説明

芳香族アミドブロック共重合体よりなるホットメルト接着剤

【課題】 新規な芳香族アミドブロック共重合体よりなる、柔軟で高い軟化温度を有し、さらには優れた耐寒性、接着性を有するホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位からなり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10000〜1000000である芳香族アミドブロック共重合体よりなることを特徴とするホットメルト接着剤。
【化1】


(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な芳香族アミドブロック共重合体よりなる、柔軟で高い軟化温度を有し、さらには優れた耐寒性、接着性を有するホットメルト接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、溶媒を用いること無く、短時間で接着が終了するため、無公害かつ優れた作業性を有しており、急速にその需要が増大している。ホットメルト接着剤として要求される性能としては、加熱により容易に溶融し、被着体に対して優れた濡れ性を有すること、加熱接着時に酸化劣化などを起こさないこと、高い接着性を有すること、耐熱性、耐加水分解性、耐寒性などに優れることなどが要求される。
【0003】
ポリエステル系ホットメルト接着剤は、優れた接着性、耐熱性、耐候性、耐溶剤性を有していることから、これらの特徴を活かす分野で広く利用されている。そして近年では、従来のポリエステル系ホットメルト接着剤で問題となっていた耐加水分解性及び樹脂成型巻き取り時の耐ブロッキング性が、改良されたポリエステル系ホットメルト接着剤が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
さらに、芳香族エステルアミド化合物とポリアルキレングリコール等のグリコールとの溶融重縮合による熱可塑性エラストマーからなるホットメルト接着剤が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開2003−105302号公報
【特許文献2】特開平10−008019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に提案のポリエステル系ホットメルト接着剤の耐熱性は、まだ満足されるものではなく、環境温度に対する性能の変化が大きい。例えば、得られたホットメルト接着剤は環境温度により接着強度が大きく変わってしまうと言う問題を有していた。
【0005】
さらに、特許文献2に提案のホットメルト接着剤は、耐熱性、耐熱老化性、耐加水分解性に優れるが、接着強度は十分なものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ハードセグメントに特定の芳香族アミド単位を用いた芳香族アミドブロック共重合体よりなるホットメルト接着剤が柔軟で高い軟化温度を有し、さらには耐寒性、接着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位からなり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10000〜1000000である芳香族アミドブロック共重合体よりなることを特徴とするホットメルト接着剤に関するものである。
【0008】
【化1】

(1)
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のホットメルト接着剤は、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位からなる芳香族アミドブロック共重合体よりなるホットメルト接着剤である。
【0010】
ここで、本発明のホットメルト接着剤に用いる芳香族アミドブロック共重合体を構成する一般式(1)で示される芳香族アミド単位中のRおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基であり、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また直鎖状又は分岐状であってもよい。
【0011】
該オキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシペンタメチレン基、オキシヘキサメチレン基等の無置換オキシアルキレン基またはこれらにメチル基、エチル基等のアルキル置換基もしくはフェニル基等のアリール置換基が1個以上結合したものが挙げられる。さらには、上記の無置換オキシアルキレン基単位やアルキルまたはアリール置換オキシアルキレン基単位が任意に2個以上結合したものであっても良く、これらの1種または2種以上が使用される。中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。なお、これらオキシアルキレン基中の酸素は、一般式(1)において直接ベンゼン環に結合することが好ましい。
【0012】
該アルキレンカルバモイル基としては、例えばメチレンカルバモイル基、エチレンカルバモイル基、トリメチレンカルバモイル基、テトラメチレンカルバモイル基、ペンタメチレンカルバモイル基、2,2−ジメチルトリメチレンカルバモイル基、ネオペンチルカルバモイル基、ヘキサメチレンカルバモイル基、3−メチルペンタメチレンカルバモイル基、2−メチルヘプタメチレンカルバモイル基、ヘプタメチレンカルバモイル基、オクタメチレンカルバモイル基、ノナメチレンカルバモイル基、デカメチレンカルバモイル基、1,4−シクロヘキシレンカルバモイル基等を挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。中でもエチレンカルバモイル基が好ましい。
【0013】
該アリーレンカルバモイル基としては、例えば2−ベンジルカルバモイル基、3−ベンジルカルバモイル基、4−ベンジルカルバモイル基、1,2−フェニレンカルバモイル基、1,3−フェニレンカルバモイル基、1,4−フェニレンカルバモイル基等を挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0014】
本発明のホットメルト接着剤に用いる芳香族アミドブロック共重合体を構成するポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれた単位とは、公知のものであれば特に制限はない。
【0015】
該ポリエステルは、例えばジカルボン酸あるいはジカルボン酸無水物と短鎖ポリオールを縮合重合することによって得ることができる。該ジカルボン酸あるいはジカルボン酸無水物成分としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。一方、該短鎖ポリオール成分としては、例えば脂肪族、脂環式、芳香族、置換脂肪族または複素環式のジヒドロキシ化合物;トリヒドロキシ化合物;テトラヒドロキシ化合物等を挙げることができ、具体的な短鎖ポリオール成分としては、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカメチレンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシレンジオール、ジヒドロキシエチルテトラヒドロフタレート、トリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0016】
該ポリエステルを得る別の方法として、例えばβ−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物の1種または2種以上をヒドロキシ化合物と共に反応せしめる方法によることも可能である。
【0017】
該脂肪族ポリ(オキシアルキレン)としては、例えばポリ(オキシエチレン)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)、ポリ(オキシヘキサメチレン)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)のエチレンオキシド付加重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0018】
該ポリカーボネートとしては、例えばヒドロキシ化合物の1種または2種以上と、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート化合物とのエステル交換法によって得られたものが挙げられ、具体的なカーボネート化合物としては、例えばポリ(1,6−ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(2,2’−ビス(4−ヒドロキシヘキシル)プロピレンカーボネート)等が挙げられる。また、ポリカーボネートを得る他の方法としては、いわゆるホスゲン法によっても得ることもできる。
【0019】
該ポリジエンとしては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0020】
該ポリオレフィンとしては、例えばポリジエンを水素添加したポリオレフィン;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類の単独重合体;ランダム共重合体;交互共重合体;ブロック共重合体等が挙げられる。
【0021】
該ポリオルガノシロキサンとしては、例えばポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)等が挙げられる。
【0022】
その中でも耐熱性に優れたホットメルト接着剤が得られることから、芳香族アミドブロック共重合体が、一般式(1)で示される芳香族アミド単位とポリエステルからなることが好ましく、特に一般式(1)で示される芳香族アミド単位とポリ(ε−カプロラクトン)からなることが好ましい。
【0023】
本発明のホットメルト接着剤で用いられる芳香族アミドブロック共重合体は、一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位が直接結合していても、他の化合物残基を含有していても良い。他の化合物残基としては、例えば二官能性ハライド化合物、二官能性イソシアネート化合物、二官能性カーボネート化合物、二官能性エステル化合物、二官能性アシルラクタム化合物、二官能性エポキシ化合物、二官能性テトラカルボン酸無水物等から誘導される化合物残基が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有していても良い。
【0024】
二官能性ハライド化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、シュウ酸ジクロライド、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ピメリン酸ジクロライド、スベリン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、ドデカン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、フタル酸ジクロライド等の二官能性酸クロライドから誘導される化合物残基;シュウ酸ジブロマイド、マロン酸ジブロマイド、コハク酸ジブロマイド、グルタル酸ジブロマイド、アジピン酸ジブロマイド、ピメリン酸ジブロマイド、スベリン酸ジブロマイド、アゼライン酸ジブロマイド、セバシン酸ジブロマイド、ドデカン酸ジブロマイド、テレフタル酸ジブロマイド、イソフタル酸ジブロマイド、フタル酸ジブロマイド等の二官能性酸ブロマイドから誘導される化合物残基等を挙げることができる。
【0025】
二官能性イソシアネート化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等から誘導される化合物残基が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。その中でも、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等から誘導される化合物残基が好ましく用いられる。
【0026】
二官能性カーボネート化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも特に反応性に優れ、効率よく本発明のホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から誘導される化合物残基が好ましい。
【0027】
二官能性エステル化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル、フタル酸ジフェニル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジエチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジエチル等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも特に反応性に優れ、効率よく本発明のホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、テレフタル酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジメチル等から誘導される化合物残基が好ましい。
【0028】
二官能性アシルラクタム化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)、イソフタロイルビス(ε−カプロラクタム)、アジポイルビス(ε−カプロラクタム)、スクシニルビス(ε−カプロラクタム)等から誘導される化合物残基が挙げられる。中でも特に反応性に優れ、効率よく本発明のホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)から誘導される化合物残基が好ましい。
【0029】
二官能性エポキシ化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等の芳香族ジカルボン酸ジグリシジルエステルから誘導される化合物残基;p−フェニレンジグリシジルエーテル等の芳香族ジグリシジルエーテルから誘導される化合物残基;ジエチレングリコールジグリシジルエステル等の脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエステルから誘導される化合物残基;ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエーテルから誘導される化合物残基等が挙げられる。
【0030】
二官能性芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される化合物残基としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等から誘導される化合物残基が挙げられる。
【0031】
本発明のホットメルト接着剤が柔軟で接着性に優れることから、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位の数平均分子量は200〜10000の範囲であることが好ましく、特に300〜5000の範囲であることが好ましい。
【0032】
また、本発明のホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体における芳香族アミド単位の含有量は特に制限はなく、柔軟性、耐熱性、耐寒性に優れたホットメルト接着剤が得られることから、芳香族アミド単位の含有量は5〜95重量%の範囲であることが好ましく、特に5〜50重量%の範囲であることが好ましく、さらに15〜45重量%であることが好ましい。
【0033】
本発明のホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)で測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10000〜1000000であることが好ましく、特に30000〜500000であることが好ましい。ここで、数平均分子量が10000未満である場合、得られるホットメルト接着剤が機械特性に劣ることがあり、一方、数平均分子量が1000000を越える場合、芳香族アミドブロック共重合体の溶融粘度が高くなり、溶融流動性に劣るものとなり、ホットメルト接着剤の被着体への塗布が困難となることがある。また、該芳香族アミドブロック共重合体は、タイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:1997年)が60〜99であることが好ましく、特に65〜98であることが好ましい。
【0034】
本発明のホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体の製造方法としては、一般式(1)で示されるアミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体を製造することが可能な限りにおいていかなる方法を用いてもよく、例えば一般式(1)で示されるアミド単位からなる化合物と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位とを、直接反応させる方法;一般式(1)で示されるアミド単位からなる化合物と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位とを反応させる際に、二官能性ハライド化合物、二官能性イソシアネート化合物、二官能性カーボネート化合物、二官能性エステル化合物、二官能性アシルラクタム化合物、二官能性エポキシ化合物、二官能性テトラカルボン酸無水物等よりなる群から選ばれる1種以上の単位存在下に反応させる方法;等が挙げられる。その際の重合方法としては、例えば溶液重合法、溶融重合法、界面重合法、固相重合法等が挙げられ、これらを組み合わせて製造してもよい。その中でも容易に分子量を増大させた芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、溶液重合法を行った後に溶融縮合を行うことが好ましい。
【0035】
本発明のホットメルト接着剤は、フィルム、シート、不織布、ペレット、リボン、棒、矩形状、繊維、フィラメント等の形状に加工することが好ましく、その中でも特にフィルム、シート、不織布形状に加工することが好ましい。その際の加工方法は、特に制限はなく、公知の方法により加工することができ、例えば一軸押出機、二軸押出機または特殊ミキシング型押出機等の押出機を用いた溶融押出し法;カレンダー法;熱プレス法;射出成形法;ブロー成形法等により製造する方法が挙げられる。ここで、成形条件は成形方法に応じて適宜選択され、特に制限はなく、一般的には樹脂温度が結晶融点以上、分解温度以下の範囲で適宜選択され、通常結晶融点よりも10〜50℃高い温度範囲で成形することができる。例えば熱プレス法により成形する際には150℃以上350℃以下が好ましく、特に好ましくは200℃以上300℃以下である。
【0036】
本発明のホットメルト接着剤は、一般のホットメルト接着剤の施工法に準じ、通常のポリエステル系及びポリアミド系ホットメルト接着剤と同様に用いることができる。この際、施工後の接着物を熱処理することもできる。この場合、被着体をホットメルト施工後、ヒートシーラー等の加熱体に加圧下もしくは大気圧下で加熱するか、あるいは高温槽中で熱処理する方法を採ることができる。
【0037】
本発明のホットメルト接着剤には、接着性の向上のために、例えば、石油樹脂と総称されている脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、α−ピネン又はβ−ピネンを成分とするテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、水素添加ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン系樹脂等のホットメルト接着剤用途で用いられている粘着付与樹脂を添加することができる。
【0038】
また、本発明のホットメルト接着剤には、更なる耐熱性、特に耐熱変色性の向上のため、製造時又は製造後に安定剤を添加してもよく、該安定剤としては、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体;フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;ヒンダードフェノール系化合物;ヒドロキシジオキサホスフェピン系化合物;ヒドロキシアクリレート系化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステルなどの硫黄含有化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシドなどのスズ系化合物;ラクトン系化合物;ヒドロキシルアミン系化合物;ビタミンE系化合物;アリルアミン系化合物;アミン−ケトン系化合物;芳香族第二級アミン系化合物;モノフェノール系化合物;ビスフェノール系化合物;ポリフェノール系化合物;ベンツイミダゾール系化合物;ジチオカルバミン酸系化合物;チオウレア系化合物;有機チオ酸系化合物等が挙げられ、該安定剤の添加量は特に制限なく、ホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対して、0.0001〜10重量部が好ましく用いられる。
【0039】
さらに、本発明のホットメルト接着剤には、成形加工性を向上させる目的で、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸類;ステアリン酸エステル;シリコンオイル;ワックス類;エチレンビスステアリルアミドなどの滑剤を添加することもできる。これらの添加量は特に制限はなく、ホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対して0.05〜5重量部が好ましく用いられる。
【0040】
本発明のホットメルト接着剤には、例えば染料;有機顔料あるいは無機顔料;無機補強剤;可塑剤;ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等の光安定剤;ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェニルサィシレート系化合物、フェニルアクリレート系化合物等の紫外線吸収剤;発泡剤;帯電防止剤;導電剤;結晶核剤;可塑剤;離型剤;カルボジイミド等の加水分解防止剤;難燃剤等の公知の添加剤を加えることができる。
【0041】
本発明のホットメルト接着剤には、ホットメルト接着剤としての本来の性能を損なわない範囲で、例えばパラフィンワックス、石油ワックス、天然ワックス、合成ワックス等のワックス;熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマー;ゴム;熱硬化性樹脂;等を添加することができる。
【0042】
本発明のホットメルト接着剤は、一般的なホットメルト接着剤に用いられている用途、即ち、紙、ポリエステルフィルム、金属、合板、布、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム等の接着に用いることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の新規な芳香族アミドブロック共重合体よりなるホットメルト接着剤は、柔軟で高い軟化温度を有し、さらには耐寒性、接着性に優れたホットメルト接着剤である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
評価・分析に用いた評価・分析機器及び方法を以下に示す。
【0046】
〜数平均分子量の測定〜
カラム(東ソー(株)製、商品名TSK−GEL GMHHR−H)を装着したGPC装置(東ソー(株)製、商品名HLC−8020)により、カラム温度40℃、流量0.4ml/分の条件下で、溶離液に20mmol/lの塩化リチウム−N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いて測定し、標準ポリスチレン換算で算出した。
【0047】
〜ホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体中のポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量の測定〜
ホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体中のポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は、核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド中、室温の条件でH−NMRを測定し、アミド単位の芳香族基とラクトン単位のメチレン基とのピーク強度比より、ラクトン単位の平均重合単位(重合度)を求め、その重合度にラクトン単位の分子量を掛けることにより算出した。
【0048】
〜融点、ガラス転移温度の測定〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/分、−100〜300℃の範囲で測定した。
【0049】
〜タイプAデュロメータ硬さ〜
ホットメルト接着剤に用いられる芳香族アミドブロック共重合体を圧縮成形した厚さ2mmのシートを用いて、タイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:1997年)を測定した。
【0050】
〜接着性試験(接着強度の測定)〜
被着体として下記のものを用いた。
【0051】
大きさ100mm×100mm、厚さ80μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム。
【0052】
大きさ100mm×100mm、厚さ15μmのナイロン6(以下、PA6と記す。)フィルム。
【0053】
大きさ100mm×100mm、厚さ100μmのアルミ箔。
【0054】
大きさ100mm×100mm、厚さ100μmの銅箔。
【0055】
上記の中から同じ被着体(大きさ:100mm×100mm)を2枚用い、その間に芳香族アミドブロック共重合体の厚さ300μmのフィルム、厚さ2mmのシートもしくは厚さ300μmの不織布(大きさ:20mm×100mm)を挿入し、接着温度200℃もしくは230℃で10秒間、加熱・加圧(0.2MPa)した後、大きさ100mm×25mmの試験片(接着面の大きさ:20mm×25mm)を切り出した。この試験片を引張試験機(東洋ボールドウィン製、UTM−2.5T)を用い、JIS Z−0237に準拠し接着強度を測定した。
【0056】
合成例1(ジヒドロキシ芳香族アミド化合物の合成)
窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でp−アミノフェノール763g(7.0モル)及びN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)2.1l、トルエン1.4lを加え50℃に昇温し溶解させた。別途、窒素導入管を備えた3l滴下ロートに、テレフタル酸ジクロライド710g(3.5モル)、NMP0.3l、トルエン1.4lを加え、撹拌し均一溶液とし、この溶液を先の溶液中に80℃を保ちながら30分かけて滴下した。さらに80℃で2時間反応を行った。
【0057】
得られたスラリーの固形分を吸引濾過により回収し、メタノール7lで2回攪拌洗浄し、N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミドを得た。
【0058】
続いて、窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド1045g(3.0モル)、炭酸エチレン555g(6.3モル)、触媒としてカリウムt−ブトキシド1.51g(13.5ミリモル)、NMP6.0lを加え、180℃に昇温して完全に溶解させ、さらに180℃で2時間攪拌した。室温まで冷却後、得られたスラリーをメタノール23lに注ぎ、析出した固形分を吸引濾過により回収した。メタノール7.5lで2回攪拌洗浄した後、得られた固体をNMPにより再結晶し、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−1,4−ベンゼンジカルボキサミド1028g(収率79%)を得た。その構造式を下記に示す。この化合物を(a)と記す。
【0059】
【化2】

合成例2(ジヒドロキシ芳香族アミド化合物の合成)
窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10lの4つ口フラスコに、4−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)ベンズアミド1600g(8.9モル)、NMP4.0lを加え均一溶液を得た。別途に、窒素導入管を備えた3l滴下ロートに、イソフタル酸ジクロライド901g(4.4モル)、NMP2.0lを加え、撹拌し均一溶液とし、この溶液を先の溶液中に1時間かけて滴下した。さらに50℃で2時間反応させた後、得られたスラリーをアセトン25lに投入し、吸引ろ過により白色固体を回収した。得られた固体をNMPにより再結晶を行い、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド3745g(収率86%)を得た。その構造式を下記に示す。この化合物を(b)と示す。
【0060】
【化3】

合成例3(芳香族アミド化合物の合成)
窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でp−アミノ安息香酸エチル1156g(7.0モル)及びNMP4.0lを加え50℃に昇温し溶解させた。別途、窒素導入管を備えた3l滴下ロートに、テレフタル酸ジクロライド711g(3.5モル)、NMP2.0lを加え、撹拌し均一溶液とし、この溶液を先の溶液中に80℃を保ちながら30分かけて滴下した。さらに80℃で2時間反応を行った。
【0061】
室温まで冷却後、得られたスラリーの固形分を吸引濾過により回収し、メタノール7lで2回攪拌洗浄し、N,N’−ビス(4−エトキシカルボニルフェニル)フェニレン−1,4−ジカルボキサミド1531g(収率95%)を得た。その構造式を下記に示す。この化合物を(c)と記す。
【0062】
【化4】

実施例1
窒素導入管を備えた15lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(a)896g(2.1mol)、ε−カプロラクトン2342g(20.5mol)、NMP5380gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.4g(4.1mmol)を加え、180℃で1時間開環重合を行った。引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)731g(2.1mol)を添加し、180℃で5時間反応させた。その後、内温を230℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去した。更に、同温で1時間反応させ、下記の構造を有する芳香族アミド単位と、ε−カプロラクタムから誘導されるポリエステル単位からなる芳香族アミドブロック共重合体を得た。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット3050gを得た。

【0063】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量79000、融点181℃、ガラス転移温度−41℃、タイプAデュロメータ硬さ95であった。また、ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は540であった。
【0064】
得られた芳香族アミドブロック共重合体のペレットを、さらに230℃で圧縮成形しフィルム形状のホットメルト接着剤を得た。得られたフィルムを用い、被着体との接着性試験を実施した。接着温度230℃でのアルミ箔との接着強度は4.2kg/25mm、銅箔との接着強度は2.4kg/25mmであった。
【0065】
実施例2
化合物(a)796g(1.8mol)、ε−カプロラクトン3122g(27.4mol)、NMP4782g、テトラブチルチタネート1.9g(5.5mmol)、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)650g(1.8mol)とした以外は、実施例1と同様の方法により、芳香族アミドブロック共重合体のペレット3700gを得た。
【0066】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量87000、融点164℃、ガラス転移温度−40℃、タイプAデュロメータ硬さ90であった。ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は810であった。
【0067】
得られた芳香族アミドブロック共重合体のペレットを、さらに230℃で圧縮成形しフィルム形状のホットメルト接着剤を得た。得られたフィルムを用い、被着体との接着性試験を実施した。接着温度230℃でのアルミ箔との接着強度は6.3kg/25mm、銅箔との接着強度は3.4kg/25mmであった。
【0068】
実施例3
化合物(a)716g(1.6mol)、ε−カプロラクトン3745g(32.8mol)、NMP4302g、テトラブチルチタネート2.2g(6.6mmol)、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)585g(1.6mol)とした以外は、実施例1と同様の方法により、芳香族アミドブロック共重合体のペレット4300gを得た。
【0069】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量82000、融点143℃、ガラス転移温度−45℃、タイプAデュロメータ硬さ85であった。ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は1080であった。
【0070】
得られた芳香族アミドブロック共重合体のペレットを、さらに230℃で圧縮成形しフィルム形状のホットメルト接着剤を得た。得られたフィルムを用い、被着体との接着性試験を実施した。接着温度200℃でのアルミ箔との接着強度は7.2kg/25mm、銅箔との接着強度は3.8kg/25mm、PETフィルムとの接着強度は3.2kg/25mm、PA6フィルムとの接着強度は1.3kg/25mmであった。
【0071】
実施例4
窒素導入管を備えた15lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(a)934g(2.1mol)、ε−カプロラクトン2442g(21.4mol)、NMP5611gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.5g(4.3mmol)を加え、180℃で1時間開環重合を行った。その後、リン酸1.7g(17.1mmol)を添加して180℃で30分攪拌した。引き続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート360g(2.1mol)を30分かけて滴下し、180℃で4時間反応させた。その後、内温を230℃まで昇温しながら、NMPを減圧下で2時間かけて留去した。更に、同温で1時間反応させ、実施例1と同様の芳香族アミド単位と、ε−カプロラクタムから誘導されるポリエステル単位からなる芳香族アミドブロック共重合体を得た。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット3300gを得た。
【0072】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量84000、融点189℃、ガラス転移温度−42℃、タイプAデュロメータ硬さ95であった。ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は550であった。
【0073】
得られた芳香族アミドブロック共重合体のペレットを、さらに20mm単軸押出機を用い230℃で溶融混練を行い、直径0.5mmの孔を一列に並べたノズルから吐出させ、メルトブロー法により不織布形状のホットメルト接着剤を得た。得られた不織布を用い、被着体との接着性試験を実施した。接着温度230℃でのアルミ箔との接着強度は3.8kg/25mm、銅箔との接着強度は2.1kg/25mmであった。
【0074】
実施例5
窒素導入管を備えた15lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(b)979g(2.0mol)、ε−カプロラクトン3991g(35.0mol)、NMP3668gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート2.4g(7.0mmol)を加え、180℃で8時間開環重合を行った。引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)711g(2.0mol)を添加し、180℃で5時間反応させた。その後、内温を230℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去した。更に、同温で1時間反応させ、下記の構造を有する芳香族アミド単位と、ε−カプロラクタムから誘導されるポリエステル単位からなる芳香族アミドブロック共重合体を得た。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット4700gを得た。

【0075】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量75000、融点188℃、ガラス転移温度−51℃、タイプAデュロメータ硬さ80であった。ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は880であった。
【0076】
得られた芳香族アミドブロック共重合体のペレットを、さらに230℃で圧縮成形しシート形状のホットメルト接着剤を得た。得られたシートを用い、被着体との接着性試験を実施した。接着温度230℃でのアルミ箔との接着強度は3.9kg/25mm、銅箔との接着強度は2.2kg/25mmであった。
【0077】
比較例1
数平均分子量が1979のポリテトラメチレンオキシドグリコール(保土谷化学工業社製)4950g(2.5mol)、化合物(c)1150g(2.5mol)、NMP3010g、イルガノックス1330(チバガイギー社製)6.1g、及びテトラブチルチタネート10.0g(29mmol)を15Lオートクレーブに仕込んだ。窒素気流下、210℃で60分間生成するエタノールを除去しながら反応させた。引き続き、内温を230℃まで昇温しながら、NMPを減圧下、2時間かけて留去した。更に、同温で1時間反応させ、下記の構造を有する芳香族アミド単位と、ポリテトラメチレンオキシドグリコールから誘導される脂肪族ポリ(オキシアルキレン)単位からなる芳香族アミドブロック共重合体を得た。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット5100gを得た。

【0078】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量67000、融点196℃、ガラス転移温度−54℃、タイプAデュロメータ硬さ85であった。
【0079】
得られた芳香族アミドブロック共重合体のペレットを、さらに230℃で圧縮成形しフィルム形状のホットメルト接着剤を得た。得られたフィルムを用い、被着体との接着性試験を実施した。接着温度230℃でのアルミ箔との接着強度は0.5kg/25mm、銅箔との接着強度は0.3kg/25mmであり、接着性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位からなり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10000〜1000000である芳香族アミドブロック共重合体よりなることを特徴とするホットメルト接着剤。
【化1】

(1)
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)
【請求項2】
芳香族アミドブロック共重合体が、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステルからなることを特徴とする請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
芳香族アミドブロック共重合体が、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリ(ε−カプロラクトン)からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
シート、フィルム又は不織布形状で用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。

【公開番号】特開2006−117863(P2006−117863A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309245(P2004−309245)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】