荷電粒子線描画装置、及び、物品の製造方法

【課題】 描画に使用する荷電粒子線の強度を計測する精度の点で有利な描画装置を提供する。
【解決手段】 荷電粒子線のパルスで基板に描画を行う描画装置は、入射した荷電粒子線に応じた電流を出力する検出器と、入射した前記パルスに応じた前記検出器の出力電流で充電されるキャパシタを含み、前記キャパシタの電圧値を検出し、前記キャパシタの容量値および前記電圧値に基づいて前記検出器に入射した前記パルスの強度を求める処理部と、を有する。前記処理部は、抵抗を含み、入射した荷電粒子線に応じた前記検出器の出力電流を前記抵抗での電圧降下を介して検出し、該検出に基づいて決定された電流値を有する電流を前記キャパシタに供給して前記キャパシタの電圧値を検出し、該電圧値と前記キャパシタに供給された前記電流の前記電流値とに基づいて、前記容量値を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線描画装置、及び、それを用いて物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の製造に用いられる電子ビーム描画装置において、描画パターンの微細化に伴い、複数の電子ビームを照射して描画を行うマルチ電子ビーム描画装置が開発されている。マルチ電子ビーム描画装置は、複数本の電子ビームをオンオフして、パルスビームを形成し、形成したパルスビームを基板に照射する。特許文献1に記載されているように、高精度な描画を行うには電子ビーム照射量を校正することが必要となる。電子ビーム照射量は電子ビームの電流に照射時間を掛け合わせることで求められる。
【0003】
マルチ電子ビーム描画装置において、1本の電子ビームは微弱かつ高速なパルスビームとなっている。このような微弱かつ高速の電子ビームを検出するビーム検出器として、Siフォトダイオードなど、入射した電子を増倍する特性を有するものが使用される。Siフォトダイオードをマルチ電子ビーム描画装置に使用するプリアンプ回路として積分回路が知られている。すなわち、特許文献1に記載されるように、積分回路により電子ビームの電流iをパルス数Nだけ積分する方法が知られている。この方法は、検出器により検出された信号を後段の積分回路に転送し、積分回路にて積分した信号を計測する。積分回路は検出回路で発生した電流を積分した電荷を電圧に変換するために電荷増幅器と呼ばれる。電荷Qは電流iを時間積分して式1で表わされる。
【0004】
Q=∫idt ・・・(1)
ビーム検出器としてSiフォトダイオードを使用した場合、Siフォトダイオードに電子増倍作用があるので、入射する電子ビームの電流が電子増倍される。パルスビームを照射する時間はパルスビームをオンしている時間を積算した時間で表わされる。ビーム検出器に入射する電子ビームの電流をi、ビーム検出器の電子増倍率をG、電子ビームがオンしている時間の総和をTとするとビーム検出器から出力されて電荷増幅器に蓄積される電荷Qは式2で表わされる。
【0005】
Q=i×G×T ・・・(2)
ビーム検出器の電子増倍率Gは、例えばSiフォトダイオードでは入射する電子のエネルギー(加速電圧)によって変化する。増倍率は使用するSiフォトダイオードのメーカーによるデータシート及びメーカー発表の論文などにより、開示されている。図3は電荷増幅器118の構成の一例を示す。オペアンプ31は高帯域、低ノイズ、低オフセットなどの特性を持つ、高精度、高帯域のものを使用する。帰還コンデンサ(キャパシタ)32は、静電容量値Cfを有し、ビーム検出器112から出力された電流を積分した微小電荷を蓄積する。リセットスイッチ33は、帰還コンデンサ32に蓄積された電荷を放電する。配線ケーブルはCiの静電容量値を有する。ケーブルは一般に同軸ケーブルを用いる。使用する同軸ケーブルによって、静電容量値が規格で決まっている。例えばRG/174/Uの同軸ケーブルの場合の静電容量値は101.0pF/mである。配線長が長くなるほど、静電容量値が大きくなる。入力電圧は、主に雑音電圧でありViの電圧値を有する。電荷増幅器118はVoの電圧を出力する。
【0006】
電荷増幅器118はオペアンプ31の帰還回路に微小な静電容量値Cfのコンデンサ32を用い、入力電荷Qiを電圧Voに変換する。関係式は式3で表わすことができる。
【0007】
Qi = Cf・Vo ・・・(3)
以下、具体的な数値例を示す。数値例は、計算上の一例として記載している。入力ビームの電流iを50pA,ビーム検出器112の増倍率Gを1000倍、ビームオン時間Tが100μsとする。式2に数値例を代入する。その結果、Qiは5pCとなる。ここで、帰還コンデンサ32の静電容量値Cfが1pFであれば、式3よりVo=5Vの出力が電荷増幅器118から得られる。また、100μsのビームオン時間を得るには、仮に電流のオンオフの周期が10MHz、Duty比を50%とすれば、電子ビームを2000回照射することが必要になる。ファラデーカップなど電子ビームの電流の増倍作用がない検出器を用いると、前述と同様なビームの電流値であっても、電荷増幅器118に入力する電荷Qiは5fC(フェムトクーロン)となる。その結果、電荷増幅器118が出力する電圧は5mVとなる。電子ビームの電流値が更に小さくなると、帰還コンデンサ32の静電容量値Cfを更に小さな値にしないと出力電圧Voが小さくなって、出力電圧Voはノイズに埋もれてしまう。その結果、出力のSN比が極端に低下し必要な検出精度が得られなくなる。電荷増幅器118は、ケーブルなどの配線に生じる静電容量Ciなどの寄生容量に電荷が溜まったり、ケーブルに振動が加わる場合にノイズが発生したりする。
【0008】
特許文献1に記載されるようにビーム検出器112と電荷増幅器118との配線ケーブルの距離が長くなると寄生容量の誤差が多くなる。また、n本の電子ビームを高速かつ個別にオンオフさせて描画を行うマルチ電子ビーム描画装置では、計測時間がシングルビームのn倍以上となり、計測時間の短縮が必要である。そのために積分回路に使用するコンデンサの容量値を微小なものにして入力電荷に対する出力電圧の増幅分を上げることで、積分時間を短縮することができる。可動ステージ内にSiフォトダイオードなどのビーム検出器112を組み込む場合にはビーム検出器112と電荷増幅器118との配線の状態が変化する。また、電子源の加速電圧によって、ビーム検出器112の増幅率が変化するので入力に与える電荷条件が予め決められた定電荷を与えることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−128914号公報
【特許文献2】特開昭63−294254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
マルチ電子ビーム描画装置では、計測時間がシングルビームの場合に比して大幅に増大するので、計測時間の短縮が必要となる。前記具体的な数値例でビームオン時間を10μsに変更して電荷増幅器から同じ5Vの出力電圧を得ようとすると電荷増幅器の帰還コンデンサの値は0.1pFという微小な容量値になってしまう。このような微小な静電容量のコンデンサは、回路実装及び入力のケーブル静電容量など、寄生容量の影響を受ける。電荷増幅器のコンデンサの静電容量が装置に電荷増幅器を実装した状態で校正できていないと電子ビームの電流を正確に計測できないことになり、ひいては電子ビームの照射量を正しく校正できないことになる。
【0011】
特許文献2に電荷増幅器を校正する定電荷発生装置が開示されている。この定電荷発生装置は、コンデンサに電荷を貯めた状態として、電荷増幅器に電荷を供給する方式であり、この場合使用するコンデンサの容量変化により正しい計測値を得られなくなる。また、電荷を供給するコンデンサ自体が微小な容量値のコンデンサであり、電荷を供給するコンデンサ、電荷増幅器の帰還コンデンサも微小な容量値のコンデンサになる。数pFの微小コンデンサは回路基板に実装しても配線パターンにより容量値が変化する。従って、校正する信号発生器自体を校正する必要がある。
【0012】
本発明は、描画に使用する荷電粒子線の強度を計測する精度の点で有利な描画装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、荷電粒子線のパルスで基板に描画を行う描画装置であって、入射した荷電粒子線に応じた電流を出力する検出器と、入射した前記パルスに応じた前記検出器の出力電流で充電されるキャパシタを含み、前記キャパシタの電圧値を検出し、前記キャパシタの容量値および前記電圧値に基づいて前記検出器に入射した前記パルスの強度を求める処理部と、を有し、前記処理部は、抵抗を含み、入射した荷電粒子線に応じた前記検出器の出力電流を前記抵抗での電圧降下を介して検出し、該検出に基づいて決定された電流値を有する電流を前記キャパシタに供給して前記キャパシタの電圧値を検出し、該電圧値と前記キャパシタに供給された前記電流の前記電流値とに基づいて、前記容量値を求める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば、描画に使用する荷電粒子線の強度を計測する精度の点で有利な描画装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電子ビーム描画装置の構成図
【図2】電荷増幅器を校正する動作を説明するための構成図
【図3】電荷増幅器の構成図
【図4】電荷増幅器を使用し、パルスビームで露光動作を行った際のタイミング図
【図5】電荷増幅器の校正を示すフロー図
【図6】I/V変換器を用いてビームの電流データを取得するためのフロー図
【図7】連続ビームを用いて電荷増幅器の校正用の基準電流値を取得する主な構成図
【図8】校正用の電流源のタイミングの一例を表わすタイミング図
【図9】校正用の電流源のタイミングと信号処理動作の一例を表わすタイミング図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、複数の荷電粒子線を基板に照射してパターンをショット領域ごとに描画を行う描画装置に適用可能であるが、複数の電子線を用いて描画を行う描画装置に適用した例を用いて本発明を説明する。図1において、真空カラム100は、内部が真空排気されている。電子銃101は、電子ビームを発生し、コリメーターレンズ103は、発生された電子ビームを平行にする。アパーチャーアレイ104は電子ビームをマルチビームに分割する。静電レンズ105は、電子ビームを収束する。ブランキングアレイ106は、マルチビームをオンオフするブランキング電極から構成され、ブランキングアパーチャアレイ107は、ブランキングアレイ106で曲げられた電子ビームを遮光する。偏向器電極108は、マルチビームを走査する。静電レンズ109は、電子ビームを収束してウエハなどの基板110に描画パターンを形成する。検出器(ビーム検出器)112は、基板110とともに可動ステージ111に搭載され、入射した電子ビームに応じた電流を出力する。真空電流導入端子113a〜113cは配線を大気中に導く。制御スイッチSW5は、ビーム検出器112の近傍の配線から、校正用の電流源からの電流を流し込むことができるように配線校正用の配線接続を入れたり切ったりするためのスイッチである。制御スイッチSW5は、リーク電流がなく電荷蓄積がない接点を有し、開閉を外部信号から制御できるものを構成する。ビーム検出器112として、Siフォトダイオード、アバランシェフォトダイオードなどの電子に対して増倍作用を有する半導体検出器(SSD)が使用できる。ファラデーカップ140は、Siフォトダイオードのような電子の増倍率を有するビーム検出器112の絶対値の校正用に使用される。
【0017】
ビーム検出器112から出力された電流を信号処理する構成について説明する。処理部133は、ビーム検出器112からの電流出力を信号処理する。プリアンプ115は、電荷増幅器118の校正用の電流値の基準を求める目的で構成している。I/V変換器(電流/電圧変換器)116は、ビーム検出器112に連続ビームが入射したときに当該連続ビームの電流値を抵抗による電圧降下を用いて電圧値に変換する。ローパスフィルター(LPF)117は、高周波のノイズ信号をカットして低周波帯を通過させる。
【0018】
電荷増幅器118は、ビーム検出器112から出力された電流を電荷としてキャパシタに蓄積し、電荷を電圧に変換する。ピークホルダ119は、電荷増幅器118のキャパシタの電圧値のピーク値を保持する。電荷増幅器118及びピークホルダ119は、ビーム検出器112にパルスビームが入射したときに当該パルスビームに応じた電流で寄生キャパシタを含むキャパシタを充電し、キャパシタの電圧値を検出する電圧検出部を構成している。制御スイッチSW1は、ビーム検出器112との接続をプリアンプ115と電荷増幅器118との間で切り替える。制御スイッチSW1は動作を別の機器から制御でき、リーク電流が少ないものを構成する。制御スイッチSW2はピークホルダ119の電圧出力とLPF117の電圧出力とを切り替える。制御スイッチSW2も制御ができるものを構成する。
【0019】
アナログデジタル変換器(A/Dコンバータ)120は電圧をデジタル値に変換する。メモリ122はA/Dコンバータ120で変換されたデジタルデータを保存する。データ演算部121はメモリ122に保存したデータを演算処理する。DSP(デジタルシグナルプロセッサー)130は、演算機能を有する。I/V変換器116と、I/V変換器116から出力された電圧値からビーム検出器112に入射した連続ビームの電流値を算出するデータ演算部121とは、ビーム検出器112に入射した連続ビームの電流値を検出する電流検出部を構成している。データ演算部121が、電荷増幅器118から出力された電圧値から電流値を算出する場合、ビーム検出器112に入射したパルスビームの強度を算出する第1算出部を構成している。
【0020】
校正用信号発生器123は、データ演算部121によって算出され、メモリ122に保存された電流値に基づいて決定される電流値を有する電流の校正用信号を生成し、電荷増幅器118に供給する。制御スイッチSW3は校正用信号発生器123の出力をオンオフする。制御スイッチSW4は、校正用信号発生器123の校正用の信号の入力する伝送先を電荷増幅器118の近傍の配線から入力するか、ビーム検出器112の近傍から入力するかを選択できるように切り替える。
【0021】
タイミング制御部124はタイミング動作を行う指令信号を出力する。タイミング制御部124の各接続先に対する動作は以下の通りである。タイミング制御部124は、制御スイッチSW1〜SW5に対して、開閉動作または接続先の切換動作を行う。タイミング制御部124は、電荷増幅器118に対して電荷増幅器118に蓄積された電荷を放電するための信号を出力する。タイミング制御部124は、ピークホルダ119に対して電圧を保持するタイミングと保持した電圧値を0Vにリセットするタイミング信号を出力する。タイミング制御部124は、校正用信号発生器123の校正用信号の出力タイミングを制御する。主制御部131は、データ演算部121との間でデータ及び動作シーケンスの指令をする。タイミング制御部124は、ブランキング制御信号を電流導入端子113aからブランキングアレイ106に出力し、マルチ電子ビームをブランキング動作(ビームのオンオフ制御)するタイミング信号を出力する。タイミング制御部124と校正用信号発生器123で発生するタイミングは主制御部131を通じて同期が取れるように制御される。
【0022】
図4は、電子ビーム描画装置をブランキング制御し、電子ビームをパルスビームでビーム検出器112に照射した場合の電荷増幅器118の動作タイミングを表わすタイミングチャートである。このタイミングチャートは、一例として、ブランキング周期の7回分のパルスビームを照射し、7回分の照射でビーム検出器112が出力する電流に対応する電荷のデータを電荷増幅器118のピーク信号出力Voで取得する例を示す。電子ビーム信号41は、電子ビームのオンオフのブランキング動作のタイミングを示す。オンの時間をt1,オンとオフの時間を合わせた時間をブランキング周期tで表わしている。最初の電子ビーム信号41に伴って電子ビームを時間t1の間ビーム検出器112に照射すると、ビーム検出器112から電流が出力される。電荷増幅器118では出力された電流に対応する電荷が帰還コンデンサ(キャパシタ)32に蓄積され、その結果、電荷増幅器118の出力電圧42が階段状に得られる。露光時間は露光量によって決まる。露光時間はブランキング周期のn倍(nは整数)で決める。電子ビームを照射すると電圧が階段状に増加して時間変化による電圧の変化は階段状になる。所定の露光時間、電子ビームの照射が終わると、電荷増幅器118の出力電圧VoをA/D変換するタイミング信号43が出力される。A/Dコンバータ120でデジタル化された電圧データはメモリ122に格納される。
【0023】
入力電荷はメモリ122に格納した電圧のデータから式3で求めることができる。ビーム検出器112から出力された電流値Ioは、式4で求められる。式4においてCfは寄生キャパシタを含みキャパシタ32の容量値,Voは図4で示す電荷増幅器118の出力電圧,積分時間はt1をn倍(nは整数)した時間(図4の例ではnは7)である。
Io= Cf・Vo/(n・t1)・・・(4)
ビーム検出器112に入射した電子ビームの強度に対応する電流値Ieは、次式5に示されるように、電流値Ioを式2で示す電子増倍率Gで割り算した値として求められる。
Ie =Io/G=Cf・Vo/(n・t1・G) ・・・(5)
電子ビームの電流Ieを求めるパラメータのうちnとt1はデジタル信号で管理できるので、正確に保つのは容易である。電子増倍率Gはビーム検出器(Siフォトダイオード)の経時変化が考えられるので定期的に測定し、データ値を更新する必要がある。電子増倍率Gに関しては、ファラデーカップなどの検出器と比較校正することで校正ができる。校正に関しては、ビーム検出器112の増倍率が電子ビームの加速電圧によるので、加速電圧の条件を決めれば、ビームの照射方法を連続ビームにできる。連続ビームの電流の計測は、微小電流でもI/V変換器116で行える。校正に電荷増幅器118を用いる場合と違って、ケーブルの配線状況などの影響を受けにくいので高精度に電流の計測ができる。Siフォトダイオードとファラデーカップを切り換えて、I/V変換器116で微小電流を計測することで電流値の比較から電子増倍率Gが求められる。Siフォトダイオードにおいて電子ビームの電流を入射した際の出力電流は、ファラデーカップの出力電流値に電子増倍率を掛けた電流値になっている。I/V変換器116の帰還抵抗を複数実装し、適正なゲインを切り換えて使うことで、I/V変換器116の出力電圧を適正範囲で得ることができる。
【0024】
一方、電荷増幅器118の帰還コンデンサ32には微小な容量値のコンデンサが必要になる。電荷増幅器118の出力電圧は、式3に示されるように、入力電荷Qiを帰還コンデンサ32の容量値Cfで割った値となる。入力電荷が微小電荷の場合は出力電圧を大きくするためには、帰還コンデンサ32の容量値を小さくする必要がある。微小電荷を高精度でA/D変換する必要があるためにSN比が一定以上必要である。少なくとも一回の照射時間t1でノイズレベルに対して、大きな値になる必要がある。また配線などの寄生キャパシタ、電荷増幅器118の実装状況で変化するリスクがあるために定期的に校正が必要になる。
【0025】
次に電子ビームの電流を計測するシステムを構成する電荷増幅器118の寄生キャパシタを含むキャパシタの容量値Cfを校正する方法を、図5、図6のフロー図と図2、図7の構成図を使用して説明を行う。図5は電荷増幅器118の校正手順を示したフロー図である。S1で、データ演算部121は、連続ビームを用いたI/V変換器116の出力から連続ビームの電流データを取得する。図6は、S1においてデータ演算部121が連続ビームの電流データを取得する動作のシーケンスをフロー図にしたものである。以下、S1の詳細な手順を図2と図6のフロー図を使用して説明を行う。S11で、タイミング制御部124は、図2の構成図における制御スイッチSW1をI/V変換器116と接続する側に切り替える。タイミング制御部124は、同時に制御スイッチSW2もLPF117とA/Dコンバータ120が接続されるように切り替える。S12で、主制御部131は、連続ビームをビーム検出器112に照射させる。照射時間は露光時間と同一にすれば、露光時間内での平均電流が求められるので、その方が望ましい。図7はS12の信号処理の主な構成を抜粋した図である。I/V変換器116で電流が電圧に変換され、LPF117でノイズを除去した電圧をA/D変換器120でデジタル化する。デジタル化したサンプルデータはメモリ122に一旦保存する。データ演算部121では数値演算として電流値への変換及び電流値の平均化演算を行う。その結果、露光時間内のビーム検出器112の出力電流値の平均値Iavが求められる。S13で、ビーム検出器112から出力された電流データ値と校正用信号発生器123で出力した電流値と差分誤差の確認を行い、誤差がある場合は誤差分を補正する。ビーム検出器112の出力電流値の平均値Iavのデータ値を基に校正用信号発生器123は定電流のDC電流を出力するようにする。高周波帯域まで使用できる定電流源は公知の技術により構成できる。
【0026】
タイミング制御部124は、定電流のDC電流を出力する前に、SW3を閉じる。タイミング制御部124は、SW4をビーム検出器112側の配線ラインに接続できるように切り替える。タイミング制御部124は、またSW5をオンしておく。SW3、SW4、SW5の動作終了後に、校正用信号発生器123は、露光時間と同じ時間、平均電流データIavと同一の定電流信号を出力する。本実施形態では、校正用信号発生器123が出力する定電流信号は、平均電流データIavと同一の電流値とした。しかし、定電流信号の電流値が、電荷増幅器118のキャパシタの容量値に見合う一定の電流値であればよく、平均電流データIavと同一の電流値でなくてもよい。また、本実施形態では、校正用信号発生器123が定電流信号を出力するとした。しかし、校正用信号発生器123が一定の電荷信号を生成し、それを電荷増幅器118に供給するようにしてもよい。校正用信号発生器123は、定電流信号を電荷増幅器118に供給する供給部を構成している。
【0027】
図8は連続ビームを照射した際のビーム検出器112の出力電流81及び電荷信号82の波形を表わしている。ビーム検出器112の出力電流値の平均値Iavは、露光時間T(=n・t)での平均電流として求められる。校正用信号発生器123は電流値に相当するデジタルデータを入力することで、アナログの定電流源として定電流を出力する機能を有している。データ演算部121は、定電流値Iavを出力するようなデジタルデータを校正用信号発生器123へ入力する。校正用信号発生器123の出力電流を流す際の制御スイッチの条件を示す。タイミング制御部124は、SW3を閉状態、SW4を電流導入端子113b側との接続状態、SW5を閉状態、SW1をI/V変換器116側との接続状態、SW2をLPF117がA/Dコンバータ120に接続する状態に制御する。ビーム検出器112からの電流出力の代わりの信号として、校正用信号発生器123から電流値Iavの定電流信号を出力する。
【0028】
I/V変換器116、LPF117の出力電圧をA/Dコンバータ120でA/D変換し、一旦メモリ122に格納する。データ演算部121は、S14で,平均電流データIav’を求めて、定電流値Iavとの差分が許容誤差内か否かの判定を行う。S14で、平均電流データIav’と定電流値Iavとの差分が予め決められた誤差内であれば、I/V変換器116のビーム電流データの取得動作は完了となる。S14で、平均電流データIav’と定電流値Iavとの差分が誤差を超えていれば、データ演算部121は、S15でデータを補正する。誤差範囲はビーム電流の検出精度より予め求めておく。誤差分はケーブル配線からのノイズ成分と考えられる。リップル成分の高周波成分はLPF117で除去できる。低周波数帯域のDC分(オフセット分)はI/V変換器116のオフセット分を測定して、引き算する方法で補正できる。この補正処理は従来技術の光センサの暗電流補正として良く知られている。以上の処理にて、I/V変換器116によるビームの電流データの取得工程であるS1が完了となる。
【0029】
次に、電荷増幅器118に校正用信号発生器123より校正用信号を入力し電圧データを取得する図5のS3の信号処理に関して説明する。図8は校正用の電荷信号82の発生タイミングを示している。ブランキング周期をt,ブランキング周期内での電子ビームの照射時間をt1,ブランキング周期内での照射の遮光時間をt2,露光時間をTとする。Q’1〜Q’nは照射回数毎のビーム検出器112が発生する電荷を表わしている。長方形の高さが平均電流Iavを表わしている。長方形の塗りつぶした面積が電荷量を表わしている。一回の照射あたりの電荷量はt1・Iavで計算できる。露光時間Tにおける積算電荷量はn・t1・Iavで表わされる。電荷増幅器118への電荷信号の与え方について説明する。電荷増幅器118への電荷信号を入力する場合、図2において、SW3は閉状態、SW4は電流導入端子113b側との接続状態、SW5は閉状態、SW1は電荷増幅器側との接続状態に制御される。
【0030】
校正用信号を入力するタイミングを図9に示す。校正用信号発生器123が校正用信号91を出力するとブランキング周期tの定電流出力区間t1で定電流Iavが出力される。校正用信号91はビーム検出器112の配線経路を経由して電流導入端子113c、SW1を経て、電荷増幅器118へ供給される。校正用信号発生器123とビーム検出器112との間の配線による誤差を極力低減するために、校正用信号発生器123をビーム検出器112の近傍、すなわち、電流導入端子113bにできるだけ近接した位置に配置する。したがって、校正用信号発生器123とビーム検出器112とを接続する伝送路が電荷増幅器118とビーム検出器112とを接続する伝送路よりも短い。
【0031】
電荷増幅器118の出力電圧92は、ブランキング周期毎に帰還コンデンサ32に電荷が蓄積されて、階段状に増大する。露光周期=n・tだけの時間経過後に電圧Vo’が出力される。A/Dコンバータのスタート信号93は出力された電圧Vo’をA/D変換するタイミングで出力する。電荷リセット信号94は電荷増幅器118の帰還コンデンサ32に蓄積された電荷を放電して次に新たに電荷を蓄積するようにする。電荷の蓄積動作が行われている間は接点33が開で電荷を蓄積し、A/Dコンバータ120によりA/D変換が終了すれば、接点33を閉にして帰還コンデンサ32の両端をショートすることで、蓄積電荷を放電する。露光周期の間に電荷増幅器118からの出力を積分することで電圧データが得られる。
【0032】
続いて、ブランキング周期毎の電荷増幅器118の出力電圧の波形データを取得する方法を説明する。最初の1回目の定電流の入力から、n回目までの定電流の入力を校正用信号発生器123が出力するまでの電荷増幅器118の出力データをすべて、A/Dコンバータ120でデジタルデータに変換する。変換したデジタルデータはメモリ122に保存される。保存した電荷増幅器118の出力電圧の波形データから、校正用信号発生器123からA/Dコンバータ120までの時間差、信号の応答などが確認できる。A/Dコンバータ120のスタートのタイミングを校正用信号発生器123が定電流信号を出力するタイミングにすることによりデータを連続でデジタル化することが可能となる。電荷リセット信号94は、電荷増幅器118の蓄積電荷を放電するための接点33の開閉状態を表わしている。電荷を蓄積するタイミングでは接点33は開状態であり、電荷の蓄積動作が終了して必要データを信号処理後、接点33を閉じて電荷を放電する動作を行う。図5のS4で、データ演算部121は、S3でメモリ122に格納された電荷増幅器118の出力電圧Vo’をデジタル変換したデータを基に電荷増幅器118の帰還コンデンサ32の容量値Cfを算出する。帰還コンデンサ32の容量値Cfを算出するデータ演算部121は、電圧検出部により検出された電圧値と決定された電流値とを用いてキャパシタの容量値を算出する第2算出部を構成している。キャパシタのCfは式6で求められる。
Cf = Q’/Vo’ =n・t1・Iav / Vo’ ・・・(6)
【0033】
ここで、タイミング周期t、t1の時間の精度は、PLL回路などの時間を正確に保つ良く知られた回路が使用できるために高精度にできる。正確な時間タイミングと方形波の定電流源を電荷増幅器118に入力して、出力の電圧波形を入力部と比較することで、時間応答特性が確認できる。SW4の切り替えで電荷増幅器118の近傍で校正用信号を入力する場合とビーム検出器112の近傍で入力する場合とを選べる。したがって、電荷増幅器118の近傍で校正用信号を入力した場合とビーム検出器112の近傍で校正用信号を入力した場合の双方における電荷増幅器118の信号出力波形の比較することで、配線の影響を確認することができる。定電流源の波形はパルス状で入力したが、図8のTで表わす範囲の連続電流を入力(装置動作としては連続でのビーム照射)してもよい。その際の動作は図9の階段状の増加が滑らかに連続で増加する動作となる。その際のCfは下記の式7で求められる。これにより電荷校正用プリアンプ115との誤差を補正することが可能となる。
Cf = Q’/Vo’ =T・Iav / Vo’ ・・・(7)
【0034】
このように配線による寄生キャパシタの影響の補正を行った後、図5のS5のブランキング動作によるパルスビームでの電流を電荷増幅器118で取得し、式2を用いて電子ビームの照射時間における電流の平均値を得ることができる。得られた電流の平均値から、電子ビームの照射時間を正確に補正することができる。図1の主制御部131で校正用信号発生器123でのビーム電流値とパルスビームをブランキング動作でビーム検出器112にて検出したビーム電流値を比較する。ビーム電流値の誤差量をブランキング制御部132に送り、ブランキング制御部132は照射時のオン時間t1を調整することで、電子ビーム描画装置の照射量を補正できる。本実施形態の電子ビーム描画装置は、電子ビームの電流値を計測する電荷増幅器の容量値を校正する装置を組み込んでおり、自動で電荷増幅器の容量値を適時校正できる。そして、本実施形態の電子ビーム描画装置は、校正された容量値を用いて描画に使用する電子のパルスビームの強度を算出し、算出された強度をモニターしながら基板に描画を行う。
【0035】
[物品の製造方法の実施形態]
本発明の実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。該製造方法は、感光剤が塗布された基板の該感光剤に上記の描画装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板に描画を行う工程)と、当該工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含みうる。さらに、該製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線のパルスで基板に描画を行う描画装置であって、
入射した荷電粒子線に応じた電流を出力する検出器と、
入射した前記パルスに応じた前記検出器の出力電流で充電されるキャパシタを含み、前記キャパシタの電圧値を検出し、前記キャパシタの容量値および前記電圧値に基づいて前記検出器に入射した前記パルスの強度を求める処理部と、
を有し、
前記処理部は、抵抗を含み、入射した荷電粒子線に応じた前記検出器の出力電流を前記抵抗での電圧降下を介して検出し、該検出に基づいて決定された電流値を有する電流を前記キャパシタに供給して前記キャパシタの電圧値を検出し、該電圧値と前記キャパシタに供給された前記電流の前記電流値とに基づいて、前記容量値を求める、ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記キャパシタの電圧値を検出する電圧検出部と、前記決定された電流値を有する電流を前記キャパシタに供給する供給部とを備え、前記供給部と前記検出器とを接続する伝送路は、前記電圧検出部と前記検出器とを接続する伝送路より短い、ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記検出器の出力電流を前記抵抗での電圧降下を介して検出する場合、前記荷電粒子線の連続ビームを前記検出器に入射させる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の描画装置を用いて基板に描画を行う工程と、
前記工程で描画を行われた前記基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−69811(P2013−69811A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206556(P2011−206556)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】