説明

蓄電システム

【課題】夏季及び冬季のピーク電力の削減、ソーラー発電の弱点(たとえば、夜間は発電できない)の補完及び計画停電等の停電対策の総てに対応できるようにした蓄電システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る蓄電システムは、リサイクルバッテリーと、該バッテリーに電力切換え手段を介して充電し、蓄電された電力の放電が設定された放電率になると停止し、その放電停止に連動して満充電にするコントローラーと、を備えたことを特徴とし、放電に応じた適切な充電を行い、これを非常時用電源として各種の電気器具に利用できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー(蓄電池)に、放電センサーにより積算した放電量に応じた電力による適切な充電を行い、常に、満充電にし、その蓄電された電力を電源供給できるようにした蓄電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種の電気器具に電力を供給する電源設備としてバッテリー(蓄電池)がある。バッテリーは、常に、満杯(満充電)にしておき、夏季及び冬季のピーク電力時に必要な時間継続して放電を可能としておくことが必要であった。このための電源設備として、たとえば、特開平09−182316号公報に記載があった。これは安価な深夜電力を充電(蓄電)し、その電力を昼間の電力消費のピーク時に放電しようとするものであった。
【特許文献1】特開平09−182316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記技術は、夏季及び冬季のピーク電力削減のためのものであったが、ソーラー発電や計画停電等の停電対策に対応するものではなかった。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑み創出したもので、その目的とするところは、夏季及び冬季のピーク電力の削減はもとより、ソーラー発電の弱点(たとえば、夜間は発電できない)の補完及び計画停電等の停電対策の総てに対応できるようにしたこと、また、放電時間を延ばすために放電しながら充電を行うこと、さらに、寿命を延ばすように充電パターンを変えて充電できるようにした蓄電システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の蓄電システムは、バッテリーと、該バッテリーに電力切換手段を介して切換えた電力で充電し、蓄電された電力を電力消費のピーク時又は停電時もしくは希望時刻に放電し、該放電が設定された放電率になると放電停止手段が働き、その放電停止に連動して満充電になるように作動するコントローラーと、を備えたことを特徴とし、放電に応じた適切な電力による充電を行い、これを電源として各種の電気器具に利用できるように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載の蓄電システムは、前記電力切換手段の切換えが、前記コントローラーに付属する放電センサーの積算した放電電力値、その積算値と前記バッテリーの放電率及び充電開始時間より、その時点での最適な充電電力を選ぶことを特徴とし、深夜電力か、昼間電力か、夜間電力か、ソーラー発電によるソーラー電力かを選択できるように構成した。
【0007】
さらに、請求項3に記載の蓄電システムは、前記電力切換手段を介して切換えた電力が、放電電力と充電電力のコストと電力の供給時間により急速充電、トリクル充電などの充電方法を自動選択して充電することを特徴とし、バッテリー(蓄電池)の寿命を延ばし、電力コストの削減及びCO2(二酸化炭素)の削減などに寄与できるように構成した。
【0008】
さらにまた、請求項4に記載の蓄電システムは、前記放電停止手段が、放電率60%で作動することを特徴とし、バッテリーの寿命を縮めないように構成した。
【0009】
さらにまた、請求項5に記載の蓄電システムは、前記満充電が、ソーラー発電により得たソーラー電力の余剰電力を利用することを特徴とし、バッテリーの特性に負荷や影響を与えないように構成した。
【0010】
さらにまた、請求項6に記載の蓄電システムは、前記バッテリーが、複数個のセル内にある補充液の液面を感知するスイッチの作動により電動ポンプによりくみ出し、前記各セルに補充液を補充できる補充液タンクを保有していることを特徴とし、メンテナンスを容易にするように構成した。
【0011】
さらにまた、請求項7に記載の蓄電システムは、前記バッテリーが、溶媒和イオンとカーボンを含む液の補充により再生できる鉛バッテリーであることを特徴とし、よりコストダウンが実現できるように構成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バッテリーへの適切な充電、たとえば安価な深夜電力、やむを得ないときの昼間電力、夜間電力、ソーラー電力を自動的に選んで適時充電するとともに、非常時用電源としていつでも広く利用でき、しかも、放電が設定された放電率になると停止し、その放電停止に連動して常にバッテリーを満充電にできるという優れた効果を奏するものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記電力切換手段が充電する電力を切換え実行する最適な電力として、安価な深夜電力、緊急の場合の昼間電力、夜間電力、ソーラー発電によるソーラー電力を自動選択するという優れた効果を奏するものである。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記電力切換手段を介して切換えた電力が、放電電力と充電電力のコストと電力の供給時間により急速充電、トリクル充電などの充電方法を自動選択して充電することにより、バッテリー(蓄電池)の寿命を延ばし、放電時の電力コストの削減及びCO2(二酸化炭素)の削減などに寄与できるという優れた効果を奏するものである。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、設定した放電率60%として放電を停止して満充電にする工程に入るようにすることにより、バッテリーの寿命を延ばすことができるという優れた効果を奏するものである。
【0016】
さらにまた、請求項5に記載の発明によれば、満充電がソーラー発電による余剰電力である微弱な電流にてバッテリーを常に満充電状態にすることができ、バッテリーの特性に負荷や影響を与えず、長寿命化できるという優れた効果を奏するものである。
【0017】
さらにまた、請求項6に記載の発明によれば、前記バッテリーが、複数個のセル内にある補充液の液面を感知するスイッチの作動により電動ボンプによりくみ出し、前記各セルに補充液を補充できる補充液タンクを保有していることによりメンテナンスが容易になるという優れた効果を奏するものである。
【0018】
さらにまた、請求項7に記載の発明によれば、前記リサイクルバッテリーが、溶媒和イオンとカーボンを含む液の補充(10年で5回程度=2年に1回程度)により再生できる鉛バッテリーであることにより、コストダウンを実現できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の最良の実施形態を添付した図面に基づいて説明する。図1は本願発明に用いる蓄電システムの概要図、図2はコントローラー内及びその付属する構成を示す略示的説明図、図3は本発明による負荷曲線と従来の負荷曲線の比較したグラフ図、図4はある日の電力消費のピーク時を示すグラフ図である。
【0020】
本願発明に用いる蓄電システム1は、図1に示す如く、バッテリー(蓄電池)2と、コントローラー3とからなる。コントローラー3は、電力切換手段4を備える。該電力切換手段4により切換える電力は、前記コントローラー3に付属する放電センサー31の積算した放電電力値、その積算値と前記バッテリーの放電率及び充電開始時間より、その時点での最適な充電電力、例えば、電灯線5から得る深夜電力51又は昼間電力(夜間電力)52、ソーラー発電設備6より得るソーラー電力62が自動的に選ばれる。急速充電、トリクル充電などの充電方式は、放電量と充電時間により決まる。
【0021】
ここにトリクル充電とは、バッテリーの特性に負荷や影響を与えない程度の微弱な電流によって充電を行うことをいう。急速充電に比べると充電に時間を要するが、満充電状態になってから、充電電流を流し続けてもバッテリーに負荷を与えないという利点がある。自然放電が大きい特性のあるバッテリーを常に満充電状態に保つことが可能になると同時に、過充電によって電池寿命を縮めるといった性質も緩和できる。
【0022】
前記コントローラー3は、電気代の安い深夜電力(又は昼間電力・夜間電力)で充電し、放電手段7によりLED照明等の屋内用電気機器8、屋外照明用電気機器8′及びその他の電気機器8″にインバーター9を通してバッテリー2から放電する。これらの電気器具8、8′、8″は、電力消費のピーク時や計画停電等の停電時により電灯線5からの電力がカットされることがあっても、バッテリー2から継続的に放電される。
【0023】
前記昼間電力による充電は、深夜電力による充電コストに比し高いが、図3の如く、安い時間帯での使用量と高い時間帯での使用量は、従来の負荷直線(破線)に比して低位にて均等化することとなる。
【0024】
前記電力消費のピーク時とは、過去のデータの分析からピーク日時を算出して入力器10に入力する。たとえば、図4は、平成19年8月19日の電力消費のピーク時を示すグラフ図であるが、図中、ピーク時の時間帯は13時〜14時になっている。しかして、平成18年同月同日、平成17年同月同日・・・の如く、過去のデータを分析した結果、たとえば、平成20年8月19日の電力消費のピークを13時〜16時に確定して入力器10に入力する。従って、その日時に電灯線5からの電力供給を受けないようにし、バッテリー2からの放電のみとする。これによりその日の電力消費の最大負荷が分散することとなる。
【0025】
前記コントローラー3は、バッテリー2の放電率が60%になったときに放電停止させる放電停止手段11及び充電手段(コンバーター)12を備える。ここで放電停止手段11の作動を、バッテリー2の放電率を60%にしているのは、バッテリーの寿命との関係であり、60%には限らない。前記放電停止手段11が放電停止すると、これに連動して充電手段12が作動し、前記バッテリー2を満充電にする。
【0026】
前記充電手段12は、ソーラー発電により得たソーラー電力の余剰電力を利用してトリクル充電により行う。すなわち、バッテリー2がDC48V280AHで放電していると仮定し、その寿命を延ばすため、放電率を60%に制御すると、安価な深夜電力のみではバッテリー2を満充電にすることは困難であるからである。このソーラー発電により得たソーラー電力の余剰電力を満充電に使用することは、バッテリーの寿命を延ばすことに寄与する。また、バッテリー2を常に満充電にすることは、計画停電等の停電に対しても対応ができる点でも有効である。
【0027】
前記バッテリー2は、複数個のセル21、21・・・を有し、各セルには補充液が常に必要量だけ入っている。なお、図1中の細一点鎖線楕円Aにはセル21を拡大して示している。しかして、各セル21、21・・・には、補充液の液面の位置を感知するための液面センサー13が設けられ、その液面が下がると、該センサー13が入り、電動ポンプ14を作動させてバッテリー2に併設している補充液タンク15より補充液16がくみ出され、各セル中に順次補充できるようになっている。このバッテリー2の各セル21、21・・・に対する補充液の管理は重要であるが、補充液タンク15の併設によりバッテリー2のメンテナンスがより容易になり、コストの低減化に寄与できる。
【0028】
前記バッテリー2は、溶媒和イオンとカーボンを含む液17の補充と充放電により再生できる鉛バッテリーである。鉛バッテリーは、硫酸を電解液、過酸化鉛を陽極活物質、鉛を陰極活物質に用い、陽極板と陰極板とをセパレータを中間において対置させ、電槽に収めているもので、放電時に、極板にPbSO4(硫酸鉛)と水を生成する。この「PbSO4」は、充放電を繰り返すことにより、徐々に極板に結晶化して付着する。PbSO4の性質としてコンダクタンスを低下させ起電力を低下させる。充電時はPbSO4を溶かし、極板に付着している硫酸は、電解液に戻り、比重を元に戻すが、極板に付着したPbSO4の結晶化が進むと、充電できなくなる(バッテリーの寿命となる)。すなわち、前記溶媒和イオンとカーボンを含む液17を収容したシリンジ18の口端19を、たとえば、10年で5回(2年に1回)程度のセル21に差し込んで補充する。これにより、極板に付着したPbSO4の結晶を溶かして鉛バッテリーを再生できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、バッテリー(蓄電池)に、放電に応じた適切な充電を行い、常に、バッテリーを充電にし、その蓄電された電力を電源供給できるようにした蓄電システムであって、夏季及び冬季のピーク電力の削減はもとより、ソーラー発電の弱点(たとえば、夜間は発電できない)の補完及び計画停電等の停電対策の総てに対応できるようにし、産業上の利用可能性は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本願発明に用いる蓄電システムの概要図である。
【図2】コントローラー内の構成を示す略示的説明図である。
【図3】本発明による負荷曲線と従来の負荷曲線の比較したグラフ図である。
【図4】ある日の電力消費のピーク時を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0031】
1 蓄電システム
2 バッテリー(蓄電池)
3 コントローラー
31 放電センサー
4 電力切換え手段
5 電灯線
6 ソーラー発電設備
7 放電手段
8 屋内照明用電気機器
8′ 屋外照明用電気機器
8″ その他の電気機器
9 インバーター
10 入力器
11 放電停止手段
12 充電手段
13 液面センサー
14 電動ポンプ
15 補充液タンク
16 補充液
17 溶媒和イオンとカーボンを含む液
18 シリンジ
19 口端
21 セル
51 昼間電力(夜間電力)
52 深夜電力
53 ソーラー電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーと、該バッテリーに電力切換手段を介して切換えた電力で充電し、蓄電された電力を電力消費のピーク時又は停電時もしくは希望時刻に放電し、該放電が設定された放電率になると放電停止手段が働き、その放電停止に連動して満充電になるように作動するコントローラーと、を備えたことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記電力切換手段の切換えが、前記コントローラーに付属する放電センサーの積算した放電電力値、その積算値と前記バッテリーの放電率及び充電開始時間より、その時点での最適な充電電力を選ぶことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記電力切換手段を介して切換えた電力が、放電電力と充電電力のコストと電力の供給時間により急速充電、トリクル充電などの充電方法を自動選択して充電することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記放電停止手段が、放電率60%で作動することを特徴とする請求項1〜3のうちの1に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記満充電が、ソーラー発電により得たソーラー電力の余剰電力を利用することを特徴とする請求項1〜4のうちの1に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記バッテリーが、複数個のセル内にある補充液の液面を感知するスイッチの作動により電動ポンプによりくみ出し、前記各セルに補充液を補充できる補充液タンクを保有していることを特徴とする請求項1〜5のうちの1に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記バッテリーが、溶媒和イオンとカーボンを含む液の補充により再生できる鉛バッテリーであることを特徴とする請求項1〜6のうちの1に記載の蓄電システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−74705(P2013−74705A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211648(P2011−211648)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(592044075)株式会社ハヤブサ技研 (4)
【Fターム(参考)】