説明

蒸気システム

【課題】 蒸気エンジンを用いて空気圧縮機を駆動するに際し、圧縮空気の使用負荷だけでなく、蒸気の使用負荷をも考慮して制御する。
【解決手段】 蒸気を用いて動力を起こす蒸気エンジン2により、空気圧縮機3が駆動される。蒸気エンジン2に対しては、給蒸路8を介して蒸気が供給され、排蒸路11を介して蒸気が排出される。蒸気エンジン2からの蒸気は、蒸気ヘッダ12を介して、蒸気使用装置に供給される。蒸気ヘッダ12に設けた圧力センサ16により、蒸気の使用負荷が監視される。空気圧縮機3からの圧縮空気は、圧縮空気路17を介して、圧縮空気使用装置に供給される。圧縮空気路17に設けた圧力センサ18により、圧縮空気の使用負荷が監視される。蒸気の使用負荷と、圧縮空気の使用負荷とに基づき、蒸気エンジン2への給蒸を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気を用いて圧縮機などを駆動して、消費電力の削減を図る蒸気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スクリュ型膨張機(1)により空気圧縮機(2)を駆動し、空気圧縮機(2)の負荷変動に際してはスクリュ型膨張機(1)に流入する蒸気を加減弁(10)により制御して対応すると共に、スクリュ型膨張機(1)の蒸気流入側と蒸気流出側との間に設けたバイパス弁(9)を制御することにより、前記負荷変動に拘らず蒸気流出側における蒸気の背圧を一定に保持する方法が開示されている。ここで、バイパス弁(9)の制御は、スクリュ型膨張機(1)からの蒸気出口管(5)の背圧を検出器(20)により検出してなされる。また、加減弁(10)の制御は、スクリュ型膨張機(1)の駆動軸の回転数を検出器(23)により検出してなされる。
【0003】
また、下記特許文献2には、ガスタービン(1)と、これにより駆動される発電機(8)と、ガスタービン(1)の排ガスを熱源とする排熱ボイラ(13)と、この排熱ボイラ(13)から供給される蒸気を動力源とするスクリュ式蒸気エンジン(30)と、この蒸気エンジン(30)により駆動されて燃料を圧縮して前記ガスタービン(1)の燃焼器(3)に供給する燃料圧縮機(11)とを備えたガスタービン設備が開示されている。このガスタービン設備においては、燃料圧縮機(11)からガスタービン(1)への燃料供給量は、燃料圧縮機(11)の入口と出口との間に設けたバイパス制御弁(37)により調整されるが、このバイパス制御弁(37)で制御し切れない大きな負荷変動に対しては、蒸気エンジン(30)へ供給される蒸気量が制御弁(32)で調整される。また、排熱ボイラ(13)の起動時や、蒸気エンジン(30)の故障時には、燃料圧縮機(11)がモータ(10)により駆動される。
【0004】
さらに、下記特許文献3には、圧縮機(1)のスクリュロータの入力側に、電動モータ(7)とクラッチ(8)とを介して蒸気タービン(9)を接続し、この蒸気タービン(9)の運転時、蒸気タービン(9)による動力がモータ(7)による動力に加算されて前記スクリュロータが駆動される装置が開示されている。この装置では、蒸気タービン(9)は、蒸気弁(10)の開閉により、駆動と停止が切り替えられる。そして、圧縮機(1)の軸動力が吸入側圧力と吐出側圧力とに支配されることに着目し、圧縮機(1)の吸入側圧力を検出する低圧圧力検出器(18)と、吐出側圧力を検出する高圧圧力検出器(19)とに基づき、圧縮機(1)の軸動力が許容動力範囲内のとき、蒸気弁(10)を開いて蒸気タービン(9)を運転する。一方、圧縮機(1)は、そのスライド弁が容量制御装置(14)により制御されて、容量制御される。
【特許文献1】特開昭63−45403号公報 (特許請求の範囲、図1、公報第2頁左下欄第1−5行)
【特許文献2】特開平9−68006号公報 (請求項1、請求項6、請求項8、段落番号[0019]、[0021]、[0024]、図1)
【特許文献3】特開平4−353201号公報 (段落番号[0022]−[0028]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示される発明の場合、空気圧縮機(2)の負荷変動にも拘らずその回転を一定に保持するために、加減弁(10)を調整してスクリュ型膨張機(1)へ供給する蒸気量が制御されるが、空気圧縮機(2)の能力制御はアンローダによって行われる(公報第2頁右下欄第18行−第3頁左上欄第5行)。あるいは、空気圧縮機(2)の能力制御は、スクリュ型膨張機(1)へ供給する蒸気量を加減弁(10)によって制御して、スクリュ型膨張機(1)の回転数を変化させて行われる(公報第3頁左上欄第5−9行)。しかしながら、加減弁(10)の制御は、スクリュ型膨張機(1)の駆動軸の回転数を検出器(23)により検出してなされるものであるから、スクリュ型膨張機(1)が所望の回転数になるように、その駆動軸の回転数を検出器(23)により検出して、スクリュ型膨張機(1)への給蒸量を加減弁(10)により調整するに過ぎない。従って、空気圧縮機(2)の負荷変動を検知して、その負荷変動に対し迅速で正確に応答するように制御するものではない。
【0006】
前記特許文献2に開示される発明の場合、ガスタービン(1)への燃料供給量は、蒸気エンジン(30)ではなく燃料圧縮機(11)の側に設けたバイパス制御弁(37)と、蒸気エンジン(30)への蒸気量を調整する制御弁(32)とにより制御される。従って、構造および制御が複雑となるものである。
【0007】
前記特許文献3に開示される発明の場合、蒸気エンジンとして蒸気タービン(9)を用いたことに伴い、蒸気弁(10)は開閉のみ可能であり、蒸気エンジンの出力調整はできない。
【0008】
さらに、いずれの特許文献に開示される発明も、蒸気の使用負荷をも考慮して、蒸気エンジンへの給蒸を制御するものではない。すなわち、いずれの特許文献に開示される発明も、蒸気エンジンからの蒸気が供給される箇所の蒸気の使用負荷と、圧縮機から吐出される流体の使用負荷との双方に基づき、蒸気エンジンへの給蒸を制御するものではない。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、簡易な構成および制御で、流体負荷だけでなく蒸気負荷をも考慮して、蒸気エンジンへの給蒸を制御することで、運転効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、蒸気を用いて動力を起こす原動機と、この原動機により駆動され、流体を吐出または吸入する被動機と、前記原動機にて使用後の蒸気が供給される箇所へ、前記原動機を介することなく蒸気を供給するバイパス路と、前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気負荷と、前記被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷とに基づき、前記原動機への給蒸を制御する制御器とを備えることを特徴とする蒸気システムである。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、流体負荷だけでなく蒸気負荷をも考慮して、原動機への給蒸を制御することで、運転効率を高めることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記原動機への給蒸路に設けた給蒸弁により、前記原動機への給蒸を制御することを特徴とする請求項1に記載の蒸気システムである。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、原動機への給蒸路に設けた給蒸弁により、簡易に原動機への給蒸を制御することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記バイパス路に、バイパス弁が設けられ、このバイパス弁は、前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気圧を所定に維持するよう動作する自力式の減圧弁とされることを特徴とする請求項2に記載の蒸気システムである。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、自力式の減圧弁を用いることで、バイパス路を介した蒸気供給が自力でなされる。従って、蒸気システム全体の構成および制御を簡易なものとすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記バイパス路は、前記原動機への給蒸路と前記原動機からの排蒸路とを接続して設けられ、このバイパス路に設けたバイバス弁により、前記原動機への給蒸を制御することを特徴とする請求項1に記載の蒸気システムである。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、原動機への給蒸路と原動機からの排蒸路とを接続するバイパス路に設けたバイパス弁により、簡易に原動機への給蒸を制御することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記流体負荷および前記蒸気負荷がある場合には、前記原動機への蒸気供給を実行し、前記流体負荷および前記蒸気負荷がない場合には、前記原動機への蒸気供給を停止し、前記流体負荷がないが前記蒸気負荷がある場合には、前記原動機への蒸気供給を停止した状態で、前記バイパス路を介して蒸気を供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気システムである。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、流体負荷と蒸気負荷とを考慮して制御することで、原動機を無駄に運転することを防止して、運転効率を高めることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記流体負荷があるが前記蒸気負荷がない場合には、前記被動機またはこれと同一機能の第二の被動機を電動機で駆動することを特徴とする請求項5に記載の蒸気システムである。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、蒸気を用いて動力を起こす原動機の他に、電動機を備えるので、蒸気負荷に拘わらず、安定して流体を吐出または吸入することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記原動機は、スクリュ式蒸気エンジンとされ、前記被動機は、空気圧縮機とされ、前記被動機により流体が吐出される空間内の圧力が設定値未満か否かにより、前記流体負荷があるか否かが検知され、前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気圧が所定値未満か否かにより、前記蒸気負荷があるか否かが検知されることを特徴とする請求項6に記載の蒸気システムである。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、スクリュ式蒸気エンジンを用いることで、タービン式に比べて効率がよい。また、スクリュ式蒸気エンジンの場合、所望により給蒸量を調整することで出力調整も可能となる。さらに、各種工場、事業所におけるエア駆動機の作動用、ブロー、乾燥など製造プロセス用、その他各分野において広く用いられる空気圧縮機を駆動させるので、汎用性に優れる。また、空気負荷と蒸気負荷とを圧力により簡易に把握して制御することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記流体負荷があるが前記蒸気負荷がない場合にも、前記原動機への蒸気供給を実行することを特徴とする請求項5に記載の蒸気システムである。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、必ずしも電動機を別途備えなくても、蒸気負荷に拘わらず、安定して流体を吐出または吸入することができる。また、電動機を用いないので、電力を削減することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、前記原動機は、スクリュ式蒸気エンジンとされ、前記被動機は、空気圧縮機とされ、前記被動機により流体が吐出される空間内の圧力が設定値未満か否かにより、前記流体負荷があるか否かが検知され、前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気圧が所定値未満か否かにより、前記蒸気負荷があるか否かが検知されることを特徴とする請求項8に記載の蒸気システムである。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、スクリュ式蒸気エンジンを用いることで、タービン式に比べて効率がよい。また、スクリュ式蒸気エンジンの場合、所望により給蒸量を調整することで出力調整も可能となる。さらに、各種工場、事業所におけるエア駆動機の作動用、ブロー、乾燥など製造プロセス用、その他各分野において広く用いられる空気圧縮機を駆動させるので、汎用性に優れる。また、空気負荷と蒸気負荷とを圧力により簡易に把握して制御することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、前記給蒸路を介して前記原動機へ蒸気を供給するボイラを備え、このボイラへの給水タンクに、前記原動機からのドレンが供給されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の蒸気システムである。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、蒸気エンジンから排出されるドレンの有効利用を図ることができる。
【0030】
さらに、請求項11に記載の発明は、前記ボイラまたはその給水タンクへの給水を用いて、前記圧縮機の冷却が図られることを特徴とする請求項10に記載の蒸気システムである。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、圧縮機の放熱で給水を加温するので、省エネルギーを図ることができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明の蒸気システムによれば、簡易な構成および制御で、流体負荷だけでなく蒸気負荷をも考慮して、蒸気エンジンへの給蒸を制御することができ、運転効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の蒸気システムは、蒸気を用いて動力を起こす原動機と、この原動機により駆動される圧縮機または真空ポンプなどの被動機とを備える。
【0034】
原動機は、蒸気を用いて動力を起こす蒸気エンジンである。蒸気エンジンは、蒸気タービンでもよいが、好適にはスクリュ式蒸気エンジンである。スクリュ式蒸気エンジンは、互いにかみ合うスクリュロータ間に蒸気が導入され、その蒸気によりスクリュロータを回転させつつ蒸気を膨張して減圧し、その際のスクリュロータの回転により動力を得る装置である。蒸気エンジンにより得られた回転動力は、被動機の駆動に使用される。その際、被動機は、発電機を介することなく、直接に駆動されるのがよい。
【0035】
被動機は、蒸気エンジンにより駆動され、流体を吐出または吸入する装置である。具体的には、被動機は、ポンプ、送風機、圧縮機、または真空ポンプなどである。被動機は、ポンプ、送風機または圧縮機の場合、流体を吐出し、真空ポンプの場合、流体を吸入する。
【0036】
被動機は、たとえば圧縮機とされる。この圧縮機は、往復式や回転式など、その種類を特に問わないが、好適にはスクリュ式圧縮機である。スクリュ式圧縮機は、互いにかみ合って回転するスクリュロータ間に気体を吸入して、スクリュロータの回転により圧縮して吐出する装置である。圧縮機により圧縮される気体は、その種類を特に問わないが、たとえば空気、蒸気、冷媒ガスなどが挙げられる。但し、圧縮空気は幅広い分野で使用されるので、空気圧縮機とするのが汎用性に優れる。
【0037】
蒸気エンジンには、蒸気供給源から給蒸路を介して、蒸気が供給される。蒸気供給源は、典型的には蒸気ボイラである。このボイラには、給水タンクから水が供給され、その水はボイラで蒸気化される。そして、その蒸気が蒸気エンジンへ供給可能とされる。ボイラからの蒸気は、蒸気ヘッダ(第一蒸気ヘッダという)に供給され、その蒸気ヘッダの蒸気が、給蒸路を介して蒸気エンジンに供給されてもよい。
【0038】
蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、排蒸路を介して排出される。蒸気エンジンは、蒸気を減圧するものであるから、減圧弁としても機能する。それ故、蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、従来の減圧弁通過後の蒸気と同様に利用可能である。すなわち、従来、ボイラからの蒸気は、減圧弁を介して蒸気使用装置に供給されるが、それと同様に、蒸気エンジンにて使用後の蒸気も、蒸気使用装置に供給できる。この際、蒸気エンジンからの蒸気は、排蒸路を介して蒸気ヘッダ(第二蒸気ヘッダという)に供給され、その蒸気ヘッダの蒸気が、蒸気使用装置に供給されてもよい。
【0039】
蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所には、蒸気エンジンを介することなく、バイパス路を介しても蒸気が供給可能とされる。典型的には、前記蒸気供給源からの蒸気が、バイパス路を介しても、排蒸路または第二蒸気ヘッダに供給可能とされる。この際、蒸気エンジンに対する給蒸路と排蒸路とをバイパス路で接続してもよいし、第一蒸気ヘッダと第二蒸気ヘッダとをバイパス路で接続してもよい。また、前記蒸気供給源とは異なる箇所からバイパス路を介して、排蒸路または第二蒸気ヘッダに蒸気を供給可能としてもよい。いずれにしても、バイパス路には、バイパス弁が設けられる。このバイパス弁は、電磁弁または電動弁でもよいが、自力式の減圧弁でもよい。この場合、バイパス弁は、蒸気エンジンからの蒸気とバイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気圧を所定に維持するように、機械的に自力で開度調整する。
【0040】
蒸気エンジンの制御は、蒸気エンジンへの給蒸の有無または量を制御してなされる。具体的には、蒸気エンジンへの給蒸路に給蒸弁を設け、この給蒸弁の開閉または開度を制御する。これにより、蒸気エンジンへの給蒸の有無または量を変更でき、蒸気エンジンの作動の有無または出力を変更できる。
【0041】
たとえば、蒸気エンジンが蒸気タービンの場合、給蒸弁の開閉を制御することで、蒸気タービンへの給蒸の有無を切り替えればよい。これにより、蒸気タービンの作動の有無を変更することができる。一方、蒸気エンジンがスクリュ式蒸気エンジンの場合、蒸気タービンの場合と同様に給蒸弁の開閉を制御してもよいし、給蒸弁の開度を制御してもよい。給蒸弁の開度を制御する場合、スクリュ式蒸気エンジンへの給蒸量を調整して、スクリュ式蒸気エンジンの出力を変更することができる。
【0042】
但し、蒸気エンジンの制御は、以上の構成に限らない。すなわち、蒸気エンジンは、給蒸の有無または量が変更可能であれば足り、給蒸路に給蒸弁を設けて、その給蒸弁により制御する必要は必ずしもない。たとえば、前述したように、蒸気エンジンに対する給蒸路と排蒸路とをバイパス路で接続し、このバイパス路に設けたバイパス弁の開閉または開度を制御してもよい。また、前記給蒸弁に加えて、このバイパス弁を設けてもよい。
【0043】
蒸気エンジンは、被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷と、蒸気エンジンの出口側の蒸気負荷とに基づき、給蒸を制御される。
【0044】
ここで、流体負荷とは、被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体の負荷である。具体的には、被動機がポンプ、送風機または圧縮機の場合、これが吐出する空間内の流体の使用量である。また、被動機が真空ポンプの場合、これが吸入する空間内の流体の存在量である。つまり、被動機が真空ポンプの場合、真空度が低くなれば、流体負荷があることになる。
【0045】
いずれの流体負荷も、被動機により流体が吐出または吸入される空間内の圧力により検出できる。たとえば、被動機が空気圧縮機の場合、その圧縮空気を一または複数の圧縮空気使用装置へ送る管内またはタンク内の圧力に基づき、圧縮空気の使用負荷(空気負荷という)を検出できる。すなわち、圧縮空気使用装置にて圧縮空気が使用される場合には、前記管内またはタンク内の空気圧が下がるので、空気負荷を検出できる。
【0046】
一方、蒸気負荷とは、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気の使用量である。この蒸気負荷は、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気圧により検出できる。たとえば、蒸気エンジンからの排蒸路またはその先に設けられる第二蒸気ヘッダ内の蒸気圧に基づき、蒸気の使用負荷(蒸気負荷)を検出できる。すなわち、蒸気使用装置にて蒸気が使用される場合には、排蒸路内または第二蒸気ヘッダ内の蒸気圧が下がるので、蒸気負荷を検出できる。
【0047】
このように、流体負荷も蒸気負荷も、圧力にて検出するのが簡易である。従って、被動機により流体が吐出または吸入される空間内の圧力と、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気圧とに基づき、蒸気エンジンへの給蒸を制御することができる。
【0048】
この際、次のように制御するのが簡易であり、また省エネルギーを図ることができる。すなわち、流体負荷および蒸気負荷がある場合には、蒸気エンジンへの蒸気供給を実行し、流体負荷および蒸気負荷がない場合には、蒸気エンジンへの蒸気供給を停止する。また、流体負荷がないが蒸気負荷がある場合には、蒸気エンジンへの蒸気供給を停止した状態で、バイパス路を介して、第二蒸気ヘッダや蒸気使用装置に蒸気供給を実行する。バイパス弁が自力式の減圧弁である場合には、この蒸気供給は機械的に自力でなされる。
【0049】
一方、流体負荷があるが蒸気負荷がない場合には、被動機を第二の原動機で駆動するのがよい。ここでは、第二の原動機は、電動機(モータ)であるとして説明するが、蒸気エンジン以外であれば、たとえばディーゼルエンジンなどでもよい。また、蒸気エンジンと電動機とは、共通の被動機を駆動する構成であってもよいし、蒸気エンジンで駆動される第一の被動機と、電動機で駆動される第二の被動機とを分けて構成してもよい。
【0050】
後者の場合、第二の被動機は、第一の被動機により流体が吐出または吸入される空間に対し、第一の被動機と同様に、流体を吐出または吸入する装置である。そのため、第二の被動機は、第一の被動機と同一機能のものとされる。たとえば、第一の被動機が空気圧縮機の場合には、第二の被動機も空気圧縮機とされる。但し、第二の被動機は、第一の被動機と機能が同一であれば、機構まで同一である必要はない。たとえば、第一の被動機がスクリュ式の空気圧縮機である場合、第二の被動機は、空気圧縮機である限り、スクリュ式に限らず、往復式などでもよい。
【0051】
ところで、流体負荷があるが蒸気負荷がない場合にも、蒸気エンジンへの蒸気供給を実行してもよい。この場合、必ずしも電動機を別途備えなくても、蒸気負荷に拘わらず、安定して被動機を駆動することができる。電動機を用いないので、電力削減を図ることもできる。但し、この制御は、蒸気システムが電動機を備えている場合にも、電動機を作動させずに実行可能である。
【0052】
被動機がポンプ、送風機または圧縮機の場合、流体負荷があるか否かは、被動機により流体が吐出される空間に設けた圧力センサの検出圧力が設定値未満であるか否かにより検知できる。つまり、設定値未満であれば流体負荷があると判断でき、設定値以上であれば流体負荷がないと判断できる。逆に、被動機が真空ポンプの場合、流体負荷があるか否かは、被動機により流体が吸引される空間に設けた圧力センサの検出圧力が設定値以上であるか否かにより検知できる。つまり、設定値以上であれば流体負荷があると判断でき、設定値未満であれば流体負荷がないと判断できる。
【0053】
また、蒸気負荷があるか否かは、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される排蒸路または第二蒸気ヘッダに設けた圧力センサの検出圧力が所定値未満であるか否かにより検知できる。つまり、所定値未満であれば蒸気負荷があると判断でき、所定値以上であれば蒸気負荷がないと判断できる。
【0054】
ところで、前記各実施形態において、蒸気エンジンからのドレンは、ボイラへの給水タンクに戻して、熱回収を図るようにしてもよい。また、ボイラやその給水タンクへの給水を用いて、圧縮機などの被動機の冷却を図ってもよい。この場合、圧縮機の放熱でボイラへの給水を加温できるメリットもある。
【実施例1】
【0055】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の蒸気システムの実施例1を示す概略図である。本実施例の蒸気システム1は、蒸気を用いて動力を起こす原動機2と、これにより駆動される被動機3とを備える。
【0056】
原動機2は、蒸気を受けて動力を起こす蒸気エンジンである。蒸気エンジン2は、蒸気タービンでもよいが、好適にはスクリュ式蒸気エンジンである。スクリュ式蒸気エンジンは、互いにかみ合うスクリュロータ間に蒸気が導入され、その蒸気によりスクリュロータを回転させつつ蒸気を膨張して減圧し、その際のスクリュロータの回転により動力を得る装置である。
【0057】
被動機3は、蒸気エンジン2により駆動され、流体を吐出または吸入する装置である。具体的には、被動機3は、ポンプ、送風機、圧縮機または真空ポンプなどである。本実施例の被動機3は、空気圧縮機である。この圧縮機3は、その種類を特に問わないが、好適にはスクリュ式圧縮機である。スクリュ式圧縮機は、互いにかみ合って回転するスクリュロータ間に気体を吸入して、スクリュロータの回転により圧縮して吐出する装置である。
【0058】
圧縮機3は、蒸気エンジン2により駆動される。具体的には、スクリュ式蒸気エンジン2のスクリュロータの回転駆動力を用いて、スクリュ式圧縮機3のスクリュロータが回転される。この際、蒸気エンジン2の出力軸4と、圧縮機3の入力軸5とは、発電機を介することなく、カップリング6で接続される。但し、出力軸4と入力軸5とは、クラッチを介して接続されてもよい。この場合、蒸気エンジン2による圧縮機3の駆動の有無を、クラッチにより切り替えることができる。また、クラッチは、変速機を備えてもよい。この場合、変速比を変更することで、圧縮機3の吐出圧力を変更することができる。さらに、出力軸4と入力軸5とは、電動機(モータ)を介して接続されてもよい。この場合、圧縮機3は、蒸気エンジン2と電動機との内、一方または双方により駆動可能に、駆動割合を変更可能とされる。本実施例では、圧縮機3は、図1に示すように、蒸気エンジン2と電動機19とに接続されている。これにより、圧縮機3は、蒸気エンジン2で駆動可能とされると共に、電動機19でも駆動可能とされる。
【0059】
蒸気エンジン2には、蒸気ボイラ7からの蒸気が、給蒸路8を介して供給される。本実施例では、蒸気ボイラ7からの蒸気は、第一蒸気ヘッダ9に供給され、この第一蒸気ヘッダ9の蒸気が、給蒸路8を介して蒸気エンジン2に供給される。第一蒸気ヘッダ9から蒸気エンジン2への給蒸路8には、給蒸弁10が設けられる。この給蒸弁10の開閉を制御することで、蒸気エンジン2の作動の有無が切り替えられる。但し、給蒸弁10の開度を制御して、蒸気エンジン2の出力を調整してもよい。
【0060】
蒸気エンジン2にて使用後の蒸気は、各種の蒸気使用装置(図示省略)において利用することができる。本実施例では、蒸気エンジン2からの蒸気は、排蒸路11を介して第二蒸気ヘッダ12に供給され、この第二蒸気ヘッダ12の蒸気が、各種の蒸気使用装置へ供給される。ところで、蒸気エンジン2は、圧縮機3を駆動するだけでなく、減圧弁としても機能する。従って、蒸気エンジン2にて使用後の蒸気は、減圧弁通過後の蒸気として、各種の蒸気使用装置において、そのまま利用することもできる。
【0061】
第一蒸気ヘッダ9と第二蒸気ヘッダ12とは、バイパス路13を介しても接続される。図示例では、第一蒸気ヘッダ9から蒸気エンジン2への給蒸路8の内、給蒸弁10よりも上流部と、蒸気エンジン2から第二蒸気ヘッダ12への排蒸路11の中途部とが、バイパス路13で接続される。そして、このバイパス路13の中途部には、バイパス弁14が設けられる。このバイパス弁14は、制御器15により制御される電磁弁または電動弁とされてもよいが、本実施例では自力式の減圧弁とされる。具体的には、バイパス弁14は、第二蒸気ヘッダ12内の蒸気圧を所定に維持するように、機械的に自力で開度調整する。いずれにしても、蒸気エンジン2経由とバイパス弁14経由とのいずれで第二蒸気ヘッダ12に蒸気を供給してもよい条件では、蒸気エンジン2経由による蒸気供給が優先されるのがよい。
【0062】
このように、本実施例の蒸気システム1は、圧力および温度が異なる二つの蒸気ヘッダ9,12を備える。そして、各蒸気ヘッダ9,12内の蒸気は、それぞれ所望の蒸気使用装置(図示省略)へ供給可能とされる。各蒸気ヘッダ9,12内の蒸気は、温度が異なるので、用途に応じた蒸気の使用が可能となる。すなわち、比較的高温の蒸気が必要とされる場合には、第一蒸気ヘッダ9から蒸気を供給すればよいし、それよりも低温の蒸気が必要とされる場合には、第二蒸気ヘッダ12から蒸気を供給すればよい。
【0063】
ところで、本実施例の蒸気ボイラ7は、第一蒸気ヘッダ9内の蒸気圧に基づき、運転状態を制御される。具体的には、第一蒸気ヘッダ9内の蒸気圧に基づき、バーナの燃焼量を制御される。
【0064】
第二蒸気ヘッダ12には、その蒸気の使用負荷を把握するために、第一圧力センサ16が設けられる。この第一圧力センサ16により、第二蒸気ヘッダ12内の蒸気圧が監視される。従って、その蒸気圧が所定値未満であるか否かにより、蒸気負荷があるか否かを検知できる。すなわち、蒸気が使用される場合には、第二蒸気ヘッダ12内の蒸気圧が下がるので、それが所定値未満であるか否かにより、蒸気の使用負荷を検知できる。
【0065】
圧縮機3からの圧縮空気は、圧縮空気路17を介して一または複数の圧縮空気使用装置(図示省略)へ供給可能とされる。圧縮空気路17には、圧縮空気の使用負荷を把握するために、第二圧力センサ18が設けられる。この第二圧力センサ18により、圧縮空気路17内の空気圧が監視される。従って、その空気圧が設定値未満であるか否かにより、空気負荷があるか否かを検知できる。すなわち、圧縮空気が使用される場合には、圧縮空気路17内の空気圧が下がるので、それが設定値未満であるか否かにより、圧縮空気の使用負荷を検知できる。但し、圧縮空気路17の中途に中空のエアタンク(図示省略)を設け、このエアタンクに第二圧力センサ18を設けて、圧縮空気の使用負荷を検知してもよい。
【0066】
本実施例の蒸気システム1では、制御器15は、第一圧力センサ16と第二圧力センサ18の検出圧力を常時監視し、これに基づき後述のとおり給蒸弁10の開閉を制御する。但し、所望により、給蒸弁10の開度を制御する構成としてもよい。さらに、制御器15は、所望によりバイパス弁14や前記クラッチなどを制御可能としてもよい。但し、本実施例では、バイパス弁14は、前述したとおり、自力式の減圧弁とされている。
【0067】
制御器15は、第二圧力センサ18の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ16の蒸気圧が所定値未満であることにより蒸気負荷があると検知する場合には、給蒸弁10を開いて蒸気エンジン2を運転する。
【0068】
また、制御器15は、第二圧力センサ18の空気圧が設定値以上であることにより空気負荷がないと検知し、且つ第一圧力センサ16の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合には、給蒸弁10を閉じて蒸気エンジン2を停止する。
【0069】
また、制御器15は、第二圧力センサ18の空気圧が設定値以上であることにより空気負荷がないと検知し、且つ第一圧力センサ16の蒸気圧が所定値未満であることにより蒸気負荷があると検知する場合には、給蒸弁10を閉じて蒸気エンジン2を停止する。この場合、第二蒸気ヘッダ12ひいては蒸気使用装置には、バイパス路13を介して蒸気が供給される。
【0070】
さらに、制御器15は、第二圧力センサ18の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ16の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合には、電動機19により圧縮機3を駆動する。この場合、電動機19で前記圧縮機3を駆動可能としてもよいし、異なる圧縮機を駆動可能としてもよい。後者の場合、蒸気エンジン2により駆動される第一の圧縮機3からの圧縮空気と、電動機19により駆動される第二の圧縮機からの圧縮空気とは、共通の圧縮空気路17またはエアタンクを介して、圧縮空気使用装置へ供給される。
【0071】
但し、制御器15は、第二圧力センサ18の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ16の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合にも、給蒸弁10を開いて蒸気エンジン2を運転してもよい。この場合、電動機19は、必ずしも必要でない。また、たとえば、夏場の電力ピーク時で、電気の使用を極力抑えたい場合には、蒸気負荷がない場合でも、消費電力の大きい電気式を使わずに、圧縮機3を駆動するために、蒸気エンジン2へ蒸気を供給することができる。
【0072】
ところで、本実施例では、圧縮機3は、オンオフ制御されたが、場合により容量制御されてもよい。その場合、蒸気エンジン2への給蒸弁10の開度を調整したり、電動機19をインバータ制御したりするのが簡易である。
【実施例2】
【0073】
図2は、本発明の蒸気システム1の実施例2を示す概略図である。本実施例2の蒸気システム1も、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0074】
本実施例2の蒸気システム1も、蒸気を用いて動力を起こす蒸気エンジン2と、この蒸気エンジン2により駆動される圧縮機3とを備える。
【0075】
本実施例の蒸気エンジン2も、スクリュ式蒸気エンジンとされる。蒸気エンジン2には給蒸路8を介してボイラ7からの蒸気が供給され、蒸気エンジン2にて使用後の蒸気は排蒸路11を介して蒸気使用装置(図示省略)へ送られる。この際、前記実施例1と同様に、ボイラ7からの蒸気を第一蒸気ヘッダ9(図1)へ供給し、この第一蒸気ヘッダ9の蒸気を蒸気エンジン2へ供給したり、蒸気エンジン2からの蒸気を第二蒸気ヘッダ12(図1)へ供給し、この第二蒸気ヘッダ12の蒸気を蒸気使用装置へ供給したりしてもよい。
【0076】
ボイラ7は、蒸気ボイラであれば、その種類を特に問わない。前記実施例1でも同様であるが、ボイラ7には、給水タンク20からの水(軟水)が供給され、蒸気化される。具体的には、給水タンク20には、所定量の水が貯留されており、その水は給水ポンプ21を介してボイラ7へ供給される。ボイラ7に供給された水は、ボイラ7において加熱され蒸気化される。その蒸気は、所望により気水分離器(図示省略)や第一蒸気ヘッダ9(図1)を介して、給蒸路8から蒸気エンジン2へ供給される。ボイラ7は、缶内圧力が所定に維持されるように、バーナ(図示省略)の燃焼量が制御される。
【0077】
蒸気エンジン2への給蒸路8と蒸気エンジン2からの排蒸路11とは、バイパス路13にて接続される。本実施例2では、バイパス路13には、開度調整可能な電動弁から構成されるバイパス弁14が設けられる。なお、前記実施例1と同様に、給蒸路8には、所望により給蒸弁10(図1)を設けてもよい。この場合、本実施例2では、蒸気エンジン2への給蒸量は、基本的にバイパス弁14で調整されるので、給蒸弁10は、蒸気エンジン2への給蒸の有無を制御する電磁弁から構成すれば足りる。
【0078】
本実施例2の蒸気システム1でも、バイパス弁14の他、各圧力センサ16,18などには、制御器15が接続される。制御器15は、第二圧力センサ18および所望によりさらに第一圧力センサ16による検出圧力に基づき、バイパス弁14を制御すると共に、必要により電動機19を制御する。たとえば、第二圧力センサ18による検出圧力が設定圧力を維持するように、バイパス弁14の開度を調整する。具体的には、たとえば第二圧力センサ18による検出圧力が設定圧力よりも下がれば、バイパス弁14を閉じる方向へ調整すればよい。これにより、蒸気エンジン2への給蒸量を調整して、圧縮空気の利用負荷に合わせて圧縮機3を運転することができる。
【0079】
また、バイパス弁14は、第二圧力センサ18の検出圧力(空気圧)だけでなく、第一圧力センサ16の検出圧力(蒸気圧)に基づき制御されてもよい。つまり、本実施例2の蒸気システム1も、前記実施例1と同様に制御可能である。具体的には、制御器15は、空気負荷および蒸気負荷がある場合には、蒸気エンジン2への蒸気供給を実行し、空気負荷および蒸気負荷がない場合には、蒸気エンジン2への蒸気供給を停止する。
【0080】
実施例2では、バイパス弁14の開度を小さくする程、蒸気エンジン2への給蒸量を増すことができ、バイパス弁14の開度を大きくする程、蒸気エンジン2への給蒸量を減らすことができる。従って、蒸気エンジン2への蒸気供給を停止するには、バイパス弁14の開度を大きくする(典型的には全開とする)ことで、蒸気エンジン2への給蒸を実質的に低減すればよい。あるいは、前述したように、給蒸路8に電磁弁から構成される給蒸弁10を設け、この給蒸弁10を閉じてもよい。
【0081】
一方、制御器15は、空気負荷がないが蒸気負荷がある場合には、蒸気エンジン2への蒸気供給を停止した状態で、バイパス路13を介して蒸気を供給する。さらに、制御器15は、空気負荷があるが蒸気負荷がない場合には、前記圧縮機3または第二の圧縮機を電動機19で駆動する。但し、前記実施例1と同様、空気負荷があるが蒸気負荷がない場合にも、蒸気エンジン2への蒸気供給を実行してもよい。
【0082】
ところで、蒸気エンジン2からのドレンは、ドレン回収路22を介して、給水タンク20に戻される。また、給水タンク20への給水路23は、圧縮機3を介して給水タンク20へ接続するのがよい。この場合、給水タンク20への給水により圧縮機3の冷却を図ることができると共に、圧縮機3の放熱で給水を加温することができる。このような構成は、実施例2だけでなく、実施例1にも同様に適用可能である。
【0083】
本発明の蒸気システムは、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記各実施例では、蒸気エンジン2は、スクリュ式としたが、場合によりタービン式としてもよい。
【0084】
また、前記実施例1では、蒸気の使用負荷は、第二蒸気ヘッダ12に設けた第一圧力センサ16により検出したが、第一圧力センサ16は第二蒸気ヘッダ12ではなく、実施例2と同様に、蒸気エンジン2からの排蒸路11とバイパス路13との合流後の管路に設けてもよい。その場合、第二蒸気ヘッダ12は、その設置を省略することができる。
【0085】
また、前記各実施例において、圧縮機3に代えて、ポンプまたは送風機を設置してもよい。その場合も、前記各実施例と同様に制御すればよい。さらに、圧縮機3に代えて、真空ポンプを設置してもよい。その場合、蒸気エンジン2や電動機19により駆動される真空ポンプが吸引する空間内の圧力に基づき、蒸気エンジン2または電動機19を制御すればよい。
【0086】
さらに、前記各実施例において、給蒸弁10の開閉のハンチングを防止するために、「設定値」および/または「所定値」は、それぞれ動作隙間(ディファレンシャル)を設定してもよいのはもちろんである。たとえば、前記実施例1において、圧縮空気の使用に伴い、設定下限圧力になると、給蒸弁10を開ける一方、設定上限圧力になると、給蒸弁10を閉じればよい。また、第二蒸気ヘッダ12内の蒸気の使用に伴い、所定下限圧力になると、給蒸弁10を開ける一方、所定上限圧力になると、給蒸弁10を閉じればよい。同様に、制御器15は、第二圧力センサ18の検出圧力に基づき、空気圧を設定圧力域に維持するように、給蒸弁10および/またはバイパス弁14の開度を制御してもよい。また、制御器15は、第一圧力センサ16の検出圧力に基づき、蒸気圧を所定圧力域に維持するように、給蒸弁10の開度を制御してもよい。
【0087】
また、図1や図2においては、ボイラ7は一台のみを設置しているが、ボイラ7は複数台を設置してもよい。この場合、各ボイラ7,7,…からの蒸気は、第一蒸気ヘッダ9(図1)にまとめられた後、蒸気エンジン2やバイパス路13へ供給可能とされる。その際、第一蒸気ヘッダ9からの蒸気の一部は、蒸気エンジン2やバイパス弁13を介することなく、直接に蒸気使用装置へ供給可能に構成してもよい。
【0088】
また、これと同様に、前記各実施例において、第一蒸気ヘッダ9からの蒸気の一部は、蒸気エンジン2やバイパス路13を介することなく、直接に蒸気使用装置へ供給可能に構成してもよい。さらに、図2では、給水タンク20への給水で圧縮機3の冷却を図る例を示したが、これに代えてまたはこれに加えて、蒸気エンジン2の軸受部の冷却を図ってもよい。また、圧縮機3などの冷却は、給水タンク20への給水にて冷却したが、場合により、給水タンク20からボイラ7への給水にて冷却を図ってもよい。
【0089】
さらに、前記各実施例において、蒸気負荷と流体負荷とに基づき蒸気エンジン2への給蒸を制御する構成であれば、その具体的方法は適宜に変更可能である。たとえば、蒸気エンジン2から第二蒸気ヘッダ12への排蒸路11の中途に、開閉または開度が調整される弁を設けてもよい。また、第一蒸気ヘッダ9から蒸気エンジン2への給蒸路8の内、バイパス路13が分岐する箇所よりも上流部、または、蒸気エンジン2から第二蒸気ヘッダ12への排蒸路11の内、バイパス路13が合流する箇所よりも下流部に、開閉または開度が調整される弁を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の蒸気システムの実施例1を示す概略図である。
【図2】本発明の蒸気システムの実施例2を示す概略図である。
【符号の説明】
【0091】
1 蒸気システム
2 蒸気エンジン(原動機)
3 圧縮機(被動機)
7 蒸気ボイラ
8 給蒸路
9 第一蒸気ヘッダ
10 給蒸弁
11 排蒸路
12 第二蒸気ヘッダ
13 バイパス路
14 バイパス弁
15 制御器
16 第一圧力センサ
17 圧縮空気路
18 第二圧力センサ
19 電動機
20 給水タンク
22 ドレン回収路
23 給水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を用いて動力を起こす原動機と、
この原動機により駆動され、流体を吐出または吸入する被動機と、
前記原動機にて使用後の蒸気が供給される箇所へ、前記原動機を介することなく蒸気を供給するバイパス路と、
前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気負荷と、前記被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷とに基づき、前記原動機への給蒸を制御する制御器と
を備えることを特徴とする蒸気システム。
【請求項2】
前記原動機への給蒸路に設けた給蒸弁により、前記原動機への給蒸を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項3】
前記バイパス路に、バイパス弁が設けられ、
このバイパス弁は、前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気圧を所定に維持するよう動作する自力式の減圧弁とされる
ことを特徴とする請求項2に記載の蒸気システム。
【請求項4】
前記バイパス路は、前記原動機への給蒸路と前記原動機からの排蒸路とを接続して設けられ、
このバイパス路に設けたバイバス弁により、前記原動機への給蒸を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項5】
前記流体負荷および前記蒸気負荷がある場合には、前記原動機への蒸気供給を実行し、
前記流体負荷および前記蒸気負荷がない場合には、前記原動機への蒸気供給を停止し、
前記流体負荷がないが前記蒸気負荷がある場合には、前記原動機への蒸気供給を停止した状態で、前記バイパス路を介して蒸気を供給する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気システム。
【請求項6】
前記流体負荷があるが前記蒸気負荷がない場合には、前記被動機またはこれと同一機能の第二の被動機を電動機で駆動する
ことを特徴とする請求項5に記載の蒸気システム。
【請求項7】
前記原動機は、スクリュ式蒸気エンジンとされ、
前記被動機は、空気圧縮機とされ、
前記被動機により流体が吐出される空間内の圧力が設定値未満か否かにより、前記流体負荷があるか否かが検知され、
前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気圧が所定値未満か否かにより、前記蒸気負荷があるか否かが検知される
ことを特徴とする請求項6に記載の蒸気システム。
【請求項8】
前記流体負荷があるが前記蒸気負荷がない場合にも、前記原動機への蒸気供給を実行する
ことを特徴とする請求項5に記載の蒸気システム。
【請求項9】
前記原動機は、スクリュ式蒸気エンジンとされ、
前記被動機は、空気圧縮機とされ、
前記被動機により流体が吐出される空間内の圧力が設定値未満か否かにより、前記流体負荷があるか否かが検知され、
前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気圧が所定値未満か否かにより、前記蒸気負荷があるか否かが検知される
ことを特徴とする請求項8に記載の蒸気システム。
【請求項10】
前記給蒸路を介して前記原動機へ蒸気を供給するボイラを備え、
このボイラへの給水タンクに、前記原動機からのドレンが供給される
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の蒸気システム。
【請求項11】
前記ボイラまたはその給水タンクへの給水を用いて、前記圧縮機の冷却が図られる
ことを特徴とする請求項10に記載の蒸気システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−236103(P2009−236103A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212381(P2008−212381)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【特許番号】特許第4240155号(P4240155)
【特許公報発行日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】