説明

蒸着マスク及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法

【課題】本発明は、歪みが生じにくい蒸着マスクを提供することを目的とする。
【解決手段】複数の開孔部42は、第1方向D11に延びて第2方向D22に並ぶ複数の第1帯状領域52の両側辺に一対の第1辺44を一致させて、それぞれの第1帯状領域52で隣同士の開孔部42の間隔Iがそれぞれの開孔部42の第1方向D11の幅Wと等しくなるように配列される。複数の開孔部42は、第2方向D22に延びて第1方向D11に並ぶ複数の第2帯状領域56の両側辺に一対の第2辺46を一致させて、それぞれの第2帯状領域56で隣同士の開孔部42の間隔Iがそれぞれの開孔部42の第2方向D22の長さLの2倍になるように配列される。第2方向D22に隣同士の一対の第1帯状領域52の間には、開孔部42の第2方向Dの長さLの0.5倍の幅Wを有して第1方向D11の長さを有するリブ部54が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法で、マスク蒸着法によって発光層を形成することが知られている(特許文献1)。マスク蒸着法では、1色ごとに蒸着を行い、3色の発光層を形成するのに3回の蒸着を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−47560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高精細化のために発光層を微小に形成することが要求されている。発光層の幅を狭くするために蒸着マスクの開孔部の幅を狭くすると、これに対応して開孔部と開孔部の間のリブの幅が狭くなり、蒸着マスクの強度が弱くなる。一方、開孔部の幅を狭くしつつ、リブの幅を広くすると、1色の発光層を一度に形成することができず、3色の蒸着を行うのに4回又はそれ以上の回数の蒸着プロセスが必要になる。
【0005】
そこで、発明者は、開孔部の幅を大きくして、蒸着回数を増やすことなく微小な発光層を形成する方法を開発したところ、これを実現するための蒸着マスクは歪みが生じやすいことが分かった。蒸着を行うときには蒸着マスクに対してXY方向にテンションを加えるが、開孔部間のリブがXY方向で強度に大きな差があるときに蒸着マスクに歪みが生じる。
【0006】
本発明は、歪みが生じにくい蒸着マスク及びこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る蒸着マスクは、それぞれが同じ形状で相互に直交する第1方向及び第2方向に配列された複数の開孔部が形成された基材を有し、前記複数の開孔部は、それぞれ、前記第1方向に延びる対向する一対の第1辺と、前記第2方向に延びる対向する一対の第2辺と、を含み、前記複数の開孔部は、前記第1方向に延びて前記第2方向に並ぶ複数の第1帯状領域の両側辺に前記一対の第1辺を一致させて、それぞれの前記第1帯状領域で隣同士の前記開孔部の間隔がそれぞれの前記開孔部の前記第1方向の幅と等しくなるように配列され、前記複数の開孔部は、前記第2方向に延びて前記第1方向に並ぶ複数の第2帯状領域の両側辺に前記一対の第2辺を一致させて、それぞれの前記第2帯状領域で隣同士の前記開孔部の間隔がそれぞれの前記開孔部の前記第2方向の長さの2倍になるように配列され、前記複数の第2帯状領域は、前記第1方向に間隔をあけずに隣接し、前記第1方向に隣同士の一対の前記第2帯状領域に配列された前記開孔部の配列パターンは、それぞれの前記開孔部の前記第2方向の前記長さの1.5倍の長さを以て、前記第2方向にずれており、前記第2方向に隣同士の一対の前記第1帯状領域の間には、前記開孔部の前記第2方向の前記長さの0.5倍の幅を有して前記第1方向の長さを有するリブ部が形成されていることを特徴とする。本発明によれば、間隔をあけずに隣接する複数の第2帯状領域のそれぞれに開孔部が形成されているので、第2方向には一直線に延びるリブ部が形成されない。したがって、蒸着マスクに対して、第2方向にテンションを加えても、第2方向には力が伝わらないようになっているため、開孔部と開孔部の間では、第2方向に応力が生じない。したがって、第1方向及び第2方向の両方に交差する斜めの応力が生じないので、蒸着マスクの歪みを防止することができる。
【0008】
(2)(1)に記載された蒸着マスクにおいて、前記基材は、複数の作業領域と、前記複数の作業領域を囲むとともに隣同士の前記作業領域を連結する枠部と、を含み、前記枠部は、前記第1方向及び前記第2方向に延び、それぞれの前記作業領域に、前記複数の開孔部が形成されていることを特徴としてもよい。
【0009】
(3)本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、発光色が第1色、第2色及び第3色の3色それぞれの色の複数の発光層を、蒸着マスクを使用した蒸着によって形成する工程を含み、前記蒸着マスクは、それぞれが同じ形状で相互に直交する第1方向及び第2方向に配列された複数の開孔部が形成された基材を有し、前記複数の開孔部は、それぞれ、前記第1方向に延びる対向する一対の第1辺と、前記第2方向に延びる対向する一対の第2辺と、を含み、前記複数の開孔部は、前記第1方向に延びて前記第2方向に並ぶ複数の第1帯状領域の両側辺に前記一対の第1辺を一致させて、それぞれの前記第1帯状領域で隣同士の前記開孔部の間隔がそれぞれの前記開孔部の前記第1方向の幅と等しくなるように配列され、前記複数の開孔部は、前記第2方向に延びて前記第1方向に並ぶ複数の第2帯状領域の両側辺に前記一対の第2辺を一致させて、それぞれの前記第2帯状領域で隣同士の前記開孔部の間隔がそれぞれの前記開孔部の前記第2方向の長さの2倍になるように配列され、前記複数の第2帯状領域は、前記第1方向に間隔をあけずに隣接し、前記第1方向に隣同士の一対の前記第2帯状領域に配列された前記開孔部の配列パターンは、それぞれの前記開孔部の前記第2方向の前記長さの1.5倍の長さを以て、前記第2方向にずれており、前記第2方向に隣同士の一対の前記第1帯状領域の間には、前記開孔部の前記第2方向の前記長さの0.5倍の幅を有して前記第1方向の長さを有するリブ部が形成されており、前記蒸着は、前記蒸着マスクにテンションを加えて行い、前記テンションは、前記第1方向の成分が最も大きくなるように加えることを特徴とする。本発明によれば、間隔をあけずに隣接する複数の第2帯状領域のそれぞれに開孔部が形成されているので、第2方向には一直線に延びるリブ部が形成されない。したがって、蒸着マスクに対して、第2方向にテンションを加えても、第2方向には力が伝わらないようになっているため、開孔部と開孔部の間では、第2方向に応力が生じない。したがって、第1方向及び第2方向の両方に交差する斜めの応力が生じないので、蒸着マスクの歪みを防止することができる。
【0010】
(4)(3)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、それぞれの前記発光層は、電界によるエネルギーによってそれぞれ発光する複数のサブピクセルを構成するように形成され、前記工程は、第1色の前記発光層を形成する第1工程と、第2色の前記発光層を形成する第2工程と、第3色の前記発光層を形成する第3工程と、を含み、それぞれの前記開孔部の前記第2方向の前記長さは3つの前記サブピクセルを形成するための長さであり、それぞれの前記第2帯状領域で隣同士の前記開孔部の間の部分は6つの前記サブピクセルを形成するための領域を遮蔽する遮蔽部であり、前記第1工程後に前記第2工程を行い、前記第2工程では、前記第1工程で配置された前記蒸着マスクを、前記第1工程で配置された前記複数の開孔部の位置に隣接して前記複数の開孔部が位置するように、前記第2方向に移動させて前記蒸着を行い、前記第2工程後に前記第3工程を行い、前記第3工程では、前記第2工程で配置された前記蒸着マスクを、前記第1工程で配置された前記複数の開孔部の位置と前記第2工程で配置された前記複数の開孔部の位置の間に隣接して前記複数の開孔部が位置するように、さらに前記第2方向に移動して前記蒸着を行うことを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る方法によって製造された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のII-II線断面の一部を示す図である。
【図3】図2に示す発光層の配列を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置のサブピクセルの配列を説明する図である。
【図5】本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法で使用する蒸着マスクを示す図である。
【図6】複数の開孔部の配列を説明する図である。
【図7】複数の開孔部の配列を説明する図である。
【図8】図6に示す開孔部のVIII-VIII線断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る方法によって製造された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の概要を示す斜視図である。図2は、図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のII-II線断面の一部を示す図である。
【0014】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板10を有する。ボトムエミッション型であれば、基板10はガラスなどの光透過性を有する材料からなるが、トップエミッション型であれば、基板10の光透過性の有無は問わない。
【0015】
図2に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置はトップエミッション型であり、基板10には、金属などからなる複数の反射層12が形成されている。反射層12にて光が反射されて上面に表示がなされる。ボトムエミッション型であれば反射層12は不要である。
【0016】
基板10には、複数の画素電極14(下部電極)が形成されている。画素電極14は、光透過の必要性にかかわらず、ITO (Indium Tin Oxide)などの光透過性材料から構成されることが多い。なお、基板10には、複数の画素電極14のスイッチとなる複数の薄膜トランジスタ(図示せず)が形成され、複数の薄膜トランジスタ(図示せず)を駆動するための駆動回路(図示せず)が形成され、薄膜トランジスタ(図示せず)、画素電極14及び駆動回路(図示せず)に電気的に接続された配線(図示せず)が形成されている。
【0017】
基板10には、バンク16が形成されている。バンク16は、無機材料から形成してもよいし、有機材料から形成してもよいし、無機材料層及びその上に設けられた有機材料層から構成してもよい。バンク16は、それぞれの画素電極14の少なくとも一部を囲む。バンク16は、それぞれの画素電極14の端部の上に載っている。すなわち、画素電極14の一部(中央部)がバンク16から露出している。
【0018】
画素電極14の上方には、例えば高分子有機材料からなる発光層18が形成されている。発光層18は、電界又は電流によるエネルギーを受けて発光する。隣同士の発光層18は、その発光色が異なる。
【0019】
画素電極14と発光層18の間にはホール輸送層20が設けられている。ホール輸送層20は、複数の画素電極14を連続的に覆い、バンク16を覆うように形成されている。また、発光層18の色によっては、膜厚調整用に、ホール輸送層20に重ねて第2のホール輸送層22を設けてある。
【0020】
複数列の発光層18の上には電子輸送層24が形成されている。電子輸送層24の上には電子注入層26が形成されている。発光層18の上方には対向電極28(上部電極)が形成されている。対向電極28は、Indium Zinc Oxideなどの光透過性材料から構成される。
【0021】
対向電極28上には補助配線30が形成されている。補助配線30は、バンク16の上方に形成されており、表示を妨げないようになっている。
【0022】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、封止部材32を有する。封止部材32は、例えばガラスからなる。封止部材32は、複数列の発光層18が配列された領域(表示領域)を封止するためのもので、表示領域の外側の周辺領域に取り付けられる。取り付けのシール材34(図1参照)には接着剤を使用してもよい。なお、封止部材32の封止空間側の面には図示しない乾燥剤が取り付けられている。
【0023】
図3は、図2に示す発光層の配列を説明する図である。有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、発光色が第1色、第2色及び第3色の3色(R(赤),G(緑),B(青))の色からなる複数の発光層18を含む。
【0024】
n列目に並ぶ複数色の発光層18と、n+1列目に並ぶ複数色の発光層18とは、列に沿った方向に1つの発光層18の幅の1/2ずれて配置されている。
【0025】
各列において、同じ色の発光層18が隣接しないよう配列されている。つまり、第1色の発光層18の両隣は、第2色及び第3色の発光層18である。また、n列目とn+1列目においても、同じ色の発光層18が隣接しないように配列されている。図3では、第1色の発光層18の斜め下隣には第2色の発光層18が配置され、斜め上隣には第3色の発光層18が形成されている。n列目とn+2列目の発光層18の配列順序は同じであり、同様に、n+1列目とn+3列目の発光層18の配列順序も同じである。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置のサブピクセルの配列を説明する図である。
【0027】
それぞれの発光層18は、電界又は電流によるエネルギーによってそれぞれ発光する3つのサブピクセルSPを含む。図4では、発光層18の、隣同士のサブピクセルSPを接続する部分を省略してあり、各サブピクセルSPが分離されているように表されているが、実際には、これらが一体化するように接続された構成になっている。
【0028】
個々のサブピクセルSPは、発光層18の、電界がかけられて発光する部分であって、例えばバンクによって区画された領域である。第1色、第2色及び第3色(R(赤),G(緑),B(青))の3つのサブピクセルSPがデルタ配列の1つのピクセルPXを構成している。
【0029】
n列目及びn+1列目の発光層18には、三角形の各頂点に1つのサブピクセルSPが配置されてなる正デルタ配列の正ピクセルRPXと、逆三角形の各頂点に1つのサブピクセルSPが配置されてなる逆デルタ配列の逆ピクセルIPXと、が交互に配列されている。つまり、列方向(図3で縦方向)において、正ピクセルRPXの隣に逆ピクセルIPXが配置されている。一方、行方向(図3で横方向)には、正ピクセルRPXの隣には正ピクセルRPXが配置され、逆ピクセルIPXの隣には逆ピクセルIPXが配置されている。
【0030】
正デルタ配列の第1正ピクセルRPX、第2正ピクセルRPX及び第3正ピクセルRPXと、逆デルタ配列の第1逆ピクセルIPX、第2逆ピクセルIPX及び第3逆ピクセルIPXと、からなる6つのピクセルPXがピクセルグループPXGを構成する。ピクセルグループPXGが繰り返して並んでいる。
【0031】
1つのピクセルグループPXGにおいて、正ピクセルRPXでの3色のサブピクセルSPの配列順序が異なっている。第1正ピクセルRPXで第1正頂点RVに位置した第1色は、第2正ピクセルRPXで第1正頂点RVの左回り及び右回りのうち第1方向D回りに隣の第2正頂点RVに位置し、第3正ピクセルRPXで第2正頂点RVの第1方向D回りに隣の第3正頂点RVに位置している。第1正ピクセルRPXで第2正頂点RVに位置した第2色は、第2正ピクセルRPXで第3正頂点RVに位置し、第3正ピクセルRPXで第1正頂点RVに位置している。第1正ピクセルRPXで第3正頂点RVに位置した第3色は、第2正ピクセルRPXで第1正頂点RVに位置し、第3正ピクセルRPXで第2正頂点RVに位置している。
【0032】
1つのピクセルグループPXGにおいて、逆ピクセルIPXでの3色のサブピクセルSPの配列順序が異なっている。第1逆ピクセルIPXで第1逆頂点IVに位置した第1色は、第2逆ピクセルIPXで第1逆頂点IVの第1方向Dとは反対の第2方向D回りに隣の第2逆頂点IVに位置し、第3逆ピクセルIPXで第2逆頂点IVの第2方向D回りに隣の第3逆頂点IVに位置している。第1逆ピクセルIPXで第2逆頂点IVに位置した第2色は、第2逆ピクセルIPXで第3逆頂点IVに位置し、第3逆ピクセルIPXで第1逆頂点IVに位置している。第1逆ピクセルIPXで第3逆頂点IVに位置した第3色は、第2逆ピクセルIPXで第1逆頂点IVに位置し、第3逆ピクセルIPXで第2逆頂点IVに位置する。
【0033】
1つのピクセルグループPXGにおいて、隣同士の正ピクセルRPX及び逆ピクセルIPXの、隣り合うサブピクセルSPの色が同じである。同じ色の3つのサブピクセルSPが列方向に並んでいる。
【0034】
本実施の形態によれば、1つの発光層18が3つのサブピクセルSPが一体化された構成であるから、これを形成する蒸着マスクの開孔部42の幅が大きくなるため、開孔部42間の部分の幅を広くすることができる。逆に言うと、開孔部42の狭い高精細の蒸着マスクであっても、強度上必要な幅を確保することができる。したがって、蒸着回数を増やすことなく、蒸着マスクの強度も低下させずに、マスク蒸着法によって発光層18を形成することができる。
【0035】
図5は、本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法で使用する蒸着マスクを示す図である。
【0036】
蒸着マスクは、基材36を有する。基材36は、複数の作業領域38を含む。基材36は、複数の作業領域38を囲むとともに隣同士の作業領域38を連結する枠部40を含む。枠部40は、第1方向D11及び第2方向D22に延びている。それぞれの作業領域38に、複数の開孔部42が形成されている。それぞれの開孔部42は、マスク蒸着法によって発光層18を形成するためのものである。
【0037】
図6及び図7は、複数の開孔部42の配列を説明する図である。図8は、図6に示す開孔部42のVIII-VIII線断面図である。基材36には、それぞれが同じ形状で相互に直交する第1方向D11及び第2方向D22に配列された複数の開孔部42が形成されている。複数の開孔部42は、それぞれ、第1方向D11に延びる対向する一対の第1辺44と、第2方向D22に延びる対向する一対の第2辺46と、を含む。
【0038】
図8に示すように、開孔部42は、基材36の一方の面に形成される第1開孔端48と、他方の面に形成される第2開孔端50と、を含み、第1開孔端48及び第2開孔端50の大きさが異なる。また、開孔部42の内壁面は、基材36の表面に対して直角になっておらず、凹曲面を描いている。この形状の開孔部42は、ウエットエッチングによって形成することができる。第1開孔端48からの曲面と、第2開孔端50からの曲面との接続部において、開孔部42の幅が定義される。
【0039】
図6に示すように、複数の開孔部42は、第1方向D11に延びて第2方向D22に並ぶ複数の第1帯状領域52(図6でハッチングした部分)の両側辺に一対の第1辺44が一致するように配列されている。また、複数の開孔部42は、それぞれの第1帯状領域52で隣同士の開孔部42の間隔Iがそれぞれの開孔部42の第1方向D11の幅Wと等しくなるように配列されている。
【0040】
第2方向D22に隣同士の一対の第1帯状領域52の間には、開孔部42の第2方向D22の長さLの0.5倍の幅Wを有して第1方向D11の長さを有するリブ部54がある。
【0041】
図7に示すように、複数の開孔部42は、第2方向D22に延びて第1方向D11に並ぶ複数の第2帯状領域56(図7でハッチングした部分)の両側辺に一対の第2辺46が一致するように配列されている。複数の第2帯状領域56は、第1方向D11に間隔をあけずに隣接している。また、複数の開孔部42は、それぞれの第2帯状領域56で隣同士の開孔部42の間隔Iがそれぞれの開孔部42の第2方向D22の長さLの2倍になるように配列されている。
【0042】
第1方向D11に隣同士の一対の第2帯状領域56に配列された開孔部42の配列パターンは、それぞれの開孔部42の第2方向D22の長さLの1.5倍の長さを以て、第2方向D22にずれている。
【0043】
図9〜図11は、本発明の実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明する図である。
【0044】
本実施の形態では、上述した蒸着マスクを使用して、マスク蒸着法によって、複数の発光層18を形成する。それぞれの発光層18は、電界によるエネルギーによってそれぞれ発光する複数のサブピクセルSPを含むように形成する。複数の発光層18は、発光色が第1色、第2色及び第3色の3色からなる。それぞれの色の複数の発光層18を、蒸着マスクを使用した蒸着によって形成する。蒸着は、蒸着マスクにテンションを加えて行う。テンションは、第1方向D11の成分が最も大きくなるように加える(図6及び図7参照)。例えば、第1方向D11の成分が、第2方向D22の成分の10倍程度であってもよい。
【0045】
図9に示すように、第1色の発光層18を形成する第1工程を行う。それぞれの開孔部42の第2方向D22の長さL(図6及び図7参照)は3つのサブピクセルSP(図4参照)を形成するための長さである。それぞれの第2帯状領域56で隣同士の開孔部42の間の部分は6つのサブピクセルSPを形成するための領域を遮蔽する遮蔽部である。
【0046】
第1色の発光層18を形成する第1工程後に、図10に示すように、第2色の発光層18を形成する第2工程を行う。第2工程では、第1工程で配置された蒸着マスクを、第1工程で配置された複数の開孔部42の位置に隣接して複数の開孔部42が位置するように、第2方向D22に移動させて蒸着を行う。
【0047】
第2色の発光層18を形成する第2工程後に、図11に示すように、第3色の発光層18を形成する第3工程を行う。第3工程では、第2工程で配置された蒸着マスクを、第1工程で配置された複数の開孔部42の位置と第2工程で配置された複数の開孔部42の位置の間に隣接して複数の開孔部42が位置するように、さらに第2方向D22に移動して蒸着を行う。
【0048】
本実施の形態によれば、間隔をあけずに隣接する複数の第2帯状領域56のそれぞれに開孔部42が形成されているので、第2方向D22には一直線に延びるリブ部が形成されない(図6及び図7参照)。したがって、蒸着マスクに対して、第2方向D22にテンションを加えても、第2方向D22には力が伝わらないようになっているため、開孔部42と開孔部42の間では、第2方向D22に応力が生じない。したがって、第1方向D11及び第2方向D22の両方に交差する斜めの応力が生じないので、蒸着マスクの歪みを防止することができる。
【0049】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施の形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 基板、12 反射層、14 画素電極、16 バンク、18 発光層、20 ホール輸送層、24 電子輸送層、26 電子注入層、28 対向電極、30 補助配線、32 封止部材、34 シール材、36 基材、38 作業領域、40 枠部、42 開孔部、44 第1辺、46 第2辺、48 第1開孔端、50 第2開孔端、52 第1帯状領域、54 リブ部、56 第2帯状領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが同じ形状で相互に直交する第1方向及び第2方向に配列された複数の開孔部が形成された基材を有し、
前記複数の開孔部は、それぞれ、前記第1方向に延びる対向する一対の第1辺と、前記第2方向に延びる対向する一対の第2辺と、を含み、
前記複数の開孔部は、前記第1方向に延びて前記第2方向に並ぶ複数の第1帯状領域の両側辺に前記一対の第1辺を一致させて、それぞれの前記第1帯状領域で隣同士の前記開孔部の間隔がそれぞれの前記開孔部の前記第1方向の幅と等しくなるように配列され、
前記複数の開孔部は、前記第2方向に延びて前記第1方向に並ぶ複数の第2帯状領域の両側辺に前記一対の第2辺を一致させて、それぞれの前記第2帯状領域で隣同士の前記開孔部の間隔がそれぞれの前記開孔部の前記第2方向の長さの2倍になるように配列され、
前記複数の第2帯状領域は、前記第1方向に間隔をあけずに隣接し、
前記第1方向に隣同士の一対の前記第2帯状領域に配列された前記開孔部の配列パターンは、それぞれの前記開孔部の前記第2方向の前記長さの1.5倍の長さを以て、前記第2方向にずれており、
前記第2方向に隣同士の一対の前記第1帯状領域の間には、前記開孔部の前記第2方向の前記長さの0.5倍の幅を有して前記第1方向の長さを有するリブ部が形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
請求項1に記載された蒸着マスクにおいて、
前記基材は、複数の作業領域と、前記複数の作業領域を囲むとともに隣同士の前記作業領域を連結する枠部と、を含み、
前記枠部は、前記第1方向及び前記第2方向に延び、
それぞれの前記作業領域に、前記複数の開孔部が形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【請求項3】
発光色が第1色、第2色及び第3色の3色それぞれの色の複数の発光層を、蒸着マスクを使用した蒸着によって形成する工程を含み、
前記蒸着マスクは、
それぞれが同じ形状で相互に直交する第1方向及び第2方向に配列された複数の開孔部が形成された基材を有し、
前記複数の開孔部は、それぞれ、前記第1方向に延びる対向する一対の第1辺と、前記第2方向に延びる対向する一対の第2辺と、を含み、
前記複数の開孔部は、前記第1方向に延びて前記第2方向に並ぶ複数の第1帯状領域の両側辺に前記一対の第1辺を一致させて、それぞれの前記第1帯状領域で隣同士の前記開孔部の間隔がそれぞれの前記開孔部の前記第1方向の幅と等しくなるように配列され、
前記複数の開孔部は、前記第2方向に延びて前記第1方向に並ぶ複数の第2帯状領域の両側辺に前記一対の第2辺を一致させて、それぞれの前記第2帯状領域で隣同士の前記開孔部の間隔がそれぞれの前記開孔部の前記第2方向の長さの2倍になるように配列され、
前記複数の第2帯状領域は、前記第1方向に間隔をあけずに隣接し、
前記第1方向に隣同士の一対の前記第2帯状領域に配列された前記開孔部の配列パターンは、それぞれの前記開孔部の前記第2方向の前記長さの1.5倍の長さを以て、前記第2方向にずれており、
前記第2方向に隣同士の一対の前記第1帯状領域の間には、前記開孔部の前記第2方向の前記長さの0.5倍の幅を有して前記第1方向の長さを有するリブ部が形成されており、
前記蒸着は、前記蒸着マスクにテンションを加えて行い、
前記テンションは、前記第1方向の成分が最も大きくなるように加えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
それぞれの前記発光層は、電界によるエネルギーによってそれぞれ発光する複数のサブピクセルを構成するように形成され、
前記工程は、第1色の前記発光層を形成する第1工程と、第2色の前記発光層を形成する第2工程と、第3色の前記発光層を形成する第3工程と、を含み、
それぞれの前記開孔部の前記第2方向の前記長さは3つの前記サブピクセルを形成するための長さであり、それぞれの前記第2帯状領域で隣同士の前記開孔部の間の部分は6つの前記サブピクセルを形成するための領域を遮蔽する遮蔽部であり、
前記第1工程後に前記第2工程を行い、
前記第2工程では、前記第1工程で配置された前記蒸着マスクを、前記第1工程で配置された前記複数の開孔部の位置に隣接して前記複数の開孔部が位置するように、前記第2方向に移動させて前記蒸着を行い、
前記第2工程後に前記第3工程を行い、
前記第3工程では、前記第2工程で配置された前記蒸着マスクを、前記第1工程で配置された前記複数の開孔部の位置と前記第2工程で配置された前記複数の開孔部の位置の間に隣接して前記複数の開孔部が位置するように、さらに前記第2方向に移動して前記蒸着を行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−58066(P2011−58066A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210560(P2009−210560)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】