説明

荷重分散性の高い建材用化粧材

【課題】木質基材の種類に関わらず、十分な耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等を発揮する建材用化粧材を提供する。
【解決手段】木質基材上に化粧シートが積層されてなる建材用化粧材において、木質基材と化粧シートとの間に少なくとも樹脂及び繊維質材料を含む荷重分散層が形成されていることを特徴とする建材用化粧材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重分散性の高い建材用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木質基材上に化粧シートを貼着してなる建材用化粧材が知られている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂からなる不透明な基材シート上に、装飾層、ポリオレフィン系樹脂からなる透明オレフィン系樹脂層を順次積層してなる化粧シートを木質基材上に貼着してなる建材用化粧材が開示されている。
【0003】
かかる建材用化粧材において、耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等の特性は、特に木質基材の種類、品質等に応じて変化することが知られている。例えば、従来、木質基材として広葉樹のラワン材が多用されており、良質な原木から採取されたラワン材を用いる場合には、耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等が優れている。
【0004】
しかしながら、近年、天然資源の窮乏、木材伐採制限等により良質な原木が入手し難く、材料不足が進んでいる。この問題は、特にラワン等の広葉樹にとって深刻である。よって、木質基材の代替として、広葉樹に代えた針葉樹、木質系廃材から分離した木質繊維を接着剤により成形・固化してなる木質繊維板(例えば、中密度木質繊維板:MDF、高密度木質繊維板:HDF)、早成樹からなる早成樹合板等の利用が提案されている。
【0005】
このような代替材料の利用により、木質基材の確保は可能である。しかしながら、良質の原木を木質基材とする場合と比較して、化粧材の耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性が低くなるという問題がある。
【0006】
従って、木質基材の種類に関わらず、十分な耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等を発揮する建材用化粧材の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2002−120331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、木質基材の種類に関わらず、十分な耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等を発揮する建材用化粧材を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、木質基材上に化粧シートが積層されてなる建材用化粧材において、木質基材と化粧シートとの間に特定の層を形成する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の建材用化粧材に係るものである。
1. 木質基材上に化粧シートが積層されてなる建材用化粧材において、木質基材と化粧シートとの間に少なくとも樹脂及び繊維質材料を含む荷重分散層が形成されていることを特徴とする建材用化粧材。
2. 繊維質材料が、1)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなる不織布、2)ポリエステル、ケブラー、ナイロン、ガラス、レーヨン、綿及びアセテートの少なくとも1種からなる織物、3)クラフト紙、和紙又はクレープ紙、並びに、4)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなるチョップドファイバー、からなる群から選択された少なくとも1種である上記項1記載の建材用化粧材。
3. 繊維質材料が、ポリエステル、ガラス及びケブラーの少なくとも1種である上記項1又は2記載の建材用化粧材。
4. 樹脂が、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも1種である上記項1〜3のいずれかに記載の建材用化粧材。
5. 荷重分散層が、無機充填剤をさらに含む上記項1〜4のいずれかに記載の建材用化粧材。
6. 木質基材が、ラワン合板、針葉樹合板、木質繊維板又は早成樹合板である上記項1〜5のいずれかに記載の建材用化粧材。

以下、本発明の建材用化粧材について詳細に説明する。
【0010】
本発明の建材用化粧材は、木質基材上に化粧シートが積層されてなる建材用化粧材において、木質基材と化粧シートとの間に少なくとも樹脂及び繊維質材料を含む荷重分散層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の建材用化粧材は、少なくとも樹脂及び繊維質材料を含む荷重分散層が形成されているため、木質基材の種類に関わらず、十分な耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等を発揮する。
【0012】
木質基材
木質基材としては特に限定されず、従来、建材用化粧材の基材として用いられているものが使用できる。例えば、各種原木(杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等)から採取した木材単板をはじめ、合板、木質繊維板等が挙げられる。
【0013】
合板としては、例えば、ラワン合板、針葉樹合板、早成樹合板等が挙げられる。針葉樹としては、例えば、杉、松、檜、カラ松、赤松、トド松等が挙げられる。
【0014】
早成樹としては、例えば、ポプラ等が挙げられる。
【0015】
木質繊維板としては特に限定されないが、特に次のような中密度木質繊維板(MDF)又は高密度木質繊維板(HDF)が好ましい。
【0016】
中密度木質繊維板は、比重0.6〜0.8程度の木質板の一種である。一般に、針葉樹又は広葉樹の小薄片に適宜バガス、藁等を添加したものに結合剤を加えてなる成形用原料を、熱圧成形することにより作製される。該結合剤としては、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂接着剤、パラフィンエマルジョン等が挙げられる。
【0017】
高密度木質繊維板は、中密度木質繊維板よりも比重が大きく、一般に0.8を超えるものが該当する。
【0018】
本発明の建材用化粧材は、木質基材の種類に関わらず、後記する荷重分散層の形成により優れた耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等を発揮するため、木質基材としては単板以外のラワン合板、針葉樹合板、木質繊維板又は早成樹合板を好適に使用できる。
【0019】
木質基材の厚みは特に限定されないが、通常3〜15mm程度である。
【0020】
荷重分散層
荷重分散層は、木質基材と化粧シートとの間に形成される少なくとも樹脂及び繊維質材料を含む層であり、化粧材に加えられた荷重、即ち衝撃等を分散する役割を有する。
【0021】
このような荷重分散層の態様は、化粧材に加えられた荷重を分散させることができる態様であれば特に限定されない。例えば、シート状の繊維質材料(例えば、紙)の表裏両面に樹脂を塗布・乾燥したものでもよく、シート状の繊維質材料に樹脂を含浸・乾燥したものでもよい。また、チョップドファイバーと樹脂とを混練・成形後、乾燥したものでもよい。
【0022】
繊維質材料としては、例えば、1)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなる不織布(スパンボンドも含む)、2)ポリエステル、ケブラー、ナイロン、ガラス、レーヨン、綿及びアセテートの少なくとも1種からなる織物、3)クラフト紙、和紙又はクレープ紙、並びに、4)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなるチョップドファイバー、などが挙げられる。その他、5)草木、竹等の植物繊維をほぐしたもの、又はこれらの植物繊維をシート状に加工したもの、6)炭素繊維、なども使用できる。
【0023】
上記の繊維質材料の中でも、ポリエステル、ガラス及びケブラーの少なくとも1種が好ましい。即ち、ポリエステル不織布、ポリエステル織物、ポリエステルチョップドファイバー;ガラス不織布、ガラス繊維、ガラスチョップドファイバー;ケブラー織物等が好ましい。
【0024】
樹脂としては特に限定されないが、繊維質材料のバインダーとしての効果並びに木質基材及び化粧シートに対する接着剤としての効果が高いものが好ましい。このような樹脂としては公知の(樹脂を主材とする)接着剤が使用できる。例えば、樹脂を含む1液型接着剤、2液型接着剤、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が使用できる。この中でも、荷重分散層の硬度を高くできる観点からは、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも1種が好ましい。その他、2液型接着剤(特に2液硬化型ウレタン系接着剤)も好適である。
【0025】
2液硬化型ウレタン系接着剤は、主剤がポリオール化合物からなり、硬化剤がイソシアネート化合物からなる。
【0026】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール,アクリルポリオール,エポキシポリオール,ポリエーテルポリオール等が利用される。また、イソシアネート化合物は分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、(1)脂肪族系ジイソシアネート化合物:エチレンジイソシアネート,1,4−ブタンジイソシアネート,1,6−ヘキサンジイソシアネート及びこれらの各ジイソシアネートの変性体、(2)脂環族系ジイソシアネート化合物:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,シクロヘキサンジイソシアネート,メチルシクロヘキサンジイソシアネート及びこれらの各ジイソシアネートの変性体、(3)芳香族系ジイソシアネート:2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート,4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート,4−4’ジフェニルメタンジイソシアネート,m−キシリレンジイソシアネート及びこれらの各ジイソシアネートの変性体、(4)芳香族系トリイソシアネート:トリフェニルメタントリイソシアネート及びその変性体、等が利用される。
【0027】
荷重分散層としては、特にポリエステル織物、ガラス織物及びケブラー織物の少なくとも1種に2液硬化型ウレタン系樹脂を含浸後に乾燥させたものが好ましい。
【0028】
荷重分散層は、荷重分散性を高めるために無機充填剤を含んでもよい。無機充填剤としては、例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。
【0029】
無機充填剤の含有量は特に限定されないが、通常は荷重分散層に含まれる樹脂100重量部に対して15〜25重量部である。
【0030】
荷重分散層の厚みは特に限定されず、荷重分散の程度、繊維質材料及び樹脂に応じて適宜設定できるが、30〜100μm程度が好ましく、50〜70μm程度がより好ましい。
【0031】
化粧シート
化粧シートの種類は特に限定されず、建材用化粧材の用途に応じて適宜選択できる。
【0032】
例えば、化粧シートの具体例としては、基材シート上に、ベタインキ層、柄インキ層、接着剤層、透明性樹脂層、プライマー層及び表面保護層を順に積層してなるものが挙げられる。以下、この化粧シートを例に挙げて各層について説明する。
【0033】
基材シートは、薄紙,上質紙,クラフト紙,和紙,チタン紙,樹脂含浸紙,紙間強化紙等の紙、木質繊維,ガラス繊維,石綿,ポリエステル繊維,ビニロン繊維,レーヨン繊維等の繊維からなる織布や不織布、あるいは、ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアクリル,ポリアミド,ポリウレタン,ポリスチレン等の合成樹脂製シートなどの1種又は2種以上の積層体を用いることができ、その厚さとしては概ね20〜600μmが適当である。また、上記した化粧シート用の基材シートは適宜、顔料等を添加して着色してもよいし、必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施してもよい。
【0034】
絵柄層は、柄インキ層及びベタインキ層から構成される。これらは、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができる。柄インキ層としては、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄であり、ベタインキ層としては、隠蔽性を有する着色インキでベタ印刷したものである。この実施形態では、柄インキ層及びベタインキ層の両方が設けられるが、いずれか一方の構成であってもよい。
【0035】
絵柄層に用いるインキとしては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができる。本発明では、環境問題、被印刷面との接着性等を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上混合したものである。なお、ワイピングインキについても、上記で説明した絵柄層に用いるインキと同じインキで形成することができる。
【0036】
透明性樹脂層は、透明性のものであれば限定されない。透明性樹脂層としては、例えば熱可塑性樹脂により形成されたものを好適に使用することができる。
【0037】
具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等を挙げることができる。これらの中でも、本発明では、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0038】
透明性樹脂層は、必要に応じて着色されていてもよい。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、前記の着色半透明層で挙げられた顔料又は染料を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
透明性樹脂層には、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えば、ゴム)等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0040】
表面保護層は、化粧シートに要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられる。この表面保護層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当である。特に、表面硬度が硬く、生産性に優れるという点で電離放射線硬化型樹脂を用いることがより好ましい。
【0041】
熱硬化型樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0042】
上記樹脂には、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加される。
【0043】
上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば、上記した熱硬化型樹脂を溶液とし、この溶液をロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で塗布し、乾燥し、硬化させる方法が挙げられる。上記溶液の塗布量としては、固形分で概ね5〜30μmが適当であり、好ましくは15〜25μmとすればよい。
【0044】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。電離放射線は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、例えば、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、特に紫外線、電子線等を用いることが望ましい。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nm程度の波長域を使用することができる。また、電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、一般に100〜1000keV程度、好ましくは100〜300keVのものを使用することができる。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度とすればよい。
【0045】
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。
【0046】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度とすればよい。
【0047】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂を溶液とし、この溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布すればよい。この場合の溶液の塗布量としては、固形分として概ね5〜30μmとすればよく、より好ましくは15〜25μmとすればよい。
【0048】
また、電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層に、より一層耐擦傷性、耐摩耗性を付与する場合には、必要に応じて無機充填材を配合することができる。例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。
【0049】
無機充填材の使用量は限定的ではないが、通常は電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して1〜80重量部程度とすればよい。
【0050】
各層の積層は、通常の手順で実施すればよい。例えば、着色した基材シートの一方の面にインキ層(ベタインキ層、柄インキ層)を順に印刷により形成し、さらに前記絵柄層上に2液硬化型ウレタン樹脂等の公知のドライラミネーション用接着剤で形成した接着剤層を介して透明性樹脂層を公知のドライラミネーション法、Tダイ押出し法等で積層し、透明性樹脂層の全面にプライマー層を設け、その上に表面保護層を形成すればよい。
【0051】
そして、必要に応じて表面保護層側からエンボス加工を施すことにより凹凸模様を形成することができる。凹凸模様は、加熱プレスやヘアライン加工などにより形成することができる。前記凹凸模様としては、例えば導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0052】
建材用化粧材の製造方法
本発明の建材用化粧材の製造方法は特に限定されず、木質基材上に荷重分散層を介して化粧シートを積層することができる方法であればよい。
【0053】
例えば、荷重分散層がシート状の繊維質材料(例えば、クラフト紙)の表裏両面に樹脂を塗布・乾燥してなるものである場合には、木質材料の上に表裏両面に樹脂を塗布したシート状の繊維質材料を置いて上から化粧シートをラミネートすることにより建材用化粧材を製造できる。
【0054】
また、荷重分散層がシート状の繊維質材料(例えば、ガラス織物)に樹脂を含浸・乾燥してなるものである場合には、木質材料の上に樹脂を含浸したガラス織物を置いて上から化粧シートをラミネートすることにより建材用化粧材を製造できる。
【発明の効果】
【0055】
本発明の建材用化粧材は、少なくとも樹脂及び繊維質材料を含む荷重分散層が形成されているため、木質基材の種類に関わらず、十分な耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等を発揮する。
【0056】
良質な原木から採取された単板に代えて各種合板、木質繊維板等を木質基材として用いた場合でも、十分な耐衝撃性、耐傷性、耐キャスター性等を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0058】
実施例1
(化粧シートの作製)
両面コロナ放電処理した60μ厚さの着色ポリプロピレンフィルムの一方の面にウレタンセルロース系樹脂(ウレタン及び硝化綿の混合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により固形分2g/m2となるように塗工し、裏面プライマー層を形成した。他方の面にはアクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により固形分2g/m2となるように塗工し、印刷用プライマー層を形成した。
【0059】
次いで、アクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をバインダーとする印刷インキを用いてグラビア印刷によりベタインキ層及び柄インキ層を順次形成し、木目及び抽象模様のインキ層を形成した。
【0060】
次に、ウレタン系接着剤を絵柄層上に塗工した後、その上からプロピレン系樹脂を厚さ80μmとなるようにTダイ押し出し機で加熱溶融押し出しして透明性樹脂層を形成した。
【0061】
上記透明性樹脂層にコロナ放電処理を施し、その処理面にアクリルウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加したもの)をグラビア塗工法により塗工して表面保護層用プライマー層を形成した。
【0062】
表面保護層用プライマー層上にウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂をロールコート法で固形分15g/m2となるように塗工し、乾燥した後、未硬化の電子放射線硬化型樹脂層に酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて電子放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成した。
【0063】
続いて、表面保護層側から版深50μmの木目導管状エンボス版又は木肌・抽象調エンボス版でエンボス加工を施して木目導管状又は木肌・抽象調の凹凸模様を形成した化粧シートを得た。
(建材用化粧材の作製)
60g/m2のクラフト紙の表裏両面に、2液硬化型ウレタン系接着剤(中央理化製BA−10L/BA−11Bを100/2.5の重量比で混合したもの)を各面に100g/m2(wet)塗布した後、接着剤硬化前に木質基材上に積層した。木質基材としては、総厚み12mmの5層ラワン合板を使用した。
【0064】
次いで、接着剤硬化前に上記で得た化粧シートを積層し、養生させて建材用化粧材を作製した。
【0065】
実施例2
木質基材及び化粧シートは実施例1と同じである。
【0066】
木質基材上に2液硬化型ウレタン系接着剤(中央理化製BA−10L/BA−11Bを100/2.5の重量比で混合したもの)を70g/m2(wet)塗布、90g/m2のガラス織物を置き、さらにその上に、同2液硬化型ウレタン系接着剤(中央理化製BA−10L/BA−11Bを100/2.5の重量比で混合したもの)を30g/m2(wet)塗布、化粧シートを重ね合わせ接着し、建材用化粧材を作製した。
【0067】
比較例1
木質基材及び化粧シートは実施例1と同じである。
【0068】
木質基材上に2液硬化型ウレタン系樹脂(中央理化製BA−10L/BA−11Bを100/2.5の重量比で混合したもの)を100g/m2(wet)塗布後、化粧シートを重ね合わせて接着して建材用化粧材を作製した。
【0069】
比較例2
実施例1で用いた5層ラワン合板の表面層(第1層及び第5層)を堅木(カポール又はマラス)に置き換えた以外は、比較例1と同様にして建材用化粧材を作製した。
【0070】
試験例1
実施例1〜2及び比較例1〜2で作製した建材用化粧材について、耐衝撃性、耐キャスター性及び耐傷性を調べた。
(耐衝撃性)
デュポン式衝撃試験機を用いて、建材用化粧材の化粧シート側から500gの鋼球を落下させて木質基材に凹みが生じるかどうかを調べた。落下距離は30cmとした。結果を下記表1に示す。
(耐キャスター性)
耐キャスター試験装置L6−04(浅野機械製作株式会社)を用いて評価を行った。評価手順は次の通りである。即ち、試験対象である建材用化粧材を試料固定台に固定した。この建材用化粧材の表面に3個のキャスターが接しないように調節ハンドルによりキャスター固定台を上げた後に、重さ70kgとなるように荷重台に重りを載せた。次に調整ハンドルを用い3個のキャスターに載せた荷重が加わるようにした。回転速度20rpmの速度、5分間毎に反回転、1000回転とセットし1000回転完了後、調整ハンドルを回してキャスター固定台を浮かせて試験対象である建材用化粧材を取り出した。次いで建材用化粧材の表面を目視し、割れ目(傷)及び凹みの程度を調べた。
(耐傷性)
鉛筆(硬度F)を荷重1000gで建材用化粧材の化粧シート側に押し付けた場合に凹み傷が生じるかどうかを調べた。結果を下記表1に示す。
【0071】
【表1】

表1中、1〜4の数値は下記の評価を示す。
1:凹み・傷なし
2:少し凹み・傷あり
3:やや凹み・傷あり
4:顕著に凹み・傷あり
参考試験1
実施例2で作製した建材用化粧材について、繊維質材料の種類を変えた場合にデュポン式衝撃試験の結果がどのように変化するかを調べた。
【0072】
結果を図1に示す。図1中、ラワン合板とあるのは荷重分散層を形成しない場合を意味する。
【0073】
参考試験2
実施例2で作製した建材用化粧材について、繊維質材料の種類を変えた場合に鋼球落下試験(JIS K 5600)の結果がどのように変化するかを調べた。
【0074】
結果を図2に示す。図2中、ラワン合板とあるのは荷重分散層を形成しない場合を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】JIS K 5600に準拠したデュポン式衝撃試験の結果を示す図である。
【図2】JIS K 5600に準拠した鋼球落下試験の結果を示す図である。図2に記載の繊維質材料の種類は、図1の記載に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材上に化粧シートが積層されてなる建材用化粧材において、木質基材と化粧シートとの間に少なくとも樹脂及び繊維質材料を含む荷重分散層が形成されていることを特徴とする建材用化粧材。
【請求項2】
繊維質材料が、1)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなる不織布、2)ポリエステル、ケブラー、ナイロン、ガラス、レーヨン、綿及びアセテートの少なくとも1種からなる織物、3)クラフト紙、和紙又はクレープ紙、並びに、4)ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド又はガラスからなるチョップドファイバー、からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1記載の建材用化粧材。
【請求項3】
繊維質材料が、ポリエステル、ガラス及びケブラーの少なくとも1種である請求項1又は2記載の建材用化粧材。
【請求項4】
樹脂が、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の建材用化粧材。
【請求項5】
荷重分散層が、無機充填剤をさらに含む請求項1〜4のいずれかに記載の建材用化粧材。
【請求項6】
木質基材が、ラワン合板、針葉樹合板、木質繊維板又は早成樹合板である請求項1〜5のいずれかに記載の建材用化粧材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−95991(P2006−95991A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287602(P2004−287602)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】