの添着量はBiPh-HMM-cに対して0.59wt%)を得た。
【0258】
同様に、BiPh-HMM-c-s各1gにR6G溶液A2.56g又はR6G溶液B2.48gをそれぞれ注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温でエタノールを蒸発させて、BiPh-HMM-c-sにR6Gを添着(付着又は細孔に充填)させた試料2(実施例47、R6Gの添着量はBiPh-HMM-c-sに対して0.59wt%)及び試料3(実施例48、R6Gの添着量はBiPh-HMM-c-sに対して1.2wt%)を得た。
【0259】
このようにして実施例46〜48で得られた試料1〜3(R6GとBiPh-HMMとの混合物)の蛍光スペクトルを、実施例5で得られたBiPh-HMM-c-sの蛍光スペクトルと共に図113に示す。300nmの光で励起すると、BiPh-HMM-c-s特有の370nm付近の蛍光とR6Gの添着に起因する560nm付近の蛍光が見られた。560nm付近の蛍光はBiPh-HMM-c-sからのエネルギー移動か、300nmの励起か、あるいはこれらの両方によるものかは必ずしも定かではないが、BiPh-HMM-c-sに比べて試料1〜3では370nm付近の蛍光強度は低下しており、370nm付近と560nm付近の蛍光強度比は界面活性剤の有無や添着量により異なることから、これらの制御により混色の調整が可能であることが確認された。
【0260】
(実施例49)
実施例5で得られた界面活性剤を含んだ状態のビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-c-s)を用いた。
【0261】
Dansyl Acid(DANS、1-ジメチルアミノナフタレン-5-スルホン酸、東京化成工業社製)57mgを、アセトン18.5gとイオン交換水23.5gとの混合液に溶解させ、DANS溶液を調製した。次に、BiPh-HMM-c-s1gにDANS溶液9.65gを注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温で溶媒を蒸発させて、BiPh-HMM-c-sにDANSを添着(付着又は細孔に充填)させた試料(DANSの添着量はBiPh-HMM-c-sに対して1.3wt%)を得た。
【0262】
このようにして実施例49で得られた試料(DANSとBiPh-HMMとの混合物)の蛍光スペクトルを図114に示す。300nmの光で励起すると、BiPh-HMM-c-s特有の370nm付近の蛍光は低下し、DANSの添着に起因する440nm付近の強い青色蛍光が確認された。
【0263】
(実施例50〜53)
イオン交換水36gに2N塩酸水溶液1mlと界面活性剤であるBrij76(C18H37(EO)10)0.178gとを添加して混合し、均一溶液とした。この溶液に、BTEBPを0.598g攪拌しながら加え、超音波処理を20分間施した。得られた溶液を室温で72時間攪拌し、さらに100℃で24時間攪拌した後、室温まで放冷し、ろ過、洗浄及び乾燥することによって、界面活性剤を含んだ状態のビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の前駆物質(実施例50、BiPh-HMM-c2-s)を得た。実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sのX線回折パターンにおいては、規則的なメソ構造を示す低角度領域(5度以下)にピークが観察されたが、ビフェニルの規則配列を示すピークは観察されなかった。
【0264】
ここでは、実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sと、実施例4で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c)と、実施例5で得られた界面活性剤を含んだ状態のビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-c-s)とを用いた。
【0265】
先ず、クマリン(7-Diethylamino-4-methylcoumarin、アルドリッチ社製)104mgをエタノール20g又は35gに溶解させて、クマリン溶液A及びBを調製した。次に、BiPh-HMM-c1gにクマリン溶液A3.174gを注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温でエタノールを蒸発させて、BiPh-HMM-cの表面にクマリンを添着(付着又は細孔に充填)させた試料1(実施例51、クマリンの添着量はBiPh-HMM-cに対して1.82mol%)を得た。
【0266】
同様に、BiPh-HMM-c-s1gにクマリン溶液B2.842g、BiPh-HMM-c2-s1gにクマリン溶液B3.086gをそれぞれ注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温でエタノールを蒸発させて、BiPh-HMM-c-s又はBiPh-HMM-c2-sにクマリンを添着(付着又は細孔に充填)させた試料2(実施例52、クマリンの添着量はBiPh-HMM-c-sに対して1.87mol%)及び試料3(実施例53、クマリンの添着量はBiPh-HMM-c2-sに対して2.03mol%)を得た。
【0267】
このようにして、実施例51〜53で得られた試料1〜3(クマリンとBiPh-HMMとの混合物)の蛍光スペクトルを、実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sの蛍光スペクトルと共に図115(励起波長:270nm)及び図116(励起波長:370nm)に示す。
【0268】
<導入色素の組み合わせによる白色発光試験>
(実施例54)
Brij76(C18H37(EO)10)0.5gとローダミン6G2mgとクマリン152(アルドリッチ社製)10mgとを、エタノール4g、水360μl及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、その溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。そして、このようにして得られたゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0269】
実施例54で得られた試料についてX線構造解析を行ったところ、ローダミンとクマリンを導入したBiPh-HMM薄膜においてもメソ構造を示すピーク(d=6.3nm)を示すことが確認された。
【0270】
実施例54で得られた試料の蛍光スペクトルを図117に示した。ローダミンとクマリンを導入したBiPh-HMM薄膜においては、460nmのクマリン152の発光と550nmのローダミンの発光との両方が観察された。そして、この薄膜に紫外光(254nm)を照射すると、薄膜が白色発光することが確認された(図118)。
【0271】
<多孔性ビフェニルシリカ複合材料の屈折率測定>
(実施例55)
エタノール2gに、イオン交換水90μl、2N塩酸水溶液10μl及びテンプレートとしてのノニオン性界面活性剤P123((EO)20(PO)70(EO)20)0.2gを添加した溶液に、BTEBPを0.3g加え、室温下で1時間攪拌してゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、ガラス基板上にコート膜(膜厚:300〜600nm)を得た。なお、コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。さらに、得られたコート膜を空気中250℃で2時間焼成することによって、多孔性のBiPh-HMM-a-film(膜厚:500nm)を得た。
【0272】
実施例55で得られたBiPh-HMM-a-filmのX線回折パターンを図119に示す。このBiPh-HMM-a-filmはd=5.6nmにピークを有しており、規則的なメソ構造が存在することが確認された。
【0273】
また、実施例55で得られたBiPh-HMM-a-filmの屈折率をエリプソメトリによって測定した結果を表10に示した。実施例55で得られた多孔性膜は屈折率が1.34であり、細孔を有さないガラス(屈折率=1.7)よりも屈折率が低かった。そのため、本発明の発光材料であって多孔質のものによれば、高い光取り出し効率の達成が可能となることが確認された。
【0274】
【表10】
【0275】
<ビフェニルシリカ複合材料の蛍光量子収率測定>
(実施例56)
粉体や薄膜では、一般に、光の散乱の問題や適当な比較試料がないため、正確な蛍光量子収率の決定ができない。そこで、溶媒に分散し且つ光の散乱が起こらないビフェニルシリカ複合材料の微粒子(直径約200nm)を合成し、標準サンプルとして量子収率が既知の9,10-ジフェニルアントラセン(量子収率:0.90)を基準にしてビフェニルシリカ複合材料の量子収率を決定した。
【0276】
すなわち、先ず、ビフェニルシリカ複合材料の微粒子は次のように合成した。6N水酸化ナトリウム水溶液0.31gとイオン交換水50mlを混合し、そこにBTEBPを1g添加した。この溶液を室温で5分間攪拌した後、超音波処理を20分間施したところ、溶液は白色のエマルジョン状になった。このエマルジョンを内部がテフロン製で外部が金属製のオートクレーブに入れ、回転式のオーブン中120℃で15時間攪拌した。得られた溶液は半透明の状態となり、これをテフロン製のろ紙(100μm径)でろ過した。水分がなくなったところで、500mlの水をろ紙の上から加えて洗浄した。この洗浄操作をもう1回繰り返した後、真空下で1昼夜乾燥処理を施し、ビフェニルシリカ複合材料の微粒子を得た。
【0277】
図120及び図121に、合成したビフェニルシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真を示した。直径が約200nmの微粒子が生成していることが確認された。また、粒子同士の凝集はほとんどなく、それぞれが孤立していることが確認された。
【0278】
図122に、得られたビフェニルシリカ微粒子のX線回折パターンを示した。幾つかのピークが観察され、この物質が分子スケールの周期構造を有していることが確認された。なお、それぞれのピークは、12.0Å(001)、5.9Å(002)、3.9Å(003)、2.9Å(004)、2.4Å(005)と帰属され、12Åの層間距離をもつ層状構造を有していることが分かる。
【0279】
図123には、得られたビフェニルシリカ微粒子の粉末状態における蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を示した。その結果から、370nmを中心にした強い蛍光を示すことが確認された。
【0280】
次に、蛍光量子収率の測定法を説明する。なお、吸収スペクトルの測定には島津社製MPS-2400分光光度計を、蛍光スペクトルの測定には日本分光製FP6600スペクトロフルオロメータを使用した。また、吸収スペクトルの測定には四角セル(10mm)を、蛍光スペクトルの測定には三角セルを使用した。
【0281】
先ず、上記で合成したビフェニルシリカ微粒子を屈折率の近い2-プロパノール(波長が260nmの時の屈折率:約0.4)に分散し、超音波処理を施して透明な溶液を得た。濃度の異なる2種類の分散液を調製したが、ビフェニルシリカのユニット式(SiO1.5-C6H4-C6H4-SiO1.5:MW256)から計算したビフェニルシリカユニット濃度はそれぞれ6.4x10-6、4.8x10-6、3.2x10-6mol/Lとなった。
【0282】
各濃度における分散液のヘイズ値は6.4%(溶媒だけのヘイズ値は0.5%)となり、粒子による散乱の影響は無視できる程小さいことが確認された。これら2種類のビフェニルシリカ微粒子/2-プロパノール分散液の吸収スペクトルを図124に、蛍光スペクトル(励起波長:260nm)を図125にそれぞれ示した。これらの濃度範囲では、吸光度と積分蛍光強度の濃度に対する直線性が得られることから、自己消光等の濃度効果は無いと考えられる。
【0283】
一方、標準サンプルの9,10-ジフェニルアントラセン溶液は文献(J.Phys.Chem.,1983年,87巻,83ページ)に記載の条件に従い、シクロヘキサンを溶媒にして調製した。9,10-ジフェニルアントラセン/シクロヘキサン溶液の吸収スペクトルを図126に、蛍光スペクトル(励起波長:370nm)を図127にそれぞれ示した。これらの濃度範囲(0.31〜1.2x10-6mol/L)では、吸光度と積分蛍光強度の濃度に対する直線性が得られた。
【0284】
次に、ビフェニルシリカ微粒子分散液と標準サンプルの積分蛍光強度を吸光度に対してプロットした(図128)。グラフの傾き(gradxとgradst、下付きのxとstは求めたいサンプルと標準サンプルを示す)から次式により蛍光量子収率を計算した。
【0285】
Φx=φst(gradx/gradst)x(h2x/h2st)
ここで、Φは蛍光量子収率、hは溶媒の屈折率である。2-プロパノールとシクロヘキサンのhは、それぞれ1.3972(波長:260nm)、1.4405(波長:370nm)を使用した。計算の結果、ビフェニルシリカ微粒子の蛍光量子収率は0.28と求められた。
【0286】
同様の方法で、ビフェニルシリカ微粒子の原料である4,4’-ビス(トリエトキシシリル)ビフェニル[(EtO)3Si-C6H4-C6H4-Si(OEt)3]の蛍光量子収率を求めた。BTEBP/2-プロパノール溶液の吸収スペクトルを図129に、蛍光スペクトル(励起波長:255nm)を図130にそれぞれ示した。また、積分蛍光強度と吸光度の関係は図128中にプロットした。これらの傾きからBTEBPの蛍光量子収率は0.27と求められた。
【0287】
(実施例57〜58)
エタノール2gにイオン交換水90μl及び2N塩酸水溶液5μlを添加した後、界面活性剤であるBrij76(C18H37(EO)10)0.215gを添加して混合し、均一溶液とした。この溶液に、BTEBPを0.3g添加し、24時間攪拌してゾル溶液を得た。このゾル溶液をエタノールで4倍希釈した後、スピンコート法によって石英基板上にコート膜を作製し、室温で乾燥させて膜厚約100nmのBiPh-HMM-filmを得た(実施例57)。
【0288】
また、BTEBP添加前の溶液にBrij76を溶解させる際に、BTEBPに対して3mol%となる量のクマリン(アルドリッチ社製)を添加するようにした以外は実施例57と同様にして、クマリン担持BiPh-HMM-filmを得た(実施例58)。
【0289】
得られた膜の量子収率を浜松フォトニクス株式会社製の有機EL量子収率測定装置(C9920-01)を用いて測定した。なお、この装置は、量子収率が0.2と既知であるAlQ3(Jpn.J.Appl.Phys.,43,11A,(2004)7730を参照)を測定し、予め補正を行ったものである。得られた結果を表11に示した。
【0290】
実施例57で得られたBiPh-HMM-filmは、量子収率が0.56で、粉末の試料よりも高い量子収率であった。また、実施例58で得られたクマリン/BiPh-HMM-filmは、量子収率がほぼ1であり、ビフェニル骨格が吸収したエネルギーがほぼ100%クマリンに伝わり、そしてほとんど光に変換されたことが確認された。
【0291】
【表11】
【0292】
<フルオレンシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例59)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒2gに、イオン交換水43μl、2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液にトリブロックコポリマーP123を0.08g溶解させた後、下記構造を有する2,7-BTEFlu0.1gを加え、室温下で20時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚:100〜300nm)を得た。なお、コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。さらに、得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0293】
【化12】
【0294】
フルオレンシリカ複合材料の薄膜(Flu-HMM-s-film)のX線回折パターンを図131に、蛍光スペクトル及び励起スペクトルを図132に、UVスペクトルを図133にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=9.3nmにピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図131)。また、励起波長を270nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、380nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図132)。また、UVスペクトルの結果から、270nm付近、305nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図133)。
【0295】
(実施例60)
イオン交換水12gに12N塩酸水溶液を667μl加えた溶液に、1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)0.154gを溶解させ、そこに2,7-BTEFlu0.2gを加えて激しく攪拌した。超音波処理を2分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに40℃で3日間攪拌した後、ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するフルオレンシリカ複合材料を得た。
【0296】
得られたフルオレンシリカ複合材料の粉末(Flu-HMM-powder)のX線回折パターンを図134に、蛍光及び励起スペクトルを図135にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.5nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図134)。また、励起波長を320nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、385nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図135)。
【0297】
<ピレン複合材料の製造と発光特性試験>
(実施例61)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水21μl、2N塩酸水溶液5μlを添加した溶液に、ノニオン性界面活性剤としてBrij-76(C18H37(EO)10)0.07gを溶解した溶液に、下記構造を有する1,8-BTEPyr0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で15時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚100〜300nm)を得た。コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0298】
【化13】
【0299】
得られたピレンシリカ薄膜(Pyr-HMM-s-film)のX線回折パターンを図136に、蛍光及び励起スペクトルを図137に、UVスペクトルを図138にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいてd=6.5nmに強いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図136)。励起波長を350nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、450nmピークを有した強い発光を示すことが確認された(図137)。また、UVスペクトルの結果から、245nm付近、280nm付近、350nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが分かった(図138)。
【0300】
(実施例62)
イオン交換水6gに12N塩酸水溶液を333μl加えた溶液に、1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)0.08gを溶解させ、そこに1,6-BTEPyr0.1gをエタノール(EtOH)1gに溶解させた溶液を加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で20時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するピレンシリカ複合材料を得た。
【0301】
得られたピレンシリカ複合材料の粉末(Pyr-Acid-powder)のX線回折パターンを図139に、蛍光及び励起スペクトルを図140にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.4nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図139)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、465nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図140)。
【0302】
<アントラセン複合材料の製造と発光特性試験>
(実施例63)
イオン交換水6gに12N塩酸水溶液を333μl加えた溶液に、1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)0.08gを溶解させ、そこに下記構造を有する2,6-BTEAnt0.1gをエタノール1gに溶解させた溶液を加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で20時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するアントラセンシリカ複合材料を得た。
【0303】
【化14】
【0304】
得られたアントラセンシリカ複合材料の粉末(Ant-Acid-powder)のX線回折パターンを図141に、蛍光及び励起スペクトルを図142にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.3nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図141)。また、励起波長を420nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、515nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図142)。
【0305】
<アクリジン複合材料の製造と発光特性試験>
(実施例64)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒2gに、イオン交換水43μl、2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液にトリブロックコポリマーP123を0.08g溶解させた後、下記構造を有するBTEAcr0.1gを加え、室温下で20時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚100〜300nm)を得た。コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0306】
【化15】
【0307】
アクリジンシリカ複合材料の薄膜(Acr-HMM-s-film)の蛍光及び励起スペクトルを図143に示す。励起波長を370nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、560nmと600nmを中心とした長波長の発光を示すことが確認された(図143)。一方、X線回折パターンでは、メソ構造を示すピークを認識できなかった。メソ構造の規則性はあまり高くなかったために、ダイレクトビームに隠れてしまったと考える。
【0308】
(実施例65)
イオン交換水12gに6規定NaOH水溶液を0.2g加えた溶液に、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.16gを溶解させ、そこに2,7-BTEAcr0.2gを加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で20時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するアクリジンシリカ複合材料を得た。
【0309】
得られたアクリジンシリカ複合材料の粉末(Acr-HMM-powder)のX線回折パターンを図144に、蛍光及び励起スペクトルを図145にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.5nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図144)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、520nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図145)。
【0310】
<4,4'''-クァテルフェニル複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例66)
イオン交換水6gに12N塩酸水溶液を333μl加えた溶液に、1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)0.08gを溶解させ、そこに4,4'''-ビストリエトキシシリルクァテルフェニル(4,4'''-BTEQua)0.1gをエタノール1gとTHF0.5gの混合溶媒に溶解させた溶液を加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で20時間加熱した。ろ過、乾燥させて、クァテルフェニルシリカ複合材料を得た。
【0311】
得られたクァテルフェニルシリカ複合材料の粉末(Qua-HMM-powder)のX線回折パターンを図146に蛍光及び励起スペクトルを図147にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、メソ構造を示すピークは見られなかったが、d=1.99nmにクァテルフェニルの周期構造に起因したピークが観察された(図146)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、465nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図147)。
【0312】
<ナフタレン複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例67)
エタノール2gに、イオン交換水90μl、2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液にオクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.087gを溶解させた後、ビストリエトキシシリルナフタレン(BTENph)0.28gを加え、室温下で1時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚100〜300nm)を得た。コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0313】
ナフタレンシリカ複合材料の薄膜(Nph-HMM-s-film)のX線回折パターンを図148に、蛍光及び励起スペクトルを図149にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=3.4nmにピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図148)。また、励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、395nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図149)。
【0314】
(実施例68)
イオン交換水12gに6規定NaOH水溶液を0.2g加えた溶液に、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.16gを溶解させ、そこにBTENph0.2gを加えて激しく攪拌した。超音波処理を10分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で24時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するナフタレンシリカ複合材料を得た。
【0315】
得られたナフタレンシリカ複合材料の粉末(Nph-HMM-powder)のX線回折パターンを図150に、蛍光及び励起スペクトルを図151にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、2θ=1°付近にメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図150)。また、2θ=9°付近に骨格のナフタレンの周期構造に起因したピークが確認された。さらに、励起波長を340nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、360nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図151)。
【0316】
<アクリドン複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例69)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水43μl、2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液にトリブロックコポリマーP123を0.08g溶解させた後、下記構造を有するBTEAcd0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1.5g加え、室温下で1時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚100〜300nm)を得た。コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0317】
【化16】
【0318】
アクリドンシリカ複合材料の薄膜(Acd-HMM-s-film)のX線回折パターンを図152に、蛍光及び励起スペクトルを図153に、そしてUVスペクトル図154にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=9.6nmに鋭いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図152)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、500nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図153)。また、UVスペクトルの結果から、255nm付近、400nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図154)。
【0319】
(実施例70)
イオン交換水12gに6規定NaOH水溶液を0.2g加えた溶液に、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.16gを溶解させ、そこにBTEAcd0.2gをエタノール1gに溶解させた溶液を加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で24時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するアクリジンシリカ複合材料を得た。
【0320】
得られたアクリドンシリカ複合材料の粉末(Acd-HMM-powder)のX線回折パターンを図155に、蛍光及び励起スペクトルを図156にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.6nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図155)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、494nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図156)。
【0321】
<色素レーザーの作製>
(実施例71)
先ず、断面形状が鋸歯状の回折格子(ブレーズド回折格子)(島津製作所社製)と反射率約90%の凹面鏡(シグマ光機社製)とを対向させて、30cm離して配置して共振器とした。なお、回折格子は一次回折光が入射方向に戻る配置(リトロー配置)に設置し、ブレーズ波長は600nmのものを用いた。
【0322】
次に、ローダミンB(アルドリッチ社製)26mgを、イオン交換水360μl、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。その後、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。そして、得られたゾル溶液からキャスト法(熱処理条件:室温にて24時間乾燥後、100℃にて24時間)により、ローダミンBを配合した有機シリカハイブリッド蛍光体の板状物(20mm×20mm×0.5mm)を作製した。
【0323】
次いで、得られた板状物を共振器内部に配置し、さらに回折格子の回折効率を高めるためにビーム拡大器(シグマ光機社製)を回折格子の前に設置した。そして、励起用光源として中心波長193nmのKrFレーザー(ラムダフィジックス社製)を設置して色素レーザーを得た。
【0324】
得られた色素レーザーは、KrFレーザーを照射することによりレーザー発振し、レーザーとして十分な発光量が得られることが確認された。また、回折格子を回転することにより,発振波長が580nmから620nmの範囲で変化することを確認することができた。
【0325】
<光増幅器の作製>
(実施例72)
先ず、実施例71と同様にして得られたゾル溶液から引き上げ法(熱処理条件:室温にて24時間乾燥後、100℃にて24時間)により、ローダミンBを配合した有機シリカハイブリッド蛍光体のファイバー(長さ10mm、直径100μm)を作製した。
【0326】
次に、得られたファイバーの両端にコネクタを付け、さらに光ファイバーを取り付けた。そして、増幅用光源としてInGAlNを活性層とする紫外発光ダイオード(中心波長300nm)と光をスリット状にするためのシリンドリカルレンズとを配置して光増幅器を得た。
【0327】
得られた光増幅器の入射側光ファイバーから波長600nmの弱い光を通してファイバー状の蛍光体を通過させた後、出射側光ファイバーの端面に光検出器を置いて、出射光の強度を測定したところ、入射光の強度が500%増加していることが確認された。
【0328】
(実施例73)
先ず、実施例71と同様にして得られたゾル溶液からキャスト法(熱処理条件:室温にて24時間乾燥後、100℃にて24時間)により、2cm×5cmの基板(ガラス)上にローダミンBを配合した有機シリカハイブリッド蛍光体の矩形導波路(100μm×100μm、長さ10mm)を作製した。
【0329】
次に、得られた矩形導波路の両端に光ファイバーを固定した。そして、増幅用光源としてInGAlNを活性層とする紫外発光ダイオード(中心波長300nm)と光をスリット状にするためのシリンドリカルレンズとを配置して光増幅器を得た。
【0330】
得られた光増幅器の入射側光ファイバーから波長600nmの弱い光を通して蛍光体の矩形導波路を通過させた後、出射側光ファイバーの端面に光検出器を置いて、出射光の強度を測定したところ、入射光の強度が500%増加していることが確認された。
【0331】
(実施例74)
先ず、実施例71と同様にして得られたゾル溶液からキャスト法(熱処理条件:室温にて24時間乾燥後、100℃にて24時間)により、2cm×5cmの基板(ガラス)上にローダミンBを配合した有機シリカハイブリッド蛍光体のスラブ導波路(厚さ20μm、長さ10mm)を作製した。
【0332】
次に、得られたスラブ導波路の両端に信号光をスリット状にするためのシリンドリカルレンズを設置して、さらに光ファイバーを固定した。そして、増幅用光源としてInGAlNを活性層とする紫外発光ダイオード(中心波長300nm)と光をスリット状にするためのシリンドリカルレンズとを配置して光増幅器を得た。
【0333】
得られた光増幅器の入射側光ファイバーから波長600nmの弱い光を通して蛍光体のスラブ導波路を通過させた後、出射側光ファイバーの端面に光検出器を置いて、出射光の強度を測定したところ、入射光の強度が500%増加していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0334】
以上説明したように、本発明によれば、レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザー、並びに、色素素子の耐熱性に優れる光増幅器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0335】
【図1】本発明の色素レーザーの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の光増幅器の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】実施例1で得られたPh-HMM-cと実施例2で得られたPh-SiのX線回折パターンを示すグラフである。
【図4】実施例1〜3で得られた試料のN2吸着等温線を示すグラフである。
【図5】実施例3で得られたPh-HMM-aのX線回折パターンを示すグラフである。
【図6】実施例2で得られたPh-SiのSEM写真である。
【図7】実施例1〜3で得られた各試料の可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例1〜3で得られた各試料の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図9】実施例4で得られたBiPh-HMM-cのX線回折パターンを示すグラフである。
【図10】実施例5で得られたBiPh-HMM-c-sのX線回折パターンを示すグラフである。
【図11】実施例4で得られたBiPh-HMM-cのN2吸着等温線を示すグラフである。
【図12】実施例6で得られたBiPh-Si-BaseのX線回折パターンを示すグラフである。
【図13】実施例7で得られたBiPh-Si-AcidのX線回折パターンを示すグラフである。
【図14】実施例6で得られたBiPh-Si-BaseのSEM写真である。
【図15】実施例8で得られたBiPh-HMM-aのX線回折パターンを示すグラフである。
【図16】実施例9で得られたBiPh-HMM-a-sのX線回折パターンを示すグラフである。
【図17】実施例8で得られたBiPh-HMM-aの窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図18】実施例8で得られたBiPh-HMM-aの可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図19】実施例4で得られたBiPh-HMM-cの可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図20】実施例4〜9で得られた各試料の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図21】実施例10で得られたBiPh-HMMc-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図22】実施例10で得られたBiPh-HMMc-s-filmの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図23】実施例10で得られたBiPh-HMMc-s-filmの薄膜の発光状態を示す写真である。
【図24】実施例11〜13で得られた試料1〜3の薄膜の発光状態を示す写真である。
【図25】実施例11〜13で得られた試料1〜3のそれぞれの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図26】実施例5で得られた発光材料の粉末と比較例1〜3の発光材料の粉末の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図27】実施例10で得られた発光材料の薄膜と比較例1〜3の発光材料の薄膜の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図28】BTEB溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図29】BTEBP溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図30】ベンゼン溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図31】ビフェニレン溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図32】最大蛍光強度と濃度との関係を示すグラフである。
【図33】最大発光波長(λmax)を濃度に対してプロットした結果を示すグラフである。
【図34】実施例5及び9で得られた発光材料及びBTEBPの溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図35】実施例5及び9で得られた発光材料及びBTEBP溶液の蛍光強度の濃度変化を示すグラフである。
【図36】実施例14で得られた層状フェニルシリカ複合材料の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図37】実施例14で得られた層状フェニルシリカ複合材料の29Si MAS NMRスペクトルを示すグラフである。
【図38】実施例14で得られた層状フェニルシリカ複合材料の構造を示す模式図である。
【図39】実施例14で得られた層状フェニルシリカ複合材料の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図40】実施例15で得られた層状ビフェニルシリカ複合材料の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図41】実施例15で得られた層状ビフェニルシリカ複合材料にトルエンを垂らした状態の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図42】実施例15で得られた層状ビフェニルシリカ複合材料の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図43】実施例16〜18で得られた各試料及び実施例1で得られたPh-HMM-cのX線回折パターンを示す
【図44】実施例1で得られたPh-HMM-cのN2吸着等温線を示すグラフである。
【図45】実施例16で得られた試料のN2吸着等温線を示すグラフである。
【図46】実施例17で得られた試料のN2吸着等温線を示すグラフである。
【図47】実施例18で得られた試料のN2吸着等温線を示すグラフである。
【図48】実施例18で得られた試料の13C-CP-NMRの結果を示すグラフである。
【図49】実施例18で得られた試料の29Si-MAS-NMRの結果を示すグラフである。
【図50】実施例1で得られたPh-HMM-cの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図51】実施例16で得られた試料の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図52】実施例17で得られた試料の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図53】実施例18で得られた試料の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図54】BTEAの検量線を示すグラフである。
【図55】BTEAのモノマーでの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図56】励起波長260nmにおけるPh-HMM及びBTEAの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図57】実施例16〜18で得られた各試料に対して励起波長260nmで蛍光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
【図58】Ph-HMM-c、BiPh-HMM-c、Al-TPPEt/Ph-HMM及びAl-TPPEt/BiPh-HMMのX線回折パターンを示すグラフである。
【図59】Al-TPPEt/Ph-HMMのUV-visスペクトルを示すグラフである。
【図60】Al-TPPEt/BiPh-HMMのUV-visスペクトルを示すグラフである。
【図61】Al-TPPEt/Ph-HMMの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図62】Al-TPPEt/BiPh-HMMの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図63】Al-TPPEt粉末の発光状態を示す写真である。
【図64】Al-TPPEt/Ph-HMM粉末の発光状態を示す写真である。
【図65】Ph-HMM-c粉末の発光状態を示す写真である。
【図66】BiPh-HMM-c粉末の発光状態を示す写真である。
【図67】Al-TPPEt/BiPh-HMM粉末の発光状態を示す写真である。
【図68】実施例22で得られたBiPh-HMMc-s-film2のX線回折パターンを示すグラフである。
【図69】実施例22で得られたBiPh-HMMc-s-film2の蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図70】実施例23で得られたPh-HMM膜の焼成前後のX線回折パターンを示すグラフである。
【図71】実施例24で得られたBiPh-HMM膜の焼成前後のX線回折パターンを示すグラフである。
【図72】実施例23で得られたPh-HMM膜の焼成前後の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図73】実施例24で得られたBiPh-HMM膜の焼成前後の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図74】実施例25で得られたBiPh-Acid-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図75】実施例25で得られたBiPh-Acid-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図76】実施例26で得られたTPh-HMMc-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図77】実施例26で得られたTPh-HMMc-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図78】実施例27で得られたTPh-Acid-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図79】実施例28で得られたPyr-HMMc-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図80】実施例28で得られたPyr-HMMc-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図81】実施例29で得られたPyr-Acid-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図82】実施例29で得られたPyr-Acid-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図83】実施例30で得られたAnt-HMMc-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図84】実施例30で得られたAnt-HMMc-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図85】実施例30で得られたAnt-HMMc-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図86】実施例31で得られたオクタフルオロビフェニルシリカの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図87】実施例32で得られたTph-HMM-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図88】実施例33で得られたPyr-HMM-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図89】実施例34で得られたAnt-HMM-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図90】実施例35で得られたTph-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図91】実施例36で得られたPyr-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図92】実施例37で得られた試料1(BiPh-HMM粉末)のX線回折パターンを示すグラフである。
【図93】実施例37で得られた試料2(F1(0.5mg)/BiPh-HMM粉末)のX線回折パターンを示すグラフである。
【図94】実施例37で得られた試料5(F1(5mg)/BiPh-HMM粉末)のX線回折パターンを示すグラフである。
【図95】実施例37で得られた試料1〜5の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図96】実施例37で得られた試料(F1/BiPh-HMM粉末)の構造模式図である。
【図97】実施例38で得られた試料2(F1(2mol%)/BiPh-HMM薄膜)のX線回折パターンを示すグラフである。
【図98】実施例38で得られた試料1〜3の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図99】実施例38で得られた試料2の蛍光スペクトルの励起波長依存性を示すグラフである。
【図100】実施例39で得られた各試料(ローダミン/BiPh-HMM薄膜)の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図101】実施例40で得られた各試料(ピレン/BiPh-HMM薄膜)の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図102】EuCl3及びTbCl3のエタノール溶液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図103】実施例41で得られたEuCl3/BiPh-HMM-filmの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図104】実施例42で得られたTbCl3/BiPh-HMM-filmの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図105】BiPh-HMM-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図106】実施例43で得られたクマリン(3mol%)/BiPh-HMM-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図107】種々の量のクマリンを導入したクマリン/BiPh-HMM-filmの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図108】BiPh-HMM-film、クマリンのエタノール溶液及びクマリン/BiPh-HMM-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図109】種々の量のクマリンを導入したクマリン/BiPh複合膜の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図110】Ir(ppy)3/BiPh-HMM薄膜、Ir(ppy)3/PMMA薄膜及びPMMA薄膜の励起スペクトルを示すグラフである。
【図111】実施例45で得られた各Ir(ppy)3/BiPh-HMM薄膜の燐光スペクトルを示すグラフである。
【図112】実施例46〜48で得られたR6GとBiPh-HMMとの混合物の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図113】実施例49で得られたDANSとBiPh-HMMとの混合物の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図114】実施例51〜53で得られたクマリンとBiPh-HMMとの混合物及び実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図115】実施例51〜53で得られたクマリンとBiPh-HMMとの混合物及び実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図116】実施例54で得られたローダミンとクマリンを導入したBiPh-HMM薄膜の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図117】実施例54で得られたローダミンとクマリンを導入したBiPh-HMM薄膜が白色発光している状態を示す写真である。
【図118】実施例55で得られたBiPh-HMM-a-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図119】実施例56で合成したビフェニルシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図120】実施例56で合成したビフェニルシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図121】実施例56で合成したビフェニルシリカ微粒子のX線回折パターンを示すグラフである。
【図122】実施例56で合成したビフェニルシリカ微粒子の粉末状態における蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図123】ビフェニルシリカ微粒子/2-プロパノール分散液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図124】ビフェニルシリカ微粒子/2-プロパノール分散液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図125】9,10-ジフェニルアントラセン/シクロヘキサン溶液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図126】9,10-ジフェニルアントラセン/シクロヘキサン溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図127】積分蛍光強度を吸光度との関係を示すグラフである。
【図128】BTEBP/2-プロパノール溶液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図129】BTEBP/2-プロパノール溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図130】実施例28で得られたPyr-HMMc-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図131】実施例59で得られたFlu-HMM-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図132】実施例59で得られたFlu-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図133】実施例59で得られたFlu-HMM-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図134】実施例60で得られたFlu-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図135】実施例60で得られたFlu-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図136】実施例61で得られたPyr-HMM-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図137】実施例61で得られたPyr-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図138】実施例61で得られたPyr-HMM-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図139】実施例62で得られたPyr-Acid-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図140】実施例62で得られたPyr-Acid-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図141】実施例63で得られたAnt-Acid-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図142】実施例63で得られたAnt-Acid-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図143】実施例64で得られたAcr-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図144】実施例65で得られたAcr-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図145】実施例65で得られたAcr-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図146】実施例66で得られたQua-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図147】実施例66で得られたQua-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図148】実施例67で得られたNph-HMM-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図149】実施例67で得られたNph-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図150】実施例68で得られたNph-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図151】実施例68で得られたNph-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図152】実施例69で得られたAcd-HMM-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図153】実施例69で得られたAcd-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図154】実施例69で得られたAcd-HMM-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図155】実施例70で得られたAcd-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図156】実施例70で得られたAcd-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0336】
1…励起用光源、2…反射鏡、3…色素レーザー素子、4…凹面鏡、5…回折格子、6…ビーム拡大器、11…増幅用光源、12…レンズ、13…色素素子、14…光ファイバー、15…コネクタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素レーザー及び光増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の色素レーザーにおいては、蛍光発光する色素を水もしくはアルコールを含む溶媒中に溶解させた色素溶液を色素レーザーの材料として用いられていた。そして、このように色素溶液を用いたレーザーでは、多くの場合、有機性のレーザー色素の溶解性を高め、確保する必要から溶媒として、有機溶媒が使われるが、実際に励起光を照射してレーザー発光させる際には、励起光の照射により温度が上昇して引火する危険があるため、色素溶液は、冷却機に接続して冷却、循環して使用されていた。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、特開平6−125150号公報(特許文献1)には、蛍光性色素を含有する色素レーザー素子及びこの色素レーザー素子の蛍光性色素の蛍光を誘導放出させてレーザー発振させる励起用光源を備えたものにおいて、上記色素レーザー素子が、界面活性剤(1〜20重量%)およびシクロデキストリン(0.5〜10重量%)の少なくとも一種を含有する水溶液中にローダミンBおよびローダミン6Gを溶解したものであることを特徴とする色素レーザーが開示されており、明細書中において引火する危険性のない水を溶媒とする色素レーザーが記載されている。
【0004】
しかしながら、これらのように色素溶液を用いる色素レーザーにおいては、レーザー発光量を増やすために色素の濃度を高めていくと比較的低濃度においても会合(色素が互いに集まる現象)を起こし、この会合によって蛍光の消光が起こるために、色素の濃度を高めても十分なレーザー発光量を得られないという問題があった。
【0005】
また、特開2004−2491号公報(特許文献2)には、陽イオン交換性無機層状化合物に対し、特定の脂肪族4級アンモニウムイオンと陽イオン性のレーザー色素とを包接、担持せしめてなることを特徴とする一般式(CjH2j+1NR3)n・(LD)1−n・(LM)mで表される蛍光発光性層状無機有機複合体が開示されており、明細書中において固体色素を無機層状化合物に担持したものを用いる色素レーザーが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の従来の色素レーザーは、用いられている固体色素の耐熱性が十分なものでなく、励起光の強さによっては色素が劣化してしまうために、レーザーの寿命という点で未だ十分なものではなかった。また、色素同士による会合の抑制も十分でないために、レーザー発光量という点で未だ十分なものではなかった。
【0007】
一方、光通信といった分野では、光信号を電気に変換することなしに光信号を増幅できるので、光から電気および電気から光への変換のノイズもなく、また装置の構成が簡単になるという利点があることから、信号光を直接増幅させる装置(光増幅器)が用いられるようになってきている。そして、例えば、特開平10−135547号公報(特許文献3)には、ガラス転移温度が180℃以上のベース樹脂及び色素を含む樹脂組成物から成る光導波を行う部分に、ポンプ光を入射してこの部分を励起状態とすると共にこの部分に信号光を伝搬させることにより、この信号光を増幅させることを特徴とする光増幅器が開示されており、明細書中においてポリイミド樹脂をバインダーとする色素素子を有する光増幅器が記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載のような従来の光増幅器においては、用いられている色素素子の耐熱性が十分なものでなく、光増幅器の使用環境条件が制限され、さらにハンダ実装といった加工プロセスにおいて色素素子に変形が起こる可能性があるという点で未だ十分なものではなかった。
【特許文献1】特開平6−125150号公報
【特許文献2】特開2004−2491号公報
【特許文献3】特開平10−135547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザー、並びに、色素素子の耐熱性に優れる光増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、蛍光又は燐光を示す特定の有機分子を有する有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素レーザー素子と、励起用光源と、共振機とを備えることにより、レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の色素レーザーは、下記一般式(1):
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素レーザー素子と、励起用光源と、共振機とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の色素レーザーにおいては、前記R1が低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基、前記nが3であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の色素レーザーにおいては、前記R1が低級アルコキシ基、前記nが3、前記mが2であり、前記有機ケイ素化合物の重合体が下記一般式(2):
【0016】
【化2】
【0017】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の色素レーザーにおいては、前記蛍光又は燐光を示す有機分子が、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の色素レーザーにおいては、前記有機ケイ素化合物の重合体が、前記蛍光又は燐光を示す有機分子の規則的な配列に起因する5nm以下の周期構造を有するものであることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の色素レーザーにおいては、前記有機ケイ素化合物の重合体が多孔体であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の色素レーザーにおいては、前記有機ケイ素化合物の重合体が、中心細孔直径が1〜30nmのメソ多孔体であることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の色素レーザーにおいては、前記発光材料が、他の発光性化合物を更に備えることが好ましい。
【0023】
また、本発明の色素レーザーにおいては、前記発光材料が、界面活性剤を更に備えることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明の色素レーザーにおいては、前記他の発光性化合物が、前記有機ケイ素化合物の重合体に対して吸着、結合、充填及び混合からなる群から選択されるいずれかの状態となっていることが好ましい。
【0025】
また、本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、蛍光又は燐光を示す特定の有機分子を有する有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素素子と、増幅用光源とを備えることにより、色素素子の耐熱性に優れる光増幅器が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
すなわち、本発明の光増幅器は、下記一般式(1):
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素素子と、増幅用光源とを備えることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の光増幅器においては、前記R1が低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基、前記nが3であることが好ましい。
【0030】
また、本発明の光増幅器においては、前記R1が低級アルコキシ基、前記nが3、前記mが2であり、前記有機ケイ素化合物の重合体が下記一般式(2):
【0031】
【化4】
【0032】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明の光増幅器においては、前記蛍光又は燐光を示す有機分子が、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものであることが好ましい。
【0034】
また、本発明の光増幅器においては、前記有機ケイ素化合物の重合体が、前記蛍光又は燐光を示す有機分子の規則的な配列に起因する5nm以下の周期構造を有するものであることが好ましい。
【0035】
さらに、本発明の光増幅器においては、前記有機ケイ素化合物の重合体が多孔体であることが好ましい。
【0036】
また、本発明の光増幅器においては、前記有機ケイ素化合物の重合体が、中心細孔直径が1〜30nmのメソ多孔体であることが好ましい。
【0037】
さらに、本発明の光増幅器においては、前記発光材料が、他の発光性化合物を更に備えることが好ましい。
【0038】
また、本発明の光増幅器においては、前記発光材料が、界面活性剤を更に備えることが好ましい。
【0039】
さらに、本発明の光増幅器においては、前記他の発光性化合物が、前記有機ケイ素化合物の重合体に対して吸着、結合、充填及び混合からなる群から選択されるいずれかの状態となっていることが好ましい。
【0040】
なお、本発明においてレーザー発光量が十分に高く、更に十分に長寿命な色素レーザーが得られる理由、並びに本発明において色素素子の耐熱性に優れる光増幅器が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来の色素レーザー素子として用いられている蛍光又は燐光を示す有機分子(以下、「蛍光分子」という)は、高濃度の状態では分子間の相互作用により消光し効率的に発光しないため、濃度を高めることによる輝度の向上には限界があった。ところが、本発明にかかる発光材料においては、疎水的な蛍光分子と親水的なケイ素含有基とが化学的に結合されていることにより、分子間の相互作用(疎水性−親水性相互作用或いはπ−π相互作用)に基づき蛍光分子とシリカが規則的に並んだ特異な配列構造が形成される。本発明にかかる発光材料においては、蛍光分子の濃度が通常では濃度消光を起こす高濃度状態にあっても、蛍光分子の特異な配列構造のため消光が抑えられ、それぞれの蛍光分子が効率的に発光するようになるために、レーザー発光量が高くなると推察される。更に、本発明にかかる発光材料においては、蛍光分子と安定性に優れる無機物であるシリカとが化学的に結合することにより、蛍光分子の耐熱性が向上する。よって、長寿命の色素レーザーや色素素子の耐熱性に優れる光増幅器が得られるようになると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザー、並びに、色素素子の耐熱性に優れる光増幅器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0043】
<発光材料>
先ず、本発明の色素レーザー及び光増幅器中において用いられる発光材料について説明する。本発明にかかる発光材料は、下記一般式(1):
【0044】
【化5】
【0045】
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなることを特徴とするものである。
【0046】
上記一般式(1)中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子(以下、「蛍光分子」という)を示し、このような蛍光分子としては、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものが好ましい。このエネルギー差が上記下限未満では蛍光又は燐光の波長が長すぎるため、利用が困難となる傾向にあり、他方、上記上限を超えると蛍光又は燐光の波長が短すぎて利用が困難となる傾向にある。
【0047】
このような本発明にかかる蛍光分子としては、具体的には、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、クァテルフェニル、ベンゾフェノン、フルオレン、アントラキノン、ナフタレン、アセナフテン、カルバゾール、トリフェニレン、フェナントレン、アクリジン、アクリドン、アズレン、クリセン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ビアセチル、ベンジル、フルオレセイン、エオシン、ローダミンB、それらのフッ素化物等が挙げられ、中でもベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ターフェニル、フルオレン、アクリジン、アクリドン、クァテルフェニルが好ましい。
【0048】
上記一般式(1)中、R1は、低級アルコキシ基{好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(RO−)}、ヒドロキシル基(−OH)、アリル基(CH2=CH−CH2−)、エステル基(好ましくは炭素数1〜5のエステル基(RCOO−))及びハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子、沃素原子)からなる群から選択される少なくとも一つを示し、中でも縮合反応が制御し易いという観点から低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基が好ましい。なお、同一分子中に複数のR1が存在する場合、R1は同一でも異なっていてもよい。
【0049】
また、上記一般式(1)中、R2は、低級アルキル基{好ましくは炭素数1〜5のアルキル基(R−)}及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示す。なお、同一分子中に複数のR2が存在する場合、R2は同一でも異なっていてもよい。
【0050】
さらに、上記一般式(1)中のn及び(3−n)はそれぞれケイ素原子(Si)に結合しているR1及びR2の数であり、このようなnは1〜3の整数を示すが、縮合した後の構造が安定であるという観点からn=3であることが特に好ましい。また、上記一般式(1)中のmは前記蛍光分子(X)に結合しているケイ素原子(Si)の数であり、このようなmは1〜4の整数を示すが、安定なシロキサンネットワークを形成し易いという観点からm=2であることが特に好ましい。
【0051】
本発明にかかる発光材料は、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を重合せしめてなるものであり、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物として一種のモノマーを重合せしめても、二種以上のモノマーを共重合せしめてもよい。また、本発明にかかる発光材料は、(i)上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物と、上記一般式(1)中のXが蛍光又は燐光を示さない有機分子である有機ケイ素化合物とを共重合せしめてなるものであってもよく、また、(ii)上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物と、それ以外のモノマーとを共重合せしめてなるものであってもよい。以下、前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物、並びに必要に応じて共重合に供されるモノマーを総称して「モノマー」という。
【0052】
このような蛍光又は燐光を示さない有機分子としては、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン等の炭化水素から1以上の水素がとれて生じる1価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。また、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物以外のモノマーとしては、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等のケイ素化合物が挙げられ、更にはアルミニウム、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、モリブデン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ベリリウム、イットリウム、ランタン、ハフニウム、スズ、鉛、バナジウム、ホウ素等の無機系成分を含む金属化合物であってもよい。なお、前記(i)又は(ii)のような共重合の場合、共重合せしめる全モノマー中の上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の割合が30%以上であることが好ましい。
【0053】
上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を重合せしめると、一般式(1)中のSiにR1が結合している部分においては、加水分解とその後の縮合反応によりシロキサン結合(Si−O−Si)が形成される。この時、一部はシラノール基(Si−OH)となる場合があるが、シラノール基が形成されても発光特性に影響はない。例えば、上記一般式(1)におけるR1がエトキシ基、nが3、mが2である有機ケイ素化合物を重合せしめる場合の反応式は、以下の一般式(3):
【0054】
【化6】
【0055】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、pは繰り返し単位の数に相当する整数を示す。]
のようになる。なお、pの数は特に制限されないが、一般的には10〜1000程度の範囲であることが好ましい。
【0056】
このように上記モノマーを重合せしめてなる重合体は、蛍光分子(X)とケイ素原子(Si)と酸素原子(O)とを主成分として骨格が形成されている有機シリカ系材料であり、蛍光分子に結合しているケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格(−X−Si−O−)を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。
【0057】
上記モノマーを重合せしめる方法は特に制限されないが、水又は水と有機溶媒との混合溶媒を溶媒として使用し、酸又は塩基触媒の存在下で前記モノマーを加水分解及び縮合反応せしめることが好ましい。ここで好適に用いられる有機溶媒としてはアルコール、アセトン等が挙げられ、混合溶媒とする場合の有機溶媒の含有量は5〜50重量%程度であることが好ましい。また、使用される酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸といった鉱酸等が挙げられ、酸触媒を使用する場合の溶液はpHが6以下(より好ましくは2〜5)の酸性であることが好ましい。さらに、使用される塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等が挙げられ、塩基触媒を使用する場合の溶液はpHが8以上(より好ましくは9〜11)の塩基性であることが好ましい。
【0058】
このような重合工程における前記モノマーの含有量は、ケイ素濃度換算で0.0055〜0.33mol/L程度であることが好ましい。また、上記重合工程における諸条件(温度、時間、等)は特に制限されず、用いるモノマーや目的とする重合体等に応じて適宜選択されるが、一般的には0〜100℃程度の温度で1〜48時間程度の時間前記有機ケイ素化合物を加水分解及び縮合反応せしめることが好ましい。
【0059】
(蛍光分子の規則的な配列に起因する周期構造を有する発光材料)
前記モノマーを重合せしめてなる重合体(前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の重合体)は、通常はアモルファス構造であるが、合成条件により前記蛍光分子の規則的な配列に起因する周期構造を有することが可能である。このような周期性は使用するモノマーの分子長に依存するが、5nm以下の周期構造であることが好ましい。この周期構造はモノマーが重合した後も保持される。そして、この周期構造の形成は、X線回折(XRD)測定によりd=5nm以下の領域にピークが出現することにより確認することができる。なお、X線回折測定においてこのようなピークが確認されない場合であっても、部分的に周期構造が形成されている場合がある。このような周期構造は、後述する層状構造に伴って形成されるのが一般的であるが、その場合に限定されるものではない。
【0060】
本発明にかかる発光材料において前記蛍光分子の規則的な配列に起因する周期構造が形成されると、発光強度が大幅に向上する傾向にある。このように周期構造の形成により発光強度が大幅に向上する機構については必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、通常、蛍光分子は高濃度(高密度)状態になると濃度消光を起こし、発光効率が低下する。しかしながら、上記のように蛍光分子が規則的に配列すると、均一なバンド構造が形成されかつ維持され、高濃度でも効率的な発光が可能となり、濃度消光の発生がより十分に抑制されるものと本発明者らは推察する。
【0061】
このような蛍光分子の規則的な配列に起因する周期構造を形成するための好適な合成条件としては、以下の諸条件が挙げられる。
(i)前記周期構造はモノマー間に働く相互作用により形成されるため、モノマー間の相互作用が大きくなる有機基(X)、すなわちベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセンを用いることが好ましい。
(ii)溶液のpHが1〜3(酸性)又は10〜12(塩基性)であることが好ましく、10〜12(塩基性)であることがより好ましい。
【0062】
また、このような周期構造は、S.Inagaki et al.,Nature,(2002年)416巻,304〜307頁等に記載の方法に準拠して得ることが可能である。
【0063】
(多孔体である発光材料)
前記モノマーを重合せしめる際の合成条件を制御することにより、或いは原料に界面活性剤を混合することにより、得られる重合体(前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の重合体)に細孔を形成させることが可能である。前者の場合は溶媒が鋳型となり、後者の場合は界面活性剤のミセル又は液晶構造が鋳型となり、細孔を有する多孔体が形成される。
【0064】
特に、後述する界面活性剤を用いると、細孔径分布曲線における中心細孔直径が1〜30nmのメソ孔を有するメソ多孔体が得られるので好ましい。なお、前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径であり、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
【0065】
このようなメソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。この条件を満たすメソ多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。また、メソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、700m2/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0066】
さらに、このようなメソ多孔体は、そのX線回折(XRD)パターンにおいて1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1.5〜30.5nmの間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0067】
また、このようなメソ多孔体が有する細孔は、多孔体の表面のみならず内部にも形成される。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2D−ヘキサゴナル構造、3D−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
【0068】
ここで、多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki et al., J.Chem.Soc.,Chem.Commun., p.680(1993)、S.Inagaki et al., Bull.Chem.Soc.Jpn., 69,p.1449(1996)、Q.Huo et al., Science, 268,p.1324(1995)参照)。また、多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli et al., Chem.Mater., 6,p.2317(1994)、Q.Huo et al., Nature, 368,p.317(1994)参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev et al., Science, 267,p.865(1995)、S.A.Bagshaw et al., Science, 269,p.1242(1995)、R.Ryoo et al., J.Phys.Chem., 100,p.17718(1996)参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Ia−3d、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
【0069】
このように本発明にかかる発光材料中に細孔がある場合、その多孔体に後述する他の発光性化合物を吸着(物理的吸着及び/又は化学的結合)させることが可能となる。その場合、前述の蛍光分子から他の発光性化合物へのエネルギー移動が起こるようになり、その蛍光分子本来の発光波長とは異なる波長の発光が生じることとなる。それにより、導入する蛍光分子と発光性化合物との組み合わせに応じて多色発光が可能となる。また、このような多孔体の細孔壁に前述の周期構造を形成せしめれば、細孔壁中の蛍光分子から他の発光性化合物へより効率良くエネルギー移動が起こるようになり、異なる波長の強い発光を達成することが可能となる。さらに、このような多孔体の細孔内に後述する電荷輸送材料を導入することにより、細孔壁中の蛍光分子をより効率的に発光させることが可能となる。前記メソ多孔体を得るためには、本発明のモノマーに界面活性剤を添加して重縮合することが望ましい。前記モノマーが重縮合する際、添加した界面活性剤が鋳型となってメソ孔ができるからである。
【0070】
前記メソ多孔体を得る際に用いられる界面活性剤は、特に限定されるものではなく、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリエチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム等の塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上混合して用いられる。
【0071】
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式CnH2n+1(OCH2CH2)mOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。また、このような界面活性剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
【0072】
さらに、このような界面活性剤としては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)x(PO)y(EO)xで表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)5(PO)70(EO)5、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社等から入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。
【0073】
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)x(PO)y)2NCH2CH2N((PO)y(EO)x)2で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0074】
このような界面活性剤の中では、結晶性の高いメソ多孔体を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[CpH2p+1N(CH3)3]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニウム中のアルキル基の炭素数は8〜22であることがより好ましい。このようなものとしては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドコシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0075】
前記モノマーの重合体としてメソ多孔体を得る場合、前記界面活性剤を含有する溶液中で前記モノマーを重合反応せしめるが、その溶液中の界面活性剤の濃度は0.05〜1mol/Lであることが好ましい。この濃度が前記下限未満であると細孔の形成が不完全となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応で溶液中に残留する界面活性剤の量が増大して細孔の均一性が低下する傾向にある。
【0076】
また、このようにして得られたメソ多孔体に含まれる界面活性剤を除去してもよい。このように界面活性剤を除去する方法としては、例えば、(i)界面活性剤に対する溶解度が高い有機溶媒(例えば、エタノール)中に前記メソ多孔体を浸漬して界面活性剤を除去する方法、(ii)前記メソ多孔体を300〜1000℃で焼成して界面活性剤を除去する方法、(iii)前記メソ多孔体を酸性溶液に浸漬して加熱し、界面活性剤を水素イオンに交換せしめるイオン交換法、等を挙げることができる。
【0077】
また、このようなメソ多孔体は、特開2001−114790号公報等に記載の方法に準拠して得ることが可能である。
【0078】
このように本発明にかかる発光材料を多孔体にするメリットとしては、(i)細孔内に他の発光性化合物を導入することにより、細孔壁の励起エネルギーが効率的に発光性化合物に移動して多色発光が可能になること、(ii)細孔内に導入された発光性化合物の耐久性が向上すること、更には(iii)発光層の屈折率が小さくなることにより光の取り出し効率を向上させることができるというメリットがある。例えば、ガラス基板上にITO電極層とその上に発光層を形成した場合、発光層から発した光が、発光層とITO層との界面、ITO層とガラス基板との界面、あるいはガラス基板と空気との界面で反射し、外への取り出し効率が低下するという問題がある。一般に、発光層の屈折率が空気の屈折率に近い方が光の取り出し効率が高いと言われており、発光材料を多孔体化することで、屈折率を空気に近づけることができる。
【0079】
(他の発光性化合物を更に備える発光材料)
本発明にかかる発光材料が他の発光性化合物を更に備える構造としては特に限定されないが、非多孔質又は多孔質の本発明にかかる発光材料において、他の発光性化合物が、吸着、結合、充填、混合のいずれかの状態となっていてもよい。吸着とは、非多孔質の発光材料の場合は発光材料の粒子あるいは膜の表面、多孔質の発光材料の場合は、発光材料の細孔内あるいは細孔外表面に発光性化合物が付着した状態を言う。結合とは、この付着が化学結合を伴う場合をさす。充填とは、多孔質の発光材料の細孔内に他の発光性化合物が存在する状態で、この場合細孔内表面に付着していなくてもよい。細孔内に他の発光性化合物以外の物質が充填されており、その物質中に他の発光性化合物が含まれていてもよい。他の発光性化合物以外の物質には界面活性剤等がある。混合とは、非多孔質又は多孔質の発光材料と他の発光性化合物が物理的に混ざった状態をさす。この時に、発光材料と他の発光性化合物以外の別の物質を更に混合してもよい。
【0080】
他の発光性化合物を更に備える方法としては特に限定されないが、非多孔質又は多孔質の発光材料と他の発光性化合物を混合する方法がある。この時に他の発光性化合物を適当な溶媒に溶解させてから混合するとより均一な混合ができ、効率的に発光させることができる。
【0081】
また、発光材料を合成すると同時に他の発光性化合物を導入する方法がある。すなわち、前記モノマーに他の発光性化合物を添加して重合する。この場合、界面活性剤を更に添加して重合してもよい。界面活性剤を添加した場合は、界面活性剤の鋳型効果により重合体中に多孔体構造が形成されるが、細孔内には界面活性剤と他の発光性化合物が充填されており、実質的な細孔は存在しない。他の発光性化合物の量は、特に制限されないが、前記モノマーに対し1〜10モル%を添加すれば十分に骨格のエネルギーを発光性化合物に移動させることができる。
【0082】
その他の発光性化合物を備えた重合体においては、前記モノマーの重合体から成る骨格が効率的に光を吸収し、そのエネルギーを他の発光性化合物に効率的に移動させることができることから、他の発光性化合物に基づく異なる波長の発光を得ることができる。この時、前記モノマーの重合体から成る骨格は光捕集アンテナの役割を果たし、捕集した光エネルギーを他の発光性化合物に集中的に注入できることから、効率が高く且つ強い発光を実現することができる。
【0083】
本発明にかかる有機ケイ素化合物の重合体に他の発光性化合物を吸着、結合、充填又は混合(以下、場合により「添着」と総称する)させる方法は、特に限定されず、通常の方法が使用できる。例えば、添着する他の発光性化合物の溶液を前記重合体に対して散布、含浸又は浸漬させた後、乾燥するという方法が使用できる。この際、必要に応じて洗浄してもよい。また、添着あるいは乾燥の際、減圧あるいは真空脱気してもよい。このような添着により他の発光性化合物は前記重合体の表面に付着又は細孔に充填され、あるいは吸着される。このような有機ケイ素化合物と他の発光性化合物の種類、組成及び両化合物の距離や結合強度、界面活性剤の有無等に応じて多色発光の原理は同一ではないが、組み合わせに応じて多色発光が可能になる。本発明にかかる発光材料において、前記有機ケイ素化合物の重合体に添着する他の発光性化合物は、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
本発明にかかる発光材料が前記多孔体である場合、前述のように、その多孔体に他の発光性化合物を吸着(物理的吸着及び/又は化学的結合)又は充填させることが好ましい。
【0085】
このような多孔体に吸着している他の発光性化合物を備えている場合、他の発光性化合物は多孔体表面、特に細孔内壁表面に吸着していることが好ましい。このような吸着は、他の発光性化合物と多孔体表面に存在する官能基との相互作用によって生じている物理的吸着であってもよいが、他の発光性化合物の一端が多孔体表面に存在する官能基と化学的に結合することによって固定化されていてもよい。なお、後者の場合、他の発光性化合物がその一端に、多孔体表面に存在する官能基と化学的に結合する官能基(例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基、トリクロロシリル基等)を備えていることが好ましい。
【0086】
多孔体に他の発光性化合物を吸着させる方法としては、他の発光性化合物を溶解せしめた有機溶剤溶液(例えば、ベンゼン、トルエン等)に多孔体を浸漬し、0〜80℃程度の温度で1〜24時間程度攪拌する方法が好適であり、それによって他の発光性化合物が多孔体に物理的吸着及び/又は化学的結合により吸着(固定化)されることとなる。
【0087】
このような他の発光性化合物としては、特に制限されず、ポルフィリン類、アントラセン類、アルミニウム錯体、希土類元素又はその錯体、フルオレセイン、ローダミン(B,6G等)、クマリン、ピレン、ダンシル酸、シアニン色素、メロシアニン色素、スチリル色素、ベンズスチリル色素等の光機能性分子が挙げられる。また、多孔体に吸着される他の発光性化合物の量も特に制限されないが、多孔体100重量部に対して0.6〜50重量部程度であることが一般的に好ましい。
【0088】
また、本発明にかかる他の発光性化合物としては燐光材料が好ましく、このような燐光材料には、蛍光材料と比較して吸収と発光波長の差が大きいものがある。したがって、このような燐光材料を使用することによって、短波長の紫外光を吸収して長波長の赤色発光を効率的に出すことが可能となる。このような燐光材料を紫外光領域に発光を有する有機ケイ素化合物と組み合わせることによって、青色から赤色に渡る幅広い波長領域の発光が可能となる。使用する燐光材料としては、特に限定されないが、室温において比較的高効率の発光が可能な以下の構造式のものが好適なものとして挙げられる。
【0089】
【化7】
【0090】
(薄膜状である発光材料)
前記モノマーを重合せしめてなる重合体(前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の重合体)の形態は、通常は粒子状であるが、薄膜状、更にはその薄膜を所定のパターニングしたパターン状とすることも可能である。
【0091】
このように薄膜状の発光材料を得る場合、先ず、前記モノマーを酸性溶液(塩酸、硝酸等の水溶液又はアルコール溶液等)中で攪拌することにより反応(部分加水分解及び部分縮合反応)せしめてその部分重合体を含むゾル溶液を得る。このようなモノマーの加水分解反応はpHが低い領域で起こりやすいことから、系のpHを低くすることにより部分重合を促進することができる。このとき、pHは2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。また、その際の反応温度は15〜25℃程度とすることができ、反応時間は30〜90分程度とすることができる。
【0092】
次に、このゾル溶液を各種のコーティング方法で基板に塗布することにより、薄膜状の発光材料を作製することができる。なお、各種のコーティング方法としては、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等を用いて塗布することができ、また、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等も可能である。さらに、ゾル溶液をインクジェット法により塗布することにより、基板にパターン状の発光材料を形成することも可能である。
【0093】
次いで、得られた薄膜を40〜150℃程度に加熱して乾燥せしめ、前記部分重合体の縮合反応を進めて三次元的な架橋構造を形成させることが好ましい。得られる薄膜の平均膜厚は1μm以下であることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。膜厚が1μmを超える場合は、電界による発光効率が減少する傾向にある。
【0094】
なお、このような薄膜中に前述の周期構造を形成せしめれば、薄膜中の蛍光分子が周期構造を形成することによって薄膜からの発光強度をより向上させることができる。また、前記ゾル溶液に前述の界面活性剤を添加することにより、薄膜中に規則的な細孔構造を形成することが可能となる。このように薄膜が多孔体である場合、その多孔体に前記他の発光性化合物を吸着させることが可能となり、それによって蛍光分子本来の発光波長とは異なる波長の発光を生じさせることが可能となる。
【0095】
また、このような薄膜状の発光材料は、特開2001−130911号公報等に記載の方法に準拠して得ることが可能である。
【0096】
(層状物質である発光材料)
前記モノマーを重合せしめてなる重合体(前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の重合体)の形態として、1層の厚さが10nm以下のナノシートが積層してなる層状物質とすることも可能である。すなわち、前記モノマーを前記界面活性剤の存在下で重合反応(加水分解及び縮合反応)せしめる際に、合成条件を制御することによりこのような層状物質を得ることができる。
【0097】
このように本発明にかかる発光材料を層状物質にすると、溶媒に浸漬させることによってナノシートを膨潤させることが可能となり、薄膜(好ましくは1層の厚さが10nm以下のナノシート)を容易に作製することができるようになる。
【0098】
<色素レーザー>
次に、本発明の色素レーザーについて説明する。すなわち、本発明の色素レーザーは、前述した発光材料を含有する色素レーザー素子と、後述する励起用光源と、後述する共振機とを備えることを特徴とするものである。
【0099】
ここで、本発明の色素レーザーの好適な一実施形態を例に挙げて励起用光源、色素レーザー素子及び共振機について説明する。図1は本発明の色素レーザーの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【0100】
(励起用光源)
図1中、1は励起用光源である。このような励起用光源1としては、使用する色素レーザー素子の吸収スペクトル、発光スペクトル等を考慮して選択することが好ましいが、例えば、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザー(ArF、KrF、XeCl,XeF)等のガスレーザー;YAGレーザー、ルビーレーザー、ガラスレーザー等の固体レーザー;色素レーザー等の液体レーザー;半導体レーザー;発光ダイオードを挙げることができる。これらの中でも、励起用光源の発光量という観点から、エキシマレーザー、窒素レーザーが好ましい。
【0101】
(色素レーザー素子)
図1中、2は反射鏡であり、3は色素レーザー素子である。本発明においては、励起用光源1からの励起光が反射鏡2で反射された後に色素レーザー素子3に当たることにより、色素レーザー素子3が励起される。そして、その後に蛍光を発生して基底状態に戻ることにより色素レーザー素子3が発光する。
【0102】
このような色素レーザー素子3は、前述した発光材料を含有するものである必要があるが、前述した発光材料のみからなるものであってもよく、前述した発光材料がマトリックス中に分散又は混合されているものであってもよい。このようなマトリックスとしては、特に制限されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ガラスが挙げられる。これらの中でも、色素レーザー素子の耐熱性に優れるという観点から、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。また、前述した発光材料をマトリックス中に分散又は混合させたものを用いる場合には、マトリックス100質量部に対して前述した発光材料を0.5〜50質量部含有させることが好ましい。この含有量が前記下限未満では、色素レーザーとして十分な発光強度が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると色素レーザー素子の光の透過性が悪くなる傾向にある。
【0103】
さらに、このような色素レーザー素子3の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状物、フィルム、ファイバー、粒状物を挙げることができる。また、このような色素レーザー素子3の大きさとしては、特に限定されないが、例えば形状が板状物である場合には、20mm×20mm×0.5mm程度の大きさであることが好ましい。
【0104】
また、このような本発明にかかる色素レーザー素子の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ゾル−ゲル法、沈殿法、キャスト法、引き上げ法を挙げることができる。
【0105】
(共振機)
図1中、4は凹面鏡であり、5は回折格子であり、6はビーム拡大器である。また、凹面鏡4と回折格子5は対向して配置されており、且つ、回折格子の一次回折光が入射方向に戻るように配置されている。本発明にかかる共振機としては、ビーム拡大器により回折格子の回折効率が高まるという観点から、凹面鏡4と回折格子5との間にビーム拡大器6を備えるものであることが好ましい。また、本発明にかかる共振機としては、レーザーの発振波長を変更できるようにするという観点から、凹面鏡4に対して回折格子5の方向を変更できるようにしておくことが好ましい。本発明においては、色素レーザー素子3より発せられた光が凹面鏡4と回折格子5との間で反復反射することにより強度を増しレーザー発振を起こすことができる。なお、共振機の種類としては、以上説明した凹面鏡と回折格子とを対向して配置したものの他に、片方の反射鏡の透過率が高い2つの反射鏡を対向して配置したもの、光導波路型蛍光体の両端に屈折率が周期的に変調する分布帰還型反射鏡を配置したものが挙げられる。
【0106】
<光増幅器>
次に、本発明の光増幅器について説明する。すなわち、本発明の光増幅器は、前述した発光材料を含有する色素素子と、後述する増幅用光源を備えることを特徴とするものである。
【0107】
ここで、本発明の光増幅器の好適な一実施形態を例に挙げて増幅用光源及び色素素子について説明する。図2は本発明の光増幅器の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【0108】
(増幅用光源)
図2中、11は増幅用光源である。このような増幅用光源11としては、使用する色素素子の吸収スペクトル、発光スペクトル等を考慮して選択することが好ましいが、例えば、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザー(ArF、KrF、XeCl,XeF)等のガスレーザー;YAGレーザー、ルビーレーザー、ガラスレーザー等の固体レーザー;色素レーザー等の液体レーザー;半導体レーザー;発光ダイオードを挙げることができる。これらの中でも、光増幅器の小型化、軽量化という観点から、半導体レーザー、発光ダイオードが好ましい。
【0109】
(色素素子)
また、図2中、12はレンズであり、13は色素素子であり、14は光ファイバーであり、15はコネクタである。本発明においては、増幅用光源11からの励起光がレンズ12を通して色素素子13に当たることにより、色素素子13が励起される。一方で、信号光は図2中の矢印の方向に進み、光ファイバー14からコネクタ15を経て、励起状態の色素素子13の中を流れる。そして、色素素子13の中を流れる間に光が増幅されるために、再びコネクタ15を経て光ファイバー14に戻るときには、信号光が増幅されている。
【0110】
このような色素素子13は、前述した発光材料を含有するものである必要があるが、前述した発光材料のみからなるものであってもよく、前述した発光材料がマトリックス中に分散又は混合されているものであってもよい。このようなマトリックスとしては、特に制限されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ガラスが挙げられる。これらの中でも、色素素子の耐熱性に優れるという観点から、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。また、前述した発光材料をマトリックス中に分散又は混合させたものを用いる場合には、マトリックス100質量部に対して前述した発光材料を0.5〜50質量部含有させることが好ましい。この含有量が前記下限未満では、光増幅器として信号光を十分に増幅することができない傾向にあり、他方、前記上限を超えると色素素子の光の透過性が悪くなる傾向にある。
【0111】
さらに、このような色素素子13としては、図2中で説明したようにファイバー形状のものを用いることもできるが、基板上で矩形導波路を形成させたものを用いてもよく、更には基板上でスラブ型導波路を形成させたものを用いてもよい。また、このような色素素子13がファイバー形状のものである場合には、特に制限されないが、色素素子13の長さが5〜10mm程度、色素素子13の直径が50〜200μm程度であることが好ましい。
【0112】
また、このような本発明にかかる色素素子の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ゾル−ゲル法、沈殿法、キャスト法、引き上げ法を挙げることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、蛍光又は燐光スペクトルの測定や励起スペクトルの測定には、JASCO製のFP-6600 Spectrofluorometerを使用した。また、蛍光又は燐光スペクトルの縦軸の強度(Intensity)は、エネルギー量で表示してある。
【0114】
<フェニルシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例1)
イオン交換水(500g)と6規定NaOH水溶液(40g,200mmol NaOH)の混合液にオクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(ODTMA、[C18H37N(CH3)3Cl]、東京化成製)(16.665g,47.88mmol)を50〜60℃で溶解させた。その溶液に1,4-ビストリエトキシシリルベンゼン(BTEB、アズマックス製)(20g,49.67mmol)を激しく攪拌しながら室温で加えた。その混合液を超音波器に20分かけて、分離していた疎水性のBTEBを水溶液中に分散させ、室温で20時間攪拌し続けた。その溶液を95℃で20時間オイルバス中に静置した。生成した白い沈殿をろ過して乾燥することにより、界面活性剤を含んだ状態のメソ多孔体の前駆物質(8.22g)を得た。1gの前駆物質を9gの36%HCl水溶液を加えたエタノール(250ml)に分散させ、70℃で8時間加熱攪拌することにより、前駆物質中の界面活性剤を溶媒で抽出して、0.69gのフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-c)を得た。
【0115】
(実施例2)
水50gとNaOH4gの混合溶液を撹拌し、その中にBTEB2gを素早く入れた。その後20分間超音波にかけた。この時点で溶液が濁り始めた。そして常温で24時間撹拌をすると半透明な液体となった。その後98℃で20時間還流静置した。温度をかけてから溶液が白く濁り始め、その後徐々に沈殿物が生じてきた。その沈殿をろ過して、室温で乾燥して白色の粉末であるフェニルシリカ複合材料(Ph-Si)を得た。
【0116】
(実施例3)
トリブロックコポリマーであるpoly(ethylene oxide)20-poly(propylene oxide)70-poly(ethylene oxide)20;(P123:Mav=5800)としてアルドリッチ社製のものを使用した。0.99gのP123を36mlのイオン交換水に溶解させた後、200mlの塩酸(36wt%)を加えた。0℃(氷浴中)においてこの溶液にBTEB1.01gを加え、1時間攪拌した後、35℃で20時間、加熱攪拌した。これを密閉容器に移し、100℃で24時間、さらに加熱した。室温まで放冷した後、ろ過、洗浄、乾燥させ、界面活性剤を含んだ状態のメソ多孔体の前駆物質を得た。この前駆物質を60倍量のエタノールに分散させ、1時間以上攪拌した後、ろ過、乾燥した後、空気中、350℃で2時間焼成することにより0.3gのフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-a)を得た。
【0117】
実施例1で得られたPh-HMM-cと実施例2で得られたPh-SiのX線回折パターンを図3に示す。テンプレートとしてC18TMA+Cl-を添加して合成したPh-HMM-cにおいては、2θ=1〜3°にメソ構造(2Dヘキサゴナル)を示すピークとともに、骨格内のベンゼンの周期性を示す7.6、3.8、2.5nmのピークが確認できた。界面活性剤を添加せずに合成したPh-Siはメソ構造を示すピークは見られなかったが、骨格内のベンゼンの周期性を示すピークは確認できた。また、それぞれの細孔構造を調べるために、N2吸着等温線を測定した。図3にPh-HMM-cのN2吸着等温線を示す。吸着等温線はIV型であり、典型的なメソ多孔体構造を有していることが確認され、細孔径と比表面積はそれぞれ、3.0nm、835m2/gであった。しかしながら、Ph-Siにおいては比表面積は小さく、メソ細孔を有していないことが確認できた。以上の結果より、Ph-HMM-cは細孔構造及びベンゼンの周期構造をともに有し、Ph-Siは細孔構造はないが、骨格にベンゼンの周期構造を有した材料であることが確認できた。
【0118】
一方、図4に実施例3において酸性条件下で合成したPh-HMM-aのX線回折パターンを示す。2θ=0.5〜1°にメソ構造(2Dヘキサゴナル)を示すピークが見られた。しかし、骨格内のベンゼンの周期性を示すピークは見られなかった。また、図5に示したN2吸着等温線はIV型であり、典型的なメソ多孔体構造を有していることが確認され、細孔径、比表面積はそれぞれ、6.3nm、773m2/gであった。以上の結果から、酸性条件下でP123をテンプレートとして合成したPh-HMM-aは、規則的な細孔構造を有しているものの、細孔骨格内のベンゼンの周期性はないことが確認できた。
【0119】
実施例1〜3における合成条件並びに得られた試料の構造について表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
図6に、実施例2で得られたPh-SiのSEM写真を示す。この物質の粒径は約100nmであることが確認できた。また、Ph-Siは500℃まで構造を保持することが熱重量分析により確認された。
【0122】
実施例1〜3で得られた各試料の可視吸収スペクトルを図7に示す。Ph-HMM-aの吸収スペクトルはブロードで、最大吸収波長(λmax)は285nmであった。またその吸収末端は550nm(2.3eV)の長波長まで観測された。一方、Ph-HMM-cの吸収スペクトルはPh-HMM-aのλmaxと同じ285nmと240nmに大きな吸収が見られた。ピーク幅はPh-HMM-aに比べ狭く、吸収末端は310nm(4.0eV)であった。なお、Ph-HMM-aにおいても240nmのピークは存在していると考えられるが、ピークがブロードなため、280nmと重なっているものと考える。またPh-Siにおいては、Ph-HMM-cと同様な吸収スペクトルが得られたことから、この吸収スペクトルの差は各試料の細孔構造ではなく、骨格中のベンゼンの周期性に強く依存するとしていることが確認された。
【0123】
図8には実施例1〜3で得られた各試料の蛍光スペクトルを示す。メソ細孔構造を有しているものの、骨格中にベンゼンの周期性がほとんどないPh-HMM-aにおいては、強い蛍光を示さなかった。これはPh-HMM-aの以下の特性から説明できる。先ず、Ph-HMM-aにおいては、UV吸収末端が長く、ブロードであったということから、励起状態において様々なエネルギー準位が存在していることが予想される。そのため、260nmで励起された後、基底状態に戻るときに、様々な準位を経るためにその蛍光が弱くなったと考えられる。また骨格内のベンゼンの規則性が低いためにエキシマーが形成されることによる消光や、熱となってエネルギーが系の外へ出てしまった可能性も考えられる。
【0124】
一方、メソ細孔構造を有し、骨格内にベンゼンの周期性も有するPh-HMM-c、並びにメソ細孔を持たないがベンゼン周期性を有するPh-Siにおいては、微弱な励起光であっても、発した蛍光の強度は強かった。また、UV-vis吸収スペクトルにより280nmに鋭い吸収が見られたが、興味深いことに310nm以上の吸収波長は観測されなかった。基底状態及び励起状態間での準位が縮退していること、つまりそれぞれのバンドが狭くなっていることを示している。このような理由によって、骨格内のフェニル基の規則的な配列により、フェニル基でのエネルギー移動が安定的に起っていることが確認された。また、Ph-HMM-cとPh-Siにおいて、微弱な励起光にも関わらず蛍光を示した別の理由として量子井戸効果が挙げることができる。つまり、Ph-HMM-cとPh-Siはともにフェニル基とシリケート層が交互に並んだ規則的な構造を形成していることから、260nmで励起したとき、吸収エネルギーが高いシリケート層には励起されず、フェニル基の層のみに光が作用する。その励起されたフェニル基の層が光吸収に寄与しないシリケート層に挟まれているために、光がフェニル基層内に閉じ込められ、その結果ベンゼンシリカが強い蛍光を発したとも考えられる。
【0125】
<ビフェニルシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例4〜5)
イオン交換水(3.3mol)と6規定NaOH水溶液(30.4mmol)の混合液にODTMA(3.2mmol)を50〜60℃で溶解させた。その溶液に4,4’-ビストリエトキシシリルビフェニル(BTEBP、アズマックス製)(2.5mmol)を激しく攪拌しながら室温で加え、更に室温で20時間攪拌し続けた。その溶液を95℃で22時間オイルバス中に静置した。生成した白い沈殿をろ過して乾燥することにより、界面活性剤を含んだ状態のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-c-s)を得た。0.75gの前駆物質を3.1gの2M塩酸水溶液を加えたエタノール(150ml)に分散させ、室温で8時間攪拌することにより、前駆体中の界面活性剤を溶媒で抽出して、ビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c)を得た。
【0126】
(実施例6)
水(120ml)とNaOH(6g)の混合溶液を撹拌し、その中にBTEBP2gを素早く入れた。その後20分間超音波にかけた。この時点で溶液はまだ透明のままでBTEBPと水が二層に分離していた。そして常温で24時間撹拌をすることで均一な透明な溶液となった。その後98℃で72時間還流静置した。24時間後以降からは白濁し始め、沈殿が起きてきた。固形分をろ過した後、室温で乾燥して、粉末であるビフェニルシリカ複合材料(BiPh-Si-Base)を得た。
【0127】
(実施例7)
水36g(2mol)に12N HClを2ml添加した酸性溶液に、BTEBP0.6g(1.25mmol)を加え、20分間超音波処理を行った後、室温で24時間撹拌した。そして得られた混合液を35℃で24時間攪拌し、ろ過、洗浄後、白色粉末を得た。合成の混合比はBTEBP:H2O:HCl=1:412:4.8であった。この白色粉末を空気中、300℃で2時間焼成することによって、目的のビフェニルシリカ複合材料(BiPh-Si-Acid)を得た。
【0128】
(実施例8〜9)
BTEBP(1.2g)をP123(0.99g)と2N塩酸水溶液(40ml)の混合溶液に激しく攪拌しながら加えた。混合温度は30℃とした。この混合液を30℃で20時間攪拌した後、室温で48時間放置した。次に、この混合液をテフロン製のオートクレーブに入れて、100℃で24時間加熱した。固形分をろ過して、室温で乾燥することにより界面活性剤を含んだ状態のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-a-s)を得た。この前駆物質0.5gをエタノール(200ml)と2N塩酸水溶液(0.5g)の混合液に加え、室温で8時間攪拌した。この操作もう1回繰り返して、界面活性剤を完全に除去したビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-a)を得た。
【0129】
実施例4で得られたBiPh-HMM-cのX線回折パターンを図9に、実施例5で得られたBiPh-HMM-c-sのX線回折パターンを図10に示す。いずれも、2θ=1〜3°にメソ構造(2Dヘキサゴナル)を示すピークとともに、骨格内のビフェニルの周期性を示す1.19nmのピークが確認できた。また、実施例4で得られたBiPh-HMM-cの細孔内構造を調べるために、N2吸着等温線を測定した結果を図11に示す。吸着等温線はIV型であり、典型的なメソ多孔体構造を有していることが確認された。BiPi-HMM-cの細孔径と比表面積はそれぞれ、3.0nm、709m2/gであった。
【0130】
実施例6で得られたBiPh-Si-BaseのX線回折パターンを図12に、実施例7で得られたBiPh-Si-AcidのX線回折パターンを図13に示す。これらにおいては、低角側のメソ構造を示すピークが見られず、ビフェニルの周期性を示す1.19nmのピークのみ見られた。このことから、界面活性剤なしで合成したビフェニルシリカ複合材料も、ビフェニル基が規則的に配列した構造を有することが確認された。実施例6で得られたBiPh-Si-BaseのSEM写真を図14に示す。このSEM写真から、実施例6で得られたBiPh-Si-Baseの1次粒子径は100nm以下と非常に小さいことが確認された。
【0131】
実施例8で得られたBiPh-HMM-aのX線回折パターンを図15に、実施例9で得られたBiPh-HMM-a-sのX線回折パターンを図16に示す。界面活性剤を用いて酸性条件で合成したBiPh-HMM-aとBiPh-HMM-a-sは、2θ=0.5〜1°にメソ構造を示す明瞭なピークが見られたが、骨格内のビフェニルの周期性を示すピークは小さかった。実施例8で得られたBiPh-HMM-aの窒素吸着等温線を図17に示した。比表面積は926m2/gと高かった。細孔径は5.5nmであった。以上の結果から、酸性条件下でP123をテンプレートとして合成した試料は、規則的な細孔構造を有しているが、細孔骨格のビフェニルの周期性は低いことが確認できた。
【0132】
実施例4〜9における合成条件並びに得られた試料の構造について表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例8で得られたBiPh-HMM-aと実施例4で得られたBiPh-HMM-cの可視吸収スペクトルを図18及び図19にそれぞれ示す。BiPh-HMM-aの吸収スペクトルはブロードで、最大吸収波長(λmax)は300nmであった。またその吸収末端は600nmの長波長まで観測された。一方、BiPh-HMM-cの吸収スペクトルはBiPh-HMM-aのλmaxと同じ303nmに大きな吸収が見られた。ピーク幅はBiPh-HMM-aに比べ狭く、吸収末端は325nmであった。なお、BiPh-HMM-aにおいても240nmのピークは存在していると考えられるが、ピークがブロードなため、280nmと重なっているものと考えられる。
【0135】
図20に実施例4〜9で得られた各試料に対し、300nmの励起光で測定した蛍光スペクトルを示す。ビフェニルの規則性の低いメソ多孔体BiPh-HMM-aは強い蛍光を示さなかった。しかし、高いビフェニルの周期構造を有するメソ多孔体BiPh-HMM-cにおいては、強い蛍光を示した。BiPh-HMM-cについては,試料に励起光(250nm)を照射した時に青く光るのが確認された。ビフェニル(C6H5-C6H5)と比較すると、BiPh-HMM-cの蛍光強度の増加と最大発光波長の可視光側へのレッドシフトが確認された。またベンゼンシリカと比較した場合、π共役の違いによる最大発光波長がレッドシフト、及び蛍光強度の増加も見られた。これは蛍光強度の増加はビフェニレンの量子収率(0.69)がベンゼン(0.29)より高いためであると考えられる。
【0136】
一方、メソ細孔内に界面活性剤を含有したままのPh-HMM-a-sとBiPh-HMM-c-sは、界面活性剤を除去したメソポーラス物質よりも強い蛍光を示することが分かった。これはテンプレート(界面活性剤)がメソ細孔内に導入されたままであることによって、酸素がビフェニル基に接触できず、酸素による消光が抑えられたためと考える。
【0137】
また、テンプレートなしで合成したBiPh-Siはどちらとも強い蛍光強度を示した。しかし、酸性条件で合成したBiPh-Si-Acidの方がBiPh-Si-Baseよりも蛍光強度は強かった。これは酸性条件で合成したBiPh-Si-AcidはBiPh-Si-Baseよりもビフェニルの配向が高いためと考えられる。
【0138】
<薄膜状発光材料の合成と発光特性試験(1)>
(実施例10)
エタノール(EtOH)2gに、イオン交換水0.09g、2N塩酸水溶液10μlを添加し、均一溶液とした。この溶液に、BTEBP0.6gを攪拌しながら加えた。1時間室温下で攪拌した後、界面活性剤であるBrij76(C18H37(EO)10)0.43gを2gのEtOHに溶解させた溶液を添加して、更に1時間攪拌し、透明なゾル溶液を得た。ゾル溶液の組成は、BTEBP:Brij76:H2O:HCl:EtOH=1:0.48:4:0.016:69.4であった。このゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。なお、ディップ条件は、ディップ速度2cm/min、浸漬時間2分とした。
【0139】
実施例10で得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMMc-s-film)のX線回折パターン、蛍光スペクトル、並びに254nmのバックライトを照射した時の薄膜の発光状態を示す写真を図21、図22及び図23にそれぞれ示す。X線回折パターンにはd=6.4nmに強いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図21)。しかし、ビフェニルの周期構造に対応するd=1.19nmのピークは観察されなかった。蛍光スペクトルには380nmを中心に強い発光が確認された(図22)。また、薄膜に254nmのライトを照射すると青く光るのが確認された(図23)。
【0140】
(実施例11〜13)
エタノール(EtOH)2g、イオン交換水0.09gの混合溶媒に、2N塩酸水溶液を10μl添加した。この溶液に、BTEBP0.6gを激しく攪拌しながら添加し、室温下で30分攪拌した。ここに、界面活性剤であるBrij76(C18H37(EO)10)0.43gを2gのEtOHに溶解させた溶液を加え、更に30分攪拌し、透明なゾル溶液を得た。ゾル溶液の組成は、BTEBP:Brij76:H2O:HCl:EtOH=1:0.48:4:0.016:69.44であった。このゾル溶液を2.65gのEtOHで希釈し、溶液Aを調製した。一方、ポリビニルカルバゾール(PVK)0.01gを5gのテトラヒドロフランに溶解させ、溶液Bを調製した。
【0141】
得られるPVK含有ビフェニルシリカ複合材料の薄膜(PVK/BiPh-HMM膜)におけるPVKとBiPh-HMMの含有割合(固形分)が表3に示す組成(重量基準)となるように、所定量の溶液A、Bを混合して混合溶液を調製し、得られた混合溶液を回転数3000rpm、回転時間30sでスピンコートを行うことによって、ガラス基板上に均一なコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た。なお、実施例11においては2.65gのEtOH希釈を行わず、デイップコート法によってコート膜を調製した。
【0142】
【表3】
【0143】
実施例11で得られた試料1、実施例12で得られた試料2、実施例13で得られた試料3にそれぞれ254nmのバックライトを照射した時の薄膜の発光状態を示す写真を図24に示す。いずれの試料においても強い発光が確認された。実施例11〜13で得られた試料1〜3のそれぞれの蛍光スペクトルを図25に示した。
【0144】
<従来の発光材料との発光特性の比較試験>
(比較例1〜3)
本発明の発光材料と従来からある代表的な発光材料の発光スペクトルとを比較するため、従来からある代表的な発光材料として以下の3種類の発光材料を用いた。これらの発光物質の粉末とガラス基板に形成したコート膜(膜厚:200nm)を用意した。なお、コート膜については、各発光材料をスパッタ法により製膜した。
比較例1:Bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl]benzidine(NPB)
比較例2:4,4'-Bis(9-carbazolyl)-biphenyl(CBP)
比較例3:Poly(9-vinylcarbazole)(PVK)。
【0145】
実施例5で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(界面活性剤含有、BiPh-HMM-c-s)の粉末と、比較例1〜3の発光材料の粉末の蛍光スペクトルを測定し、得られた結果を図26に示す。なお、励起波長はBiPh-HMM-c-sに対しては300nm、CBP、NBP、PVKに対しては365nmとした。
【0146】
また、実施例10で得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMM-c-s-film)と、比較例1〜3の発光材料の薄膜の蛍光スペクトルを測定し、得られた結果を図27に示す。なお、励起波長はBiPh-HMM-c-s-filmに対しては300nm、CBP、NBP、PVKに対しては256nmとした。
【0147】
図26及び図27に示した結果を比較すると、本発明の発光材料であるBiPh-HMM-c-s及びBiPh-HMM-c-s-filmのいずれも、従来の発光材料と同等あるいはそれ以上に強く発光していることが確認された。
【0148】
<モノマー溶液の発光特性との比較試験>
(比較例4)
ジクロロメタンとモノマー試薬である1,4−ビストリエトキシシリルベンゼン(BTEB)とを図28に示す各混合割合(単位はmM)で混合した溶液を調製し、その試料溶液の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図28に示す。
【0149】
(比較例5)
ジクロロメタンとモノマー試薬である1,4−ビストリエトキシシリルビフェニル(BTEBP)とを図29に示す各混合割合(単位はmM)で混合した溶液を調製し、その試料溶液の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図29に示す。
【0150】
BTEBとBTEBPともに蛍光強度において極大を示す濃度があった。その極大となる濃度前後での消光の原因は、試料の濃度が高い時では濃度消光であり、試料濃度が薄い時では分子数のそのもの発光の減少によるものである。
【0151】
(比較例6)
ジクロロメタンとモノマー試薬であるSi源を含まないベンゼンとを図30に示す各混合割合(単位はmM)で混合した溶液を調製し、その試料溶液の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図30に示す。
【0152】
(比較例7)
ジクロロメタンとモノマー試薬であるSi源を含まないビフェニレンとを図31に示す各混合割合(単位はmM)で混合した溶液を調製し、その試料溶液の蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を図31に示す。
【0153】
図32に示す最大蛍光強度と濃度との関係から明らかなように、ベンゼンとビフェニレンの最大発光強度は、Si源を含んでいるBTEBとBTEBPよりもともに低かった。これは置換基による影響であると考えられる。
【0154】
また、すべての試料の最大発光波長(λmax)を濃度に対してプロットした結果を図33に示す。シリカ源を有するBTEBとBTEBPの最大発光波長は、低濃度において大きくブルーシフトした。にもかかわらずベンゼンとビフェニレンではその現象は見られなかった。この違いはBTEBとBTEBPの置換基がエトキシ基を有しているために、高濃度においては分子会合体を形成することによる影響であると考えられる。
【0155】
次に、実施例5で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c-s)の粉末と実施例9で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-a-s)の粉末とモノマーであるBTEBPの溶液の蛍光スペクトルを測定し、その結果を図34に示す。その結果、実施例5で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の蛍光強度がモノマー溶液の最大蛍光強度よりも約10倍高く、実施例9で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の蛍光強度もモノマー溶液の最大蛍光強度より高いことが確認できた。
【0156】
図35には、BTEBP溶液の蛍光強度の濃度変化と、実施例5及び9で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の蛍光強度の濃度変化との比較を示す。なお、BiPh-HMM中のビフェニル基密度は、1000mMのビフェニル濃度に相当する。1000mMのビフェニルモノマーでは完全に濃度消光が起こっているにもかかわらず、ビフェニルが規則的に配列した実施例5で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c-s)では強い蛍光を示すことが確認された。一方、ビフェニルの規則構造が見られない実施例9で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-a-s)ではBTEBP溶液と同程度の蛍光強度しか示さず、BiPh-HMM-c-sの強い蛍光にはビフェニルの特異な配列構造が影響していることが確認された。
【0157】
<層状フェニルシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例14)
イオン交換水(500g)と6規定NaOH水溶液(40g,200mmolNaOH)の混合液にODTMA(16.665g,47.88mmol)を50〜60℃で溶解させた。その溶液にBTEB(20g,49.67mmol)を激しく攪拌しながら室温で加えた。その混合液を超音波器に20分かけて、分離していた疎水性のBTEBを水溶液中に分散させ、室温で20時間攪拌し続けた。固形分をろ過して乾燥し、層状フェニルシリカ複合材料(9.5g)を得た。
【0158】
図36に得られた層状フェニルシリカ複合材料の粉末X線回折パターンを示す。2θ=10°以下の低角域に、d=37.2Åと18.6Åの明確な回折ピークが観察されたことから、この物質は層状構造をしていることが確認された。更に、広角域にはd=4.2Åのピークが観察されることから、フェニル基が規則的に配列した構造が形成されていることが確認された。
【0159】
図37に得られた層状フェニルシリカ複合材料の29Si MAS NMRスペクトルを示す。d=−72.7と−81.2ppmに2本のシグナルが観察されるが、それぞれはT2[SiC(OH)(OSi)2]とT3[SiC(OSi)3]に帰属される。これらの結果から、得られた層状フェニルシリカ複合材料は図38に示したように、1枚のフェニルシリカのシートの厚さが約10Åの層状構造をしていることが確認された。また、図39に示した蛍光スペクトル(励起光波長:260nm)から明らかなように、得られた層状フェニルシリカ複合材料は強い蛍光を示すことが確認された。
【0160】
<層状ビフェニルシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例15)
4.5gのODTMAを水50mlに溶解させ、800μlの6規定NaOH水溶液を加えた。この溶液を氷冷により4℃に冷却してから2gのBTEBPを加え、超音波処理を20分行い、氷冷しながら24時間攪拌を行った。白色の沈殿が生成したので、それをろ過により回収し、乾燥して層状ビフェニルシリカ複合材料(8.9g)を得た。
【0161】
図40に得られた層状ビフェニルシリカ複合材料の粉末X線回折パターンを示す。図40に示したXRDパターンから、この試料は層間距離が30.0Åの層状構造をしていることが確認された。この層間距離は、ちょうど界面活性剤のモノレイヤーと架橋有機シランからなる層状構造に相当していた。
【0162】
次に、得られた層状ビフェニルシリカ複合材料(0.08g)にトルエン(10μl)を垂らし、再度粉末X線回折パターンを測定した。図41に示したXRDパターンから明らかなように、層間の拡張が観察された。このことから、得られた層状ビフェニルシリカ複合材料においては、ビフェニルシリカのナノシートをばらばらに分散させることが可能であることが確認された。また、図42に示した蛍光スペクトル(励起光波長:300nm)から明らかなように、得られた層状ビフェニルシリカ複合材料は強い蛍光を示すことが確認された。
【0163】
<アントラセンの導入と発光特性試験>
(実施例16〜18)
9,10−ビストリエトキシシリルアントラセン(BTEA)はアズマックスから購入したものを使用した。実施例1で得られたフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-c)を用い、その細孔表面の−OH基にBTEAを以下の方法によって修飾せしめた。すなわち、トルエン溶媒(65ml)にBTEA(0.1〜0.8g)を溶解させた後、その中にPh-HMM-c(1g)を分散させ、50℃で5時間攪拌した。次いで、室温まで放置した後、濾過し、得られた固体をアセトン、ジエチルエーテルで洗浄して乾燥させ、少し黄色みがかった粉末を得た。このようにして、Ph-HMM-c 1gに対して表4に示すようにBTEAの濃度を変えて、Ant/Ph-HMM0.1(実施例16)、Ant/Ph-HMM0.2(実施例17)、Ant/Ph-HMM0.8(実施例18)の3種類のアントラセンを固定化したフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体を得た。
【0164】
【表4】
【0165】
図43に、実施例16〜18で得られた各試料及び実施例1で得られたPh-HMM-cのX線回折パターンを示す。どの試料においも2θ=2〜5°にヘキサゴナル構造を示すd10,d11,d20のピークが見られ、規則的なメソ構造が構築されていることが確認できた。また、2θ=10〜40°において骨格のフェニル基が周期的に配列していることを示す3つのピークも見られ、結晶性の骨格構造が確認できた。以上の結果から、BTEAを導入することによってピーク強度の低下が見られたものの、細孔構造及び骨格の周期性を保持したままBTEAを導入できたことが確認された。なお、BTEAの導入量のより少ないAnt/Ph-HMM0.1及びAnt/Ph-HMM0.2も同様のX線回折パターンを示し、細孔構造及び骨格の周期性を保持したままBTEAを導入できた。
【0166】
実施例1で得られたPh-HMM-cのN2吸着等温線を図44に、実施例16で得られた試料のN2吸着等温線を図45に、実施例17で得られた試料のN2吸着等温線を図46に、実施例18で得られた試料のN2吸着等温線を図47にそれぞれ示す。これらのN2吸着等温線に基づいて、実施例16〜18で得られた各試料及び実施例1で得られたPh-HMM-cの比表面積をBET法により、中心細孔直径をBJH法により、細孔容量をt-plot法によりそれぞれ算出し、得られた結果を表5に示す。
【0167】
【表5】
【0168】
図44〜47に示した全ての試料においてメソ多孔体特有のIV型の吸着等温線を示しており、中心細孔直径が2.5から3nmの均一な細孔を有していることが確認された。また、BTEAの導入量の増加にしたがって比表面積、細孔容量が低下しており、かつ中心細孔直径が小さくなっていた。これは、アントラセンが細孔内に導入されたことに起因していると考えられる。
【0169】
Ph-HMMにBTEAを導入した実施例18の試料の13C-CP-NMRの結果を図48に示す。BTEAを導入していないPh-HMMのみのNMRの結果と比較すると、60ppm付近に見られるピーク(*)以外は同じであり、BTEA自体のピークはほとんど確認されなかった。
【0170】
また、Ph-HMMにBTEAを導入した実施例18の試料の29Si-MAS-NMRの結果を図49に示す。29Si-MAS-NMRでは60〜70ppm付近にBTEAのアントラセン由来のピークと70〜80ppm付近にPh-HMMのベンゼン由来のピークがそれぞれ確認された。このことから、70ppm付近ではアントラセンのT3とベンゼンのT2サイトが重なっていることが確認された。また、100〜120ppmのQサイトのピークが見られないことから、芳香環とSiは切断されておらず、構造が保持されていることも確認された。
【0171】
次に、BTEAを固定したPh-HMMの光特性を調べるために、吸収スペクトル(反射法)及び蛍光スペクトルを測定した。実施例1で得られたPh-HMM-cの吸収スペクトルを図50に、実施例16で得られた試料の吸収スペクトルを図51に、実施例17で得られた試料の吸収スペクトルを図52に、実施例18で得られた試料の吸収スペクトルを図53にそれぞれ示す。Ph-HMMではベンゼンの吸収(260〜280nm)が見られたのに対し、BTEA固定後ではベンゼンの吸収の他に350〜400nmにアントラセンの吸収が確認された。一方、Ph-HMMとBTEAとの物理混合物の吸収スペクトル(図示せず)においてはアントラセンのピークがシャープで長波長側にシフトしており、BTEAを固定化したものとは傾向が異なっていた。これは、Ph-HMMにBTEAのアントラセンが化学結合していることによって生じた差であると考えられ、単なる物理混合ではないことが確認された。
【0172】
次に、Ph-HMMに固定されたBTEAの量を吸収スペクトルにより定量した。なお、試料をそのまま測定した場合はスペクトルの反射が強すぎて正確なスペクトルが得られないため、ブランクとなる硫酸バリウムで希釈してスペクトル測定を行った。すなわち、先ず、Ph-HMMと硫酸バリウムを種々の割合で混合した試料の反射スペクトルを測定した。硫酸バリウム2gに対してPh-HMM0.03gとした時に、フェニル基特有の2つのピークが270〜290nmに見られたが、それ以上の混合比では吸収が飽和に近くなり2つのピークが不明瞭になった。そこで、硫酸バリウム2gに対してPh-HMMを0.03gで混合して吸収スペクトルを測定することとした。
【0173】
続いて、BTEAの検量線を作成するため、所定量(0.0011〜0.0146g)のBTEAをPh-HMM/BaSO4(0.03g/2g)に混合した試料を調製した。そして、ベンゼンとアントラセンの吸収ピークの極大値比を用いてKubelka-Munk関数でプロットした。その結果を図53に示す。プロットは零点を通るよい直線関係を示した。よってこの検量線を使って定量することとした。なお、Kubelka-Munk関数式は、K/S=(1-R∞)2/2R∞{式中、R∞はアントラセンの吸収ピークの極大値(Max390nm)、Kは吸収係数、Sは散乱係数を示す。}である。
【0174】
また、この検量線からBTEA量が増加するにしたがって反射スペクトルにおけるBTEAのピーク極大値が増加していることが確認された。そこで、実際にBTEAを固定した試料の吸収スペクトル(図51〜図53)のBTEAのピーク極大値から、図54に示す検量線を用いてBTEAが固定されたBTEAの量を算出した。その結果を表6に示す。
【0175】
【表6】
【0176】
次に、ベンゼンからアントラセンへのエネルギー移動を調べるため、蛍光スペクトルの測定を行った。先ず、ベンゼンからアントラセンへのエネルギー移動を観察するのに適した波長を以下のようにして確認した。すなわち、図55に示すBTEAのモノマーでの吸収スペクトルの結果より、BTEAは260nmで吸収は持っておらず、450nm付近にアントラセン由来の吸収を有していることが確認された。また、図56は、励起波長260nmにおけるPh-HMM及びBTEAの蛍光スペクトルであるが、Ph-HMMの蛍光スペクトルにおいては320nm付近に大きなピークを示したが、BTEAの蛍光スペクトルはピークが見られないことが確認された。そのため、励起波長260nmはベンゼンからアントラセンへのエネルギー移動を観察するのに適した波長であることが確認された。
【0177】
次に、実施例16〜18で得られた各試料に対して励起波長260nmで蛍光スペクトルを測定した結果を図57に示す。BTEA導入後の試料ではフェニル基、アントラセンそれぞれのピークが320nm、430nmにそれぞれ見られた。これは、BTEAがPh-HMMの細孔内に固定されたことを示している。また、BTEAの導入量が増えるにしたがってアントラセンのピークが大きくなり、かつフェニル基のピークが小さくなった。Ph-HMMの量そのものに変化はないことから、上記の事実からフェニル基からアントラセンへのエネルギーの受け渡しが行われていたことが確認された。
【0178】
以上の結果から、フェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-c)の細孔内にアントラセン前駆体(BTEA)を導入することができ、それによってフェニル基からアントラセンへのエネルギー移動が起きていることが確認された。
【0179】
<ポルフィリンの導入と発光特性試験>
(実施例19〜20)
実施例1で得られたフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(Ph-HMM-c)及び実施例4で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c)を用いた。そして、アルミニウムポルフィリン錯体(Al-TPPEt)(0.32g)をベンゼン(100ml)中に溶解させ、その中に実施例1及び実施例4で得られたメソ多孔体(1g)を加え、遮光下で24℃で24時間攪拌して各メソ多孔体にAl-TPPEtを物理吸着せしめた。得られた粉末を十分にエタノール及びベンゼンで洗いながらろ過し、赤色の粉末を得た。それぞれをAl-TPPEt/Ph-HMM(実施例19)、Al-TPPEt/BiPh-HMM(実施例20)とした。
【0180】
Ph-HMM-c、BiPh-HMM-c、Al-TPPEt/Ph-HMM及びAl-TPPEt/BiPh-HMMのX線回折パターンを図58に示す。テンプレートとしてODTMA(C18TMA+Cl-)を添加して合成したPh-HMM-cとBiPh-HMM-cにおいては、2θ=1〜3°にメソ構造(2Dヘキサゴナル)を示すピークとともに、骨格内のベンゼンの周期性を示す0.76と1.19nmのピークが確認された。TPPEtをメソ細孔内に導入したAl-TPPEt/Ph-HMMとAl-TPPEt/BiPh-HMMにおいてもPh-HMM-c及びBiPh-HMM-cと同じ位置にピークが見られたことから、吸着処理によってPh-HMM-c及びBiPh-HMM-cの構造が壊れていないことが確認された。
【0181】
次に、Al-TPPEt/Ph-HMMのUV-visスペクトルを図59に、Al-TPPEt/BiPh-HMMのUV-visスペクトルを図60にそれぞれ示す。260〜320nm付近にメソポーラスシリカ壁面のベンゼンとビフェニルのπ−π*遷移に帰属される吸収が見られた。そして400〜700nmの間では、Al-TSPPのSoretバンドとQバンドに帰属される吸収スペクトルが見られ、複合体においてはそれらの両方が確認された。なお、メソ細孔内でのAl-TPPEtの会合状態はAl-TPPEtのSoretバンドのシフトにより見積もることができる。Al-TPPEt/Ph-HMMとAl-TPPEt/BiPh-HMMにおけるAl-TPPEtのSoretバンドはそれぞれ406と413nmとなり、クロロホルム中で会合状態をもたないバンド(422nm)よりブルーシフトしていた。この結果は、Ph-HMM-c及びBiPh-HMM-c中においてAl-TPPEtはH会合体を形成していることを示している。このようなH会合体を形成する要因としては、細孔内に規則的に並んだ疎水部に疎水性であるポルフィリンが並んで吸着されているためであると考えられる。
【0182】
また、Al-TPPEt/Ph-HMMとAl-TPPEt/BiPh-HMMとを比較した場合、前者の方がAl-TPPEtのSoretバンドのブルーシフトが大きかった。この結果から、Ph-HMM-cの細孔壁面がよりH会合体を取りやすくなっていることが確認された。これは、BiPh-HMM-cの疎水部の幅がPh-HMM-cよりも広いため、Al-TPPEtが傾いて吸着してH会合体を取りにくくなっているためであると推察される。
【0183】
次に、Al-TPPEt/Ph-HMM複合体の蛍光スペクトルを図61に示す。260nmの光でPh-HMM-cを励起すると300nm付近に強い蛍光がみられたが、Al-TPPEtを導入した複合体では消光していた。また、Al-TPPEt/BiPh-HMM複合体の蛍光スペクトルを図62に示す。この場合も、300nmの光でBiPh-HMM-cを励起すると380nm付近に強い蛍光がみられたが、Al-TPPEtを導入した複合体では消光していた。このような結果は、Ph-HMM-c及びBiPh-HMM-cからAl-TPPEtへエネルギー移動したことを示している。しかしながら、Al-TPPEtに由来する蛍光は励起光の2倍波に隠れてしまうか若しくは遠赤外に吸収を持つため、本装置では検出できなかったものと考えられる。
【0184】
そこで紫外光ランプ(254nm)で照射しながら、Al-TPPEt粉末、Al-TPPEt/Ph-HMM粉末、Ph-HMM-c粉末、BiPh-HMM-c粉末及びAl-TPPEt/BiPh-HMM粉末の発光状態を観察し、それらの粉末の発光状態を示す写真を図63〜図67にそれぞれ示す。図63〜図67に示した結果から、Al-TPPEtを担持した試料(Al-TPPEt/Ph-HMM及びAl-TPPEt/BiPh-HMM)のみが発光していることが確認された。この事実も、Ph-HMM-c及びBiPh-HMM-cからAl-TPPEtへのエネルギー移動が生じていることを示している。
【0185】
以上の結果から、Ph-HMM-cからAl-TPPEtへのエネルギー移動の機構について以下のように考察する。すなわち、メソ細孔にAl-TPPEtが存在しているために二つの分子は近い距離にあり、この距離に依存したエネルギー移動のぺランモデルが適応できる。ぺランモデルは剛体溶液中や固相におけるエネルギー移動を考察するときによく用いられる。このモデルにおいてはスペクトルの重なりは重要ではなく、ドナーの消光空間にアクセプターが存在する時、エネルギー移動が効率的に起きるというモデルである。今回の複合体の系では、ドナーであるPh-HMM-cの壁面にAl-TPPEtがH会合体として吸着している。故に十分にPh-HMM-cの消光空間にAl-TPPEtが存在し、Ph-HMM-cからAl-TPPEtへのエネルギー移動が効率的に起こったと考えられる。
【0186】
このように、フェニルシリカ複合材料及びビフェニルシリカ複合材料からメソ細孔中のアルミニウムポルフィリンへ効率よくエネルギー移動することが確認できた。光エネルギーを得たポルフィリンは、CO2の固定や高分子合成等の様々な応用が期待できる。また、紫外線領域に蛍光を発するフェニルシリカ複合材料及びビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体に様々な蛍光材料を吸着させることにより、自在に蛍光の色やエネルギーを制御することが可能となる。
【0187】
<耐熱性試験>
(実施例21及び比較例8〜9)
実施例10と同様にして得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMMc-s-film)(実施例21)と、比較のための従来の膜状蛍光物質{Bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl]benzidine(NPB)(比較例8)及び4,4'-Bis(9-carbazolyl)-biphenyl(CBP)}(比較例9)とを150℃の電気炉中に30分放置した後に、熱処理後の薄膜の外観を肉眼により観察した。
【0188】
実施例21(実施例10)で得られたBiPh-HMMc-s-filmにおいてはその薄膜の透明性に何ら変化はなかったのに対し、比較のための従来の膜状蛍光物質(NPB及びCBP)(比較例8〜9)はいずれも白濁してしまっていた。このような白濁は蛍光物質の結晶化によるものと考えられる。この結果から、本発明の発光材料は耐熱性に優れていることが確認された。したがって、ビフェニルシリカ複合材料を色素レーザーの色素レーザー素子として用いると色素レーザーの長寿命化が図れることが確認された。また、ビフェニルシリカ複合材料は光増幅器の色素素子としても耐熱性に優れることが確認された。
【0189】
<薄膜状発光材料の合成と発光特性試験(2)>
(実施例22)
エタノール(EtOH)4gに、イオン交換水320μl、2N塩酸水溶液10μl及びテンプレートとしてのノニオン性界面活性剤Brij-76(C18H37(EO)10)0.86gを添加した溶液に、下記構造を有するBTEBPを1.2g加え、室温下で1時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、ガラス基板上にコート膜(膜厚:100〜500nm)を得た。なお、コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。さらに、得られた膜を100℃で1時間以上乾燥させた。
【0190】
【化8】
【0191】
実施例22で得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMMc-s-film2)のX線回折パターンを図68に、蛍光スペクトル(実線、励起波長:280nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:360nm)を図69にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいてd=7.2nmに強いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図68)。また、励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、360nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図69)。
【0192】
(実施例23〜24)
表7に示す組成となるように、エタノールにイオン交換水、2N塩酸水溶液及びテンプレートとしての非イオン系界面活性剤P123[(EO)20-(PO)70-(EO)20]をそれぞれ添加した溶液に、Si源として表7に示す量のBTEB(実施例23)又はBTEBP(実施例24)を加え、室温下で1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。このゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。なお、ディップ条件は、ディップ速度2cm/min、浸漬時間2分とした。さらに、得られた膜を空気中250℃で2時間焼成した。
【0193】
【表7】
【0194】
実施例23で得られたフェニルシリカ複合材料の薄膜(Ph-HMM)及び実施例24で得られたビフェニルシリカ複合材料の薄膜(BiPh-HMM)の焼成前後のX線回折パターンを図70及び図71にそれぞれ示す。焼成前後においてPh-HMM薄膜とBiPh-HMM薄膜はそれぞれ規則的なメソ構造を有することが確認された。
【0195】
次に、Ph-HMM薄膜及びBiPh-HMM薄膜の焼成前後の蛍光スペクトルを図72及び図73にそれぞれ示す。焼成前後においてPh-HMM薄膜とBiPh-HMM薄膜はそれぞれ強い蛍光を示すことが確認された。
【0196】
(実施例25)
エタノール(EtOH)2gに、イオン交換水90μl及び2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液に、BTEBPを0.3g加え、室温下で1時間30分攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜500nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0197】
実施例25で得られたビフェニルシリカ薄膜(BiPh-acid-film)の蛍光スペクトル(実線、励起波長:280nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:360nm)を図74に、UVスペクトルを図75にそれぞれ示す。励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、360nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図74)。また、UVスペクトルの結果から、250〜270nmを中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図74)。
【0198】
(実施例26)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水21μl、2N塩酸水溶液5μl及びBrij-76(C18H37(EO)10)0.07gを添加した溶液に、下記構造を有するBTETP0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で24時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0199】
【化9】
【0200】
実施例26で得られたターフェニルシリカ複合材料の薄膜(TPh-HMMc-s-film)のX線回折パターンを図76に、蛍光スペクトル(実線、励起波長:280nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:420nm)を図77にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、ブロードではあるが、d=7.2nmにピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図76)。また、励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、360nmと410nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図77)。
【0201】
(実施例27)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水43μl及び2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液に、BTETP0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で24時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0202】
実施例27で得られたターフェニルシリカ薄膜(TPh-acid-film)の蛍光スペクトル(実線、励起波長:280nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:400nm)を図78に示す。励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、420nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図78)。
【0203】
(実施例28)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水21μl、2N塩酸水溶液5μl及びBrij-76(C18H37(EO)10)0.07gを添加した溶液に、下記構造を有する1,6-BTEPyr0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で15時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0204】
【化10】
【0205】
実施例28で得られたピレンシリカ複合材料の薄膜(Pyr-HMMc-s-film)のX線回折パターンを図79に、蛍光スペクトル(実線、励起波長:350nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:450nm)を図80に、UVスペクトルを図81にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=6.5nmに強いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図79)。また、励起波長を350nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、450nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図80)。また、UVスペクトルの結果から、245nm、280nm及び350nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図81)。
【0206】
(実施例29)
エタノール1gに、イオン交換水10μl及び2N塩酸水溶液2μlを添加した溶液に、1,6-BTEPyr0.1gをエタノール1gに溶解させた溶液を加え、室温下で1時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0207】
実施例29で得られたピレンシリカ薄膜(Pyr-acid-film)の蛍光スペクトル(実線、励起波長:350nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:450nm)を図82に、UVスペクトルを図83にそれぞれ示す。励起波長を350nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、470nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図82)。また、UVスペクトルの結果から、240nm、280nm及び350nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図83)。
【0208】
(実施例30)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水43μl、2N塩酸水溶液10μl及びBrij-76(C18H37(EO)10)0.07gを添加した溶液に、下記構造を有するBTEAnt0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で20時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、実施例22と同様にしてスピンコート法によってコート膜(膜厚:100〜300nm)を得た後、得られた膜を乾燥させた。
【0209】
【化11】
【0210】
実施例30で得られたアントラセンシリカ複合材料の薄膜(Ant-HMMc-s-film)のX線回折パターンを図84に、蛍光スペクトル(実線、励起波長:390nm)及び励起スペクトル(破線、測定波長:500nm)を図85に、UVスペクトルを図86にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、ブロードではあるが、d=5.8nmにピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図84)。また、励起波長を390nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、500nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図85)。さらに、UVスペクトルの結果から、250nm及び380nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図86)。
【0211】
(実施例31)
4,4’-ジブロモオクタフルオロビフェニル(1.01g)を含有するTHF(2.9ml)溶液を、マグネシウム(0.22g)、ヨウ素(0.10g)及びクロロトリエトキシシラン(1.05g)を含有するTHF(2.9ml)溶液中に、アルゴン雰囲気下60℃で滴下した。この反応混合物を75℃で18時間還流した後、溶媒を留去した。次いで、残査からヘキサン(30ml)を用いて生成物を抽出し、黄色のオイル状粗生成物を得た。これを減圧下(100hPa)350℃で加熱することによって、茶色のガラス状の固体としてオクタフルオロビフェニルシリカを得た。
【0212】
得られたオクタフルオロビフェニルシリカをサンプルフォルダに固定し、蛍光スペクトル及び励起スペクトルの測定を行ったところ、励起波長を360nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、440nmに蛍光ピークを示すことが確認された(図87)。さらに、測定波長を430nmとして励起スペクトルを測定した場合、370nmを中心とした350nmから400nmにわたるブロードな励起ピークを示すことが確認された(図87)。
【0213】
<粉末状発光材料の合成と発光特性試験>
(実施例32〜36)
イオン交換水6g及び12N塩酸水溶液333μlを混合した溶液を2つ(実施例35,36用)、さらにその溶液に界面活性剤である1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)を0.08g溶解させた溶液を3つ(実施例32〜34用)用意した。次いで、それらの溶液に、それぞれ表8に示す有機ケイ素化合物(有機架橋型シリカ前駆体)0.1gをエタノール1gに溶解させた溶液を激しく攪拌しながら添加し、超音波処理を15分間行った。そして、得られた各混合物を室温で24時間攪拌した後、密閉容器中100℃で20時間加熱し、室温まで冷却した後にろ過、洗浄及び乾燥させて目的とする粉末状の試料を得た。
【0214】
【表8】
【0215】
実施例32〜36で得られた各試料の蛍光スペクトル及び励起スペクトルを測定した。得られた結果を図88(実施例32)、図89(実施例33)、図90(実施例34)、図91(実施例35)、図92(実施例36)に示し、それぞれの最大励起波長と最大発光波長を表8に示す。
【0216】
BTETPを用いて合成した実施例32で得られた試料(Tph-HMM-acid)と実施例35で得られた試料(Tph-acid)はともに、340nmを中心とした励起スペクトルを示し、420nmを中心とした発光スペクトルを示すことが確認された。また、1,6-BTEPyrを用いて合成した実施例33で得られた試料(Pyr-HMM-acid)と実施例36で得られた試料(Pyr-Acid)はともに、390〜410nmを中心とした励起スペクトルを示し、460〜480nmを中心とした発光スペクトルを示すことが確認された。さらに、BTEAntを用いて合成した実施例34で得られた試料(Ant-HMM-Acid)は、420nmを中心とした励起スペクトルを示し、520nmを中心とした発光スペクトルを示すことが確認された。
【0217】
<他の発光性化合物の導入と発光特性試験>
(実施例37)
テンプレートとなるオクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(ODTMA)と光機能性分子であるフルオレセイン(Fl、東京化成工業社製)とをそれぞれ表9に示す組成となるように同表に示す塩基性水溶液(6N NaOH+H2O)に添加し、超音波処理を行って溶解させた。次に、それらの溶液に表9に示す量のBTEBPを加え、20分間超音波を用いて攪拌した。そして、このようにして得られた各混合物を1日室温下で攪拌した後、100℃で一昼夜加熱し、得られた沈殿物をろ過により取り出して蒸留水で洗浄し、目的とする試料を得た。
【0218】
【表9】
【0219】
実施例37で得られた試料1(BiPh-HMM粉末)、試料2(F1(0.5mg)/BiPh-HMM粉末)、試料5(F1(5mg)/BiPh-HMM粉末)のX線回折パターンをそれぞれ図93、図94、図95に示す。Flを担持していない試料1と同様に、試料2及び試料5のいずれにおいても、2θ=2°付近にメソ構造に起因した回折ピーク、2θ=8、15°付近に細孔骨格にビフェニル基が規則的に配列していることを示す周期構造回折ピークが確認できた。このように、Flを添加した系において、結晶骨格を有するBiPh-HMM粉末が調製できたことが確認された。
【0220】
また、実施例37で得られた試料1〜5の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を図96に示す。Flを担持していない試料1の蛍光スペクトルには370nmに極大値を有するピークのみが観察された。一方、Flを担持した試料2〜5においては370nmのピークと530nmに極大値を有するFlのピークの両方が確認された。Flのエタノール溶液は300nmの励起で蛍光を示さなかったことから、BiPh-HMMからFlへのエネルギー移動によって530nmで発光するようになったことが確認された。また、Flの添加量が増加するに従い、370nmのBiPh-HMMの蛍光スペクトルが減少し、530nmのFlの蛍光スペクトルが増加した。このことから、Flが増加するに従い、BiPh-HMMからFlへのエネルギー移動が起こったことが確認された。
【0221】
また、実施例37で得られた試料5からエタノール抽出によって界面活性剤を除去し、その構造及び蛍光特性の変化を調べた結果、メソ構造とビフェニル基の規則構造は全く変化しなかったのに対し、Flの蛍光は全く示さなくなった。このことから、F1が界面活性剤中に取り込まれていたことが確認された。図97に、実施例37で得られた試料(F1/BiPh-HMM粉末)の構造模式図を示す。
【0222】
(実施例38)
テンプレートとなるBrij76(C18H37(EO)10)0.43gと光機能性分子である所定量{0mg(試料1)、11mg(試料2)、30mg(試料3)}のフルオレセイン(F1)とを、イオン交換水0.09g、エタノール3g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、20分間攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に2時間攪拌した。そして、このようにして得られた各溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。なお、BTEBPに対するFlのモル比は、試料1が0mol%、試料2が2mol%、試料3が5mol%となった。
【0223】
実施例38で得られた試料2(F1(2mol%)/BiPh-HMM薄膜)のX線回折パターンを図98に示す。この試料ではメソ構造に帰属されるピークが2θ=1〜2°付近に観測され、規則的なメソ構造を有していることが確認された。
【0224】
また、実施例38で得られた試料1〜3の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を図99に示す。BiPh-HMM薄膜(試料1)は370nmの最大蛍光波長のみを示したのに対し、Flを導入すると370nmの蛍光ピークは減少してFlの530nm付近のピークが増加し、Flの量を増やすとその傾向が顕著になることが確認された。
【0225】
なお、紫外光照射下で実施例38で得られた各試料を観察すると、Flの量が0mol%の場合は青紫、2mol%の時は青、そして5mol%の時は緑色を呈していた。
【0226】
次に、実施例38で得られた試料2(F1(2mol%)/BiPh-HMM薄膜)を用いてビフェニル基の吸収波長の300nmの光とFlの吸収波長の420nmの光で励起した時の蛍光スペクトルの比較を行なった。得られた結果を図100に示す。300nmで励起した場合はFlの強い発光(530nm)が観察されたが、420nmで励起した場合は弱い蛍光しか観察されなかった。このことは、ビフェニル基からのエネルギー移動によりFlを効率的に光らせることができることを示しており、メソポーラス骨格による光捕集効果が確認された。
【0227】
(実施例39〜40)
テンプレートとなるBrij76(C18H37(EO)10)0.5gと光機能性分子である所定量のローダミンB(実施例39、アルドリッチ社製)又はピレン(実施例40、東京化成工業社製)とを、イオン交換水360μl、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。そして、このようにして得られた各ゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0228】
なお、実施例39において、ローダミンの量は、0mg(0mol%)、2.6mg(0.5mol%)、5.2mg(1mol%)、10mg(2mol%)、26mg(5mol%)と変化させた。また、実施例40において、ピレンの量は、12mg(5mol%)、25mg(10mol%)、50mg(20mol%)と変化させた。括弧内はBTEBPに対するローダミン又はピレンのモル比である。
【0229】
実施例39及び40で得られた各試料についてX線構造解析を行ったところ、色素(ローダミン又はピレン)を導入したBiPh-HMM薄膜のいずれにおいてもメソ構造を示すピーク(d=6.5nm)を示すことが確認された。
【0230】
また、実施例39で得られた各試料(ローダミン/BiPh-HMM薄膜)の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を図101に、実施例40で得られた各試料(ピレン/BiPh-HMM薄膜)の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を図102にそれぞれ示す。ローダミンを導入した試料及びピレンを導入した試料のいずれにおいても、色素の導入量の増加に伴ってビフェニル基の蛍光の減少及び色素の蛍光の増加が見られたことから、ビフェニル骨格から色素へのエネルギー移動が起こっていることが確認された。
【0231】
さらに、実施例40で得られた各試料(ピレン/BiPh-HMM薄膜)において、BTEBPに対する色素の導入量が20mol%となるまでピレンを導入してもモノマー発光の強度が高かった。このことから、メソ細孔内において、色素は、高濃度でも会合しにくいことが確認された。
【0232】
(実施例41〜42)
テンプレートとなるBrij76(C18H37(EO)10)0.5gと光機能性分子であるEuCl3(実施例41、和光純薬工業社製)40mg又はTbCl3(実施例42、和光純薬工業社製)38mgとを、イオン交換水360μl、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。そして、このようにして得られた各ゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0233】
実施例41及び42で得られた各試料についてX線構造解析を行ったところ、希土類イオン(EuCl3又はTbCl3)を導入したBiPh-HMM薄膜のいずれにおいてもメソ構造を示すピーク(d=6.3nm)を示すことが確認された。
【0234】
また、EuCl3及びTbCl3は、それらのエタノール溶液の吸収スペクトルを示す図103から明らかなように、それぞれ紫外光領域に吸収(EuCl3:250、270nm、TbCl3:220nm)を持っているが、それらをそれぞれの最大吸収波長で励起しても蛍光スペクトルはほとんど見られなかった。
【0235】
実施例41で得られた試料(EuCl3/BiPh-HMM-film)の蛍光スペクトル(励起波長:280nm)を、BiPh-HMM-film及びEuCl3エタノール溶液の蛍光スペクトルと共に図104に示す。また、実施例42で得られた試料(TbCl3/BiPh-HMM-film)の蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を、BiPh-HMM-film及びTbCl3エタノール溶液の蛍光スペクトルと共に図105に示す。EuCl3を導入した試料及びTbCl3を導入した試料のいずれにおいても、色素の導入量の増加に伴ってビフェニル基の蛍光の減少及び色素の蛍光の増加が見られたことから、ビフェニル骨格から色素へのエネルギー移動が起こっていることが確認された。
【0236】
また、これらの試料に紫外線(254nm)を照射したところ、EuCl3/BiPh-HMM-filmが赤紫に、TbCl3/BiPh-HMM-filmが青色に強く発光していることが確認された。
【0237】
(実施例43)
テンプレートとなるBrij76(C18H37(EO)10)0.43gと蛍光色素である所定量の7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン(シグマ-アルドリッチ社製、以下「クマリン」という)とを、イオン交換水0.18g、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に室温で2時間攪拌してゾル溶液を得た。
【0238】
なお、クマリンの量は、0mg(0mol%)、0.188mg(0.06mol%)、0.37mg(0.12mol%)、0.56mg(0.18mol%)、0.75mg(0.24mol%)、0.94mg(0.3mol%)、1.88mg(0.6mol%)、3.7mg(1.2mol%)、5.6mg(1.8mol%)、7.5mg(2.4mol%)、9.4mg(3.0mol%)、18.8mg(6.0mol%)と変化させた。括弧内はBTEBPに対するクマリンのモル比である。
【0239】
また、クマリンの光2量化反応等による劣化を防ぐために、上記のゾル溶液の調製は遮光下で行なった。そして、このようにして得られた各ゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0240】
図106にクマリンを導入していないBiPh-HMM-filmのX線回折パターンを、図107にクマリンを3mol%導入したクマリン(3mol%)/BiPh-HMM-filmのX線回折パターンをそれぞれ示した。どちらの薄膜においてもメソ構造に起因した回折が2θ=1〜2°に観察された。このことから、クマリンを導入してもBiPh-HMM膜のメソ構造が保持されていることが確認された。
【0241】
図108に種々の量のクマリンを導入したクマリン/BiPh-HMM-filmの蛍光スペクトル(励起波長:270nm)を示した。クマリンを導入していないBiPh-HMM-filmの蛍光スペクトルにおいては、370nmにのみビフェニル基による発光が見られた。一方、クマリンを導入すると、クマリンに起因する430nmの発光が見られるようになり、同時にビフェニルに起因する370nmの発光強度の急激な低下が起こった。BiPh-HMM中のビフェニル基に対して1.8mol%以上のクマリンを導入したところで、ビフェニル基の発光はほぼゼロとなった。このクマリン/BiPh-HMM-filmは紫外線の照射下で鋭く青色発光することが確認された。
【0242】
図109に、BiPh-HMM-film、クマリンのエタノール溶液、クマリン(1.8mol%)/BiPh-HMM-filmの蛍光及び励起スペクトルを比較して示した。この図から、BiPh-HMM-filmとクマリンの励起波長がほとんど重なっていないことが分かる。すなわち、270nmの光では、BiPh-HMM-filmが優先的に励起されることが分かる。このことから、BiPh-HMMからクマリンへのエネルギー移動が起こっていることが確認された。
【0243】
また、クマリン(1.8mol%)/BiPh-HMM-filmを270nmと380nmで励起したところ、270nm励起の方が380nm励起よりもクマリンの蛍光強度が8倍(面積比)も強いことが分かった(図109)。更に、クマリンの導入量が0.12mol%の時は、両者の励起波長における蛍光強度の比が48倍となった。すなわち、クマリンの直接励起よりも、BiPh-HMMからエネルギー移動させた方が、クマリンを効率的に発光できることが確認された。これは、BiPh-HMMが効率的に光を捕集し、そのエネルギーを効率的にクマリンに注入できたためと本発明者らは推察する。
【0244】
(実施例44)
蛍光色素である所定量のクマリンを、イオン交換水0.18g、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に室温で2時間攪拌してゾル溶液を得た。
【0245】
なお、クマリンの量は、0mg(0mol%)、0.047mg(0.015mol%)、0.094mg(0.03mol%)、0.47mg(0.15mol%)、0.94mg(0.3mol%)、4.7mg(1.5mol%)、9.4mg(3.0mol%)と変化させた。括弧内はBTEBPに対するクマリンのモル比である。
【0246】
また、クマリンの光2量化反応等による劣化を防ぐために、上記のゾル溶液の調製は遮光下で行なった。そして、このようにして得られた各ゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0247】
実施例44において得られたクマリンとビフェニルシリカとの複合膜(クマリン/BiPh複合膜)のX線回折パターンを確認したところ、明瞭な回折ピークは見られず、規則的なメソ構造は形成されていないことが確認された。
【0248】
図110に種々の量のクマリンを導入したクマリン/BiPh複合膜の蛍光スペクトル(励起波長:270nm)を示した。その結果から、界面活性剤を使用しない系においても、ビフェニル基からクマリンへの励起エネルギーが移動していることが確認された。また、このクマリン/BiPh複合膜も紫外線の照射下で鋭く青色発光することが確認された。
【0249】
(実施例45及び比較例10〜11)
予め一定濃度の燐光錯体Ir(ppy)3溶液(溶媒の混合比率、エタノール:THF=1:4)を以下のようにして作製した。すなわち、先ず、Ir(ppy)3(同仁化学社製)23mg(3.5×10-5mol)を、THF30.7g及びエタノール7.8gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。この溶液をXとする。
【0250】
次に、この溶液Xの濃度をaとした場合、4種類(a、0.75a、0.5a、0.25a)の濃度の溶液(それぞれD、C、B、Aとする)を準備する。但し、各溶液の重量は8gとし、溶媒の混合比率はエタノール:THF=1:4にする。これらA、B、C、Dの各溶液に、界面活性剤としてBrij76(C18H37(EO)10)0.43gと、6N塩酸水溶液10μlと、純水180μlとを混合し、10分間攪拌した(それぞれA’、B’、C’、D’とする)。その後、A’、B’、C’、D’の各溶液にBTEBPを0.6g添加し、1日攪拌して均一なゾル溶液を作製した(それぞれA”、B”、C”、D”とする)。
【0251】
このようにして得られたA”、B”、C”、D”のゾル溶液におけるIr(ppy)3のBTEBPに対するモル比率は、それぞれ、0.14mol%、0.28mol%、0.42mol%、0.58mol%である。
【0252】
そして、このようにして得られた各ゾル溶液に石英基板をディップコートし(ディップ時間は1分間、上下移動にそれぞれ2分間ずつかかる)、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0253】
次に、Ir(ppy)3の燐光発光ピーク波長は511nmであるため、その発光を得るための励起スペクトルを測定した。図111に、Ir(ppy)3を0.14mol%導入したIr(ppy)3/BiPh-HMM薄膜の励起スペクトルを、比較のためのIr(ppy)3を0.1wt%導入したIr(ppy)3/PMMA薄膜(比較例10)及びIr(ppy)3を導入していないPMMA薄膜(比較例11)の励起スペクトルと共に示す。PMMA薄膜(膜厚1.1〜1.2μm)の励起スペクトルから、220nm付近では光学的には不活性である。また、その光学的に不活性なPMMAにIr(ppy)3をドープした薄膜(膜厚1.1〜1.2μm)の励起スペクトルから、220nm付近であればIr(ppy)3は直接励起されないことが分かる。一方、BiPh-HMM薄膜自体は220nm付近でも励起されるため、Ir(ppy)3/BiPh-HMM薄膜の励起波長を220nmに設定した。
【0254】
図112に実施例45で得られた各Ir(ppy)3/BiPh-HMM薄膜の燐光スペクトルを示した。燐光材料Ir(ppy)3が励起されない波長(励起波長:220nm、Photon Energy=5.64eV)で励起しても、Ir(ppy)3由来の緑色発光(ピーク発光波長:511nm)が得られたことから、BiPh-HMMから燐光材料へのエネルギー移動が起きていることが確認された。また、Ir(ppy)3の濃度が増加するに従い、ビフェニル由来の紫外発光ピーク(発光波長:370nm、Photon Energy=3.3eV)の強度が減少し、Ir(ppy)3由来の緑色発光ピーク(発光波長:511nm、Photon Energy=2.4eV)の強度が増加する結果が得られた。なお、励起光のピーク強度で規格化をして発光強度を比較している。
【0255】
(実施例46〜48)
実施例4で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c)と、実施例5で得られた界面活性剤を含んだ状態のビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-c-s)とを用いた。
【0256】
先ず、ローダミン6G(R6G、東京化成工業社製)55mgをエタノール24gに溶解させ、R6G溶液Aを調製した。同様に、R6G55mgをエタノール11.4gに溶解させ、R6G溶液Bを調製した。
【0257】
次に、BiPh-HMM-c1gにR6G溶液A2.56gを注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温でエタノールを蒸発させて、BiPh-HMM-cの表面にR6Gを添着(付着又は細孔に充填)させた試料1(実施例46、R6Gの添着量はBiPh-HMM-cに対して0.59wt%)を得た。
【0258】
同様に、BiPh-HMM-c-s各1gにR6G溶液A2.56g又はR6G溶液B2.48gをそれぞれ注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温でエタノールを蒸発させて、BiPh-HMM-c-sにR6Gを添着(付着又は細孔に充填)させた試料2(実施例47、R6Gの添着量はBiPh-HMM-c-sに対して0.59wt%)及び試料3(実施例48、R6Gの添着量はBiPh-HMM-c-sに対して1.2wt%)を得た。
【0259】
このようにして実施例46〜48で得られた試料1〜3(R6GとBiPh-HMMとの混合物)の蛍光スペクトルを、実施例5で得られたBiPh-HMM-c-sの蛍光スペクトルと共に図113に示す。300nmの光で励起すると、BiPh-HMM-c-s特有の370nm付近の蛍光とR6Gの添着に起因する560nm付近の蛍光が見られた。560nm付近の蛍光はBiPh-HMM-c-sからのエネルギー移動か、300nmの励起か、あるいはこれらの両方によるものかは必ずしも定かではないが、BiPh-HMM-c-sに比べて試料1〜3では370nm付近の蛍光強度は低下しており、370nm付近と560nm付近の蛍光強度比は界面活性剤の有無や添着量により異なることから、これらの制御により混色の調整が可能であることが確認された。
【0260】
(実施例49)
実施例5で得られた界面活性剤を含んだ状態のビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-c-s)を用いた。
【0261】
Dansyl Acid(DANS、1-ジメチルアミノナフタレン-5-スルホン酸、東京化成工業社製)57mgを、アセトン18.5gとイオン交換水23.5gとの混合液に溶解させ、DANS溶液を調製した。次に、BiPh-HMM-c-s1gにDANS溶液9.65gを注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温で溶媒を蒸発させて、BiPh-HMM-c-sにDANSを添着(付着又は細孔に充填)させた試料(DANSの添着量はBiPh-HMM-c-sに対して1.3wt%)を得た。
【0262】
このようにして実施例49で得られた試料(DANSとBiPh-HMMとの混合物)の蛍光スペクトルを図114に示す。300nmの光で励起すると、BiPh-HMM-c-s特有の370nm付近の蛍光は低下し、DANSの添着に起因する440nm付近の強い青色蛍光が確認された。
【0263】
(実施例50〜53)
イオン交換水36gに2N塩酸水溶液1mlと界面活性剤であるBrij76(C18H37(EO)10)0.178gとを添加して混合し、均一溶液とした。この溶液に、BTEBPを0.598g攪拌しながら加え、超音波処理を20分間施した。得られた溶液を室温で72時間攪拌し、さらに100℃で24時間攪拌した後、室温まで放冷し、ろ過、洗浄及び乾燥することによって、界面活性剤を含んだ状態のビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の前駆物質(実施例50、BiPh-HMM-c2-s)を得た。実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sのX線回折パターンにおいては、規則的なメソ構造を示す低角度領域(5度以下)にピークが観察されたが、ビフェニルの規則配列を示すピークは観察されなかった。
【0264】
ここでは、実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sと、実施例4で得られたビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体(BiPh-HMM-c)と、実施例5で得られた界面活性剤を含んだ状態のビフェニルシリカ複合材料のメソ多孔体の前駆物質(BiPh-HMM-c-s)とを用いた。
【0265】
先ず、クマリン(7-Diethylamino-4-methylcoumarin、アルドリッチ社製)104mgをエタノール20g又は35gに溶解させて、クマリン溶液A及びBを調製した。次に、BiPh-HMM-c1gにクマリン溶液A3.174gを注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温でエタノールを蒸発させて、BiPh-HMM-cの表面にクマリンを添着(付着又は細孔に充填)させた試料1(実施例51、クマリンの添着量はBiPh-HMM-cに対して1.82mol%)を得た。
【0266】
同様に、BiPh-HMM-c-s1gにクマリン溶液B2.842g、BiPh-HMM-c2-s1gにクマリン溶液B3.086gをそれぞれ注ぎ、超音波で1分間分散させた後、室温でエタノールを蒸発させて、BiPh-HMM-c-s又はBiPh-HMM-c2-sにクマリンを添着(付着又は細孔に充填)させた試料2(実施例52、クマリンの添着量はBiPh-HMM-c-sに対して1.87mol%)及び試料3(実施例53、クマリンの添着量はBiPh-HMM-c2-sに対して2.03mol%)を得た。
【0267】
このようにして、実施例51〜53で得られた試料1〜3(クマリンとBiPh-HMMとの混合物)の蛍光スペクトルを、実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sの蛍光スペクトルと共に図115(励起波長:270nm)及び図116(励起波長:370nm)に示す。
【0268】
<導入色素の組み合わせによる白色発光試験>
(実施例54)
Brij76(C18H37(EO)10)0.5gとローダミン6G2mgとクマリン152(アルドリッチ社製)10mgとを、エタノール4g、水360μl及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。次に、その溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。そして、このようにして得られたゾル溶液をディップコート法によってガラス基板上にコートし、60℃で2時間乾燥することにより均一なコート膜(膜厚:450nm)を得た。
【0269】
実施例54で得られた試料についてX線構造解析を行ったところ、ローダミンとクマリンを導入したBiPh-HMM薄膜においてもメソ構造を示すピーク(d=6.3nm)を示すことが確認された。
【0270】
実施例54で得られた試料の蛍光スペクトルを図117に示した。ローダミンとクマリンを導入したBiPh-HMM薄膜においては、460nmのクマリン152の発光と550nmのローダミンの発光との両方が観察された。そして、この薄膜に紫外光(254nm)を照射すると、薄膜が白色発光することが確認された(図118)。
【0271】
<多孔性ビフェニルシリカ複合材料の屈折率測定>
(実施例55)
エタノール2gに、イオン交換水90μl、2N塩酸水溶液10μl及びテンプレートとしてのノニオン性界面活性剤P123((EO)20(PO)70(EO)20)0.2gを添加した溶液に、BTEBPを0.3g加え、室温下で1時間攪拌してゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、ガラス基板上にコート膜(膜厚:300〜600nm)を得た。なお、コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。さらに、得られたコート膜を空気中250℃で2時間焼成することによって、多孔性のBiPh-HMM-a-film(膜厚:500nm)を得た。
【0272】
実施例55で得られたBiPh-HMM-a-filmのX線回折パターンを図119に示す。このBiPh-HMM-a-filmはd=5.6nmにピークを有しており、規則的なメソ構造が存在することが確認された。
【0273】
また、実施例55で得られたBiPh-HMM-a-filmの屈折率をエリプソメトリによって測定した結果を表10に示した。実施例55で得られた多孔性膜は屈折率が1.34であり、細孔を有さないガラス(屈折率=1.7)よりも屈折率が低かった。そのため、本発明の発光材料であって多孔質のものによれば、高い光取り出し効率の達成が可能となることが確認された。
【0274】
【表10】
【0275】
<ビフェニルシリカ複合材料の蛍光量子収率測定>
(実施例56)
粉体や薄膜では、一般に、光の散乱の問題や適当な比較試料がないため、正確な蛍光量子収率の決定ができない。そこで、溶媒に分散し且つ光の散乱が起こらないビフェニルシリカ複合材料の微粒子(直径約200nm)を合成し、標準サンプルとして量子収率が既知の9,10-ジフェニルアントラセン(量子収率:0.90)を基準にしてビフェニルシリカ複合材料の量子収率を決定した。
【0276】
すなわち、先ず、ビフェニルシリカ複合材料の微粒子は次のように合成した。6N水酸化ナトリウム水溶液0.31gとイオン交換水50mlを混合し、そこにBTEBPを1g添加した。この溶液を室温で5分間攪拌した後、超音波処理を20分間施したところ、溶液は白色のエマルジョン状になった。このエマルジョンを内部がテフロン製で外部が金属製のオートクレーブに入れ、回転式のオーブン中120℃で15時間攪拌した。得られた溶液は半透明の状態となり、これをテフロン製のろ紙(100μm径)でろ過した。水分がなくなったところで、500mlの水をろ紙の上から加えて洗浄した。この洗浄操作をもう1回繰り返した後、真空下で1昼夜乾燥処理を施し、ビフェニルシリカ複合材料の微粒子を得た。
【0277】
図120及び図121に、合成したビフェニルシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真を示した。直径が約200nmの微粒子が生成していることが確認された。また、粒子同士の凝集はほとんどなく、それぞれが孤立していることが確認された。
【0278】
図122に、得られたビフェニルシリカ微粒子のX線回折パターンを示した。幾つかのピークが観察され、この物質が分子スケールの周期構造を有していることが確認された。なお、それぞれのピークは、12.0Å(001)、5.9Å(002)、3.9Å(003)、2.9Å(004)、2.4Å(005)と帰属され、12Åの層間距離をもつ層状構造を有していることが分かる。
【0279】
図123には、得られたビフェニルシリカ微粒子の粉末状態における蛍光スペクトル(励起波長:300nm)を示した。その結果から、370nmを中心にした強い蛍光を示すことが確認された。
【0280】
次に、蛍光量子収率の測定法を説明する。なお、吸収スペクトルの測定には島津社製MPS-2400分光光度計を、蛍光スペクトルの測定には日本分光製FP6600スペクトロフルオロメータを使用した。また、吸収スペクトルの測定には四角セル(10mm)を、蛍光スペクトルの測定には三角セルを使用した。
【0281】
先ず、上記で合成したビフェニルシリカ微粒子を屈折率の近い2-プロパノール(波長が260nmの時の屈折率:約0.4)に分散し、超音波処理を施して透明な溶液を得た。濃度の異なる2種類の分散液を調製したが、ビフェニルシリカのユニット式(SiO1.5-C6H4-C6H4-SiO1.5:MW256)から計算したビフェニルシリカユニット濃度はそれぞれ6.4x10-6、4.8x10-6、3.2x10-6mol/Lとなった。
【0282】
各濃度における分散液のヘイズ値は6.4%(溶媒だけのヘイズ値は0.5%)となり、粒子による散乱の影響は無視できる程小さいことが確認された。これら2種類のビフェニルシリカ微粒子/2-プロパノール分散液の吸収スペクトルを図124に、蛍光スペクトル(励起波長:260nm)を図125にそれぞれ示した。これらの濃度範囲では、吸光度と積分蛍光強度の濃度に対する直線性が得られることから、自己消光等の濃度効果は無いと考えられる。
【0283】
一方、標準サンプルの9,10-ジフェニルアントラセン溶液は文献(J.Phys.Chem.,1983年,87巻,83ページ)に記載の条件に従い、シクロヘキサンを溶媒にして調製した。9,10-ジフェニルアントラセン/シクロヘキサン溶液の吸収スペクトルを図126に、蛍光スペクトル(励起波長:370nm)を図127にそれぞれ示した。これらの濃度範囲(0.31〜1.2x10-6mol/L)では、吸光度と積分蛍光強度の濃度に対する直線性が得られた。
【0284】
次に、ビフェニルシリカ微粒子分散液と標準サンプルの積分蛍光強度を吸光度に対してプロットした(図128)。グラフの傾き(gradxとgradst、下付きのxとstは求めたいサンプルと標準サンプルを示す)から次式により蛍光量子収率を計算した。
【0285】
Φx=φst(gradx/gradst)x(h2x/h2st)
ここで、Φは蛍光量子収率、hは溶媒の屈折率である。2-プロパノールとシクロヘキサンのhは、それぞれ1.3972(波長:260nm)、1.4405(波長:370nm)を使用した。計算の結果、ビフェニルシリカ微粒子の蛍光量子収率は0.28と求められた。
【0286】
同様の方法で、ビフェニルシリカ微粒子の原料である4,4’-ビス(トリエトキシシリル)ビフェニル[(EtO)3Si-C6H4-C6H4-Si(OEt)3]の蛍光量子収率を求めた。BTEBP/2-プロパノール溶液の吸収スペクトルを図129に、蛍光スペクトル(励起波長:255nm)を図130にそれぞれ示した。また、積分蛍光強度と吸光度の関係は図128中にプロットした。これらの傾きからBTEBPの蛍光量子収率は0.27と求められた。
【0287】
(実施例57〜58)
エタノール2gにイオン交換水90μl及び2N塩酸水溶液5μlを添加した後、界面活性剤であるBrij76(C18H37(EO)10)0.215gを添加して混合し、均一溶液とした。この溶液に、BTEBPを0.3g添加し、24時間攪拌してゾル溶液を得た。このゾル溶液をエタノールで4倍希釈した後、スピンコート法によって石英基板上にコート膜を作製し、室温で乾燥させて膜厚約100nmのBiPh-HMM-filmを得た(実施例57)。
【0288】
また、BTEBP添加前の溶液にBrij76を溶解させる際に、BTEBPに対して3mol%となる量のクマリン(アルドリッチ社製)を添加するようにした以外は実施例57と同様にして、クマリン担持BiPh-HMM-filmを得た(実施例58)。
【0289】
得られた膜の量子収率を浜松フォトニクス株式会社製の有機EL量子収率測定装置(C9920-01)を用いて測定した。なお、この装置は、量子収率が0.2と既知であるAlQ3(Jpn.J.Appl.Phys.,43,11A,(2004)7730を参照)を測定し、予め補正を行ったものである。得られた結果を表11に示した。
【0290】
実施例57で得られたBiPh-HMM-filmは、量子収率が0.56で、粉末の試料よりも高い量子収率であった。また、実施例58で得られたクマリン/BiPh-HMM-filmは、量子収率がほぼ1であり、ビフェニル骨格が吸収したエネルギーがほぼ100%クマリンに伝わり、そしてほとんど光に変換されたことが確認された。
【0291】
【表11】
【0292】
<フルオレンシリカ複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例59)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒2gに、イオン交換水43μl、2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液にトリブロックコポリマーP123を0.08g溶解させた後、下記構造を有する2,7-BTEFlu0.1gを加え、室温下で20時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚:100〜300nm)を得た。なお、コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。さらに、得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0293】
【化12】
【0294】
フルオレンシリカ複合材料の薄膜(Flu-HMM-s-film)のX線回折パターンを図131に、蛍光スペクトル及び励起スペクトルを図132に、UVスペクトルを図133にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=9.3nmにピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図131)。また、励起波長を270nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、380nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図132)。また、UVスペクトルの結果から、270nm付近、305nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図133)。
【0295】
(実施例60)
イオン交換水12gに12N塩酸水溶液を667μl加えた溶液に、1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)0.154gを溶解させ、そこに2,7-BTEFlu0.2gを加えて激しく攪拌した。超音波処理を2分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに40℃で3日間攪拌した後、ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するフルオレンシリカ複合材料を得た。
【0296】
得られたフルオレンシリカ複合材料の粉末(Flu-HMM-powder)のX線回折パターンを図134に、蛍光及び励起スペクトルを図135にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.5nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図134)。また、励起波長を320nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、385nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図135)。
【0297】
<ピレン複合材料の製造と発光特性試験>
(実施例61)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水21μl、2N塩酸水溶液5μlを添加した溶液に、ノニオン性界面活性剤としてBrij-76(C18H37(EO)10)0.07gを溶解した溶液に、下記構造を有する1,8-BTEPyr0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに溶解させた溶液を加え、室温下で15時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚100〜300nm)を得た。コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0298】
【化13】
【0299】
得られたピレンシリカ薄膜(Pyr-HMM-s-film)のX線回折パターンを図136に、蛍光及び励起スペクトルを図137に、UVスペクトルを図138にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいてd=6.5nmに強いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図136)。励起波長を350nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、450nmピークを有した強い発光を示すことが確認された(図137)。また、UVスペクトルの結果から、245nm付近、280nm付近、350nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが分かった(図138)。
【0300】
(実施例62)
イオン交換水6gに12N塩酸水溶液を333μl加えた溶液に、1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)0.08gを溶解させ、そこに1,6-BTEPyr0.1gをエタノール(EtOH)1gに溶解させた溶液を加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で20時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するピレンシリカ複合材料を得た。
【0301】
得られたピレンシリカ複合材料の粉末(Pyr-Acid-powder)のX線回折パターンを図139に、蛍光及び励起スペクトルを図140にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.4nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図139)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、465nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図140)。
【0302】
<アントラセン複合材料の製造と発光特性試験>
(実施例63)
イオン交換水6gに12N塩酸水溶液を333μl加えた溶液に、1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)0.08gを溶解させ、そこに下記構造を有する2,6-BTEAnt0.1gをエタノール1gに溶解させた溶液を加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で20時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するアントラセンシリカ複合材料を得た。
【0303】
【化14】
【0304】
得られたアントラセンシリカ複合材料の粉末(Ant-Acid-powder)のX線回折パターンを図141に、蛍光及び励起スペクトルを図142にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.3nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図141)。また、励起波長を420nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、515nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図142)。
【0305】
<アクリジン複合材料の製造と発光特性試験>
(実施例64)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒2gに、イオン交換水43μl、2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液にトリブロックコポリマーP123を0.08g溶解させた後、下記構造を有するBTEAcr0.1gを加え、室温下で20時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚100〜300nm)を得た。コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0306】
【化15】
【0307】
アクリジンシリカ複合材料の薄膜(Acr-HMM-s-film)の蛍光及び励起スペクトルを図143に示す。励起波長を370nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、560nmと600nmを中心とした長波長の発光を示すことが確認された(図143)。一方、X線回折パターンでは、メソ構造を示すピークを認識できなかった。メソ構造の規則性はあまり高くなかったために、ダイレクトビームに隠れてしまったと考える。
【0308】
(実施例65)
イオン交換水12gに6規定NaOH水溶液を0.2g加えた溶液に、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.16gを溶解させ、そこに2,7-BTEAcr0.2gを加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で20時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するアクリジンシリカ複合材料を得た。
【0309】
得られたアクリジンシリカ複合材料の粉末(Acr-HMM-powder)のX線回折パターンを図144に、蛍光及び励起スペクトルを図145にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.5nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図144)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、520nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図145)。
【0310】
<4,4'''-クァテルフェニル複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例66)
イオン交換水6gに12N塩酸水溶液を333μl加えた溶液に、1,12-ビス(オクタデシルジメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド(C18-12-18)0.08gを溶解させ、そこに4,4'''-ビストリエトキシシリルクァテルフェニル(4,4'''-BTEQua)0.1gをエタノール1gとTHF0.5gの混合溶媒に溶解させた溶液を加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で20時間加熱した。ろ過、乾燥させて、クァテルフェニルシリカ複合材料を得た。
【0311】
得られたクァテルフェニルシリカ複合材料の粉末(Qua-HMM-powder)のX線回折パターンを図146に蛍光及び励起スペクトルを図147にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、メソ構造を示すピークは見られなかったが、d=1.99nmにクァテルフェニルの周期構造に起因したピークが観察された(図146)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、465nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図147)。
【0312】
<ナフタレン複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例67)
エタノール2gに、イオン交換水90μl、2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液にオクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.087gを溶解させた後、ビストリエトキシシリルナフタレン(BTENph)0.28gを加え、室温下で1時間以上攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚100〜300nm)を得た。コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0313】
ナフタレンシリカ複合材料の薄膜(Nph-HMM-s-film)のX線回折パターンを図148に、蛍光及び励起スペクトルを図149にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=3.4nmにピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図148)。また、励起波長を280nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、395nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図149)。
【0314】
(実施例68)
イオン交換水12gに6規定NaOH水溶液を0.2g加えた溶液に、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.16gを溶解させ、そこにBTENph0.2gを加えて激しく攪拌した。超音波処理を10分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で24時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するナフタレンシリカ複合材料を得た。
【0315】
得られたナフタレンシリカ複合材料の粉末(Nph-HMM-powder)のX線回折パターンを図150に、蛍光及び励起スペクトルを図151にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、2θ=1°付近にメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図150)。また、2θ=9°付近に骨格のナフタレンの周期構造に起因したピークが確認された。さらに、励起波長を340nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、360nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図151)。
【0316】
<アクリドン複合材料の合成と発光特性試験>
(実施例69)
エタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1gに、イオン交換水43μl、2N塩酸水溶液10μlを添加した溶液にトリブロックコポリマーP123を0.08g溶解させた後、下記構造を有するBTEAcd0.1gをエタノール/THF(重量比1:1)混合溶媒1.5g加え、室温下で1時間攪拌し、ゾル溶液を得た。このゾル溶液を用い、スピンコート法によって、コート膜(膜厚100〜300nm)を得た。コート条件は、回転数を4000rpmとし、回転時間を1分間とした。得られた膜は100℃で1時間以上乾燥させた。
【0317】
【化16】
【0318】
アクリドンシリカ複合材料の薄膜(Acd-HMM-s-film)のX線回折パターンを図152に、蛍光及び励起スペクトルを図153に、そしてUVスペクトル図154にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=9.6nmに鋭いピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図152)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、500nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図153)。また、UVスペクトルの結果から、255nm付近、400nm付近を中心とした光の吸収帯を有することが確認された(図154)。
【0319】
(実施例70)
イオン交換水12gに6規定NaOH水溶液を0.2g加えた溶液に、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド0.16gを溶解させ、そこにBTEAcd0.2gをエタノール1gに溶解させた溶液を加えて激しく攪拌した。超音波処理を15分間行った後、室温で24時間攪拌した。そして、さらに100℃で24時間加熱した。ろ過、乾燥させて、メソ構造を有するアクリジンシリカ複合材料を得た。
【0320】
得られたアクリドンシリカ複合材料の粉末(Acd-HMM-powder)のX線回折パターンを図155に、蛍光及び励起スペクトルを図156にそれぞれ示す。X線回折パターンにおいて、d=4.6nmにメソ構造に起因したピークが観察され、規則的なメソ構造が存在することが確認された(図155)。また、励起波長を400nmとして蛍光スペクトルを測定した場合、494nmを中心とした強い発光を示すことが確認された(図156)。
【0321】
<色素レーザーの作製>
(実施例71)
先ず、断面形状が鋸歯状の回折格子(ブレーズド回折格子)(島津製作所社製)と反射率約90%の凹面鏡(シグマ光機社製)とを対向させて、30cm離して配置して共振器とした。なお、回折格子は一次回折光が入射方向に戻る配置(リトロー配置)に設置し、ブレーズ波長は600nmのものを用いた。
【0322】
次に、ローダミンB(アルドリッチ社製)26mgを、イオン交換水360μl、エタノール4g及び2N塩酸水溶液0.01gを含有する溶液に添加し、攪拌して均一な溶液とした。その後、それらの溶液にBTEBPを0.6g添加し、更に1時間攪拌して透明な均一ゾル溶液を得た。そして、得られたゾル溶液からキャスト法(熱処理条件:室温にて24時間乾燥後、100℃にて24時間)により、ローダミンBを配合した有機シリカハイブリッド蛍光体の板状物(20mm×20mm×0.5mm)を作製した。
【0323】
次いで、得られた板状物を共振器内部に配置し、さらに回折格子の回折効率を高めるためにビーム拡大器(シグマ光機社製)を回折格子の前に設置した。そして、励起用光源として中心波長193nmのKrFレーザー(ラムダフィジックス社製)を設置して色素レーザーを得た。
【0324】
得られた色素レーザーは、KrFレーザーを照射することによりレーザー発振し、レーザーとして十分な発光量が得られることが確認された。また、回折格子を回転することにより,発振波長が580nmから620nmの範囲で変化することを確認することができた。
【0325】
<光増幅器の作製>
(実施例72)
先ず、実施例71と同様にして得られたゾル溶液から引き上げ法(熱処理条件:室温にて24時間乾燥後、100℃にて24時間)により、ローダミンBを配合した有機シリカハイブリッド蛍光体のファイバー(長さ10mm、直径100μm)を作製した。
【0326】
次に、得られたファイバーの両端にコネクタを付け、さらに光ファイバーを取り付けた。そして、増幅用光源としてInGAlNを活性層とする紫外発光ダイオード(中心波長300nm)と光をスリット状にするためのシリンドリカルレンズとを配置して光増幅器を得た。
【0327】
得られた光増幅器の入射側光ファイバーから波長600nmの弱い光を通してファイバー状の蛍光体を通過させた後、出射側光ファイバーの端面に光検出器を置いて、出射光の強度を測定したところ、入射光の強度が500%増加していることが確認された。
【0328】
(実施例73)
先ず、実施例71と同様にして得られたゾル溶液からキャスト法(熱処理条件:室温にて24時間乾燥後、100℃にて24時間)により、2cm×5cmの基板(ガラス)上にローダミンBを配合した有機シリカハイブリッド蛍光体の矩形導波路(100μm×100μm、長さ10mm)を作製した。
【0329】
次に、得られた矩形導波路の両端に光ファイバーを固定した。そして、増幅用光源としてInGAlNを活性層とする紫外発光ダイオード(中心波長300nm)と光をスリット状にするためのシリンドリカルレンズとを配置して光増幅器を得た。
【0330】
得られた光増幅器の入射側光ファイバーから波長600nmの弱い光を通して蛍光体の矩形導波路を通過させた後、出射側光ファイバーの端面に光検出器を置いて、出射光の強度を測定したところ、入射光の強度が500%増加していることが確認された。
【0331】
(実施例74)
先ず、実施例71と同様にして得られたゾル溶液からキャスト法(熱処理条件:室温にて24時間乾燥後、100℃にて24時間)により、2cm×5cmの基板(ガラス)上にローダミンBを配合した有機シリカハイブリッド蛍光体のスラブ導波路(厚さ20μm、長さ10mm)を作製した。
【0332】
次に、得られたスラブ導波路の両端に信号光をスリット状にするためのシリンドリカルレンズを設置して、さらに光ファイバーを固定した。そして、増幅用光源としてInGAlNを活性層とする紫外発光ダイオード(中心波長300nm)と光をスリット状にするためのシリンドリカルレンズとを配置して光増幅器を得た。
【0333】
得られた光増幅器の入射側光ファイバーから波長600nmの弱い光を通して蛍光体のスラブ導波路を通過させた後、出射側光ファイバーの端面に光検出器を置いて、出射光の強度を測定したところ、入射光の強度が500%増加していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0334】
以上説明したように、本発明によれば、レーザー発光量が十分に高く且つ十分に長寿命の色素レーザー、並びに、色素素子の耐熱性に優れる光増幅器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0335】
【図1】本発明の色素レーザーの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の光増幅器の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】実施例1で得られたPh-HMM-cと実施例2で得られたPh-SiのX線回折パターンを示すグラフである。
【図4】実施例1〜3で得られた試料のN2吸着等温線を示すグラフである。
【図5】実施例3で得られたPh-HMM-aのX線回折パターンを示すグラフである。
【図6】実施例2で得られたPh-SiのSEM写真である。
【図7】実施例1〜3で得られた各試料の可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例1〜3で得られた各試料の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図9】実施例4で得られたBiPh-HMM-cのX線回折パターンを示すグラフである。
【図10】実施例5で得られたBiPh-HMM-c-sのX線回折パターンを示すグラフである。
【図11】実施例4で得られたBiPh-HMM-cのN2吸着等温線を示すグラフである。
【図12】実施例6で得られたBiPh-Si-BaseのX線回折パターンを示すグラフである。
【図13】実施例7で得られたBiPh-Si-AcidのX線回折パターンを示すグラフである。
【図14】実施例6で得られたBiPh-Si-BaseのSEM写真である。
【図15】実施例8で得られたBiPh-HMM-aのX線回折パターンを示すグラフである。
【図16】実施例9で得られたBiPh-HMM-a-sのX線回折パターンを示すグラフである。
【図17】実施例8で得られたBiPh-HMM-aの窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図18】実施例8で得られたBiPh-HMM-aの可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図19】実施例4で得られたBiPh-HMM-cの可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図20】実施例4〜9で得られた各試料の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図21】実施例10で得られたBiPh-HMMc-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図22】実施例10で得られたBiPh-HMMc-s-filmの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図23】実施例10で得られたBiPh-HMMc-s-filmの薄膜の発光状態を示す写真である。
【図24】実施例11〜13で得られた試料1〜3の薄膜の発光状態を示す写真である。
【図25】実施例11〜13で得られた試料1〜3のそれぞれの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図26】実施例5で得られた発光材料の粉末と比較例1〜3の発光材料の粉末の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図27】実施例10で得られた発光材料の薄膜と比較例1〜3の発光材料の薄膜の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図28】BTEB溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図29】BTEBP溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図30】ベンゼン溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図31】ビフェニレン溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図32】最大蛍光強度と濃度との関係を示すグラフである。
【図33】最大発光波長(λmax)を濃度に対してプロットした結果を示すグラフである。
【図34】実施例5及び9で得られた発光材料及びBTEBPの溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図35】実施例5及び9で得られた発光材料及びBTEBP溶液の蛍光強度の濃度変化を示すグラフである。
【図36】実施例14で得られた層状フェニルシリカ複合材料の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図37】実施例14で得られた層状フェニルシリカ複合材料の29Si MAS NMRスペクトルを示すグラフである。
【図38】実施例14で得られた層状フェニルシリカ複合材料の構造を示す模式図である。
【図39】実施例14で得られた層状フェニルシリカ複合材料の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図40】実施例15で得られた層状ビフェニルシリカ複合材料の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図41】実施例15で得られた層状ビフェニルシリカ複合材料にトルエンを垂らした状態の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図42】実施例15で得られた層状ビフェニルシリカ複合材料の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図43】実施例16〜18で得られた各試料及び実施例1で得られたPh-HMM-cのX線回折パターンを示す
【図44】実施例1で得られたPh-HMM-cのN2吸着等温線を示すグラフである。
【図45】実施例16で得られた試料のN2吸着等温線を示すグラフである。
【図46】実施例17で得られた試料のN2吸着等温線を示すグラフである。
【図47】実施例18で得られた試料のN2吸着等温線を示すグラフである。
【図48】実施例18で得られた試料の13C-CP-NMRの結果を示すグラフである。
【図49】実施例18で得られた試料の29Si-MAS-NMRの結果を示すグラフである。
【図50】実施例1で得られたPh-HMM-cの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図51】実施例16で得られた試料の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図52】実施例17で得られた試料の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図53】実施例18で得られた試料の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図54】BTEAの検量線を示すグラフである。
【図55】BTEAのモノマーでの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図56】励起波長260nmにおけるPh-HMM及びBTEAの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図57】実施例16〜18で得られた各試料に対して励起波長260nmで蛍光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
【図58】Ph-HMM-c、BiPh-HMM-c、Al-TPPEt/Ph-HMM及びAl-TPPEt/BiPh-HMMのX線回折パターンを示すグラフである。
【図59】Al-TPPEt/Ph-HMMのUV-visスペクトルを示すグラフである。
【図60】Al-TPPEt/BiPh-HMMのUV-visスペクトルを示すグラフである。
【図61】Al-TPPEt/Ph-HMMの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図62】Al-TPPEt/BiPh-HMMの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図63】Al-TPPEt粉末の発光状態を示す写真である。
【図64】Al-TPPEt/Ph-HMM粉末の発光状態を示す写真である。
【図65】Ph-HMM-c粉末の発光状態を示す写真である。
【図66】BiPh-HMM-c粉末の発光状態を示す写真である。
【図67】Al-TPPEt/BiPh-HMM粉末の発光状態を示す写真である。
【図68】実施例22で得られたBiPh-HMMc-s-film2のX線回折パターンを示すグラフである。
【図69】実施例22で得られたBiPh-HMMc-s-film2の蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図70】実施例23で得られたPh-HMM膜の焼成前後のX線回折パターンを示すグラフである。
【図71】実施例24で得られたBiPh-HMM膜の焼成前後のX線回折パターンを示すグラフである。
【図72】実施例23で得られたPh-HMM膜の焼成前後の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図73】実施例24で得られたBiPh-HMM膜の焼成前後の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図74】実施例25で得られたBiPh-Acid-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図75】実施例25で得られたBiPh-Acid-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図76】実施例26で得られたTPh-HMMc-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図77】実施例26で得られたTPh-HMMc-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図78】実施例27で得られたTPh-Acid-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図79】実施例28で得られたPyr-HMMc-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図80】実施例28で得られたPyr-HMMc-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図81】実施例29で得られたPyr-Acid-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図82】実施例29で得られたPyr-Acid-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図83】実施例30で得られたAnt-HMMc-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図84】実施例30で得られたAnt-HMMc-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図85】実施例30で得られたAnt-HMMc-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図86】実施例31で得られたオクタフルオロビフェニルシリカの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図87】実施例32で得られたTph-HMM-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図88】実施例33で得られたPyr-HMM-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図89】実施例34で得られたAnt-HMM-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図90】実施例35で得られたTph-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図91】実施例36で得られたPyr-Acidの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図92】実施例37で得られた試料1(BiPh-HMM粉末)のX線回折パターンを示すグラフである。
【図93】実施例37で得られた試料2(F1(0.5mg)/BiPh-HMM粉末)のX線回折パターンを示すグラフである。
【図94】実施例37で得られた試料5(F1(5mg)/BiPh-HMM粉末)のX線回折パターンを示すグラフである。
【図95】実施例37で得られた試料1〜5の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図96】実施例37で得られた試料(F1/BiPh-HMM粉末)の構造模式図である。
【図97】実施例38で得られた試料2(F1(2mol%)/BiPh-HMM薄膜)のX線回折パターンを示すグラフである。
【図98】実施例38で得られた試料1〜3の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図99】実施例38で得られた試料2の蛍光スペクトルの励起波長依存性を示すグラフである。
【図100】実施例39で得られた各試料(ローダミン/BiPh-HMM薄膜)の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図101】実施例40で得られた各試料(ピレン/BiPh-HMM薄膜)の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図102】EuCl3及びTbCl3のエタノール溶液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図103】実施例41で得られたEuCl3/BiPh-HMM-filmの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図104】実施例42で得られたTbCl3/BiPh-HMM-filmの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図105】BiPh-HMM-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図106】実施例43で得られたクマリン(3mol%)/BiPh-HMM-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図107】種々の量のクマリンを導入したクマリン/BiPh-HMM-filmの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図108】BiPh-HMM-film、クマリンのエタノール溶液及びクマリン/BiPh-HMM-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図109】種々の量のクマリンを導入したクマリン/BiPh複合膜の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図110】Ir(ppy)3/BiPh-HMM薄膜、Ir(ppy)3/PMMA薄膜及びPMMA薄膜の励起スペクトルを示すグラフである。
【図111】実施例45で得られた各Ir(ppy)3/BiPh-HMM薄膜の燐光スペクトルを示すグラフである。
【図112】実施例46〜48で得られたR6GとBiPh-HMMとの混合物の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図113】実施例49で得られたDANSとBiPh-HMMとの混合物の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図114】実施例51〜53で得られたクマリンとBiPh-HMMとの混合物及び実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図115】実施例51〜53で得られたクマリンとBiPh-HMMとの混合物及び実施例50で得られたBiPh-HMM-c2-sの蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図116】実施例54で得られたローダミンとクマリンを導入したBiPh-HMM薄膜の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図117】実施例54で得られたローダミンとクマリンを導入したBiPh-HMM薄膜が白色発光している状態を示す写真である。
【図118】実施例55で得られたBiPh-HMM-a-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図119】実施例56で合成したビフェニルシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図120】実施例56で合成したビフェニルシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図121】実施例56で合成したビフェニルシリカ微粒子のX線回折パターンを示すグラフである。
【図122】実施例56で合成したビフェニルシリカ微粒子の粉末状態における蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図123】ビフェニルシリカ微粒子/2-プロパノール分散液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図124】ビフェニルシリカ微粒子/2-プロパノール分散液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図125】9,10-ジフェニルアントラセン/シクロヘキサン溶液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図126】9,10-ジフェニルアントラセン/シクロヘキサン溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図127】積分蛍光強度を吸光度との関係を示すグラフである。
【図128】BTEBP/2-プロパノール溶液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図129】BTEBP/2-プロパノール溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図130】実施例28で得られたPyr-HMMc-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図131】実施例59で得られたFlu-HMM-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図132】実施例59で得られたFlu-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図133】実施例59で得られたFlu-HMM-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図134】実施例60で得られたFlu-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図135】実施例60で得られたFlu-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図136】実施例61で得られたPyr-HMM-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図137】実施例61で得られたPyr-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図138】実施例61で得られたPyr-HMM-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図139】実施例62で得られたPyr-Acid-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図140】実施例62で得られたPyr-Acid-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図141】実施例63で得られたAnt-Acid-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図142】実施例63で得られたAnt-Acid-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図143】実施例64で得られたAcr-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図144】実施例65で得られたAcr-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図145】実施例65で得られたAcr-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図146】実施例66で得られたQua-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図147】実施例66で得られたQua-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図148】実施例67で得られたNph-HMM-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図149】実施例67で得られたNph-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図150】実施例68で得られたNph-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図151】実施例68で得られたNph-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図152】実施例69で得られたAcd-HMM-s-filmのX線回折パターンを示すグラフである。
【図153】実施例69で得られたAcd-HMM-s-filmの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【図154】実施例69で得られたAcd-HMM-s-filmのUVスペクトルを示すグラフである。
【図155】実施例70で得られたAcd-HMM-powderのX線回折パターンを示すグラフである。
【図156】実施例70で得られたAcd-HMM-powderの蛍光及び励起スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0336】
1…励起用光源、2…反射鏡、3…色素レーザー素子、4…凹面鏡、5…回折格子、6…ビーム拡大器、11…増幅用光源、12…レンズ、13…色素素子、14…光ファイバー、15…コネクタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素レーザー素子と、励起用光源と、共振機とを備えることを特徴とする色素レーザー。
【請求項2】
前記R1が低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基、前記nが3であることを特徴とする請求項1に記載の色素レーザー。
【請求項3】
前記R1が低級アルコキシ基、前記nが3、前記mが2であり、前記有機ケイ素化合物の重合体が下記一般式(2):
【化2】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の色素レーザー。
【請求項4】
前記蛍光又は燐光を示す有機分子が、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項5】
前記有機ケイ素化合物の重合体が、前記蛍光又は燐光を示す有機分子の規則的な配列に起因する5nm以下の周期構造を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物の重合体が多孔体であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項7】
前記有機ケイ素化合物の重合体が、中心細孔直径が1〜30nmのメソ多孔体であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項8】
前記発光材料が、他の発光性化合物を更に備えることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項9】
前記発光材料が、界面活性剤を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項10】
前記他の発光性化合物が、前記有機ケイ素化合物の重合体に対して吸着、結合、充填及び混合からなる群から選択されるいずれかの状態となっていることを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項11】
下記一般式(1):
【化3】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素素子と、増幅用光源とを備えることを特徴とする光増幅器。
【請求項12】
前記R1が低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基、前記nが3であることを特徴とする請求項11に記載の光増幅器。
【請求項13】
前記R1が低級アルコキシ基、前記nが3、前記mが2であり、前記有機ケイ素化合物の重合体が下記一般式(2):
【化4】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする請求項11又は12に記載の光増幅器。
【請求項14】
前記蛍光又は燐光を示す有機分子が、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものであることを特徴とする請求項11〜13のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項15】
前記有機ケイ素化合物の重合体が、前記蛍光又は燐光を示す有機分子の規則的な配列に起因する5nm以下の周期構造を有するものであることを特徴とする請求項11〜14のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項16】
前記有機ケイ素化合物の重合体が多孔体であることを特徴とする請求項11〜15のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項17】
前記有機ケイ素化合物の重合体が、中心細孔直径が1〜30nmのメソ多孔体であることを特徴とする請求項11〜16のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項18】
前記発光材料が、他の発光性化合物を更に備えることを特徴とする請求項11〜17のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項19】
前記発光材料が、界面活性剤を更に備えることを特徴とする請求項11〜18のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項20】
前記他の発光性化合物が、前記有機ケイ素化合物の重合体に対して吸着、結合、充填及び混合からなる群から選択されるいずれかの状態となっていることを特徴とする請求項11〜19のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素レーザー素子と、励起用光源と、共振機とを備えることを特徴とする色素レーザー。
【請求項2】
前記R1が低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基、前記nが3であることを特徴とする請求項1に記載の色素レーザー。
【請求項3】
前記R1が低級アルコキシ基、前記nが3、前記mが2であり、前記有機ケイ素化合物の重合体が下記一般式(2):
【化2】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の色素レーザー。
【請求項4】
前記蛍光又は燐光を示す有機分子が、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項5】
前記有機ケイ素化合物の重合体が、前記蛍光又は燐光を示す有機分子の規則的な配列に起因する5nm以下の周期構造を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物の重合体が多孔体であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項7】
前記有機ケイ素化合物の重合体が、中心細孔直径が1〜30nmのメソ多孔体であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項8】
前記発光材料が、他の発光性化合物を更に備えることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項9】
前記発光材料が、界面活性剤を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項10】
前記他の発光性化合物が、前記有機ケイ素化合物の重合体に対して吸着、結合、充填及び混合からなる群から選択されるいずれかの状態となっていることを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の色素レーザー。
【請求項11】
下記一般式(1):
【化3】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示し、R1は低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリル基、エステル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、R2は低級アルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一つを示し、nは1〜3の整数を示し、mは1〜4の整数を示す。]
で表される有機ケイ素化合物の重合体からなる発光材料を含有する色素素子と、増幅用光源とを備えることを特徴とする光増幅器。
【請求項12】
前記R1が低級アルコキシ基及び/又はヒドロキシル基、前記nが3であることを特徴とする請求項11に記載の光増幅器。
【請求項13】
前記R1が低級アルコキシ基、前記nが3、前記mが2であり、前記有機ケイ素化合物の重合体が下記一般式(2):
【化4】
[式中、Xは蛍光又は燐光を示す有機分子を示す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする請求項11又は12に記載の光増幅器。
【請求項14】
前記蛍光又は燐光を示す有機分子が、一重項励起状態又は三重項励起状態と基底状態とのエネルギーの差が40〜140kcal/molのものであることを特徴とする請求項11〜13のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項15】
前記有機ケイ素化合物の重合体が、前記蛍光又は燐光を示す有機分子の規則的な配列に起因する5nm以下の周期構造を有するものであることを特徴とする請求項11〜14のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項16】
前記有機ケイ素化合物の重合体が多孔体であることを特徴とする請求項11〜15のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項17】
前記有機ケイ素化合物の重合体が、中心細孔直径が1〜30nmのメソ多孔体であることを特徴とする請求項11〜16のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項18】
前記発光材料が、他の発光性化合物を更に備えることを特徴とする請求項11〜17のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項19】
前記発光材料が、界面活性剤を更に備えることを特徴とする請求項11〜18のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【請求項20】
前記他の発光性化合物が、前記有機ケイ素化合物の重合体に対して吸着、結合、充填及び混合からなる群から選択されるいずれかの状態となっていることを特徴とする請求項11〜19のうちのいずれか一項に記載の光増幅器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【図87】
【図88】
【図89】
【図90】
【図91】
【図92】
【図93】
【図94】
【図95】
【図96】
【図97】
【図98】
【図99】
【図100】
【図101】
【図102】
【図103】
【図104】
【図105】
【図106】
【図107】
【図108】
【図109】
【図110】
【図111】
【図112】
【図113】
【図114】
【図115】
【図116】
【図117】
【図119】
【図122】
【図123】
【図124】
【図125】
【図126】
【図127】
【図128】
【図129】
【図130】
【図131】
【図132】
【図133】
【図134】
【図135】
【図136】
【図137】
【図138】
【図139】
【図140】
【図141】
【図142】
【図143】
【図144】
【図145】
【図146】
【図147】
【図148】
【図149】
【図150】
【図151】
【図152】
【図153】
【図154】
【図155】
【図156】
【図6】
【図14】
【図23】
【図24】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図118】
【図120】
【図121】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【図87】
【図88】
【図89】
【図90】
【図91】
【図92】
【図93】
【図94】
【図95】
【図96】
【図97】
【図98】
【図99】
【図100】
【図101】
【図102】
【図103】
【図104】
【図105】
【図106】
【図107】
【図108】
【図109】
【図110】
【図111】
【図112】
【図113】
【図114】
【図115】
【図116】
【図117】
【図119】
【図122】
【図123】
【図124】
【図125】
【図126】
【図127】
【図128】
【図129】
【図130】
【図131】
【図132】
【図133】
【図134】
【図135】
【図136】
【図137】
【図138】
【図139】
【図140】
【図141】
【図142】
【図143】
【図144】
【図145】
【図146】
【図147】
【図148】
【図149】
【図150】
【図151】
【図152】
【図153】
【図154】
【図155】
【図156】
【図6】
【図14】
【図23】
【図24】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図118】
【図120】
【図121】
【公開番号】特開2007−88184(P2007−88184A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274688(P2005−274688)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]