説明

蒸発装置

【課題】発熱体の発熱容量に対して少量の液体を蒸発させる場合、発熱体の下部は蒸発すべき液体が存在しないため、高温状態が続き発熱体や他の構成機器の寿命に悪影響を及ぼす。逆に、液体が少量の場合に、発熱量を減らすと、液体の供給開始から目標湿度が達成されるまでに時間がかかるという問題が発生する。
【解決手段】本件発明では、本体容器と本体容器内部に立設された円筒型発熱体と、円筒型発熱体の外側面および上面を被覆する液体蒸発層と、円筒型発熱体上面の液体蒸発層へ液体を供給する第一液体供給管と、円筒型発熱体外側面の液体蒸発層へ液体を供給する第二液体供給管と、本体容器内部へキャリアガスを供給するガス供給管と、蒸発物とキャリアガスの混合気体を本体容器外部へ排出する混合気体排出口と、円筒型発熱体の制御を行う制御部と、からなる蒸発装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、蒸発ガスを発生させる装置であって、特に燃料電池などに用いられる加湿装置の水蒸気発生装置として使用される蒸発装置である。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料電池の種類によって燃料となるガスの改質が必要となる。一般的に燃料となるガスの主成分はメタンなどを含む都市ガスである。この燃料となるガスに水蒸気を反応させることで水素を生成させ改質し、燃料電池の燃料としている。
【0003】
燃料となるガスの改質の他にも、燃料電池の高分子電解膜のイオン電導性を確保するために、燃料ガス中に水蒸気を含ませる場合がある。燃料となるガスの水素は、燃料電池中の水素極にて水素イオンとなった後、酸素極に移動する際に水分子を伴って膜中を移動する。このため、水素極は乾燥しやすくなり、内部抵抗が大きくなってしまう。このため、燃料となるガスに水蒸気を含ませる必要がある。
【0004】
このように、燃料となるガス中に水分を含ませるのに必要なのが、水蒸気を発生させるための蒸発装置である。この蒸発装置としては、特許文献1や特許文献2に示すような蒸発ガスの発生装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009−226237
【特許文献2】特願2009−271306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に示した蒸発装置では、大量の水などの液体を効率よく蒸発させることが可能である。しかし、発熱体の発熱容量に対して少量の液体を蒸発させる場合、液体が供給される発熱体上部のみで液体が蒸発する。このため、発熱体の下部は蒸発すべき液体が存在しないため、不必要に発熱し、また高温状態が続くこととなる。発熱体にとって、高温状態が続くことは、発熱体の寿命を大きく減らすこととなる。逆に、液体が少量の場合に、発熱体への電力供給を減らし、発熱量を減らすと、前記のような不必要な発熱や、高温状態が続くことは避けられるが、液体の供給開始から目標湿度が達成されるまでに時間がかかるという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本件発明では、上記問題を鑑み、以下の蒸発装置を提供する。すなわち第一の発明としては、本体容器と、本体容器内部に立設された円筒型発熱体と、円筒型発熱体の外側面および上面を被覆する液体蒸発層と、円筒型発熱体上面の液体蒸発層へ液体を供給する第一液体供給管と、円筒型発熱体外側面の液体蒸発層へ液体を供給する第二液体供給管と、本体容器内部へキャリアガスを供給するガス供給管と、前記液体が蒸発した蒸発物とキャリアガスの混合気体を本体容器外部へ排出する混合気体排出口と、前記円筒型発熱体の発熱量および液体供給量、キャリアガス供給量の制御を行う制御部と、からなる蒸発装置を提供する。
【0008】
第二の発明としては、前記第二液体供給管は、円筒型発熱体の外側面周囲に均等に液体を供給できるよう複数の液体供給管から構成されている第一の発明に記載の蒸発装置を提供する。
【0009】
第三の発明としては、前記円筒型発熱体は、第一円筒型発熱部と第二円筒型発熱部とから構成され、第二円筒型発熱部は、第一円筒型発熱部の下部に連接して配置され、制御部は、第一円筒型発熱部の制御を行う第一制御手段と、第二円筒型発熱部の制御を行う第二制御手段と、からなり、第一制御手段と第二制御手段は独立して制御可能な第一の発明または第二の発明に記載の蒸発装置を提供する。
【0010】
第四の発明としては、前記第二制御手段は、液体の供給が第一液体供給管のみであって、第一円筒型発熱部の発熱により十分に蒸発する量であった場合、温度維持のための発熱を行うよう第二円筒型発熱部を制御する第三の発明に記載の蒸発装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本件発明の蒸発装置のように、容器内部に立設された円筒型発熱体を被覆する液体蒸発層の上面と、側面の少なくとも2ヶ所から液体を供給し蒸発させることで、目的の露点や湿度を速やかに実現が可能な応答性の良い蒸発装置を提供可能である。
【0012】
また、第二液体供給管を複数の液体供給管から構成し、円筒型発熱体の外側面周囲に均等に液体を供給することで、円筒型発熱体の局所的な高温発熱を防ぎ、効率のよい蒸発効率を実現することが可能となる。
【0013】
さらに、円筒型発熱体を、第一円筒型発熱部と第二円筒型発熱部とし、これらを上下に連接して配置することで、液体の供給量が少ない場合でも、無駄に第二円筒型発熱体を発熱する必要が無く、不必要な高温状態となる必要がない。また、第二円筒型発熱体の高温状態を避けるために発熱量を小さくする必要もないため、液体の供給開始から目標湿度が達成されるまでに時間が長くなり、応答時間が長くなる恐れもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の蒸発装置を説明するための断面概念図
【図2】実施形態1の蒸発装置を説明するための概念図
【図3】実施形態2の蒸発装置を説明するための断面概念図
【図4】実施形態2の蒸発装置を説明するための断面概念図
【図5】実施形態3の蒸発装置を説明するための断面概念図
【図6】実施形態3の蒸発装置のハードウエア構成の一例
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0016】
実施形態1は主に請求項1、請求項2などに関する。実施形態2は主に請求項3、請求項4などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1 概要>
【0017】
本実施形態は、容器内部に立設された円筒型発熱体を被覆する液体蒸発層の上面と、側面の少なくとも2ヶ所から液体を供給し蒸発させることを特徴とした蒸発装置である。このように、上面と、側面から液体を供給することで、目的の露点や湿度を速やかに実現が可能な応答性の良い蒸発装置を提供可能である。
<実施形態1 構成>
【0018】
図1に本実施形態の蒸発装置の断面概念図を示した。本実施形態の蒸発装置は、本体容器(0101)と、本体容器内部に立設された円筒型発熱体(0102)と、円筒型発熱体の外側面および上面を被覆する液体蒸発層(0103)と、円筒型発熱体上面の液体蒸発層へ液体を供給する第一液体供給管(0104)と、円筒型発熱体外側面の液体蒸発層へ液体を供給する第二液体供給管(0105)と、本体容器内部へキャリアガスを供給するガス供給管(0106)と、前記液体が蒸発した蒸発物とキャリアガスの混合気体を本体容器外部へ排出する混合気体排出口(0107)と、前記円筒型発熱体の発熱量および液体供給量、キャリアガス供給量の制御を行う制御部(0108)と、からなる。
【0019】
「本体容器」は、内部に後述する円筒形発熱体を有する容器である。本体容器の形状は、内部に筒形発熱体を内包可能な形状であればよい。従って、本体容器は、円筒形であっても、直方体や円錐などの形状であってもよい。本実施形態の蒸発装置では、本体容器内部に後述する液体蒸発層にそれぞれ被覆された円筒型発熱体を有している。そして後述する第一液体供給管および第二液体供給管から供給された液体を蒸発させ、ガス供給管から供給されたキャリアガスとともに、本体容器外部へ混合気体排出口から排出する。また、本実施形態の蒸発装置において、本体容器内壁にて、蒸発した液体が冷やされて液化してしまう可能性がある。この場合には、本体容器外周に断熱材を設置したり、リボンヒーターなどの発熱体を巻くことで、保温や加熱を行い、本体容器内壁にて液化しない構造としてもよい。
【0020】
「円筒型発熱体」は、本体容器内部に立設され、後述する液体蒸発層に覆われている。円筒型発熱体は自身が発熱することで、この液体蒸発層を加熱し、後従する第一液体供給管および第二液体供給管から供給される液体を蒸発させる。また円筒型発熱体には電力を供給するためのリード線が取り付けられている。
【0021】
「液体蒸発層」は、円筒型発熱体の外上面と外側面を覆い、後述する第一液体供給管および第二液体供給管から供給された液体が筒型発熱体の発熱により液体蒸発層上で蒸発する。円筒型発熱体の外上面側の液体蒸発層に供給された液体は、液体蒸発層の上部から下部方向へ重力に従い拡散する。拡散の途中で液体は円筒型発熱体の発熱により蒸発する。
【0022】
ここで、第一液体蒸発層を構成する材料について説明する。液体蒸発層は、液体を吸収し保水可能で、熱に強く熱伝導性の良い材料が望ましい。例えば、極細の金属繊維によって形成されたメタルファイバーや、耐熱性を有するアラミド繊維、ガラスウールなどである。特にメタルファイバーは保水性がよく、その保水率は、略30%から略60%程度である。
【0023】
「第一液体供給管」は、本体容器上部から円筒型発熱体の上面に接触する液体蒸発層へ液体を供給する。この第一液体供給管から供給される液体の量と、後述する第二液体供給管から供給される液体の量と、前述した円筒型発熱体の発熱量とを制御することで、蒸発する液体の量を制御することが可能である。また、円筒型発熱体を被覆する液体蒸発層から蒸発可能な液体の量を超えないよう、円筒型発熱体の発熱量及び第一液体供給管から供給される液体の量を制御しなければならない。仮に、蒸発可能な液体の量を超えてしまうと、本体容器内部に液体が滞留してゆくこととなる。
【0024】
「第二液体供給管」は、円筒型発熱体の外側面に接触する液体蒸発層へ液体を供給する。前述のように、この第二液体供給管から供給される液体の量と、前述の第一液体供給管から供給される液体の量と、円筒型発熱体の発熱量を制御することで、液体の蒸発量を制御することが可能となる。第二液体供給管から供給される液体の量は、第一液体供給管から供給される液体の量と同じであってもよいし、それぞれ別々にしてもよい。第一液体供給管および第二液体供給管から供給される液体の量は、液体蒸発層から蒸発可能な液体量を超えて供給されることのないように制御しなければならない。
【0025】
第二液体供給管は、第二液体供給管の先端と、液体蒸発層が接触しないように配置し、第二液体供給管から液体蒸発層へ液体を供給する。第二液体供給管と液体蒸発層が接触している場合、第二液体供給から正確な流量を保って液体を液体蒸発層に供給することができなかったり、液体蒸発層の熱が第二液体供給管に伝わり、第二液体供給管内で液体が蒸発したりするのを防ぐためである。第二液体供給管内で液体が蒸発した場合、液体供給管内の圧力が高くなり、液体が正確に供給できなくなる可能性があるからである。
【0026】
第二液体供給管は、円筒型発熱体の外側面上の液体蒸発層に液体を供給しなければならない。従って、第一液体供給管のように、重力に従って液体を落下させることで、単純に液体を液体蒸発層に供給することはできない。そこで、本実施形態の蒸発装置では、図2に示すように、液体蒸発層の側面に、凹部を設け、凹部に第二液体供給管の先端を配置し、第二液体供給管の先端から供給された液体が、凹部の内側面に落下するように構成する。このように構成することで、円筒型発熱体の外側面上の液体蒸発層に液体を供給することが可能となる。また、第二液体供給管の先端は、図2の(a)のような単純な断面としてもよいし、液体蒸発層にスムーズに液体が供給できるよう、(b)に示したような注射針の先端のように、鋭く尖った形状としてもよい。
【0027】
また、第二液体供給管が液体蒸発層の外側面に液体を供給する位置は、第一液体供給管および第二液体供給管から供給される液体の量に応じて変更することが望ましい。第一液体供給管からの液体供給量が第二液体供給管からの液体供給量に比べて少ない場合には、第二液体供給管を、円筒形発熱体の縦方向上方位置に配置し、第一液体供給管からの液体供給量が第二液体供給管からの供給量とほぼ等しい場合には、円筒型発熱体の縦方向略中央付近に配置し、第一液体供給管からの液体供給量が第二液体供給管からの液体供給量に比べて多い場合には、円筒型発熱体の縦方向下方位置に配置する等、液体の供給量に応じて変化させる。
【0028】
「ガス供給管」は、本体容器内部へキャリアガスとなる気体を供給する。ガス供給管は、本体容器上部に設け、上部から内部へキャリアガスを供給するのが一般的である。仮に、後述する混合気体排出口が本体容器の下部に配置され、ガス供給管も本体容器の下部に配置された場合、本体容器内にて蒸発した液体が、キャリアガスにより混合気体排出口から排出されず、滞留してしまう恐れもある。従って、ガス供給管の取り付け位置は、混合気体排出口の位置などとの関係に基づいて決定される。
【0029】
「混合気体排出口」は、キャリアガスである気体と、液体供給管から供給された液体が円筒型発熱体の発熱によって液体蒸発層で蒸発した蒸発物とが混合された混合気体を、本体容器内部から外部へ排出する口である。本体容器における混合気体排出口の配置位置は、先に述べたようにガス供給管の取り付け位置との関係によって決定されるものである。
【0030】
「制御部」は、円筒型発熱体の発熱量、および第一液体供給管および第二液体供給管から液体蒸発層への液体供給量、ガス供給管からのガス供給量の制御を行う。前述のように、液体を過剰に供給すると、円筒型発熱体の発熱量では、供給される液体を十分蒸発させることが出来ない場合がある。また、液体供給量と円筒型発熱体の発熱量、キャリアガスの流量等を制御することで、混合気体の温度や湿度、露点などを制御することが可能である。また、制御部は、混合気体の状態を収集するために、混合気体排出口近傍に設置された露点や湿度センサなどと接続され情報を収集するように構成してもよい。これらの収集した情報を元に、前述の液体供給量およびキャリアガス供給量の制御や、円筒型発熱体の発熱量の調整を行う。
【0031】
より具体的には、制御部は液体供給管へ液体を供給するための液体供給ポンプの制御や、ガス供給管へキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給ポンプの制御をおこなう。尚、キャリアガス供給ポンプは、流量調節バルブや、マスフローコントローラなどであってもよい。
<実施形態1 効果>
【0032】
本実施形態の蒸発装置のように、容器内部に立設された円筒型発熱体を被覆する液体蒸発層の上面と、側面の少なくとも2ヶ所から液体を供給し蒸発させることで、目的の露点や湿度を速やかに実現が可能な応答性の良い蒸発装置を提供可能である。
<<実施形態2>>
<実施形態2 概要>
【0033】
本実施形態は、実施形態1に説明した蒸発装置において、第二液体供給管を1つでは、円筒型発熱体の外側面周囲に均等に液体を供給することができないことから、均等に液体を供給できるように、液体供給管を複数としたことを特徴とする蒸発装置である。
<実施形態2 構成>
【0034】
図3に本実施形態の蒸発装置の概念図を示した。本実施形態は、実施形態1に示した本体容器(0301)と、円筒型発熱体(0302)と、液体蒸発層(0303)と、第一液体供給管(0304)と、第二液体供給管(0305)と、ガス供給管(0306)と、混合気体排出口(0307)と、制御部(0308)と、からなる蒸発装置に、さらに第二液体供給管が、円筒型発熱体の外側面周囲に均等に液体を供給できるよう複数の液体供給管から構成されている。図3の(a)は側面方向からの断面概念図であり、(b)は(a)のA-A'断面の断面図である。尚、図3の(a)において、第二液体供給管を構成する液体供給管は、図面が煩雑になるため、一部を省略して記載している。
【0035】
実施形態1の図1に示したように、第二液体供給管を1つの液体供給管から構成した場合、液体蒸発層の外側面に均等に液体を供給することができない。このように局所的に液体が供給された場合、液体が供給された部分については、液体が蒸発するため、液体蒸発層内部の円筒状発熱体が異常な高温となることは無い。しかし、液体が供給されていない部分については、円筒型発熱体が液体を蒸発させるために発熱しているため、局所的に異常な高温となってしまう。
【0036】
このため、本実施形態の蒸発装置では、図3に示したように、円筒型発熱体の側面方向に均等に液体を供給するため、第二液体供給管を複数の液体供給管で構成している。尚、図3の(b)では第二液体供給管を構成する液体供給管の本数を8本としているが、第二液体供給管を構成する複数の液体供給管の数は、円筒型発熱体および液体蒸発層の直径などに応じて適宜決定すれば良い。
【0037】
第二液体供給管を構成する複数の液体供給管は、図4の(a)のように、本体容器(0401)上方側から本体容器内部方向、つまり本体容器上面(0402)を貫通するように第二液体供給管を構成する液体供給管(0403)を配置し、液体蒸発層(0404)に液体を供給する位置付近で第二液体供給管を構成する液体供給管を液体蒸発層方向へ曲げ、液体蒸発層へ液体を供給するように構成してもよい。また、(b)のように、本体容器上面を貫通するように液体供給管を配置せずに、本体容器側面(0405)から、液体蒸発層の液体を供給する位置方向に液体供給管が貫通するように構成してもよい。第二液体供給管を構成する複数の液体供給管の配置については、蒸発装置のサイズや、設置場所、本体容器内部の温度などを考慮して決定すればよい。尚、図4は、本実施形態における蒸発装置を、説明のため、一部の構成のみを抜粋して記載している。
<実施形態2 効果>
【0038】
本実施形態の蒸発装置のように、第二液体供給管を複数の液体供給管から構成し、円筒型発熱体の外側面周囲に均等に液体を供給することで、円筒型発熱体の局所的な高温発熱を防ぎ、効率のよい蒸発効率を実現することが可能となる。
<<実施形態3>>
<実施形態3 概要>
【0039】
本実施形態は、実施形態1および実施形態2に述べた円筒型発熱体が、上下方向に連接された第一円筒発熱部と第二円筒発熱部から構成され、それぞれが独立して制御可能に構成された事を特徴とする蒸発装置である。
<実施形態3 構成>
【0040】
図5に本実施形態の蒸発装置を説明するための概念図を示した。本実施形態の蒸発装置は、実施形態1および2に示した、本体容器(0501)と、円筒型発熱体(0502)と、液体蒸発層(0503)と、第一液体供給管(0504)と、第二液体供給管(0505)と、ガス供給管(0506)と、混合気体排出口(0507)と、制御部(0508)と、からなる蒸発装置にさらに、前記円筒型発熱体は、第一円筒型発熱部(0509)と第二円筒型発熱部(0510)とから構成され、第二円筒型発熱部は、第一円筒型発熱部の下部に連接して配置され、制御部は、第一円筒型発熱部の制御を行う第一制御手段(0511)と、第二円筒型発熱部(0512)の制御を行う第二制御手段と、からなり、第一制御手段と第二制御手段は独立して制御可能に構成されている。
【0041】
「第一円筒型発熱部」は、円筒型発熱体の一部を構成し、後述する第二円筒型発熱部の上部に配置される。第一円筒型発熱部は、実施形態1に述べた液体蒸発層に覆われており、自身が発熱することで、第一円筒型発熱部周囲の液体蒸発層を加熱し、液体蒸発層に供給された液体を蒸発させる。
【0042】
「第二円筒型発熱部」は、前述した第一円筒型発熱部の下部に連接されて設置され、第二円筒型発熱部の側周囲は、液体蒸発層に覆われている。第二円筒型発熱部は、第一円筒型発熱部と同様に、自身が発熱することで、第二円筒型発熱部周囲の液体蒸発層を加熱し、液体蒸発層に供給された液体を蒸発させる。
【0043】
ここで、本実施形態の液体蒸発層と第一液体供給管および第二液体供給管について、説明する。実施形態1に述べた蒸発装置において、液体蒸発層は一体となっていると説明したが、実施形態2の蒸発装置においては、液体蒸発層を1つとする必要は必ずしもない。例えば、前述の第一円筒型発熱部および第二円筒型発熱部の周囲にそれぞれ別々の液体蒸発層を配置するような構成としてもよい。例えば、第一円筒型発熱部を覆うのが第一液体蒸発層、第二円筒型発熱部を覆うのが第二液体蒸発層といった具合である。
【0044】
尚、第一液体供給管および第二円筒型供給管については、第一円筒型発熱部の周囲の液体蒸発層に第一液体供給管が液体を供給し、第二円筒型発熱部の周囲の液体蒸発層に第二液体供給管が液体を供給するように構成してもよい。また、第一円筒型発熱部の周囲の液体蒸発層に供給された液体が、重力による拡散で第二円筒型発熱部の周囲の液体蒸発層まで流れて、第二円筒型発熱部の発熱により蒸発するように構成してもよい。
【0045】
「第一制御手段」と「第二制御手段」は、それぞれ第一円筒型発熱部と第二円筒型発熱部を独立して制御可能な構成となっている。第一制御手段と第二制御手段を設けることで、独立して第一円筒型発熱部と第二円筒型発熱部を制御可能となり、例えば、液体供給管から供給される液体供給量が少量であり、第一円筒型発熱部の発熱量で十分に蒸発可能な量であった場合には、第一円筒型発熱部のみを発熱させ、第二円筒型発熱部を発熱しないように制御してもよい。このようにすることで、消費電力を低く抑えることが可能である。また、前述のように液体供給量が少ない場合、第一円筒形発熱体の発熱で十分に液体が蒸発すると、第二円筒型発熱部は、蒸発すべき液体を蒸発させないため、異常な高温状態、つまり空炊きのような状態が続くことになる。しかし、第一制御手段および第二制御手段を設け、独立して制御することで、第二円筒型発熱部を無駄な高温状態に維持する必要が無くなり、第二円筒型発熱部の製品劣化を抑えることも可能である。
【0046】
この制御部および第一制御手段、第二制御手段の制御は、予め所定の値を使用者が入力することで制御するように構成してもよいし、第一円筒型発熱部および第二円筒型発熱部や第一液体蒸発層および第二液体蒸発層などに例えば温度センサのようなセンサを設け、これらのセンサからの情報に基づき、制御部および第一制御手段、第二制御手段が制御するように構成してもよい。例えば、第二円筒型発熱部の上部近傍の温度が異常に高温だった場合には、第一円筒型発熱部で十分に液体が蒸発されていることが推測されるため、第二円筒型発熱部の発熱を停止するように制御してもよい。また、第一円筒型発熱部の下部近傍の温度が低くなった場合には、第一円筒型発熱部の発熱のみでは、十分に液体を蒸発することができない可能性があるため、第二円筒型発熱部が液体蒸発のための発熱を開始するように構成してもよい。
【0047】
また、本実施形態の蒸発装置は、第二制御手段が、液体供給管からの液体の供給量が、第一円筒型発熱部の発熱により十分に蒸発する量であった場合、温度維持のための発熱を行うよう第二円筒型発熱部を制御するように構成してもよい。
【0048】
前述のように、第一円筒型発熱部および第二円筒型発熱部は、それぞれ第一制御手段と第二制御手段によってそれぞれ個別に制御することが可能である。このため、第一円筒型発熱部にて十分に蒸発可能な液体の量が液体供給管から供給されている場合には、第二円筒型発熱部は、液体を蒸発させるために発熱する必要はない。しかし、かりに第二円筒型発熱部が全く発熱しない状態となると、第二円筒型発熱部は冷却してしまい、第一円筒型発熱部の発熱により蒸発した液体が、冷却された第二円筒型発熱部の周囲に結露してしまう可能性等がある。これを防ぐために、本実施形態の蒸発装置では、第二円筒型発熱部は、第一円筒型発熱部によって蒸発された液体が結露しないように、温度維持をするための発熱を行う。第二円筒型発熱部が、温度維持のために発熱を行うことで、蒸発した液体が結露することを抑制することが可能である。
【0049】
また、図6に本実施形態の制御部をハードウエアとして実現した際の構成の一例を示す概略図を示した。本実施形態の蒸発装置の制御部は、図3にしめしたように、各種演算処理を行うCPU(0601)や主メモリ(0602)、また各種処理や判断を行うプログラムや、場合によっては制御履歴などを記憶保持するハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶装置(0603)や、ユーザーに対して温度情報等の様々な情報を報知するためのディスプレイやモニタ用LED(0604)やスピーカ(0605)、第一円筒型発熱部(0606)および第二円筒型発熱部(0607)や液体供給管へ液体を供給する液体供給ポンプ(0608)、ガス供給管へガスを供給するキャリアガス供給ポンプ(0609)、湿度や露点等の混合気体に関する情報を収集する各種センサ(0610)と接続し、発熱体への電力供給の制御や、各ポンプの制御を行うための通信等を行うためのインターフェイス(0611)や、ユーザーからの操作を受け付ける操作キー(0612)などを備えている。そしてそれらがシステムバスやデータ通信経路(0613)によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。また、主メモリは、各種処理を行うプログラムをCPUに実行させるために読み込ますと同時にそのプログラムの作業領域でもあるワーク領域を提供する。また、この主メモリや記憶装置にはそれぞれ複数のメモリアドレスが割り当てられており、CPUで実行されるプログラムは、そのメモリアドレスを特定しアクセスすることで相互にデータのやりとり行い、処理を行うことが可能となっている。
【0050】
CPUは、第一円筒型発熱部および第二円筒型発熱部や液体供給ポンプ、キャリアガス供給ポンプの制御を行ったり、制御のためのプログラムを主メモリに展開したりする。CPUは、展開されたプログラムに基づき、第一円筒型発熱部および第二円筒型発熱部の温度や、本体容器内部の温度、混合気体排出口での温度や湿度、露点等の情報を収支し、適正な温度や湿度、露点を制御するための各種演算行う。演算結果は一時的に主メモリ上に保存されたりする。この際演算結果を記憶装置に保存するように設定してもよい。また、CPUは、収集した各種情報を、記憶装置に逐次保存するように設定してもよい。CPUは、展開されたプログラムに従い、演算結果に基づいて、インターフェイスを介して、第二円筒型発熱部や液体供給ポンプ、キャリアガス供給ポンプの制御を行う。
【0051】
尚、実施形態の蒸発装置において、本体内部に供給される液体および気体は、特に限定していない。例えば、供給される気体が空気で、液体を水としてもよいし、液体をメタノールなどのアルコール類や炭化水素類などとしてもよい。供給される気体が空気で液体が水の場合は、いわゆる加湿器として機能する。
<実施形態3 効果>
【0052】
本実施形態の蒸発装置のように、円筒型発熱体を、第一円筒型発熱部と第二円筒型発熱部とし、これらを上下に連接して配置することで、液体の供給量が少ない場合でも、無駄に第二円筒型発熱体を発熱する必要が無く、不必要な高温状態となる必要がない。また、第二円筒型発熱体の高温状態を避けるために発熱量を小さくする必要もないため、液体の供給開始から目標湿度が達成されるまでに時間が長くなり、応答時間が長くなる恐れもなくなる。
【符号の説明】
【0053】
0101 0301 0501 本体容器
0102 0302 0502 円筒型発熱体
0103 0303 0503 液体蒸発層
0104 0304 0504 第一液体供給管
0105 0305 0505 第二液体供給管
0106 0306 0506 ガス供給管
0107 0307 0507 混合気体排出口
0108 0308 0508 制御部
0509 第一円筒型発熱部
0510 第二円筒型発熱部
0511 第一制御手段
0512 第二円筒型発熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器と、
本体容器内部に立設された円筒型発熱体と、
円筒型発熱体の外側面および上面を被覆する液体蒸発層と、
円筒型発熱体上面の液体蒸発層へ液体を供給する第一液体供給管と、
円筒型発熱体外側面の液体蒸発層へ液体を供給する第二液体供給管と、
本体容器内部へキャリアガスを供給するガス供給管と、
前記液体が蒸発した蒸発物とキャリアガスの混合気体を本体容器外部へ排出する混合気体排出口と、
前記円筒型発熱体の発熱量および液体供給量、キャリアガス供給量の制御を行う制御部と、
からなる蒸発装置。
【請求項2】
前記第二液体供給管は、円筒型発熱体の外側面周囲に均等に液体を供給できるよう複数の液体供給管から構成されている請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項3】
前記円筒型発熱体は、第一円筒型発熱部と第二円筒型発熱部とから構成され、
第二円筒型発熱部は、第一円筒型発熱部の下部に連接して配置され、
制御部は、
第一円筒型発熱部の制御を行う第一制御手段と、
第二円筒型発熱部の制御を行う第二制御手段と、
からなり、
第一制御手段と第二制御手段は独立して制御可能な請求項1または2に記載の蒸発装置。
【請求項4】
前記第二制御手段は、液体の供給が第一液体供給管のみであって、第一円筒型発熱部の発熱により十分に蒸発する量であった場合、温度維持のための発熱を行うよう第二円筒型発熱部を制御する請求項3に記載の蒸発装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−205970(P2012−205970A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71358(P2011−71358)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【Fターム(参考)】