説明

荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法

【目的】レジストヒーティングによる影響を抑制することを目的とする。
【構成】描画装置100は、レジストが塗布された描画対象となる試料の描画領域が仮想分割された複数の小領域のそれぞれの小領域内に配置される複数の図形パターンの各パターンデータであって、図形パターン毎に、当該図形パターンが所属する小領域内でさらに複数のグループの1つに振り分けられるための振り分け識別子が定義された各パターンデータを記憶する記憶装置140と、グループ毎に描画順序が並ぶように、各小領域に当該小領域に配置される各パターンデータを割り当てるSF割当部56と、電子ビームを用いて、グループ毎に、各小領域に当該小領域に配置される各図形パターンを描画する描画部150と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に係り、例えば、レジストヒーティングを抑制する描画方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
図17は、従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
可変成形型電子線(EB:Electron beam)描画装置は、以下のように動作する。第1のアパーチャ410には、電子線330を成形するための矩形例えば長方形の開口411が形成されている。また、第2のアパーチャ420には、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向され、第2のアパーチャ420の可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340に照射される。すなわち、第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、X方向に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340の描画領域に描画される。第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式(VSB方式)という。
【0004】
かかる電子ビーム描画を行う際、複数の図形が密に配置されるレイウアトや、図形同士が重なるように配置されるレイウアトを描画する場合がある。図形同士が重なるように配置されるレイウアトとしては、例えば、斜線パターン等で使用される場合などが挙げられる。図形を重ねることでショット数を減少させ、描画時間を短縮させることができる。これらのようなレイアウト図形をそのまま描画した場合に、電子ビームの照射量密度が高くなってしまう場合がある。そのため、その他の粗なレイアウト図形を描画する場合に比べてレジストヒーティングによる影響を大きく受けてしまうといった問題があった。それにより描画された図形パターンの寸法等が変動してしまうといった問題があった。
【0005】
レジストヒーティングを抑制する方法として、例えば、描画パターンを複数回重ねて描画を行う多重描画方式が一般に採用されている。多重描画方式では、チップ領域が仮想分割されたストライプ領域単位で1回目の描画と2回目の描画とを繰り返して内部の図形パターンをすべて複数回描画する場合や、ストライプ領域内の個々のサブフィールド単位で1回目の描画と2回目の描画を交互に行いながら1回目の描画と2回目の描画とを繰り返して内部の図形パターンをすべて複数回描画する描画動作を進める場合等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−117871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、複数の図形が密に配置されるレイウアトや、図形同士が重なるように配置されるレイウアトを描画する場合、その他の粗なレイアウト図形を描画する場合に比べてレジストヒーティングによる影響を大きく受けてしまうといった問題があった。上述した多重描画のように、各図形について1回あたりの照射量を少なくし、複数回同じ図形を重ねて描画して必要な照射量を得る手法もあるが、その他の手法でかかる問題を克服することも望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、レジストヒーティングによる影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
レジストが塗布された描画対象となる試料の描画領域が仮想分割された複数の小領域のそれぞれの小領域内に配置される複数の図形パターンの各パターンデータであって、図形パターン毎に、当該図形パターンが所属する小領域内でさらに複数のグループの1つに振り分けられるための振り分け識別子が定義された各パターンデータを記憶する記憶部と、
グループ毎に描画順序が並ぶように、各小領域に当該小領域に配置される各パターンデータを割り当てる割当処理部と、
荷電粒子ビームを用いて、グループ毎に、各小領域に当該小領域に配置される各図形パターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
かかる構成により、グループ内の図形配置状況を密の状態から解消できる。よって、1つのグループにおける照射量密度を小さくできる。そして、グループ毎に描画することで、前のグループで加熱された熱を次のグループを描画するまでに放熱させることができる。
【0011】
また、かかる複数の小領域がそれぞれ配置される複数の層を作成するレイヤ作成部をさらに備え、
割当処理部は、グループ毎に異なる層になるように複数の層のいずれかの層の小領域に各パターンデータを割り当て、
描画部は、各小領域に配置される各図形パターンを描画する際、1つの層の当該小領域内に割り当てられた図形パターンを描画した後、他の層の当該小領域内に割り当てられた図形パターンを描画するように構成すると好適である。
【0012】
また、各パターンデータには、さらに、当該図形パターンの必要精度レベルを示す精度レベル識別子が定義され、
割当処理部は、パターンデータ毎に、精度レベル識別子に応じて振り分け識別子が示すグループに振り分けるかどうかを判定し、判定の結果、振り分け識別子が示すグループに振り分けない場合には、振り分け識別子が示すグループとは異なる複数のグループの1つに当該パターンデータを割り当てるように構成すると好適である。
【0013】
また、描画部は、グループ間に待機時間を設けて、グループ毎に各図形パターンを描画すると好適である。
【0014】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
レジストが塗布された描画対象となる試料の描画領域が仮想分割された複数の小領域のそれぞれの小領域内に配置される複数の図形パターンの各パターンデータであって、図形パターン毎に、当該図形パターンが所属する小領域内でさらに複数のグループの1つに振り分けられるための振り分け識別子が定義された各パターンデータを記憶装置に記憶する工程と、
記憶装置から各パターンデータを読み出し、グループ毎に描画順序が並ぶように、各小領域に当該小領域に配置される各パターンデータを割り当てる工程と、
荷電粒子ビームを用いて、グループ毎に、各小領域に当該小領域に配置される各図形パターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レジストヒーティングによる影響を抑制することができる。よって、レジストヒーティングによる影響に起因したパターン寸法変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図3】実施の形態1におけるパターンデータのフォーマットの一例を示す図である。
【図4】実施の形態1における描画手順を説明するための概念図である。
【図5】実施の形態1におけるSFレイヤを説明するための概念図である。
【図6】実施の形態1における属性情報を用いてSF内の複数の図形パターンを複数のSFレイヤに割当てる場合の一例を示す図である。
【図7】実施の形態1における属性情報を用いてSF内の複数の図形パターンを複数のSFレイヤに割当てる場合の他の一例を示す図である。
【図8】実施の形態1における属性情報を用いてSF内の複数の図形パターンを複数のSFレイヤに割当てる場合の他の一例を示す図である。
【図9】図7に示した実施の形態1における属性情報を用いて精度パラメータを変更した場合の割り振りの状況を示す図である。
【図10】図8に示した実施の形態1における属性情報を用いて精度パラメータを変更した場合の割り振りの状況を示す図である。
【図11】実施の形態1における描画順序の一例を示す図である。
【図12】実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
【図13】実施の形態2における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図14】実施の形態2における属性情報を用いてSF内の複数の図形パターンを描画する場合の一例を示す図である。
【図15】実施の形態2におけるパターンデータファイルの一例を示す図である。
【図16】実施の形態2におけるパターンデータファイルの他の一例を示す図である。
【図17】従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、主偏向器208及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0019】
制御部160は、制御計算機ユニット110、メモリ112、制御回路120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144を有している。制御計算機ユニット110、メモリ111、制御回路120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0020】
制御計算機ユニット110内には、ブロック割当部50、サブフィールド(SF)レイヤ数決定部52、SFレイヤ作成部54、SF割当部56、ショットデータ生成部58、及び描画処理部59が配置されている。ブロック割当部50、サブフィールド(SF)レイヤ数決定部52、SFレイヤ作成部54、SF割当部56、ショットデータ生成部58、及び描画処理部59といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。ブロック割当部50、サブフィールド(SF)レイヤ数決定部52、SFレイヤ作成部54、SF割当部56、ショットデータ生成部58、及び描画処理部59に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。また、SF割当部56内には、取得部60,62、判定部64,68、及び割当処理部66が配置される。取得部60,62、判定部64,68、及び割当処理部66といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。取得部60,62、判定部64,68、及び割当処理部66に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される点は同様である。
【0021】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。
【0022】
図2は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。図2において、処理ブロックへのパターンデータ割当工程(S102)と、SFレイヤ数決定工程(S104)と、SFレイヤ作成工程(S106)と、SF割当工程(S108)と、ショットデータ生成工程(S140)と、描画工程(S142)という一連の工程を実施する。SF割当工程(S108)内では、その内部工程として、ブロック内パターンデータ取得工程(S110)と、属性情報取得工程(S112)と、判定工程(S114)と、SF割当工程(S116)或いは(S118)と、判定工程(S120)という一連の工程を実施する。
【0023】
図3は、実施の形態1におけるパターンデータのフォーマットの一例を示す図である。図3において、パターンデータには、対象となる図形パターンの図形コード、図形パターンのサイズ、図形パターンの配置位置、及び属性情報が定義される。ここでは、一例として、パターンデータ内に図形パターンの配置位置の情報も定義しているが、これに限るものではない。例えば、配置位置情報は、別のファイルとして作成して、パターンデータファイルには、代わりに配置位置情報にリンクさせるための識別子を定義するように構成してもよい。
【0024】
図4は、実施の形態1における描画手順を説明するための概念図である。描画装置100では、試料101の描画領域が短冊状の複数のストライプ領域20に仮想分割される。図4では、例えば、1つのチップが試料101の描画領域10上に描画される場合を示している。もちろん、複数のチップが試料101の描画領域10上に描画される場合であっても構わない。かかるストライプ領域20の幅は、主偏向器208で偏向可能な幅よりも若干小さい幅で分割される。試料101に描画する場合には、XYステージ105を例えばx方向に連続移動させる。このように連続移動させながら、1つのストライプ領域20上を電子ビーム200が照射する。XYステージ105のX方向の移動は、例えば連続移動とし、同時に主偏向器208で電子ビーム200のショット位置もステージ移動に追従させる。また、連続移動させることで描画時間を短縮させることができる。また、パターンの密な領域では描画可能な相対的にゆっくりな速度で、粗な領域では相対的に速い速度で、といった可変速でXYステージ105を移動させることで、さらに、描画時間を短縮させるようにしても好適である。そして、1つのストライプ領域20を描画し終わったら、XYステージ105をy方向にステップ送りしてx方向(例えば今度は逆向き)に次のストライプ領域20の描画動作を行なう。各ストライプ領域20の描画動作を蛇行させるように進めることでXYステージ105の移動時間を短縮することができる。
【0025】
図5は、実施の形態1におけるSFレイヤを説明するための概念図である。各ストライプ領域20を描画する際には、試料101の描画領域をメッシュ状の複数のサブフィールド(SF)領域30に仮想分割して、SF毎に描画していくことになる。SF領域30の幅は、副偏向器209で偏向可能な幅よりも若干小さい幅で分割される。SF領域は、描画装置100で描画する領域の中では最小偏向領域となる。
【0026】
図6は、実施の形態1における属性情報を用いてSF内の複数の図形パターンを複数のSFレイヤに割当てる場合の一例を示す図である。図6では、「A」で示す複数の図形パターン42と「B」で示す複数の図形パターン44とが1つのSFn内に密に配置されるレイアウト構成である場合を示している。描画する際には、まず、主偏向器208で描画対象となるSF領域の基準位置に電子ビーム200の偏向位置を合わせる。そして、副偏向器209により、SF内の各図形パターンの描画位置に1ショット毎に成形されたビームを照射する。そして、ショット毎に位置やビーム形状を変更させ、ショットされた各形状をつなぎあわせていくことで図形パターンを描画することになる。その際、図6に示すように、1つのSFn(ここでは、n番目のSFをSFnと示す)内に密に複数の図形パターン42,44が配置される場合を想定する。かかる密に複数の図形パターン42,44を連続して描画すると、照射量密度が高くなり、レジストヒーティングにより描画されたパターンの寸法が変動してしまう。
【0027】
そこで、実施の形態1では、同じSF領域に複数のレイヤ(層)を設け、1つのSF領域内に配置される複数の図形パターンを複数のSFレイヤに割り振る。図6の例では、「A」で示す複数の図形パターン42を1層目のSFレイヤの該当するSF(SFn−1で示す)に割り振る。そして、「B」で示す複数の図形パターン44を2層目のSFレイヤの該当するSF(SFn−2で示す)に割り振る。割り振る際には、描画した際の照射量密度が高くなりすぎないようにどちらのSFレイヤに割り振るかを決定しておけばよい。その際、何層目のSFレイヤに割り振るかをパターンデータの属性情報として定義しておけばよい。図6の例では、図形パターン42のパターンデータには、1層目のSFレイヤに割り振ることを示す識別子「1」を属性情報として定義する。一方、図形パターン44のパターンデータには、2層目のSFレイヤに割り振ることを示す識別子「2」を属性情報として定義する。かかる属性情報を判定することで、図形パターンをSFに割り当てる際に、どの層のSFレイヤの該当SFに割当るかを把握できる。
【0028】
以上のように、同じSF内で、複数の図形が密に配置されるレイウアトや、図形同士が重なるように配置されるレイウアトを描画する場合に、当該SFを複数のSFレイヤとして設け、複数の図形をいずれかのSFレイヤに割り振ることで、SFレイヤあたりの粗密を粗に近づけることができる。言い換えれば、SFレイヤあたりの照射量密度を元々の状態より低くできる。よって、各SFについて、1層目のSFレイヤのSFを描画した後、2層目のSFレイヤの対応するSFを描画するまでには、時間が経過しているため、その間にレジストに蓄積した熱を放熱させることができる。その結果、レジストヒーティングに起因したパターンの寸法変動を回避できる。
【0029】
上述した例では、属性情報として、振り分けられるSFレイヤの振り分け識別子が定義されている場合を説明したが、各パターンデータには、さらに、当該図形パターンの必要精度レベルを示す精度レベル識別子が定義されても好適である。
【0030】
図7は、実施の形態1における属性情報を用いてSF内の複数の図形パターンを複数のSFレイヤに割当てる場合の他の一例を示す図である。図7では、属性情報として例えば「xy」2桁の識別子が定義される。例えば1桁目の「y」が示す識別子は、上述したSFレイヤの振り分け識別子を示す。2桁目の「x」が示す識別子は、当該図形パターンの精度レベルを示す。例えば、属性情報「11」では、振り分けられるSFレイヤが1層目のSFレイヤであり、精度レベルが「1」である図形パターンであることを示す。属性情報「12」では、振り分けられるSFレイヤが2層目のSFレイヤであり、精度レベルが「1」である図形パターンであることを示す。属性情報「21」では、振り分けられるSFレイヤが1層目のSFレイヤであり、精度レベルが「2」である図形パターンであることを示す。属性情報「22」では、振り分けられるSFレイヤが2層目のSFレイヤであり、精度レベルが「2」である図形パターンであることを示す。
【0031】
図7の例では、SF60(SF1)内に、3つの図形パターン1,2,3が配置される場合を示している。また、3つの図形パターン1,2,3は一部が互いに重なっている場合を想定している。このまま、描画してしまうと、重なった位置での照射量密度が高くなり、レジストヒーティングによる寸法変動を引き起こす。そこで、上述した例では、図形の重なりを無くすように図形パターンを複数のSFレイヤに振り分けて、レジストヒーティングを解消しようとするものであった。しかしながら、SFレイヤ数が増加すれば、その分、描画時間が増加してしまう。図形パターンが求められる精度レベルによっては、寸法変動が生じても構わないパターンも存在する。そこで、そのような図形パターンについては、複数のSFレイヤに振り分けずにそのまま描画する。それにより、描画時間の増加を抑制できる。そこで、実施の形態1では、予め記憶装置142に格納した精度パラメータと各パターンデータに定義された精度レベル識別子(属性レベル)を比較することによって、複数のSFレイヤに振り分けるかどうかを判定する。具体的には、各パターンデータに定義された精度レベル識別子が示す精度レベルが描画装置100に入力され設定された精度パラメータ以下のパターンデータについてだけ、複数のSFレイヤに振り分ける。
【0032】
図7の例では、図形パターン1(a)の属性情報は「21」、図形パターン2(b)の属性情報は「22」、図形パターン3(c)の属性情報は「21」である場合を想定する。図7の例では、描画装置100に入力され設定された精度パラメータが「2」である場合を示している。SF60内に配置される3つの図形パターン1,2,3はいずれも属性情報2桁目の値が「2」であるので、精度パラメータ以下に該当する。よって、3つの図形パターン1,2,3はいずれも複数のSFレイヤに振り分け可能と判定される。そこで、「a」で示す図形パターン1と「c」で示す図形パターン3は、属性情報1桁目の値が「1」であるので、1層目のSF62(SF1−1)に振り分けられる。他方、「b」で示す図形パターン2は、属性情報1桁目の値が「2」であるので、2層目のSF64(SF1−2)に振り分けられる。
【0033】
図8は、実施の形態1における属性情報を用いてSF内の複数の図形パターンを複数のSFレイヤに割当てる場合の他の一例を示す図である。図8では、SF70(SF2)内に、3つの図形パターン4,5,6が配置される場合を示している。また、3つの図形パターン4,5,6は一部が互いに重なっている場合を想定している。
【0034】
図8の例では、図形パターン4(d)の属性情報は「11」、図形パターン5(e)の属性情報は「12」、図形パターン6(f)の属性情報は「11」である場合を想定する。図8の例では、描画装置100に入力され設定された精度パラメータが「2」である場合を示している。SF70内に配置される3つの図形パターン4,5,6はいずれも属性情報2桁目の値が「1」であるので、精度パラメータ以下に該当する。よって、3つの図形パターン4,5,6はいずれも複数のSFレイヤに振り分け可能と判定される。そこで、「d」で示す図形パターン4と「f」で示す図形パターン6は、属性情報1桁目の値が「1」であるので、1層目のSF72(SF2−1)に振り分けられる。他方、「e」で示す図形パターン5は、属性情報1桁目の値が「2」であるので、2層目のSF74(SF2−2)に振り分けられる。
【0035】
ここで、例えば、描画装置100に入力され設定された精度パラメータが「1」である場合を想定すると以下のように変化する。
【0036】
図9は、図7に示した実施の形態1における属性情報を用いて精度パラメータを変更した場合の割り振りの状況を示す図である。図7に示した場合と同様、SF60(SF1)内に、3つの図形パターン1,2,3が配置される場合を示している。また、3つの図形パターン1,2,3は一部が互いに重なっている場合を想定している。図9の例では、図7と同様、図形パターン1(a)の属性情報は「21」、図形パターン2(b)の属性情報は「22」、図形パターン3(c)の属性情報は「21」である場合を想定する。SF60内に配置される3つの図形パターン1,2,3はいずれも属性情報2桁目の値が「2」であるので、精度パラメータ以下に該当しない。よって、3つの図形パターン1,2,3はいずれも複数のSFレイヤに振り分け不可と判定される。その場合、3つの図形パターン1,2,3は共に、1番目(1層目)のSFレイヤのSF62(SF1−1)に振り分けられる。
【0037】
図10は、図8に示した実施の形態1における属性情報を用いて精度パラメータを変更した場合の割り振りの状況を示す図である。図8に示した場合と同様、SF70(SF2)内に、3つの図形パターン4,5,6が配置される場合を示している。また、3つの図形パターン4,5,6は一部が互いに重なっている場合を想定している。図10の例では、図8と同様、図形パターン4(d)の属性情報は「11」、図形パターン5(e)の属性情報は「12」、図形パターン6(f)の属性情報は「11」である場合を想定する。SF70内に配置される3つの図形パターン4,5,6はいずれも属性情報2桁目の値が「1」であるので、精度パラメータ以下に該当する。よって、3つの図形パターン4,5,6はいずれも複数のSFレイヤに振り分け可能と判定される。そこで、「d」で示す図形パターン4と「f」で示す図形パターン6は、属性情報1桁目の値が「1」であるので、1層目のSF72(SF2−1)に振り分けられる。他方、「e」で示す図形パターン5は、属性情報1桁目の値が「2」であるので、2層目のSF74(SF2−2)に振り分けられる。
【0038】
以上のように、精度パラメータと各パターンデータの精度レベルとによって、SFレイヤを分けるかどうかを判定するように構成することで、寸法精度が高精度であることが要求される図形パターンについてだけ複数のSFレイヤに振り分けてレジストヒーティングに起因したパターンの寸法変動を回避できる。他方、寸法精度が高精度であることが要求されない図形パターンについてはあえて複数のSFレイヤに振り分けず、同じ層内で連続して描画することで描画時間の増加を抑制できる。ここで、上述した例では、各パターンデータの精度レベルが「1」と「2」の場合を示したが、これに限るものではなく、「3」以上の値であってもよい。同様に、精度パラメータの値も「1」と「2」の場合を示したが、これに限るものではなく、「3」以上の値であってもよい。あくまで、各パターンデータの精度レベルが精度パラメータ以下かどうかで判定すればよい。ここでは、各パターンデータの精度レベルの値が小さいほど高精度が要求されるように設定された場合を示したが、これに限るものではない。逆に、各パターンデータの精度レベルの値が大きいほど高精度が要求されるように設定する場合には、各パターンデータの精度レベルが精度パラメータ以上かどうかで判定すればよい。
【0039】
図6〜10の例では、属性情報の1桁目が「1」と「2」の2層になっているので、ここでは、2層のSFレイヤを作成することになる。そこで、まず、2層目のSFレイヤを構成するように、まず、図4に示すように描画領域10が、2層目の複数のストライプ領域22に仮想分割される。そして、図5に示すように、1層目の各ストライプ領域20は、複数のSF領域30に仮想分割される。そして、かかる複数のSF領域30によって、1層目のSFレイヤが構成される。同様に、2層目の各ストライプ領域22は、複数のSF領域40に仮想分割される。そして、かかる複数のSF領域40によって、2層目のSFレイヤが構成される。図5では、1層目のSFレイヤと2層目のSFレイヤがy方向にSFサイズよりも小さい寸法c1、x方向にSFサイズよりも小さい寸法c2だけそれぞれずらして配置される例を示している。例えば、SFサイズの1/2ずつx,y方向にずらす。ずらすことでストライプ領域間及びストライプ領域内のSF間でもパターンつなぎ精度を向上させることができる。また、各ストライプ領域20,22のy方向の分割幅(分割高さ)hは、主偏向器208で偏向可能な主偏向幅Dより小さく構成される。ここでは、ずらして配置されたストライプ領域20とストライプ領域22の両方を偏向可能範囲内に納める。すなわち、D≧h+c1で構成される。かかる寸法に制御することでXYステージ105をx方向に向かって連続移動させながらストライプ領域20とストライプ領域22の両方を描画可能にすることができる。言い換えれば、XYステージ105を戻さなくとも1回の描画分の走行でストライプ領域20とストライプ領域22の両方を描画可能にすることができる。
【0040】
以下、実施の形態1における描画装置100内で実行される描画方法を工程順に説明する。
【0041】
まず、記憶装置140(記憶部の一例)には、レイアウトデータ(描画データ)が装置外部から入力され、格納される。レイアウトデータには、レジストが塗布された描画対象となる試料の描画領域が仮想分割された複数の小領域のそれぞれの小領域内に配置される複数の図形パターンの各パターンデータが定義される。さらに、各パターンデータには、図形パターン毎に、当該図形パターンが所属するSF(小領域)内でさらに複数のSFレイヤ(複数のグループの一例)の1つに振り分けられるための振り分け識別子が定義される。ここでは、振り分け識別子が上述した属性情報として付加されている。よって、記憶装置140には、これらの各パターンデータが記憶される。また、記憶装置142には、例えば、精度パラメータの情報が装置外部から入力され、格納される。但し、各パターンデータに対して、属性情報として、精度レベル識別子が定義されていない場合には、上述した精度パラメータの情報は無くても構わない。そして、描画処理部59の制御の下、各構成が以下のように動作する。
【0042】
処理ブロックへのパターンデータ割当工程(S102)として、ブロック割当部50は、ストライプ領域20を複数のデータ処理ブロックに仮想分割し、各処理ブロックに該当するパターンデータを割り当てる。処理ブロック単位で当該処理ブロック内に配置される図形パターンのパターンデータがデータ処理されることになる。各ストライプ領域20は、複数の処理ブロックに分割されることになるが、制御計算機110に搭載されるCPU等の数に応じて、複数の処理ブロックについて、並列的にデータ処理を行うと好適である。以下、実施の形態1では、1つの処理ブロック内のパターンデータ処理について説明する。
【0043】
SFレイヤ数決定工程(S104)として、SFレイヤ数決定部52は、当該処理ブロック内の各パターンデータの属性情報を読み出し、必要なSFレイヤ数を決定する。図6〜図10の例では、属性情報の1桁目が、「1」或いは「2」なので、SFレイヤ数が2層と決定することになる。ここで、各パターンデータに対して、属性情報として、精度レベル識別子が定義されている場合には、SFレイヤ数決定部52は、記憶装置142から精度パラメータを読み出し、属性情報の2桁目の精度レベルが精度パラメータ以下のパターンデータについてだけ、属性情報1桁目の値に応じたSFレイヤ数を決定すればよい。具体的には、図9と図10に示した場合が混在する場合には、必要なSFレイヤ数が多くなる図10に沿ったSFレイヤ数に決定することになる。
【0044】
SFレイヤ作成工程(S106)として、SFレイヤ作成部54は、複数のSF(小領域)がそれぞれ配置される複数のSFレイヤ(層)を作成する。SFレイヤ作成部54は、レイヤ作成部の一例である。具体的には、SFレイヤ作成部54は、決定されたSFレイヤ数に応じたSFレイヤを作成する。図6〜図10の例では、2層のSFレイヤを作成する。図5の例では、複数のSF領域30によって、1層目のSFレイヤが構成される。同様に、複数のSF領域40によって、2層目のSFレイヤが構成される。
【0045】
SF割当工程(S108)として、SF割当部56は、SFレイヤ(グループ)毎に描画順序が並ぶように、各SF(小領域)に当該SFに配置される各パターンデータを割り当てる。SF割当部56は、割当処理部の一例である。描画は、SF単位で行われるので、例えば、1層目のSFレイヤのあるSFの描画中に2層目の対応するSFが描画されることはない。よって、1層目のSFレイヤのSFn−1に一方のグループ(属性情報1桁目が「1」)のグループ)のパターンデータを割当て、2層目のSFレイヤの対応するSFn−2に他方のグループ(属性情報1桁目が「2」のグループ)のパターンデータを割当てれば、描画の際、グループ毎に描画順序が並ぶことになる。また、SF割当部56は、パターンデータ毎に、精度レベル識別子に応じて振り分け識別子が示すグループに振り分けるかどうかを判定し、判定の結果、振り分け識別子が示すグループに振り分けない場合には、振り分け識別子が示すグループとは異なる複数のグループの1つに当該パターンデータを割り当てる。言い換えれば、いずれかのSFレイヤのSFに当該パターンデータを割り当てる。SF割当工程(S108)では、その内部工程として、具体的には、以下の工程が実施される。
【0046】
ブロック内パターンデータ取得工程(S110)として、取得部60は、当該処理ブロックに割当てられたパターンデータを取得する。
【0047】
属性情報取得工程(S112)として、取得部62は、各パターンデータから属性情報を参照して、取得する。
【0048】
判定工程(S114)として、判定部64は、記憶装置142から制度パラメータを読み出し、パターンデータ毎に、属性情報の精度レベルが精度パラメータ以下かどうかを判定する。或いは、属性情報に精度レベル識別子が無いかどうかを判定する。そして、属性情報の精度レベルが精度パラメータ以下の場合、或いは精度レベル識別子が無い場合にはSF割当工程(S116)に進む。属性情報の精度レベルが精度パラメータ以下でない場合には、SF割当工程(S118)に進む。
【0049】
そして、割当処理部66は、グループ毎に異なるSFレイヤになるように複数のSFレイヤのいずれかのSFレイヤのSFに各パターンデータを割り当てる。具体的には以下のように割り当てる。
【0050】
SF割当工程(S116)として、割当処理部66は、属性情報の精度レベルが精度パラメータ以下のパターンデータ、或いは精度レベル識別子が無いパターンデータについて、属性情報1桁目が示すSFレイヤの対応するSFに当該パターンデータを割り当てる。
【0051】
SF割当工程(S118)として、割当処理部66は、属性情報の精度レベルが精度パラメータ以下でないパターンデータについて、1層目のSFレイヤの対応するSFに当該パターンデータを割り当てる。
【0052】
判定工程(S120)として、判定部68は、処理ブロック内のすべてのSFについて終了したかどうかを判定する。まだSF割当処理が済んでいないSFが存在する場合には、S110に戻り、処理ブロック内のすべてのSFについてSF割当処理が終了するまで、S110からS120までを繰り返す。
【0053】
ショットデータ生成工程(S140)として、ショットデータ生成部58は、SF割当処理が終了したパターンデータについて、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズに各図形パターンを分割する必要がある。そこで、ショットデータ生成部58は、各パターンデータが示す図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、照射位置、及び照射量が定義される。これらのショットデータは、SFレイヤ別に、当該SFレイヤのSF毎に順に定義される。生成されたショットデータは記憶装置144に順次一時的に格納される。
【0054】
描画工程(S142)として、描画処理部59は、制御回路120を制御して、描画部150に描画処理を実行させる。制御回路120は、記憶装置144からショットデータを順次読み出し、描画部150を制御して、試料101の所望する位置に各図形パターンを描画する。描画部150は、電子ビーム200を用いて、グループ毎に、各SFに当該SFに配置される各図形パターンを描画する。各ストライプについて、例えば、以下に示すSF順序に従って描画が行なわれる。
【0055】
図11は、実施の形態1における描画順序の一例を示す図である。図11の例において、各ストライプについて、XYステージ105の移動方向(x方向)と直交する方向(y方向)に並ぶ複数のSF領域で構成されるSF領域群単位で1層目のSFレイヤの描画と2層目のSFレイヤの描画とを交互に繰り返すように描画動作を制御する。ここでの制御内容は、図11(a)に示すように、まず、1層目のSFレイヤの1列目について、左下のSF領域30からy方向に向かって順に描画する。そして、対象ストライプ領域20におけるSFレイヤ1層目の1列目がすべて描画された後、今度は、図11(b)に示すように、2層目のSFレイヤの1列目について、左下のSF領域40からy方向に向かって順に描画する。そして、対象ストライプ領域22におけるSFレイヤ2層目の1列目がすべて描画された後、今度は、図11(c)に示すように、1層目のSFレイヤの2列目について、左下のSF領域30からy方向に向かって順に描画する。そして、対象ストライプ領域20におけるSFレイヤ1層目の2列目がすべて描画された後、今度は、図11(d)に示すように、2層目のSFレイヤの2列目について、左下のSF領域40からy方向に向かって順に描画する。同様に、SF列単位で1層目のSFレイヤの描画と2層目のSFレイヤの描画とを交互に繰り返し、図11(e)に示すように、1つのストライプ領域20,22を描画する。
【0056】
そして、描画部150は、XYステージ105がx方向(所定の方向)に連続移動している状態で、電子ビーム200を用いて、図11に示したようにSF列単位で1層目のSFレイヤの描画と2層目のSFレイヤの描画とを交互に繰り返す。具体的には、以下のように動作する。
【0057】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208でストライプ領域を仮想分割したSFの基準位置にステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置にかかる該当ショットのビームを偏向すればよい。
【0058】
以上のような描画順序で描画動作を進めれば、XYステージ105の位置を戻すことなく、1回の描画分の走行で連続して1層目のSFレイヤの描画と2層目のSFレイヤの描画を行うことができる。
【0059】
以上のように、描画部150は、各SFに配置される各図形パターンを描画する際、1つのSFレイヤ(層)の当該SF内に割り当てられた図形パターンを描画した後、他のSFレイヤ(層)の当該SF内に割り当てられた図形パターンを描画する。かかる構成により、1層目のSFを描画した後、2層目のSFを描画するまでに1層目のSFを描画した際の熱を放熱させることができる。よって、レジストヒーティングによるパターン寸法変動を抑制できる。
【0060】
実施の形態2.
実施の形態1では、同じSFを複数のSFレイヤに分け、密に配置された、或いは重なって配置された複数の図形をいずれかのSFレイヤに割り振ることで、パターンの寸法変動を回避した。しかし、レジストヒーティングに起因したパターンの寸法変動を回避する手法はこれに限るものではない。実施の形態2では、同じSFを複数のSFレイヤに分けずにレジストヒーティングに起因したパターンの寸法変動を回避する手法について説明する。
【0061】
図12は、実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。図12において、SFレイヤ数決定部52、SFレイヤ作成部54、及び判定部64が削除され、判定部68の代わりに判定部69が配置され、割当処理部66の代わりに割当処理部67が配置された点以外は、図1と同様である。ブロック割当部50、SF割当部56、ショットデータ生成部58、及び描画処理部59といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。ブロック割当部50、SF割当部56、ショットデータ生成部58、及び描画処理部59に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。取得部60,62、判定部69、及び割当処理部67といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。取得部60,62、判定部69、及び割当処理部67に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される点は同様である。
【0062】
図13は、実施の形態2における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。図13において、処理ブロックへのパターンデータ割当工程(S102)と、SF割当工程(S130)と、ショットデータ生成工程(S140)と、描画工程(S142)という一連の工程を実施する。SF割当工程(S130)内では、その内部工程として、ブロック内パターンデータ取得工程(S132)と、属性情報取得工程(S134)と、SF割当工程(S136)と、判定工程(S138)という一連の工程を実施する。以下、特に説明しない内容は、実施の形態1と同様である。
【0063】
図14は、実施の形態2における属性情報を用いてSF内の複数の図形パターンを描画する場合の一例を示す図である。図14の例では、SF60(SF1)内に、3つの図形パターン1,2,3が配置される場合を示している。また、3つの図形パターン1,2,3は一部が互いに重なっている場合を想定している。このまま、描画してしまうと、重なった位置での照射量密度が高くなり、レジストヒーティングによる寸法変動を引き起こす。そこで、実施の形態2では、属性情報として例えば「z」1桁の識別子が定義される。例えば「z」が示す識別子は、同じSF内の複数の図形パターンを複数のグループに振り分けるための振り分ける識別子の一例である。例えば、属性情報「1」では、振り分けられるグループが第1番目のグループであることを示す。属性情報「2」では、振り分けられるグループが第2番目のグループであることを示す。
【0064】
図14の例では、図形パターン1(a)の属性情報は「1」、図形パターン2(b)の属性情報は「2」、図形パターン3(c)の属性情報は「1」である場合を想定する。そこで、「a」で示す図形パターン1と「c」で示す図形パターン3は、属性情報の値が「1」であるので、第1番目のグループに振り分けられる。他方、「b」で示す図形パターン2は、属性情報の値が「2」であるので、第2番目のグループに振り分けられる。但し、3つの図形パターン1,2,3のパターンデータは、同じSF60に割当られる。
【0065】
まず、記憶装置140(記憶部の一例)には、レイアウトデータ(描画データ)が装置外部から入力され、格納される。レイアウトデータには、上述したように、レジストが塗布された描画対象となる試料の描画領域が仮想分割された複数のSFのそれぞれのSF内に配置される複数の図形パターンの各パターンデータが定義される。さらに、各パターンデータには、図形パターン毎に、当該図形パターンが所属するSF(小領域)内でさらに複数のグループの1つに振り分けられるための振り分け識別子が定義される。ここでは、振り分け識別子が上述した属性情報として付加されている。よって、記憶装置140には、これらの各パターンデータが記憶される。また、記憶装置142には、グループ間で描画を待機させる待機時間の情報が外部から入力され、格納される。待機時間は、パターンデータによって異なっても構わない。よって、待機時間の情報が複数あっても構わない。
【0066】
処理ブロックへのパターンデータ割当工程(S102)の内容は実施の形態1と同様である。
【0067】
SF割当工程(S130)として、SF割当部56は、グループ毎に描画順序が並ぶように、各SF(小領域)に当該SFに配置される各パターンデータを割り当てる。SF割当部56は、割当処理部の一例である。描画は、一方のグループ(属性情報が「1」のグループ)のパターンデータを描画した後、設定された待機時間を空けて、他方のグループ(属性情報が「2」のグループ)のパターンデータを描画する。これにより、描画の際、グループ毎に描画順序が並ぶことになる。SF割当工程(S130)では、その内部工程として、具体的には、以下の工程が実施される。
【0068】
ブロック内パターンデータ取得工程(S132)として、取得部60は、当該処理ブロックに割当てられたパターンデータを取得する。
【0069】
属性情報取得工程(S134)として、取得部62は、各パターンデータから属性情報を参照して、取得する。
【0070】
SF割当工程(S136)として、割当処理部67は、各SFにSF内の図形パターンのパターンデータを割り当てる際、グループ毎にパターンデータが並ぶようにパターンデータの定義順序を制御する。
【0071】
図15は、実施の形態2におけるパターンデータファイルの一例を示す図である。まず、割当処理部67は、記憶装置142から待機時間の情報を読み出す。そして、図15に示すように、まず、待機時間を定義する。続いて、グループ1(第1のグループ)に所属するパターンデータを順に定義する。次に、グループ間を識別するヌル(NULL)データを定義する。NULLデータは無なので、実質はスペースを空けることで表現できる。続いて、グループ2(第2のグループ)に所属するパターンデータを順に定義する。グループ数が3つ以上あれば、NULLデータを介して順に各グループのパターンデータを定義していけばよい。或いは、以下のようにパターンデータファイルを構成しても好適である。
【0072】
図16は、実施の形態2におけるパターンデータファイルの他の一例を示す図である。まず、割当処理部67は、記憶装置142から待機時間の情報を読み出す。そして、図16に示すように、まず、グループ1(第1のグループ)の待機時間を定義する。グループ1は待機時間が必要ないので「0」と定義すればよい。続いて、グループ1に所属するパターンデータを順に定義する。次に、グループ2(第2のグループ)の待機時間を定義する。グループ2の待機時間Xは、記憶装置142から読み出した待機時間を定義すればよい。続いて、グループ2に所属するパターンデータを順に定義する。グループ数が3つ以上あれば、待機時間Xを介して順に各グループのパターンデータを定義していけばよい。
【0073】
判定工程(S138)として、判定部69は、処理ブロック内のすべてのSFについて終了したかどうかを判定する。まだSF割当処理が済んでいないSFが存在する場合には、S132に戻り、処理ブロック内のすべてのSFについてSF割当処理が終了するまで、S132からS138までを繰り返す。
【0074】
ショットデータ生成工程(S140)は、実施の形態1と同様である。そして、描画工程(S142)として、描画処理部59は、制御回路120を制御して、描画部150に描画処理を実行させる。制御回路120は、記憶装置144からショットデータを順次読み出し、描画部150を制御して、試料101の所望する位置に各図形パターンを描画する。そして、描画部150は、SF内のパターンを描画する際に、グループ間に待機時間を設けて、グループ毎に各図形パターンを描画する。待機時間は、先のグループの描画で蓄積した熱が放熱する時間に設定すればよい。
【0075】
以上のように、描画部150は、各SFに配置される各図形パターンを描画する際、グループ間に待機時間を設けることで、先のグループの描画で蓄積した熱を放熱させることができる。よって、レジストヒーティングによるパターン寸法変動を抑制できる。
【0076】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0077】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0078】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0079】
10 描画領域
20,22 ストライプ領域
30,40 SF領域
50 ブロック割当部
52 SFレイヤ数決定部
54 SFレイヤ作成部
56 SF割当部
58 ショットデータ生成部
59 描画処理部
60,62 取得部
64,68,69 判定部
66,67割当処理部
100 描画装置
101,340 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御計算機ユニット
112 メモリ
120 制御回路
140,142,144 記憶装置
150 描画部
160 制御部
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203,410 第1のアパーチャ
204 投影レンズ
205 偏向器
206,420 第2のアパーチャ
207 対物レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
330 電子線
411 開口
421 可変成形開口
430 荷電粒子ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストが塗布された描画対象となる試料の描画領域が仮想分割された複数の小領域のそれぞれの小領域内に配置される複数の図形パターンの各パターンデータであって、図形パターン毎に、当該図形パターンが所属する小領域内でさらに複数のグループの1つに振り分けられるための振り分け識別子が定義された各パターンデータを記憶する記憶部と、
グループ毎に描画順序が並ぶように、各小領域に当該小領域に配置される各パターンデータを割り当てる割当処理部と、
荷電粒子ビームを用いて、グループ毎に、各小領域に当該小領域に配置される各図形パターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記複数の小領域がそれぞれ配置される複数の層を作成するレイヤ作成部をさらに備え、
前記割当処理部は、グループ毎に異なる層になるように前記複数の層のいずれかの層の小領域に各パターンデータを割り当て、
前記描画部は、各小領域に配置される各図形パターンを描画する際、1つの層の当該小領域内に割り当てられた図形パターンを描画した後、他の層の当該小領域内に割り当てられた図形パターンを描画することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
各パターンデータには、さらに、当該図形パターンの必要精度レベルを示す精度レベル識別子が定義され、
前記割当処理部は、パターンデータ毎に、精度レベル識別子に応じて前記振り分け識別子が示すグループに振り分けるかどうかを判定し、判定の結果、前記振り分け識別子が示すグループに振り分けない場合には、前記振り分け識別子が示すグループとは異なる前記複数のグループの1つに当該パターンデータを割り当てることを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記描画部は、グループ間に待機時間を設けて、グループ毎に各図形パターンを描画することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
レジストが塗布された描画対象となる試料の描画領域が仮想分割された複数の小領域のそれぞれの小領域内に配置される複数の図形パターンの各パターンデータであって、図形パターン毎に、当該図形パターンが所属する小領域内でさらに複数のグループの1つに振り分けられるための振り分け識別子が定義された各パターンデータを記憶装置に記憶する工程と、
前記記憶装置から各パターンデータを読み出し、グループ毎に描画順序が並ぶように、各小領域に当該小領域に配置される各パターンデータを割り当てる工程と、
荷電粒子ビームを用いて、グループ毎に、各小領域に当該小領域に配置される各図形パターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−174780(P2012−174780A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33303(P2011−33303)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】