説明

茶水の製造方法及びそれにより収得された茶水

生茶葉の酵素を不活性化し、搾汁して茶汁を収得するステップと、前記ステップで収得した茶汁のイオンを除去して茶水を収得するステップとを含む茶水の製造方法が提供される。また、酵素が不活性化された生茶葉の茶汁からイオンを除去して得られた茶水が提供される。前記茶水では、皮膚刺激成分が低減されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶水を製造する方法及びそれにより製造された茶水に関する。
【背景技術】
【0002】
飲む用途の茶は、ツバキ科のカメリアシネンシス(Camellia sinensis)の芽や葉の中に存在する酸化酵素を不活性化し、水分を除去することによって得られる。茶は、紀元前から嗜好品として飲用されてきており、茶に含有されるカテキン類、アミノ酸、ビタミンC、β‐カロテン、食物繊維等、有効成分の有益かつ薬理的なメカニズムが次第に広く明らかにされている。特に、茶に含有されている成分による抗酸化作用、抗老化作用、抗癌作用、血中コレステロール低下作用、重金属解毒作用、虫歯予防及び口臭除去作用等の効果が立証され、それによって大きな注目を集めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、生茶葉の酵素を不活性化し、搾汁して茶汁を収得するステップ、及び前記ステップで収得した茶汁のイオンを除去して茶水(tea water)を収得するステップを含み、製造費用及びエネルギー消費が減少した、効率的かつ環境に優しい方法で、皮膚刺激の少ない、優れた茶水を製造する方法を提供しようとするものである。
【0004】
また、酵素が不活性化された生茶葉の茶汁からイオンを除去して得られた茶水であって、ヘキサノール、z‐3‐ヘキセノール、又はリナロオールといった成分が低減された、皮膚刺激の少ない茶水を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、生茶葉の酵素を不活性化し、搾汁して茶汁を収得するステップ、及び前記ステップで収得した茶汁のイオンを除去して茶水(tea water)を収得するステップを含む、茶水の製造方法を提供する。
【0006】
本発明は、酵素が不活性化された生茶葉の茶汁からイオンを除去して得られた茶水を提供する。
また、本発明は、前記茶水を含む化粧料組成物、食品組成物及び薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る茶水の製造方法は、生茶葉を利用するため、エネルギー消費量が少なく、捨てられる副産物を最小化して、製造費用を節減することができるだけでなく、環境保護に寄与することができる。そして、茶葉の加工過程を経ないため、より迅速かつ効率的な方法で茶水を製造することができる。
【0008】
また、本発明に係る茶水は、皮膚刺激成分が少なく、皮膚刺激の程度が低い。したがって、前記茶水を含む化粧料組成物及び薬学組成物は、皮膚刺激が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】茶水の製造方法を図式化して示したものである。
【図2】実施例1の茶水をガスクロマトグラフィーで定量分析したグラフである。
【図3】実施例2の茶水をガスクロマトグラフィーで定量分析したグラフである。
【図4】比較例2の茶水をガスクロマトグラフィーで定性分析したグラフである。
【図5】比較例3の茶水をガスクロマトグラフィーで定性分析したグラフである。
【図6】実施例1の茶水をガスクロマトグラフィーで定性分析したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
生茶葉の構成成分は、水分80%〜85%、繊維素10%〜15%、ポリフェノール2〜5%、その他1〜5%で構成されている。一般的に、化粧料組成物に配合される水の場合、水に溶けているイオンの種類や含量の少ないイオン精製水を使用することになるが、これは、イオンが多く含まれると、界面活性剤、乳化剤等を含む化粧料組成物の効果を妨害したり、安定性に影響を与えたりし得るためである。特に、時間が経つほど、粘性のある組成物の粘度を低くする特性がある。
【0011】
一般的に、加工された茶葉を煎じ出した液は、F、Cl、NO、PO、SO等のイオンを含有し、濃度は、それぞれ水100g当たり100〜3000μg、500〜2500μg、0〜200μg、200〜5000μg、50〜3000μg程度である。したがって、加工された茶葉を煎じ出した液には、前記のようなイオンが含有されているという点を勘案して、飲用に望ましい濃度とは関わりなく、最短の時間内で茶葉を水に煎じて、非常に薄い濃度としなければならない。しかしながら、この場合には、茶に含有された有益な成分が茶葉を煎じ出した液に含有されにくいことがある。
【0012】
本発明の茶水の製造方法は、従来の茶水の製造方法とは異なり、生茶葉の酵素を不活性化した後、搾汁し、前記のようなイオンを除去して、生葉に含まれた水分及び有益な成分を含む茶水を得ることができる。
【0013】
茶葉の加工は、最も単純に表現すれば、茶葉に含まれた水分を一定の速度で除去する工程であると言える。こうした茶葉加工工程において、茶葉に含まれた水分を除去するためには、相当なエネルギーが必要とされる。既に公知とされている茶水は、加工された茶を使用するものであるので、熱加工により多くのエネルギーを消費した茶葉を煎じ出すために、更に追加的なエネルギーと工程とを付加することになる。これは、高い製造費用が必要となるだけでなく、過度なエネルギー消費を引き起こすため、環境保護の面において肯定的ではない。また、加工された茶葉を煎じて残った固形分は廃棄する他にないため、追加的な排出物が生じることになる。
【0014】
本発明は、加工していない生茶葉を使用するため、熱加工により消費されるエネルギーが少ないのでエネルギー消費量が低く、ひいては環境保護に寄与することができる。また、本発明の茶水を製造して残る一次固形分は、一般的な飲用茶の製造工程に投入されてもよく、乾燥工程のみを追加適用すれば、一般の緑茶原料としても適する。したがって、本発明に係る茶水の製造方法は、エネルギー消費を減らし、捨てられる副産物を最小化するという環境に優しい製造方法であると言えよう。
【0015】
また、本発明の茶水の製造方法は、従来の追加的な溶解水を使用して茶葉から茶水を得る方法とは異なり、生茶葉の酵素を不活性化した後に搾汁し、イオンを除去して茶水を収得し、付加的にこれを熟成させるステップを含むということにその特徴がある。
【0016】
本明細書において、“茶水(tea water)”とは、広くは茶葉を基とするあらゆる液体を意味するものであり、具体的に、これには、加工前或いは加工後に茶葉を煎じた水、茶葉抽出物、茶葉を加熱して発生した蒸気を冷却した液、茶葉を蒸熱(steaming)した後に冷水やイオン水を添加して抽出した液等を挙げることができる。前記茶水は、茶葉に含まれた水分だけでなく、ヒトに有益な成分を含有する。
【0017】
以下において、本発明を詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、生茶葉の酵素を不活性化(失活)し、搾汁して茶汁を収得するステップと、前記ステップで収得した茶汁のイオンを除去して茶水を収得するステップとを含む茶水の製造方法を開示する。この茶水の製造方法は、図1の第1工程から第3工程までを含む。
【0018】
本発明の他の一実施形態は、前記茶水を収得するステップ以後に、収得した茶水を熟成するステップを含む茶水の製造方法を開示する。この茶水の製造方法は、図1の第1工程から第4工程までを含む。
【0019】
本発明の一実施形態において、“茶葉”は、カメリアシネンシス(Camellia sinensis)の芽や葉を意味するものであって、その品質又は種類とは関わりがない。具体的に、収穫時期による春茶、夏、秋茶のいずれも使用可能であり、用途に応じて遮光幕を被せて、葉緑素の量を増加させた玉露茶を使用することも可能であるが、これに限定されるものではない。本発明の一実施形態において、“生茶葉”は、加工されていない茶葉を意味する。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記茶汁を収得するステップ以前に、生茶葉は、前処理過程を経ていてもよいが、これは、一般的に、茶の木の葉を採葉して、異物を除去するために精製水で洗浄し、茶葉の表面に付着した水滴を脱水機を使用して除去する過程を含む。茶葉から発生する熱を相殺するために、低温(4〜10℃)で保管することが好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態の前記茶汁を収得するステップにおいて、生茶葉を蒸熱処理、加熱処理、又は高圧処理して生茶葉の酵素を不活性化する。本発明の他の一実施形態の前記茶汁を収得するステップにおいて、生茶葉を蒸熱処理して生茶葉の酵素を不活性化する。前記のように生茶葉を蒸熱処理する場合、蒸熱処理温度は100〜150℃であってよく、具体的には102〜121℃であってよく、より具体的には105〜112℃であってよい。前記蒸熱処理により茶葉の酵素が不活性化される。また、前記蒸熱処理を通じて植物の細胞組織を柔らかくして、以後における茶汁の収得率を高めることができる。
【0022】
本発明の一実施形態の酵素が不活性化された生茶葉を搾汁して茶汁を収得するステップにおいて、搾汁する方法は、圧搾効果を利用したギア式搾汁、プレス式搾汁、粉砕式搾汁及び酵素分解式搾汁からなる群から選択された一つ以上の方法であってよい。
【0023】
また、本発明の他の一実施形態において、前記茶汁を収得するステップ以降に、前記収得した茶汁は、網を通過するステップを更に経ていてもよい。かかるステップを通じて茶汁の残余固形分が除去される。本発明の一実施形態において、前記網のサイズは10〜400メッシュであってよい。本発明の他の一実施形態において、前記網のサイズは30〜200メッシュであってよい。本発明の他の一実施形態において、前記網のサイズは80〜120メッシュであってよい。
【0024】
本発明の一実施形態の前記茶水を収得するステップにおいて、茶汁を気化及び液化する方法又は浸透濾過方式によりイオンを除去する。これを通じ、化粧料組成物の効果を妨害したり安定性に影響を与えたりするイオンを茶汁から除去することができる。前記において、茶汁を気化及び液化する方法を詳細に説明すると、茶汁を気化するために加熱処理を行い、このとき、加圧状態で約100〜121℃の温度で行われてもよい。また、前記加熱処理は、常圧状態で約80〜100℃で行われてもよい。また、前記加熱処理は、減圧状態で約40〜80℃で行われてもよい。
【0025】
また、本発明の一実施形態において、茶汁のイオンを除去して茶水を収得するステップ以後に、前記ステップで収得した茶水を遠心分離、膜分離又は蒸留分離して好ましくない成分を分離及び除去するステップを更に経ていてもよい。本発明の他の一実施形態において、前記分離及び除去するステップは、収得した茶水に有機溶媒を一定量混合した後、蒸留により溶媒を選択的に除去して、嗜好性の低い成分や好ましくない成分を選別して分離及び除去すること含んでいてもよい。本発明の一実施形態において、前記有機溶媒は、エチルアルコールであってよい。前記において、エチルアルコールは、茶水の総重量を基準に、5〜40重量%であってよい。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記茶水を収得するステップ以後に、収得した茶水を熟成するステップを更に含んでいてもよい。かかる熟成を通じ、ヘキサノール、z‐3‐ヘキセノール又はリナロオールといった皮膚刺激成分を除去することができる。前記収得した茶水を熟成するステップにおいて、熟成は、0〜120℃で12〜24時間行われてもよい。本発明の他の一実施形態において、前記熟成は、茶水の水分が蒸発しない条件で、加圧状態及び80〜120℃で12〜24時間行われてもよい。本発明の他の一実施形態において、前記熟成は、常圧状態及び40〜80℃で12〜24時間行われてもよい。本発明の他の一実施形態において、前記熟成は、減圧状態及び4〜40℃で12〜24時間行われてもよい。
【0027】
本発明の一実施形態に係る茶水の製造方法において、茶水は、リナロオールの濃度が5μg/ml以下、ヘキサノールの濃度が0.2μg/ml以下、及びz‐3‐ヘキセノールの濃度が0.2μg/ml以下のもののうち少なくとも一つの条件を満たしていてもよい。本発明の他の一実施形態に係る茶水の製造方法において、茶水は、リナロオールの濃度が1μg/ml以下、ヘキサノールの濃度が0.1μg/ml以下、及びz‐3‐ヘキセノールの濃度が0.1μg/ml以下のもののうち少なくとも一つの条件を満たしていてもよい。本発明の他の一実施形態に係る茶水の製造方法において、茶水は、リナロオールの濃度が0.5μg/ml以下、ヘキサノールの濃度が0.02μg/ml以下、及びz‐3‐ヘキセノールの濃度が0.02μg/ml以下のもののうち少なくとも一つの条件を満たしていてもよい。本発明に係る茶水は、前記のように、皮膚刺激成分であるヘキサノール、z‐3‐ヘキセノール又はリナロオールを少なく含むので、皮膚刺激が少ない。
【0028】
本発明の一実施形態は、酵素が不活性化された生茶葉の茶汁からイオンを除去して得られた茶水を開示する。
本発明の一実施形態に係る茶水は、リナロオールの濃度が5μg/ml以下、ヘキサノールの濃度が0.2μg/ml以下、及びz‐3‐ヘキセノールの濃度が0.2μg/ml以下のもののうち少なくとも一つの条件を満たしていてもよい。本発明の他の一実施形態に係る茶水は、リナロオールの濃度が1μg/ml以下、ヘキサノールの濃度が0.1μg/ml以下、及びz‐3‐ヘキセノールの濃度が0.1μg/ml以下のもののうち少なくとも一つの条件を満たしていてもよい。本発明の他の一実施形態に係る茶水は、リナロオールの濃度が0.5μg/ml以下、ヘキサノールの濃度が0.02μg/ml以下、及びz‐3‐ヘキセノールの濃度が0.02μg/ml以下のものうち少なくとも一つの条件を満たしていてもよい。このように、本発明に係る茶水は、顕著に減少した皮膚刺激性成分を有するという特徴がある。また、前記茶水は、化粧料組成物に使用される規格に符合する。
【0029】
本発明の一実施形態は、前記酵素が不活性化された生茶葉の茶汁からイオンを除去して得られた茶水を含む化粧料組成物を開示する。具体的に、本発明に係る茶水は、化粧料組成物の基剤として使用されていてもよい。
【0030】
前記化粧料組成物は、化粧品学又は皮膚科学的に許容可能な媒質又は基剤を含有する。これは、局所適用に適するあらゆる剤形であって、例えば、溶液、ゲル、固体、混練無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、油相に水相を分散させて得たエマルジョン、マルチエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球、若しくはイオン型(リポソーム)及び非イオン型の小胞分散剤の形態で、又は、クリーム、スキンローション、パウダー、軟膏、スプレー、クレンザー、若しくはコンシールスティックの形態で提供されていてもよい。本発明に係る組成物はまた、泡沫(フォーム)の形態で、又は圧縮された推進剤を更に含有したエアゾール組成物の形態でも使用されてていてよい。これら組成物は、当該分野における通常の方法に従って製造されていてもよい。
【0031】
前記化粧料組成物は、前記した物質以外に、主効果を損傷させない範囲内で、好ましくは、主効果に相乗効果を与え得る他の成分を含有することも差し支えなく、本発明の有効成分以外に他の成分を、その他化粧料組成物の剤形や使用目的に応じて、当業者が適宜選定して配合していてもよい。
【0032】
例えば、前記化粧料組成物は、その効果を増加させるために、皮膚吸収促進物質を含んでいてもよい。また、本発明の化粧料組成物は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質及び海藻エキスからなる群から選択された物質を含んでいてもよい。さらに、本発明の化粧料組成物は、前記必須成分と併せて、必要に応じて、通常の化粧料組成物に配合される他の成分を含んでいてもよく、その例として、油脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水等を挙げることができる。本発明の化粧料組成物に含まれていてよい他の配合成分はこれらに限定されるものではなく、また、前記成分の配合量は、本発明の目的及び効果を損傷させない範囲内において可能である。
【0033】
前記化粧料組成物は、剤形は特に限定されず、目的とするところに応じて、剤形を適切に選択していてよい。たとえば、柔軟化粧水(スキンローション及びミルクローション)、栄養化粧水、エッセンス、栄養クリーム、マッサージクリーム、パウダー、リップスティック、メイクアップベース、ファンデーション、パッチ、噴霧剤、パック、ジェル、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、クレンザー、ボディローション、ボディクリーム、ボディオイル及びボディエッセンスからなる群から選択された一つ以上の剤形で製造していてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
前記茶水は、化粧料組成物の総重量を基準に、0.01〜100重量%含まれていてもよい。
本発明の一実施形態は、前記酵素が不活性化された生茶葉の茶汁からイオンを除去して得られた茶水を含む食品組成物を開示する。前記食品組成物は、その剤形は特に限定されず、固形物、ドリンクであってよい。前記茶水は、食品組成物全体の重量を基準に、0.01〜100重量%含まれていてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態は、前記酵素が不活性化された生茶葉の茶汁からイオンを除去して得られた茶水を含む薬学組成物を開示する。具体的に、前記茶水は、薬学組成物の基剤として使用されてもよい。
【0036】
本発明に係る組成物を医薬品に適用する場合には、常用される無機又は有機の担体を加えて、固体、半固体又は液状の形態で経口投与剤或いは非経口投与剤として製剤化していてもよい。本発明の組成物を常法に従って実施すれば、容易に製剤化することができ、界面活性剤、賦形剤、着色剤、香辛料、安定化剤、防腐剤、保存剤、水和剤、乳化促進剤、懸濁剤、浸透圧調整のための塩及び/又は緩衝剤、その他常用する補助剤を適当に使用していてもよい。
【0037】
前記経口投与のための製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、軟質及び硬質カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、液剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤等を挙げることができる。これら剤形は、有効成分以外に、希釈剤(例:ラクトース、デキストリン、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース又はグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアル酸及びそのマグネシウム若しくはカルシウム塩又はポリエチレングリコール)、又は結合剤(例:マグネシウムアルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドン)を含有していてもよい。場合に応じて、澱粉、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩といった崩解剤、吸収剤、着色剤、香味剤又は甘味剤等の薬剤学的添加剤を含有していてもよい。前記錠剤は、通常の混合、顆粒化又はコーティング方法により製造されていてもよい。
【0038】
また、前記非経口投与剤は、例えば、皮膚外用剤であってよく、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチ又はスプレー剤の剤形であってよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明に係る前記薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下等に投与されていてもよい。
また、前記有効成分の適用量は、治療を受ける対象者の年齢、性別、体重と、治療する特定疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路、処方者の判断に応じて変わるであろう。こうした因子に基づいた適用量の決定は、当業者の水準内にある。
【0040】
前記茶水は、薬学組成物全体の重量を基準に、0.01〜100重量%含まれていてもよい。
以下、実施例、比較例及び試験例を挙げつつ、本発明の構成及び効果についてより具体的に説明する。しかし、これら実施例、比較例及び試験例は、本発明の理解を助けるために例示の目的にのみ記載されたものであるに過ぎず、本発明の範囲が下記実施例、比較例及び試験例により制限されるものではない。
【実施例1】
【0041】
収穫されてから数時間以内の生茶葉2kgを100℃で発生する蒸気に2〜3分接触させて酵素を不活性化させ、2つのスクリューギア方式の搾汁機に投入して茶汁と茶固形分に分離した。前記茶汁を80メッシュ(mesh)の網に通過させて、その残余固形分を除去した。前記茶汁を減圧濃縮器に投入し、40〜80℃で蒸留して発生した蒸気を冷却し、茶水(tea water)を収得した。収得した茶水を、無菌状態のクリーンベンチにおいて0.2マイクロメートル除菌フィルターで殺菌包装して、実施例1の茶水を得た。
【実施例2】
【0042】
前記実施例1で収得した茶水を減圧濃縮器に入れて、28℃、40mmHg 10rpmの条件で24時間熟成した。得られた熟成茶水を無菌状態のクリーンベンチにおいて0.2マイクロメートル除菌フィルターで殺菌包装して、実施例2の茶水を得た。
【実施例3】
【0043】
収穫されてから数時間以内の生茶葉2kgを100℃で発生する蒸気に2〜3分接触させて酵素を不活性化させ、2つのスクリューギア方式の搾汁機に投入して茶汁と茶固形分に分離した。前記茶汁を80メッシュの網に通過させて、その残余固形分を除去した。前記茶汁を減圧濃縮器に投入し、40〜80℃で蒸留して発生した蒸気を冷却し、茶水を収得した。収得した茶水に、97%エチルアルコールを茶水の重量全体を基準に5重量%添加し、3分間混合した後、30〜50℃で減圧蒸留器によりエチルアルコールを蒸留分離した。アルコールが除去された茶水を、無菌状態のクリーンベンチにおいて0.2マイクロメートル除菌フィルターで殺菌包装して、実施例3の茶水を得た。
[比較例1]
収穫されてから数時間以内の生茶葉20gを液体窒素の入った乳鉢に浸漬して瞬間冷凍し、乳棒で微細にすりつぶして細胞をすべて破砕した。その後、200メッシュの網に通過させてから、スクリューギア方式の搾汁機で圧搾搾汁して、比較例1を得た。
[比較例2及び比較例3]
実施例1の茶水を製造する際に使用した生茶葉とほぼ同じ時期に収穫した茶葉を蒸熱、粗揉、揉念、中揉、精揉、乾燥の過程を通じて1次加工した茶葉20gを、70℃精製水に2分間浸漬した後、200メッシュの網で濾過して、比較例2を得た。前記1次加工した茶葉を加熱、篩分、切断、茎選別、混合の過程を通じて2次加工し、その加工した茶葉20gを70℃精製水に2分間浸漬した後、200メッシュの網で濾過して、比較例3を製造した。
[試験例1]収率評価
まず、生茶葉2kgをそのまま蒸熱処理せずにスクリューギア方式の搾汁機で搾汁してから遠心分離器で分離して、上澄み液を結果物として得た。また、実施例1の製造過程中、蒸熱処理した茶葉を搾汁して得た茶汁を遠心分離器で分離して、上澄み液を結果物として得た。前記2つの上澄み液の結果物と比較例1の製造過程において窒素冷凍粉砕した茶葉から搾汁して得た結果物の、生茶葉に対する収率を下記表1に示した。収率を求める式は、下記式1のとおりである。
[式1]
収率 =( 搾汁して得た液 / 生茶葉 )× 100
【0044】
【表1】

前記のとおり、蒸熱処理した茶葉からの収量が最も高く、窒素冷凍粉砕した茶葉からの収率が最も低かった。これは、蒸熱処理を通じて、植物の細胞組織を柔らかくした後に搾汁する場合、より多くの水分を分離し切ることができるためであると判断される。
[試験例2]組成成分の評価
実施例1、実施例2、比較例2及び比較例3の茶水について、固相マイクロ抽出(SPME)方式でガスクロマトグラフィー分析を行った。実施例1と実施例2との茶水を定量分析したガスクロマトグラムを、それぞれ図2と図3に示し、そのうち実施例1に対する結果は、下記表2に示した。
【0045】
【表2】

茶の主要成分のうち、感覚閾値(sensory threshold)が低く、人が即時に区別が可能な成分としては、ヘキサノール、z‐3‐ヘキセノール、リナロオールの3つを挙げることができるが、このうちリナロオールは、皮膚に直接触れたときにアレルギーを誘発する物質として知られている。前記から分かるとおり、実施例2の茶水は、実施例1の茶水に比べて低いリナロオール値を有する。
【0046】
実施例1から実施例3の茶水のガスクロマトグラフィー分析結果のうち、前記感覚閾値の低い3つの成分を中心に、下記の表3に示した。
【0047】
【表3】

実施例1に比べ実施例2において前記3つの成分が有意に減少し、特に、皮膚アレルギーを誘発し得るリナロールは約56%減少したことを確認した。したがって、熟成をした茶水が、そうでない茶水に比べて、皮膚アレルギー誘発の程度が低いということが分かった。実施例3の場合、低分子量のヘキサノールはエチルアルコールによる処理により多少減少したが、熟成時間がないため他の2つの物質については減少量が少なかった。
【0048】
一方、比較例2及び3の茶水を定性分析したガスクロマトグラムをそれぞれ図4及び図5に示し、前記実施例2及び3と実施例1とを比較して定性分析したガスクロマトグラムを図6に示した。図6のピークに対する成分名は、下記表4に示した。図4と図5を見ると、図6に存在しなかったピークが生じたが、これは、生茶葉固有の成分が変性したピラジン類の香ばしい香り成分のピークであるものと判断される。こうした成分は皮膚刺激の要因となるため、化粧料組成物及び薬学組成物に含まれる成分として不適合である。
【0049】
【表4】

[試験例3]基礎分析
実施例1〜3の茶水に対するpH、屈折率、比重、重金属含量、菌数等、基礎成分の分析を行い、その結果を下記表5に示した。
【0050】
【表5】

前記において確認したとおり、実施例1〜3は、化粧料組成物に使用することのできる規格を満たしている。
[試験例4]皮膚刺激安全性検査
平均年齢41.3歳(21歳〜59歳)の健康な成人男女40名(女性39名、男性1名)を対象に、実施例1及び実施例2の茶水について皮膚刺激試験を行った。ただし、乾癬(Psoriasis)、にきび(acne)、湿疹(eczema)、その他皮膚病等の保有者や、妊婦、授乳婦、又は避妊剤、抗ヒスタミン剤等を服用している者は、試験実施前に除外した。
【0051】
塗布量を20μl/チャンバー(IQ チャンバー)として、濃度100%の試験物質を含有するドレッシングで覆う形態のパッチ(patch)を背中の部位に24時間貼布し、48時間まで検査した。刺激が発現される程度に応じて点数化し、このとき、1未満は等級I(無刺激範囲)、3未満は等級II(軽刺激範囲)、5未満は等級III(中刺激範囲)、そして5以上は等級IV(強刺激範囲)に該当した。各等級は、CTFAガイドライン(1981)とフロシュ・クリグマン(Frosch & Kligman)(1979)の検査基準を変形した検査基準であり、その基準は、表6のとおりである。本試験の結果は、下記表7に示した。
【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

表7から分かるとおり、実施例2が実施例1に比べて皮膚刺激が少なかった。すなわち、熟成をした茶水が、そうでない茶水に比べ、皮膚刺激が少ないことを知ることができる。これは、前記において見てきたように、熟成をした茶水は、ヘキサノール、z‐3‐ヘキセノール、リナロオールといった皮膚刺激成分が少ないためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生茶葉の酵素を不活性化し、搾汁して茶汁を収得するステップと、
前記ステップで収得した茶汁のイオンを除去して茶水を収得するステップとを含む茶水の製造方法。
【請求項2】
前記茶汁を収得するステップにおいて、
生茶葉を蒸熱処理、加熱処理、又は高圧処理して、生茶葉の酵素が不活性化される、請求項1に記載の茶水の製造方法。
【請求項3】
前記茶水を収得するステップにおいて、
茶汁を気化及び液化処理する方法又は浸透ろ過方法により、茶汁からイオンが除去される、請求項1に記載の茶水の製造方法。
【請求項4】
前記茶水を収得するステップの後、前記収得した茶水を熟成するステップをさらに含む、請求項1に記載の茶水の製造方法。
【請求項5】
前記茶水は、リナロオールの濃度が5μg/ml以下、ヘキサノールの濃度が0.2μg/ml以下、及びz‐3‐ヘキセノールの濃度が0.2μg/ml以下のうちの少なくとも一つの条件を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の茶水の製造方法。
【請求項6】
酵素が不活性化された生茶葉の茶汁からイオンを除去して得られた茶水。
【請求項7】
前記茶水は、リナロオールの濃度が5μg/ml以下、ヘキサノールの濃度が0.2μg/ml以下、及びz‐3‐ヘキセノールの濃度が0.2μg/ml以下のうちの少なくとも一つの条件を満たす、請求項6に記載の茶水。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の茶水を含む化粧料組成物。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の茶水を含む食品組成物。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の茶水を含む薬学組成物。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−512237(P2013−512237A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541028(P2012−541028)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008517
【国際公開番号】WO2011/065799
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(506213681)株式会社アモーレパシフィック (24)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,2−ga,Hangang−ro,Yongsan−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】