説明

蓄電池運用制御装置及び蓄電池運用制御方法ならびにそのプログラム

【課題】余剰電力の外部給電系統への逆潮を低減し、また外部給電系統からの電力の供給を低減できる蓄電池運用制御装置を提供する。
【解決手段】電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される蓄電池の容量の時間変化に基づいて、蓄電池の容量の最大ピーク値を予測し、設定された蓄電池の容量の上限値と、蓄電池の容量の最大ピーク値との差分である上限側差分電力量を算出する。そして、時間変化における所定の初期時刻での蓄電池の容量の予測値を、少なくとも上限側差分電力量に基づく補正容量に基づいて補正した値である、初期時刻における必要蓄電容量を算出し、初期時刻において蓄電池の容量が必要蓄電容量となるよう蓄電池を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギーを用いて発電した電力を蓄積する蓄電池運用制御装置及び蓄電池運用制御方法ならびにそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電などの自然エネルギーを利用した発電電力によって住宅やオフィス、工場などの施設における消費電力を賄い、また、余剰分について蓄電池に電力を蓄積する技術が多く利用されている。ここで、このような自然エネルギーを利用した発電電力では、日中などの発電電力が消費電力を上回る状況においては蓄電池への電力の蓄積や、電力会社に対して売電を行い、起床後や帰宅後就寝前などの消費電量が発電電力を上回る状況においては蓄電池から放電された電力による消費や、電力会社の電力線から供給された電力による消費が行われている。そして、このような自然エネルギー発電装置と蓄電池を有する発電システムにおいて、省エネルギー性と経済性の両方を向上させることのできる技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−295680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の特許文献1の技術は、予測発電量と、予測負荷量に従って、太陽光発電装置からの発電量の余剰電力量が少なくなるように電力を消費する機器の稼働スケジュールを算出するとともに、夜間に蓄える電力量を算出し、機器の稼働制御と蓄電装置の充電量制御を行うことにより、自然エネルギーの利用量と安価な深夜電力の利用料のバランスをとることで、省エネルギー性と経済性の両方を向上させる技術である。
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の技術では、太陽光発電電力量または負荷電力量の変動が大きい場合に蓄電池に蓄積される電力容量がオーバフローまたは不足が発生する可能性がある。つまり、蓄電池が満充電の状態で太陽光発電電力量が負荷電力量よりも多い状態となると、蓄電池においてオーバフローした余剰電力を、電力会社の発電した電力の供給元である外部給電系統へ売電できない時間帯に逆潮させなければならない場合が生じる。また、蓄電池に蓄積されている電力量が少なく放電できない状態で太陽光発電電力量より負荷電力量が多い状態となると、単価の高い電力の外部給電系統からの供給を受ける必要となる場合が生じる。
従って、なるべく余剰電力を外部給電系統へ逆潮させず、また外部給電系統からの電力の供給を低減する技術が望まれている。
【0006】
また、上述の特許文献1の技術では、日中の時間を太陽光発電電力量が負荷電力量を上回るシフト時間帯とその前後の時間帯の3時間帯に分け、その情報を用いて機器の稼働制御や蓄電装置の充電量制御を行う技術であるが、曇りの日など3時間帯に分けることが困難な時においては、省エネルギー性と経済性の両方を向上させるという目的でそのシステムを運用することは困難であると考えられる。
【0007】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる蓄電池運用制御装置及び蓄電池運用制御方法ならびにそのプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、自然エネルギー発電電力または外部供給電力の蓄電池に対する充電を制御するとともに、前記蓄電池に蓄積される電力の電力負荷に対する放電を制御する蓄電池運用制御装置であって、前記電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、前記自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される前記蓄電池の容量の時間変化に基づいて、前記蓄電池の容量の最大ピーク値を予測するピーク値予測部と、設定された前記蓄電池の容量の上限値と、前記蓄電池の容量の最大ピーク値との差分である上限側差分電力量を算出する差分電力量算出部と、少なくとも前記上限側差分電力量に基づく補正容量に基づいて、前記時間変化における所定の初期時刻での前記蓄電池の容量の予測値を補正して、前記初期時刻における必要蓄電容量を算出する初期時刻必要蓄電容量算出部と、前記初期時刻において前記蓄電池の容量が前記必要蓄電容量となるよう制御する蓄電制御部と、を備えることを特徴とする蓄電池運用制御装置である。
【0009】
また本発明は、上述の蓄電池運用制御装置において、前記初期時刻において前記蓄電池の容量が前記必要蓄電容量となるよう制御する蓄電池制御開始時刻を、前記補正容量と、前記蓄電池の定格充電電力と、前記初期時刻とを用いて算出する蓄電池制御開始時刻算出部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述の蓄電池運用制御装置において、前記蓄電制御部は、前記初期時刻の前の時間帯における現在の蓄電池の容量が、前記必要蓄電容量より少ない場合には、前記制御において充電制御を行い、前記現在の蓄電池の容量が、前記必要蓄電容量より大きい場合には、前記制御において放電制御を行うことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上述の蓄電池運用制御装置において、前記差分電力量算出部は、さらに、前記電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、前記自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される前記蓄電池の容量の時間変化における前記蓄電池の容量の最小値と、設定された前記蓄電池の容量の下限値との差分である下限側差分電力量を算出し、前記初期時刻必要蓄電容量算出部は、前記外部供給系統から受ける電力量と、前記蓄電池に蓄積される電力の放電量との割合が所望の割合となる前記補正容量を算出するための、前記上限側差分電力量と、前記下限側差分電力量とによって表される評価関数に基づいて、前記補正容量を算出することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上述の蓄電池運用制御装置において、前記蓄電制御部は、前記補正容量と、前記蓄電池の定格充電電力と、前記初期時刻とによって算出できる前記蓄電池が前記必要蓄電容量となるまでの充電時間の整数n倍になった際に、前記必要蓄電容量に達するまでの電力量の整数n分の1まで充電することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上述の蓄電池運用制御装置において、前記蓄電制御部は、前記初期時刻の前の時間帯における現在の蓄電池の容量の状態から定格充電のみを行った場合に前記初期時刻において達する前記蓄電池の容量と、前記現在の蓄電池の容量の状態から負荷に対して電力を放電のみを行った場合に前記初期時刻において達する前記蓄電池の容量との中間値が、前記必要蓄電容量となるよう、前記蓄電池の充電または放電を制御することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上述の蓄電池運用制御装置において、前記初期時刻は、通常時間帯電力料金より単位時間当たりの電力料金の低い時間帯において、前記自然エネルギー発電電力が使用電力を上回る過程の発電電力=使用電力となると予想される時刻であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上述の蓄電池運用制御装置において、前記蓄電制御部は、前記初期時刻前においては前記外部供給電力を用いて前記蓄電池に対する充電制御を行い、前記初期時刻以降においては前記自然エネルギー発電電力を用いて前記蓄電池に対する充電制御を行うことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、自然エネルギー発電電力または外部供給電力の蓄電池に対する充電を制御するとともに、前記蓄電池に蓄積される電力の電力負荷に対する放電を制御する蓄電池運用制御装置における蓄電池運用制御方法であって、前記電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、前記自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される前記蓄電池の容量の時間変化に基づいて、前記蓄電池の容量の最大ピーク値を予測し、設定された前記蓄電池の容量の上限値と、前記蓄電池の容量の最大ピーク値との差分である上限側差分電力量を算出し、前記時間変化での所定の初期時刻における前記蓄電池の容量の予測値を、少なくとも前記上限側差分電力量に基づく補正容量に基づいて補正した際の、前記初期時刻における必要蓄電容量を算出し、前記初期時刻において前記蓄電池の容量が前記必要蓄電容量となるよう制御することを特徴とする蓄電池運用制御方法である。
【0017】
また本発明は、自然エネルギー発電電力または外部供給電力の蓄電池に対する充電を制御するとともに、前記蓄電池に蓄積される電力の電力負荷に対する放電を制御する蓄電池運用制御装置のコンピュータを、前記電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、前記自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される前記蓄電池の容量の時間変化に基づいて、前記蓄電池の容量の最大ピーク値を予測するピーク値予測手段、設定された前記蓄電池の容量の上限値と、前記蓄電池の容量の最大ピーク値との差分である上限側差分電力量を算出する差分電力量算出手段、前記時間変化での所定の初期時刻における前記蓄電池の容量の予測値を、少なくとも前記上限側差分電力量に基づく補正容量に基づいて補正した際の、前記初期時刻における必要蓄電容量を算出する初期時刻必要蓄電容量算出手段、前記初期時刻において前記蓄電池の容量が前記必要蓄電容量となるよう制御する蓄電制御手段、として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、余剰電力の外部給電系統への逆潮を低減し、また外部給電系統からの電力の供給を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】蓄電池運用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】太陽光発電電力量、使用電力量、蓄電池容量の時間変化を示す第1の図である。
【図3】蓄電池運用制御装置の処理フローを示す第1の図である。
【図4】太陽光発電電力量、使用電力量、蓄電池容量の時間変化を示す第2の図である。
【図5】蓄電池制御方法の第1の例を示す図である。
【図6】蓄電池制御方法の第2の例を示す図である。
【図7】自然エネルギー発電電力と使用電力(需要)との関係および時間経過に応じた蓄電容量の変化を示す第1の図である。
【図8】自然エネルギー発電電力と使用電力(需要)との関係および時間経過に応じた蓄電容量の変化を示す第2の図である。
【図9】第4の実施形態による蓄電池運用制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態による蓄電池運用制御装置を図面を参照して説明する。
図1は第1の実施形態による蓄電池運用制御装置の構成を示すブロック図である。
この図において、符号1は蓄電池運用制御装置である。蓄電池運用制御装置1は、電力を蓄積する蓄電池2と制御線によって接続され、蓄電池2への充電または蓄電池2からの放電を制御する。なお、蓄電池2への充電制御とは外部供給電力系統からの電力を蓄電池2に充電するよう電力系統のスイッチの切替を行う制御であり、蓄電池2からの放電の制御とは、蓄電池2に蓄積される電力が負荷によって消費されるよう蓄電池2と負荷とが電力線によって接続されるよう電力系統のスイッチの切替を行う制御である。
【0021】
また、蓄電池運用制御装置1は、気温、日照量、人の在室情報などのセンサ情報を取得するセンサ3と、太陽光発電を行う太陽光発電装置4と、電力負荷である空調機器5や空調外機器6と通信線により接続されている。蓄電池運用制御装置1は、太陽光発電装置4からは太陽光発電電力量を、空調機器5からは空調負荷電力量を、空調外機器6からは空調外負荷電力量を、通信線を介して受信する。また蓄電池運用制御装置1は、インターネット7を介して気象情報配信元(行政庁や気象情報配信会社)の有する気象情報配信装置と接続されており、気象情報を受信する。また、日時データを受信するようにしてもよい。
【0022】
ここで、蓄電池運用制御装置1は、情報取得部101、履歴データベース(DB)102、発電電力予測部103、使用電力予測部104を備えている。なお使用電力予測部104は、空調負荷電力量予測部105と空調外負荷電力量予測部106とによって構成されている。また蓄電池運用制御装置1は、蓄電池容量予測部107、ピーク値予測部108、差分電力量算出部109、初期時刻必要蓄電容量算出部110、蓄電池制御開始時刻算出部111、タイムテーブル記憶部112、蓄電制御部113を備えている。
情報取得部101は、センサ3、太陽光発電装置4、空調機器5、空調外機器6、インターネット7を介して接続された気象情報配信装置、などから送信された情報を取得して履歴DB102へ記録する処理部である。
履歴DB102は、過去のあるタイミング毎(例えば1時間毎)の太陽光発電電力量や、気温、天気、空調負荷電力量、空調外負荷電力量などの情報が格納される。
【0023】
そして、蓄電池運用制御装置1は、自然エネルギー発電電力または外部供給電力の蓄電池2に対する充電を制御するとともに、蓄電池2に蓄積される電力の電力負荷に対する放電を制御する装置であって、発電電力予測部103が、気象情報に基づいて、自然エネルギー発電電力の時間変化を予測し、電力負荷で使用される使用電力の時間変化を使用電力予測部104が予測する。
使用電力は、空調機器5によって消費される空調負荷電力量の時間変化と、空調外機器6によって消費される空調外負荷電力量の時間変化が、空調負荷電力量予測部105と、空調外負荷電力量予測部106によってそれぞれ予測される。そして、ピーク値予測部108が、電力負荷(空調機器5や空調外機器6)で使用される使用電力の時間変化と、自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される蓄電池2の容量の時間変化に基づいて、蓄電池2の容量の最大ピーク値を予測する。
【0024】
次に、蓄電池運用制御装置1においては、差分電力量算出部109が設定された蓄電池2の容量の上限値と、蓄電池2の容量の最大ピーク値との差分である上限側差分電力量を算出し、初期時刻必要蓄電容量算出部110が、時間変化における所定の初期時刻での蓄電池2の容量の予測値を、少なくとも上限側差分電力量に基づく補正容量に基づいて補正した値である、初期時刻における必要蓄電容量を算出する。
また、蓄電池制御開始時刻算出部111が、初期時刻において蓄電池2の容量が必要蓄電容量となるよう制御する蓄電池制御開始時刻を、補正容量と、蓄電池2の定格充電電力と、初期時刻とを用いて算出し、蓄電制御部113が初期時刻において蓄電池2の容量が必要蓄電容量となるよう蓄電池制御開始時刻の検出に基づいて制御を開始する。
このような手法により、蓄電池運用制御装置1は、余剰電力の外部給電系統への逆潮を低減し、また外部給電系統からの電力の供給を低減できるよう蓄電池2を制御する。
【0025】
次に、蓄電池運用制御装置1の処理について説明する。
図2は太陽光発電電力量、使用電力量、蓄電池容量の時間変化を示す第1の図である。
図3は蓄電池運用制御装置の処理フローを示す第1の図である。
蓄電池運用制御装置1の情報取得部101は、太陽光発電装置4から太陽光発電電力量の情報を逐次、または設定された所定の時間間隔で受信し、その情報を履歴DB102に記録する。太陽光発電電力量は、履歴DB102において、例えば日時や曜日に対応付けて登録される。また、情報取得部101は、空調機器5や空調外機器6から負荷電力量を逐次、または設定された所定の時間間隔で受信し、その情報を履歴DB102に記録する。空調機器5から受信した空調負荷電力量や、空調外機器6から受信した空調外負荷電力量についても、例えば日時や曜日に対応付けて登録される。
【0026】
また同様に、情報取得部101は、各種センサ3から気温、日照量、住宅やオフィスや工場などの蓄電池2の放電する電力の消費対象場所における人の在室情報などを受信し、例えば日時や曜日に対応付けて登録される。さらに、情報取得部101は、インターネット7を介して接続された気象情報配信装置より気象データを受信し、日時や曜日に対応付けて履歴DB102へ登録する。
【0027】
そして、発電電力予測部103は予め設定された日時(例えば前日23時(下記の通常モードの終了時)など)において、次の日の時間経過に応じた発電電力量の予測を、履歴DB102に記録されている情報に基づいて行う(ステップS101)。具体的には、例えば、インターネット7を介して気象情報配信装置などから受信した気象データに基づいて、次の日の気温や気象情報(晴れ、曇り、雨や日照強度など)を取得する。そして、既に履歴DB102に蓄積された気象データが一致または同様となる、年月日日や時間帯に対応する過去の時間経過毎の発電電力量を複数日について取得し、それらの時間帯毎の平均値によって、次の日の時間経過に応じた発電電力量として予測する。発電電力予測部103がどのように次の日の発電電力量を予測してもよく、公知の技術を用いてその予測処理を行う。
【0028】
同様に使用電力予測部104は、次の日の電力の消費対象場所における時間経過に応じた使用電力量の予測を、履歴DB102に記録されている情報に基づいて行う(ステップS102)。具体的には、例えば使用電力予測部104内の空調負荷電力量予測部105は、次の日の曜日と同じ曜日に過去に取得した1時間毎の空調負荷電力量の情報を複数日について履歴DB102から読取り、時間毎に空調負荷電力量を平均化した値を、次の日の時間経過に応じた空調負荷電力量として予測する。また使用電力予測部104内の空調外負荷電力量予測部106は、次の日の曜日と同じ曜日に過去に取得した1時間毎の空調外負荷電力量の情報を複数日について履歴DB102から読取り、時間毎に空調外負荷電力量を平均化した値を、次の日の時間経過に応じた空調外負荷電力量として予測する。そして、使用電力予測部104は、空調負荷電力量予測部105と空調外負荷電力量予測部106によって算出された次の日の1時間毎の電力量をそれぞれ加算して、消費対象場所における時間経過に応じた(1時間毎の)使用電力量を予測する。なお、使用電力予測部104や、空調負荷電力量予測部105や、空調外負荷電力量予測部106がどのように次の日の発電電力量を予測してもよく、公知の技術を用いてその予測処理を行う。そして、当該使用電力の予測データを蓄電池容量予測部107へ出力する。
【0029】
図2の(a)で示すグラフは、次の日の時間経過に応じた太陽光発電電力量と使用電力量を示すものである。このグラフは、7時ごろにおいて太陽光発電電力量が使用電力量を上回り、また16時ごろにおいて使用電力量が太陽光発電電力量を上回ると予測されたことを示している。
【0030】
次に、蓄電池容量予測部107は、入力した次の日の時間経過に応じた使用電力量と太陽光発電電力量とに基づいて、次の日の時間経過に応じた蓄電池2の容量の予測データを算出する(ステップS103)。蓄電池2の容量は充電率(state of charge:SOC)で示されるものである。蓄電池容量予測部107における蓄電池2の容量の予測は、例えば、太陽光発電電力量と使用電力量の予測データが1時間毎の電力量のデータである場合には、ある時間(例えば8時)における太陽光発電電力量と使用電力量の差の電力で蓄電池2に1時間充電した場合の充電率を次の時間(例えば9時)における蓄電池2の充電率として算出し、各時間における充電率を順次算出していき、それらの情報を時間変化に応じた蓄電池容量の予測データとして出力する。なお、蓄電池容量予測部107は、次の日の時間変化に応じた太陽光発電電力量と使用電力量の予測データに基づいて、どのように蓄電池容量を予測するようにしてもよい。
【0031】
図2の(b)で示すグラフは、次の日の時間経過に応じた蓄電池2の容量(充電率)の予測データと蓄電池運用制御装置1の制御に基づく充放電量とを示すものである。線(x)が蓄電池2の容量(充電率)の予測データであり、線(y)が蓄電池運用制御装置1の制御に基づく蓄電池2の時間経過に応じた充放電量を示している。また、線(z)は蓄電池2の容量(充電率)の予測データの補正値を示している。
ここで、図2のグラフは、ある住宅における時間経過に応じた発電電力量と使用電力量、および蓄電池2の容量(充電率)と充放電量を示しているが、グラフの下部に示すように、蓄電池2はスタンバイモードと呼ばれるモードと、蓄電池制御時間帯モードと呼ばれるモードと、通常モードと呼ばれるモードの何れかで制御される。
【0032】
スタンバイモードは、23時〜7時の時間帯におけるモードであり蓄電池2に対する充電または放電の制御を行わないモードである。このスタンバイモードで制御される時間帯の住宅における夜間の使用電力は、外部供給電力系統から得られた単価の安い電力で賄われる。
また、蓄電池制御時間帯モードは、通常時間帯において、なるべく余剰電力を外部給電系統へ逆潮させず、また外部給電系統からの電力の供給を低減することができるように、蓄電池2の容量(充電率)を制御するために充電(または放電)制御するモードである。
また通常モードは、蓄電池2に蓄積された電力または太陽光発電電力を優先して負荷(空調機器5や空調外機器6)の使用電力のために利用するモードである。通常モードで制御される時間帯の外部供給電力系統から得ることのできる電力は単価の高い電力であるため、蓄電池2に蓄積された電力または太陽光発電電力の利用を優先する。
【0033】
蓄電池容量予測部107は、図2(b)の線(x)で示したような予測データの情報を算出すると、ピーク値予測部108へ通知する。当該予測データは次の日の1時間毎の時間と対応する時間における蓄電池2の容量(充電率SOC)とを対応付けた情報である。予測データを受信すると、ピーク値予測部108は蓄電池2の容量の予測データから、最も高い容量(充電率)の値(最大ピーク値SOC’max)を読み取って、差分電力量算出部109へ出力する。そして、差分電力量算出部109が、蓄電池2の容量の上限値(SOC100)をメモリから読み取って、その上限値(SOC100)と最大ピーク値(SOC’max)との差分である上限側差分電力量ΔSOC1を算出する(ステップS104)。このとき、(上限値−最大ピーク値)の算出式によって上限側差分電力量ΔSOC1を算出する。つまり、上限値と最大ピーク値の大小に応じて上限側差分電力量ΔSOC1の値はプラスまたはマイナスとなる。図2においては上限値>最大ピーク値であるため上限側差分電力量ΔSOC1の値はプラスとなる。差分電力量算出部109は、算出した上限側差分電力量ΔSOC1を初期時刻必要蓄電容量算出部110へ出力する。
【0034】
ここで、上限側差分電力量ΔSOC1の値がプラスである場合には、予測データにおける容量(充電率)の最大ピーク値SOC’maxに余裕がある。つまり蓄電池2に太陽光発電電力を蓄積できずに逆潮させてしまう可能性が低いと考えられる。従って、蓄電池制御時間帯モードの時間帯において、蓄電池2により多くの電力を充電することで、23時〜7時の間の単価の安い電力を購入しておき、通常モードの時間帯における単価の高い外部供給電力の購入量を軽減して、代わりに蓄電池2に蓄積されている単価の安い電力を負荷で消費することができる。
また、上限側差分電力量ΔSOC1の値がマイナスである場合には、予測データにおける容量(充電率)の最大ピーク値SOC’maxが上限値SOC100を超え、太陽光発電電力を逆潮させてしまうと予測されている場合である。従って、通常モードの時間帯となる前に蓄電池2の容量(充電率)を少なくしておくことで、通常モードの時間帯に逆潮を発生させずに、太陽光発電電力を有効に消費することができる。
【0035】
初期時刻必要蓄電容量算出部110は、上限側差分電力量ΔSOC1を入力すると、通常モードが始まる初期時刻(7時)における蓄電池2の容量(充電率)の最大ピーク値SOC’maxが、蓄電池2の容量の上限値SOC100に近づくことができるような値である必要蓄電容量SOCreqを、少なくとも上限側差分電力量ΔSOC1に基づく補正容量に基づいて算出する(ステップS105)。本実施形態においては上限側差分電力量ΔSOC1(SOC100−SOC’max)=補正容量とする。従って、必要蓄電容量SOCreqは、予測データが示す次の日の初期時刻(7時)における蓄電池2の容量(SOC’Time=7)に上限側差分電力量ΔSOC1を加算した値となる。
つまり、
必要蓄電容量SOCreq=SOC’Time=7+補正容量
となる。初期時刻(7時)において蓄電池2の容量(充電率)を必要蓄電容量SOCreqにすることで、最大ピーク値(SOC’max)を蓄電池2の容量の上限値(SOC100)と等しくすることができる。
【0036】
初期時刻必要蓄電容量算出部110において必要蓄電容量SOCreqが算出されると、次に、蓄電池制御開始時刻算出部111は、現在の蓄電池2の容量SOCnowと必要蓄電容量SOCreqとを比較する(ステップS106)。そして、現在の蓄電池2の容量SOCnow<必要蓄電容量SOCreqである場合には、初期時刻(7時)において蓄電池2の容量(充電率)を必要蓄電容量SOCreqにするための充電を行う蓄電池制御開始時刻を算出する(ステップS107)。この蓄電池制御開始時刻は、補正容量(=上限側差分電力量ΔSOC1)と、蓄電池2の定格充電電力PCH1と、初期時刻(7時)とを用いて、まず、補正容量(上限側差分電力量ΔSOC1)÷定格充電電力PCH1により充電時間を算出する。そして、初期時刻−充電時間により蓄電池制御開始時刻を算出する。
【0037】
そして、蓄電池制御開始時刻算出部111は、充電を示す情報と、算出した蓄電池制御開始時刻とを対応付けてタイムテーブル記憶部112に記録する(ステップS108)。そして蓄電制御部113は、タイムテーブル記憶部112の情報を読み込んでおき、蓄電池制御開始時刻と現在のカウントする時刻とが一致したと検出した場合には(ステップS109)、当該時刻に対応付けられた充電の情報に基づいて、蓄電池2に対して定格での充電制御を行う(ステップS110)。なお、蓄電池2の容量SOCnow=必要蓄電容量SOCreqの場合には、蓄電制御部113は、スタンバイモードにおいて特に蓄電池2を制御せず、初期時刻(7時)まで待機する。
【0038】
他方、蓄電池制御開始時刻算出部111は、現在の蓄電池2の容量SOCnow>必要蓄電容量SOCreqである場合には、初期時刻(7時)において蓄電池2の容量(充電率)を必要蓄電容量SOCreqにするための負荷が使用する電力としての放電制御を、スタンバイモードの時間帯において直ちに行う(ステップS111)。住宅などの消費対象場所における夜間の(23時〜7時の)負荷の使用電力が変化することがあるため、上限側差分電力量ΔSOC1(SOC100−SOC’max)の値がプラスであるときのように、蓄電池制御開始時刻を決めて、初期時刻(7時)に蓄電池2の容量(充電率)が必要蓄電容量SOCreqになるように放電制御(負荷による蓄電池2に蓄積された電力が消費されるように制御)することは難しい。従って、必要蓄電容量SOCreqにするための補正容量分の放電制御を、スタンバイモードの時間帯において直ちに行う。補正容量分の放電によって必要蓄電容量SOCreqに達したと検出した場合には放電の中止を制御する。これにより、通常モードまで蓄電池2の容量(充電率)が維持される。そして、蓄電制御部113は、初期時刻において太陽光発電電力の蓄電、または負荷への放電の制御を行う(ステップS112)。
【0039】
以上のような処理によって、初期時刻(7時)において蓄電池2の容量(充電率)を必要蓄電容量SOCreqにすることで、通常モードにおいて蓄電池2の容量(充電率)が上限値(SOC100)を超えることなく、蓄電池2の容量を制御することができる。これにより、初期時刻(7時)以降に太陽光発電装置4によって発電された太陽光発電電力は全て蓄電池2に蓄積され、外部給電系統に逆潮することがなく、発電した電力を無駄なく消費することができる。
また、上述の処理によれば、蓄電池2の容量(充電率)の最大ピーク値SOC’maxが上限値SOC100未満であるような場合には、初期時刻(7時)の時点での蓄電池2の容量を多くしておくため、予測に反して通常モードの時間帯に使用電力が多くなった場合でも、通常モードの時間帯の単価の高い電力の購入量を軽減して、代わりに、スタンバイモード時に安く購入した電力を用いることができるため、消費対象場所における電力コストを抑えることができる。
また、使用電力量と発電力電力量との大小関係が頻繁に入れ代わるような気象条件においても、使用電力量と発電電力量の予測に基づいて最大ピーク値SOC’maxを予測できるため、太陽光発電電力を外部給電系統へ逆潮させず、また外部給電系統からの電力の供給を低減できるような、初期時刻における蓄電池2の必要蓄電容量SOCreqを算出することが可能となる。
【0040】
(第2の実施形態)
図4は太陽光発電電力量、使用電力量、蓄電池容量の時間変化を示す第2の図である。
上述の第1の実施形態の処理においては、蓄電池2の容量(充電率)の最大ピーク値SOC’maxが上限値SOC100と等しくなるような、初期時刻(7時)における蓄電池2の必要蓄電容量SOCreqを算出した。しかしながら、このような処理方法では、太陽光発電電力量や使用電力量の予測がはずれ、蓄電池2の容量が著しくオーバした(著しく最大ピーク値SOC’maxが上限値SOC100を超える)場合には、太陽光発電電力が逆潮してその電力を多く捨てることとなる。また上述の処理方法では、太陽光発電電力量や使用電力量の予測がはずれ、蓄電池2の容量によって、負荷の使用電力量を著しく賄うことができないような場合には、通常モードの時間帯の単価の高い電力を著しく多く購入しなければならない。従って、最大ピーク値SOC’max>SOC100,SOC’min<SOC、のような場合のデメリットを最小限にするために以下の処理を行うものである。
【0041】
蓄電池運用制御装置1において差分電力量算出部109は、第1の実施形態と同様に上限側差分電力量ΔSOC1を算出するとともに、電力負荷(空調機器5や空調外機器6)で使用される使用電力の時間変化および太陽光発電電力の時間変化とによって予測される蓄電池2の容量(充電率)の時間変化における最小値SOC’minと、設定された蓄電池2の容量(充電率)の下限値(例えば、SOC=充電率0%)と、の差分である下限側差分電力量ΔSOC2(図4参照)を算出する。下限側差分電力量ΔSOC2は、蓄電池2の容量(充電率)の下限値が充電率0%である場合、ΔSOC2=SOC’minとなる。そして、差分電力量算出部109は、上限側差分電力量ΔSOC1と下限側差分電力量ΔSOC2とを初期時刻必要蓄電容量算出部110へ出力する。
【0042】
そして、初期時刻必要蓄電容量算出部110は、外部供給電力系統から得ると予測される電力量と、蓄電池2に蓄積される電力からの放電量との割合が所望の割合となる補正容量を算出するための評価関数に、上限側差分電力量と、下限側差分電力量との各値を代入して、補正容量を算出する。または、初期時刻必要蓄電容量算出部110は、上限側差分電力量と、下限側差分電力量との割合が所望の割合となる補正容量を算出するための評価関数に、上限側差分電力量ΔSOC1と、下限側差分電力量ΔSOC2との各値を代入して、補正容量を算出するようにしてもよい。そして、この補正容量を用いて、蓄電池2の容量(充電率)を必要蓄電容量SOCreqにするための充電を行う蓄電池制御開始時刻を算出する。外部供給電力系統から得ると予測される電力量と、蓄電池2に蓄積される電力からの放電量との割合が所望の割合となる補正容量を算出するための評価関数としては、例えばΔSOC1=ΔSOC2となるように補正容量を算出する関数であり、
補正容量=(|ΔSOC1|+|ΔSOC2|)÷2
により表される。そして、初期時刻必要蓄電容量算出部110は、補正容量を算出すると、
必要蓄電容量SOCreq=SOC’Time=7+補正容量
により、必要蓄電容量SOCreqを算出して、算出した補正容量を蓄電池制御開始時刻算出部111へ出力し、また、必要蓄電容量SOCreqを蓄電制御部113へ出力する。そして、蓄電池制御開始時刻算出部111および、蓄電制御部113は、第1の実施形態と同様の処理を行う。
【0043】
上述の処理によれば、蓄電池2の容量(充電率)の予測データの最大値が上限値を大きく超えて、太陽光発電電力を逆潮させて無駄にしてしまう状況や、蓄電池2の容量(充電率)の予測データの最小値が下限値を大きく下回ることで単価の高い外部供給電力系統からの電力を多く買わなければならないような状況において、補正容量分の蓄電池2の容量の補正を行って、初期時刻の時点で蓄電池2の容量が必要蓄電容量SOCreqに制御し、予測データの最大値と上限値との差と、予測データの最小値と下限値との差が等しくなるようにしている。
これにより、蓄電池2の容量(充電率)の予測データの最大値が上限値を大きく超えて、著しく太陽光発電電力を逆潮させて無駄にしてしまう状況や、蓄電池2の容量(充電率)の予測データの最小値が下限値を大きく下回ることで単価の高い外部供給電力系統からの電力を著しく多く買わなければならないような状況を軽減または回避することができる。
【0044】
また、上述の評価関数以外にも、上限側差分電力量ΔSOC1または下限側差分電力量ΔSOC2の何れか、または両方に、所定の重み付けを付けて、所期時刻(7時)において必要蓄電容量SOCreqとなるような、蓄電池2の容量に対する補正容量分の補正を行うようにしてもよい。
【0045】
例えば、上限側差分電力量ΔSOC1の重視度をα(0≦α≦1)、下限側差分電力量ΔSOC2の重視度をβ(β=1−α)とする。このときαが大きいほど、上限側差分電力量ΔSOC1を重視して補正容量を決めることを表し、α=1の場合は上限側差分電力量ΔSOC1だけを評価し、下限側差分電力量ΔSOC2は評価し、また、α=β=0.5のときは、補正容量に基づいた補正後の蓄電池容量の予測データにおけるΔSOC1とΔSOC2は等しくなるよう評価する評価関数を用いる。
【0046】
具体的には、
(a)ΔSOC1+ΔSOC2>0のとき
(ΔSOC1^2)/α+(ΔSOC2^2)/β (0<α<1)
ΔSOC1^2 (α=0)
ΔSOC2^2 (α=1)
(b)ΔSOC1+ΔSOC2≦0のとき
(ΔSOC2^2)/α+(ΔSOC1^2)/β (0<α<1)
ΔSOC2^2 (α=0)
ΔSOC1^2 (α=1)
を評価関数として、初期時刻必要蓄電容量算出部110は、当該評価関数を最小とするΔSOC1、ΔSOC2となる補正容量を算出する。そして、この補正容量を用いて、蓄電池制御開始時刻算出部111が、蓄電池2の容量(充電率)を必要蓄電容量SOCreqにするための充電を行う蓄電池制御開始時刻を算出する。
【0047】
以上、第2の実施形態による蓄電池運用制御装置1の処理によれば、太陽光発電電力量や使用電力量の予測がはずれ、蓄電池2の容量が著しく充電量オーバして太陽光発電電力の逆潮により電力を多く捨てることになるようなリスクを軽減することのできる蓄電池2の容量(充電率)の予測データを生成することができる。
また、太陽光発電電力量や使用電力量の予測がはずれ、蓄電池2の容量によって、大きな使用電力量を著しく賄うことができず、通常モードの時間帯の単価の高い電力を著しく多く購入しなければならないようなリスクを軽減することのできる蓄電池2の容量(充電率)の予測データを生成することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
図5は蓄電池制御方法の第1の例を示す図である。
上述の実施例においては、必要蓄電容量SOCreqが現在の蓄電池2の容量SOCnow以上である場合には、補正容量÷定格充電電力によって充電に必要な時間を算出し、初期時刻より充電に必要な時間分前の蓄電池制御開始時刻に達するまでスタンバイモード(充放電無し状態)に移行し、蓄電池制御開始時刻から定格充電電力PCH1による充電を行っている。また、必要蓄電容量SOCreqが現在の蓄電池2の容量SOCnow未満である場合には、直ちに蓄電池2の容量が必要蓄電容量SOCreqとなるまで蓄電池2の電力を使用電力として供給している。ここで、蓄電池制御時間帯モードに気象データを再受信して、太陽光発電電力量、使用電力量、蓄電池容量の予測をし直し、必要蓄電容量SOCreqを再設定することが考えられるが、このような場合において新たに予測された必要蓄電容量SOCreqが増加したとしても、通常は定格充電電力PCH1による充電で蓄電池2の充電を行うため、充電時間が足りず、蓄電池2の容量が初期時刻に必要蓄電容量SOCreqに達しない可能性がある。
従って、本実施形態ではこのような課題を解決するための構成を有する蓄電池運用制御装置1について説明する。
【0049】
蓄電制御部113は、スタンバイモードの時間帯において事前に、タイムテーブル記憶部112から蓄電池制御開始時刻を読み取って、現在の時刻から初期時刻(7時)までの時間が、蓄電池制御開始時刻から初期時刻(7時)までの充電時間のn倍(n=整数)になったかどうかを判定する。本実施形態においてはn=2とする。そして、蓄電制御部113は、現在の時刻から初期時刻(7時)までの時間が、蓄電池制御開始時刻から初期時刻(7時)までの充電時間の2倍になった場合には、その時刻における必要充電容量=必要蓄電容量−現在の蓄電容量(SOCreq−SOCnow)を算出する。蓄電制御部113は、n=2であるため、(SOCreq−SOCnow)÷2を計算の後、充電の制御を開始して、蓄電池2に充電した充電量が(SOCreq−SOCnow)÷2の値に達するかを判定する。そして、蓄電池2に充電した充電量が(SOCreq−SOCnow)÷2の値に達した場合には再度スタンバイモードへと移行する。そして、蓄電制御部113は、(SOCreq−SOCnow)÷2を計算と、充電の制御と、蓄電池2に充電した充電量が(SOCreq−SOCnow)÷2の値に達するかの判定と、必要充電量=(SOCreq−SOCnow)が予め決定しておいた一定値未満になったかの判定と、の処理を繰り返す。そして、蓄電池制御部113は、必要充電量=(SOCreq−SOCnow)が予め決定しておいた一定値未満になったと判定した場合、必要充電量分を充電し、スタンバイモードへと移行する。
【0050】
図6は蓄電池制御方法の第2の例を示す図である。
次に、第3の実施形態による他の手法について説明する。
蓄電制御部113はスタンバイモード中であって、タイムテーブル記憶部112に記録されている蓄電池制御開始時刻より前の時刻における予め定められた時間になると、現在の時刻から定格充電電力PCH1による充電制御を行った場合に初期時刻(7時)において達する蓄電池2の容量(充電率)SOC(以下、充電継続時初期時刻容量と呼ぶ)と、消費対象場所の予測された時間経過に応じた使用電力量に基づいて、現在の時刻から蓄電池2に蓄積された電力を負荷に消費させた場合に初期時刻(7時)において達する蓄電池2の容量(充電率)SOC(以下、放電継続時初期時刻容量と呼ぶ)とを算出する。そして、蓄電制御部113は、算出した充電継続時初期時刻容量と放電継続時初期時刻容量との中間値が、必要蓄電容量SOCreqとなるよう充電または放電の制御を行う。例えば、所定の時間おきに、充電継続時初期時刻容量と放電継続時初期時刻容量との中間値を算出して必要蓄電容量SOCreqと比較し、中間値>必要蓄電容量SOCreqであれば充電制御、中間値<必要蓄電容量SOCreqであれば消費対象場所の使用電力を蓄電池2から賄うための制御(電力系統の切替など)を行う。なお、このような制御によって、中間値=必要蓄電容量SOCreqとなった場合にはその時点でスタンバイモードへ移行(蓄電池2と空調機器5や空調外機器6との電力線の遮断などの制御)を行う。
【0051】
第3の実施形態の処理によれば、第1の実施形態や第2の実施形態の蓄電池制御開始時刻よりも前に、必要蓄電容量SOCreqとなるまで徐々に充電または放電を行っている。従って、予測データが変更となり必要蓄電容量SOCreqが増加したとしても、初期時刻までに新たに定義された必要蓄電容量SOCreqに達するよう定格充電で蓄電池2を充電制御することができるようになる。なお、蓄電池2に対する単位時間あたりの充電量を増減させることができるような場合には、実施形態3の構成を備えなくてもよい。
【0052】
(第4の実施形態)
図7は自然エネルギー発電電力と使用電力(需要)との関係および時間経過に応じた蓄電容量の変化を示す第1の図である。
図8は自然エネルギー発電電力と使用電力(需要)との関係および時間経過に応じた蓄電容量の変化を示す第2の図である。
図7(A)は、通常モードの時間帯の電力料金より単位時間当たりの電力料金の低い午前7時以降において、太陽光発電電力などの自然エネルギー発電電力が電力負荷による使用電力(需要)を上回った場合の余剰電力(自然エネルギー発電電力−電力負荷による使用電力)の時間変化と、その時の蓄電池2の蓄電容量の時間変化を示している。このような場合、蓄電制御部113は、午前7時前には外部供給電力を用いて蓄電池2の充電制御を行う。またこのような場合、蓄電制御部113は、午前7時以降においては自然エネルギー発電電力の余剰電力を用いて蓄電池2の充電制御を行う。従って、自然エネルギー発電出力を捨てることなく蓄電池2に対して充電制御を行うことができる。
【0053】
一方、図7(B)は、通常モードの時間帯の電力料金より単位時間当たりの電力料金の低い午前7時より前において、自然エネルギー発電電力が電力負荷による使用電力を上回った場合の余剰電力の時間変化と、その時の蓄電池2の蓄電容量の時間変化を示している。このような場合、蓄電制御部113は、図7(A)と同様に、午前7時前は外部供給電力を用いて蓄電池2の充電制御を行う。またこのような場合、蓄電制御部113は、午前7時以降においては自然エネルギー発電電力の余剰電力を用いて蓄電池2の充電制御を行う。つまり、図7(B)のような状態においては、午前7時前において、自然エネルギー発電電力の余剰電力があるにもかかわらず、外部供給電力を用いて蓄電池2の充電制御を行うこととなるため、自然エネルギー発電電力の余剰電力を捨ててしまう(外部供給電力への逆潮などを行う)ことなる。
従って、このような問題を解決するために以下の制御を行う。
【0054】
図8(B)は、通常時間帯電力料金より単位時間当たりの電力料金の低い午前7時より前において、自然エネルギー発電電力が電力負荷による使用電力を上回った場合の余剰電力の時間変化と、その時の蓄電池2の蓄電容量の時間変化を示している。この場合、上述の問題を解決するために、蓄電制御部113は、図7(B)と同様の図である図8(A)で示す制御とは異なり、図8(B)で示す制御を行う。つまり、蓄電池制御部113は、通常時間帯電力料金より単位時間当たりの電力料金の低い午前7時より前において、余剰電力が使用電力を上回った場合に、その余剰電力が使用電力を上回る間の余剰電力=使用電力となる時刻を示す初期時刻T1を検出する。そして蓄電池制御部113は、自然エネルギー発電電力の余剰電力が使用電力を上回る間の余剰電力=使用電力となる初期時刻T1以降においては、通常時間帯電力料金より単位時間当たりの電力料金の低い午前7時前であっても、自然エネルギー発電電力の余剰電力を用いて、蓄電池2の充電制御を行う。これにより、通常時間帯電力料金より単位時間当たりの電力料金の低い午前7時前における自然エネルギー発電電力の余剰電力を無駄にすることなく有効利用することができる。なお、外部供給電力を用いた蓄電池2の単位時間当たりの充電量は、自然エネルギー発電電力の余剰電力を用いた蓄電池2の単位時間当たりの充電量よりも多くなる。
【0055】
図9は第4の実施形態による蓄電池運用制御装置の構成を示すブロック図である。
図9で示す蓄電池運用制御装置1は、図1で示す蓄電池運用制御装置1に、更に初期時刻設定部114の構成を備えたものである。
第4の実施形態の処理の前提としては、初期時刻設定部114が、予め予測処理によって午前7時前に自然エネルギー発電電力の余剰電力が使用電力を上回ると予測した場合には、事前に、自然エネルギー発電電力が使用電力を上回る間の発電電力=使用電力となると予想される初期時刻T1を算出し、タイムテーブル記憶部112などに記録してく。そして、蓄電池制御部113はタイムテーブル記憶部112から初期時刻T1を読み取って、当該初期時刻T1前には外部供給電力を用いた蓄電池2への充電制御を行い、初期時刻T1以降には自然エネルギー発電電力の余剰電力を用いた蓄電池2への充電制御を行う。
しかしながら、そのような予測の処理や初期時刻T1の算出を行う初期時刻設定部114を蓄電池運用制御装置1内に設けなくともよい。この場合、蓄電制御部113が、自然エネルギー発電電力と使用電力とを常に計測して、予め設定されている初期時刻(例えば午前7時)より前に自然エネルギー発電電力が使用電力を上回ったと判定した場合に、その上回る過程において発電電力=使用電力となった時刻を新たな初期時刻T1として決定する。そして、蓄電池制御部113は初期時刻T1において、外部供給電力を用いた蓄電池2への充電制御から、自然エネルギー発電電力の余剰電力を用いた蓄電池2への充電制御に直ちに切り替えるようにしてもよい。
【0056】
なお、初期時刻設定部114の初期時刻の予測手法は、例えば、明日の月日に近い去年以前や今年の各月日における気温、日照量などのデータを履歴DB102から読み取る。そして初期時刻設定部114は、読み取ったデータの中から、明日の気象データから把握できる気温、日照量に類似する気温、日照量の組合せを示す各月日のデータを複数取得する。そして初期時刻設定部114は、それら取得した過去の月日において、自然エネルギー発電電力が使用電力を上回ったと判定されて過去に設定された初期時刻T1を、当該情報を記憶する履歴DB102から取得する。そして、初期時刻設定部114は、それら過去に設定された初期時刻T1の平均値を明日の初期時刻T1として算出し、当該初期時刻T1をタイムテーブル記憶部112へ記録する。この場合、初期時刻必要蓄電容量算出部110は、タイムテーブル記憶部112から初期時刻T1を読み取って、当該初期時刻T1における必要蓄電容量SOCreqを算出する。
【0057】
上述した蓄電池運用制御装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0058】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0059】
1・・・蓄電池運用制御装置
2・・・蓄電池
3・・・センサ
4・・・太陽光発電装置
5・・・空調機器
6・・・空調外機器
101・・・情報取得部
102・・・履歴DB
103・・・発電電力予測部
104・・・使用電力予測部
105・・・空調負荷電力量予測部
106・・・空調外負荷電力量予測部
107・・・蓄電池容量予測部
108・・・ピーク値予測部
109・・・差分電力量算出部
110・・・初期時刻必要蓄電容量算出部
111・・・蓄電池制御開始時刻算出部
112・・・タイムテーブル記憶部
113・・・蓄電制御部
114・・・初期時刻設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギー発電電力または外部供給電力の蓄電池に対する充電を制御するとともに、前記蓄電池に蓄積される電力の電力負荷に対する放電を制御する蓄電池運用制御装置であって、
前記電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、前記自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される前記蓄電池の容量の時間変化に基づいて、前記蓄電池の容量の最大ピーク値を予測するピーク値予測部と、
設定された前記蓄電池の容量の上限値と、前記蓄電池の容量の最大ピーク値との差分である上限側差分電力量を算出する差分電力量算出部と、
少なくとも前記上限側差分電力量に基づく補正容量に基づいて、前記時間変化における所定の初期時刻での前記蓄電池の容量の予測値を補正して、前記初期時刻における必要蓄電容量を算出する初期時刻必要蓄電容量算出部と、
前記初期時刻において前記蓄電池の容量が前記必要蓄電容量となるよう制御する蓄電制御部と、
を備えることを特徴とする蓄電池運用制御装置。
【請求項2】
前記初期時刻において前記蓄電池の容量が前記必要蓄電容量となるよう制御する蓄電池制御開始時刻を、前記補正容量と、前記蓄電池の定格充電電力と、前記初期時刻とを用いて算出する蓄電池制御開始時刻算出部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池運用制御装置。
【請求項3】
前記蓄電制御部は、
前記初期時刻の前の時間帯における現在の蓄電池の容量が、前記必要蓄電容量より少ない場合には、前記制御において充電制御を行い、
前記現在の蓄電池の容量が、前記必要蓄電容量より大きい場合には、前記制御において放電制御を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電池運用制御装置。
【請求項4】
前記差分電力量算出部は、さらに、前記電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、前記自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される前記蓄電池の容量の時間変化における前記蓄電池の容量の最小値と、設定された前記蓄電池の容量の下限値との差分である下限側差分電力量を算出し、
前記初期時刻必要蓄電容量算出部は、前記外部供給電力から受ける電力量と、前記蓄電池に蓄積される電力の放電量との割合が所望の割合となる前記補正容量を算出するための、前記上限側差分電力量と、前記下限側差分電力量とによって表される評価関数に基づいて、前記補正容量を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の蓄電池運用制御装置。
【請求項5】
前記蓄電制御部は、
前記補正容量と、前記蓄電池の定格充電電力と、前記初期時刻とによって算出できる前記蓄電池が前記必要蓄電容量となるまでの充電時間の整数n倍になった際に、前記必要蓄電容量に達するまでの電力量の整数n分の1まで充電する
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の蓄電池運用制御装置。
【請求項6】
前記蓄電制御部は、
前記初期時刻の前の時間帯における現在の蓄電池の容量の状態から定格充電のみを行った場合に前記初期時刻において達する前記蓄電池の容量と、前記現在の蓄電池の容量の状態から負荷に対して電力を放電のみを行った場合に前記初期時刻において達する前記蓄電池の容量との中間値が、前記必要蓄電容量となるよう、前記蓄電池の充電または放電を制御する
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の蓄電池運用制御装置。
【請求項7】
前記初期時刻は、通常時間帯電力料金より単位時間当たりの電力料金の低い時間帯において、前記自然エネルギー発電電力が使用電力を上回る過程の発電電力=使用電力となると予想される時刻である
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の蓄電池運用制御装置。
【請求項8】
前記蓄電制御部は、前記初期時刻前においては前記外部供給電力を用いて前記蓄電池に対する充電制御を行い、前記初期時刻以降においては前記自然エネルギー発電電力を用いて前記蓄電池に対する充電制御を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の蓄電池運用制御装置。
【請求項9】
自然エネルギー発電電力または外部供給電力の蓄電池に対する充電を制御するとともに、前記蓄電池に蓄積される電力の電力負荷に対する放電を制御する蓄電池運用制御装置における蓄電池運用制御方法であって、
前記電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、前記自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される前記蓄電池の容量の時間変化に基づいて、前記蓄電池の容量の最大ピーク値を予測し、
設定された前記蓄電池の容量の上限値と、前記蓄電池の容量の最大ピーク値との差分である上限側差分電力量を算出し、
前記時間変化における所定の初期時刻での前記蓄電池の容量の予測値を、少なくとも前記上限側差分電力量に基づく補正容量に基づいて補正した値である、前記初期時刻における必要蓄電容量を算出し、
前記初期時刻において前記蓄電池の容量が前記必要蓄電容量となるよう制御する
ことを特徴とする蓄電池運用制御方法。
【請求項10】
自然エネルギー発電電力または外部供給電力の蓄電池に対する充電を制御するとともに、前記蓄電池に蓄積される電力の電力負荷に対する放電を制御する蓄電池運用制御装置のコンピュータを、
前記電力負荷で使用される使用電力の時間変化と、前記自然エネルギー発電電力の時間変化とによって予測される前記蓄電池の容量の時間変化に基づいて、前記蓄電池の容量の最大ピーク値を予測するピーク値予測手段、
設定された前記蓄電池の容量の上限値と、前記蓄電池の容量の最大ピーク値との差分である上限側差分電力量を算出する差分電力量算出手段、
前記時間変化における所定の初期時刻での前記蓄電池の容量の予測値を、少なくとも前記上限側差分電力量に基づく補正容量に基づいて補正した値である、前記初期時刻における必要蓄電容量を算出する初期時刻必要蓄電容量算出手段、
前記初期時刻において前記蓄電池の容量が前記必要蓄電容量となるよう制御する蓄電制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−120419(P2012−120419A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97142(P2011−97142)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】