説明

芳香族スルホン酸エステルおよびスルホン化ポリアリーレン系重合体

【課題】スルホン酸基の導入量を増加しても優れた耐熱水性と機械的特性を有するスルホン化ポリマー、および芳香族スルホン酸エステル誘導体の提供。
【解決手段】一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体。


[Xはフッ素を除くハロゲン原子、-OSO2CH3および-OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基、Yは-CO-または−SO2−、ZはO、S、-CO-、−SO2−または-SO-を示す。lは0〜4、mは0以上の整数。Arは一般式(2)または(3)で表される構造を示す。Uは-CO-、−SO2−または-SO-、nは0〜4、oは0〜4。但し、l+n+o≧1である。VはO、S、-CR'2-、-CO-、−SO2−または-SO-、pは0〜3、qは0〜4。但しR'は炭化水素基、l+p+q≧1である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な芳香族スルホン酸エステルおよびスルホン化ポリアリーレン系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質は、通常、(水)溶液で用いられることが多い。しかし、近年、これを固体系に置き替えていく傾向が高まってきている。その第1の理由としては、例えば、上記の電気・電子材料に応用する場合のプロセッシングの容易さであり、第2の理由としては、軽薄短小・省電力化への移行である。
【0003】
従来、プロトン伝導性材料としては、無機物からなるもの、有機物からなるものの両方が知られている。無機物の例としては、例えば水和化合物であるリン酸ウラニルが挙げられるが、これら無機化合物は界面での接触が十分でなく、伝導層を基板あるいは電極上に形成するには問題が多い。
【0004】
一方、有機化合物の例としては、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸などのビニル系ポリマーのスルホン化物、ナフィオン(商品名、
デュポン社製)を代表とするパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー、パーフルオロア
ルキルカルボン酸ポリマーや、ポリベンズイミダゾールやポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性高分子にスルホン酸基やリン酸基を導入したポリマー(たとえば、非特許文献
1〜3参照)などの有機系ポリマーが挙げられる。
【0005】
上記有機系ポリマーは、通常、フィルム状で用いられるが、溶媒に可溶性であること、または熱可塑性であることを利用し、電極上に伝導膜を接合加工できる。しかしながら、これら有機系ポリマーの多くは、プロトン伝導度がまだ十分でないことに加え、高温(1
00℃以上)において耐久性、プロトン伝導性および力学的性質、特に弾性率が大きく低
下すること、湿度条件に対する依存性が大きいこと、電極との密着性が十分でないこと、含水ポリマー構造に起因する稼動中の過度の膨潤による強度の低下や形状の崩壊に至ることなどの問題がある。したがって、これらの有機系ポリマーは、上記の電気・電子材料などに応用するには種々問題がある。
【0006】
さらに、特許文献1には、スルホン化された剛直ポリフェニレンからなる固体高分子電
解質が提案されている。このポリマーはフェニレン連鎖からなる芳香族化合物を重合して得られるポリマーを主成分とし、これをスルホン化剤と反応させてスルホン酸基を導入している。しかしながら、スルホン酸基の導入量の増加によって、プロトン伝導度も向上するものの、同時に、得られるスルホン化ポリマーの機械的性質、例えば破断伸び、耐折曲げ性等の靭性や耐熱水性は著しく損なわれるという問題点があった。
【特許文献1】米国特許第5,403,675号公報
【非特許文献1】Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.7, p.2490〜2492(1993)
【非特許文献2】Polymer Preprints, Japan, Vol.43, No.3, p.735〜736 (1994)
【非特許文献3】Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.3, p.730 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、スルホン酸基の導入量を増加しても優れた耐熱水性と機械的特性を有するスルホン化ポリマーおよびその原料である、芳香族スルホン酸エステル誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく、鋭意研究した。その結果、特定の構成単位を有する、スルホン化ポリアリーレンによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の態様は、以下[1]〜[7]に示される。
[1]下記一般式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体。
【0010】
【化1】

【0011】
[式(1)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3および−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、Yは−CO−または−S
2−を示し、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO
−を示し、Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。lは0〜4の整数を示し、mは0以上の整数を示す。
Arは、下記一般式(2)または(3)で表される構造を示す。
【0012】
【化2】

【0013】
式(2)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示し、Rは独立に炭素数4
〜20の炭化水素基を示すし、nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。
【0014】
式(3)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは独立に炭素
数4〜20の炭化水素基を示し、pは0〜3の整数を示し、qは0〜4の整数を示す。ただし、l+p+q≧1である。]
[2]下記一般式(1’)で表される構成単位を有するポリアリーレン系重合体。
【0015】
【化3】

【0016】
[式(1’)中、Yは−CO−または−SO2−を示し、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜4の整数を示し、mは0以上
の整数を示す。
【0017】
Ar’は、下記一般式(2’)または(3’)で表される構造を示す。式(2’)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の
整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。式(3’)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−を示し、pは0〜3の整数を示し、qは0〜4の整数を示す。ただし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。]
【0018】
【化4】

【0019】
[3]さらに、一般式(4)で表される構成単位を有する[2]のポリアリーレン系共重合体。
【0020】
【化5】

【0021】
[4]一般式(1’)が下記一般式(1’a)で表される構成単位である[2]または[3]のポリア
リーレン系共重合体。
【0022】
【化6】

【0023】
[式(1’a)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−S
O−を示す。lは0〜4の整数を示し、mは0以上の整数を示す。Arは、下記一般式(
2’a)または(3’a)で表される構造を示す。
【0024】
【化7】

【0025】
式(2’a)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示し、nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。式(3’a)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、pは0〜3の整数を示し、qは0〜4の整数を示す。ただし、ただしR’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。]
[5]前記構成単位が下記一般式(1'b)〜(1'e)で表される構成単位である[2]〜[4]の
ポリアリーレン系共重合体。
【0026】
【化8】

【0027】
[式(1’b)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−
SO−を示し、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜4の整数
を示し、nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。
【0028】
式(1'c)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、n+o≧1である。
式(1'd)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−S
2−または−SO−を示す。lは0〜4の整数を示し、pは0〜3の整数を示し、qは
0〜4の整数を示す。ただし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示しl+p+q≧1である。
【0029】
式(1’e)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜4の整数を示し、pは0〜3の整数を示し、q
は0〜4の整数を示す。ただし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。]
[6]下記一般式(1’f)〜(1'i)で表される構成単位である[2]または[3]のポリアリーレン系共重合体。
【0030】
【化9】

【0031】
[式(1’f)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−
SO−を示し、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜1の整数
を示し、nは0〜1の整数を示し、oは0〜2の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。
【0032】
式(1’g)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。nは0〜1の整
数を示し、oは0〜2の整数を示す。ただし、n+o≧1である。
式(1’h)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜1の整数を示し、pは0〜1の整数を示し、qは0
〜2の整数を示す。ただし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。
【0033】
式(1’i)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。pは0〜1の整数を示し、qは0〜2の整数を示す。た
だし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示しp+q≧1である。]
[7][3]に記載のポリアリーレン系共重合体を含む固体高分子電解質。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、複数のスルホン酸エステル基を有する芳香族化合物、該化合物から誘導される複数のスルホン酸基を有する芳香族ユニットと、スルホン酸基を有さないユニットとを有する共重合体を提供することができる。本発明の複数のスルホン酸基を有する芳香族ユニットの効果により、高いスルホン酸濃度の共重合体が合成でき、プロトン伝導度
の高い材料設計が可能となる。またこのような複数のスルホン酸基を有する芳香族ユニットを用いることで、共重合体中のスルホン酸基を有さないユニットの組成比を増加させても、高いスルホン酸濃度の共重合体が合成でき、熱水耐性や機械的特性に優れた材料設計が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の芳香族スルホン酸エステル誘導体について詳細に説明する。
<芳香族スルホン酸エステル誘導体>
本発明の芳香族スルホン酸エステル誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0036】
【化10】

【0037】
式(1)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3および−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、ハロゲン原子が好ましい。Yは−CO−または−SO2−を示し、−CO−が好ましい。Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。
【0038】
lは0〜4の整数を示し、mは0以上の整数を示し、好ましくは0または1である。Arは、下記一般式(2)または(3)で表される構造を示す。
式(2)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示し、nは0〜4の整数を
示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。
【0039】
式(3)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR'2−または−CO−または−SO2−を示し、pは0〜3の整数を示し、qは0〜4の整数を示す。ただしR'は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。
【0040】
Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。具体的には、t−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、アダマンチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基などが挙げられる。
【0041】
後述する、共重合体とする場合、これらの中でも、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、ネオペンチル基がより好ましい。
【0042】
【化11】

【0043】
このような芳香族スルホン酸エステルとしては、以下のものが例示される。
【0044】
【化12】

【0045】
このような芳香族スルホン酸エステル誘導体の合成方法としては、式(1)で表される化合物が合成できれば特に制限されるものではない。たとえば、特定のクロロベンゾフェノンとヒドロキシベンゾフェノンとを反応させたのち、硫酸エステル基を導入しても良い。また式(1)または(2)で表される官能基を誘導する化合物と、クロロスルホン化物を反応させて合成することも可能である。また式(1)または(2)で表される官能基を誘導する化合物を合成し、硫酸エステル基を導入した後に、酸化反応を行うことにより合成することも可能である。
【0046】
得られた芳香族スルホン酸エステル誘導体は、必要に応じて精製され、また、末端Naをエステル交換される。
芳香族スルホン酸エステル誘導体の同定方法としては、特に制限されるものではなく、公知、NMRなどの方法が採用される。
【0047】
<スルホン化ポリアリーレン>
本発明に係るポリアリーレン系重合体は、下記一般式(1')で表される構成単位を有す
る。
【0048】
【化13】

【0049】
式(1')中、Yは−CO−または−SO2−を示し、−CO−が好ましい。Zは酸素原子
または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。
lは0〜4の整数を示し、mは0以上の整数を示し、好ましくは0または1である。Ar’は、下記一般式(2')または(3')で表される構造を示す。
【0050】
【化14】

【0051】
式(2)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示し、nは0〜4の整数を
示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。式(3)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR'2−または−CO−または−SO2−を示し、pは0〜3の
整数を示し、qは0〜4の整数を示す。ただし、ただしR'は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。
【0052】
<スルホン化ポリアリーレン系共重合体>
本発明に係るポリアリーレン系重合体は、上記式(1')で表される構成単位の単独重
合体であってもよく、通常、一般式(4)で表される構成単位を含むことが望ましい。このような構成単位を含んでいると、重合体の強度や耐水性を向上させることができる。
【0053】
【化15】

【0054】
式(4)中、AおよびDは、それぞれ独立に直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2)j−(jは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、
芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基および
フルオレニリデン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を示す。これらの中では、直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−CR’2−、シクロヘキシリデン基およびフルオレニリデン基が好ましい。R’としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、エチルヘキシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、これらの置換基中の水素原子の一部もしくはすべてがハロゲン化された置換基などが
挙げられる。
【0055】
Bは独立に酸素原子または硫黄原子を示し、酸素原子が好ましい。
1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル
基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
【0056】
上記アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。
上記ハロゲン化アルキル基としては、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。
【0057】
上記アリル基としては、たとえば、プロペニル基などが挙げられる。上記アリール基としては、たとえば、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
sおよびtは0〜4の整数を示す。rは0または1以上の整数を示し、上限は通常100、好ましくは1〜80である。
【0058】
上記構成単位(4)の好ましい構造としては、上記式(4)において
(1)s=1およびt=1であり、Aが−CR’2−、シクロヘキシリデン基またはフルオ
レニリデン基であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または−SO2−であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(2)s=1およびt=0であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または−SO2−で
あり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(3)s=0およびt=1であり、Aが−CR’2−、シクロヘキシリデン基またはフルオ
レニリデン基、Bが酸素原子であり、R1〜R16が水素原子、フッ素原子またはニトリル
基である構造
が挙げられる。
【0059】
上記構成単位(4)となりうるモノマーもしくはオリゴマー(以下「化合物(4’)」とも
いう)は、たとえば、特開2004−137444号公報に記載の方法を参照することに
より合成することができる。
【0060】
<スルホン化ポリアリーレンの製造方法>
本発明のスルホン化ポリアリーレンは、たとえば、特開2004−137444号公報に記載の方法で合成することができる。
【0061】
具体的には、まず、上記式(1)で表される芳香族スルホン酸エステル誘導体、および上記化合物(4)の前駆体である下記一般式(4’)で表される化合物を触媒の存在下で共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを製造し、該スルホン酸エステル基を脱エステル化して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成することができる。
【0062】
【化16】

【0063】
式(4’)中、Xは、フッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3
よび−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、塩素または臭素が好ましい。A、B、D、R1〜R16、s、t、rは、上記式(4)中のA、B、D、R1〜R16、s、t、rと同義である。
【0064】
上記重合の際に用いられる触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、このような触媒系としては、(i)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。) 、または、配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)と、(ii)還元剤とを必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために「塩」を添加してもよい。
【0065】
これらの触媒成分の具体例、各成分の使用割合、反応溶媒、濃度、温度、時間等の重合条件などは、特開2001−342241号公報に記載されている化合物および条件等を参考にして使用または設定することができる。
【0066】
上記のような方法により製造されるスルホン化ポリアリーレンのイオン交換容量は、通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜4meq/g、さらに好ましくは0.8〜3.5meq/gである。イオン交換容量が上記範囲よりも低いと、プロトン伝導度が低く、発電性能が低くなる傾向にあり、上記範囲を超えると、耐水性が大幅に低下する傾向にある。
【0067】
ただし、今回開発した多スルホン化モノマーを用いると、従来のモノスルホン化モノマーを用いた場合と比較して、イオン交換量を大幅に大きくできた。このため、今回合成したポリマーは、従来のポリマーと比較して高いプロトン伝導度を有する傾向にある。
【0068】
上記イオン交換容量は、たとえば、上記化合物(1’)および化合物(4’)の種類、使用割合、組み合わせなどを変えることにより、調整することができる。なお、本発明のスルホン化ポリアリーレンは、構成単位(1)を0.5〜100モル%、好ましくは10〜99.999モル%の割合で、構成単位(4)を99.5〜0モル%、好ましくは90〜0.001モル%の割合で含有することが望ましい。
【0069】
このようにして得られるスルホン化ポリアリーレンの重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で、1万〜100万、好ましくは2万〜50万、より好ましくは3万〜30万である。
【0070】
このようなポリアリーレン系重合体は、プロトン伝導性が高く、燃料電池のプロトン伝導膜、電極電解質、結着剤として好適に使用できる。また、このようなポリアリーレン系重合体を含む電極電解質は、膜電極接合体としても好適である。
【0071】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各種の測定項目は、下記のようにして求
めた。
【0072】
(分子量)
重合体の分子量は、GPCによってポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。溶媒として臭化リチウムを添加したN−メチル−2−ピロリドンを用いた。
【0073】
(イオン交換容量)
得られたスルホン化ポリマーの水洗水がpH4〜6になるまで洗浄して、フリーの残存している酸を除去して十分に洗浄し、乾燥した後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解させ、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液にて滴定し、中和点からイオン交換容量を求めた。
【0074】
<合成例1>
2,5-ジクロロ-4’-フルオロベンゾフェノン53.8g(0.2mol)、4―ヒドロキ
シベンゾフェノン39.6g(0.2mol)、炭酸カリウム35.9g(0.26mol)をフラスコにとり、ジメチルアセトアミドを200ml加えた。100℃で10時間反応溶液を攪拌した後、反応溶液に水を加えた。酢酸エチルを用いて有機物を抽出した。抽出溶液に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、エバポレーターをもちいて溶媒を留去した。ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を用いて再結晶単離精製を行い、4-(2,5-ジクロロベ
ンゾイル)-4'-ベンゾイルジフェニルエーテルを54.5g得た。
【0075】
4-(2,5-ジクロロベンゾイル)-4'-ベンゾイルジフェニルエーテル38.0g(0.08
5mol)を冷却管、三方コック、温度計を取り付けた3口フラスコにとり、窒素置換を
行なった。ここに、クロロスルホン酸149g(1.28mol)を加えて攪拌し溶解させた。オイルバスで反応液を100℃まで加熱し、10時間攪拌した。反応終了後、室温まで放冷したのち、反応液を氷水に注いだ。有機物を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を洗浄液が中性になるまで炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに食塩水を用いて洗浄した。硫酸マグネシウムにより乾燥させた後、エバポレーターを用いて溶媒を留去することにより、クロロスルホン化物を57.3g得た。
【0076】
得られた、クロロスルホン化物49g(0.066mol)を、三方コックを取り付けた三口フラスコにとり、ピリジン200mlを加えた後、0℃に冷却した。ここに、2,2−ジメチル−1−プロパノール17.4g(0.198mol)を徐々に加えた、4時間氷冷下で攪拌した。反応終了後、反応溶液を塩酸水溶液に加えた。有機物を酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。メタノール/ヘキサンから再結晶を行い、目的の化合物を40.5g得た。得られた化合物は下記式(I)で表される化合物であった。得られた化合物のNMRチャートを図1に示す

【0077】
【化17】

【0078】
<合成例2>
ジフェニルチオエーテル18.63g(0.100mol)をフラスコにとり、塩化アルミニウム8.00g(0.060mol)を加えた。混合物を5℃に冷やした後、2,5−ジクロロベンゾイルクロライド10.5g(0.050mol)を30分かけて滴下した。
【0079】
3時間反応溶液を室温で攪拌した後、反応溶液を氷水中に加えた。酢酸エチルを用いて有機物を抽出した。抽出後、有機層が中性になるまで、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに食塩水を用いて洗浄した。抽出溶液に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、エバポレーターをもちいて溶媒を留去した。ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を用いて再結晶単離精製を行い、4-(2,5-ジクロロベンゾイル)−ジフェニルチオエーテルを12.4g得た。
【0080】
4-(2,5-ジクロロベンゾイル)−ジフェニルチオエーテル10.06g(0.028mol)
を冷却管、三方コック、温度計を取り付けた3口フラスコにとり、窒素置換を行なった。ここに、硫酸8.3gを加えて攪拌し溶解させた。硫酸溶液に、30%発煙硫酸21.0gを加え80℃に加熱し、6時間加熱した。反応終了後、室温まで放冷したのち、反応液を氷水に注ぎ、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和し、不溶物をろ過した。ろ液を濃縮した後、ジメチルスルホキシドを加えた。不溶物をろ過し、ろ液を濃縮することにより、トリスルホン化物を15.0g得た。
【0081】
攪拌機、温度計、窒素導入管、冷却管および滴下ロートを取り付けた三口フラスコに、トリスルホン化物39.9g(0.06mol)および酢酸420mlをはかりとった。そこに、過ホウ酸ナトリウム4水和物46.2g(0.271mol)くわえた。60℃で7時間攪拌した後、0℃まで冷やした。ろ過を行なってから、溶媒を留去した。水を100ml加えた後、水酸化ナトリウム水溶液をPHが6−7になるまで加えた。その後濃縮し、濃縮液をジイソプロピルエーテル溶液に加え、凝固させて化合物(II)を38.8g得た。
【0082】
【化18】

【0083】
窒素導入間管および攪拌機を取り付けた三口フラスコに、化合物(II)31.9g(0.
0457mol)、スルホラン10gをくわえ、塩化ホスホリルを69.9g(0.46mol)
室温で加えた。50℃で2時間攪拌後、反応液を氷水に加えたのち、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥した。ヘキサン、酢酸エチル混合溶媒から再結晶を行い、トリクロロスルホン化物30.6gを得た。
【0084】
窒素導入管および攪拌機を取り付けた三口フラスコに、トリクロロスルホン化物31.6g(0.043mol)、ネオペンチルアルコール11.4g(0.143mol)およびピリジン70gをとり、0℃で12時間攪拌した。反応液をトルエンで希釈し、塩酸水溶液で2回洗浄した。さらに有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。メタノールから再結晶を行い、下記式(III)で表されるネオペンチル
エステル28.2gを得た。得られた化合物のNMRチャートを図2に示す。
【0085】
【化19】

【0086】
<合成例3>
攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた三口フラスコに、9,9−ジメチルフルオレン9.7g(0.050mol)、塩化アルミニウム8.00g(0.060mol)をフラスコにとり、塩化メチレン50mlを加えた。反応溶液を5℃に冷やした後、2,5−ジクロロベンゾイルクロライド10.5g(0.050mol)を30分かけて滴下した。5時間反応溶液を室温で攪拌した後、反応溶液を氷水中に加えた。酢酸エチルを用いて有機物を抽出した。抽出後、有機層が中性になるまで、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに食塩水を用いて洗浄した。抽出溶液に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、エバポレーターをもちいて溶媒を留去した。ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を用いて再結晶単離精製を行い、2−(2,5−ジクロロベンゾイル)−9,9−ジメチルフルオレンを16.4g得た。
【0087】
攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた三口フラスコに、2−(2,5−ジクロロベ
ンゾイル)−9,9−ジメチルフルオレンを18.4g(0.05mol)とり、ここに、
クロロスルホン酸58.3g(0.5mol)を加えて攪拌し溶解させた。オイルバスで反応液を100℃まで加熱し、10時間攪拌した。反応終了後、室温まで放冷したのち、反応液を氷水に注いだ。有機物を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を洗浄液が中性になるまで炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに食塩水を用いて洗浄した。硫酸マグネシウムにより乾燥させた後、エバポレーターを用いて溶媒を留去することにより、クロロスルホン化物を23.4g得た。
【0088】
窒素導入管および攪拌機を取り付けた500mlの三口フラスコに、クロロスルホン化物18.0g(0.032mol)、ネオペンチルアルコール5.6g(0.064mol)およびピリジン40gをとり、0℃で12時間攪拌した。反応液をトルエンで希釈し、塩酸水溶液で2回洗浄した。さらに有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ヘキサン、酢酸エチル混合溶媒から再結晶を行い、下記式(IV)で表されるネオペンチルエステルを19.3g得た。
【0089】
【化20】

【0090】
<実施例1>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、実施例1で得られたスルホン酸ネオペンチル62.9g(70mmol)、構造式(V)で示すMn10,500
の疎水性ユニット44.1g(4.2mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.94g(3mmol)、ヨウ化ナトリウム0.33g(2.22mmol)、トリフェニルホスフィン7.80g(30mmol)、亜鉛11.7g(178mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0091】
【化21】

【0092】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)320mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc750mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0093】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れ、115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム44g(506mmol)を加えた。7時間攪拌後、アセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、1N塩酸、純水の順に洗浄後、乾燥して目的のスルホン化ポリマー18gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は170,000であった。得られた重合体は、式(VI)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0094】
【化22】

【0095】
<実施例2>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、実施例2で得られたスルホン酸ネオペンチル55.0g(65.3mmol)、下記構造式(VII)で示すMn9
,500の疎水性ユニット44.6g(4.7mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.83g(2.8mmol)、ヨウ化ナトリウム0.32g(2.1
mmol)、トリフェニルホスフィン7.34g(28mmol)、亜鉛11.0g(168mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。
【0096】
ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)300mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc690mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0097】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム17g(196mmol)を加えた。7時間攪拌後、アセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体70gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は135,000であった。得られた重合体は式(VIII)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0098】
【化23】

【0099】
<実施例3>
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、合成例3で得られた式(III)で表される化合物43.4g(65.0mmol)、下記構造式(IX)式に示すMn
10,500の疎水性ユニット52.6g(5.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフ
ィン)ニッケルジクロリド1.83g(2.8mmol)、ヨウ化ナトリウム0.32g(mmol)、トリフェニルホスフィン7.4g(28mmol)、亜鉛11.0g(168mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)
288mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc670mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0100】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れ、115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム16.9g(195mmol)を加えた。7時間攪拌後、アセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、1N塩酸、純水の順に洗浄後、乾燥して目的のスルホン化ポリマー124gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(
Mw)は170,000であった。得られた重合体は、式(X)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0101】
【化24】

【0102】
<比較例1>
2,5−ジクロロ−4’−フェノキシベンゾフェノン50g(145mmol)を、冷却管、三方コックおよび温度計を取り付けた1L三口フラスコにとり、乾燥窒素置換した。ここにクロロスルホン酸263gを加えて、内温を20℃以下に維持して3時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルによる抽出を行った。得られた有機層を、洗浄液が中性になるまで食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去してクロロスルホン化物60gを得た。得られた化合物は実施例1とは異なり、モノクロロスルホン化された化合物であった。
【0103】
得られたクロロスルホン化物を、冷却管、三方コックおよび温度計を取り付けた0.5L三口フラスコにとり、ピリジン75gを加えた後、約5℃に冷却した。ここに2,2−ジメチル−1−プロパノール13.2g(149mmol)を徐々に加えた後、4時間氷冷下で攪拌した。反応終了後、トルエンで希釈し、塩酸水溶液で2回洗浄した。さらに、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、飽和食塩水で処理した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。メタノール/ヘキサンから再結晶を行い、目的の化合物60gを得た。得られた化合物は下記の式(XI)で表される化合物であった。
【0104】
【化25】

【0105】
次に、攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた1L三口フラスコに、得られた式(XI)で表される化合物78.1g(121mmol)、数平均分子量11,200の[4,4’−ジクロロベンゾフェノン・2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン]重縮合物47.8g(4.3mmol)、ビス(ト
リフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.5g(3.8mmol)、ヨウ化ナトリウ
ム0.56g(3.8mmol)、トリフェニルホスフィン13.2g(50.2mmol)および亜鉛19.7g(301mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)295mLを加え、反応温度を80℃に保ちながら3時間攪拌した後、DMAc300mLを加えて希釈し、不溶物をろ過した。
【0106】
得られたろ液を、攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた3L三口フラスコに入れ、115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム31.6g(364mmol)を加えた。7時間攪拌後、反応液をアセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。得られた生成物を、1N塩酸、純水の順に洗浄後、乾燥して目的のスルホン化ポリマー90gを得た。得られた重合体の重量平均分子量は145,000、イオン交換容量は2.2meq/gであった。得られた重合体は下記式(XII)で表されるスルホン化ポリマーであると推定される。
【0107】
【化26】

【0108】
<評価>
実施例1〜3および比較例1で得られた、各スルホン化ポリマーをNMPに溶解し、キ
ャスト法により膜厚50μmのプロトン伝導膜を作製した。各プロトン伝導膜のプロトン伝導度および含水率を測定した。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
表1に示すように、本発明のスルホン化ポリマー(実施例1〜3)からなるプロトン伝導膜は、イオン交換容量を高くしても、引っ張り伸びが高く、靭性が優れているとともに、熱水中での溶出による重量減少が少ないことから、熱水耐性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は合成例1で得られた化合物のNMRチャートを示す。
【図2】図2は合成例2で得られた化合物のNMRチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする芳香族スルホン酸エステル誘導体。
【化1】

[式(1)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3および−OSO2CF3からなる群より選ばれる原子または基を示し、Yは−CO−または−S
2−を示し、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO
−を示し、Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。lは0〜4の整数を示し、mは0以上の整数を示す。
Arは、下記一般式(2)または(3)で表される構造を示す。
【化2】

式(2)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示し、nは0〜4の整数を
示し、oは0〜4の整数を示す。Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。ただし、l+n+o≧1である。
式(3)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、pは0〜3の整数を示し、qは0〜4の整数を示す。ただし
、ただしR’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rは独立に炭素数4〜20の炭化水素基を示す。ただし、l+p+q≧1である。]
【請求項2】
下記一般式(1’)で表される構成単位を有することを特徴とするポリアリーレン系重合体。
【化3】

[式(1’)中、Yは−CO−または−SO2−を示し、Zは酸素原子または硫黄原子または
−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜4の整数を示し、mは0以上
の整数を示す。
Arは、下記一般式(2’)または(3’)で表される構造を示す。式(2’)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の整
数を示す。ただし、l+n+o≧1である。式(3’)中、Vは酸素原子または硫黄原子ま
たは−CR’2−または−CO−または−SO2−を示し、pは0〜3の整数を示し、qは0〜4の整数を示す。ただし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧
1である。]
【化4】

【請求項3】
さらに、一般式(4)で表される構成単位を有することを特徴とする請求項2に記載のポリアリーレン系共重合体。
【化5】

[式(4)中、A、Dはそれぞれ独立に直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2
、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2)j−(jは1〜10の整数である)、−CR’’2−(R’’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニ
リデン基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Bは独立に酸素原子または硫黄原子を示し、R1〜R16は、互いに同一でも異なってい
てもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、sおよびtは0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。]
【請求項4】
一般式(1’)が下記一般式(1’a)で表される構成単位であることを特徴とする請求項2または3に記載のポリアリーレン系共重合体。
【化6】

[式(1’a)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−S
O−を示す。lは0〜4の整数を示し、mは0以上の整数を示す。Ar’は、下記一般式(2’a)または(3’a)で表される構造を示す。
【化7】

式(2’a)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示し、nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。式(3’a)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、pは0〜3の整数を示し、qは0〜4の整数を示す。ただし、ただしR’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。]
【請求項5】
前記構成単位が下記一般式(1'b)〜(1'e)で表される構成単位であることを特徴とする請求項2〜4に記載のポリアリーレン系共重合体。
【化8】

[式(1’b)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−
SO−を示し、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜4の整数
を示し、nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。
式(1'c)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。nは0〜4の整数を示し、oは0〜4の整数を示す。ただし、n+o≧1である。
式(1'd)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−S
2−または−SO−を示す。lは0〜4の整数を示し、pは0〜3の整数を示し、qは
0〜4の整数を示す。ただし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示しl+p+q≧1である。
式(1’e)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜4の整数を示し、pは0〜3の整数を示し、q
は0〜4の整数を示す。ただし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。]
【請求項6】
下記一般式(1’f)〜(1'i)で表される構成単位であることを特徴とする請求項2
または3に記載のポリアリーレン系共重合体。
【化9】

[式(1’f)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−
SO−を示し、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜1の整数
を示し、nは0〜1の整数を示し、oは0〜2の整数を示す。ただし、l+n+o≧1である。
式(1’g)中、Uは−CO−または−SO2−または−SO−を示す。nは0〜1の整
数を示し、oは0〜2の整数を示す。ただし、n+o≧1である。
式(1’h)中、Zは酸素原子または硫黄原子または−CO−または−SO2−または−SO−を示し、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。lは0〜1の整数を示し、pは0〜1の整数を示し、qは0
〜2の整数を示す。ただし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、l+p+q≧1である。
式(1’i)中、Vは酸素原子または硫黄原子または−CR’2−または−CO−または−SO2−または−SO−を示す。pは0〜1の整数を示し、qは0〜2の整数を示す。た
だし、R’は炭素数1〜20の炭化水素基を示しp+q≧1である。
【請求項7】
請求項3に記載のポリアリーレン系共重合体を含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−210919(P2007−210919A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30858(P2006−30858)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】