蒸発器ユニット
【課題】接続構成が簡素であり、かつ冷媒漏れに対するシール性が高い蒸発器ユニットを提供する。
【解決手段】冷凍サイクルを構成する蒸発器15と、冷凍サイクルの高圧側冷媒と低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器13と、冷凍サイクルの膨張弁14が組み付けられる膨張弁組付部29とを備え、膨張弁組付部29には、膨張弁14の冷媒入口14aに流入する冷媒が流れる入口側流路29bと、膨張弁14の冷媒出口14bから流出した冷媒が流れる出口側流路29cとが形成され、蒸発器15、内部熱交換器13および膨張弁組付部29は、いずれも金属で形成され、かつ互いに一体ろう付けされている。
【解決手段】冷凍サイクルを構成する蒸発器15と、冷凍サイクルの高圧側冷媒と低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器13と、冷凍サイクルの膨張弁14が組み付けられる膨張弁組付部29とを備え、膨張弁組付部29には、膨張弁14の冷媒入口14aに流入する冷媒が流れる入口側流路29bと、膨張弁14の冷媒出口14bから流出した冷媒が流れる出口側流路29cとが形成され、蒸発器15、内部熱交換器13および膨張弁組付部29は、いずれも金属で形成され、かつ互いに一体ろう付けされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに用いられる蒸発器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蒸発器ユニットが特許文献1、2に記載されている。特許文献1の従来技術では、蒸発器に内部熱交換器が一体化されている。具体的には、内部熱交換器が蒸発器の熱交換器コアと並んで一体に構成されている。
【0003】
特許文献2の従来技術では、蒸発器に内部熱交換器と膨張弁とが一体的に組み付けられている。具体的には、蒸発器と内部熱交換器との間に膨張弁が挟まれて組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−97911号公報
【特許文献2】特開2001−21234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、膨張弁が蒸発器に一体化されていないので、膨張弁を蒸発器に接続するための接続配管等が必要になって接続構成が複雑化してしまう。
【0006】
この点、上記特許文献2の従来技術では、内部熱交換器および膨張弁が蒸発器に一体的に組み付けられているので、膨張弁を蒸発器に接続するための接続配管が不要であり、接続構成が簡素になる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の従来技術では、蒸発器と内部熱交換器との間に膨張弁が挟まれているので、蒸発器と膨張弁との接続部、および膨張弁と内部熱交換器との接続部で冷媒漏れが発生する虞がある。
【0008】
ここで、蒸発器、膨張弁および内部熱交換器を一体ろう付けすれば、蒸発器、膨張弁および内部熱交換器の接続部における冷媒漏れを効果的に防止できる。しかしながら、膨張弁を一体ろう付けすると膨張弁が熱変形して、膨張弁内部の通路形状、寸法等を所期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、接続構成が簡素であり、かつ冷媒漏れに対するシール性が高い蒸発器ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷凍サイクルを構成する蒸発器(15)と、
冷凍サイクルの高圧側冷媒と低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器(13)と、
冷凍サイクルの膨張弁(14)が組み付けられる膨張弁組付部(29)とを備え、
膨張弁組付部(29)には、膨張弁(14)の冷媒入口(14a)に流入する冷媒が流れる入口側流路(29b)と、膨張弁(14)の冷媒出口(14b)から流出した冷媒が流れる出口側流路(29c)とが形成され、
蒸発器(15)、内部熱交換器(13)および膨張弁組付部(29)は、いずれも金属で形成され、かつ互いに一体ろう付けされていることを特徴とする。
【0011】
これによると、蒸発器(15)のみの一体ろう付けを行った後に内部熱交換器(13)および膨張弁(14)を蒸発器(15)に組み付けする場合と比較して、一体ろう付け後の接続箇所を低減できる。その結果、接続構成を簡素化できるとともに、冷媒漏れに対するシール性を高めることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の蒸発器ユニットにおいて、入口側流路(29b)は、内部熱交換器(13)の高圧側冷媒出口(13c)から膨張弁(14)の冷媒入口(14a)に至る内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)であり、
出口側流路(29c)は、膨張弁(14)の冷媒出口(14b)から蒸発器(15)に至る膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)であり、
膨張弁組付部(29)には、蒸発器(15)から内部熱交換器(13)のうち低圧側冷媒入口(13d)に至る蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、内部熱交換器(13)、膨張弁(14)および蒸発器(15)間の流路を膨張弁組付部(29)に集約することができるので、流路構成を簡素化できる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の蒸発器ユニットにおいて、蒸発器(15)は、熱交換コア部(21a、22a)の冷媒流路を形成する複数のチューブ(23)を有し、
膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)および蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)には、複数のチューブ(23)のうち少なくとも一部のチューブの端部が挿入されていることを特徴とする。
【0015】
これによると、膨張弁組付部(29)が、複数のチューブ(23)に対する冷媒の分配・集合を行うタンク部の役割を兼ねることができるので、ユニット体格を小型化できる。
【0016】
具体的には、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載の蒸発器ユニットにおいて、膨張弁組付部(29)には、膨張弁(14)のうち冷媒入口(14a)および冷媒出口(14b)の形成部位が挿入される膨張弁挿入穴(29a)が形成され、
膨張弁挿入穴(29a)は、内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)および膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)に連通し、
膨張弁組付部(29)は、膨張弁挿入穴(29a)を形成する膨張弁挿入穴形成部材(30)と、複数のチューブ(23)のうち少なくとも一部のチューブの端部が挿入されるチューブ挿入部材(31)とに分割して形成されているのが好ましい。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の蒸発器ユニットにおいて、内部熱交換器(13)には、高圧側冷媒出口(13c)を形成する高圧側出口端部(13e)と、低圧側冷媒入口(13d)を形成する低圧側入口端部(13e)とが互いに分離して形成され、
内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)の入口部には、高圧側出口端部(13e)が挿入され、
蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)の出口部には、低圧側入口端部(13e)が挿入されていることを特徴とする。
【0018】
これにより、内部熱交換器(13)と膨張弁組付部(29)とを簡素な構成でもって接続できる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、請求項2ないし5のいずれか1つに記載の蒸発器ユニットにおいて、ノズル部(40a)から噴射される高い速度の冷媒流により冷媒吸引口(40b)から冷媒を吸引し、ノズル部(40a)から噴射された冷媒と冷媒吸引口(40b)から吸引された冷媒とを混合して吐出するエジェクタ(40)が組み付けられるエジェクタ組付部(43)を備え、
蒸発器(15)は、エジェクタ(40)の出口側に接続されてエジェクタ(40)から吐出された冷媒を蒸発させる第1蒸発器(21)、および冷媒吸引口(40b)に接続されてエジェクタ(40)に吸引される冷媒を蒸発させる第2蒸発器(22)であり、
エジェクタ組付部(43)には、ノズル部(40a)の入口に流入する冷媒が流れるノズル部入口側流路(43b)と、冷媒吸引口(40b)に吸引される冷媒が流れる冷媒吸引口側流路(43c)と、エジェクタ(40)の出口から流出した冷媒が流れるエジェクタ出口側流路(43d)とが形成され、
エジェクタ組付部(43)は、金属で形成され、かつ第1、第2蒸発器(21、22)、内部熱交換器(13)および膨張弁組付部(29)と一体ろう付けされていることを特徴とする。
【0020】
これにより、エジェクタ(40)を備える冷凍サイクルにおいて、接続構成を簡素化できるとともに、冷媒漏れに対するシール性を高めることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の蒸発器ユニットにおいて、膨張弁組付部(29)には、内部熱交換器(13)のうち高圧側冷媒の出口とノズル部入口側流路(43b)とを連通する高圧冷媒流路(29e)が形成され、
高圧冷媒流路(29e)およびノズル部入口側流路(43b)は、内部熱交換器(13)の高圧側冷媒出口(13c)からノズル部(40a)の入口に至る内部熱交換器−ノズル部冷媒流路を構成していることを特徴とする。
【0022】
これにより、内部熱交換器(13)、膨張弁(14)および第1、第2蒸発器(21、22)間の流路と、内部熱交換器(13)およびエジェクタ(40)間の流路とを膨張弁組付部(29)およびエジェクタ組付部(43)に集約することができるので、流路構成を簡素化できる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、請求項6または7に記載の蒸発器ユニットにおいて、冷媒吸引口側流路(43c)は、第2蒸発器(22)からエジェクタ(40)の冷媒吸引口(40b)に至る蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路(43c)であり、
エジェクタ出口側流路(43d)は、エジェクタ(40)の出口から第1蒸発器(21)に至るエジェクタ−蒸発器冷媒流路(43d)であることを特徴とする。
【0024】
これにより、第1、第2蒸発器(21、22)およびエジェクタ(40)間の流路をエジェクタ組付部(43)に集約することができるので、流路構成を簡素化できる。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態における冷凍サイクルの全体構成図である。
【図2】第1実施形態における一体化ユニットの全体構成を示す二面図である。
【図3】図2の膨張弁組付部の近傍を示す正面図である。
【図4】図2のサイドプレートを示す二面図、断面図および斜視図である。
【図5】図2の上側タンク部を示す二面図である。
【図6】(a)は図5のA矢視図であり、(b)は図5のB−B断面図である。
【図7】図2のチューブ挿入部材を示す二面図である。
【図8】図2の膨張弁挿入穴形成部材を示す三面図である。
【図9】図2の一体化ユニットの正面図である。
【図10】図9の膨張弁組付部を示す二面図である。
【図11】本発明の第2実施形態における冷凍サイクルの全体構成図である。
【図12】図1のエジェクタを示す断面図である。
【図13】第2実施形態における一体化ユニットの全体構成を示す二面図である。
【図14】図13のエジェクタ組付部を示す二面図である。
【図15】図13の膨張弁組付部を示す二面図である。
【図16】他の実施形態におけるサイドプレートを示す斜視図である。
【図17】他の実施形態における一体化ユニットの全体構成を示す二面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明における蒸発器ユニットおよびそれを用いた冷凍サイクルの実施形態を説明する。蒸発器ユニットは、冷凍サイクルを構成するために配管を介して冷凍サイクルの他の構成部品である圧縮機および凝縮器と接続される。蒸発器ユニットは、ひとつの形態では室内機として空気を冷却する用途に用いられる。また、蒸発器ユニットは、他の形態では室外機として用いることができる。
【0028】
図1〜図10は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は第1実施形態による冷凍サイクル10を車両用冷凍サイクル装置に適用した例を示す。本実施形態の冷凍サイクル10において、冷媒を吸入圧縮する圧縮機11は、電磁クラッチ、ベルト等を介して図示しない車両走行用エンジンにより回転駆動される。
【0029】
圧縮機11としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機のいずれを使用してもよい。また、圧縮機11として電動圧縮機を使用すれば、電動モータの回転数調整により冷媒吐出能力を調整できる。
【0030】
この圧縮機11の冷媒吐出側には放熱器12が配置されている。放熱器12は圧縮機11から吐出された高圧冷媒と図示しない冷却ファンにより送風される外気(車室外空気)との間で熱交換を行って高圧冷媒を冷却する。
【0031】
ここで、冷凍サイクル10の冷媒として、本実施形態ではフロン系、HC系等の冷媒のように高圧圧力が臨界圧力を超えない冷媒を用いて、蒸気圧縮式の亜臨界サイクルを構成している。このため、放熱器12は冷媒を凝縮する凝縮器として作用する。
【0032】
放熱器12の出口側には内部熱交換器13が接続されている。内部熱交換器13には、放熱器12から流出した高圧側冷媒が流れる高圧側冷媒流路13aと、圧縮機11に吸入される低圧側冷媒が流れる低圧側冷媒流路13bとが形成されている。
【0033】
内部熱交換器13が高圧側冷媒と低圧側冷媒とを熱交換させることにより、蒸発器15における入口側冷媒と出口側冷媒とのエンタルピ差(冷凍能力)を増大することができる。
【0034】
内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13c側には膨張弁14の冷媒入口14aが接続されている。膨張弁14は内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aからの液冷媒を減圧する減圧手段である。
【0035】
膨張弁14の冷媒出口14b側には蒸発器15が接続されている。蒸発器15の出口側は内部熱交換器13の低圧側冷媒入口13dに接続されている。内部熱交換器13の低圧側冷媒出口は圧縮機11の吸入側に接続されている。
【0036】
蒸発器15は、図示しないケース内に収納され、そして、このケース内に構成される空気通路に共通の電動送風機16により空気(被冷却空気)を矢印A1のごとく送風し、この送風空気を蒸発器15で冷却するようになっている。
【0037】
蒸発器15で冷却された冷風を冷却対象空間(図示せず)に送り込み、これにより、蒸発器15にて冷却対象空間を冷却するようになっている。
【0038】
なお、本実施形態の冷凍サイクル10を車両空調用冷凍サイクル装置に適用する場合は車室内空間が冷却対象空間となる。また、本実施形態の冷凍サイクル10を冷凍車用冷凍サイクル装置に適用する場合は冷凍車の冷凍冷蔵庫内空間が冷却対象空間となる。
【0039】
本実施形態では、内部熱交換器13、膨張弁14および蒸発器15を1つの一体化ユニット20として組み付けている。
【0040】
図2は一体化ユニット20の全体構成の概要を示す二面図である。本実施形態では、蒸発器15は、空気流れA1の上流側(風上側)に配置される第1蒸発器21と、空気流れA1の下流側(風下側)に配置される第2蒸発器22とを一体化した構造になっている。
【0041】
第1、第2蒸発器21、22はそれぞれ熱交換コア部21a、22aと、この熱交換コア部21a、22aの上下両側に位置するタンク部21b、21c、22b、22cとを備えている。
【0042】
以下、第1蒸発器21の熱交換コア部21aを第1熱交換コア部21aと言い、第2蒸発器22の熱交換コア部22aを第2熱交換コア部22aと言う。
【0043】
第1、第2熱交換コア部21a、22aは、それぞれ上下方向に延びる複数のチューブ23を備えている。これら複数のチューブ23の間には、被熱交換媒体(冷却される空気)が通る通路が形成される。これら複数のチューブ23相互間には、フィン24を配置し、チューブ23とフィン24とを接合することができる。
【0044】
本実施形態では、第1、第2熱交換コア部21a、22aは、チューブ23とフィン24との積層構造からなる。このチューブ23とフィン24は第1、第2熱交換コア部21a、22aの左右方向に交互に積層配置される。
【0045】
なお、図2では、チューブ23とフィン24の積層構造の一部のみ図示しているが、熱交換コア部21a、22aの全域にチューブ23とフィン24の積層構造が構成され、この積層構造の空隙部を電動送風機16の送風空気が通過するようになっている。
【0046】
チューブ23は冷媒通路を構成するもので、断面形状が空気流れ方向A1に沿って扁平な扁平チューブよりなる。フィン24は薄板材を波状に曲げ成形したコルゲートフィンであり、チューブ23の平坦な外面側に接合され空気側伝熱面積を拡大する。
【0047】
第1熱交換コア部21aのチューブ23と第2熱交換コア部22aのチューブ23は互いに独立した冷媒通路を構成し、第1熱交換コア部21aの上下両側のタンク部21b、21cと、第2熱交換コア部22aの上下両側のタンク部22b、22cは互いに独立した冷媒通路空間を構成する。
【0048】
第1熱交換コア部21aの上下両側のタンク部21b、21cの内部空間は、第1熱交換コア部21aのチューブ23の上下両端部に連通するようになっている。同様に、第2熱交換コア部22aの上下両側のタンク部22b、22cの内部空間は、第2熱交換コア部22aのチューブ23の上下両端部に連通するようになっている。
【0049】
これにより、上下両側のタンク部21b、21c、22b、22cは、それぞれ対応する熱交換コア部21a、22aの複数のチューブ23へ冷媒流れを分配する役割、および複数のチューブ23からの冷媒流れを集合する役割を果たす。
【0050】
2つの上側タンク部21b、22b、および2つの下側タンク部21c、22cは隣接しているので、2つの上側タンク部21b、22b同士、および2つの下側タンク部21c、22c同士を一体的に成形することができる。もちろん、2つの上側タンク部21b、22b、および2つの下側タンク部21c、22cをそれぞれ独立の部材として成形してもよい。
【0051】
下側タンク部21c、22cの長手方向一端部には、一体化ユニット20の1つの冷媒入口25および1つの冷媒出口26が形成されている。
【0052】
第1、第2熱交換コア部21a、22aの両側面部には、第1、第2熱交換コア部21a、22aを保持するサイドプレート27、28がろう付け固定されている。サイドプレート27、28は、第1、第2熱交換コア部21a、22aの側方にてチューブ23の長手方向に延びる形状を有しており、上下両側のタンク部21b、21c、22b、22cにもろう付け固定されている。
【0053】
なお、チューブ23、フィン24、タンク部21b、21c、22b、22c、サイドプレート27、28等の蒸発器構成部品の具体的材質としては、熱伝導性やろう付け性に優れた金属であるアルミニウムが好適であり、このアルミニウム材にて各部品を成形することにより、第1、第2蒸発器21、22の全体構成を一体ろう付けにて組み付けることができる。
【0054】
本実施形態では、内部熱交換器13および膨張弁組付部29もろう付けにて第1、第2蒸発器21、22と一体に組み付けるようになっている。膨張弁組付部29は、蒸発器部品と同様にアルミニウム材(金属材)にて成形されており、第1、第2蒸発器21、22の上側タンク部21b、22bの長手方向一端部にろう付け固定されている。
【0055】
これに対し、膨張弁14は内部に微小通路を形成しているので、膨張弁14をろう付けすると、ろう付け時の高温度(アルミニウムのろう付け温度:600℃付近)にて膨張弁14が熱変形して、膨張弁14内部の通路形状、寸法等を所期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
【0056】
そこで、膨張弁14については、図3に示すように、第1、第2蒸発器21、22、内部熱交換器13および膨張弁組付部29の一体ろう付けを行った後に、膨張弁組付部29に組み付けするようにしてある。
【0057】
より具体的に、第1、第2蒸発器21、22、内部熱交換器13および膨張弁組付部29の組み付け構造を説明すると、内部熱交換器13は、第1、第2蒸発器21、22の両サイドプレート27、28のうち冷媒入口25および冷媒出口26側のサイドプレート27と一体化されている。
【0058】
本実施形態では、図4に示すように、サイドプレート27の内部に、高圧側冷媒流路13aおよび低圧側冷媒流路13bをチューブ23の長手方向に直線状かつ平行に貫通するように形成することによって、内部熱交換器13をサイドプレート27と一体化している。このような内部熱交換器13(すなわちサイドプレート27)は押し出し成形にて一体成形することができる。
【0059】
内部熱交換器13のうち上下タンク部21b、21c、22b、22c側の端部は、膨張弁組付部29に挿入されて接合されている。
【0060】
本実施形態では、内部熱交換器13のうち上側タンク部21b、22c側の端部は、高圧側冷媒出口13cを形成する高圧側出口端部13eと、低圧側冷媒入口13dを形成する低圧側入口端部13fとに分離されている。具体的には、内部熱交換器13の端部に切欠部13gを形成することによって、高圧側出口端部13eと低圧側入口端部13fとを分離している。
【0061】
図3に示すように、膨張弁組付部29には、膨張弁14が挿入される膨張弁挿入穴29aが形成されている。膨張弁14は、冷媒入口14aおよび冷媒出口14bが膨張弁挿入穴29a内に位置するように、冷媒入口14aおよび冷媒出口14bの形成部位が膨張弁挿入穴29aに挿入される。
【0062】
膨張弁組付部29の内部には、内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13cから膨張弁14の冷媒入口14aに至る内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bと、膨張弁14の冷媒出口14bから第2蒸発器22に至る膨張弁−蒸発器冷媒流路29cと、第1蒸発器21から内部熱交換器13の低圧側冷媒入口13dに至る蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dとが形成されている。
【0063】
内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bは、膨張弁14の冷媒入口14aに流入する冷媒が流れる入口側流路である。膨張弁−蒸発器冷媒流路29cは、膨張弁14の冷媒出口14bから流出した冷媒が流れる出口側流路である。
【0064】
膨張弁組付部29には、第1、第2熱交換コア部21a、22aの複数のチューブ23のうち一部のチューブの端部が挿入されている。これにより、膨張弁組付部29は、上側タンク部21b、22bの一部を構成している。
【0065】
図5は、一体化ユニット20のうち膨張弁組付部29近傍部位の二面図であり、膨張弁14を取り外した状態を示している。図6は図5のA矢視図およびB−B断面図である。
【0066】
本実施形態では、膨張弁組付部29は、膨張弁挿入穴29aを形成する膨張弁挿入穴形成部材30と、複数のチューブ23の端部が挿入されるチューブ挿入部材31とに分割して形成されている。
【0067】
膨張弁挿入穴形成部材30およびチューブ挿入部材31は、上側タンク部21b、22bも構成している。具体的には、上側タンク部21b、22bは、膨張弁挿入穴形成部材30、チューブ挿入部材31、プレートヘッダ32およびタンクヘッダ33で構成されている。
【0068】
より具体的には、上側タンク部21b、22bは、長手方向一端部が膨張弁挿入穴形成部材30、チューブ挿入部材31およびプレートヘッダ32で構成され、残余の部位がチューブ挿入部材31、プレートヘッダ32およびタンクヘッダ33で構成されている。チューブ挿入部材31は、プレートヘッダ32とタンクヘッダ33との間に挟まれる中間プレートの役割を果たしている。
【0069】
図6(b)に示すように、プレートヘッダ32には、第1熱交換コア部21aのチューブ23の上端部が嵌合されて接合される第1チューブ嵌合孔32aと、第2熱交換コア部22aのチューブ23の上端部が嵌合されて接合される第2チューブ嵌合孔32bとが形成されている。
【0070】
図7はチューブ挿入部材31の二面図である。図6(b)、図8に示すように、チューブ挿入部材31には、プレートヘッダ32の第1チューブ嵌合孔32aと重合して第1熱交換コア部21aのチューブ23の上端部が挿入される第1チューブ挿入孔31aと、プレートヘッダ32の第2チューブ嵌合孔32bと重合して第2熱交換コア部22aのチューブ23の上端部が挿入される第2チューブ挿入孔31bとが形成されている。
【0071】
チューブ挿入部材31は、長手方向一端部が図6(a)に示すように膨張弁挿入穴形成部材30とプレートヘッダ32との間に挟まれてろう付け固定され、残余の部位が図6(b)に示すようにタンクヘッダ33とプレートヘッダ32との間に挟まれてろう付け固定されている。
【0072】
図8は膨張弁挿入穴形成部材30の三面図である。図6、図8に示すように、膨張弁挿入穴形成部材30およびタンクヘッダ33には、上側タンク部21b、22bの長手方向に延びてチューブ挿入部材31の第1チューブ挿入孔31aと対向する第1タンク溝30a、33aが形成されている。第1タンク溝30a、33aは、第1蒸発器21の上側タンク部21bの内部空間を構成している。
【0073】
同様に、膨張弁挿入穴形成部材30およびタンクヘッダ33には、上側タンク部21b、22bの長手方向に延びてチューブ挿入部材31の第2チューブ挿入孔31bと対向する第2タンク溝30b、33bが形成されている。第2タンク溝30b、33bは、上側タンク部22bの内部空間を構成している。
【0074】
図5(b)、図6(b)に示すように、プレートヘッダ32には、内部熱交換器13の高圧側出口端部13eが嵌合されて接合される高圧側出口端部嵌合孔32cと、内部熱交換器13の低圧側入口端部13fが嵌合されて接合される低圧側入口端部嵌合孔32dとが形成されている。
【0075】
図6(b)、図7に示すように、チューブ挿入部材31には、プレートヘッダ32の高圧側出口端部嵌合孔32cと重合して内部熱交換器13の高圧側出口端部13eが挿入される高圧側出口端部挿入穴31cと、プレートヘッダ32の低圧側入口端部嵌合孔32dと重合して内部熱交換器13の低圧側入口端部13fが挿入される低圧側入口端部挿入穴31dとが形成されている。図5(a)に示すように、チューブ挿入部材31の低圧側入口端部挿入穴31dは、膨張弁挿入穴形成部材30の第1タンク溝30aと対向している。
【0076】
図5、図6、図8に示すように、膨張弁挿入穴形成部材30には、冷媒流路をなす第1、第2流路穴30c、30dが形成されている。図5(a)に示すように、第1流路穴30cは、チューブ挿入部材31の高圧側出口端部挿入穴31cと重合し、膨張弁挿入穴29aに連通している。第2流路穴30dは、膨張弁挿入穴29aからタンク溝30bまで延びている。
【0077】
チューブ挿入部材31の高圧側出口端部挿入穴31cおよび膨張弁挿入穴形成部材30の第1流路穴30cは、膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを構成している。内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bの入口部には、内部熱交換器13の高圧側出口端部13eが挿入されている。
【0078】
膨張弁挿入穴形成部材30の第2流路穴30dは、膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cを構成している。
【0079】
膨張弁挿入穴形成部材30のタンク溝30aおよびチューブ挿入部材31の低圧側入口端部挿入穴31dは、膨張弁組付部29の蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dを構成している。蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dの出口部には、内部熱交換器13の低圧側入口端部13eが挿入されている
ここで、図2に示す第1蒸発器21の上側タンク部21bを第1上側タンク部21bと言い、第2蒸発器22の上側タンク部22bを第2上側タンク部22bと言う。
【0080】
第1上側タンク部21bの内部空間の長手方向の略中央部には仕切板(図示せず)が配置され、この仕切板によって第1上側タンク部21bの内部空間は、長手方向の2つの空間すなわち左側空間34と右側空間35とに仕切られている。第1上側タンク部21bの左側空間34は、膨張弁組付部29の蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dを介して内部熱交換器13の低圧側冷媒流路入口13f(すなわち低圧側冷媒流路13b)に連通している。
【0081】
第2上側タンク部22bの内部空間の長手方向の略中央部には仕切板(図示せず)が配置され、この仕切板によって第2上側タンク部22bの内部空間は、長手方向の2つの空間すなわち左側空間36と右側空間37とに仕切られている。第2上側タンク部22bの左側空間36は、膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cに連通している。
【0082】
両上側タンク部21b、22bの右側空間35、37同士は、図示しない冷媒流路によって連通している。
【0083】
第1上側タンク部21bの左側空間34は、複数のチューブ23からの冷媒を集合させる集合タンクとしての役割を果たし、第1上側タンク部21bの右側空間35は、冷媒を複数のチューブ23へ分配する分配タンクとしての役割を果たす。
【0084】
第2上側タンク部22bの左側空間36は、冷媒を複数のチューブ23へ分配する分配タンクとしての役割を果たし、第2上側タンク部22bの右側空間37は、複数のチューブ23からの冷媒を集合させる集合タンクとしての役割を果たす。
【0085】
図3に示すように、膨張弁14は、蒸発器21、22等を一体ろう付けする組み付け工程(ろう付け工程)の終了後に、膨張弁組付部29の膨張弁挿入穴29aに差し込まれる。
【0086】
具体的には、膨張弁14は、冷媒入口14aが膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bに連通し、冷媒出口14bが膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cに連通するように膨張弁組付部29に組み付けられる。
【0087】
これにより、内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aは、膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを介して膨張弁14の冷媒入口14aと連通し、膨張弁14の冷媒出口14bは、膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cを介して上側タンク部22bの左側空間36と連通する。
【0088】
このとき、膨張弁14とともにOリング38を膨張弁組付部29の膨張弁挿入穴29a内に組み付ける。このOリング38により、膨張弁14の冷媒入口14aと冷媒出口14bとの間がシールされる。
【0089】
さらに、膨張弁14は、膨張弁組付部29のうち膨張弁挿入穴29aが開口する側の端部にシール接合される。本実施形態では、膨張弁14は、膨張弁組付部29とのシール接合部がアルミニウム等の金属材で成形されており、膨張弁組付部29に抵抗溶接により金属シール接合される。これにより、膨張弁14と膨張弁組付部29との間からの冷媒漏れが防止される。
【0090】
本実施形態では、膨張弁14として、コイル14cへの通電によって弁体14dを駆動して弁開度(冷媒流量)を調整する電気式膨張弁を用いている。また、膨張弁14として、圧縮機11の吸入側冷媒(後述の蒸発器出口側冷媒)の温度と圧力とに基づいて圧縮機吸入側冷媒の過熱度を検出し、圧縮機吸入側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように弁開度(冷媒流量)を調整する温度式膨張弁を用いてもよい。
【0091】
膨張弁14は、その弁体の変位方向に延びる細長の円筒形状となっており、その細長円筒形状の長手方向を上側タンク部21b、22bの長手方向に一致させて、膨張弁14が上側タンク部21b、22bと平行に設置されている。
【0092】
この構成は、膨張弁14と蒸発器21、22とをコンパクトに配置することができ、ひいては、ユニット全体の体格をコンパクトにまとめることができる。しかも、膨張弁14は、蒸発器21、22と一体ろう付けされた膨張弁組付部29内に配置され、その冷媒入口14aおよび冷媒出口14bを膨張弁組付部29内において直接に開口させて設置されている。この構成は、冷媒配管を減らすことを可能とする。
【0093】
以上の構成において一体化ユニット20全体の冷媒流路を図9、図10により具体的に説明する。なお、図10では、図示の都合上、膨張弁組付部29の内部に挿入されている膨張弁14を実線で示している。
【0094】
一体化ユニット20の冷媒入口25に流入した冷媒はまず、矢印a1のように内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aを通過して熱交換され、この熱交換後の冷媒は、矢印a2のように膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを経て膨張弁14を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒は膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cを経て矢印a3のように第2蒸発器22の上側タンク部22bの左側空間36に流入する。
【0095】
この左側空間36の冷媒は第2蒸発器22の熱交換コア部22aの左側部の複数のチューブ23を矢印a4のように下降して第2蒸発器22の下側タンク部22c内の左側部に流入する。この下側タンク部22c内には仕切板が設けられていないので、この下側タンク部22cの左側部から冷媒は矢印a5のように右側部へと移動する。
【0096】
この下側タンク部22cの右側部の冷媒は第2蒸発器22の熱交換コア部22aの右側部の複数のチューブ23を矢印a6のように上昇して第2蒸発器22の上側タンク部22bの右側空間37に流入し、さらに、ここから冷媒は矢印a7のように第1蒸発器21の上側タンク部21bの右側空間35へと流れる。
【0097】
この右側空間35の冷媒は矢印a8のように第1蒸発器21の熱交換コア部21aの右側部の複数のチューブ23を下降して第1蒸発器21の下側タンク部21c内の右側部に流入する。この下側タンク部21c内には仕切板が設けられていないので、この下側タンク部21cの右側部から冷媒は矢印a9のように左側部へと移動する。
【0098】
この下側タンク部21cの左側部の冷媒は第1蒸発器21の熱交換コア部21aの左側部の複数のチューブ23を矢印a10のように上昇して第1蒸発器21の上側タンク部21bの左側空間34に流入する。この左側空間34内の冷媒は矢印a11のように膨張弁組付部29の蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dを経て、矢印a12のように内部熱交換器13の低圧側冷媒流路13bを通過して熱交換され、この熱交換後の冷媒は一体化ユニット20の冷媒出口26へと流れる。
【0099】
一体化ユニット20は以上のような冷媒流路構成を持つため、一体化ユニット20全体として冷媒入口25および冷媒出口26を1つずつ設けるだけでよい。
【0100】
次に、第1実施形態の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11で圧縮されて吐出された高温高圧状態の冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した高圧冷媒は一体化ユニット20の冷媒入口25に流入する。
【0101】
冷媒入口25に流入した冷媒は内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aを通過して、この高圧側冷媒流路13aにて低圧側冷媒流路13bの低圧側冷媒と熱交換され、熱交換後の冷媒が膨張弁14を通過する。
【0102】
この膨張弁14では、蒸発器15(第1、第2蒸発器21、22)の出口冷媒(圧縮機吸入冷媒)の過熱度が所定値となるように弁開度(冷媒流量)が調整され、高圧冷媒が減圧される。この膨張弁14通過後の冷媒(中間圧冷媒)は蒸発器15における図9の矢印a4〜a10の冷媒流路にて冷媒が流れる。
【0103】
この間に、蒸発器15では、低温の低圧冷媒が矢印A1方向の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、内部熱交換器13の低圧側冷媒流路13bを通過して、この低圧側冷媒流路13bにて高圧側冷媒流路13aの高圧側冷媒と熱交換され、熱交換後の冷媒が一体化ユニット20の冷媒出口26から圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
【0104】
以上のごとく、本実施形態によると、内部熱交換器13、膨張弁14および蒸発器15を図2に示すように1つの構造体、すなわち一体化ユニット20として組み付け、それにより、一体化ユニット20全体として冷媒入口25および冷媒出口26をそれぞれ1つ設けるだけで済むようにしている。
【0105】
その結果、冷凍サイクル10の車両への搭載時には、上記各種部品13、14、15を内蔵する一体化ユニット20全体として、1つの冷媒入口25を放熱器12の出口側に接続し、1つの冷媒出口26を圧縮機11の吸入側に接続するだけで、配管接続作業を終了できる。
【0106】
そのため、上記各種部品13、14、15をそれぞれ独立の部品として構成し、これら各部品相互間をそれぞれ配管結合する場合と比較して、配管を簡素化して蒸発器15を有する冷凍サイクル10の車両への搭載性を大幅に向上できるとともに、サイクル部品点数を減少してコスト低減を図ることができる。
【0107】
さらに、一体化ユニット20によると、上記各種部品13、14、15相互間の接続通路長さを短縮できるので、冷媒流路の圧損を低減できると同時に、低圧冷媒と周辺雰囲気との熱交換を効果的に縮小できる。これにより、蒸発器15の冷却性能を向上できる。
【0108】
特に、一体化ユニット20によると、蒸発器15、内部熱交換器13および膨張弁組付部29の一体ろう付けを行った後に膨張弁14を膨張弁組付部29に組み付けするので、蒸発器15のみの一体ろう付けを行った後に内部熱交換器13および膨張弁14を蒸発器15に組み付けする場合と比較して、一体ろう付け後の接続箇所を低減できる。その結果、接続構成を簡素化して一体化ユニット20の組み付け工数を低減できるとともに、冷媒漏れに対するシール性を高めることができる。
【0109】
しかも、一体ろう付け後に組み付けされる膨張弁14を膨張弁組付部29に金属シール接合しているので、冷媒漏れに対するシール性をより高めることができる。
【0110】
また、本実施形態によると、膨張弁組付部29が上側タンク部21b、22bの一部を構成しているので、膨張弁組付部29による一体化ユニット20の体格増大を抑制できる。
【0111】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、内部熱交換器13、膨張弁14および第1、第2蒸発器21、22を1つの一体化ユニット20として組み付けているが、本実施形態では、上記各種部品13、14、21、22に加え、エジェクタ40をも1つの一体化ユニット41として組み付けている。
【0112】
図11に示すように、本実施形態の冷凍サイクル10は、エジェクタ40を備えるエジェクタ式冷凍サイクルを構成しており、内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13cと膨張弁14の冷媒入口14aとの間)に設けられた分岐点Zから冷媒分岐通路42が分岐され、この冷媒分岐通路42の下流側にエジェクタ40が接続されている。
【0113】
エジェクタ40は冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、高速で噴射される冷媒流の吸引作用(巻き込み作用)によって冷媒の循環を行う流体輸送を冷媒循環手段(運動量輸送式ポンプ)でもある。
【0114】
図12に示すように、エジェクタ40には、膨張弁14通過後の冷媒(中間圧冷媒)の通路面積を小さく絞って、冷媒をさらに減圧膨張させるノズル部40aと、ノズル部40aの冷媒噴出口と同一空間に配置され、第2蒸発器22からの気相冷媒を吸引する冷媒吸引口40bとが備えられている。
【0115】
さらに、ノズル部40aおよび冷媒吸引口40bの冷媒流れ下流側部位には、ノズル部40aからの高速度の冷媒流と冷媒吸引口40bの吸引冷媒とを混合する混合部40cが設けられている。そして、混合部40cの冷媒流れ下流側に昇圧部をなすディフューザ部40dが配置されている。このディフューザ部40dは冷媒の通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する作用を果たす。
【0116】
本実施形態では、エジェクタ40として、ノズル部40aの通路面積を調整可能になっている可変エジェクタを用いている。具体的には、ノズル部40aの通路内にニードル40eが挿入され、このニードル40eの位置を電気的アクチュエータにより制御して通路面積を調整する機構となっている。なお、エジェクタ40として、ノズル部40aの通路面積が一定になっている固定エジェクタを用いてもよい。
【0117】
図11に示すように、分岐点Zから分岐した冷媒分岐通路42の下流側はノズル部40aの入口に接続されている。エジェクタ40の出口(すなわちディフューザ部40dの出口)側は第1蒸発器21に接続され、この第1蒸発器21の出口側は内部熱交換器13の低圧側冷媒入口13dに接続される。
【0118】
一方、膨張弁14の冷媒出口14b側に第2蒸発器22が接続され、第2蒸発器22の出口側はエジェクタ40の冷媒吸引口40bに接続されている。
【0119】
次に、一体化ユニット41の具体例を図13〜図15により説明すると、図13はこの一体化ユニット41の全体構成の概要を示す二面図である。本実施形態では、内部熱交換器13、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43もろう付けにて第1、第2蒸発器21、22と一体に組み付けるようになっている。
【0120】
これに対し、エジェクタ40はノズル部40aに高精度な微小通路を形成しているので、エジェクタ40をろう付けすると、ろう付け時の高温度(アルミニウムのろう付け温度:600℃付近)にてノズル部40aが熱変形して、ノズル部40aの通路形状、寸法等を所期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
【0121】
そこで、エジェクタ40については、第1、第2蒸発器21、22、内部熱交換器13、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43の一体ろう付けを行った後に、蒸発器側に組み付けするようにしてある。
【0122】
エジェクタ組付部43は、膨張弁組付部29と同様にアルミニウム材(金属材)にて成形されており、第1、第2蒸発器21、22の上側タンク部21b、22bの長手方向他端部(膨張弁組付部29と反対側の端部)にろう付け固定されている。
【0123】
図14に示すように、エジェクタ組付部43には、エジェクタ40が挿入されるエジェクタ挿入穴43aが形成されている。なお、図14では、図示の都合上、エジェクタ組付部43の内部に挿入されているエジェクタ40を実線で示している。
【0124】
エジェクタ40は、ノズル部40aの入口、冷媒吸引口40bおよびディフューザ部40dの出口の形成部位がエジェクタ挿入穴43aに挿入される。これにより、ノズル部40aの入口、冷媒吸引口40bおよびディフューザ部40dの出口がエジェクタ挿入穴43a内に位置することとなる。
【0125】
図14、図15に示すように、膨張弁組付部29の内部およびエジェクタ組付部43の内部には、内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13cからエジェクタ40のノズル部40aの入口に至る内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bが形成されている。内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bは、図11に示す冷媒分岐通路42を構成している。
【0126】
内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bは、膨張弁組付部29に形成された高圧冷媒流路29eと、エジェクタ組付部43に形成されたノズル部入口側流路43bとで構成されている。
【0127】
膨張弁組付部29の高圧冷媒流路29eは、内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13cとエジェクタ組付部43のノズル部入口側流路43bとを連通する流路である。エジェクタ組付部43のノズル部入口側流路43bは、ノズル部40aの入口に流入する冷媒が流れる流路である。
【0128】
エジェクタ組付部43の内部には、第2蒸発器15からエジェクタ40の冷媒吸引口40bに至る蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cと、エジェクタ40のディフューザ部40dの出口から第1蒸発器21に至るエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dとが形成されている。
【0129】
蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cは、冷媒吸引口40bに吸引される冷媒が流れる冷媒吸引口側流路である。エジェクタ−蒸発器冷媒流路43dは、エジェクタ40の出口から流出した冷媒が流れるエジェクタ出口側流路である。
【0130】
エジェクタ組付部43には、第1、第2熱交換コア部21a、22aの複数のチューブ23のうち一部のチューブの端部が挿入されており、エジェクタ組付部43は上側タンク部21b、22bの一部を構成している。
【0131】
本実施形態では、エジェクタ組付部43は、エジェクタ挿入穴43aを形成するエジェクタ挿入穴形成部材44と、管状部材45と、チューブ挿入部材31とに分割して形成されている。管状部材45は、膨張弁挿入穴形成部材30とエジェクタ挿入穴形成部材44との間にて上側タンク部21b、22bの長手方向と平行に配置され、膨張弁組付部29とエジェクタ挿入穴形成部材44とを繋いでいる。
【0132】
図15に示すように、管状部材45のうち膨張弁組付部29側の端部は、膨張弁組付部29の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29eに連通している。膨張弁組付部29の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29eは内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bから分岐しており、その分岐点は図11に示す冷媒分岐通路42の分岐点Zを構成している。
【0133】
図14に示すように、上側タンク部21b、22bは、長手方向他端部(膨張弁組付部29と反対側の端部)がチューブ挿入部材31、プレートヘッダ32およびエジェクタ挿入穴形成部材44で構成されている。
【0134】
エジェクタ挿入穴形成部材44には、上側タンク部21b、22bの長手方向に延びてチューブ挿入部材31の第1チューブ挿入孔31aと対向する第1タンク溝44aが形成されている。第1タンク溝44aは、第1蒸発器21の上側タンク部21bの右側空間35を構成している。
【0135】
同様に、エジェクタ挿入穴形成部材44には、上側タンク部21b、22bの長手方向に延びてチューブ挿入部材31の第2チューブ挿入孔31bと対向する第2タンク溝44bが形成されている。第2タンク溝44bは、第2蒸発器22の上側タンク部22bの右側空間37を構成している。
【0136】
さらに、エジェクタ挿入穴形成部材44には、冷媒流路をなす第1、第2、第3流路穴44c、44d、44dが形成されている。
【0137】
第1流路穴44cは、管状部材45の他端部とエジェクタ挿入穴43aとを連通している。第2流路穴44dは、第2タンク溝44bからエジェクタ挿入穴43aまで延びている。第3流路穴44eは、エジェクタ挿入穴43aから第1タンク溝44aまで延びている。
【0138】
管状部材45の内部空間45aおよびエジェクタ挿入穴形成部材44の第1流路穴44cは、エジェクタ組付部43の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路43bを構成している。
【0139】
エジェクタ挿入穴形成部材44の第2タンク溝44bおよび第2流路穴44dは、エジェクタ組付部43の蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cを構成している。
【0140】
エジェクタ挿入穴形成部材44の第3流路穴44eおよび第1タンク溝44aは、エジェクタ組付部43のエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dを構成している。
【0141】
エジェクタ40は、蒸発器21、22等を一体ろう付けする組み付け工程(ろう付け工程)の終了後に、エジェクタ組付部43のエジェクタ挿入穴43aに差し込まれる。
【0142】
具体的には、エジェクタ40は、ノズル部40aの入口がエジェクタ組付部43の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路43bに連通し、冷媒吸引口40bがエジェクタ組付部43の蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cに連通し、ディフューザ部40dの出口がエジェクタ組付部43のエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dに連通するようにエジェクタ組付部43に組み付けられる。
【0143】
これにより、内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aは、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bを介してエジェクタ40のノズル部40aの入口と連通し、第2蒸発器22の上側タンク部22bの右側空間37は、エジェクタ組付部43の蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cを介してエジェクタ40の冷媒吸引口40bと連通し、エジェクタ40のディフューザ部40dの出口は、エジェクタ組付部43のエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dを介して第1蒸発器21の上側タンク部21bの右側空間35と連通する。
【0144】
このとき、エジェクタ組付部43のエジェクタ挿入穴43a内にOリング(図示せず)を組み付ける。このOリングにより、エジェクタ40のノズル部40aの入口と冷媒吸引口40bとディフューザ部40dの出口との間がシールされる。
【0145】
さらに、エジェクタ40は、エジェクタ組付部43のうちエジェクタ挿入穴43aが開口する側の端部にシール接合される。本実施形態では、エジェクタ40は、エジェクタ組付部43とのシール接合部がアルミニウム等の金属材で成形されており、エジェクタ組付部43に抵抗溶接により金属シール接合される。これにより、エジェクタ40とエジェクタ組付部43との間からの冷媒漏れが防止される。
【0146】
エジェクタ40は、そのノズル部40aの軸方向に延びる細長の円筒形状となっており、その細長円筒形状の長手方向を上側タンク部21b、22bの長手方向に一致させて、エジェクタ40が上側タンク部21b、22bと平行に設置されている。
【0147】
この構成は、エジェクタ40と蒸発器21、22とをコンパクトに配置することができ、ひいては、ユニット全体の体格をコンパクトにまとめることができる。しかも、エジェクタ40は、蒸発器21、22と一体ろう付けされたエジェクタ組付部43内に配置され、そのノズル部40aの入口、冷媒吸引口40bおよびディフューザ部40dの出口をエジェクタ組付部43内において直接に開口させて設置されている。この構成は、冷媒配管を減らすことを可能とする。
【0148】
また、本実施形態では、第1蒸発器21が第2蒸発器22と隣接して設けられており、エジェクタ40の下流側端部は、第1蒸発器21の分配タンク(上側タンク部21bの右側空間35)と隣接して設置されている。この構成は、エジェクタ40からの流出冷媒をごく短い簡単な冷媒通路(エジェクタ−蒸発器冷媒流路43d)にて第1蒸発器21側へ供給できるという利点を提供する。
【0149】
以上の構成において一体化ユニット41全体の冷媒流路を図14、図15により具体的に説明すると、一体化ユニット41の冷媒入口25に流入した冷媒はまず、矢印b1のように内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aを通過して低圧側冷媒流路13bを流れる低圧側冷媒と熱交換され、この熱交換後の冷媒は膨張弁組付部29内において、膨張弁14に向かう内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bの流れと、矢印b2の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bの流れとに分岐される。
【0150】
矢印b2の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bを流れる冷媒は、エジェクタ40(ノズル部40a→混合部40c→ディフューザ部40d)を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒はエジェクタ組付部43のエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dを経て矢印b3のように第1蒸発器21の上側タンク部21bの右側空間35に流入する。
【0151】
この右側空間35の冷媒は第1蒸発器21の熱交換コア部21aの右側部の複数のチューブ23を矢印b4のように下降して第1蒸発器21の下側タンク部21c内の右側部に流入する。この下側タンク部21c内には仕切板が設けてないので、この下側タンク部21cの右側部から冷媒は矢印b5のように左側部へと移動する。
【0152】
この下側タンク部21cの左側部の冷媒は第1蒸発器21の熱交換コア部21aの左側部の複数のチューブ23を矢印b6のように上昇して第1蒸発器21の上側タンク部21bの左側空間34に流入し、さらに、ここから冷媒は矢印b7のように膨張弁組付部29の蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dを経て矢印b8のように内部熱交換器13の低圧側冷媒流路13bを通過して高圧側冷媒流路13aを流れる高圧側冷媒と熱交換され、この熱交換後の冷媒は一体化ユニット20の冷媒出口26へと流れる。
【0153】
これに対し、内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを膨張弁14へ向かって流れる冷媒は膨張弁14を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒は膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cを経て矢印b9のように第2蒸発器22の上側タンク部22bの左側空間36に流入する。
【0154】
この左側空間36の冷媒は第2蒸発器22の熱交換コア部22aの左側部の複数のチューブ23を矢印b10のように下降して第2蒸発器22の下側タンク部22c内の左側部に流入する。この下側タンク部22c内には仕切板が設けてないので、この下側タンク部22cの左側部から冷媒は矢印b11のように右側部へと移動する。
【0155】
この下側タンク部22cの右側部の冷媒は第2蒸発器22の熱交換コア部22aの右側部の複数のチューブ23を矢印b12のように上昇して上側タンク部22bの右側空間37に流入する。この右側空間37の冷媒は、矢印b13のようにエジェクタ組付部43の蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cを経て冷媒吸引口40bからエジェクタ40内に吸引される。
【0156】
一体化ユニット41は以上のような冷媒流路構成を持つため、一体化ユニット41全体として冷媒入口25および冷媒出口26を1つずつ設けるだけでよい。
【0157】
次に、第2実施形態の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11で圧縮され吐出された高温高圧状態の冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した高圧冷媒は一体化ユニット20に設けられた1つの冷媒入口25に流入する。
【0158】
冷媒入口25に流入した冷媒は内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aを通過して、この高圧側冷媒流路13aにて低圧側冷媒流路13bの低圧側冷媒と熱交換される。
【0159】
ここで、熱交換後の冷媒流れは、膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを経て膨張弁14に向かう冷媒流れと、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43b(図11の冷媒分岐通路42)を経てエジェクタ40に向かう冷媒流れとに分流する。
【0160】
そして、エジェクタ40に流入した冷媒流れはノズル部40aで減圧され膨張する。従って、ノズル部40aで冷媒の圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、このノズル部40aの噴出口から冷媒は高速度となって噴出する。この際の冷媒圧力低下により、冷媒吸引口40bから第2蒸発器22通過後の冷媒(気相冷媒)を吸引する。
【0161】
ノズル部40aから噴射された冷媒と冷媒吸引口40bに吸引された冷媒は、ノズル部40a下流側の混合部40cで混合してディフューザ部40dに流入する。このディフューザ部40dでは通路面積の拡大により、冷媒の速度(膨張)エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。
【0162】
そして、エジェクタ40のディフューザ部40dから流出した冷媒は第1蒸発器21における図14、図15の矢印b3〜b6の冷媒流路にて冷媒が流れる。この間に、第1蒸発器21では、低温の低圧冷媒が矢印A1方向の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、内部熱交換器13の低圧側冷媒流路13bを通過して、この低圧側冷媒流路13b内にて高圧側冷媒流路13aを流れる低圧側冷媒と熱交換され、熱交換後の冷媒が、一体化ユニット20に設けられた1つの冷媒出口26から圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
【0163】
一方、膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bから膨張弁14に流入した冷媒流れは、膨張弁14で減圧されて低圧冷媒となり、この低圧冷媒が第2蒸発器22における図14、図15の矢印b9〜b12の冷媒流路にて冷媒が流れる。この間に、第2蒸発器22では、低温の低圧冷媒が第1蒸発器21通過後の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は冷媒吸引口40bからエジェクタ40内に吸引される。
【0164】
以上のごとく、本実施形態によると、エジェクタ40のディフューザ部40dの下流側冷媒を第1蒸発器21に供給するととともに、膨張弁14の下流側の冷媒を第2蒸発器22にも供給できるので、第1、第2蒸発器21、22で同時に冷却作用を発揮できる。そのため、第1、第2蒸発器21、22の両方で冷却された冷風を冷却対象空間に吹き出して、冷却対象空間を冷房(冷却)できる。
【0165】
その際に、第1蒸発器21の冷媒蒸発圧力はディフューザ部40dで昇圧した後の圧力であり、一方、第2蒸発器22の出口側はエジェクタ40の冷媒吸引口40bに接続されているから、ノズル部40aでの減圧直後の最も低い圧力を第2蒸発器22に作用させることができる。
【0166】
これにより、第1蒸発器21の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも第2蒸発器22の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低くすることができる。そして、送風空気の流れ方向A1に対して冷媒蒸発温度が高い第1蒸発器21を上流側に配置し、冷媒蒸発温度が低い第2蒸発器22を下流側に配置しているから、第1蒸発器21における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差および第2蒸発器22における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を両方とも確保できる。
【0167】
このため、第1、第2蒸発器21、22の冷却性能を両方とも有効に発揮できる。従って、共通の冷却対象空間に対する冷却性能を第1、第2蒸発器21、22の組み合わせにて効果的に向上できる。また、ディフューザ部40dでの昇圧作用により圧縮機11の吸入圧を上昇して、圧縮機11の駆動動力を低減できる。
【0168】
さらに、本実施形態によると、内部熱交換器13、膨張弁14、第1、第2蒸発器21、22およびエジェクタ40を図13に示すように1つの構造体、すなわち一体化ユニット41として組み付け、それにより、一体化ユニット41全体として冷媒入口25および冷媒出口26をそれぞれ1つ設けるだけで済むようにしている。
【0169】
その結果、エジェクタ40を備える冷凍サイクル40においても、上記第1実施形態と同様に、配管を簡素化して車両への搭載性を大幅に向上できるとともに、サイクル部品点数を減少してコスト低減を図ることができる。
【0170】
さらに、一体化ユニット41によると、上記各種部品13、14、21、22、40相互間の接続通路長さを短縮できるので、冷媒流路の圧損を低減できると同時に、低圧冷媒と周辺雰囲気との熱交換を効果的に縮小できる。これにより、エジェクタ40を備える冷凍サイクル40においても、上記第1実施形態と同様に、蒸発器21、22の冷却性能を向上できる。
【0171】
特に、一体化ユニット41によると、第1、第2蒸発器21、22、内部熱交換器13、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43の一体ろう付けを行った後に、膨張弁14を膨張弁組付部29に組み付けし、エジェクタ40をエジェクタ組付部43に組み付けするので、第1、第2蒸発器21、22のみの一体ろう付けを行った後に、膨張弁14、内部熱交換器13およびエジェクタ40を第1、第2蒸発器21、22に組み付けする場合と比較して、一体ろう付け後の接続箇所を低減できる。その結果、一体化ユニット41の組み付け工数を低減できるとともに、冷媒漏れに対するシール性を高めることができる。
【0172】
しかも、一体ろう付け後に組み付けされる膨張弁14を膨張弁組付部29に金属シール接合し、同じく一体ろう付け後に組み付けされるエジェクタ40をエジェクタ組付部43に金属シール接合しているので、冷媒漏れに対するシール性をより高めることができる。
【0173】
また、本実施形態によると、エジェクタ組付部43が上側タンク部21b、22bの一部を構成しているので、エジェクタ組付部43による一体化ユニット20の体格増大を抑制できる。
【0174】
(他の実施形態)
なお、上記第1、第2実施形態では、内部熱交換器13の上端部に切欠部13gを形成することによって高圧側出口端部13eと低圧側入口端部13fとを分離しているが、図16に示すように内部熱交換器13の上端部に屈曲部13hや段付部13iを形成することによって高圧側出口端部13eと低圧側入口端部13fとを分離してもよい。
【0175】
また、上記各実施形態では、冷媒として高圧圧力が臨界圧力を超えないフロン系、HC系等の冷媒を用いる蒸気圧縮式の亜臨界サイクルについて説明したが、冷媒として二酸化炭素(CO2 )のように高圧圧力が臨界圧力を超える冷媒を用いる蒸気圧縮式の超臨界サイクルに本発明を適用してもよい。
【0176】
但し、超臨界サイクルでは、圧縮機吐出冷媒が放熱器12にて超臨界状態のまま放熱するのみであり、凝縮しないので、高圧側に配置される受液器12aでは冷媒の気液分離作用および余剰液冷媒の貯留作用を発揮できない。そこで、超臨界サイクルでは、図17に示すように蒸発器15の出口側に低圧側気液分離器をなすアキュムレータ50を配置する構成を採用すればよい。
【0177】
また、上記各実施形態では、内部熱交換器13をサイドプレート27と一体化しているが、内部熱交換器13をサイドプレート27と別体にしてもよい。
【0178】
また、上記各実施形態は、蒸発器の具体的構成の一例を示したものに過ぎず、これに限定されることなく、蒸発器の具体的構成を種々変形可能である。
【0179】
また、上記各実施形態では、蒸発器の冷却対象空間として、車室内空間である場合や、冷凍車の冷凍冷蔵庫内空間である場合について述べたが、本発明は、これらの車両用に限らず、定置用等の種々な用途の冷凍サイクルに対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0180】
13 内部熱交換器
13c 高圧側冷媒出口
13d 低圧側冷媒入口
14 膨張弁
14a 冷媒入口
14b 冷媒出口
15 蒸発器
21 第1蒸発器
22 第2蒸発器
29 膨張弁組付部
29a 膨張弁挿入穴
29b 内部熱交換器−膨張弁冷媒流路
29c 膨張弁−蒸発器冷媒流路
29d 蒸発器−内部熱交換器冷媒流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに用いられる蒸発器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蒸発器ユニットが特許文献1、2に記載されている。特許文献1の従来技術では、蒸発器に内部熱交換器が一体化されている。具体的には、内部熱交換器が蒸発器の熱交換器コアと並んで一体に構成されている。
【0003】
特許文献2の従来技術では、蒸発器に内部熱交換器と膨張弁とが一体的に組み付けられている。具体的には、蒸発器と内部熱交換器との間に膨張弁が挟まれて組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−97911号公報
【特許文献2】特開2001−21234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、膨張弁が蒸発器に一体化されていないので、膨張弁を蒸発器に接続するための接続配管等が必要になって接続構成が複雑化してしまう。
【0006】
この点、上記特許文献2の従来技術では、内部熱交換器および膨張弁が蒸発器に一体的に組み付けられているので、膨張弁を蒸発器に接続するための接続配管が不要であり、接続構成が簡素になる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の従来技術では、蒸発器と内部熱交換器との間に膨張弁が挟まれているので、蒸発器と膨張弁との接続部、および膨張弁と内部熱交換器との接続部で冷媒漏れが発生する虞がある。
【0008】
ここで、蒸発器、膨張弁および内部熱交換器を一体ろう付けすれば、蒸発器、膨張弁および内部熱交換器の接続部における冷媒漏れを効果的に防止できる。しかしながら、膨張弁を一体ろう付けすると膨張弁が熱変形して、膨張弁内部の通路形状、寸法等を所期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、接続構成が簡素であり、かつ冷媒漏れに対するシール性が高い蒸発器ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷凍サイクルを構成する蒸発器(15)と、
冷凍サイクルの高圧側冷媒と低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器(13)と、
冷凍サイクルの膨張弁(14)が組み付けられる膨張弁組付部(29)とを備え、
膨張弁組付部(29)には、膨張弁(14)の冷媒入口(14a)に流入する冷媒が流れる入口側流路(29b)と、膨張弁(14)の冷媒出口(14b)から流出した冷媒が流れる出口側流路(29c)とが形成され、
蒸発器(15)、内部熱交換器(13)および膨張弁組付部(29)は、いずれも金属で形成され、かつ互いに一体ろう付けされていることを特徴とする。
【0011】
これによると、蒸発器(15)のみの一体ろう付けを行った後に内部熱交換器(13)および膨張弁(14)を蒸発器(15)に組み付けする場合と比較して、一体ろう付け後の接続箇所を低減できる。その結果、接続構成を簡素化できるとともに、冷媒漏れに対するシール性を高めることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の蒸発器ユニットにおいて、入口側流路(29b)は、内部熱交換器(13)の高圧側冷媒出口(13c)から膨張弁(14)の冷媒入口(14a)に至る内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)であり、
出口側流路(29c)は、膨張弁(14)の冷媒出口(14b)から蒸発器(15)に至る膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)であり、
膨張弁組付部(29)には、蒸発器(15)から内部熱交換器(13)のうち低圧側冷媒入口(13d)に至る蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、内部熱交換器(13)、膨張弁(14)および蒸発器(15)間の流路を膨張弁組付部(29)に集約することができるので、流路構成を簡素化できる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の蒸発器ユニットにおいて、蒸発器(15)は、熱交換コア部(21a、22a)の冷媒流路を形成する複数のチューブ(23)を有し、
膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)および蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)には、複数のチューブ(23)のうち少なくとも一部のチューブの端部が挿入されていることを特徴とする。
【0015】
これによると、膨張弁組付部(29)が、複数のチューブ(23)に対する冷媒の分配・集合を行うタンク部の役割を兼ねることができるので、ユニット体格を小型化できる。
【0016】
具体的には、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載の蒸発器ユニットにおいて、膨張弁組付部(29)には、膨張弁(14)のうち冷媒入口(14a)および冷媒出口(14b)の形成部位が挿入される膨張弁挿入穴(29a)が形成され、
膨張弁挿入穴(29a)は、内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)および膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)に連通し、
膨張弁組付部(29)は、膨張弁挿入穴(29a)を形成する膨張弁挿入穴形成部材(30)と、複数のチューブ(23)のうち少なくとも一部のチューブの端部が挿入されるチューブ挿入部材(31)とに分割して形成されているのが好ましい。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の蒸発器ユニットにおいて、内部熱交換器(13)には、高圧側冷媒出口(13c)を形成する高圧側出口端部(13e)と、低圧側冷媒入口(13d)を形成する低圧側入口端部(13e)とが互いに分離して形成され、
内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)の入口部には、高圧側出口端部(13e)が挿入され、
蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)の出口部には、低圧側入口端部(13e)が挿入されていることを特徴とする。
【0018】
これにより、内部熱交換器(13)と膨張弁組付部(29)とを簡素な構成でもって接続できる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、請求項2ないし5のいずれか1つに記載の蒸発器ユニットにおいて、ノズル部(40a)から噴射される高い速度の冷媒流により冷媒吸引口(40b)から冷媒を吸引し、ノズル部(40a)から噴射された冷媒と冷媒吸引口(40b)から吸引された冷媒とを混合して吐出するエジェクタ(40)が組み付けられるエジェクタ組付部(43)を備え、
蒸発器(15)は、エジェクタ(40)の出口側に接続されてエジェクタ(40)から吐出された冷媒を蒸発させる第1蒸発器(21)、および冷媒吸引口(40b)に接続されてエジェクタ(40)に吸引される冷媒を蒸発させる第2蒸発器(22)であり、
エジェクタ組付部(43)には、ノズル部(40a)の入口に流入する冷媒が流れるノズル部入口側流路(43b)と、冷媒吸引口(40b)に吸引される冷媒が流れる冷媒吸引口側流路(43c)と、エジェクタ(40)の出口から流出した冷媒が流れるエジェクタ出口側流路(43d)とが形成され、
エジェクタ組付部(43)は、金属で形成され、かつ第1、第2蒸発器(21、22)、内部熱交換器(13)および膨張弁組付部(29)と一体ろう付けされていることを特徴とする。
【0020】
これにより、エジェクタ(40)を備える冷凍サイクルにおいて、接続構成を簡素化できるとともに、冷媒漏れに対するシール性を高めることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の蒸発器ユニットにおいて、膨張弁組付部(29)には、内部熱交換器(13)のうち高圧側冷媒の出口とノズル部入口側流路(43b)とを連通する高圧冷媒流路(29e)が形成され、
高圧冷媒流路(29e)およびノズル部入口側流路(43b)は、内部熱交換器(13)の高圧側冷媒出口(13c)からノズル部(40a)の入口に至る内部熱交換器−ノズル部冷媒流路を構成していることを特徴とする。
【0022】
これにより、内部熱交換器(13)、膨張弁(14)および第1、第2蒸発器(21、22)間の流路と、内部熱交換器(13)およびエジェクタ(40)間の流路とを膨張弁組付部(29)およびエジェクタ組付部(43)に集約することができるので、流路構成を簡素化できる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、請求項6または7に記載の蒸発器ユニットにおいて、冷媒吸引口側流路(43c)は、第2蒸発器(22)からエジェクタ(40)の冷媒吸引口(40b)に至る蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路(43c)であり、
エジェクタ出口側流路(43d)は、エジェクタ(40)の出口から第1蒸発器(21)に至るエジェクタ−蒸発器冷媒流路(43d)であることを特徴とする。
【0024】
これにより、第1、第2蒸発器(21、22)およびエジェクタ(40)間の流路をエジェクタ組付部(43)に集約することができるので、流路構成を簡素化できる。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態における冷凍サイクルの全体構成図である。
【図2】第1実施形態における一体化ユニットの全体構成を示す二面図である。
【図3】図2の膨張弁組付部の近傍を示す正面図である。
【図4】図2のサイドプレートを示す二面図、断面図および斜視図である。
【図5】図2の上側タンク部を示す二面図である。
【図6】(a)は図5のA矢視図であり、(b)は図5のB−B断面図である。
【図7】図2のチューブ挿入部材を示す二面図である。
【図8】図2の膨張弁挿入穴形成部材を示す三面図である。
【図9】図2の一体化ユニットの正面図である。
【図10】図9の膨張弁組付部を示す二面図である。
【図11】本発明の第2実施形態における冷凍サイクルの全体構成図である。
【図12】図1のエジェクタを示す断面図である。
【図13】第2実施形態における一体化ユニットの全体構成を示す二面図である。
【図14】図13のエジェクタ組付部を示す二面図である。
【図15】図13の膨張弁組付部を示す二面図である。
【図16】他の実施形態におけるサイドプレートを示す斜視図である。
【図17】他の実施形態における一体化ユニットの全体構成を示す二面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明における蒸発器ユニットおよびそれを用いた冷凍サイクルの実施形態を説明する。蒸発器ユニットは、冷凍サイクルを構成するために配管を介して冷凍サイクルの他の構成部品である圧縮機および凝縮器と接続される。蒸発器ユニットは、ひとつの形態では室内機として空気を冷却する用途に用いられる。また、蒸発器ユニットは、他の形態では室外機として用いることができる。
【0028】
図1〜図10は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は第1実施形態による冷凍サイクル10を車両用冷凍サイクル装置に適用した例を示す。本実施形態の冷凍サイクル10において、冷媒を吸入圧縮する圧縮機11は、電磁クラッチ、ベルト等を介して図示しない車両走行用エンジンにより回転駆動される。
【0029】
圧縮機11としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機のいずれを使用してもよい。また、圧縮機11として電動圧縮機を使用すれば、電動モータの回転数調整により冷媒吐出能力を調整できる。
【0030】
この圧縮機11の冷媒吐出側には放熱器12が配置されている。放熱器12は圧縮機11から吐出された高圧冷媒と図示しない冷却ファンにより送風される外気(車室外空気)との間で熱交換を行って高圧冷媒を冷却する。
【0031】
ここで、冷凍サイクル10の冷媒として、本実施形態ではフロン系、HC系等の冷媒のように高圧圧力が臨界圧力を超えない冷媒を用いて、蒸気圧縮式の亜臨界サイクルを構成している。このため、放熱器12は冷媒を凝縮する凝縮器として作用する。
【0032】
放熱器12の出口側には内部熱交換器13が接続されている。内部熱交換器13には、放熱器12から流出した高圧側冷媒が流れる高圧側冷媒流路13aと、圧縮機11に吸入される低圧側冷媒が流れる低圧側冷媒流路13bとが形成されている。
【0033】
内部熱交換器13が高圧側冷媒と低圧側冷媒とを熱交換させることにより、蒸発器15における入口側冷媒と出口側冷媒とのエンタルピ差(冷凍能力)を増大することができる。
【0034】
内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13c側には膨張弁14の冷媒入口14aが接続されている。膨張弁14は内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aからの液冷媒を減圧する減圧手段である。
【0035】
膨張弁14の冷媒出口14b側には蒸発器15が接続されている。蒸発器15の出口側は内部熱交換器13の低圧側冷媒入口13dに接続されている。内部熱交換器13の低圧側冷媒出口は圧縮機11の吸入側に接続されている。
【0036】
蒸発器15は、図示しないケース内に収納され、そして、このケース内に構成される空気通路に共通の電動送風機16により空気(被冷却空気)を矢印A1のごとく送風し、この送風空気を蒸発器15で冷却するようになっている。
【0037】
蒸発器15で冷却された冷風を冷却対象空間(図示せず)に送り込み、これにより、蒸発器15にて冷却対象空間を冷却するようになっている。
【0038】
なお、本実施形態の冷凍サイクル10を車両空調用冷凍サイクル装置に適用する場合は車室内空間が冷却対象空間となる。また、本実施形態の冷凍サイクル10を冷凍車用冷凍サイクル装置に適用する場合は冷凍車の冷凍冷蔵庫内空間が冷却対象空間となる。
【0039】
本実施形態では、内部熱交換器13、膨張弁14および蒸発器15を1つの一体化ユニット20として組み付けている。
【0040】
図2は一体化ユニット20の全体構成の概要を示す二面図である。本実施形態では、蒸発器15は、空気流れA1の上流側(風上側)に配置される第1蒸発器21と、空気流れA1の下流側(風下側)に配置される第2蒸発器22とを一体化した構造になっている。
【0041】
第1、第2蒸発器21、22はそれぞれ熱交換コア部21a、22aと、この熱交換コア部21a、22aの上下両側に位置するタンク部21b、21c、22b、22cとを備えている。
【0042】
以下、第1蒸発器21の熱交換コア部21aを第1熱交換コア部21aと言い、第2蒸発器22の熱交換コア部22aを第2熱交換コア部22aと言う。
【0043】
第1、第2熱交換コア部21a、22aは、それぞれ上下方向に延びる複数のチューブ23を備えている。これら複数のチューブ23の間には、被熱交換媒体(冷却される空気)が通る通路が形成される。これら複数のチューブ23相互間には、フィン24を配置し、チューブ23とフィン24とを接合することができる。
【0044】
本実施形態では、第1、第2熱交換コア部21a、22aは、チューブ23とフィン24との積層構造からなる。このチューブ23とフィン24は第1、第2熱交換コア部21a、22aの左右方向に交互に積層配置される。
【0045】
なお、図2では、チューブ23とフィン24の積層構造の一部のみ図示しているが、熱交換コア部21a、22aの全域にチューブ23とフィン24の積層構造が構成され、この積層構造の空隙部を電動送風機16の送風空気が通過するようになっている。
【0046】
チューブ23は冷媒通路を構成するもので、断面形状が空気流れ方向A1に沿って扁平な扁平チューブよりなる。フィン24は薄板材を波状に曲げ成形したコルゲートフィンであり、チューブ23の平坦な外面側に接合され空気側伝熱面積を拡大する。
【0047】
第1熱交換コア部21aのチューブ23と第2熱交換コア部22aのチューブ23は互いに独立した冷媒通路を構成し、第1熱交換コア部21aの上下両側のタンク部21b、21cと、第2熱交換コア部22aの上下両側のタンク部22b、22cは互いに独立した冷媒通路空間を構成する。
【0048】
第1熱交換コア部21aの上下両側のタンク部21b、21cの内部空間は、第1熱交換コア部21aのチューブ23の上下両端部に連通するようになっている。同様に、第2熱交換コア部22aの上下両側のタンク部22b、22cの内部空間は、第2熱交換コア部22aのチューブ23の上下両端部に連通するようになっている。
【0049】
これにより、上下両側のタンク部21b、21c、22b、22cは、それぞれ対応する熱交換コア部21a、22aの複数のチューブ23へ冷媒流れを分配する役割、および複数のチューブ23からの冷媒流れを集合する役割を果たす。
【0050】
2つの上側タンク部21b、22b、および2つの下側タンク部21c、22cは隣接しているので、2つの上側タンク部21b、22b同士、および2つの下側タンク部21c、22c同士を一体的に成形することができる。もちろん、2つの上側タンク部21b、22b、および2つの下側タンク部21c、22cをそれぞれ独立の部材として成形してもよい。
【0051】
下側タンク部21c、22cの長手方向一端部には、一体化ユニット20の1つの冷媒入口25および1つの冷媒出口26が形成されている。
【0052】
第1、第2熱交換コア部21a、22aの両側面部には、第1、第2熱交換コア部21a、22aを保持するサイドプレート27、28がろう付け固定されている。サイドプレート27、28は、第1、第2熱交換コア部21a、22aの側方にてチューブ23の長手方向に延びる形状を有しており、上下両側のタンク部21b、21c、22b、22cにもろう付け固定されている。
【0053】
なお、チューブ23、フィン24、タンク部21b、21c、22b、22c、サイドプレート27、28等の蒸発器構成部品の具体的材質としては、熱伝導性やろう付け性に優れた金属であるアルミニウムが好適であり、このアルミニウム材にて各部品を成形することにより、第1、第2蒸発器21、22の全体構成を一体ろう付けにて組み付けることができる。
【0054】
本実施形態では、内部熱交換器13および膨張弁組付部29もろう付けにて第1、第2蒸発器21、22と一体に組み付けるようになっている。膨張弁組付部29は、蒸発器部品と同様にアルミニウム材(金属材)にて成形されており、第1、第2蒸発器21、22の上側タンク部21b、22bの長手方向一端部にろう付け固定されている。
【0055】
これに対し、膨張弁14は内部に微小通路を形成しているので、膨張弁14をろう付けすると、ろう付け時の高温度(アルミニウムのろう付け温度:600℃付近)にて膨張弁14が熱変形して、膨張弁14内部の通路形状、寸法等を所期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
【0056】
そこで、膨張弁14については、図3に示すように、第1、第2蒸発器21、22、内部熱交換器13および膨張弁組付部29の一体ろう付けを行った後に、膨張弁組付部29に組み付けするようにしてある。
【0057】
より具体的に、第1、第2蒸発器21、22、内部熱交換器13および膨張弁組付部29の組み付け構造を説明すると、内部熱交換器13は、第1、第2蒸発器21、22の両サイドプレート27、28のうち冷媒入口25および冷媒出口26側のサイドプレート27と一体化されている。
【0058】
本実施形態では、図4に示すように、サイドプレート27の内部に、高圧側冷媒流路13aおよび低圧側冷媒流路13bをチューブ23の長手方向に直線状かつ平行に貫通するように形成することによって、内部熱交換器13をサイドプレート27と一体化している。このような内部熱交換器13(すなわちサイドプレート27)は押し出し成形にて一体成形することができる。
【0059】
内部熱交換器13のうち上下タンク部21b、21c、22b、22c側の端部は、膨張弁組付部29に挿入されて接合されている。
【0060】
本実施形態では、内部熱交換器13のうち上側タンク部21b、22c側の端部は、高圧側冷媒出口13cを形成する高圧側出口端部13eと、低圧側冷媒入口13dを形成する低圧側入口端部13fとに分離されている。具体的には、内部熱交換器13の端部に切欠部13gを形成することによって、高圧側出口端部13eと低圧側入口端部13fとを分離している。
【0061】
図3に示すように、膨張弁組付部29には、膨張弁14が挿入される膨張弁挿入穴29aが形成されている。膨張弁14は、冷媒入口14aおよび冷媒出口14bが膨張弁挿入穴29a内に位置するように、冷媒入口14aおよび冷媒出口14bの形成部位が膨張弁挿入穴29aに挿入される。
【0062】
膨張弁組付部29の内部には、内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13cから膨張弁14の冷媒入口14aに至る内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bと、膨張弁14の冷媒出口14bから第2蒸発器22に至る膨張弁−蒸発器冷媒流路29cと、第1蒸発器21から内部熱交換器13の低圧側冷媒入口13dに至る蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dとが形成されている。
【0063】
内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bは、膨張弁14の冷媒入口14aに流入する冷媒が流れる入口側流路である。膨張弁−蒸発器冷媒流路29cは、膨張弁14の冷媒出口14bから流出した冷媒が流れる出口側流路である。
【0064】
膨張弁組付部29には、第1、第2熱交換コア部21a、22aの複数のチューブ23のうち一部のチューブの端部が挿入されている。これにより、膨張弁組付部29は、上側タンク部21b、22bの一部を構成している。
【0065】
図5は、一体化ユニット20のうち膨張弁組付部29近傍部位の二面図であり、膨張弁14を取り外した状態を示している。図6は図5のA矢視図およびB−B断面図である。
【0066】
本実施形態では、膨張弁組付部29は、膨張弁挿入穴29aを形成する膨張弁挿入穴形成部材30と、複数のチューブ23の端部が挿入されるチューブ挿入部材31とに分割して形成されている。
【0067】
膨張弁挿入穴形成部材30およびチューブ挿入部材31は、上側タンク部21b、22bも構成している。具体的には、上側タンク部21b、22bは、膨張弁挿入穴形成部材30、チューブ挿入部材31、プレートヘッダ32およびタンクヘッダ33で構成されている。
【0068】
より具体的には、上側タンク部21b、22bは、長手方向一端部が膨張弁挿入穴形成部材30、チューブ挿入部材31およびプレートヘッダ32で構成され、残余の部位がチューブ挿入部材31、プレートヘッダ32およびタンクヘッダ33で構成されている。チューブ挿入部材31は、プレートヘッダ32とタンクヘッダ33との間に挟まれる中間プレートの役割を果たしている。
【0069】
図6(b)に示すように、プレートヘッダ32には、第1熱交換コア部21aのチューブ23の上端部が嵌合されて接合される第1チューブ嵌合孔32aと、第2熱交換コア部22aのチューブ23の上端部が嵌合されて接合される第2チューブ嵌合孔32bとが形成されている。
【0070】
図7はチューブ挿入部材31の二面図である。図6(b)、図8に示すように、チューブ挿入部材31には、プレートヘッダ32の第1チューブ嵌合孔32aと重合して第1熱交換コア部21aのチューブ23の上端部が挿入される第1チューブ挿入孔31aと、プレートヘッダ32の第2チューブ嵌合孔32bと重合して第2熱交換コア部22aのチューブ23の上端部が挿入される第2チューブ挿入孔31bとが形成されている。
【0071】
チューブ挿入部材31は、長手方向一端部が図6(a)に示すように膨張弁挿入穴形成部材30とプレートヘッダ32との間に挟まれてろう付け固定され、残余の部位が図6(b)に示すようにタンクヘッダ33とプレートヘッダ32との間に挟まれてろう付け固定されている。
【0072】
図8は膨張弁挿入穴形成部材30の三面図である。図6、図8に示すように、膨張弁挿入穴形成部材30およびタンクヘッダ33には、上側タンク部21b、22bの長手方向に延びてチューブ挿入部材31の第1チューブ挿入孔31aと対向する第1タンク溝30a、33aが形成されている。第1タンク溝30a、33aは、第1蒸発器21の上側タンク部21bの内部空間を構成している。
【0073】
同様に、膨張弁挿入穴形成部材30およびタンクヘッダ33には、上側タンク部21b、22bの長手方向に延びてチューブ挿入部材31の第2チューブ挿入孔31bと対向する第2タンク溝30b、33bが形成されている。第2タンク溝30b、33bは、上側タンク部22bの内部空間を構成している。
【0074】
図5(b)、図6(b)に示すように、プレートヘッダ32には、内部熱交換器13の高圧側出口端部13eが嵌合されて接合される高圧側出口端部嵌合孔32cと、内部熱交換器13の低圧側入口端部13fが嵌合されて接合される低圧側入口端部嵌合孔32dとが形成されている。
【0075】
図6(b)、図7に示すように、チューブ挿入部材31には、プレートヘッダ32の高圧側出口端部嵌合孔32cと重合して内部熱交換器13の高圧側出口端部13eが挿入される高圧側出口端部挿入穴31cと、プレートヘッダ32の低圧側入口端部嵌合孔32dと重合して内部熱交換器13の低圧側入口端部13fが挿入される低圧側入口端部挿入穴31dとが形成されている。図5(a)に示すように、チューブ挿入部材31の低圧側入口端部挿入穴31dは、膨張弁挿入穴形成部材30の第1タンク溝30aと対向している。
【0076】
図5、図6、図8に示すように、膨張弁挿入穴形成部材30には、冷媒流路をなす第1、第2流路穴30c、30dが形成されている。図5(a)に示すように、第1流路穴30cは、チューブ挿入部材31の高圧側出口端部挿入穴31cと重合し、膨張弁挿入穴29aに連通している。第2流路穴30dは、膨張弁挿入穴29aからタンク溝30bまで延びている。
【0077】
チューブ挿入部材31の高圧側出口端部挿入穴31cおよび膨張弁挿入穴形成部材30の第1流路穴30cは、膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを構成している。内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bの入口部には、内部熱交換器13の高圧側出口端部13eが挿入されている。
【0078】
膨張弁挿入穴形成部材30の第2流路穴30dは、膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cを構成している。
【0079】
膨張弁挿入穴形成部材30のタンク溝30aおよびチューブ挿入部材31の低圧側入口端部挿入穴31dは、膨張弁組付部29の蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dを構成している。蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dの出口部には、内部熱交換器13の低圧側入口端部13eが挿入されている
ここで、図2に示す第1蒸発器21の上側タンク部21bを第1上側タンク部21bと言い、第2蒸発器22の上側タンク部22bを第2上側タンク部22bと言う。
【0080】
第1上側タンク部21bの内部空間の長手方向の略中央部には仕切板(図示せず)が配置され、この仕切板によって第1上側タンク部21bの内部空間は、長手方向の2つの空間すなわち左側空間34と右側空間35とに仕切られている。第1上側タンク部21bの左側空間34は、膨張弁組付部29の蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dを介して内部熱交換器13の低圧側冷媒流路入口13f(すなわち低圧側冷媒流路13b)に連通している。
【0081】
第2上側タンク部22bの内部空間の長手方向の略中央部には仕切板(図示せず)が配置され、この仕切板によって第2上側タンク部22bの内部空間は、長手方向の2つの空間すなわち左側空間36と右側空間37とに仕切られている。第2上側タンク部22bの左側空間36は、膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cに連通している。
【0082】
両上側タンク部21b、22bの右側空間35、37同士は、図示しない冷媒流路によって連通している。
【0083】
第1上側タンク部21bの左側空間34は、複数のチューブ23からの冷媒を集合させる集合タンクとしての役割を果たし、第1上側タンク部21bの右側空間35は、冷媒を複数のチューブ23へ分配する分配タンクとしての役割を果たす。
【0084】
第2上側タンク部22bの左側空間36は、冷媒を複数のチューブ23へ分配する分配タンクとしての役割を果たし、第2上側タンク部22bの右側空間37は、複数のチューブ23からの冷媒を集合させる集合タンクとしての役割を果たす。
【0085】
図3に示すように、膨張弁14は、蒸発器21、22等を一体ろう付けする組み付け工程(ろう付け工程)の終了後に、膨張弁組付部29の膨張弁挿入穴29aに差し込まれる。
【0086】
具体的には、膨張弁14は、冷媒入口14aが膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bに連通し、冷媒出口14bが膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cに連通するように膨張弁組付部29に組み付けられる。
【0087】
これにより、内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aは、膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを介して膨張弁14の冷媒入口14aと連通し、膨張弁14の冷媒出口14bは、膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cを介して上側タンク部22bの左側空間36と連通する。
【0088】
このとき、膨張弁14とともにOリング38を膨張弁組付部29の膨張弁挿入穴29a内に組み付ける。このOリング38により、膨張弁14の冷媒入口14aと冷媒出口14bとの間がシールされる。
【0089】
さらに、膨張弁14は、膨張弁組付部29のうち膨張弁挿入穴29aが開口する側の端部にシール接合される。本実施形態では、膨張弁14は、膨張弁組付部29とのシール接合部がアルミニウム等の金属材で成形されており、膨張弁組付部29に抵抗溶接により金属シール接合される。これにより、膨張弁14と膨張弁組付部29との間からの冷媒漏れが防止される。
【0090】
本実施形態では、膨張弁14として、コイル14cへの通電によって弁体14dを駆動して弁開度(冷媒流量)を調整する電気式膨張弁を用いている。また、膨張弁14として、圧縮機11の吸入側冷媒(後述の蒸発器出口側冷媒)の温度と圧力とに基づいて圧縮機吸入側冷媒の過熱度を検出し、圧縮機吸入側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように弁開度(冷媒流量)を調整する温度式膨張弁を用いてもよい。
【0091】
膨張弁14は、その弁体の変位方向に延びる細長の円筒形状となっており、その細長円筒形状の長手方向を上側タンク部21b、22bの長手方向に一致させて、膨張弁14が上側タンク部21b、22bと平行に設置されている。
【0092】
この構成は、膨張弁14と蒸発器21、22とをコンパクトに配置することができ、ひいては、ユニット全体の体格をコンパクトにまとめることができる。しかも、膨張弁14は、蒸発器21、22と一体ろう付けされた膨張弁組付部29内に配置され、その冷媒入口14aおよび冷媒出口14bを膨張弁組付部29内において直接に開口させて設置されている。この構成は、冷媒配管を減らすことを可能とする。
【0093】
以上の構成において一体化ユニット20全体の冷媒流路を図9、図10により具体的に説明する。なお、図10では、図示の都合上、膨張弁組付部29の内部に挿入されている膨張弁14を実線で示している。
【0094】
一体化ユニット20の冷媒入口25に流入した冷媒はまず、矢印a1のように内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aを通過して熱交換され、この熱交換後の冷媒は、矢印a2のように膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを経て膨張弁14を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒は膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cを経て矢印a3のように第2蒸発器22の上側タンク部22bの左側空間36に流入する。
【0095】
この左側空間36の冷媒は第2蒸発器22の熱交換コア部22aの左側部の複数のチューブ23を矢印a4のように下降して第2蒸発器22の下側タンク部22c内の左側部に流入する。この下側タンク部22c内には仕切板が設けられていないので、この下側タンク部22cの左側部から冷媒は矢印a5のように右側部へと移動する。
【0096】
この下側タンク部22cの右側部の冷媒は第2蒸発器22の熱交換コア部22aの右側部の複数のチューブ23を矢印a6のように上昇して第2蒸発器22の上側タンク部22bの右側空間37に流入し、さらに、ここから冷媒は矢印a7のように第1蒸発器21の上側タンク部21bの右側空間35へと流れる。
【0097】
この右側空間35の冷媒は矢印a8のように第1蒸発器21の熱交換コア部21aの右側部の複数のチューブ23を下降して第1蒸発器21の下側タンク部21c内の右側部に流入する。この下側タンク部21c内には仕切板が設けられていないので、この下側タンク部21cの右側部から冷媒は矢印a9のように左側部へと移動する。
【0098】
この下側タンク部21cの左側部の冷媒は第1蒸発器21の熱交換コア部21aの左側部の複数のチューブ23を矢印a10のように上昇して第1蒸発器21の上側タンク部21bの左側空間34に流入する。この左側空間34内の冷媒は矢印a11のように膨張弁組付部29の蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dを経て、矢印a12のように内部熱交換器13の低圧側冷媒流路13bを通過して熱交換され、この熱交換後の冷媒は一体化ユニット20の冷媒出口26へと流れる。
【0099】
一体化ユニット20は以上のような冷媒流路構成を持つため、一体化ユニット20全体として冷媒入口25および冷媒出口26を1つずつ設けるだけでよい。
【0100】
次に、第1実施形態の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11で圧縮されて吐出された高温高圧状態の冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した高圧冷媒は一体化ユニット20の冷媒入口25に流入する。
【0101】
冷媒入口25に流入した冷媒は内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aを通過して、この高圧側冷媒流路13aにて低圧側冷媒流路13bの低圧側冷媒と熱交換され、熱交換後の冷媒が膨張弁14を通過する。
【0102】
この膨張弁14では、蒸発器15(第1、第2蒸発器21、22)の出口冷媒(圧縮機吸入冷媒)の過熱度が所定値となるように弁開度(冷媒流量)が調整され、高圧冷媒が減圧される。この膨張弁14通過後の冷媒(中間圧冷媒)は蒸発器15における図9の矢印a4〜a10の冷媒流路にて冷媒が流れる。
【0103】
この間に、蒸発器15では、低温の低圧冷媒が矢印A1方向の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、内部熱交換器13の低圧側冷媒流路13bを通過して、この低圧側冷媒流路13bにて高圧側冷媒流路13aの高圧側冷媒と熱交換され、熱交換後の冷媒が一体化ユニット20の冷媒出口26から圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
【0104】
以上のごとく、本実施形態によると、内部熱交換器13、膨張弁14および蒸発器15を図2に示すように1つの構造体、すなわち一体化ユニット20として組み付け、それにより、一体化ユニット20全体として冷媒入口25および冷媒出口26をそれぞれ1つ設けるだけで済むようにしている。
【0105】
その結果、冷凍サイクル10の車両への搭載時には、上記各種部品13、14、15を内蔵する一体化ユニット20全体として、1つの冷媒入口25を放熱器12の出口側に接続し、1つの冷媒出口26を圧縮機11の吸入側に接続するだけで、配管接続作業を終了できる。
【0106】
そのため、上記各種部品13、14、15をそれぞれ独立の部品として構成し、これら各部品相互間をそれぞれ配管結合する場合と比較して、配管を簡素化して蒸発器15を有する冷凍サイクル10の車両への搭載性を大幅に向上できるとともに、サイクル部品点数を減少してコスト低減を図ることができる。
【0107】
さらに、一体化ユニット20によると、上記各種部品13、14、15相互間の接続通路長さを短縮できるので、冷媒流路の圧損を低減できると同時に、低圧冷媒と周辺雰囲気との熱交換を効果的に縮小できる。これにより、蒸発器15の冷却性能を向上できる。
【0108】
特に、一体化ユニット20によると、蒸発器15、内部熱交換器13および膨張弁組付部29の一体ろう付けを行った後に膨張弁14を膨張弁組付部29に組み付けするので、蒸発器15のみの一体ろう付けを行った後に内部熱交換器13および膨張弁14を蒸発器15に組み付けする場合と比較して、一体ろう付け後の接続箇所を低減できる。その結果、接続構成を簡素化して一体化ユニット20の組み付け工数を低減できるとともに、冷媒漏れに対するシール性を高めることができる。
【0109】
しかも、一体ろう付け後に組み付けされる膨張弁14を膨張弁組付部29に金属シール接合しているので、冷媒漏れに対するシール性をより高めることができる。
【0110】
また、本実施形態によると、膨張弁組付部29が上側タンク部21b、22bの一部を構成しているので、膨張弁組付部29による一体化ユニット20の体格増大を抑制できる。
【0111】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、内部熱交換器13、膨張弁14および第1、第2蒸発器21、22を1つの一体化ユニット20として組み付けているが、本実施形態では、上記各種部品13、14、21、22に加え、エジェクタ40をも1つの一体化ユニット41として組み付けている。
【0112】
図11に示すように、本実施形態の冷凍サイクル10は、エジェクタ40を備えるエジェクタ式冷凍サイクルを構成しており、内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13cと膨張弁14の冷媒入口14aとの間)に設けられた分岐点Zから冷媒分岐通路42が分岐され、この冷媒分岐通路42の下流側にエジェクタ40が接続されている。
【0113】
エジェクタ40は冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、高速で噴射される冷媒流の吸引作用(巻き込み作用)によって冷媒の循環を行う流体輸送を冷媒循環手段(運動量輸送式ポンプ)でもある。
【0114】
図12に示すように、エジェクタ40には、膨張弁14通過後の冷媒(中間圧冷媒)の通路面積を小さく絞って、冷媒をさらに減圧膨張させるノズル部40aと、ノズル部40aの冷媒噴出口と同一空間に配置され、第2蒸発器22からの気相冷媒を吸引する冷媒吸引口40bとが備えられている。
【0115】
さらに、ノズル部40aおよび冷媒吸引口40bの冷媒流れ下流側部位には、ノズル部40aからの高速度の冷媒流と冷媒吸引口40bの吸引冷媒とを混合する混合部40cが設けられている。そして、混合部40cの冷媒流れ下流側に昇圧部をなすディフューザ部40dが配置されている。このディフューザ部40dは冷媒の通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する作用を果たす。
【0116】
本実施形態では、エジェクタ40として、ノズル部40aの通路面積を調整可能になっている可変エジェクタを用いている。具体的には、ノズル部40aの通路内にニードル40eが挿入され、このニードル40eの位置を電気的アクチュエータにより制御して通路面積を調整する機構となっている。なお、エジェクタ40として、ノズル部40aの通路面積が一定になっている固定エジェクタを用いてもよい。
【0117】
図11に示すように、分岐点Zから分岐した冷媒分岐通路42の下流側はノズル部40aの入口に接続されている。エジェクタ40の出口(すなわちディフューザ部40dの出口)側は第1蒸発器21に接続され、この第1蒸発器21の出口側は内部熱交換器13の低圧側冷媒入口13dに接続される。
【0118】
一方、膨張弁14の冷媒出口14b側に第2蒸発器22が接続され、第2蒸発器22の出口側はエジェクタ40の冷媒吸引口40bに接続されている。
【0119】
次に、一体化ユニット41の具体例を図13〜図15により説明すると、図13はこの一体化ユニット41の全体構成の概要を示す二面図である。本実施形態では、内部熱交換器13、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43もろう付けにて第1、第2蒸発器21、22と一体に組み付けるようになっている。
【0120】
これに対し、エジェクタ40はノズル部40aに高精度な微小通路を形成しているので、エジェクタ40をろう付けすると、ろう付け時の高温度(アルミニウムのろう付け温度:600℃付近)にてノズル部40aが熱変形して、ノズル部40aの通路形状、寸法等を所期の設計通りに維持できないという不具合が生じる。
【0121】
そこで、エジェクタ40については、第1、第2蒸発器21、22、内部熱交換器13、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43の一体ろう付けを行った後に、蒸発器側に組み付けするようにしてある。
【0122】
エジェクタ組付部43は、膨張弁組付部29と同様にアルミニウム材(金属材)にて成形されており、第1、第2蒸発器21、22の上側タンク部21b、22bの長手方向他端部(膨張弁組付部29と反対側の端部)にろう付け固定されている。
【0123】
図14に示すように、エジェクタ組付部43には、エジェクタ40が挿入されるエジェクタ挿入穴43aが形成されている。なお、図14では、図示の都合上、エジェクタ組付部43の内部に挿入されているエジェクタ40を実線で示している。
【0124】
エジェクタ40は、ノズル部40aの入口、冷媒吸引口40bおよびディフューザ部40dの出口の形成部位がエジェクタ挿入穴43aに挿入される。これにより、ノズル部40aの入口、冷媒吸引口40bおよびディフューザ部40dの出口がエジェクタ挿入穴43a内に位置することとなる。
【0125】
図14、図15に示すように、膨張弁組付部29の内部およびエジェクタ組付部43の内部には、内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13cからエジェクタ40のノズル部40aの入口に至る内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bが形成されている。内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bは、図11に示す冷媒分岐通路42を構成している。
【0126】
内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bは、膨張弁組付部29に形成された高圧冷媒流路29eと、エジェクタ組付部43に形成されたノズル部入口側流路43bとで構成されている。
【0127】
膨張弁組付部29の高圧冷媒流路29eは、内部熱交換器13の高圧側冷媒出口13cとエジェクタ組付部43のノズル部入口側流路43bとを連通する流路である。エジェクタ組付部43のノズル部入口側流路43bは、ノズル部40aの入口に流入する冷媒が流れる流路である。
【0128】
エジェクタ組付部43の内部には、第2蒸発器15からエジェクタ40の冷媒吸引口40bに至る蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cと、エジェクタ40のディフューザ部40dの出口から第1蒸発器21に至るエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dとが形成されている。
【0129】
蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cは、冷媒吸引口40bに吸引される冷媒が流れる冷媒吸引口側流路である。エジェクタ−蒸発器冷媒流路43dは、エジェクタ40の出口から流出した冷媒が流れるエジェクタ出口側流路である。
【0130】
エジェクタ組付部43には、第1、第2熱交換コア部21a、22aの複数のチューブ23のうち一部のチューブの端部が挿入されており、エジェクタ組付部43は上側タンク部21b、22bの一部を構成している。
【0131】
本実施形態では、エジェクタ組付部43は、エジェクタ挿入穴43aを形成するエジェクタ挿入穴形成部材44と、管状部材45と、チューブ挿入部材31とに分割して形成されている。管状部材45は、膨張弁挿入穴形成部材30とエジェクタ挿入穴形成部材44との間にて上側タンク部21b、22bの長手方向と平行に配置され、膨張弁組付部29とエジェクタ挿入穴形成部材44とを繋いでいる。
【0132】
図15に示すように、管状部材45のうち膨張弁組付部29側の端部は、膨張弁組付部29の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29eに連通している。膨張弁組付部29の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29eは内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bから分岐しており、その分岐点は図11に示す冷媒分岐通路42の分岐点Zを構成している。
【0133】
図14に示すように、上側タンク部21b、22bは、長手方向他端部(膨張弁組付部29と反対側の端部)がチューブ挿入部材31、プレートヘッダ32およびエジェクタ挿入穴形成部材44で構成されている。
【0134】
エジェクタ挿入穴形成部材44には、上側タンク部21b、22bの長手方向に延びてチューブ挿入部材31の第1チューブ挿入孔31aと対向する第1タンク溝44aが形成されている。第1タンク溝44aは、第1蒸発器21の上側タンク部21bの右側空間35を構成している。
【0135】
同様に、エジェクタ挿入穴形成部材44には、上側タンク部21b、22bの長手方向に延びてチューブ挿入部材31の第2チューブ挿入孔31bと対向する第2タンク溝44bが形成されている。第2タンク溝44bは、第2蒸発器22の上側タンク部22bの右側空間37を構成している。
【0136】
さらに、エジェクタ挿入穴形成部材44には、冷媒流路をなす第1、第2、第3流路穴44c、44d、44dが形成されている。
【0137】
第1流路穴44cは、管状部材45の他端部とエジェクタ挿入穴43aとを連通している。第2流路穴44dは、第2タンク溝44bからエジェクタ挿入穴43aまで延びている。第3流路穴44eは、エジェクタ挿入穴43aから第1タンク溝44aまで延びている。
【0138】
管状部材45の内部空間45aおよびエジェクタ挿入穴形成部材44の第1流路穴44cは、エジェクタ組付部43の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路43bを構成している。
【0139】
エジェクタ挿入穴形成部材44の第2タンク溝44bおよび第2流路穴44dは、エジェクタ組付部43の蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cを構成している。
【0140】
エジェクタ挿入穴形成部材44の第3流路穴44eおよび第1タンク溝44aは、エジェクタ組付部43のエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dを構成している。
【0141】
エジェクタ40は、蒸発器21、22等を一体ろう付けする組み付け工程(ろう付け工程)の終了後に、エジェクタ組付部43のエジェクタ挿入穴43aに差し込まれる。
【0142】
具体的には、エジェクタ40は、ノズル部40aの入口がエジェクタ組付部43の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路43bに連通し、冷媒吸引口40bがエジェクタ組付部43の蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cに連通し、ディフューザ部40dの出口がエジェクタ組付部43のエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dに連通するようにエジェクタ組付部43に組み付けられる。
【0143】
これにより、内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aは、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bを介してエジェクタ40のノズル部40aの入口と連通し、第2蒸発器22の上側タンク部22bの右側空間37は、エジェクタ組付部43の蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cを介してエジェクタ40の冷媒吸引口40bと連通し、エジェクタ40のディフューザ部40dの出口は、エジェクタ組付部43のエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dを介して第1蒸発器21の上側タンク部21bの右側空間35と連通する。
【0144】
このとき、エジェクタ組付部43のエジェクタ挿入穴43a内にOリング(図示せず)を組み付ける。このOリングにより、エジェクタ40のノズル部40aの入口と冷媒吸引口40bとディフューザ部40dの出口との間がシールされる。
【0145】
さらに、エジェクタ40は、エジェクタ組付部43のうちエジェクタ挿入穴43aが開口する側の端部にシール接合される。本実施形態では、エジェクタ40は、エジェクタ組付部43とのシール接合部がアルミニウム等の金属材で成形されており、エジェクタ組付部43に抵抗溶接により金属シール接合される。これにより、エジェクタ40とエジェクタ組付部43との間からの冷媒漏れが防止される。
【0146】
エジェクタ40は、そのノズル部40aの軸方向に延びる細長の円筒形状となっており、その細長円筒形状の長手方向を上側タンク部21b、22bの長手方向に一致させて、エジェクタ40が上側タンク部21b、22bと平行に設置されている。
【0147】
この構成は、エジェクタ40と蒸発器21、22とをコンパクトに配置することができ、ひいては、ユニット全体の体格をコンパクトにまとめることができる。しかも、エジェクタ40は、蒸発器21、22と一体ろう付けされたエジェクタ組付部43内に配置され、そのノズル部40aの入口、冷媒吸引口40bおよびディフューザ部40dの出口をエジェクタ組付部43内において直接に開口させて設置されている。この構成は、冷媒配管を減らすことを可能とする。
【0148】
また、本実施形態では、第1蒸発器21が第2蒸発器22と隣接して設けられており、エジェクタ40の下流側端部は、第1蒸発器21の分配タンク(上側タンク部21bの右側空間35)と隣接して設置されている。この構成は、エジェクタ40からの流出冷媒をごく短い簡単な冷媒通路(エジェクタ−蒸発器冷媒流路43d)にて第1蒸発器21側へ供給できるという利点を提供する。
【0149】
以上の構成において一体化ユニット41全体の冷媒流路を図14、図15により具体的に説明すると、一体化ユニット41の冷媒入口25に流入した冷媒はまず、矢印b1のように内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aを通過して低圧側冷媒流路13bを流れる低圧側冷媒と熱交換され、この熱交換後の冷媒は膨張弁組付部29内において、膨張弁14に向かう内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bの流れと、矢印b2の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bの流れとに分岐される。
【0150】
矢印b2の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43bを流れる冷媒は、エジェクタ40(ノズル部40a→混合部40c→ディフューザ部40d)を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒はエジェクタ組付部43のエジェクタ−蒸発器冷媒流路43dを経て矢印b3のように第1蒸発器21の上側タンク部21bの右側空間35に流入する。
【0151】
この右側空間35の冷媒は第1蒸発器21の熱交換コア部21aの右側部の複数のチューブ23を矢印b4のように下降して第1蒸発器21の下側タンク部21c内の右側部に流入する。この下側タンク部21c内には仕切板が設けてないので、この下側タンク部21cの右側部から冷媒は矢印b5のように左側部へと移動する。
【0152】
この下側タンク部21cの左側部の冷媒は第1蒸発器21の熱交換コア部21aの左側部の複数のチューブ23を矢印b6のように上昇して第1蒸発器21の上側タンク部21bの左側空間34に流入し、さらに、ここから冷媒は矢印b7のように膨張弁組付部29の蒸発器−内部熱交換器冷媒流路29dを経て矢印b8のように内部熱交換器13の低圧側冷媒流路13bを通過して高圧側冷媒流路13aを流れる高圧側冷媒と熱交換され、この熱交換後の冷媒は一体化ユニット20の冷媒出口26へと流れる。
【0153】
これに対し、内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを膨張弁14へ向かって流れる冷媒は膨張弁14を通過して減圧され、この減圧後の低圧冷媒は膨張弁組付部29の膨張弁−蒸発器冷媒流路29cを経て矢印b9のように第2蒸発器22の上側タンク部22bの左側空間36に流入する。
【0154】
この左側空間36の冷媒は第2蒸発器22の熱交換コア部22aの左側部の複数のチューブ23を矢印b10のように下降して第2蒸発器22の下側タンク部22c内の左側部に流入する。この下側タンク部22c内には仕切板が設けてないので、この下側タンク部22cの左側部から冷媒は矢印b11のように右側部へと移動する。
【0155】
この下側タンク部22cの右側部の冷媒は第2蒸発器22の熱交換コア部22aの右側部の複数のチューブ23を矢印b12のように上昇して上側タンク部22bの右側空間37に流入する。この右側空間37の冷媒は、矢印b13のようにエジェクタ組付部43の蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路43cを経て冷媒吸引口40bからエジェクタ40内に吸引される。
【0156】
一体化ユニット41は以上のような冷媒流路構成を持つため、一体化ユニット41全体として冷媒入口25および冷媒出口26を1つずつ設けるだけでよい。
【0157】
次に、第2実施形態の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11で圧縮され吐出された高温高圧状態の冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した高圧冷媒は一体化ユニット20に設けられた1つの冷媒入口25に流入する。
【0158】
冷媒入口25に流入した冷媒は内部熱交換器13の高圧側冷媒流路13aを通過して、この高圧側冷媒流路13aにて低圧側冷媒流路13bの低圧側冷媒と熱交換される。
【0159】
ここで、熱交換後の冷媒流れは、膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bを経て膨張弁14に向かう冷媒流れと、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43の内部熱交換器−ノズル部冷媒流路29e、43b(図11の冷媒分岐通路42)を経てエジェクタ40に向かう冷媒流れとに分流する。
【0160】
そして、エジェクタ40に流入した冷媒流れはノズル部40aで減圧され膨張する。従って、ノズル部40aで冷媒の圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、このノズル部40aの噴出口から冷媒は高速度となって噴出する。この際の冷媒圧力低下により、冷媒吸引口40bから第2蒸発器22通過後の冷媒(気相冷媒)を吸引する。
【0161】
ノズル部40aから噴射された冷媒と冷媒吸引口40bに吸引された冷媒は、ノズル部40a下流側の混合部40cで混合してディフューザ部40dに流入する。このディフューザ部40dでは通路面積の拡大により、冷媒の速度(膨張)エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。
【0162】
そして、エジェクタ40のディフューザ部40dから流出した冷媒は第1蒸発器21における図14、図15の矢印b3〜b6の冷媒流路にて冷媒が流れる。この間に、第1蒸発器21では、低温の低圧冷媒が矢印A1方向の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、内部熱交換器13の低圧側冷媒流路13bを通過して、この低圧側冷媒流路13b内にて高圧側冷媒流路13aを流れる低圧側冷媒と熱交換され、熱交換後の冷媒が、一体化ユニット20に設けられた1つの冷媒出口26から圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
【0163】
一方、膨張弁組付部29の内部熱交換器−膨張弁冷媒流路29bから膨張弁14に流入した冷媒流れは、膨張弁14で減圧されて低圧冷媒となり、この低圧冷媒が第2蒸発器22における図14、図15の矢印b9〜b12の冷媒流路にて冷媒が流れる。この間に、第2蒸発器22では、低温の低圧冷媒が第1蒸発器21通過後の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は冷媒吸引口40bからエジェクタ40内に吸引される。
【0164】
以上のごとく、本実施形態によると、エジェクタ40のディフューザ部40dの下流側冷媒を第1蒸発器21に供給するととともに、膨張弁14の下流側の冷媒を第2蒸発器22にも供給できるので、第1、第2蒸発器21、22で同時に冷却作用を発揮できる。そのため、第1、第2蒸発器21、22の両方で冷却された冷風を冷却対象空間に吹き出して、冷却対象空間を冷房(冷却)できる。
【0165】
その際に、第1蒸発器21の冷媒蒸発圧力はディフューザ部40dで昇圧した後の圧力であり、一方、第2蒸発器22の出口側はエジェクタ40の冷媒吸引口40bに接続されているから、ノズル部40aでの減圧直後の最も低い圧力を第2蒸発器22に作用させることができる。
【0166】
これにより、第1蒸発器21の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも第2蒸発器22の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低くすることができる。そして、送風空気の流れ方向A1に対して冷媒蒸発温度が高い第1蒸発器21を上流側に配置し、冷媒蒸発温度が低い第2蒸発器22を下流側に配置しているから、第1蒸発器21における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差および第2蒸発器22における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を両方とも確保できる。
【0167】
このため、第1、第2蒸発器21、22の冷却性能を両方とも有効に発揮できる。従って、共通の冷却対象空間に対する冷却性能を第1、第2蒸発器21、22の組み合わせにて効果的に向上できる。また、ディフューザ部40dでの昇圧作用により圧縮機11の吸入圧を上昇して、圧縮機11の駆動動力を低減できる。
【0168】
さらに、本実施形態によると、内部熱交換器13、膨張弁14、第1、第2蒸発器21、22およびエジェクタ40を図13に示すように1つの構造体、すなわち一体化ユニット41として組み付け、それにより、一体化ユニット41全体として冷媒入口25および冷媒出口26をそれぞれ1つ設けるだけで済むようにしている。
【0169】
その結果、エジェクタ40を備える冷凍サイクル40においても、上記第1実施形態と同様に、配管を簡素化して車両への搭載性を大幅に向上できるとともに、サイクル部品点数を減少してコスト低減を図ることができる。
【0170】
さらに、一体化ユニット41によると、上記各種部品13、14、21、22、40相互間の接続通路長さを短縮できるので、冷媒流路の圧損を低減できると同時に、低圧冷媒と周辺雰囲気との熱交換を効果的に縮小できる。これにより、エジェクタ40を備える冷凍サイクル40においても、上記第1実施形態と同様に、蒸発器21、22の冷却性能を向上できる。
【0171】
特に、一体化ユニット41によると、第1、第2蒸発器21、22、内部熱交換器13、膨張弁組付部29およびエジェクタ組付部43の一体ろう付けを行った後に、膨張弁14を膨張弁組付部29に組み付けし、エジェクタ40をエジェクタ組付部43に組み付けするので、第1、第2蒸発器21、22のみの一体ろう付けを行った後に、膨張弁14、内部熱交換器13およびエジェクタ40を第1、第2蒸発器21、22に組み付けする場合と比較して、一体ろう付け後の接続箇所を低減できる。その結果、一体化ユニット41の組み付け工数を低減できるとともに、冷媒漏れに対するシール性を高めることができる。
【0172】
しかも、一体ろう付け後に組み付けされる膨張弁14を膨張弁組付部29に金属シール接合し、同じく一体ろう付け後に組み付けされるエジェクタ40をエジェクタ組付部43に金属シール接合しているので、冷媒漏れに対するシール性をより高めることができる。
【0173】
また、本実施形態によると、エジェクタ組付部43が上側タンク部21b、22bの一部を構成しているので、エジェクタ組付部43による一体化ユニット20の体格増大を抑制できる。
【0174】
(他の実施形態)
なお、上記第1、第2実施形態では、内部熱交換器13の上端部に切欠部13gを形成することによって高圧側出口端部13eと低圧側入口端部13fとを分離しているが、図16に示すように内部熱交換器13の上端部に屈曲部13hや段付部13iを形成することによって高圧側出口端部13eと低圧側入口端部13fとを分離してもよい。
【0175】
また、上記各実施形態では、冷媒として高圧圧力が臨界圧力を超えないフロン系、HC系等の冷媒を用いる蒸気圧縮式の亜臨界サイクルについて説明したが、冷媒として二酸化炭素(CO2 )のように高圧圧力が臨界圧力を超える冷媒を用いる蒸気圧縮式の超臨界サイクルに本発明を適用してもよい。
【0176】
但し、超臨界サイクルでは、圧縮機吐出冷媒が放熱器12にて超臨界状態のまま放熱するのみであり、凝縮しないので、高圧側に配置される受液器12aでは冷媒の気液分離作用および余剰液冷媒の貯留作用を発揮できない。そこで、超臨界サイクルでは、図17に示すように蒸発器15の出口側に低圧側気液分離器をなすアキュムレータ50を配置する構成を採用すればよい。
【0177】
また、上記各実施形態では、内部熱交換器13をサイドプレート27と一体化しているが、内部熱交換器13をサイドプレート27と別体にしてもよい。
【0178】
また、上記各実施形態は、蒸発器の具体的構成の一例を示したものに過ぎず、これに限定されることなく、蒸発器の具体的構成を種々変形可能である。
【0179】
また、上記各実施形態では、蒸発器の冷却対象空間として、車室内空間である場合や、冷凍車の冷凍冷蔵庫内空間である場合について述べたが、本発明は、これらの車両用に限らず、定置用等の種々な用途の冷凍サイクルに対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0180】
13 内部熱交換器
13c 高圧側冷媒出口
13d 低圧側冷媒入口
14 膨張弁
14a 冷媒入口
14b 冷媒出口
15 蒸発器
21 第1蒸発器
22 第2蒸発器
29 膨張弁組付部
29a 膨張弁挿入穴
29b 内部熱交換器−膨張弁冷媒流路
29c 膨張弁−蒸発器冷媒流路
29d 蒸発器−内部熱交換器冷媒流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルを構成する蒸発器(15)と、
前記冷凍サイクルの高圧側冷媒と低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器(13)と、
前記冷凍サイクルの膨張弁(14)が組み付けられる膨張弁組付部(29)とを備え、
前記膨張弁組付部(29)には、前記膨張弁(14)の冷媒入口(14a)に流入する冷媒が流れる入口側流路(29b)と、前記膨張弁(14)の冷媒出口(14b)から流出した冷媒が流れる出口側流路(29c)とが形成され、
前記蒸発器(15)、前記内部熱交換器(13)および前記膨張弁組付部(29)は、いずれも金属で形成され、かつ互いに一体ろう付けされていることを特徴とする蒸発器ユニット。
【請求項2】
前記入口側流路(29b)は、前記内部熱交換器(13)の高圧側冷媒出口(13c)から前記膨張弁(14)の冷媒入口(14a)に至る内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)であり、
前記出口側流路(29c)は、前記膨張弁(14)の冷媒出口(14b)から前記蒸発器(15)に至る膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)であり、
前記膨張弁組付部(29)には、前記蒸発器(15)から前記内部熱交換器(13)のうち低圧側冷媒入口(13d)に至る蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸発器ユニット。
【請求項3】
前記蒸発器(15)は、熱交換コア部(21a、22a)の冷媒流路を形成する複数のチューブ(23)を有し、
前記膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)および前記蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)には、前記複数のチューブ(23)のうち少なくとも一部のチューブの端部が挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の蒸発器ユニット。
【請求項4】
前記膨張弁組付部(29)には、前記膨張弁(14)のうち前記冷媒入口(14a)および前記冷媒出口(14b)の形成部位が挿入される膨張弁挿入穴(29a)が形成され、
前記膨張弁挿入穴(29a)は、前記内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)および前記膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)に連通し、
前記膨張弁組付部(29)は、前記膨張弁挿入穴(29a)を形成する膨張弁挿入穴形成部材(30)と、前記複数のチューブ(23)のうち少なくとも一部のチューブの端部が挿入されるチューブ挿入部材(31)とに分割して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の蒸発器ユニット。
【請求項5】
前記内部熱交換器(13)には、前記高圧側冷媒出口(13c)を形成する高圧側出口端部(13e)と、前記低圧側冷媒入口(13d)を形成する低圧側入口端部(13e)とが互いに分離して形成され、
前記内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)の入口部には、前記高圧側出口端部(13e)が挿入され、
前記蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)の出口部には、前記低圧側入口端部(13e)が挿入されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の蒸発器ユニット。
【請求項6】
ノズル部(40a)から噴射される高い速度の冷媒流により冷媒吸引口(40b)から冷媒を吸引し、前記ノズル部(40a)から噴射された冷媒と前記冷媒吸引口(40b)から吸引された冷媒とを混合して吐出するエジェクタ(40)が組み付けられるエジェクタ組付部(43)を備え、
前記蒸発器(15)は、前記エジェクタ(40)の出口側に接続されて前記エジェクタ(40)から吐出された冷媒を蒸発させる第1蒸発器(21)、および前記冷媒吸引口(40b)に接続されて前記エジェクタ(40)に吸引される冷媒を蒸発させる第2蒸発器(22)であり、
前記エジェクタ組付部(43)には、前記ノズル部(40a)の入口に流入する冷媒が流れるノズル部入口側流路(43b)と、前記冷媒吸引口(40b)に吸引される冷媒が流れる冷媒吸引口側流路(43c)と、前記エジェクタ(40)の出口から流出した冷媒が流れるエジェクタ出口側流路(43d)とが形成され、
前記エジェクタ組付部(43)は、金属で形成され、かつ前記第1、第2蒸発器(21、22)、前記内部熱交換器(13)および前記膨張弁組付部(29)と一体ろう付けされていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の蒸発器ユニット。
【請求項7】
前記膨張弁組付部(29)には、前記内部熱交換器(13)のうち前記高圧側冷媒の出口と前記ノズル部入口側流路(43b)とを連通する高圧冷媒流路(29e)が形成され、
前記高圧冷媒流路(29e)および前記ノズル部入口側流路(43b)は、前記内部熱交換器(13)の前記高圧側冷媒出口(13c)から前記ノズル部(40a)の入口に至る内部熱交換器−ノズル部冷媒流路を構成していることを特徴とする請求項6に記載の蒸発器ユニット。
【請求項8】
前記冷媒吸引口側流路(43c)は、前記第2蒸発器(22)から前記エジェクタ(40)の前記冷媒吸引口(40b)に至る蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路(43c)であり、
前記エジェクタ出口側流路(43d)は、前記エジェクタ(40)の出口から前記第1蒸発器(21)に至るエジェクタ−蒸発器冷媒流路(43d)であることを特徴とする請求項6または7に記載の蒸発器ユニット。
【請求項1】
冷凍サイクルを構成する蒸発器(15)と、
前記冷凍サイクルの高圧側冷媒と低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器(13)と、
前記冷凍サイクルの膨張弁(14)が組み付けられる膨張弁組付部(29)とを備え、
前記膨張弁組付部(29)には、前記膨張弁(14)の冷媒入口(14a)に流入する冷媒が流れる入口側流路(29b)と、前記膨張弁(14)の冷媒出口(14b)から流出した冷媒が流れる出口側流路(29c)とが形成され、
前記蒸発器(15)、前記内部熱交換器(13)および前記膨張弁組付部(29)は、いずれも金属で形成され、かつ互いに一体ろう付けされていることを特徴とする蒸発器ユニット。
【請求項2】
前記入口側流路(29b)は、前記内部熱交換器(13)の高圧側冷媒出口(13c)から前記膨張弁(14)の冷媒入口(14a)に至る内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)であり、
前記出口側流路(29c)は、前記膨張弁(14)の冷媒出口(14b)から前記蒸発器(15)に至る膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)であり、
前記膨張弁組付部(29)には、前記蒸発器(15)から前記内部熱交換器(13)のうち低圧側冷媒入口(13d)に至る蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸発器ユニット。
【請求項3】
前記蒸発器(15)は、熱交換コア部(21a、22a)の冷媒流路を形成する複数のチューブ(23)を有し、
前記膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)および前記蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)には、前記複数のチューブ(23)のうち少なくとも一部のチューブの端部が挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の蒸発器ユニット。
【請求項4】
前記膨張弁組付部(29)には、前記膨張弁(14)のうち前記冷媒入口(14a)および前記冷媒出口(14b)の形成部位が挿入される膨張弁挿入穴(29a)が形成され、
前記膨張弁挿入穴(29a)は、前記内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)および前記膨張弁−蒸発器冷媒流路(29c)に連通し、
前記膨張弁組付部(29)は、前記膨張弁挿入穴(29a)を形成する膨張弁挿入穴形成部材(30)と、前記複数のチューブ(23)のうち少なくとも一部のチューブの端部が挿入されるチューブ挿入部材(31)とに分割して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の蒸発器ユニット。
【請求項5】
前記内部熱交換器(13)には、前記高圧側冷媒出口(13c)を形成する高圧側出口端部(13e)と、前記低圧側冷媒入口(13d)を形成する低圧側入口端部(13e)とが互いに分離して形成され、
前記内部熱交換器−膨張弁冷媒流路(29b)の入口部には、前記高圧側出口端部(13e)が挿入され、
前記蒸発器−内部熱交換器冷媒流路(29d)の出口部には、前記低圧側入口端部(13e)が挿入されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の蒸発器ユニット。
【請求項6】
ノズル部(40a)から噴射される高い速度の冷媒流により冷媒吸引口(40b)から冷媒を吸引し、前記ノズル部(40a)から噴射された冷媒と前記冷媒吸引口(40b)から吸引された冷媒とを混合して吐出するエジェクタ(40)が組み付けられるエジェクタ組付部(43)を備え、
前記蒸発器(15)は、前記エジェクタ(40)の出口側に接続されて前記エジェクタ(40)から吐出された冷媒を蒸発させる第1蒸発器(21)、および前記冷媒吸引口(40b)に接続されて前記エジェクタ(40)に吸引される冷媒を蒸発させる第2蒸発器(22)であり、
前記エジェクタ組付部(43)には、前記ノズル部(40a)の入口に流入する冷媒が流れるノズル部入口側流路(43b)と、前記冷媒吸引口(40b)に吸引される冷媒が流れる冷媒吸引口側流路(43c)と、前記エジェクタ(40)の出口から流出した冷媒が流れるエジェクタ出口側流路(43d)とが形成され、
前記エジェクタ組付部(43)は、金属で形成され、かつ前記第1、第2蒸発器(21、22)、前記内部熱交換器(13)および前記膨張弁組付部(29)と一体ろう付けされていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の蒸発器ユニット。
【請求項7】
前記膨張弁組付部(29)には、前記内部熱交換器(13)のうち前記高圧側冷媒の出口と前記ノズル部入口側流路(43b)とを連通する高圧冷媒流路(29e)が形成され、
前記高圧冷媒流路(29e)および前記ノズル部入口側流路(43b)は、前記内部熱交換器(13)の前記高圧側冷媒出口(13c)から前記ノズル部(40a)の入口に至る内部熱交換器−ノズル部冷媒流路を構成していることを特徴とする請求項6に記載の蒸発器ユニット。
【請求項8】
前記冷媒吸引口側流路(43c)は、前記第2蒸発器(22)から前記エジェクタ(40)の前記冷媒吸引口(40b)に至る蒸発器−冷媒吸引口冷媒流路(43c)であり、
前記エジェクタ出口側流路(43d)は、前記エジェクタ(40)の出口から前記第1蒸発器(21)に至るエジェクタ−蒸発器冷媒流路(43d)であることを特徴とする請求項6または7に記載の蒸発器ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−202921(P2011−202921A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72527(P2010−72527)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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