説明

蒸気膨張機駆動空気圧縮装置

【課題】蒸気の使用量に拘わらず、安定して圧力差エネルギを回収できる蒸気膨張機駆動空気圧縮装置を提供する。
【解決手段】蒸気膨張機駆動空気圧縮装置1は、容積形蒸気膨張機2と、容積形蒸気膨張機2で駆動される容積形空気圧縮機3と、容積形蒸気膨張機2の吸気量を調節可能な容量調整弁6と、容積形空気圧縮機3の吐出側の圧力が一定になるように、容量調整弁6の開度を制御する制御装置12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気膨張機駆動空気圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラで発生した蒸気を使用するプラントにおいて、ボイラが発生する高圧(例えば1.2〜1.6MPa)の蒸気を減圧弁で減圧し、低圧(例えば0.8〜0.9MPa)の蒸気を需要設備に供給するのが一般的である。減圧弁で蒸気を減圧すると、蒸気の圧力差エネルギを廃棄することになるため、このエネルギを回収することが望まれる。
【0003】
特許文献1のように、スクリュ式蒸気膨張機で発電機を駆動することで、蒸気の圧力差エネルギを電気エネルギとして回収する装置が提案されている。一般に、発電機は、一定の速度で運転することが必要であるが、スクリュ式蒸気膨張機の速度を一定に保つと、低圧側の蒸気圧力が変動することになってしまう。
【0004】
スクリュ式蒸気膨張機の速度制御は、特許文献1に記載されているように、吐出圧が一定になるように、吸込側に設けた流量調整弁の開度を制御するのが一般的である。そこで、速度変化に対応可能な発電機を用いて、スクリュ式蒸気膨張機の吐出圧が一定になるように制御することで、蒸気使用量の変化に対応することが可能になる。
【0005】
しかしながら、小規模のプラントでは、蒸気使用量が不安定であるため、スクリュ式蒸気膨張機の吐出側の圧力を一定に保とうとすると、スクリュ式蒸気膨張機の回転数の変動が非常に大きくなる。このため、蒸気使用量が低下したときに、スクリュ式蒸気膨張機の出力トルクが不足して発電機を駆動できなくなる場合がある。
【0006】
特許文献2には、スクリュ式蒸気膨張機でスクリュ式空気圧縮機を駆動して、空気を圧縮する装置が記載されている。しかしながら、蒸気使用量と圧縮空気消費量とが比例関係にない場合には、スクリュ式蒸気膨張機の吐出側の圧力を一定に保つと、発生する圧縮空気の量が制御できず、圧縮空気に過不足が生じて、圧縮空気の圧力が変動してしまうという問題がある。
【0007】
しかしながら、
【特許文献1】特開2007−16614号公報
【特許文献2】特開昭63−50692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題点に鑑みて、本発明は、蒸気の使用量に拘わらず、安定して圧力差エネルギを回収できる蒸気膨張機駆動空気圧縮装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明による蒸気膨張機駆動空気圧縮装置は、容積形蒸気膨張機と、前記容積形蒸気膨張機によって駆動される容積形空気圧縮機と、前記容積形蒸気膨張弁の吸気量を調節可能な容量調整弁と、前記容積形空気圧縮機の吐出側の圧力が一定になるように、前記容量調整弁の開度を制御する制御装置とを有するものとする。
【0010】
この構成によれば、容量調整弁によって、容積形空気圧縮機に必要な駆動トルクに応じた量の蒸気を容積形蒸気膨張機に供給するので、容積形空気圧縮機を安定して駆動できる。
【0011】
また、本発明の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置は、前記容積形空気圧縮機の吐出側の圧力を検出する圧力検出器を有し、前記制御装置は、前記圧力検出器の検出信号に基づいて、前記容量調整弁の開度をPID制御してもよい
【0012】
この構成によれば、広く流通しているPIDコントローラを使用でき、構成が簡単で、低コストである。
【0013】
また、本発明の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置において、前記容積形蒸気膨張機は、減速機を介して前記容積形空気圧縮機を駆動してもよい。
【0014】
この構成によれば、容積形空気圧縮機の負荷トルクに応じて減速機の減速比を選択することで、機械効率が高くなる。
【0015】
また、本発明の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置において、前記容積形蒸気膨張機は、スクリュ膨張機であり、前記容積形空気圧縮機は、スクリュ圧縮機であってもよい。
【0016】
この構成によれば、スクリュ膨張機およびスクリュ圧縮機のトルク変動が小さいために、運転可能な圧力範囲が広く、安定した運転ができる。
【0017】
また、本発明の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置において、前記容量調整弁の上流と前記容積形蒸気膨張機の吐出側とを減圧弁を介して接続してもよい。
【0018】
この構成によれば、蒸気の使用量が多い場合に、減圧弁を介して、蒸気膨張機駆動空気圧縮装置をバイパスして必要な蒸気を需要設備に供給できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、容積形蒸気膨張機で容積形空気圧縮機を駆動し、容積形空気圧縮機の吐出側の圧力を一定に保つように、容積形蒸気膨張機の吸込側に設けた容量調整弁の開度を調節するので、蒸気の供給圧力と使用圧力との差圧エネルギを空圧エネルギとして安定して回収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の1つの実施形態の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置1の概要を示す。蒸気膨張機駆動空気圧縮装置1は、容積形蒸気膨張機であるスクリュ膨張機(エキスパンダ)2と、容積形空気圧縮機であるスクリュ圧縮機3とを有し、スクリュ膨張機2の出力軸とスクリュ圧縮機3の入力軸とが減速機4を介して接続されている。
【0021】
スクリュ膨張機2には、不図示のボイラから高圧蒸気がスチームトラップ5および容量調整弁6を介して供給されている。スクリュ膨張機2は、吸気した蒸気の膨張力を回転力に変換して、膨張により減圧された低圧蒸気を不図示の需要設備に供給するようになっている。また、蒸気膨張機駆動空気圧縮装置1は、高圧蒸気を減圧弁7を介して、スクリュ膨張機2を介さずに低圧側に供給することができるようになっている。
【0022】
スクリュ圧縮機3は、エアフィルタ8を介して空気を吸引し、圧縮して吐出する。スクリュ圧縮機3が吐出した圧縮空気は、オイルセパレータ9で潤滑油が分離され、アフタークーラ10で冷却されて需要設備に供給される。
【0023】
蒸気膨張機駆動空気圧縮装置1は、オイルセパレータ9の出口配管に圧力検出器11が設置されており、PID制御装置12によって圧力検出器11の検出圧力が所定の設定圧力になるように、容量調整弁6の開度をPID制御するようになっている。
【0024】
オイルセパレータ9で分離された潤滑油は、自動温度調整弁13、オイルクーラ14およびオイルフィルタ15を介して、スクリュ膨張機2の軸受部およびスクリュ圧縮機3のロータ室に供給される。また、スクリュ膨張機2が停止したとき、スクリュ膨張機2の軸受部への潤滑油の供給を直ちに停止できるように、電磁弁16が配設されている。さらに、スクリュ膨張機2の軸受部に供給された潤滑油は、減速機4に流入して減速機4を潤滑し、減速機4から流出した潤滑油は、逆止弁17を介してスクリュ圧縮機3のロータ室に供給される。
【0025】
本実施形態の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置1では、圧縮空気の需要が少ない場合、圧力検出器11の検出圧力、つまり、スクリュ圧縮機3の吐出側の空気圧が上昇するため、PID制御装置12によって、スクリュ膨張機2の吸込の容量調整弁6の開度が制限され、スクリュ膨張機2への蒸気供給量が少なくなる。これによって、スクリュ膨張機2の回転数は減少し、スクリュ圧縮機3の吐出圧も低下するので、スクリュ圧縮機3の吐出側の圧力(圧縮空気の需要設備への供給圧力)が低下し、所定の設定圧力に回復する。
【0026】
また、圧縮空気の需要が多い場合、スクリュ圧縮機3の吐出側の圧力が低下するため、PID制御装置12によって、スクリュ膨張機2の吸込の容量調整弁6が大きく開かれる。これによって、スクリュ膨張機2の回転数が増大し、スクリュ圧縮機3の吐出圧も上昇するので、圧縮空気の供給圧力が上昇し、設定圧力を回復する。
【0027】
詳しく説明すると、容積形蒸気膨張機であるスクリュ膨張機2の出力トルクは、吸込圧力と吐出圧力との差によって決まる。また、同様に、容積形空気圧縮機であるスクリュ圧縮機3の駆動トルクは、吸気圧力と吐出圧力との差圧によって決まる。このため、スクリュ圧縮機3の駆動に必要なトルクに合わせて、容量調整弁6の開度を調節することによって実質的なスクリュ膨張機2の吸気圧力を低下させることで、スクリュ膨張機2の出力を制御して、所望の圧力の圧縮空気を発生させることができる。
【0028】
このように、本実施形態では、圧縮空気の圧力に応じて、スクリュ膨張機2の蒸気流量を調節するので、ボイラから供給される高圧蒸気と、常用設備で使用する低圧蒸気との差圧エネルギを空圧エネルギとして安定して回収し、一定圧力の圧縮空気を供給することができる。
【0029】
また、本実施形態において、減速機4は、スクリュ膨張機2を最適な条件で運転したときのスクリュ膨張機2の出力が、スクリュ圧縮機3によって空気を圧縮するのに最適なトルクとなるように減速している。これによって、蒸気膨張機駆動空気圧縮装置1全体の機械効率が最適化され、エネルギ回収効率を高めている。
【0030】
また、本実施形態において、圧縮空気の需要に比して蒸気の需要が多い場合は、減圧弁7を介して蒸気需要設備に蒸気を供給することができる。
【0031】
本発明の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置は、蒸気タービンのような速度形の機器と比べて、運転可能範囲の広い容積形の蒸気膨張機および空気圧縮機、特に、回転形で振動(回転中の位相によるトルク変動)の小さいスクリュ膨張機およびスクリュ圧縮機を使用することで、圧縮空気の需要変動に拘わらず、安定した運転が可能である。
【0032】
また、本発明において、蒸気膨張機の吸気側の容量調整弁の空気圧縮機の吐出側の圧力に基づいた制御は、PID制御に限らず、いかなる制御を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置の概略図。
【符号の説明】
【0034】
1…蒸気膨張機駆動空気圧縮装置
2…スクリュ膨張機(容積形蒸気膨張機)
3…スクリュ圧縮機(容積形空気圧縮機)
4…減速機
6…流量調整弁
7…減圧弁
11…圧力検出器
12…PID制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積形蒸気膨張機と、
前記容積形蒸気膨張機によって駆動される容積形空気圧縮機と、
前記容積形蒸気膨張機の吸気量を調節可能な容量調整弁と、
前記容積形空気圧縮機の吐出側の圧力が一定になるように、前記容量調整弁の開度を制御する制御装置とを有することを特徴とする蒸気膨張機駆動空気圧縮装置。
【請求項2】
前記容積形空気圧縮機の吐出側の圧力を検出する圧力検出器を有し、
前記制御装置は、前記圧力検出器の検出信号に基づいて、前記容量調整弁の開度をPID制御することを特徴とする請求項1に記載の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置。
【請求項3】
前記容積形蒸気膨張機は、減速機を介して前記容積形空気圧縮機を駆動することを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置。
【請求項4】
前記容積形蒸気膨張機は、スクリュ膨張機であり、前記容積形空気圧縮機は、スクリュ圧縮機であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置。
【請求項5】
前記容量調整弁の上流と前記容積形蒸気膨張機の吐出側とを減圧弁を介して接続したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の蒸気膨張機駆動空気圧縮装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−257119(P2009−257119A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104653(P2008−104653)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】