説明

荷電粒子線応用装置及び荷電粒子線応用方法

【課題】電子線描画装置等の荷電粒子線応用装置において、クロスオーバーの位置調整を容易にし、当該装置のスループットを向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】コンデンサーレンズ107の前側焦点面に、ビーム軸上にクロスオーバー104の高さを規定するための鋭利な端面(クロスオーバー規定エッジ208)を設ける。クロスオーバー規定エッジ208を用いて電子ビームの形状を測定することにより、電子銃が形成するクロスオーバー104の高さや光源形成レンズ105の抵抗が変化した場合でも、常に、コンデンサーレンズ107の前側焦点面におけるビームの形状を確認することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線応用装置及び荷電粒子線応用方法に関し、特に、半導体製造装置及び半導体検査装置に係る高速且つ高精度な荷電粒子応用装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、例えば、半導体製造プロセスに用いられる荷電粒子線応用技術においては、以下の技術が考えられる。
【0003】
半導体製造プロセスにおいて、ウェハ又はマスクを対象物として所望の回路パターンを描画する電子線描画装置が用いられている。また、対象物上に電子ビームを照射し、発生した二次電子等の信号から、対象物上に形成されたパターンの形状や欠陥の有無を調べる、電子顕微鏡又は電子線検査装置などが用いられている。
【0004】
これらの電子線を応用した半導体製造装置において、対象物を処理する速度、即ちスループットは精度とともに向上するべき重要な課題である。この課題を克服するため、例えば、特許文献1及び特許文献2などでは、複数の電子ビームを試料上に照射し、その複数の電子ビームを偏向させて試料上を走査させると共に、描画するべきパターンに応じて複数の電子ビームを個別にオン/オフしてパターンを描画するマルチビーム方式が提案されている。この形態の電子ビーム描画装置の一例を図13の概略図を用いて説明する。
【0005】
図13において、一点鎖線はビーム軸と呼ばれ、略回転対称に形成された電子銃及び電磁レンズ等の光学素子の対称軸が一致するべき軸であり、ビーム行路の基準となる。
【0006】
この例では、大きな電流が得やすく電子放出も安定した熱電子銃を用いている。仕事関数の低い物質よりなる陰極101を加熱し、陰極表面の障壁を乗り越えるのに充分なエネルギーを電子に与え、陰極101に対して高い電位を持つ陽極103に向かって電子を加速させる。104は電子ビームのクロスオーバーである。クロスオーバーとは、同一陰極内の異なる位置から同一方向に放出された電子ビームが交わる時、形成する像のことである。クロスオーバーの大きさ(直径)をクロスオーバー径、ビーム軸上におけるクロスオーバーの形成される位置をクロスオーバー高さと呼ぶ。
【0007】
光源形成レンズ105は、クロスオーバー104を縮小して結像させる作用を持つ電磁レンズである。即ちクロスオーバー104の第1の中間像が形成される。ここでは、これを光源として用いるので、以下、光源クロスオーバー106と呼ぶ。
【0008】
なお、図14に示したように、電子銃から放出される電子ビームがクロスオーバーを形成せず、光源形成レンズ105に入射する場合もある。この場合も、光源形成レンズ側から電子ビームの軌道を直線で外挿するとビーム軸上で交わる点104bを仮想的にクロスオーバーとして扱えば同様に考えることが出来る。このため、104bは仮想クロスオーバーと呼ばれる。
【0009】
この光源クロスオーバー106を光源として、コンデンサーレンズ107は略平行な電子ビームを作る。コンデンサーレンズ107は電磁レンズである。108は、開口が2次元に配列して形成されたアパーチャーアレイである。109は、同一の焦点距離を持つ静電レンズが2次元に配列して形成されたレンズアレイである。110及び111は、個別に駆動することが可能な静電偏向器が2次元に配列して形成された偏向器アレイである。112は、個別に駆動可能な静電のブランカーが2次元に配列して形成されたブランカーアレイである。
【0010】
コンデンサーレンズ107によって作られた略平行な電子ビームは、アパーチャーアレイ108によって複数の電子ビームに分割される。分割された電子ビームは、対応するレンズアレイ109のレンズ作用によって、ブランカーアレイ112の高さに収束する。即ち、クロスオーバーの第2の中間像が形成される。この時、偏向器アレイ110,111は、対応するビームを、対応するブランカー内の所望の位置を通過させるべく、各電子ビームの行路を個別に調整する。
【0011】
ブランカーアレイ112は、対応する電子ビームを試料上に照射するかしないかを個別に制御する。即ち、ブランカーにより偏向された電子ビームはブランキング絞り114によって遮断され、試料119上には到達しない。一方、ブランカーにより偏向されないビームは、ブランキング絞り114の開口を通過し、試料119上に到達する。
【0012】
縮小レンズ113,115及び対物レンズ116,118は、ブランカーアレイ112の高さに形成されたクロスオーバーの第2の中間像を、ステージ120上に搭載された試料119上に縮小投影する。縮小投影像の位置は、偏向器117による偏向量により決定される。
【特許文献1】特開2001−267221号公報
【特許文献2】特開2002−319532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、前記のような荷電粒子線応用技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0014】
例えば、前記のマルチビーム描画方式においては、アパーチャーアレイ108により形成されたビームが、対応する静電レンズの所望の位置を所望の角度で通過することが望ましい。図13の例では、静電レンズの中心をビーム軸に対して平行に通過するのが望ましい。これを、形成された電子ビーム全てについて実現させるためには、アパーチャーアレイ108における開口の配列間隔とレンズアレイ109の静電レンズの配列間隔が等しく、また、アパーチャーアレイ108とレンズアレイ109が良好に整列している必要がある。さらに、アパーチャーアレイ108に照射される電子ビームには高い平行度が求められる。
【0015】
これに対して、本出願人による先願明細書(特願2004−262830号)においては、光源であるクロスオーバーの中間像の高さに対して、コンデンサーレンズの前側焦点面を一致させることにより、アパーチャーアレイに対して電子ビームが平行に照射されるよう調整を行っている。
【0016】
一方、熱電子銃から放出される電子ビームの特性は、陰極材料の仕事関数と陰極温度、及び陰極表面での電場強度などで決まる。このうち、陰極材料の仕事関数を自由に操作することが難しいので、陰極101を加熱するヒーターの通電量により陰極温度をコントロールする。また、陰極101付近の電位分布を制御するべく設置したウェネルト電極102に印加する電圧により、電子ビームの特性をコントロールする。
【0017】
したがって、熱電子銃から放出される電子ビームの特性は、シミュレーション等によりある程度予測することが可能である。しかし実際には、電子銃の組み立て誤差や、加熱に伴う熱膨張がある他、さらに、高温に加熱される陰極101が、時間の経過と共に蒸発により形状が変化するため、電子銃内の電場分布を正確に予測することは困難である。また、陰極を加熱するヒーターの抵抗のばらつきや経時変化も陰極温度の誤差要因となる。これらの理由から、シミュレーションや過去のデータを基にした推測だけでは、クロスオーバーの高さを精度良く求めることは困難である。
【0018】
また、陰極101の交換や電子銃の調整の前後で、クロスオーバー104の高さが変化する可能性や、長期間の使用によって、クロスオーバー104の高さが徐々に変化する可能性も高い。
【0019】
したがって、一旦、前記先願明細書(特願2004−262830号)で開示された方法及び装置を用いて、コンデンサーレンズ107の前側焦点面をクロスオーバー104の中間像(光源クロスオーバー106)の高さに一致させても、上記の要因により、クロスオーバーの中間像の高さが変化するため、コンデンサーレンズ107の前側焦点面からずれてしまう。したがって、再度、コンデンサーレンズ107の調整を行う必要が生じるため、描画を開始するまでの調整時間が長くなり、描画装置のスループットが低下してしまう。
【0020】
また、光源クロスオーバー106とブランカーアレイ112の高さに収束したクロスオーバーの中間像の大きさの比は、光源クロスオーバー106からコンデンサーレンズ107の主面までの距離と、レンズアレイ109の主面からブランカーアレイ112までの距離の逆比で決定されるため、ずれた光源クロスオーバー106に対してコンデンサーレンズ107の前側焦点面を合わせると、ブランカーアレイ112の高さに収束したクロスオーバーの中間像の大きさを変えてしまう可能性がある。これは、試料上に到達する各ビームの大きさを変化させることを意味するため、描画精度に影響を与える。
【0021】
また、電磁レンズは電子銃に比べると制御性が高いが、周囲の温度の変化によりコイルの抵抗が変化し、レンズの焦点距離が変化する場合がある。これにより、次のような現象が起こる。
【0022】
(1)光源形成レンズ105の焦点距離が所望の値から変動すると、光源クロスオーバー106が所望の高さ、即ちコンデンサーレンズ107の前側焦点面からずれた高さに形成される。これにより、アパーチャーアレイ108に照射される電子ビームの平行度が低下する。
【0023】
(2)コンデンサーレンズ107の焦点距離の変動は、前側焦点面の変動を意味する。光源クロスオーバー106に対してコンデンサーレンズ107の前側焦点面がずれることになるため、(1)と同様に、アパーチャーアレイ108に照射される電子ビームの平行度が低下する。
【0024】
そこで、本発明の目的は、電子線描画装置等の荷電粒子線応用装置において、クロスオーバーの位置調整を容易にし、当該装置のスループットを向上させることができる技術を提供することにある。
【0025】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0027】
本発明は前記課題を解決するためのものであり、コンデンサーレンズの前側焦点面に端面を設けることを特徴とする。この端面を用いて電子ビームの形状を測定することにより、電子銃が形成するクロスオーバーの高さや光源形成レンズの抵抗が変化した場合でも、常に、コンデンサーレンズの前側焦点面におけるビームの形状を確認することが出来る。さらに、この端面を用いて計測されるビームの形状が最もシャープになるように光源形成レンズの焦点距離を調整することにより、クロスオーバーの中間像がコンデンサーレンズの前側焦点面に形成されるよう、調整することができる。
【0028】
なお、この端面は描画時にはビーム行路上の障害物となるので、略真空状態を低下させることなくビーム軸上から脱離可能な構造とする。
【0029】
また、本発明は、複数の電子ビームについて、対応するレンズ又はブランカーとの相対位置を測定し、初期調整時の相対位置と比較することを特徴とする。即ち、コンデンサーレンズの焦点距離の変化を監視し、焦点距離の変化が許容範囲を越える場合は調整を行う。これにより、アパーチャーアレイに照射される電子ビームの平行度を適切に管理することが出来る。
【発明の効果】
【0030】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0031】
クロスオーバーの位置調整が容易となり、荷電粒子線応用装置のスループットを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るマルチビーム方式の電子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。図1において、図13と同じ番号で示されているものは図13と同一のものであることを示す。
【0034】
まず、図1により、本実施の形態1に係るマルチビーム電子ビーム描画装置の構成の一例を説明する。本実施の形態1に係るマルチビーム電子ビーム描画装置は、例えば、陰極101とウェネルト電極102などからなる電子銃、陽極103、アライナー207、光源形成レンズ105、クロスオーバー規定エッジ208を搭載した可動ステージ209、コンデンサーレンズ107、アパーチャーアレイ108、レンズアレイ109、偏向器アレイ110,111、ブランカーアレイ112、縮小レンズ113,115、ブランキング絞り114、対物レンズ116,118、偏向器117、ステージ120、ファラデーカップ210、制御装置201などから構成されている。また、この電子ビーム描画装置は、荷電粒子ビーム行路を真空に保つ真空ポンプを備えている。
【0035】
制御装置201は、電子銃制御部202、機構制御部203、光学系制御部204、ブランカー制御部205、データ処理部206などから構成されている。電子銃制御部202は、電子銃と電気的に接続されている。機構制御部203は、可動ステージ209、ステージ120と電気的に接続されている。光学系制御部204は、アライナー207、光源形成レンズ105、コンデンサーレンズ107、レンズアレイ109、偏向器アレイ110,111、縮小レンズ113,115、対物レンズ116,118と電気的に接続されている。ブランカー制御部205は、ブランカーアレイ112と電気的に接続されている。データ処理部206は、ファラデーカップ210と電気的に接続されている。
【0036】
発明が解決しようとする課題の項でも述べたように、本実施形態の電子ビーム描画装置においては、光源クロスオーバー106をコンデンサーレンズ107の前側焦点面に形成させ、アパーチャーアレイ108に照射される電子ビームの平行度を高精度に保つことが重要である。しかし、熱電子銃の組み立ての誤差や、陰極101の加熱に伴う電子銃の熱膨張、及び陰極の蒸発、ヒーター抵抗の機差や経時変化等の理由から、クロスオーバー104を所望の高さに形成させることは困難である。特に、陰極101の交換や調整の前後ではクロスオーバー104の高さが変化している場合が多い。これらに伴い光源クロスオーバー106の高さも変化する場合が多い。そこで、本実施形態では、陰極101の交換後及び調整後に、光源クロスオーバー106の高さを高精度に調整する。
【0037】
陰極101の交換後、又は電子銃の調整後、電子銃の加速電圧は制御装置201の電子銃制御部202を介して所望の値に設定される。また、電子銃から放出される電子ビームの電流が所望の値になるように、ウェネルト電極102に印加される電圧が設定される。
【0038】
図2は、クロスオーバー規定エッジ208の構成を示す図である。
【0039】
クロスオーバー規定エッジ208は、クロスオーバー結像レンズの結像面を規定するための鋭利な端面を備えた遮断板であり、例えば、モリブデン基盤301とモリブデン基盤301に設けられた開口302で構成され、可動ステージ209により支持されている、る。また、クロスオーバー規定エッジ208はコンデンサーレンズ107の前側焦点面に配置される。機構制御部203を介して可動ステージ209を駆動することにより、ビーム行路の略真空状態を低下させることなく、クロスオーバー規定エッジ208をビーム軸に対して出し入れすることができる。
【0040】
本実施形態における光源クロスオーバー106の高さの調整においては、クロスオーバー規定エッジ208をビーム軸上に挿入し、その上で電子ビームを走査する。
【0041】
クロスオーバー規定エッジ208には、アパーチャーアレイ108で分割される前の電子ビームが収束されるため、高い電流密度の電子ビームが照射される。このため、電子ビームが照射される部分には融点の高い材質を用いる必要がある。例えば、その融点は摂氏1000度以上が望ましい。本実施形態1においては、図2に示すように、融点の高いモリブデン基盤301に開口302を形成し、開口302の端面をクロスオーバー規定エッジとして用いた。材質としては、モリブデンの他に、タングステンやタンタルなども融点が高く、適している。また、熱を外部に逃がすためには充分に厚い基盤を用いる必要がある。その厚さは50ミクロン以上であることが望ましいが、本実施形態においては、厚さを100ミクロンとした。また、クロスオーバー規定エッジ208の部材として、導電性を持ち、非磁性であることが望ましい。
【0042】
電子ビームの走査には、従来、電子銃から放出される電子ビームの角度を下流の電子光学系に対して最適化するための電磁偏向器として用いられてきたアライナー207を用いる。即ち、光学系制御部204から発生される走査信号をアライナー207に入力し、電子ビームを一次元又は二次元で走査した上で、ステージ120上に設けたファラデーカップ210を用いて、開口302を通過した電子ビームの量を測定する。本実施形態においては、アライナー207による走査距離に依らず検出効率を一定にするため、開口が充分に大きなファラデーカップを用いたが、例えば、検出面積の大きな半導体検出器を用いても同様の機能である。
【0043】
図3は、ファラデーカップ210の検出信号の一次元プロファイルを測定した時の測定例を示す図である。横軸の走査距離はアライナー207による走査距離を示し、縦軸の信号量はファラデーカップ210の検出信号の量を示す。図3において、401,402,403で示された3つのプロファイルは、光源形成レンズ105に流す電流を3通りに変化させた時のプロファイルである。波形が最もシャープな401の条件において、電子ビームはクロスオーバー規定エッジ208上で最も良好に収束されているといえる。
【0044】
即ち、光学系制御部204は光源形成レンズ105の焦点距離を順次変化させ、データ処理部206はファラデーカップ210からの信号を基に、個々の条件における電子ビームの形状を求める。以上の手順により、クロスオーバー規定エッジ208上でビームが収束し、クロスオーバーの中間像が結ばれる条件を求める。
【0045】
これにより、クロスオーバーの中間像の高さをコンデンサーレンズ107の前側焦点面に対して高精度に一致させることが出来たので、機構制御部203は可動ステージ209を駆動することにより、クロスオーバー規定エッジ208を電子ビーム行路上から外す。そして、他の光学パラメータの調整が行われた後、制御装置201は描画を開始する。
【0046】
なお、本実施形態においては、クロスオーバー規定エッジ208上で一次元的にビームを走査し、一次元プロファイルを測定したが、二次元的に電子ビームを走査し、最もシャープな二次元画像が得られる条件をもって、ビームが最も収束している条件としてもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、図2のように、クロスオーバー規定エッジ208の開口形状を矩形としたが、開口の端面が測定対象である電子ビームの大きさに比べて充分に鋭利であれば、多角形・円形など他の形状でも同様の効果が得られる。また、鋭利なエッジを持った一次元の端面を用いてもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、ステージ120上に設けたファラデーカップ210を用いてプロファイル測定に必要な信号を得たが、開口302を通過した電子ビームの量が測定できれば、他の手段でも構わない。例えば、アパーチャーアレイ108など下流光学系の素子により反射される電子の量を測定してもよいし、ビーム行路上にフォトダイオードなどの計測素子を挿入してもよい。
【0049】
また、クロスオーバー規定エッジ208を電子光学鏡筒に対して電気的に浮かせれば、すなわち絶縁にすれば、流れ込む電流を直接測定することも可能であるので、これを、プロファイル測定に用いてもよい。
【0050】
本調整を、陰極の交換を含む電子銃の調整の後に行った結果、電子ビームがアパーチャーアレイに対して平行に照射される条件を高精度に求めることが出来た。これにより、ウェハ上に到達する電子ビームの位置精度が向上したため、補正に要する時間を短縮することが出来た。これにより、デバイス製造においてはスループットが向上した。
【0051】
なお、本実施形態を、電子銃の調整後だけでなく、定期的な光学パラメータ調整時に実施しても良い。
【0052】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係るマルチビーム方式の電子ビーム描画装置の構成を示す図である。図面内で図1及び図13と同じ番号で示されているものは、図1及び図13と同一のものであることを示す。
【0053】
本実施形態2においては、クロスオーバー104とコンデンサーレンズ107の前側焦点面の間に2段の電磁レンズ、即ち、第1光源形成レンズ501及び第2光源形成レンズ502を設ける。これらを用いて電子銃により形成されるクロスオーバーを縮小し、コンデンサーレンズ107の前側焦点面に結像させる。第1光源形成レンズ501及び第2光源形成レンズ502は併せてズームレンズとして用いられ、クロスオーバーは任意の倍率で縮小され、光源クロスオーバー106としてコンデンサーレンズ107の前側焦点面に結像される。
【0054】
したがって、本実施形態では、プロセスから求められる条件に合わせて光源の大きさを自由に決定することが出来る。例えば、高解像度を得るためには光源を小さくすればよいし、スループットを向上させるためには光源を大きくすることにより、1本あたりのビーム電流を大きくとればよい。
【0055】
第1光源形成レンズ501及び第2光源形成レンズ502をズームレンズとして用いるにあたり重要なことは、ズーム条件によらず、クロスオーバーの中間像をコンデンサーレンズ107の前側焦点面に形成させ、アパーチャーアレイ108に照射される電子ビームの平行度を高精度に保つことである。
【0056】
電磁レンズの焦点距離はシミュレーションによりある程度の精度で求めることが出来るが、特に電磁レンズの励磁を強くした場合などは、電流と磁場の関係の非線形性が強くなるため、シミュレーションの精度には限界がある。
【0057】
そこで、予め数通りのズーム条件について、第1光源形成レンズ501及び第2光源形成レンズ502に流す電流をシミュレーションにより求めておいた上で、光源クロスオーバー106とコンデンサーレンズ107の前側焦点面をより精度よく一致させるため、以下の手順で調整を行う。
【0058】
図5は、本実施の形態2において、クロスオーバーの結像条件を求める方法を示すフローチャートである。
【0059】
ステップS601で、機構制御部203を介して可動ステージ209を駆動し、クロスオーバー規定エッジ208を電子ビーム行路上に挿入する。
【0060】
ステップS602で、第1光源形成レンズ501及び第2光源形成レンズ502に、第1のズーム条件(N=1)としてシミュレーションにより求めておいた基準電流を流す。
【0061】
ステップS603で、アライナー207を用いて、電子ビームをクロスオーバー規定エッジ208上で走査しながら、ファラデーカップ210を用いて通過した電子ビームの量を測定し、クロスオーバー規定エッジ208上での電子ビームの大きさを求める。
【0062】
ステップS604で、結像条件、即ちビームの大きさが極小値を持つ条件が見つかるまで、第1光源形成レンズ501又は第2光源形成レンズ502の設定電流のうち一方を順次変化させる。
【0063】
ステップS602からステップS604を繰り返し、第1のズーム条件において光源クロスオーバーがコンデンサーレンズ107の前側焦点面に結像するレンズ条件を探す。
【0064】
ステップS605で、得られたレンズ条件の下での光源クロスオーバーの大きさを測定する。即ち、クロスオーバー規定エッジ208上で電子ビームを走査して得られた波形を一次微分し、光源クロスオーバー106のプロファイルを測定する。または、ステージ120上に縮小投影された電子ビームの大きさを測定しても良い。
【0065】
ステップS602からステップS605を複数のズーム条件について実施する。これにより、各ズーム条件に対応する、第1光源形成レンズ501及び第2光源形成レンズ502の設定電流、及び光源クロスオーバーの大きさが決まる。
【0066】
ステップS606で、ステップS602からステップS604で得られた、第1光源形成レンズ501及び第2光源形成レンズ502の結像条件とステップS605で得られたクロスオーバーの大きさを制御装置201に内蔵された記憶装置に格納する。
【0067】
第2のズーム条件(N=2)についてステップS602からステップS606を実行し、全ての結像条件が見つかるまで同様のステップを繰り返す。なお、Nは自然数であり、結像条件の組み合わせの数を示す。
【0068】
ステップS607で、機構制御部203を介して可動ステージ209を駆動することにより、クロスオーバー規定エッジ208を電子ビーム行路上から外す。
【0069】
図6は、上記の手順で求められた測定結果の一例を示すグラフであり、各光源クロスオーバーに対応する第1光源形成レンズ501及び第2光源形成レンズ502の最適な電流値を示す。図6(a)は光源クロスオーバーの大きさと第1光源形成レンズ501の電流値との関係を示し、図6(b)は光源クロスオーバーの大きさと第2光源形成レンズ502の電流値との関係を示す。
【0070】
図6において、曲線は、N=5の場合の測定点を基にフィッティングを行った結果である。光源クロスオーバーを小さくするためには、第1光源形成レンズ501に流す電流を大きくすることにより焦点距離を小さくする一方、第2光源形成レンズ502に流す電流を小さくすることにより焦点距離を大きくするとよいことが分かる。
【0071】
描画時には、この測定結果を基に、所望のクロスオーバー径に対応するレンズ電流値を求める。所望のクロスオーバー径に対応する測定点がない場合は、フィッティングにより求められた電流値を用いればよい。
【0072】
本調整を実施することにより、ズーム条件によらず、クロスオーバー104の中間像(光源クロスオーバー106)をコンデンサーレンズ107の前側焦点面に形成させ、アパーチャーアレイ108に照射される電子ビームの平行度を高精度に保つことが出来た。これにより、プロセス上最適な光源クロスオーバーの大きさを実現しつつ、前記実施の形態1と同程度の歩留まり及びスループットを得ることが出来た。
【0073】
(実施の形態3)
前記実施の形態1及び実施の形態2においては、クロスオーバー高さを規定するクロスオーバー規定エッジは単一であった。これに対して、本実施の形態3では、複数の高さのクロスオーバー規定エッジを用いる。
【0074】
図7は、本実施形態3に用いたクロスオーバー規定エッジの構造を示す図である。801、802及び803は、1つの可動ステージ804により支持された、高さの異なるクロスオーバー規定エッジである。本実施の形態3では、図1及び図4に示したクロスオーバー規定エッジ208及び可動ステージ209の代わりに、クロスオーバー規定エッジ801,802,803及び可動ステージ804を、クロスオーバー104とコンデンサーレンズ107の間に配置する。
【0075】
本実施形態においては、前記実施の形態1と同様の方法で、3つのクロスオーバー規定エッジ801,802,803のそれぞれにクロスオーバーの中間像が形成される条件を求める。即ち、各クロスオーバー規定エッジの高さに対応する、光源形成レンズ105の電流値を求める。図8は、クロスオーバー規定エッジの高さと、最適な光源形成レンズ105の電流値との関係を実験的に求めた結果を示すグラフである。直線はフィッティング結果である。
【0076】
本実施形態の実施が適しているのは、スペース上の理由で、コンデンサーレンズ107の前側焦点面にクロスオーバー規定エッジを設置出来ない場合である。このような場合、図8で示したクロスオーバー規定エッジの高さと光源形成レンズ105の電流値の関係から、外挿又は内挿することにより、コンデンサーレンズ107の前側焦点面に対応する光源形成レンズ105の電流値の値を求めることが出来る。
【0077】
なお、本実施形態においては、鋭利な端面を持つ一次元のエッジを複数の高さに設けたが、図9に示したように、円形等の開口部を持つアパーチャー805,806,807を、互いに偏心させつつ複数の高さに設置してもよい。なお、図9において、アパーチャー805が上、アパーチャー806が中間、アパーチャー807が下の位置関係にある。
【0078】
また、本実施形態は、照射条件の変更のために、コンデンサーレンズ107の前側焦点面の高さを移動させる必要が生じた時にも有効である。
【0079】
(実施の形態4)
前記実施の形態1から3においては、電子銃により形成するクロスオーバーの縮小像を試料上に転写して描画を行うタイプの電子ビーム描画装置を取り扱い、物点であるクロスオーバーの高さを所望の位置に保つことを目的としていた。これに対して、本実施の形態4は、一般に、可変成形方式と呼ばれる、クロスオーバーを試料上に転写しないタイプの電子ビーム描画装置を取り扱う。
【0080】
図10は、本発明の実施の形態4に係る電子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。図10において、図1又は図13と同じ番号で示されているものは図1又は図13と同一のものであることを示す。
【0081】
図10に示すように、陰極101から放出された電子ビームは、陽極103に向かって加速された後、コンデンサーレンズ1002に入射する。ウェネルト電極102の電圧は一定に保たれている。コンデンサーレンズ1002の収束作用により、コンデンサーレンズ出口近傍にクロスオーバー1003が結ばれる。1001はブランキング電極であり、試料に対して電子ビームを遮断するべく電子ビームの軌道を曲げるものである。即ち、ブランキング電極1001により偏向された電子ビームはブランキング絞り114によって遮断され、試料119上には到達しない。一方、ブランキング電極1001により偏向されないビームは、ブランキング絞り114の開口を通過し、試料119上に到達する。
【0082】
一旦、クロスオーバー1003を結んだビームは、再び広がり、第1マスク1004を照射する。第1マスク1004には、単一の矩形開口が設けられており、照射された電子ビームにより開口像が得られる。第1マスク1004の開口像は、成形レンズ1007により第2マスク1009上に形成される。第2マスク1009には、可変成形照射法を行うための矩形開口及び一括図形照射法を行うための成形開口が設けられている。第2マスク1009上の結像位置は、ビーム成形用偏向器1008により制御され、これにより電子ビームの形状及び面積が決定される。第2マスク1009の開口を通過した電子ビームは、縮小レンズ1010と対物レンズ1011によりステージ120に設置された試料119に投影される。
【0083】
対物レンズ1011内には偏向器群が設置されており、この偏向器群により試料上における電子ビームの結像位置が決められる。本実施形態における偏向器群は偏向領域が5ミリメートルと最も大きい主偏向器1012,及び偏向領域が500ミクロンと2番目に大きい副偏向器1013,及び偏向領域が80ミクロンと最も小さい副副偏向器1014からなる。以上が、本実施形態4に用いた電子ビーム描画装置の装置構成である。
【0084】
ここで、1005はクロスオーバーの結像線であり、1006はマスクの結像線である。第1マスク1004の開口像が成形レンズ1007によって第2マスク1009上に形成され、縮小レンズ1010により縮小された後、最終的には対物レンズ1011によって試料上に結像することを意味している。
【0085】
一方、本方式の電子ビーム描画装置においては、試料面の高さが変化した時、ビームサイズは変化しないことが要求される。これを実現するためには、いわゆるケラー照明を実現すればよいことを図11の模式図を用いて説明する。図11において、1101は光源であり、本実施形態ではクロスオーバーの中間像がこれに相当する。1102は光源から放出された光を集めるための集光用レンズであり、本実施形態においては縮小レンズの一部がこれに相当する。1103は像面であり、本実施形態においてはマスクの中間像面に相当する。1104は開口絞りで、本実施形態においてはブランキング絞り114に相当する。開口絞り1104の大きさにより開き角が決まる。1105は対物レンズであり、像面1103に形成された像を物面である試料面1106に転写する作用を持つ。
【0086】
ここで図11においては、開口絞り1104から対物レンズ1105までの距離は対物レンズの焦点距離fに等しい。したがって、開口絞りに光源1101の像を形成させれば、対物レンズ1105の前側焦点面に光源の像が形成されることになるので、光源の中の一点から出た光線は、実線と破線の組み合わせで示されているように、対物レンズを通過した後、平行光線となる。即ち、いわゆるケラー照明が実現されている。この時、主光線が試料面に対して垂直に入射しているので、試料面1106の高さの変動に対してマスクの像の大きさは変化しない。
【0087】
図11のようなケラー照明を本実施形態において実現するためには、図10において対物レンズ1011の前側焦点面にクロスオーバーの中間像を結像させ、ここにブランキング絞り114を設ければよい。
【0088】
このように、本方式においてはクロスオーバーの結像関係が非常に重要である。図10においては、1005が理想的なクロスオーバーの結像線である。対物レンズの前側焦点面にクロスオーバーが結像し、ケラー照明が実現されている。
【0089】
ところが、発明が解決しようとする課題の項でも述べたように、熱電子銃の組み立ての誤差や、陰極の加熱に伴う電子銃の熱膨張、及び陰極の蒸発、ヒーター抵抗の機差や経時変化等の理由から、陰極の交換や電子銃の調整の前後でクロスオーバー1003の高さが変化している場合が多い。そこで本実施形態では、陽極103の近傍に設置されたアライナー(図示せず)により、クロスオーバー規定エッジ208上でビームを走査し、ビームプロファイルを測定することにより、クロスオーバー1003が所望の高さに形成されるよう、コンデンサーレンズ1002の励磁を調整した。
【0090】
なお、本方式の電子ビーム描画装置においては、試料ごとに、第2マスク1009の開口像に対する試料上の像の倍率を変化させる場合がある。このような場合、縮小レンズ1010及び対物レンズ1011の励磁により、焦点距離を調整すればよいが、これに伴い、クロスオーバーの結像関係も変わってしまう。これは、クロスオーバー1003が形成されるべき高さも変化することを意味する。
【0091】
このような場合は、クロスオーバー規定エッジ208を高さ方向に可動とする構造にすればよい。または、前記実施の形態3と同様に、図7のような高さの異なる複数のエッジを用いてもよい。これにより、クロスオーバー規定エッジ208の高さとコンデンサーレンズ1002の電流値の関係を実験的に求めることが出来るため、内挿又は外挿により、所望のクロスオーバー高さに対応するコンデンサーレンズ1002の電流を求めることが出来る。言い換えると、倍率によらず、対物レンズ1011の前側焦点面にクロスオーバーの中間像を形成し、ケラー照明を実現させることができる。
【0092】
本実施形態は、コンデンサーレンズ1002が2段のレンズからなりズームレンズの作用を持つ場合にさらに有効である。即ち、試料毎、もしくは同一試料内でもパターンに応じて、クロスオーバー径を調整しつつ、クロスオーバーを常に所望の位置に結像させることが出来る。これにより、試料上の電流密度を所望の精度に応じてビーム電流を変化させることができるので、スループットを向上させることができる。
【0093】
(実施の形態5)
本実施の形態5においては、図1に示されたマルチビーム方式の電子ビーム描画装置を取り扱う。前記実施の形態1から4においては、マルチビーム描画方式における、特に、陰極の交換や電子銃の調整の前後で発生する、クロスオーバーの高さの変動に対して、クロスオーバー規定エッジを用いて、クロスオーバーの高さを較正することを目的としていた。これらは、光源形成レンズの焦点よりの変動に対しても、同様の効果をあげることが出来る。
【0094】
これに対して本実施の形態5では、コンデンサーレンズの焦点距離の変動の問題を解決する。コンデンサーレンズの焦点距離の調整方法については、前記先願明細書(特願2004−262830号)に開示されている。この明細書(特願2004−262830号)では、複数のビームをブランカーアレイの開口上で同時に走査し、複数の開口像の重ね合わせ像を取得し、これを指標としてコンデンサーレンズの焦点距離及び照射光学系の非点補正を行うものである。この方法を用いれば、アパーチャーアレイに対して電子ビームが略平行に照射されるため、コンデンサーレンズの焦点距離の調整として有効であるといえる。本調整には、少なからぬ時間が費やされる。このため、描画装置のスループット向上のためには、本調整の頻度を下げることが有効である。
【0095】
しかし、実際には、周囲の温度の変化によりコンデンサーレンズのコイルの抵抗が変化し、レンズの焦点距離が変化する場合がある。そこで、本実施形態においては、前記先願明細書(特願2004−262830号)に記載の方法にてコンデンサーレンズの焦点距離及び照射光学系の非点補正を行った後、特定のビームのみを用いて、開口像の重ね合わせを取得し、これを基準開口像とする。
【0096】
そして試料一枚毎、又はロット毎、など予め決められた単位の描画を終了する毎に、調整直後と同様の方法で、特定のビームの開口像の重ね合わせを取得し、これを基準開口像と比較する。
【0097】
図12は、4隅のビームの開口の重ね合わせ像を示す図である。図12(a)は、調整直後にマルチビームの配列の4隅のビームを用いて取得した開口の重ね合わせ像である。これを取得するためには、図1で示した制御装置201のブランカー制御部205を用いて、4隅のビームに対応するブランカーにのみブランキング電圧を印加せず、残りのビームに対応するブランカーにはブランキング電圧を印加し試料に対して遮断すればよい。その上で、ブランキングされなかった4隅のビームをブランカーアレイ112上で走査し、ステージ120上に到達した電流をファラデーカップ210で測定する。なお、4隅のビームの走査には、レンズアレイ109から出たビームをブランカーアレイ112に対してアライメントするためのアライナー(図示せず)、又は偏向器アレイを用いればよい。なお、図12において、色の薄い部分が電子ビーム量の多い部分を表す。
【0098】
4隅のビームにより得られた開口像が完全に一致しない理由は、コンデンサーレンズ107の歪収差があるためである。即ち、形成されたマルチビームを総合的にみて配列が最も理想的になる場合でも、4隅のビームのみに着眼すると、開口像が完全に一致するとは限らないことを意味している。
【0099】
調整後、描画を開始し、1ロット毎に同じ方法で4隅のビームの開口像の重ねあわせを取得する。その結果、数ロット描画すると図12(b)のように、開口像の重ねあわせの画像が変化することが分かった。
【0100】
許容範囲は超えていないものの、レンズの焦点距離が変動の兆候が現れていると考え、再度、前記先願明細書(特願2004−262830号)の方法により、コンデンサーレンズ107の調整を行った。
【0101】
さらに、数ロット描画を行ったあと、図12(c)のように開口像の重ね合わせの画像が変化した。そこで、前記先願明細書(特願2004−262830号)の方法により照射光学系の非点補正を行うことにより、再び、図12(a)のような開口像を得ることが出来た。なお、調整を行うか否かの判断はオペレータが行ってもよいが、画像処理を用いて、開口像の重なり具合を求めてこれを指標とすれば、自動的に行うことが出来るため、より簡便である。
【0102】
なお、本実施形態において、アパーチャーアレイ108の照射状態の監視に4つのビームを使用したのは、コンデンサーレンズ107の焦点距離と非点収差(0度方向及び45度方向)という3つのパラメータの変動をみるためには、少なくとも4つのビームが必要であったからであり、より多くのビームを用いても構わない。また、コンデンサーレンズ107の焦点距離の変動及び非点収差による歪が最も顕著に現れるのは4隅のビームであるためである。
【0103】
本実施形態の方法を実施することにより、コンデンサーレンズの焦点距離と照射光学系の非点収差を最適の頻度で行うことができ、これにより、描画装置のスループットを良好に保つことが出来た。
【0104】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0105】
例えば、前記実施の形態においては、電子ビームを応用した装置について説明したが、これに限定されるものではなく、イオンビームなど、他の荷電粒子ビームを応用した装置についても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、電子ビームやイオンビーム等を応用した描画装置、顕微鏡、検査装置などについて適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施の形態1に係るマルチビーム電子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すクロスオーバー規定エッジの概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1において、電子ビーム量の一次元プロファイルの測定例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るマルチビーム電子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2において、結像条件を求める方法を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、本発明の実施の形態2において、光源クロスオーバーの大きさと第1光源形成レンズの電流値との関係を示す図、(b)は光源クロスオーバーの大きさと第2光源形成レンズの電流値との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3において、クロスオーバー規定エッジの概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3において、クロスオーバー規定エッジの高さと光源形成レンズの電流値との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3において、クロスオーバー規定エッジの別の概略構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る電子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態4において、ケラー照明を説明するための模式図である。
【図12】本発明の実施の形態5において、4隅の開口の重ね合わせ像を示す図であり、(a)は調整直後の開口像、(b)は数ロット描画後の開口像、(c)はさらに数ロット描画後の開口像である。
【図13】本発明の前提として検討したマルチビーム電子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。
【図14】本発明の前提として検討した別のマルチビーム電子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
101 陰極
102 ウェネルト電極
103 陽極
104,1003 クロスオーバー
105 光源形成レンズ
106 光源クロスオーバー
107,1002 コンデンサーレンズ
108 アパーチャーアレイ
109 レンズアレイ
110,111 偏向器アレイ
112 ブランカーアレイ
113,115,1010 縮小レンズ
114 ブランキング絞り
116,118,1105,1011 対物レンズ
117 偏向器
119 試料
120 ステージ
201 制御装置
202 電子銃制御部
203 機構制御部
204 光学系制御部
205 ブランカー制御部
206 データ処理部
207 アライナー
208,801,802,803 クロスオーバー規定エッジ
209,804 可動ステージ
210 ファラデーカップ
301 モリブデン基盤
302 開口
401,402,403 プロファイルの例
501 第1光源形成レンズ
502 第2光源形成レンズ
805,806,807 アパーチャー
1001 ブランキング電極
1004 第1マスク
1005 クロスオーバーの結像線
1006 マスクの結像線
1007 成形レンズ
1008 ビーム成形用偏向器
1009 第2マスク
1012 主偏向器
1013 副偏向器
1014 副副偏向器
1101 光源
1102 集光用レンズ
1103 像面
1104 開口絞り
1106 試料面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを発生し加速する荷電粒子銃と、前記荷電粒子ビームを収束させるレンズと、前記荷電粒子ビームの進行方向を制御する偏向器と、試料を載置するステージと、前記荷電粒子ビームの行路を略真空に保つ真空ポンプとを備えた荷電粒子線応用装置であって、
前記荷電粒子銃から放出された前記荷電粒子ビームのクロスオーバー又はクロスオーバーの中間像を結ばせるためのクロスオーバー結像レンズと、
前記クロスオーバー結像レンズの結像面を規定するための端面を備えた遮断板と、
前記遮蔽板上で前記荷電粒子ビームを走査するためのアライナーと、
前記遮蔽板により遮断された前記荷電粒子ビームの量を測定する手段と、を備えることを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子線応用装置において、
前記遮断板は、前記荷電粒子ビームの行路の略真空状態を低下させることなく、ビーム軸上とビーム軸外との間を移動可能であることを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項3】
請求項1記載の荷電粒子線応用装置において、
前記遮断板の前記端面を構成する部材が導電性を持ち、且つ非磁性であり、且つ融点が摂氏1000度以上の材質で形成され、且つ厚さが50ミクロン以上であることを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項4】
請求項1記載の荷電粒子線応用装置において、
前記遮断板が前記荷電粒子ビームの進行方向に対して上下流方向に移動可能であることを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項5】
請求項1記載の荷電粒子線応用装置において、
前記遮断板が複数の端面を備え、前記複数の端面がそれぞれビーム軸上の異なる地点に配置され得ることを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項6】
請求項1記載の荷電粒子線応用装置において、
前記クロスオーバー結像レンズが複数のレンズにより構成され、結像面を変えずに倍率を変化させるためのズームレンズとして作用することを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項7】
請求項1記載の荷電粒子線応用装置において、
前記クロスオーバーの中間像から広がる前記荷電粒子ビームを複数の荷電粒子ビームに分割するアパーチャーと、前記複数の荷電粒子ビームを個々に収束させる複数のレンズと、を備え、
前記荷電粒子銃と前記アパーチャーとの間に前記遮断板を備えることを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項8】
請求項7記載の荷電粒子線応用装置において、
前記クロスオーバーの中間像から広がる前記荷電粒子ビームを略平行に成形するコンデンサーレンズを有し、前記コンデンサーレンズの前側焦点面に前記遮断版を配置し得ることを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項9】
請求項1記載の荷電粒子線応用装置において、
前記試料上に照射される前記荷電粒子ビームの形状を決定するマスクと、前記マスクの像を所望の倍率で試料上に結像させるレンズと、を備え、
前記荷電粒子銃と前記マスクとの間に前記遮断板を備えることを特徴とする荷電粒子線応用装置。
【請求項10】
荷電粒子ビームを発生し加速する荷電粒子銃と、前記荷電粒子銃から放出される前記荷電粒子ビームの進行方向を制御するアライナーと、前記荷電粒子銃から放出される前記荷電粒子ビームを収束させる結像レンズと、端面を備えた遮断板と、を備えた荷電粒子線応用装置における荷電粒子線応用方法であって、
前記荷電粒子ビームの行路上に前記遮断板を挿入する第1のステップと、
前記アライナーを用いて前記荷電粒子ビームを前記遮断板の端面上を走査し、同時に前記遮断板により遮断された荷電粒子ビームの信号を検出する第2のステップと、
前記第2のステップで得られた信号を基に、前記遮断板上における前記荷電粒子ビームの形状を求める第3のステップと、
前記第3のステップで得られた前記荷電粒子ビームの形状が所望の形状に近づくように、前記結像レンズの焦点距離を決定するパラメータを調整する第4のステップと、
前記第4のステップで得られたパラメータを前記荷電粒子ビーム応用装置に内蔵された記録装置に記録する第5のステップと、
前記遮断板を前記荷電粒子ビームの行路上から外す第6のステップと、を有することを特徴とする荷電粒子線応用方法。
【請求項11】
荷電粒子ビームを発生し加速する荷電粒子銃と、試料を載置するステージと、前記荷電粒子銃により形成されたクロスオーバーの中間像を結ばせるためのレンズと、前記クロスオーバーの中間像から広がる前記荷電粒子ビームを略平行に成形するコンデンサーレンズと、前記クロスオーバーの中間像から広がる前記荷電粒子ビームを複数の荷電粒子ビームに分割するアパーチャーと、前記複数の荷電粒子ビームを個々に収束させる複数のレンズが配列されたレンズアレイと、前記複数の荷電粒子ビームが前記試料上に到達するか否かを個別に制御するブランカーアレイと、前記レンズアレイの配列間隔と略同一間隔の開口を有する絞り板と、前記絞り板上で前記複数の荷電粒子ビームを走査する偏向器と、前記絞り板を通過した荷電粒子ビームの量を測定する検出手段と、を備えた荷電粒子ビーム応用装置における荷電粒子線応用方法であって、
前記ブランカーアレイにより選択された少なくとも4つの特定のビームを前記絞り板上で走査することにより前記絞り板の開口像を定期的に測定し、その測定結果を調整直後の開口像と比較することにより、前記コンデンサーレンズの調整の時期を判断することを特徴とする荷電粒子線応用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−12306(P2007−12306A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188345(P2005−188345)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】