説明

苗移植機

【課題】 旋回時、植え付け装置を機械的に自動上昇させる、安価な苗移植機の実現。
【解決手段】 走行車体2の車輪10の方向を制御するピットマンアーム60と、走行車体2の後側に設けられ、昇降油圧シリンダによって昇降させられる植え付け装置と、植え付け装置の昇降、植え付けを設定するための植え付け昇降レバー33と、昇降レバー33の操作に従って、昇降油圧シリンダを制御するカム74、位置決めローラ77等と、ピットマンアーム60に連結された連繋部材61、62、64、71と、連繋部材61、62、64、71に連結された旋回切替操作具73とを備え、旋回切替操作具73は、操舵部材が所定量以上回動すると、カム74、ローラ77などを機械的に駆動することによって植え付け装置52を上昇させるモードと、操舵部材が所定量以上回動しても、カム74、ローラ77などを駆動しないモードが選択出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植え付ける植え付け装置を備え、圃場端等での旋回時に植え付け装置が自動で昇降する苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の苗移植機は、圃場で往復植付作業を行う作業において、走行車体が圃場の端に達して旋回走行に移るとき、旋回の開始時及び終了時に、植え付け装置を作業者が植え付け昇降レバーを操作して昇降させている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232841号公報
【特許文献2】特開2005−185129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、作業者が植え付け昇降レバーを一々操作するものでは、旋回時の作業が煩雑になり、作業能率や操作性が低下するという課題がある。
【0005】
さらに、旋回開始時に植え付け装置を上昇させるタイミングが早過ぎる、あるいは旋回終了時に植え付け装置を下降させるタイミングが遅すぎると、圃場に苗が植え付けられない箇所が生じてしまい、後から手作業で苗を植え付けなければならず、作業者の労力が増大するという課題もある。
【0006】
そこで、従来の苗移植機の中には、旋回操作に連動して、植え付け作業が自動的に停止されて植え付け装置が上昇し、旋回が完了すると自動的に下降して植え付け作業が再開できる機能を有するものが知られている(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、このような自動化は、コンピュータを利用したコントローラを利用して電気的に油路切替バルブを制御するタイプであり、高価になるという課題が残っている。
【0008】
本発明は、上記従来のこのような苗移植機の課題を考慮し、旋回時において、植え付け装置を自動上昇させることが出来るとともに、それを安価に実現できる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の本発明は、
走行車体(2)の前側に設けられ、前記走行車体(2)を操舵する操舵部材(34)と、
前記操舵部材(34)の操作により回動し、前記走行車体(2)の車輪(10)の方向を制御する操舵アーム(60)と、
前記走行車体(2)の後側に設けられ、昇降油圧シリンダ(46)によって昇降させられる、圃場に苗を植え付ける植え付け装置(52)と、
前記植え付け装置(52)の昇降、植え付けを設定するための植え付け昇降レバー(33)と、
前記昇降レバー(33)の操作に従って、前記昇降油圧シリンダ(46)を制御する中間機構(74、77、461)と、
を備えた苗移植機において、
前記操舵アーム(60)に連結された連繋部材(61、62、63、64(64a、64b、64c)、71)と、
前記連繋部材(61、62、63、64(64a、64b、64c)、71)に連結された旋回切替操作具(73)とを備え、
前記旋回切替操作具(73)は、
前記操舵部材(34)が所定量以上回動すると、前記中間機構(74、77、461)を機械的に駆動することによって、前記植え付け昇降レバー(33)を上昇位置に作動させるとともに、前記昇降油圧シリンダ(46)を駆動して前記植え付け装置(52)を上昇させる構成と、
前記操舵部材(34)が所定量以上回動しても、前記中間機構(74、77、461)を駆動させない構成に切り替え自在としたことを特徴とする苗移植機である。
【0010】
上記構成によって、旋回時に植え付け装置を上昇させる操作が省略されるので、作業者の労力が軽減される。しかも、電子的な制御回路を必要としないので、上記機能を安価に実現することが出来る。
【0011】
また、上記植え付け装置の自動的な上昇が機能しない状態に変更することが出来るので、変形田等で作業を行う際に自動的に植え付け装置が上昇することを防止でき、適応性が向上する。
【0012】
請求項2の本発明は、
前記中間機構(74、77、461)は、
前記植え付け昇降レバー(33)に連結されて一定方向に付勢される切替カム(74)と、
前記切替カム(74)の各溝(751a、b、c)に付勢された状態で嵌り込むことが出来る位置決めローラ(77)と、
前記切替カム(74)の位置に応じて切り替わり、前記昇降油圧シリンダ(46)への油路を切り換える切替バルブ(461)で構成し、
前記旋回切替操作具(73)は、前記操舵部材(34)が所定量以上回動すると、前記位置決めローラ(77)を前記溝(751)から外すことによって、前記切替カム(74)を前記一定方向に回動させ、その一定方向の回動によって、前記切替バルブ(461)を前記昇降油圧シリンダ(46)を上昇駆動させる方に切り替えさせるとともに、
前記位置決めローラ(77)に対して連結した状態と連結していない状態を選択可能に構成したことを特徴とする、請求項1記載の苗移植機である。
【0013】
上記構成によって、旋回時に植え付け装置を自動的に上下動させる機構を、より安価に実現出来る。
【0014】
請求項3の本発明は、
前記変速レバー(36)が後進状態に設定されると該変速レバー(36)の移動に連動して、前記位置決めローラ(77)を前記切替カム(74)の溝(751)から外して前記切替カム(74)を前記一定方向に回動させ、その一定方向の回動によって前記切替バルブ(461)を前記昇降油圧シリンダ(46)を上昇駆動させる方に切り替える後進時昇降入切レバー(82)を前記変速レバー(36)と前記位置決めローラ(77)に連結して設け、
該後進時昇降入切レバー(82)の配置位置を変更可能に構成することによって、前記変速レバー(36)の移動に連動する状態と連動しない状態に切り替えられる構成とし、
前記旋回切替操作具(73)は、前記操舵部材(34)の回動を、前記位置決めローラ(77)に連結された位置決めアーム(76)へ伝達して前記中間機構を駆動する状態と、前記操舵部材(34)の回動を、前記位置決めアーム(76)へ伝達せずに前記中間機構を駆動しない状態に切り替える構成としたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機である。
【0015】
上記構成によって、後進時における植え付け装置の上昇連動機構が、位置決めローラ77という旋回時における植え付け装置の上昇連動機構と共通化されているので、構造が簡単になるというメリットがある。
【0016】
また、後進時の植え付け装置の自動上昇機能を行わないモードも選択出来るので、変形田等で作業を行う際に自動的に植え付け装置が上昇することを防止でき、適応性が向上する。
【0017】
請求項4の本発明は、
前記走行車体(2)の後輪(11)の回転数を計測する回転センサ(182)と、
前記植え付け昇降レバー(33)の位置を認識して出力する位置検出部材(90、93)と、
前記植え付け昇降レバー(33)を移動させる移動手段(99〜105)を備え、
前記回転センサ(182)からの出力と、前記位置検出部材(90、93)からの出力に基づき、前記植え付け昇降レバー(33)が上昇位置に入ったときからの前記後輪(11)の累積回転数が所定の設定値に到達すると、前記移動手段(99〜105)を駆動させて、前記昇降レバー(33)を下降位置又は植え付け位置に移動させる制御回路(200)を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0018】
上記構成によって、旋回終了時に植え付け装置を自動的に下降又は植え付け作動させることが出来るので、旋回時の操作が簡略化されて、作業能率が向上する。
【0019】
請求項5の本発明は、
前記植え付け昇降レバー(33)と一体で回動する切替カム(74)と、
前記植え付け昇降レバー(33)を下降させる一方向モータ(99)と、
前記モータ(99)のモータアーム(103)および前記切替カム(74)を連結する駆動リンク(102、100、105)を備え、
前記モータ(99)によって前記植え付け昇降レバー(33)を下降位置又は植え付け位置に設定させるため前記切替カム(74)を回動させる際、前記駆動リンク(102、100、105)は、植え付け昇降レバー(33)の回動支点から離れる側に位置しながら前記モータ(99)が前記切替カム(74)を常に引きの力で回動する構成としたことを特徴とする請求項4記載の苗移植機である。
【0020】
上記構成によって、モータの駆動が常に引っ張る方向にのみ力を出すことのできる構成となるので、モータの出力負担を小さく出来るというメリットがある。
【0021】
また、植え付け昇降レバー(33)を下降位置または植え付け位置に設定すべく切替カム(74)が回動する際、駆動リンク(100,102,105)は植え付け昇降レバー(33)の回動支点から離れる方向に位置しているというメリットもある。
【0022】
請求項6の本発明は、
前記走行車体(2)の前記後輪(11)を支持する後輪ギヤケース(18)を上下回動可能に保持する後輪上下動支点軸(181)を備え、
前記回転センサ(182)は、前記後輪上下動支点軸(181)近くの伝動軸の回転数を検出するセンサであることを特徴とする請求項4記載の苗移植機である。
【0023】
上記構成によって、後輪が大きく回動しても後輪回転の検出部はほとんど回動しないので、回転数の結果が正確に測定される。
【0024】
請求項7の本発明は、
前記連繋部材(61、62、63、64(64a、64b、64c)、71)は、前記ピットマンアーム(60)から、前記走行車体内のミッションケース(12)及びフロントフレーム(70)の間を通して前記旋回切替操作具(73)に連結させたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0025】
上記構成によって、作業中に藁屑などの夾雑物が連繋部材に絡むことを防止出来、連繋部材が夾雑物により機能しなくなる、あるいは勝手に動いてしまうといった不都合が防止できる。
【0026】
また、絡みついた夾雑物を取り除く必要が無くなり、メンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の本発明によれば、旋回時において、植え付け装置を自動上昇させることが出来るとともに、それを安価に実現できる苗移植機を提供することが出来る。
【0028】
請求項2記載の本発明によれば、旋回時に植え付け装置を自動的に上下動させる機構を、より安価に実現出来る。
【0029】
請求項3記載の本発明によれば、後進時における植え付け装置の上昇連動機構が、位置決めローラという旋回時における植え付け装置の上昇連動機構と共通化されているので、構造が簡単になるというメリットがある。
【0030】
また、後進時の植え付け装置の自動上昇機能を行わないモードも選択出来るので、変形田等で作業を行う際に自動的に植え付け装置が上昇することを防止でき、適応性が向上する。
【0031】
請求項4記載の本発明によれば、旋回終了時に植え付け装置を自動的に下降又は植え付け作動させることが出来るので、旋回時の操作が簡略化されて、作業能率が向上する。
【0032】
請求項5記載の本発明によれば、モータの駆動が常に引っ張る方向にのみ力を出すことのできる構成となるので、モータの出力負担を小さく出来るというメリットがある。
【0033】
請求項6記載の本発明によれば、後輪が大きく回動しても後輪回転の検出部はほとんど回動しないので、回転数の結果が正確に測定される。
【0034】
請求項7記載の本発明によれば、作業中に藁屑などの夾雑物が連繋部材に絡むことを防止出来、連繋部材が夾雑物により機能しなくなる、あるいは勝手に動いてしまうといった不都合が防止できる。また、絡みついた夾雑物を取り除く必要が無くなり、メンテナンス性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかる実施の形態における苗移植機の側面図
【図2】同苗移植機の平面図
【図3】同苗移植機の前方部の拡大側面図
【図4】同苗移植機のピットマンアームの平面図
【図5】同苗移植機の拡大正面図
【図6】同苗移植機の切替カム付近を示す側面図
【図7】同切替カム付近を示す正面図
【図8】同切替カム付近を示す斜視図
【図9】同苗移植機の植え付け昇降レバーと切替カムとの関係を示す側面図
【図10】同切替カムの側面図
【図11】同苗移植機の制御回路の説明図
【図12】同苗移植機の植え付け装置を除く側面図
【図13】同苗移植機の後進の際の、植え付け装置の固定(停止)状態を示す切替カムを中心とする側面図
【図14】同苗移植機の後進の際の、植え付け装置の下降状態を示す切替カムを中心とする側面図
【図15】同苗移植機の後進の際の、植え付け装置の植え付け入り状態を示す切替カムを中心とする側面図
【図16】同苗移植機の変速レバーの後進の際の動きを示すための説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の実施の形態にかかる苗移植機について説明する。
【0037】
図1及び図2は本実施の形態にかかる苗移植機の側面図と平面図である。この苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して植え付け装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0038】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
【0039】
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、他方、そのメインフレーム15の後端左右中央部に水平に設けた後輪上下動支点軸181を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。
【0040】
尚、左右後輪ギヤケース18,18には、ミッションケース12の後壁から突出して設けた左右後輪ギヤケース18,18に連結した左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
【0041】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。
【0042】
また、ミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付伝動軸26によって植え付け装置52へ伝動される。尚、施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
【0043】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する操舵部材34が設けられている。なお35はハンドシャフトである。このフロントカバー32内には、リザーバタンク16を設け、前記HST23とパイプ19で連結して高い位置からオイルをHST23に供給するようにしている。
【0044】
なお、操舵部材34の右側には、植え付け装置52の昇降を設定するための植え付け昇降レバー33が設けられている。
【0045】
また、操舵部材34の左側には、走行車体2の前進、後進、速度などを設定する変速レバー36が設けられている。
【0046】
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ37になっている。
【0047】
フロアステップ37の左右前部には複数の貫通孔が形成されており、座席31に着座して機体を操縦する操縦者が左右前輪10,10を見通せることができて操縦が容易な構成となっていると共に、該ステップ37を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。
【0048】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、植え付け装置52に回転自在に支承された連結軸が挿入連結され、連結軸を中心として植え付け装置52がローリング自在に連結されている。
【0049】
メインフレーム15に基部を回動自在に枢支した昇降油圧シリンダ46の先端を上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部に連結して設けており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、植え付け装置52がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0050】
なお、28,28は左右補助ステップであって、作業者が機体に乗り降りする時に足を載せるステップである。
【0051】
次に、図3は、本実施の形態の苗移植機の前方部の拡大側面図であり、図5は同苗移植機の拡大正面図である。また、図4はピットマンアームの平面図である。ここにピットマンアームは本発明の操舵アームに対応する。
【0052】
操舵部材34の操舵を受けて前輪10、10を回動させるT字型のピットマンアーム60が走行車体2の前方底側に設けられている。すなわち、操舵部材34の回転に応じて、操舵部材シャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、あるいはパワステ機構を介して、T字型のピットマンアーム60が回動する。60bはその回動軸である。
【0053】
このピットマンアーム60のT字型の2つの先端部60a、60aには、2本のタイロッドが回動可能に取り付けられ、それぞれのタイロッドは左右の前輪ファイナルケース13,13に取り付けられているナックルアームに連結されている(図示省略)。
【0054】
これによって、操舵部材34を操舵することによって、右及び左の前輪10を左右に走行操作できるようになっている。
【0055】
他方、このピットマンアーム60は上述したように左右線対称のT字型をしており、左右両先端部60a、60aの中間位置に、すなわち、左右線対称の中心線上に、円柱状ピン61が立設している。その円柱状ピン61の上端には前方方向に向かって水平にロッド62が回動自在に取り付けられている。さらに、このロッド62の先端62aには、その側面に連結ピン63が固定され、さらに、その連結ピン63の端部には、アーム64(64a、64b、64c)が取り付けられている。このアーム64(64a、64b、64c)は、上方に向かう部分64aと、水平に横に伸びる部分64bと、さらにそこから上方に伸びる部分64cとで構成されている。このように、ロッド62はピットマンアーム60の中心線上に位置しているので、右旋回でも左旋回でも同量の引っ張り力が出るという効果を奏する。
【0056】
このアーム64の前側には、走行車体2のフロントフレーム70が配置されており、またそのアーム64の後側には、走行車体2のミッションケース12が配置されている。従って、アーム64は、フロントフレーム70と、ミッションケース12との間に設置されていることになる。そのため、作業中に藁屑などの夾雑物がこれらアーム64に絡むことを防止出来、アーム64が夾雑物により機能しなくなる、あるいは勝手に動いてしまうといった不都合が防止できる。また、絡みついた夾雑物を取り除く必要が無くなり、メンテナンス性が向上する。
【0057】
さらに、アーム64の上方部分64cの上端64c1には、ケーブル71が回動自在に取り付けられている。
【0058】
なお、図3、図5において、72は上述したケーブル71と連結したケーブル端部である。また、このケーブル端部72は旋回切替操舵具73に回動可能に連結されている。また、74は切替カムであり、75はその切替カム74の位置決め溝であり、76はバックリフトアームであり、77は位置決めローラであり、78は切替カム74を前方(図面上右方向)へ付勢するスプリングであり、79は後進の際に切替カム74を駆動させるモータである。
【0059】
なお、このバックリフトアーム76は本発明の位置決めアームの一例である。次にそれらの部品の詳細を説明する。
【0060】
上述した、円柱状ピン61、ロッド62、連結ピン63、アーム64(64a、64b、64c)、ケーブル71などで、本発明の連繋部材が構成されている。
【0061】
図6は本実施の形態の苗移植機の切替カム付近を示す側面図、図7は同切替カム付近を示す正面図、図8は同切替カム付近を示す斜視図である。なお、図8は部材の配置関係を理解しやすくするために描かれた図であって、寸法、配置、形状など誇張して描いた模式図である。
【0062】
植え付け装置52の昇降を設定するための植え付け昇降レバー33の下端33aは、ブラケット81を介して、軸80に回動可能に取り付けられているとともに、このブラケット81には切替カム74の上端が固定されている。従って、植え付け昇降レバー33を移動させることによって、切替カム74を回動出来るようになっている。また、切替カム74は上述したように前方方向に常時スプリング78によって付勢されている(図8上、矢印A方向)
この切替カム74は中央に横長形状の窓75が穿設されている。この窓75の上側端縁には4個の溝751が並んで形成されている。この窓75には、水平方向に配置された位置決めローラ77の先端が挿入されている。
【0063】
この位置決めローラ77は常時上方方向にスプリングで付勢されており、4個の溝751のいずれかに半分程度嵌められるが、後述するような色々な力によってスプリングに対抗して下方方向へ移動しうるようになっている。この位置決めローラ77は水平方向に配置されているが、切替カム74の内側(図8上では切替カム74の向こう側)の部分には先ず、バックリフトアーム76が固定されている。さらに、その内側にはバックリフト入り切りレバー82が回動可能に取り付けられている。ここに、このバックリフト入り切りレバー82は本発明の後進時昇降入切レバーに対応する。
【0064】
さらに、切替カム74とバックリフトアーム76との間の隙間には、旋回切替操作具73が配置されている。そして、この旋回切替操作具73と、前記バックリフトアーム76は各後端部がそれぞれ共通の支持軸79に回動自在に連結されている。ここで同一の支持軸79で旋回切替操舵具73とバックリフトアーム76が回動支持されているので、構造が簡単になるという効果がある。
【0065】
この旋回切替操舵具73の前端には、ピン721を介して、上述したとおり、ケーブル71と連結したケーブル端部72が回動可能に連結されている。従って、ピットマンアーム60の動きによって旋回切替操舵部73が移動するようになっている。さらに、この旋回切替操舵部73の中央位置には孔732が開けられ、その孔にロックピン731が通常嵌め込まれている。このロックピン731はバックリフトアーム76に固定されている。従って、通常は、旋回切替操舵部73の移動に従って、バックリフトアーム76も移動するようになっている。
【0066】
そして、そのバックリフトアーム76は位置決めローラ77に固定されているので、バックリフトアーム76の移動に従って、位置決めローラ77も上下に移動することになっている。もちろん、この旋回切替操舵部73は手動によって左右方向(紙面に対して垂直方向)に移動出来、任意にロックピン731から外すことが出来るようになっている。
【0067】
この位置決めローラ77が下方へ移動すると、溝751から外れるので、切替カム74は矢印A方向に回動するようになっている。
【0068】
他方、バックリフト入り切りレバー82には、逆L字状の切り欠き孔84が穿設されている。すなわち、縦長部分と横長部分とでこの切り欠き孔84は構成されている。その切り欠き孔84には水平方向に配置されたバー83の先端が挿入されている。このバー83は、変速レバー36が後進に設定されたとき、ワイヤー、ロッドなどを介して下方向に移動するようになっている。
【0069】
すなわち、後述するように(図16参照)、変速レバー36が後進に設定されると、その変速レバー36の移動に応じて回動するロッド361が引き上げられ、ケーブル362を通じて、バー83が下降する機構になっている。
【0070】
従って、このバー83がL字型切り欠き孔84の横長部分に位置している場合は、バー83が下方向に移動することによって、バックリフト入り切りレバー82は押されて下方向に移動する。上述したように、このバックリフト入り切りレバー82は位置決めローラ77に連結されているので、位置決めローラ77は下方に移動することになる。これに対して、このバー83がL字型切り欠き孔84の縦長部分に位置している場合は、バー83が下方向に移動しても、縦長部分を移動するに止まるので、バックリフト入り切りレバー82を押し下げる力は働かず、位置決めローラ77も下方へ移動することにならない。
【0071】
さらに、バックリフト入り切りレバー82は位置決めローラ77に対して回動可能に連結されているので、作業者が手で回動して適宜位置決め(前方へ引き出すか、後方へ押し込むか)することによって、上述した、後進の際、バックリフト入り切りレバー82を、そして、位置決めローラ77を自動的に下方へ押し下げるモードと、押し下げないモードを任意に選択できるようになっている。なお、このバックリフト入り切りレバー82より、上述した旋回切替操作具73の方が前方へ突出しているので、旋回切替操作具73の方が扱い易くなっている。その結果、バックリフト入り切りレバー82の入り切り頻度の方が旋回切替操作具73の切替頻度より、通常少ないので、作業者にとって都合がよい。
【0072】
次に、図9は植え付け昇降レバー33と切替カム74との関係を示す側面図であり、図10は切替カム74の側面図である。以下に、図9と図10を用いて、植え付け昇降レバー33と切替カム74との関連を説明する。
【0073】
植え付け昇降レバー33はその位置によって、手前から、「上昇」、「停止」、「下降」、「植え付け」の各モードを切替設定出来るようになっている。他方、切替カム74の第1〜第4溝751a、751b、751c、751dは、それぞれ「上昇」、「停止」、「下降」、「植え付け」に対応している。すなわち、「上昇」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると、切替カム74は前方へ移動し、位置決めローラ77は相対的に後退して第1溝751aに収まる。また、「停止」の位置に植え付け昇降レバー33を設定すると、切替カム74は少し後に移動し、位置決めローラ77は第2溝751bに収まる。また、「下降」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると(図9の状態)、切替カム74はさらに少し後に移動し、位置決めローラ77は第3溝751cに収まる。また、「植え付け」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると、切替カム74はさらに少し後に移動し、位置決めローラ77は第4溝751dに収まる(図10の状態)。
【0074】
このようにして、植え付け昇降レバー33を操作することによって、切替カム74を4種類の位置に移動させることが出来る。
【0075】
この切替カム74の移動は、ワイヤーやロッド、アームなどを介して、植え付け装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り換える切替バルブ461に連動している。その結果、その連動によって、切替カム74の移動によって、植え付け装置52の昇降、停止、下降、植え付けがそれぞれ制御されるようになっている。
【0076】
なお、これら位置決めローラ77、切替カム74、切替バルブ461などで、本発明の中間機構が構成されている。
【0077】
次に、図6に示すように、走行車体2の、切替カム74の後方の付近には、本発明の移動手段の一例としてのモータ99などが配設されている。このモータ99は、走行車体2が圃場の端に達して旋回走行に移り、その旋回に伴って後輪が回転する際、その後輪が所定数回転した時点で、植え付け装置52を自動的に下降させるための手段である。
【0078】
すなわち、図11に示すように、モータ99は制御回路200からの指示に基づき、支持軸101を時計方向に回動させる手段である。この支持軸101にはモータアーム103が固定されている。従って、モータアーム103も時計回り方向に回動する。このモータアーム103の先端にはピン102が立設している。
【0079】
他方、切替カム74の後方より位置にはピン105が立設している。このピン105には回動可能に、植え付けアーム100が連結されている。さらに、この植え付けアーム100にはその長手方向に長孔104が開設されている。この長孔104に、上述したモータアーム103のピン102が回動可能且つ摺動可能に嵌め合わされている。
【0080】
これらの、ピン102、植え付けアーム100、ピン105などで、本発明の駆動リンクが構成されている。
【0081】
さらに、切替カム74の後方下端には、カム74の位置を検出するために、三角形のプレート90が固定されている。このプレート90の頂点付近にはピン91が固定されている。他方、走行車体2の、上述したモータ99などの下方には、ポテンショメータ93が設けられている。このポテンショメータ93は、その軸に固定された、長孔94が開設されたメータアーム92を有している。このメータアーム92の回動角度が検出されるようになっている。そして、長孔94に上述したプレート90のピン91が回動可能且つ摺動可能に嵌め合わされている。従って、切替カム74の位置に応じてプレート90とピン91が移動し、その結果、メータアーム92も対応して回動する。これによってポテンショメータ93が、切替カム74の位置を精密に検出することが出来るようになっている。なお、切替カム74の移動に応じて移動するピン91の可動範囲よりも長く、長孔94が開設されていることによって、誤検知を防止できる。
【0082】
なお、プレート90、ポテンショメータ93などで、本発明の位置検出部材が構成されている。
【0083】
図12は、本実施の形態の苗移植機の側面図である。上述したように、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、他方、そのメインフレーム15の後端左右中央部に水平に設けた後輪上下動支点軸181を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。18aは上述した後輪伝動軸である。
【0084】
ここに、後輪上下動支点軸181に隣接して後輪11の回転数を検出する回転センサ182が設けられている。このような構造によって、後輪が回動しても検出された回転数は安定する。
【0085】
図11に示すように、制御回路200は、これらのポテンショメータ93と、回転センサ181からの出力信号を利用して、モータ99を駆動制御している、コンピュータである。
【0086】
次に、本実施の形態にかかる苗移植装置の動作を説明する。
A: 旋回開始から上昇
作業者は、走行車体2を変速レバー36を前進に入れて(図16参照)圃場を走行させつつ、植え付け装置52を下降させた状態で苗を圃場に植え付けていく。この作業状態では植え付け昇降レバー33は図9に示すように、「下降」の位置に設定されている。従って、この植え付け昇降レバー33に連結されている切替カム74は図9のような位置、すなわち、位置決めローラ77が溝751cに入った状態の位置になっている。
【0087】
圃場の端に到達すると、操舵部材34を回動させる。その操舵部材34の回動に伴って、操舵部材シャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、T字型のピットマンアーム60が、回動軸60bを中心に回動する。
【0088】
そのピットマンアーム60の回動によって、そのピットマンアーム60のT字型の2つの先端部60a、60aが回動する。その結果、その先端部60a、60aに回動可能に取り付けられている2本のタイロッドが移動し、それぞれのタイロッドが取り付けられている、左右の前輪ファイナルケース13,13のナックルアームが回動する。
【0089】
このように、操舵部材34を操舵することによって、右及び左の前輪10を回動させ、走行車体2の旋回を開始する。
【0090】
このとき、ピットマンアーム60の回動に伴って、円柱状ピン61に回動可能に取り付けられている、水平方向のロッド62も回動し移動する(図4参照)。その結果、ロッド62の先端62aが移動するので、その側面に固定された連結ピン63も、さらに、その連結ピン63の端部に取り付けられたアーム64(64a、64b、64c)も引っ張られる方向に移動する(図13〜図15参照)。
【0091】
このアーム64(64a、64b、64c)が移動すると、アーム64の上方部分64cの上端64c1に連結されているケーブル71が引っ張られる。
【0092】
その結果、ケーブル71のケーブル端部72(図6参照)が下方に引っ張られ、そのケーブル端部72が連結されている旋回切替操舵部73が下方に移動する。
【0093】
ここで、旋回切替操舵部73が自動切り替えモードに選択されていたとする。すなわち、旋回切替操舵部73の孔732に、バックリフトアーム76に固定されたロックピン731が嵌め込まれているとする(作業者が手動で、この旋回切替操舵部73を左右に動かし、孔732にロックピン731を入れたり、外したりする)。
【0094】
そのような場合、旋回切替操舵部73が下方に移動すると、ロックピン731を介して、バックリフトアーム76も下方に移動する。バックリフトアーム76が下方に移動すると、バックリフトアーム76に固定されている位置決めローラ77も下方に移動する。その結果、位置決めローラ77が、それまで嵌め込まれていた切替カム74の溝751cから外れる。
【0095】
他方、切替カム74はスプリング78(図3参照)によって、常時前方(矢印A方向)へ付勢されているので、位置決めローラ77が切替カム溝751cから外れると、自由に移動出来るようになって、切替カム74は一気に軸80を中心に反時計方向に回動する。その結果、植え付け昇降レバー33は「上昇」位置まで移動する(図9参照)。
【0096】
その結果、切替カム74の回動に伴い、ワイヤーやロッド、アームなどを介して、植え付け装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り換える切替バルブ461が「上昇」側へ切り換わり、植え付け装置52が上方へ移動する。
【0097】
このようにして、作業者が圃場の端で操舵部材34を切ると、自動的に植え付け装置52が上昇する。これによって、作業者が一々植え付け昇降レバー33を操作しなくてもよくなる。
【0098】
なお、作業者が旋回切替操舵部73を手動で左右に動かし、孔732からロックピン731を外していた場合は、操舵部材34を切っても、旋回切替操舵部73、バックリフトアーム76、位置決めローラ77は下方に移動することはなく、当然に切替カム74が「上昇」位置に移動することも無い。
【0099】
このように、本実施の形態の旋回切替操舵部73は、操舵部材34と植え付け装置52の上昇との自動的連動を任意に選択出来るようになっている。
B: 旋回しながら下降開始
次に、さらに走行車体2を旋回させていった場合、植え付け装置52を自動的に下降させる。すなわち、図12に示すように、センサ182は後輪11の回転数を検出しているので、その検出された回転数信号を入力した制御回路200は、予め設定されている回転数に達すると、モータ99に駆動信号を出力する。
【0100】
モータ99はその駆動信号を受けて、図13、図14、図15に示すように、切替カム74を移動させる。すなわち、旋回中は植え付け装置52は上昇位置に存在しているので、植え付け昇降レバー33は「上昇」位置にあり、また、位置決めローラ77は切替カム溝751aに入った状態となっている。そこで、モータ99が支持軸101を時計回り方向に回動させる。それによって、モータアーム103も時計回り方向に回動する。その結果、モータアーム103に立設しているピン102が、切替カム74に連結されている植え付けアーム100を後方(図面上左へ)引っ張るので、切替カム74は時計回り方向に回動する。なお、位置決めローラ77はバネによって上方へ付勢されているが、このモータ99による回動力によって、切替カム74が強制的に回動して位置決めローラ77は切替カム溝を順次乗り越えていく。それにともない、図14のように、「下降」位置まで、切替カム74と植え付け昇降レバー33が回動する。
【0101】
モータ99はさらに、支持軸101を回動させるので、最終的には図13の「植え付け」状態となり、植え付け装置52に設けられた植え付け爪521が回転し始め、苗の植え付けが始まる。
【0102】
なお、以上のように、このモータ99は動作する際、切替カム74を引っ張る方向に力を発揮するので、モータ99に掛かる負荷は小さくて済むというメリットがある。モータは通常押す方向に力を出す場合の方が高価なモータを使う必要があるので、本実施の形態のモータとしては安価なものを用いることが出来る。
【0103】
また、このようなモータ99の駆動において、切替カム74の位置を正確に測りながら制御するため、次に示すようにして、正確に切替カム74の位置を検出し制御を行っている。すなわち、ポテンショメータ93がその軸に固定されたメータアーム92の位置を測定する。このメータアーム92の回動位置は、切替カム74に固定されたプレート90の位置、つまり、プレート90の頂点に固定されたピン91の位置に対応しているので、結果的に切替カム74の位置を検出することが出来る。
【0104】
制御回路200は、これらのポテンショメータ93からの信号も利用して、モータ99をより正確に駆動制御する。
C: 後進に切り換えた場合の上昇
図16は、変速レバー36の略示平面図と、変速レバーとバー83の関係を示す説明図である。図16に示すように、変速レバー36を後進(バック)に入れると、その変速レバー36の移動に応じてロッド361が回動して引き上げられ、ケーブル362を通じて、バー83が下降する。
【0105】
図6、図8に示すように、今、バックリフト入り切りレバー82が前方(図面上右方向)側に手動で設定されているとする。つまり、逆L字状切り欠き孔84の縦長部分の方にバー83が位置しているとする。そのような状態で、バー83が下降すると、バー83はその縦長部分の隙間を移動するに止まり、バックリフト入り切りレバー82には何の作用も及ぼさず、切替カム74もそれまでの状態を保持する。
【0106】
これに対して、今、バックリフト入り切りレバー82が後方(図面上左方向)側に手動で設定されているとする。つまり、逆L字状切り欠き孔84の横長部分の方にバー83が位置しているとする。そのような状態で、バー83が下降すると、バー83はその横長部分の下側縁に直ぐに当接し、バックリフト入り切りレバー82を下方に押し下げ始める。その結果、バックリフト入り切りレバー82は位置決めローラ77に連結されているので、位置決めローラ77が下降する。
【0107】
位置決めローラ77が下降すると、旋回切替操舵部73に関して上述したように、位置決めローラ77が、それまで嵌め込まれていた切替カム74の溝から外れる。他方、切替カム74はスプリング78(図3参照)によって、常時前方(矢印A方向)へ付勢されているので、位置決めローラ77が切替カム溝から外れると、自由に移動出来るようになって、切替カム74は一気に軸80を中心に反時計方向に回動する。その結果、植え付け昇降レバー33は「上昇」位置まで移動する(図9参照)。その結果、切替カム74の回動に伴い、ワイヤーやロッド、アームなどを介して、植え付け装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り換える切替バルブ461が「上昇」側へ切り換わり、植え付け装置52が上方へ移動する。
【0108】
このように、バックリフト入り切りレバー82が後方(図面上左方向)側に手動で設定されている場合は、作業者が後進(バック)に変速レバー36を入れると、自動的に、植え付け装置52は上昇位置に移動し、安全が確保される。
【0109】
また、上述したように、後進時における植え付け装置の上昇連動機構が、位置決めローラ77という、旋回時における植え付け装置の上昇連動機構と共通化されているので、構造が簡単になるというメリットがある。
【0110】
なお、本発明の中間機構としては本実施の形態に限らず他の機構でも機械構造であればかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、旋回時において、植え付け装置を自動上昇させることが出来るとともに、それを安価に実現できる苗移植機を提供することが出来、苗移植機として有用である。
【符号の説明】
【0112】
1 苗移植機
2 走行車体
3 昇降リンク装置
10 前輪
11 後輪
12 ミッションケース
15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース
33 植え付け昇降レバー
34 操舵部材
36 変速レバー
46 昇降油圧シリンダ
52 植え付け装置
60 ピットマンアーム
62 ロッド
64 アーム
70 フロントフレーム
73 旋回切替操作具
74 切替カム
76 バックリフトアーム
77 位置決めローラ
79 支持軸
80 軸
82 バックリフト入り切りレバー
83 バー
99〜105 モータなどの移動手段
181 後輪上下動支点軸
182 回転センサ
200 制御回路
461 切替バルブ
741 ピン
751 溝






【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の前側に設けられ、前記走行車体(2)を操舵する操舵部材(34)と、
前記操舵部材(34)の操作により回動し、前記走行車体(2)の車輪(10)の方向を制御する操舵アーム(60)と、
前記走行車体(2)の後側に設けられ、昇降油圧シリンダ(46)によって昇降させられる、圃場に苗を植え付ける植え付け装置(52)と、
前記植え付け装置(52)の昇降、植え付けを設定するための植え付け昇降レバー(33)と、
前記昇降レバー(33)の操作に従って、前記昇降油圧シリンダ(46)を制御する中間機構(74、77、461)と、
を備えた苗移植機において、
前記操舵アーム(60)に連結された連繋部材(61、62、63、64(64a、64b、64c)、71)と、
前記連繋部材(61、62、63、64(64a、64b、64c)、71)に連結された旋回切替操作具(73)とを備え、
前記旋回切替操作具(73)は、
前記操舵部材(34)が所定量以上回動すると、前記中間機構(74、77、461)を機械的に駆動することによって、前記植え付け昇降レバー(33)を上昇位置に作動させるとともに、前記昇降油圧シリンダ(46)を駆動して前記植え付け装置(52)を上昇させる構成と、
前記操舵部材(34)が所定量以上回動しても、前記中間機構(74、77、461)を駆動させない構成に切り替え自在としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記中間機構(74、77、461)は、
前記植え付け昇降レバー(33)に連結されて一定方向に付勢される切替カム(74)と、
前記切替カム(74)の各溝(751a、b、c)に付勢された状態で嵌り込むことが出来る位置決めローラ(77)と、
前記切替カム(74)の位置に応じて切り替わり、前記昇降油圧シリンダ(46)への油路を切り換える切替バルブ(461)で構成し、
前記旋回切替操作具(73)は、前記操舵部材(34)が所定量以上回動すると、前記位置決めローラ(77)を前記溝(751)から外すことによって、前記切替カム(74)を前記一定方向に回動させ、その一定方向の回動によって、前記切替バルブ(461)を前記昇降油圧シリンダ(46)を上昇駆動させる方に切り替えさせるとともに、
前記位置決めローラ(77)に対して連結した状態と連結していない状態を選択可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記変速レバー(36)が後進状態に設定されると該変速レバー(36)の移動に連動して、前記位置決めローラ(77)を前記切替カム(74)の溝(751)から外して前記切替カム(74)を前記一定方向に回動させ、その一定方向の回動によって前記切替バルブ(461)を前記昇降油圧シリンダ(46)を上昇駆動させる方に切り替える後進時昇降入切レバー(82)を前記変速レバー(36)と前記位置決めローラ(77)に連結して設け、
該後進時昇降入切レバー(82)の配置位置を変更可能に構成することによって、前記変速レバー(36)の移動に連動する状態と連動しない状態に切り替えられる構成とし、
前記旋回切替操作具(73)は、前記操舵部材(34)の回動を、前記位置決めローラ(77)に連結された位置決めアーム(76)へ伝達して前記中間機構を駆動する状態と、前記操舵部材(34)の回動を、前記位置決めアーム(76)へ伝達せずに前記中間機構を駆動しない状態に切り替える構成としたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【請求項4】
前記走行車体(2)の後輪(11)の回転数を計測する回転センサ(182)と、
前記植え付け昇降レバー(33)の位置を認識して出力する位置検出部材(90、93)と、
前記植え付け昇降レバー(33)を移動させる移動手段(99〜105)を備え、
前記回転センサ(182)からの出力と、前記位置検出部材(90、93)からの出力に基づき、前記植え付け昇降レバー(33)が上昇位置に入ったときからの前記後輪(11)の累積回転数が所定の設定値に到達すると、前記移動手段(99〜105)を駆動させて、前記昇降レバー(33)を下降位置又は植え付け位置に移動させる制御回路(200)を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項5】
前記植え付け昇降レバー(33)と一体で回動する切替カム(74)と、
前記植え付け昇降レバー(33)を下降させる一方向モータ(99)と、
前記モータ(99)のモータアーム(103)および前記切替カム(74)を連結する駆動リンク(102、100、105)を備え、
前記モータ(99)によって前記植え付け昇降レバー(33)を下降位置又は植え付け位置に設定させるため前記切替カム(74)を回動させる際、前記駆動リンク(102、100、105)は、植え付け昇降レバー(33)の回動支点から離れる側に位置しながら前記モータ(99)が前記切替カム(74)を常に引きの力で回動する構成としたことを特徴とする請求項4記載の苗移植機。
【請求項6】
前記走行車体(2)の前記後輪(11)を支持する後輪ギヤケース(18)を上下回動可能に保持する後輪上下動支点軸(181)を備え、
前記回転センサ(182)は、前記後輪上下動支点軸(181)近くの伝動軸の回転数を検出するセンサであることを特徴とする請求項4記載の苗移植機。
【請求項7】
前記連繋部材(61、62、63、64(64a、64b、64c)、71)は、前記ピットマンアーム(60)から、前記走行車体内のミッションケース(12)及びフロントフレーム(70)の間を通して前記旋回切替操作具(73)に連結させたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−5385(P2012−5385A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142296(P2010−142296)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】