説明

荷重センサ及びその製造方法

【課題】 本発明は、適正な抵抗値を有する抵抗回路を内蔵したフィルム状荷重センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明による荷重センサは、可撓性絶縁フィルム2、21に、複数のスイッチセルA乃至Dを有するセンサ部SL1、SR1、これらスイッチセルにセンサ回路配線3、4、22を介して接続された入力端子部T1及び出力端子部T2を設けることによって形成された回路配線フィルム1、20を用いて構成され、前記入出力端子部間に前記センサ回路配線及び前記複数のスイッチセルを相互接続して構成されたセンサ回路と、前記入出力端子部間で前記センサ回路に接続され前記絶縁フィルム上に設けられた抵抗回路Rとを備え、この抵抗回路Rは前記絶縁フィルム上に被着形成された複数の抵抗要素層R1乃至R3から選択された少なくとも1つの抵抗要素層を有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷重センサ、特に回路基板技術により構成された抵抗層内蔵形のフィルム状荷重センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のシートベルト着用システムでは、その着用/未着用を表示する電装表示パネル及び座席のシート表皮裏側に内装されたフィルム状の着座用の荷重センサが備えられ、そのセンサは着座有無に応じた信号をパネル表示回路へ伝達する役割を持っている。
【0003】
この種の従来のセンサは、いずれも可撓性絶縁フィルム上に配線層を設けた1対の回路配線フィルム間に、複数のスイッチ用貫通孔を有する絶縁スペーサを介在させてこれらを重ね合わせて形成されている。前記各配線層は例えば互いにほぼ同一配線パターンとなっていて、前記各配線層のスイッチ用貫通孔に対応する各部分がオン/オフ接点セルとして機能するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一般的に、この種の荷重センサの回路内部抵抗は20Ω程度、許容電流は20mA程度となっているので、通常の自動車用の各種電装システムの電源電圧約14vをそのまま前記荷重センサに印加すると、オン電流が約700mAにも達しセンサ回路配線の焼損の問題が生じる。
【0005】
そこで、この種センサは、前記電装システムへの組み込みに当たって、そのような焼損を防ぐ目的で一般にセンサ構成部材とは個別の例えば約1k乃至2kΩの外部電流制限抵抗に直列に接続される。そして、この外部電流制限抵抗は各種電装システム用の各種センサに対する制御用ユニット中に、このユニットを構成する種々の個別回路部品の一つとして組み込まれている。
【0006】
また、前記焼損防止の目的とは異なり、前記フィルム状荷重センサの内部配線の断線有無を検出する目的のために状態検出抵抗をそのセンサに内蔵させた従来技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2909961号公報(特開平9−315199号公報)
【特許文献1】特開平11−297153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近時、ユーザ要求による各種センサの数は増加傾向にあり、これら各センサに連繋する前記制御用ユニットにあっても、その構成回路部品点数が多くなり、このことが低コスト化の阻害要因となっている。
【0008】
そこで、前記電流制限抵抗を比較的廉価に製作可能な前記フィルム状荷重センサに回路印刷技術により取り込むことが望まれるが、前記電流制限抵抗を構成する印刷抵抗層は、その製造上の特に層厚の変動等により一般に約±30%にも及ぶバラツキを生じて、所望の抵抗値を得るのが困難な状況にある。このような困難性は特許文献2に示された状態検出抵抗においても同様に生じる。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みて改良された抵抗層内蔵形のフィルム状荷重センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明の荷重センサは、複数のスイッチセルを有するセンサ部、これらスイッチセルにセンサ回路配線層を介して接続された入力端子部及び出力端子部を、可撓性絶縁フィルムに設けることによって形成された回路配線フィルムを用いて構成された荷重センサであって、前記入出力端子部間に前記センサ回路配線層及び前記複数のスイッチセルを相互接続して構成されたセンサ回路と、前記入出力端子部間で前記センサ回路に接続され前記絶縁フィルム上に設けられた抵抗回路とを備え、この抵抗回路は前記絶縁フィルム上に被着形成された複数の抵抗要素層から選択された少なくとも1つの抵抗要素層を有していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明の荷重センサは、第1可撓性絶縁フィルムの一主面に複数の接点セルを有するセンサ回路配線層を設けることによって形成された第1回路配線フィルムと、前記第1可撓性絶縁フィルムの前記一主面に対向配置された第2可撓性絶縁フィルムの対向面に前記第1フィルムの各接点セルとそれぞれ対をなす複数の接点セルを有するセンサ回路配線層を設けることによって形成された第2回路配線フィルムと、前記第1回路配線フィルムと第2回路配線フィルムとの間に介在され前記各接点セルの対に対応する位置にスイッチ用貫通孔を有する絶縁スペーサと、前記各回路配線フィルムの各センサ回路配線層及び各接点セルによって構成されたセンサ回路と、このセンサ回路に接続され前記各回路配線フィルムの少なくとも一方に形成された入力端子部及び出力端子部と、この入出力端子部間の前記センサ回路に接続され前記第1及び第2絶縁フィルムのいずれか一方の絶縁フィルム上に設けられた抵抗回路とを備え、この抵抗回路は前記絶縁フィルム上に被着形成された複数の抵抗要素層から選択された少なくとも1つの抵抗要素層を有していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明の荷重センサの製造方法は、複数のスイッチセルを有するセンサ部、これらスイッチセルにセンサ回路配線層を介して接続された入力端子部及び出力端子部を、可撓性絶縁フィルムに設けることによって形成された回路配線フィルムを用いて構成され、前記入出力端子部間に前記センサ回路配線及び前記複数のスイッチセルを相互接続して構成されたセンサ回路と、前記入出力端子部間で前記センサ回路に接続され前記絶縁フィルム上に設けられた抵抗回路とを備える荷重センサの製造方法であって、前記抵抗回路を構成する複数の抵抗要素層及びこれら抵抗要素層を相互接続する回路配線層を前記可撓性絶縁フィルム上に予め被着形成する工程と、前記抵抗回路の抵抗値を測定してその実測値を得る工程と、前記抵抗回路の目標抵抗値と前記実測値とを比較して前記複数の抵抗要素層のうち前記目標抵抗値に最も近い抵抗値を示す抵抗要素層の組合せを選択する工程と、この選択された抵抗要素層の組合せによって最終的に構成される抵抗回路を得るように前記抵抗回路の一部を分断する工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の荷重センサの製造方法において、前記抵抗回路の一部を分断する工程は、前記抵抗回路の一部及びこれに重なる可撓性絶縁フィルム部分に打ち抜き加工を施して分断孔を形成することによって行われることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、荷重センサは、複数のスイッチセルを有するセンサ部、これらスイッチセルにセンサ回路配線を介して接続された入出力端子部及びセンサ電流制限用や状態検出用などの抵抗回路を有する回路配線フィルムを備え、この抵抗回路が複数の抵抗要素層から選択された少なくとも1つの抵抗要素層によって構成されることによってその適正な抵抗値が容易に得られ、センサに対する電流制限や状態検出などの抵抗回路の役割が確実に果たせるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明による荷重センサの第1の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。図1はその第1実施形態の荷重センサを説明するために荷重センサの構成を分解して示す各部材の平面図、図2はこのセンサに形成された抵抗層について説明するための抵抗値分布図、図3は前記荷重センサの回路構成を示す等価回路図である。
【0016】
この第1実施形態の荷重センサは、図1(a)に示された第1回路配線フィルム1上に図1(b)に示された絶縁スペーサ10を重ね、更にその上に図1(c)に示された第2回路配線フィルム20を重ね合わせて組立てられるものであり、これらの構成部材について順次説明する。
【0017】
図1(a)に示された第1回路配線フィルム1において、このフィルムの基材として使用される合成樹脂製の第1可撓性絶縁フィルム2は、ほぼH字状パターンに形成され、そのパターンの両脚部に位置するセンサ部SL1、SR1及びその橋桁中央部から延長されたI字状の引出部I1を有する。前記絶縁フィルム2の一主面において前記引出部I1の端部上には入出力端子としての第1及び第2端子部T1、T2が相互に離間して並置されている。
【0018】
前記第1端子部T1に電気的に接続された第1センサ回路配線層3は、前記引出部I1から前記センサ部SL1(図中左側)に延在して第1可撓性絶縁フィルム2の一主面上に形成されており、前記H字の左半分の形状を構成するような配線パターンとなっている。この第1配線層3は、そのセンサ部SL1における配線パターンの縦線部分の両端位置近傍に第1接点セルA1及び第2接点セルB1を有する。
【0019】
第2端子部T2に電気的に接続された第2センサ回路配線層4は、前記引出部I1から前記センサ部SR1(図中右側)に延在して第1可撓性絶縁フィルム2の一主面上に形成され、前記H字の右半分の形状を構成するような配線パターンとなっている。この第2配線層4は、そのセンサ部SR1における配線パターンの縦線部分の両端位置に第3接点セルC1及び第4接点セルD1を有する。
【0020】
前記第1配線層3、第1及び第2接点セルA1及びB1は、前記第2配線層4、第3及び第4接点セルC1及びD1と左右対称の配線パターン関係にあり、これらの各配線層及び各接点セルは、いずれも例えば回路印刷配線技術により、第1可撓性絶縁フィルム2上に例えば銀ペースト層及びその上のカーボン導電層による二重導電層を被着することにより形成される。このようにして、前記第1乃至第4接点セルA1、B1、C1、D1は座席シートのセンス範囲において少なくとも四角形の4コーナーを構成する位置に分布或いは分散されている。
【0021】
次に、図1(b)に示されたフィルム状の可撓性の絶縁スペーサ10は、前記第1可撓性絶縁フィルム2と同様に、ほぼ同一寸法形状のH字状パターンに形成され、そのパタ−ンの両脚部のセンサ部SL2、SR2及びその橋桁中央部から延長されたI字状の引出部I2を有する。スペーサ10には、複数のスイッチ用第1乃至第4貫通孔11a乃至11dが形成されており、これらの貫通孔11a乃至11dは前記第1可撓性絶縁フィルム2上の各接点領域A1、B1、C1、D1にそれぞれ対応する位置にてスイッチ機能空間を構成している。
【0022】
前記スペーサ10には、更に前記第1乃至第4貫通孔11a乃至11dに通じるほぼH字状のエアー通路12が形成され、このエアー通路12は第1及び第2貫通孔11a、11bに連通する第1部分12a、第3及び第4貫通孔11c、11dに連通する第2部分12b、これら部分12aと12bとに連通する第3部分12c、この第3部分12cから前記引出部I2の端部付近に延在する第4部分12d、この部分12d端に連通する連絡孔12eを有する。
【0023】
なお、前記スペーサ10の引出部I2は、第1可撓性絶縁フィルム2の引出部I1の長さより短尺に形成され、引出部におけるフィルム剛性をできるだけ小さくして、外力に対するその部分の柔軟性を保ち易いようにしてある。
【0024】
図1(c)には前記スペーサ10を介して前記第1回路配線フィルム1に対向配置される第2回路配線フィルム20が示され、このフィルムの基材として使用される合成樹脂製の第2可撓性絶縁フィルム21は、前記スペーサ10と同様に、ほぼ同一寸法形状のH字状パターンに形成され、センサ部SL3、SR3及び引出部I3を有する。前記第2絶縁フィルム21の一主面(前記第1可撓性絶縁フィルム2の一主面に対向する面)には中継用の第3センサ回路配線層22が例えば印刷配線技術により被着形成されている。
【0025】
ここで図1(c)では第2絶縁フィルム21の一主面を紙面裏向きにして表しているので、この一主面に形成された前記第3配線層22及び後述する各種部材は破線で示されている。
【0026】
また、前記第3配線層22は、前記各センサ部SL3、SR3の各端部位置に配置される第1乃至第4接点セルA2、B2、C2、D2を有し、これら接点セルA2乃至D2は前記第1絶縁フィルム2の各接点セルA1乃至D1にそれぞれ対向させられる。この第3配線層22は、前記各接点セルを介して前記第1配線層3と第2配線層4との間をバースイッチのようにオン/オフさせる機能を有し、この第3配線層22の中途には例えば電流制限用の抵抗回路Rが直列に接続されている。この抵抗回路Rの完成品としての目標抵抗値はここでは例えば約1kΩとされている。
【0027】
前記抵抗回路Rは、前記第2絶縁フィルム21のH字パターンの橋桁中央部付近に設けられており、絶縁フィルム21上に印刷により被着形成され相互に並列接続された第1抵抗要素層R1、第2抵抗要素層R2及び第3抵抗要素層R3を備えて構成されている。また、これら第1、第2及び第3抵抗要素層はそれぞれ第1経路22a、第2経路22b及び第3経路22cを通じて前記第3配線層22に接続されている。
【0028】
これら第1乃至第3抵抗要素層R1乃至R3は、完成品の低コスト化のために、その抵抗材料に前記配線層の保護用として市販されている廉価なカーボンインク(例えばカーボン粒子がバインダーに分散配合されたもので、比抵抗ρが約0.1Ω・cm)を用いて、そのインクを前記第2絶縁フィルム21上に印刷することにより形成されている。
【0029】
ところで、層厚T、層幅W、層長L、比抵抗ρを有する抵抗層の抵抗値は、ρ×L/(W×T)の関係式をもって得られるが、印刷形成される抵抗要素層の製造上の抵抗値バラツキ(一般に約±30%)は、その層厚Tのバラツキ或いは変動に起因することが多い。
【0030】
この実施形態においては、相互に異なる層長Lを有する複数の抵抗要素層R1乃至R3を用いることによって、前記のような層厚Tのバラツキ或いは変動の影響を補完し、完成品としての適正な抵抗値を有する抵抗回路Rが形成される。
【0031】
そこで、前記第1乃至第3抵抗要素層R1乃至R3の設計寸法を示すと共に、各抵抗要素層の設計上の抵抗値(以下、前記抵抗回路及び各抵抗要素層の参照符号R、R1乃至R3をそれぞれの抵抗値にも引用して表現する)について説明する。
【0032】
前記第1乃至第3抵抗要素層R1乃至R3は共にそれらの層厚Tが約10μm、層幅Wが約1mmとなるように形成されている。
【0033】
前記第1抵抗要素層R1はその層長L1が約10mm(この層長を標準長と称する)となるように形成され、設計上の抵抗値R1はR1=ρ×L1/(W×T)≒1kΩとなり、ほぼ前記目標抵抗値に相当する値となる。前記第2抵抗要素層R2はその層長L2がL2=1.3×L1の約13mmに形成され、設計上の抵抗値R2は約1.3kΩとなる。前記第3抵抗要素層R3はその層長L3がL3=0.85×L1の約8.5mmに形成され、設計上の抵抗値R3は約0.85kΩとなる。即ち、ここでは、約±30%の層厚Tのバラツキを補完するために、設計中心としての標準長の層長L1に対して、層長L2を1.3倍(標準長の30%増)に、層長L3を0.85倍(標準長の15%減)にそれぞれ設定してある。
【0034】
図2は、このようにして印刷形成された第1乃至第3抵抗要素層R1乃至R3の層厚Tのバラツキ及びこれに起因する抵抗値のバラツキ分布を示している。その横軸は各抵抗要素層R1乃至R3の層厚Tのバラツキ(或いは層厚変動範囲)を示し、そのバラツキ範囲は層厚Tの前記設計値(約10μm)を100%とした±約30%の範囲で表わされている。縦軸は各抵抗要素層R1乃至R3の抵抗値のバラツキ分布を示し、前記抵抗回路Rの目標抵抗値である1kΩを示すラインが描かれている。この図2により前記抵抗値バラツキ分布を考察すると、前記第1抵抗要素層の抵抗値R1は約0.7乃至1.3kΩの範囲、前記第2抵抗要素層の抵抗値R2は約0.91乃至1.69kΩの範囲、前記第3抵抗要素層の抵抗値R3は約0.60乃至1.11kΩの範囲となることが見込まれる。
【0035】
ところで、完成後の抵抗回路Rの抵抗値は、設計時の前記目標抵抗値とほぼ一致することが望まれるが、不一致であってもその許容範囲は抵抗層の用途目的に応じて適宜設定可能であり、ここでは、目標抵抗値に対して±15%程度までの差異は許容範囲とされている。図2の縦軸にはその許容範囲が抵抗値0.85kΩ乃至1.15kΩの範囲で示されている。
【0036】
また、前記第1乃至第3抵抗要素層は、比抵抗ρ、層厚T及び層幅Wが相互に同一で、層長Lが相互に異なるように設計されているので、各抵抗要素層の抵抗値R1乃至R3は各層長L1乃至L3にそれぞれ比例しており、第2抵抗要素層の抵抗値R2はR2=1.3R1、第3抵抗要素層の抵抗値R3はR3=0.85R1となる。
【0037】
前記抵抗回路の抵抗値Rは、前記第1乃至第3抵抗要素層の合成抵抗値として表されるので、前記第1抵抗要素層の抵抗値R1はR1=(3.255/1.105)×Rとなる。
【0038】
そこで、印刷形成後の前記第1乃至第3抵抗要素層R1乃至R3を乾燥処理した後、例えば前記第1接点セルA2と第3接点セルC2に測定プローブを当てて前記抵抗回路としての抵抗値Rを実測すると、その実測値と前記各抵抗値R、R1乃至R3の相互関係により、実測値としての各抵抗値R、R1乃至R3が求まる。
【0039】
前記第1乃至第3抵抗要素層R1乃至R3の実測値としての各抵抗値の中で、前記抵抗回路Rの目標抵抗値(ここでは例えば約1kΩ)に最も近い抵抗値を有する抵抗要素層を前記抵抗回路Rの最終形態として残存させ、他の抵抗要素層は不要なものとしてこれらの並列抵抗回路及び前記第3配線層22から切り離される。この切り離しは前記抵抗回路の一部を分断することによって行われ、具体的には、不要とする抵抗要素層自身の分断或いは並列抵抗回路中の配線経路分断のいずれかで行われる。
【0040】
前記目標抵抗値に最も近い抵抗値は、図2に示された0.85kΩ乃至1.15kΩの許容範囲に入る前記第1乃至第3抵抗要素層の実測抵抗値R1乃至R3の中から選択することになるので、所望の適切な抵抗値Rを容易に得ることが出来る。
【0041】
この実施形態においては、図1(c)に示されているように、前記第1経路22a及び第3抵抗要素層R3自身の各一部及びここに重なる前記第2絶縁フィルム21の部分に、これらを貫通する分断孔23a、23cを打ち抜き加工することにより、前記不要抵抗要素層R1及びR3が前記第3配線層22から切り離されている。そして、第2抵抗要素層R2が前記目標抵抗値に最も近い抵抗回路Rとして残されている。
【0042】
これら抵抗要素層の切り離し或いは分断の方法には、けがき切断やレーザ溶断などの加工法を適宜用いても良い。より良い方法としては、前記分断孔23a、23c形成の方が簡便に加工でき、加工部分の外観を損なう恐れが少ない。
【0043】
なお、引出部I3の端部には、前記絶縁スペーサ10の引出部I2端部の連絡孔12eに対応する通気孔24が設けられている。
【0044】
そして、前記第1回路配線フィルム1、前記スペーサ10及び前記第2回路配線フィルム20の組立てに当たって、いずれもほぼH字状のパターンを有する第1可撓性絶縁フィルム2、スペーサ10及び第2可撓性絶縁フィルム21はそれらのパターンが一致するように重ね合わせられ、これら相互の重ね合わさった部分はほぼ全体に亘って例えばアクリル系樹脂を溶剤にて溶かした接着性コーティング膜からなる粘着剤層(図示せず)によって接着される。なお、この粘着剤層の接着範囲はスペーサ10の貫通孔及びエアー通路を避けた表面に限られている。
【0045】
前記組立て後の荷重センサの左半分のセンサ部は、前記各回路配線フィルムの各センサ部SL1、SL2及びスペーサ10のセンサ部SL3の重ね合わせにより構成され、同様に右半分のセンサ部は、各センサ部SR1、SR2及びSR3の重ね合わせにより構成されている。また、スペーサ10のスイッチ用第1乃至第4貫通孔11a乃至11dにそれぞれ対応する位置において、前記第1回路配線フィルム1の第1乃至第4接点セルA1乃至D1と前記第2回路配線フィルム20の第1乃至第4接点セルA2乃至D2とを所定の間隔で離間対向させることによって、前記センサ部の4コーナーにそれぞれ配置された4つのスイッチセルが構成されている。
【0046】
前記第1乃至第3抵抗要素層R1乃至R3で構成された前記電流制限抵抗回路Rは、前記スペーサ10のエアー通路12c内に収納された状態にあり、前記各フィルム2、10、21及び接着用の前記粘着剤層から離隔されることにより、この粘着剤中の低分子成分の浸透及びこの印刷抵抗要素層の抵抗値の経時変化が防止されている。また、スペーサ10の連絡孔12eは第2絶縁フィルム21の通気孔24と連通し、センサのスイッチング動作中にもこの通気孔24を通じて、前記エアー通路12(第1部分12a乃至第4部分12d)内と外気との交流を図ることができる。
【0047】
この外気との交流により、荷重時にスイッチ用貫通孔11a乃至11d内の空気に圧縮空気抵抗が減少し、各絶縁フィルム2及び21はその貫通孔の位置にて速やかに撓み各スイッチセルのオン動作が速やかに行われ、非荷重に戻る際にも各絶縁フィルムが速やかに復元しオフ動作が速やかに行われる。
【0048】
図3は前記第1実施形態の回路構成を示たものであり、図1に示された各部材と同一の部材については同一符号を付しその説明を省略する。この図3を参照すると、前記接点セルA1とA2の対、B1とB2の対、C1とC2の対及びD1とD2の対がそれぞれスイッチセルA、B、C及びDを構成していることが分かる。そして、第1端子T1と第2端子T2との間に、これらのスイッチセルA乃至D及び配線層3、4及び22等によってセンサ回路が構成され、前記電流制限抵抗回路Rは端子T1とT2との間で前記センサ回路に直列に接続されていることになる。なお、ここでは電流制限抵抗回路R中の各抵抗要素層R1乃至R3に対する分断加工についての図示は省略されている。
【0049】
図4は本発明の第2の実施形態を示す荷重センサを説明するための平面図である。この実施形態の荷重センサにおいては、図4に示された第1回路配線フィルム1Aにその回路配線の断線を検出するための状態検出抵抗回路Rdを設けてある点が特徴であり、この点以外は図1(a)に示された前記第1実施形態の第1回路配線フィルム1とほぼ同様な構成となっているので、これらの同一構成の部分については同一符号を付しその部分の説明を省略する。
【0050】
前記状態検出抵抗回路Rdは、第1可撓性絶縁フィルム2のH字パターンの橋桁中央付近上に印刷形成された第1乃至第3抵抗要素層Rd1、Rd2、Rd3によって構成されている。これら抵抗要素層Rd1乃至Rd3は相互に直列回路を構成し、第1回路配線層3から分岐された第1分岐配線31と第2回路配線層4から分岐された第2分岐配線41との間に直列接続されている。前記状態検出抵抗回路Rdの目標抵抗値、比抵抗ρ、層厚T、層幅Wは前記第1実施形態における抵抗層Rと同様とされ、前記抵抗要素層Rd1乃至Rd3の各層長Ld1、Ld2及びLd3はそれぞれ約0.85mm、約0.15mm及び約0.3mmと設定されている。
【0051】
そして、前記第2抵抗要素層Rd2及び第3抵抗要素層Rd3には、前記第1絶縁フィルム2上に印刷された第1分路配線層32及び第2分路配線層33が、各抵抗要素層の各両端を短絡するようにそれぞれ並列接続されており、これらの抵抗要素層のうちで抵抗機能を必要とする場合は、該当する抵抗要素層に対する分路配線層を分断することによってこの抵抗要素層を抵抗回路Rdの実効抵抗として選択追加することになる。
【0052】
前記状態検出抵抗回路Rdの抵抗値の実測は、例えば第1端子部T1及び第2端子部T2にプローブを当てて行えばよく、分断孔形成前においては、まず、第1抵抗要素層Rd1の抵抗値が実測される。このRd1の実測値が状態検出抵抗層Rdの目標抵抗値に満たない場合は、その度合いに応じて、前記第2及び第3抵抗要素層Rd2、Rd3のうち追加したい抵抗要素層に対する分路配線層を分断してその抵抗要素層を実効的な抵抗として復活させる。
【0053】
図4に示された例では、第2分路配線33に、絶縁フィルム2をも貫通する分断孔33aを設けることによって第3抵抗要素層Rd3が復活され、前記状態検出抵抗回路Rdは第1抵抗要素層Rd1と第3抵抗要素層Rd3とを合わせた抵抗値を示すことになる。
【0054】
このようにして適正な抵抗値を有する状態検出抵抗回路Rdが得られた後、前記第1回路配線フィルム1Aの配線層側の一主面上に、図1(b)に示された絶縁スペーサ10を重ね、この上に図1(c)に示された第2回路配線フィルム20を重ね、これら部材を接着することによって第2実施形態の荷重センサが組立てられる。そして、この回路構成は図3に破線で示されているような状態検出用の抵抗回路Rdを有する抵抗回路が第1回路配線層3と第2回路配線層4との間に接続された状態となっている。
【0055】
ところで、前記第1実施形態における電流制限抵抗回路R及び第2実施形態における状態検出抵抗回路Rdは、それぞれ複数の抵抗要素層による並列回路及び直列回路となっているが、いずれの実施形態においても、その製造過程において、前記抵抗回路の抵抗値を測定してその実測値を得る工程及び前記抵抗層の目標抵抗値と前記実測値とを比較して前記複数の抵抗要素層のうち前記目標抵抗値に最も近い抵抗値を示す抵抗要素層の組合せを選択する工程を備えることになる。
【0056】
そして、この選択された抵抗要素層の組合せによって最終的に構成される抵抗回路を得るために、前記第1実施形態の抵抗回路Rでは最終的に不要となる非選択の抵抗要素層を前記抵抗回路から分断して切り離し、前記第2実施形態の抵抗層Rdでは最終的に必要として選択された抵抗要素層に対する分路配線を分断してこの選択抵抗要素層を前記抵抗回路の抵抗成分として取り込むことになっている。このように、いずれの実施形態においても前記抵抗回路の一部を分断することによって最終的に選択された抵抗要素層の組合せ構成による適正抵抗値の抵抗回路が得られる。
【0057】
次に抵抗回路及び抵抗要素層に関する他の実施形態を示す図5の梗概図を参照して説明する。図5(a)に示された抵抗回路Rpは、配線層51と52との間に接続された複数の抵抗要素層Rp1乃至Rp5による並列回路で構成され、これら各抵抗要素層は相互に同一の層長で同一の抵抗値を有するように形成されている。前記抵抗回路Rpは、前記各抵抗要素層のうち目標抵抗値に必要な抵抗要素層を残存させ、不要な抵抗要素層に対して分断孔53を形成することにより、適正な抵抗値が設定される。
【0058】
図5(b)に示された抵抗回路Rcは、同心円状に配列された複数の抵抗要素層Rc1乃至Rc4を配線層54と55との間に接続して構成されており、各抵抗要素層が相互に多数の異なる層長を有するものとなっている。従って、一部の各抵抗要素層を分断して前記抵抗回路Rcの抵抗値を調整する場合、細やかな調整が可能であり、より一層精度の高い適正な抵抗値が設定される。なお、前記抵抗回路Rp及びRcは、ここでは第1絶縁フィルム2上に印刷形成されている状態として図示されている。
【0059】
前記各実施形態における抵抗回路R、Rd、Rc、Rpの荷重センサへの形成位置は、これまでの説明に限定されるものではない。例えば前記第1実施形態の抵抗回路Rと第2実施形態の抵抗回路Rdとを入れ替えてもよいし、図5に示された他の実施形態の抵抗回路RcやRpを前記RやRdと置き換えてもよい。そして、荷重センサに複数の抵抗回路を内蔵させたい場合は、その使用目的に応じて前記抵抗回路R、Rd、Rc、Rpを適宜選択して組合せることにより荷重センサを組立てることができる。
【0060】
また、前記実施形態においては、前記分断孔23a、23c、33、53は、前記各回路配線フィルム及び絶縁フィルムを重ねる工程の前に形成されているが、前記抵抗回路R、Rd、Rc、Rpの重ね合わせ配置がない限り、これらフィルムの重ね合わせ工程後に形成しても良い。ところで、打ち抜き後の前記分断孔23a、23c、33、53を絶縁性の接着テープにより塞いでおけば、その近傍の前記抵抗要素層や配線層などに対する外部の塵埃などによる悪影響が避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る荷重センサを説明するためにその構成を分解して示す各部材の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る荷重センサの抵抗回路について説明するための抵抗値分布図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る荷重センサの回路構成を示す等価回路図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る荷重センサの第1回路配線フィルム示す平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る荷重センサの抵抗回路の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 第1回路配線フィルム
2 第1可撓性絶縁フィルム
3 第1センサ回路配線層
4 第2センサ回路配線層
A、B、C、D 第1乃至第4スイッチセル
A1、B1、C1、D1 第1回路配線フィルムの第1乃至第4接点セル
A2、B2、C2、D2 第2回路配線フィルムの第1乃至第4接点セル
R、Rc、Rd、Rp 抵抗回路
R1、R2、R3、Rd1、Rd2、Rd3 抵抗要素層
SL1、SR1、SL2、SR2、SL3、SR3 センサ部
T1 入力端子部(第1端子部)
T2 出力端子部(第2端子部)
10 絶縁スペーサ
11a、11b、11c、11d 第1乃至第4スイッチ用貫通孔
20 第2回路配線フィルム
21 第2可撓性絶縁フィルム
22 第3センサ回路配線層
22a、22b、22c 第1乃至第3経路
23a、23c、33a、53 分断孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチセルを有するセンサ部、これらスイッチセルにセンサ回路配線層を介して接続された入力端子部及び出力端子部を、可撓性絶縁フィルムに設けることによって形成された回路配線フィルムを用いて構成された荷重センサであって、前記入出力端子部間に前記センサ回路配線層及び前記複数のスイッチセルを相互接続して構成されたセンサ回路と、前記入出力端子部間で前記センサ回路に接続され前記絶縁フィルム上に設けられた抵抗回路とを備え、この抵抗回路は前記絶縁フィルム上に被着形成された複数の抵抗要素層から選択された少なくとも1つの抵抗要素層を有していることを特徴とする荷重センサ。
【請求項2】
第1可撓性絶縁フィルムの一主面に複数の接点セルを有するセンサ回路配線層を設けることによって形成された第1回路配線フィルムと、前記第1可撓性絶縁フィルムの前記一主面に対向配置された第2可撓性絶縁フィルムの対向面に前記第1フィルムの各接点セルとそれぞれ対をなす複数の接点セルを有するセンサ回路配線層を設けることによって形成された第2回路配線フィルムと、前記第1回路配線フィルムと第2回路配線フィルムとの間に介在され前記各接点セルの対に対応する位置にスイッチ用貫通孔を有する絶縁スペーサと、前記各回路配線フィルムの各センサ回路配線層及び各接点セルによって構成されたセンサ回路と、このセンサ回路に接続され前記各回路配線フィルムの少なくとも一方に形成された入力端子部及び出力端子部と、この入出力端子部間で前記センサ回路に接続され前記第1及び第2絶縁フィルムのいずれか一方の絶縁フィルム上に設けられた抵抗回路とを備え、この抵抗回路は前記絶縁フィルム上に被着形成された複数の抵抗要素層から選択された少なくとも1つの抵抗要素層を有していることを特徴とする荷重センサ。
【請求項3】
複数のスイッチセルを有するセンサ部、これらスイッチセルにセンサ回路配線層を介して接続された入力端子部及び出力端子部を、可撓性絶縁フィルムに設けることによって形成された回路配線フィルムを用いて構成され、前記入出力端子部間に前記センサ回路配線層及び前記複数のスイッチセルを相互接続して構成されたセンサ回路と、前記入出力端子部間で前記センサ回路に接続され前記絶縁フィルム上に設けられた抵抗回路とを備える荷重センサの製造方法であって、前記抵抗回路を構成する複数の抵抗要素層及びこれら抵抗要素層を相互接続する回路配線層を前記可撓性絶縁フィルム上に予め被着形成する工程と、前記抵抗回路の抵抗値を測定してその実測値を得る工程と、前記抵抗回路の目標抵抗値と前記実測値とを比較して前記複数の抵抗要素層のうち前記目標抵抗値に最も近い抵抗値を示す抵抗要素層の組合せを選択する工程と、この選択された抵抗要素層の組合せによって最終的に構成される抵抗回路を得るように前記抵抗回路の一部を分断する工程とを備えていることを特徴とする荷重センサの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の荷重センサの製造方法において、前記抵抗回路の一部を分断する工程は、前記抵抗回路の一部及びこれに重なる可撓性絶縁フィルム部分に打ち抜き加工を施して分断孔を形成することによって行われることを特徴とする荷重センサの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−32271(P2006−32271A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213037(P2004−213037)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】