説明

薄い、微小板形状の鉄顔料、その製造、およびその使用

本発明は、鉄効果顔料に関し、その鉄効果顔料は、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚みの計測から求めた厚み分布で、下記のように表される累積篩下分布を有する。
a)h50が10〜55nm
b)h90が20〜80nm
また、本発明は、それを製造するための方法、さらには、その鉄効果顔料の使用にも関する。
本発明はさらに、本発明の鉄効果顔料を含む印刷インキにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い、微小板形状の鉄顔料、その製造および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄の効果顔料の微小板は、鉄フレークまたは鉄効果顔料とも呼ばれているが、装飾分野において、特にその磁気配向性を理由として使用されている。塗布媒体がまだ液状である間に、その中で鉄顔料を磁力線の方向に配向させることによって、極めて魅力的な3D効果やホログラムを作り出すことができる。
【0003】
研磨助剤の存在下で、還元処理されたカルボニル鉄粉体を乾式研磨または湿式研磨することによって、特に自動車の仕上げ工程のために望まれるサイズ、およびアルミニウム顔料では公知の「シルバードル」形状を有する、微小板形状の鉄顔料を製造することは、たとえばDE 101 14 446 A1の中に包括的に記載されている。
【0004】
この公知の研磨操作においては、粗い粉体粒子を機械的に変形させて鉄の微小板とするのであって、微粉砕をするのではない。研磨の過程において鉄の粒子が冷間圧接されるのを防止するために、潤滑剤、たとえばステアリン酸またはオレイン酸のような脂肪酸を添加する。これらの鉄の顔料微小板は、不動態化耐食性コーティングおよび抑制剤層からなる抑制剤コーティングを備えている場合には、5〜100μmの平均粒子サイズと、500〜30nmの平均粒子厚みとを有している。本明細書においては、高いフロップ性を有する光学的にアピールする効果顔料の製造について記載するが、そのような製品は、それらの光学的性質のために、市場において地歩を固めることはこれまでできなかった。したがって、Ferricon 200製品(Eckart)は、磁場においてその顔料微小板を配向させて、それによって興味深い3D効果を得ることが可能であるという、その磁気的性質だけに基づいて販売されている。しかしながら、塗布媒体の中でその面に平行な配向をするということを基に機能する、通常の効果顔料としては、今日までそれが興味を引くことはなかった。
【0005】
輝度の高いアルミニウム顔料に比較して、鉄の反射率は低いために、その色相はあまりにも艶消しで暗いものであった。
【0006】
印刷インキ分野においても同様に、その顔料は今日まで、純粋な効果顔料としては何の用途も見出すことができなかった。いわゆる面反転塗布(reverse−face application)においては特に、今日にいたるまで、満足が得られなかった。対照的に、PVDアルミニウム顔料を用いた場合には、面反転塗布において適切な鏡面効果を得ることができる。
【0007】
その一方で、黒色で、光沢のあるメタリック効果顔料について、市場で強い要望がある。DE 101 14 446 A1から公知の鉄効果顔料は、光沢および暗さまたは黒さの点で、この要望を満たしていない。
【0008】
DE 101 14 445 A1にも、金属酸化物を用いてコーティングされた鉄効果顔料が開示されている。
【0009】
DE 10 2007 007908 A1には、暗い黒色のメタリック効果顔料が開示されている。しかしながら、これらの顔料は、PVDプロセスによってのみ得られるものであって、所定の酸素含量は、得られるメタリック効果顔料の中で達成しなければならず、そのために、それらは極めて高価となり、コストが高く製造しにくいものである。
【0010】
DE 103 15 775 A1には、脂肪酸および場合によっては不動態化抑制剤または耐食層を用いてコーティングされ、30〜100nmの平均厚みを有する、アルミニウム顔料が開示されている。
【0011】
最後に、EP 1 621 586 A1には、傑出した金属光沢と微細な粒子分布とを有する微小板形状のアルミニウム顔料が記載されている。このアルミニウム顔料は、0.025〜0.08μmの平均厚みと、8〜30μmの平均粒径(D50)とを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、改良された光学的性質を有する鉄効果顔料を提供することである。その顔料は、特に、より良好な光沢および明度フロップ性、さらには黒色のメタリック効果顔料に至るかなり暗い色相を示すものである。これらの効果顔料はさらに、技術的に単純な方法で製造することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その目的は、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚みの計測から求めた厚み分布で、下記のように表される累積篩下分布を有する鉄効果顔料を提供することにより、達成される。
a)h50が10〜55nm
b)h90が20〜80nm
【0014】
本発明の鉄効果顔料の好適な展開法は、従属請求項2〜8に規定されている。
【0015】
その上に本発明が基礎を置く目的はさらに、請求項1〜8のいずれかに記載の鉄効果顔料を製造するための方法により達成されるが、その方法には次の工程が含まれる:
10<2.0μm、d50<5.0μm、そしてd90<7.0μmを特徴とする粒子サイズ分布を有する粗い鉄粉体を、溶媒および潤滑剤および球状の研磨媒体の存在下で、ミリング装置を用いて、研磨する工程。
【0016】
その方法の好ましい展開法は、従属請求項9〜13に規定されている。
【0017】
本発明における目的はさらに、コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、証券印刷および機密保護印刷、化粧品、および多層効果顔料の製造における反射材料における効果顔料として、本発明の鉄効果顔料を使用することにより達成される。
【0018】
本発明の鉄効果顔料は、コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、証券印刷および機密保護印刷、または化粧品の用途における磁気配向が可能な効果顔料として使用するのが好ましい。
【0019】
その上に本発明が基礎を置く目的はさらに、好ましくは本発明の鉄効果顔料または本発明の鉄効果顔料を含むコーティング材料を用いた、請求項1〜8のいずれかに記載の鉄効果顔料を含むか、および/または有するコーティングされた物品を提供することによりカバーされる。
【0020】
その目的は最終的には、請求項1〜8のいずれかに記載の本発明の鉄効果顔料を含む印刷インキを提供することにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明実施例および比較例5の厚み分布の累積篩下分布。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の文章においては、鉄顔料と鉄効果顔料は、相互に置き換え可能に使用される。
【0023】
鉄効果顔料は、微小板形状の鉄顔料を意味している。微小板形状であるために、これらの鉄効果顔料は入射光を直接反射させることが可能であり、それにより鏡面様の効果が得られる。
【0024】
これらの革新的な顔料は、全体として鉄効果顔料としてはこれまで達成されたことのない性質、特に光沢、フロップ性、不透明性、およびかなり暗い金属トーンを有している。
【0025】
驚くべきことには、請求項1において規定されるような狭い厚み分布を有する鉄効果顔料は、暗さまたは黒さと共に、予想外の光沢性を示すということが見出された。
【0026】
DE 101 14 446 A1から公知の鉄効果顔料とは対照的に、本発明の鉄効果顔料は艶消しではなく、光沢がある。さらに、本発明の鉄効果顔料は、DE 101 14 446 A1の教示に従った鉄効果顔料に比較すると、より暗い、またはより黒い。
【0027】
現在のところ、この現象についての科学的な説明が見出せないが、これらの特殊な光学効果は、請求項1に記載の狭い厚み分布、ならびにそこに記載されている絶対的な厚みに関係しているものと考えられる。
【0028】
本発明の鉄効果顔料は、従来からの鉄顔料よりも、塗布媒体の中でより均一に積み重なる。従来からの鉄顔料を用いた場合、顔料の積み重なりにおける不均一性が容易に起こりうる。たとえば、特に極めて厚い顔料は、「スペーサー」として機能する可能性があり、このことが、周辺または隣接した鉄効果顔料の配向に大きな影響を与える。
【0029】
このことは、光沢およびフロップ性、ならびにある状況によっては不透明性に対して悪影響を与える。
【0030】
本発明の鉄効果顔料は、好ましくは少なくとも80%から90重量%まで、より好ましくは少なくとも81%から87重量%まで、極めて好ましくは少なくとも82%から86重量%までの鉄含量を有する。上に挙げた重量パーセントの数字は、それぞれの場合において、鉄効果顔料の全重量に対するものである。
【0031】
さらに、本発明の鉄効果顔料の微小板形状の鉄のコアの酸素含量は、好ましくは10〜20原子%、より好ましくは13〜19原子%、極めて好ましくは14〜18原子%である。
【0032】
酸素含量がかなり高いのは、その顔料が極端に薄く、そのためにそれらの比表面積が大きいということで説明することができる。表面に自然に形成される酸化鉄の層が、酸素含量がかなり高くなることの一因である。
【0033】
本発明の鉄効果顔料の鉄および酸素の含量は、鉄効果顔料全体を基準にして、好ましくは少なくとも96重量%、より好ましくは少なくとも97重量%、極めて好ましくは少なくとも98重量%である。加えて、言うまでもないことであるが、自然発生的な不純物、たとえばケイ素などが、少量存在していてもよい。
【0034】
微小板形状の金属顔料の平均厚みを正確に測定することは困難である。実際には、顔料の厚みは、水被覆度(DIN 55923による広がり)の方法によるか、および/または走査型電子顕微鏡(SEM)法によって測定する。水被覆度では、顔料の平均厚みhだけは計算できるが、厚み分布の計算はできない。非可逆的な集塊を排除する目的で、本発明の目的では、本発明の鉄効果顔料の平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)法により測定した。この方法を用いる場合、代表的な統計的評価ができるように、十分な量の粒子を測定する。典型的には、約100個の粒子について測定する。厚み分布は、累積篩下曲線の形態で表すのが有用である。適切な「平均値」は、厚みの累積篩下曲線のh50値である。粗い画分の目安は、h90値である。h90は、顔料粒子全体の内の90%のものが、この数値未満の厚みを有しているという位置を表している。これに対応し、たとえば、h99値は、顔料粒子全体の内の99%のものが、この数値未満の厚みを有しているという位置を表している。同様にして、h10は厚み分布の微細な画分の目安であって、顔料粒子全体の内の10%のものが、この数値未満の厚みを有しているという位置を表している。
【0035】
これらの数値は、測定した個々の値のリストから、たとえばExcel表現の「分位数」関数によって、算術的に求めてもよい。SEMによる個々の顔料の厚みの測定は、DE 103 15 775 A1に記載されている方法に従って行う。
【0036】
本発明の鉄効果顔料は、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚みの計測から求めた、累積篩下分布として表して、h50が10〜55nm、好ましくは12〜50nm、より好ましくは14〜45nm、極めて好ましくは15〜40nm未満の厚み分布を有している。
【0037】
平均厚みh50が10nm未満では、鉄効果顔料が暗くなりすぎるが、これは、鉄の吸収特性が高いまま維持されてメタリック反射性能が失われるためである。さらに、その鉄効果顔料は、機械的に不安定になりすぎて、その後に適切に加工することができなくなる。さらに、不透明性も減少する。平均厚みh50が55nmを超えると、有利な光学的性質、すなわち暗さまたは黒さと共に光沢が、もはや存在しなくなる。
【0038】
さらに、本発明の顔料のh90は、20〜80nm、好ましくは22〜70nm、より好ましくは25〜60nmの範囲である。
【0039】
90が80nmを超えると、鉄効果顔料の有利な性質がもはや観察できなくなる。具体的には、かなり強い鋭角の視角では、極めて暗い色相を見ることがもはや不可能となるであろう。
【0040】
20nm未満のh90を有する鉄効果顔料は、今日までのところ、研磨法で経済的に製造することは不可能である。そのような狭い厚み分布を有するメタリック効果顔料は、今日までのところ、PVD法によってしか達成できていない。さらに、鉄はその融点が高いために、蒸発させるのが困難である。この理由から、PVD法によって製造した鉄効果顔料は、今日まで、市場で入手することはできない。
【0041】
本発明の鉄顔料の有利な光学的性質は、顔料の厚み分布において、鉄効果顔料全部の厚みが薄いということに基づいているのは明らかである。具体的には、約100nmを超える厚みの顔料がほとんど存在してはならない。したがって、h98は、好ましくは100nm未満、より好ましくは90nm未満、極めて好ましくは80nm未満、特に好ましくは70nm未満である。
【0042】
さらなる好ましい実施態様においては、本発明の鉄効果顔料は、15〜45nmの範囲の平均厚みh50と、25〜60nmの範囲のh90とを有している。本発明の鉄効果顔料の、さらに、特に好ましい実施態様においては、20〜40nmの範囲の平均厚みh50(h50値)と、30〜50nmの範囲のh90とを有している。
【0043】
本発明の鉄効果顔料の厚みが薄い効果は、有利なことには、塗布媒体、たとえばペイントまたは印刷インキにおいて、顔料の積み重なりが非常に良好なことである。本発明の顔料は、たとえば、高い光沢性と暗いフロップ性を有する、膜の厚みが極めて薄い(たとえば膜の厚みが10μm未満の)不透明なコーティングを製造するのに使用することができる。
【0044】
特に自動車の仕上げ工程においては、特にコスト削減という根拠に関連して、膜の厚みが薄いことが要求される。ベースコートの膜の厚みは、今日までのところ、約15μmの程度とされてきた。同様にして、膜の厚みの薄いことが、曲線が強い要素においては、今日ではすでに標準となっている。コストの面では、膜の厚みが10μm未満であれば、特に有利である。
【0045】
印刷インキの場合においては、膜の厚みは、通常、ペイントの場合よりも遙かに薄い。このことは、グラビア印刷インキの場合には特にあてはまる。従来からの鉄効果顔料を用いて着色したグラビア印刷インキは、約40重量%の固形分含量を有している。印刷の膜は、それとは対照的に、約3〜6μmの未乾燥塗膜コーティングと、たった約1.5〜3μmの乾燥塗膜厚みとを有している。したがって、厚みが極めて薄く、厚み分布が狭いために、本発明の鉄効果顔料は、印刷インキおよび印刷の膜においては極めて有利に使用することができる。
【0046】
さらに好ましい実施態様においては、本発明の鉄効果顔料の厚み分布のh10は、8〜40nm、より好ましくは10〜35nm、極めて好ましくは15〜33nmの範囲である。h10が8nm未満であると、鉄効果顔料は、通常、サイズ分布(微細画分)に関してはやはり小さすぎるために、散乱光の割合が強くなり、その結果、好ましくない光学的性質となる。逆にh10が40nmを超えると、顔料は厚すぎ、言うまでもないことであるがh50およびh90もまた大きすぎることになり、鉄効果顔料における光沢と暗さまたは黒さとの組合せがもはや得られなくなる。
【0047】
本発明の鉄効果顔料は、かなり狭い厚み分布を有する、極めて薄い顔料である。このタイプの顔料は、高い不透明性を有している。
【0048】
顔料における不透明性は、典型的には、顔料量の単位重量あたりの被覆表面積として表される。鉄顔料の平均厚みが薄く、厚み分布の相対幅が狭いほど、顔料によって被覆される表面積が大きくなり、したがって、顔料そのものの不透明性が高くなる。
【0049】
顔料の長さ分布のd50値(顔料の微小板の平均直径)は、5μm〜40μm、好ましくは6μm〜30μm、より好ましくは7μm〜25μm、極めて好ましくは7.5μm〜20μmの範囲とするのが好ましい。
【0050】
さらに好ましいのは、d50値のサイズ範囲が、8から18μm未満まで、より好ましくは9〜17μm、極めて好ましくは10〜16μmである微細な顔料である。このタイプの顔料は、好ましいことには、非リーフィング性を有している、すなわち、鉄効果顔料は、主として、塗布媒体、たとえばインキまたはペイントの膜の表面またはその近傍では配向を起こさない。したがって、その鉄効果顔料では「フローティング」がない。それらは、潤滑剤としてたとえばオレイン酸を使用して研磨されているために、この物質でコーティングされている。
【0051】
この好ましい実施態様の場合においては、好ましくは8から18μm未満までのサイズを有する本発明の鉄効果顔料は、より高い形状因子を有しているので、磁場を印加することによって本発明の鉄効果顔料を塗布媒体の中で配向させると、大いに改良されたコントラストを与える。
【0052】
長さ方向の寸法は、レーザー粒度測定法(装置:Cilas 1064、Cilas、France)による通常の方法で測定し、球相当径として表される。
【0053】
本発明のさらなる実施態様においては、本発明の鉄効果顔料を、次いで、不動態化抑制剤層および/または不動態化耐食層を用いてコーティングする。このタイプのコーティングによって、本発明の鉄効果顔料の光沢および色彩特性が酸化による悪影響を受けることなく、本発明の顔料を水性ペイントおよび/または屋外用途において使用する場合の信頼性が得られる。
【0054】
不動態化層の作用機構は複雑である。抑制剤の場合においては、それはほとんどの場合、立体効果に基づく。したがって、抑制剤の大部分のものは、さらに、リーフィング性および非リーフィング性、その結果としてすなわち、塗布媒体中におけるフローティング性または非フローティング性という意味での、配向効果を有している。
【0055】
抑制剤は、適用される鉄効果顔料の重量を基準にして、1%〜15重量%の程度の低濃度で通常添加される。
【0056】
抑制作用のためには、以下のようなコーティング物質を使用するのが好ましい。
・一般式R−P(O)(OR)(OR)の有機変性ホスホン酸および/またはそのエステル[式中、R=アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキル、さらにはアルキルエーテル、特にエトキシル化アルキルエーテルであり、そしてR、R=H、C2n+1(n=1〜12、好ましくは1〜6)であり、それぞれの場合においてアルキルは、分岐状であっても非分岐状であってもよく、Rは、Rと同じであっても、異なっていてもよい。]
・一般式R−O−P(OR)(OR)の有機変性リン酸および/またはそのエステル[式中、R=アルキル、アリール、アルキル−アリール、アリール−アルキル、さらにはアルキルエーテル、特にエトキシル化アルキルエーテルであり、そしてR、R=H、C2n+1(n=1〜12、好ましくは1〜6)であり、それぞれの場合においてアルキルは、分岐状であっても非分岐状であってもよく、Rは、Rと同じであっても、異なっていてもよい。]
【0057】
純粋なホスホン酸もしくはエステル、またはリン酸もしくはエステル、またはそれらの各種所望の混合物を使用してよい。
【0058】
主として水性の溶媒の中で鉄粒子を研磨または変形させるときに、上述の抑制剤を研磨助剤として使用して、研磨操作の際の水素の生成(これは安全の見地からは危険である)を防止し、合わせて、鉄粒子および生成される鉄効果顔料が酸化されるのを防止する。
【0059】
不動態化抑制剤層は、さらに、腐食防止性の、有機官能化シラン、脂肪族または環状アミン、脂肪族または芳香族ニトロ化合物、酸素−、硫黄および/または窒素含有複素環化合物、たとえば、チオ尿素誘導体、高級ケトン、アルデヒドおよび/またはアルコール(脂肪族アルコール)の硫黄および/または窒素化合物、および/またはチオール、またはそれらの混合物を含むか、それらからなっていてもよい。別な態様として、不動態化抑制剤層が、上に記載された物質からなっていてもよい。有機ホスホン酸および/またはリン酸エステルまたはそれらの混合物が好ましい。アミン化合物を使用する場合には、それらが6個を超える炭素原子を有する有機基を有しているのが好ましい。上述のアミンは、有機ホスホン酸および/またはリン酸エステルまたはそれらの混合物と同時に使用するのが好ましい。
【0060】
化学的および物理的保護効果を有する腐食防止バリヤーを介して不動態化するための可能な方法は各種存在する。
【0061】
鉄効果顔料に対して特に良好な腐食防止作用を与える不動態化耐食層は、ケイ素酸化物、好ましくは二酸化ケイ素、クロム鉄酸化物(このものはクロメート処理方法によって適用するのが好ましい)、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ポリマー化合成樹脂(1種または複数)、リン酸塩、亜リン酸塩もしくはホウ酸塩化合物、またはそれらの混合物を含むか、またはそれらからなる。
【0062】
二酸化ケイ素層およびクロム鉄酸化物層(クロメート処理)が好ましい。
【0063】
SiO層は、有機溶媒中、ゾル−ゲル法で形成し、その平均層厚みが5〜150nm、好ましくは10〜40nmであるのが好ましい。
【0064】
本発明の鉄顔料を製造するための方法を、以下において説明する。極めて狭い粒子サイズ分布を有する極めて微細な鉄粉体を極めて穏やかな変形性の研磨にかけることが重要である。
【0065】
薄い、微小板形状の鉄顔料を製造するための方法には、ミリング装置を使用して、溶媒および潤滑剤および球状の研磨媒体の存在下で、dpowder,10≦2.0μm、dpowder,50≦5.0μm、およびdpowder,90≦7.0μmの粒子サイズ分布を有する粗い鉄粉体を研磨することが含まれる。
【0066】
その粗い鉄粉体は、dpowder,10≦2.0μm、dpowder,50≦5.0μm、およびdpowder,90≦7.0μmのサイズ分布を有している。サイズ分布は、好ましくは、dpowder,10≦1.6μm、dpowder,50≦3.3μm、dpowder,90≦5.5μmである。
【0067】
Δdpowder=(dpowder,90−dpowder,10)/dpowder,50の式に従って計算される、粗い鉄粉体のサイズ分布のスパンは、好ましくは0.7〜1.6、より好ましくは0.8〜1.5、極めて好ましくは0.9〜1.4である。
【0068】
そのように微細でかなり狭い範囲を有する粗い鉄粉体を用いた場合のみに、本発明の鉄効果顔料を製造することが可能である。そのサイズ分布は、下限として以下のパラメーターを有している:dpowder,10≧0.5μm、dpowder,50≧0.8μm、およびdpowder,90≧1.5μm。使用される粗い鉄粉体の特に好ましい下限は次のとおりである:dpowder,10≧0.7μm、dpowder,50≧1.5μm、およびdpowder,90≧2.5μm。したがって、使用される粗い鉄粉体は、主にナノメートルの寸法の粗い鉄粉体ではない。
【0069】
そのような狭いサイズ分布を有する細かい鉄粉体を使用するということが、本発明の鉄効果顔料を製造するためには、根本的に重要なのである。変形性研磨の間に、粗い鉄粉体粒子が完全に均質に変形される訳ではないが、このことは、ある種の粒子がより大きな変形を受けるのに対して、その粗い粉体粒子のある画分は、研磨の極めて遅い段階でしか変形されないということを意味している。こういうことが起きる原因の一つは、粒子が変形される確率がそのサイズに依存する点にある。したがって、予備的な変形をすでに受けて微小板を形成している粒子は、変形をまだ受けていない粗い粉体よりも高い比表面積を有しており、そのために、さらなる変形を受ける確率がより高い。したがって、粗い粉体のサイズ分布の幅は、それから成形される鉄の微小板のサイズ分布の要因であるだけではなく、厚み分布の分布の要因でもある。したがって、厚み分布を狭くするためには、それ相当にサイズの変化が小さい粗い鉄粉体を使用する必要がある。
【0070】
標準的な市販されている鉄粉体の鉄粒子では、従来からの研磨助剤、たとえば、ホワイトスピリットのような溶媒およびオレイン酸のような潤滑剤を使用し、球状の研磨媒体によって、極端に穏やかな変形性研磨により研磨されて、薄い鉄の微小板が得られている。本明細書における変形性研磨は、粗い粉体がほとんど変形だけを受ける、穏やかな研磨を意味している。したがって、粗い粉体および結果として得られる微小板は、変形の程度が上がるだけのことで、微粉砕されることはほとんどない。
【0071】
研磨媒体は、好ましくは研磨ボールであり、鋼鉄、ガラスまたはセラミックからなるものが好ましい。研磨ボールが鋼鉄からなっていれば特に好ましい。研磨ボールの平均サイズは、好ましくは0.5〜1.5mm、より好ましくは0.6から1.0mmまでである。
【0072】
本明細書において使用される粗い鉄粉体は、好ましくはカルボニル鉄粉体、より好ましくは還元処理されたカルボニル鉄粉体である。この粗い粉体の製造および組成は、DE 101 14 446 A1の中に包括的に記載されている(参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0073】
さらに、電解法によるか、湿式沈降法によるか、あるいはこれらの方法の組合せによって製造された粗い鉄粉体を使用することもまた可能である。原理的には、たとえば、Hollemann、Wiberg“Lehrbuch der Anorganischen Chemie”、Walter de Gruyter & Co Verlag Berlin、91−100thedition (1985) p.1.127 section 1.1.2に記載の方法に従って調製した粗い鉄粉体を使用することが可能である。
【0074】
DE 101 14 446 A1の教示に従った方法と比較したときの重要な違いは、鉄カルボニル粉体が、先に述べたように、狭いサイズ分布を有していなければならないという点である。したがって、使用する予定のカルボニル鉄粉体、または各種その他の粗い鉄粉体は、まず、上述のサイズ分布に合わせるために分級する必要がある。粗い鉄粉体またはカルボニル鉄粉体の分級は、たとえば篩別によるか、サイクロンを使用することによって実施することができる。
【0075】
鉄の粗い粉体粒子を研磨してフレーク(鉄の微小板または鉄効果顔料)を形成させることは、乾式、または湿式、すなわち、溶媒、たとえばホワイトスピリット、鉱油、トルエン、アルコール、塩化水素、水もしくはそれらの混合物の存在下で実施すればよい。
【0076】
鉄の粗い粉体粒子は、湿式研磨するのが好ましいが、その理由は、湿式の研磨または変形は乾式の研磨または変形よりも穏やかであり、湿式研磨では、使用した潤滑剤および、適切であるならば抑制剤物質もしくは耐食剤が、研磨された材料全体に均質に分配されるからである。同様に、安全面への配慮からも、湿式の研磨または変形が好ましい。微細に分断された鉄粉体は、自然発火性を有しており、そのためにも、粉末ではない形で扱った方がよい。
【0077】
湿式の研磨または変形を行った場合、研磨された材料は、それぞれの研磨ステージの後に、より容易に分級することができる。
【0078】
標準的な市販されている鉄粉体の研磨は、従来からのミル、たとえば撹拌ボールミル、エッジランナーミル、およびドラムボールミルなどの中で実施するが、特に有利なのは、ロータリーチューブボールミルである。
【0079】
研磨の際には、ボールミルの中に、所定の粒子サイズの鉄粉体を、溶媒、たとえばホワイトスピリットと共に導入する。粉体粒子が冷間圧接されることを防止するために、潤滑剤(たとえば、オレイン酸、ステアリン酸)またはそうでなければ抑制剤を添加するが、その量は、ミルにかける鉄顔料の特に自由比表面積(BET)に依存する。一般的に言えば、鉄粉体の重量を基準にして、2%〜25重量%、好ましくは2.5%〜22重量%の、オレイン酸および/またはステアリン酸を使用する。
【0080】
カルボニル鉄粉体を使用する場合には、それを常法に従って熱処理により還元するが、そのような方法は、たとえばDE 101 14 446 A1の中に包括的に記載されている(この特許の内容を参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0081】
しかしながら、アトマイザーの中で、液状の鉄のアトマイゼーションを行うことによって製造された粗い鉄粉体を使用することもまた可能である。その粗い粉体は、大部分が丸い形状を有しているのが好ましい。球体からやや楕円体の形態を有する粗い鉄粉体が特に好ましい。
【0082】
本発明において使用するための粗い鉄粉体は、極めて狭いサイズ分布を有する極めて微細な金属粉体である。サイズ分布の粒子バンドは、典型的には、レーザー粒度測定法によって求められる。
【0083】
アトマイゼーション工程の後で、その粗い粉体を、対応する分級工程によって、所望の狭いサイズ分布にしてもよい。分級は、空気分級機、サイクロン、篩および/またはその他公知の装置を用いて実施することができる。
【0084】
粗い鉄粉体における酸化物レベルを低く抑える目的で、アトマイゼーション工程は、不活性ガス雰囲気下で実施するのが好ましい。使用される不活性ガスは、窒素および/またはヘリウムであるのが好ましい。
【0085】
アトマイゼーションのために使用する鉄の純度は、粗い鉄粉体の全重量を基準にして、好ましくは97.0%から99.9重量%を超えるまで、より好ましくは98.0%から99.9重量%までである。その粗い粉体は、典型的な合金成分(たとえば、Mg、Si、Cr、Mnなど)を相応に少量だけ含んでいてもよい。
【0086】
粗い鉄粉体の研磨は、溶媒および研磨助剤としての潤滑剤、ならびに球状の研磨媒体、好ましくは研磨ボールの存在下で、研磨装置、好ましくはボールミルまたは撹拌ボールミルを使用して実施する。
【0087】
研磨は、一段の操作で実施してもよいし、あるいはそうでなければ二段以上の操作で実施してもよい。たとえば、二段の研磨工程においては、それぞれの工程において、サイズの異なる研磨ボールを使用してもよい。
【0088】
穏やかな方式の研磨を行うので、研磨を続ける時間は比較的に長い。研磨時間は、好ましくは12時間を超えて100時間まで、より好ましくは15〜80時間、極めて好ましくは18〜45時間である。二段以上の工程で研磨を実施する場合には、これらの研磨時間は、研磨に要した時間を合計したものと理解するべきである。
【0089】
研磨時間が12時間以下であると、顔料が十分に変形されず、本発明における小さな厚みに達することができない。もっと短い研磨時間で本発明の鉄効果顔料を得たいと望むなら、たとえば回転速度を上げたりして、より大きな変形を粒子に起こさせなければならない。しかしながら、そのようにすると、その手順がますます微粉砕研磨に近いものとなっていって、低品質の鉄顔料しか得られないようになる。その一方で、100時間を超える研磨時間では、コストが高くつきすぎる。
【0090】
研磨時間を長くすれば、粉体/顔料とボールとの衝突回数を増やすことになる。結果として、顔料が極めて均質に成形され、極めて平滑な表面と極めて狭い厚み分布とが得られる。
【0091】
極めて平滑な表面と、極めて丸い形状と、均一なサイズを有するボールが好ましい。研磨操作の間の温度は、典型的には10℃〜70℃の範囲である。25℃〜50℃の範囲の温度が好ましい。
【0092】
研磨もしくは変形は、好ましくは溶媒中で、溶媒の鉄粒子に対する重量比が好ましくは0.8〜6、より好ましくは1.0〜4.0で実施する。
【0093】
研磨ボールの鉄粒子に対する重量比は、好ましくは20〜120、より好ましくは25〜100である。
【0094】
ボールミル中での研磨に関しては、臨界速度ncritが重要なパラメーターであるが、これは、粒子が遠心力によってミルの壁面に押しつけられて、もはや研磨が事実上起きないような時点を示すものである。
【数1】

[式中、Dはドラムの直径であり、gは重力定数である]
【0095】
ボールミル中での回転速度は、臨界速度ncritの、好ましくは20%〜70%、より好ましくは25%〜65%である。
【0096】
回転速度が低いほど、鉄粒子の変形が遅くなる。ゆっくりとした変形を起こさせるためには、本発明の方法においても、軽量の研磨ボールを使用するのが好ましい。0.2〜10mg、より好ましくは0.21〜5mg、極めて好ましくは0.22〜4.3mgの個々の重量を有する研磨ボールを使用するのが好ましい。
【0097】
従来からの研磨方法とは異なって、本発明の方法においては、粗い鉄粉体を、主として摩砕または微粉砕することなく、代わりに、かなり長時間をかけて極めて穏やかに変形させる。
【0098】
上述の条件は、極めて穏やかな研磨または変形を起こさせ、そこでは、粗い鉄粉体がゆっくりと成形され、高い運動エネルギーを有するボールとの衝突の結果としての破損が回避される。
【0099】
その研磨操作の際の潤滑剤としては、極めて多くの化合物を使用することができる。
【0100】
これらの化合物としては、特に、10〜24個の炭素原子のアルキル基を有する脂肪酸が長い間使用されてきた。ステアリン酸、オレイン酸またはそれらの混合物を使用するのが好ましい。潤滑剤としてのステアリン酸はリーフィング顔料を与えるのに対して、オレイン酸は非リーフィング顔料を与える。リーフィング顔料が特徴としているのは、それらが、塗布媒体、たとえばペイントまたは印刷インキの中で浮上する、すなわちそれらが塗布媒体の表面で規則正しい位置をとるということである。非リーフィング顔料は、それとは対照的に、塗布媒体の内部で規則正しい位置をとる。さらに、脂肪酸に対して、たとえば長鎖のアミノ化合物を添加することも可能である。脂肪酸は、動物由来であっても、植物由来であってもよい。同様にして、有機ホスホン酸および/またはリン酸エステルを潤滑剤として使用することも可能である。
【0101】
使用する潤滑剤の量が少なすぎることがないようにしなければならないが、その理由は、そうしないと、粗い鉄粉体が大きな変形を受ける結果として、生成する微小板状の鉄顔料の極めて大きな表面積に、吸着される潤滑剤が十分に行きわたらないからである。この場合には、冷間圧接を起こす場合がある。したがって、使用した粗い鉄粉体の重量を基準にして、1.5%〜30重量%、好ましくは2%〜25重量%の潤滑剤の量が好ましい。
【0102】
溶媒の選択は、本質的には、決定的に重要という訳ではない。たとえばホワイトスピリット、ソルベントナフサなどの典型的な溶媒を使用するのがよい。アルコール、たとえばイソプロパノール、エーテル、ケトン、エステルなどを使用することも可能である。
【0103】
溶媒として(少なくとも主成分としての)水を使用することもまた可能である。しかしながら、その場合においては、使用される潤滑剤が、顕著な腐食抑制効果を有するようにするべきでる。この場合、ホスホン酸および/またはリン酸エステルが好ましいが、それらがエトキシル化側鎖を有していてもよい。ここでは、研磨の際にさらなる腐食抑制剤を添加することも有利である。
【0104】
鉄粒子を研磨または変形させてから、そうして得られた鉄効果顔料を、研磨媒体、好ましくは研磨ボールから分離する。
【0105】
その方法のさらに好ましい工程において、得られた鉄効果顔料を、分級にかけてもよい。この分級は、本発明の薄い鉄効果顔料が破壊されないように、穏やかに実施するべきである。ここでの分級プロセスは、たとえば、湿式篩別、デカンテーション、またはそうでなければ(重力を用いるか、遠心分離による)沈降による分離などであってよい。湿式篩別の場合では、一般的には、粗い画分を篩別する。別な方法で、微細な画分を特に分離させてもよい。次いでその懸濁液を、(たとえばフィルタープレス、遠心分離機またはフィルターの助けを借りて)過剰の溶媒から分離する。
【0106】
さらなる工程において、所望の供給の形態とするためのさらなる加工を次いで実施してもよい。
【0107】
たとえば、本発明の鉄効果顔料を、ペーストの形態としてもよい。この場合における固形分含量は、ペーストの全重量を基準にして、30%〜65重量%、好ましくは40%〜60重量%、より好ましくは45%〜55重量%である。
【0108】
さらに、本発明の鉄効果顔料を乾燥によって、粉体の形態、好ましくは粉塵飛散のない粉体の形態としてもよい。その乾燥粉体を適切なホモジナイザーの中でさらに加工して、極めて少量(<10%)の溶媒を添加することにより、粉塵飛散のない金属粉体を得てもよい。最初にフィルターケーキを乾燥させ、次いで別の溶媒を用いてもう一度ペーストとすること(再湿潤)もまた可能である。
【0109】
しかしながら、驚くべきことには、本発明の鉄効果顔料は、そのフィルターケーキに適切な樹脂の適切な分散体を添加することによって、粒状物、ペレット、ブリケット、タブレット、またはソーセージ状物に加工することもまた可能である。これらの供給形態には、粉塵飛散がなく、計量が容易であり、優れた分散性を有しているという利点がある。
【0110】
驚くべきことには、厚みが薄いにもかかわらず、本発明の鉄効果顔料を圧縮しても、後の時点でインキまたはペイント媒体の中に導入したときに、その鉄効果顔料の光学的性質をまったく損なうことがないということが見出された。
【0111】
ペレット化は、従来からの方法でペレット化プレートの上で実施すればよい。タブレット化は、タブレット化装置で実施すればよい。ソーセージ状物は、鉄効果顔料のペーストまたは粉体から圧縮成形法によるか、または鉄効果顔料のペーストをエクストルーダーから押出し、その押し出されたペーストのストランドをロータリーナイフ装置を使って切断する方法により製造すればよい。本発明の鉄効果顔料の粒状化は、たとえばスプレー造粒法によって実施することができる。
【0112】
本発明の鉄効果顔料は、粒状物またはペレットの形態で、その粒状物またはペレットの全重量を基準にして、たとえば90重量%〜35重量%、好ましくは70重量%〜40重量%の高い顔料含量で、極めて有利に提供することができる。
【0113】
本発明の鉄効果顔料は比表面積が高いために、本発明の鉄効果顔料をたとえばペレット化するには、かなり多量の分散樹脂を使用する必要がある。ペレットの全配合物を合計した重量を基準にして、2%〜50重量%、より好ましくは5%〜30重量%の樹脂を使用するのが好ましい。
【0114】
ペレット化のためには、各種多くの分散樹脂を使用することができる。その例としては、天然由来の樹脂と合成樹脂の両方が挙げられる。それらには、たとえば以下のものが含まれる:アルキド樹脂、カルボキシメチル−およびカルボキシエチルセルロース樹脂、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)およびセルロースアセテートブチレート(CAB)、クマロール−インデン樹脂、エポキシドエステル、エポキシド−メラミンおよびエポキシド−フェノール縮合物、エチル−およびメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケトン樹脂およびマレイン酸樹脂、ロジン、メラミン樹脂、ニトロセルロース樹脂、フェノール樹脂および変性フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ならびにビニル樹脂。
【0115】
これらのポリマー樹脂の中でも、次のものがより特に好ましい:アクリレートコポリマーおよびアクリル酸エステル樹脂、ポリアクリロニトリルおよびアクリロニトリルコポリマー樹脂、ブタジエンと塩化ビニリデンとのコポリマー、ブタジエン/スチレンコポリマー、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルコポリマー、さらには、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ならびにポリスチレン樹脂。他のコポリマーとしては、スチレン/無水マレイン酸樹脂およびスチレン/シェラック樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/ビニルエーテル樹脂、および塩化ビニル/塩化ビニリデン樹脂が挙げられる。
【0116】
さらに、天然由来の樹脂、たとえば、アラビアゴム、グッタペルカ、カゼインおよびゼラチンを使用してもよい。
【0117】
好ましくはアルデヒド樹脂、たとえば、BASF AG、Ludwigshafen、GermanyのLaropalシリーズである。ワックスもまた、バインダー材料として適している。このようなものとしては、天然ワックスの例として、蜜ろう、カンデリラワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、およびパラフィンワックスも挙げられる。合成ワックス、たとえばPEワックスも、同様に考えられる。
【0118】
上述のように調製したものは、たとえばペイント系または印刷インキの中に、本発明の鉄効果顔料の望ましくない集塊を起こすことなく、極めて良好に組み入れることができる。
【0119】
その後でコーティングによって不動態化させた、本発明の鉄効果顔料は、好ましくは水性ペイントおよび屋外用途において、用途が見いだせる。
【0120】
ユニークな光学的品質および暗いメタリックから黒いメタリックまでの傑出したカラーフロップ性を有し、これまで知られていなかったフリップフロップ効果を有する、本発明の微小板形状の鉄効果顔料によって、傑出したメタリックな光学的品質を有する暗い色相の配合物が得られるようになった。
【0121】
これらの革新的な鉄効果顔料は、画期的な効果コーティングに新しい可能性を開き、および/または、それらの性能特性をもって、従来から流通していた鉄効果顔料に対する、コスト的に有力な補助物となる。
【0122】
本発明の鉄効果顔料が示す、優れた濡れ特性およびその結果得られる傑出した顔料配向性から、均質で、隠蔽性が高く、輝度の高い金属表面が得られる。
【0123】
本発明の鉄効果顔料は、塗布媒体中で、従来からの着色顔料または染料と都合よく混合することができる。
【0124】
従来からの着色顔料は、典型的には、0.05〜5μmの平均粒子サイズを有し、有機顔料と無機顔料の両方が含まれる。
【0125】
使用することが可能な無機着色顔料は、有色顔料、黒色顔料、および白色顔料である。典型的な有機顔料は、有色顔料および黒色顔料である。
【0126】
適切な有機顔料として以下のものが挙げられる。
・モノアゾ顔料:
C.I.ピグメントブラウン25;
C.I.ピグメントオレンジ5、13、36、38、64、および67;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、51:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、58:2、58:4、63、112、146、148、170、175、184、185、187、191:1、208、210、245、247、および251;
C.I.ピグメントイエロー1、3、62、65、73、74、97、120、151、154、168、181、183、および191;
C.I.ピグメントバイオレット32;
・ジスアゾ顔料:
C.I.ピグメントオレンジ16、34、44、および72;
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176、180、および188;
・ジスアゾ縮合顔料:
C.I.ピグメントイエロー93、95、および128;
C.I.ピグメントレッド144、166、214、220、221、242、および262;
C.I.ピグメントブラウン23および41;
・アンタントロン顔料:
C.I.ピグメントレッド168;
・アントラキノン顔料:
C.I.ピグメントイエロー147、177、および199;
C.I.ピグメントバイオレット31;
・アントラピリミジン顔料:
C.I.ピグメントイエロー108;
・キナクリドン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ48および49;
C.I.ピグメントレッド122、202、206、および209;
C.I.ピグメントバイオレット19;
・キノフタロン顔料:
C.I.ピグメントイエロー138;
・ジケトピロロピロール顔料:
C.I.ピグメントオレンジ71、73、および81;
C.I.ピグメントレッド254、255、264、270、および272;
・ジオキサジン顔料:
C.I.ピグメントバイオレット23および37;
C ピグメントブルー80;
・フラバントロン顔料:
C.I.ピグメントイエロー24;
・インダントロン顔料:
C.I.ピグメントブルー60および64;
・イソインドリン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ61および69;
C.I.ピグメントレッド260;
C.ピグメントイエロー139および185;
・イソインドリノン顔料:
C.I.ピグメントイエロー109、110、および173;
・イソビオラントロン顔料:
C.I.ピグメントバイオレット31;
・金属錯体顔料:
C.I.ピグメントレッド257;
C.ピグメントイエロー117、129、150、153、および177;
C.I.ピグメントグリーン8;
・ペリノン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ43;
C.I.ピグメントレッド194;
・ペリレン顔料:
C.I.ピグメントブラック31および32;
C.I.ピグメントレッド123、149、178、179、190、および224;
C.I.ピグメントバイオレット29;
・フタロシアニン顔料:
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、および16;
C.I.ピグメントグリーン7および36;
・ピラントロン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ51;
C.I.ピグメントレッド216;
・ピラゾロキナゾロン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ67;
C.I.ピグメントレッド251;
・チオインジゴ顔料:
C.I.ピグメントレッド88および181;
C.I.ピグメントバイオレット38;
・トリアリールカルボニウム顔料:
C.I.ピグメントブルー1、61および62;C.
C.I.ピグメントグリーン1;
C.I.ピグメントレッド81、81:1、および169;
C.I.ピグメントバイオレット1、2、3、および27;
・C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック);
・C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー);
・C.I.ピグメントブラウン22
【0127】
適切な無機顔料として以下のものが挙げられる。
・白色顔料:
二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)、ジンクホワイト、顔料用酸化亜鉛;硫化亜鉛、リトポン;
・黒色顔料:
黒色酸化鉄(C.I.ピグメントブラック11)、鉄マンガンブラック、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27);カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7);
・有色顔料:
酸化クロム、酸化クロムハイドレートグリーン;クロムグリーン(C.I.ピグメントグリーン48);コバルトグリーン(C.I.ピグメントグリーン50);ウルトラマリングリーン;コバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28および36;C.I.ピグメントブルー72);ウルトラマリンブルー;マンガンブルー;ウルトラマリンバイオレット;コバルトおよびマンガンバイオレット;赤色酸化鉄(C.I.ピグメントレッド101);カドミウムスルホセレニド(C.I.ピグメントレッド108);硫化セリウム(C.I.ピグメントレッド265);モリブデートレッド(C.I.ピグメントレッド104);ウルトラマリンレッド;褐色酸化鉄(C.I.ピグメントブラウン6および7)、混合ブラウン、スピネルおよびコランダム相(C.I.ピグメントブラウン29、31、33、34、35、37、39、および40)、クロムチタンイエロー(C.I.ピグメントブラウン24)、クロムオレンジ;硫化セリウム(C.I.ピグメントオレンジ75);黄色酸化鉄(C.I.ピグメントイエロー42);ニッケルチタンイエロー(C.I.ピグメントイエロー53;C.I.ピグメントイエロー157、158、159、160、161、162、163、164、および189);クロムチタンイエロー;スピネル相(C.I.ピグメントイエロー119);硫化カドミウムおよび硫化カドミウム亜鉛(C.I.ピグメントイエロー37および35);クロムイエロー(C.I.ピグメントイエロー34);バナジウム酸ビスマス(C.I.ピグメントイエロー184)
【0128】
暗いが光沢性の高い鉄の新規な色彩特性を有する本発明の鉄効果顔料は、コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、および化粧品配合物において、さらには証券印刷および機密保護印刷分野における磁気もしくは磁化可能なメタリック効果顔料として、さらには多層効果顔料における反射材料として、有利に採用することができる。
【0129】
本発明の鉄効果顔料は、その磁気的特性のために、塗布媒体の中で永久磁石または電磁石を使用して磁力線の方向に配列することが可能であるので、魅力ある奥行き効果および三次元性を有するユニークな効果を与える。ホログラム様、およびシネマトグラム様の構造を作り出すことができる。そのような構造は、特に機密保護印刷用途においてだけでなく、さらにたとえば自動車の内装仕上げ工程のようなコーティングにおいても需要がある。
【0130】
着色顔料とのブレンド物におけるマストーンなどにおいても、この方法でユニークな効果を得ることができる。
【0131】
従来技術において公知の磁性顔料と比較すると、本発明の鉄効果顔料は、磁場においてさらに良好な配向性を有している。その厚み分布が一段と均質であるために、磁場の中で別な方向に配向した顔料との間で、より大きなコントラストが得られる。
【0132】
本発明の鉄効果顔料は、コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、証券印刷および機密保護印刷、化粧品、ならびに多層効果顔料の製造における反射材料における効果顔料としての用途を見出している。
【0133】
本発明の鉄効果顔料は、さらに、コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、証券印刷および機密保護印刷または化粧品の用途における磁気配向が可能な効果顔料としての用途を見出している。
【0134】
化粧品配合物の中でも、特にネイルワニスがこの点では好ましい。この点で特に言及しておくに値するのは、US 2006/0088484 A1にあるようなネイルワニスである(この特許を参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0135】
本発明の鉄効果顔料は、従来からのコーティング、たとえば、家電分野、自動車の内装デザイン分野、または家具のデザインなどにおいて、特に有利に使用することができる。それはさらに、機能的コーティング材料、たとえば熱放射を反射させる用途で、有利に使用することもできる。
【0136】
さらに本発明の鉄効果顔料は、極めて良好な耐薬品性、光安定性、および耐候安定性の面でも注目に値する。さらに、顔料の厚みが薄いにもかかわらず、それは、驚くべきことには、従来からのメタリック効果顔料と同様の取扱性と加工性を有している。
【0137】
本発明はさらに、本発明の鉄効果顔料を有するかまたはそれを含むコーティングされた物品も提供する。
【0138】
さらに好ましい実施態様においては、本発明の鉄効果顔料は、印刷インキにおいて使用される。対象となるインキは、液状印刷インキ、たとえばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷または凹版印刷用のインキである。
【0139】
本発明によって提供されるさらなるものとしては、本発明の鉄効果顔料を含む印刷インキ、特に液状印刷インキ、たとえばグラビア印刷、フレキソ印刷またはスクリーン印刷用のインキなどが挙げられる。
【0140】
このタイプのグラビア印刷、フレキソ印刷またはスクリーン印刷用のインキには、溶媒または溶媒混合物が含まれる。後者の目的の一つは、バインダーを溶解させることであるが、また別な目的は、印刷インキの重要な性能特性、たとえば粘度または乾燥速度を設定することである。
【0141】
液状印刷インキ、たとえば、フレキソ印刷およびグラビア印刷用のインキのために使用される溶媒としては、特に低沸点溶媒が挙げられる。その沸点は、一般的には140℃以下である。高沸点溶媒は、乾燥速度を設定する目的で、かなり少量で使用されるだけである。スクリーン印刷インキの配合も、フレキソ印刷またはグラビア印刷用のインキと同様であるが、ただしそれの粘度の方がやや高く、典型的にはある程度高い沸点を有する溶媒を含んでいる点で異なっている。
【0142】
液状印刷インキに適した溶媒の例としては、エタノール、1−プロパノールもしくは2−プロパノール、置換アルコール、たとえばエトキシプロパノール、またはエステル、たとえば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピルもしくは酢酸n−ブチルなどが挙げられる。言うまでもないことであるが、複数の溶媒の混合物を使用することもまた可能である。たとえば、混合物が、エタノールと、エステル、たとえば酢酸エチルまたは酢酸プロピルとの混合物であってもよい。フレキソ印刷版を用いて印刷するためには、一般的にエステルの割合が、全溶媒に対する比率として、約20%〜25重量%を超えないようにすることが推奨される。液状印刷インキのための溶媒として、水、または主として水性の溶媒混合物を採用することも可能であり、好ましい。
【0143】
印刷インキの性質に応じて、全成分を合計したものを基準にして、10%〜60重量%の溶媒を通常は使用する。しかしながら、本発明の印刷インキの場合、溶媒の範囲を60%〜80重量%とするのが特に有利であることが見出されている。
【0144】
放射線硬化が可能な印刷インキは、通常、上述のような溶媒を含まず、代わりに反応性希釈剤を含む。反応性希釈剤は、典型的には二つの機能を果たす。それは、一方では印刷インキを架橋または硬化させる機能を果たすが、他方では、しかしながら、従来からの溶媒(DE 20 2004 005 921 UI 2004.07.1)のような役目も果たして、粘度を調節する。その例としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、ならびに特に多官能アクリレート、たとえば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートまたはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0145】
本発明のメタリック印刷インキのためのバインダーとしては、原理的には、液状印刷インキに通常使用されているバインダーを使用することができる。所望の末端用途および所望の性質に応じて、当業者は適切な選択をする。好適なバインダーの例としては、ポリエステル、ポリアミド、PVCコポリマー、脂肪族および芳香族ケトン樹脂、メラミン−尿素樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、マレイン酸エステル、ロジン誘導体、カゼインおよびカゼイン誘導体、エチルセルロース、ニトロセルロース、または芳香族および/もしくは脂肪族ポリウレタンが挙げられる。酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリレート、メタクリレート、ビニルピロリドン、またはビニルアセタールのポリマーまたはコポリマーを使用してもよい。特に有利なのは、官能基を含む超分岐状ポリマーを使用することであるが、その例は超分岐状のポリウレタン、ポリウレアまたはポリエステルアミドであり、それらはWO 02/36695およびWO 02/36697に開示されている。言うまでもないことであるが、複数のポリマーバインダーの混合物を使用することもまた可能であるが、ただし、選択された複数のバインダーが、相互に組み合わさったときに、望ましくない性質を示さないことが必要である。バインダーをすべて合計した量は、典型的には、その印刷インキの全成分を合計した量に対して5%〜40重量%である。
【0146】
特に好適なバインダーとしては、たとえば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリレート、ポリビニルブチラール、ならびに脂肪族および芳香族のポリウレタンおよびポリウレア、特に超分岐状のポリウレタンおよびポリウレア、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0147】
水希釈性メタリック印刷インキのためのバインダーとして考えられるのは、特に、(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルとスチレンとをベースとするコポリマーである。このタイプのバインダーは、印刷インキに使用するための溶液または分散体として、たとえばZinpol(登録商標)(Worlee)の名称で市販されている。さらなる例としては、芳香族および脂肪族の水性ポリウレタン、ポリエステル、ならびに水性ポリアミドが挙げられる。
【0148】
ペースト状の印刷インキに好適なバインダーとしては、たとえば、ロジンまたは変性ロジンが挙げられる。変性ロジンの例としては、たとえばグリセロールまたはペンタエリスリトールのようなポリオールを用いて部分的または全面的にエステル化されたロジンが挙げられる。
【0149】
放射線硬化が可能な印刷インキには、たとえばオレフィン基、ビニルエーテル基、またはエポキシド基のような架橋性の基を含むバインダーが含まれる。この場合、バインダー(反応性希釈剤を含む)を合計したものが、一般的には、印刷インキの成分全体の30%〜90重量%の範囲にある。
【0150】
本発明の鉄効果顔料印刷インキは、1種または複数の補助剤または添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤および補助剤の例は、充填剤、たとえば、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム水和物またはケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウムである。ワックスは耐摩耗性を向上させ、潤滑性を上げるのに役立つ。その例としては、特に、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、石油ワックス、またはセレシンワックスが挙げられる。脂肪酸アミドを使用して、表面の平滑性を向上させてもよい。可塑剤は、乾燥させた膜の弾性を向上させるのに役立つ。さらに、放射線硬化が可能な印刷インキの場合には、少なくとも1種の光重合開始剤または光重合開始剤系を添加剤として使用する。効果顔料を分散させるために、分散助剤を使用してもよい。脂肪酸を使用して、印刷層の中で効果顔料のフローティングを起こし、それによって顔料が印刷層の上側境界表面の中またはその部分に集まるようにしてもよい。この手段により、有利に改良されたメタリック効果を得ることが可能である。さらに、沈降防止剤を添加してもよい。そのような添加によって、効果顔料の沈降が防止される。例としては、シリカ、セルロース誘導体、またはその他のワックス類が挙げられる。
【0151】
特に好ましい低粘度のフレキソ印刷、グラビア印刷、またはスクリーン印刷用のインキを配合するためには、通常は沈降防止剤を添加することが推奨されるが、常に絶対に必要であるという訳ではない。全部の添加剤と補助剤を合計した量は、印刷インキの全成分の合計に対して、典型的には20重量%を超えないようにするべきであり、0.1%〜10重量%とするのが好ましい。
【0152】
本発明のメタリック印刷インキは、原理的には公知の方法である、慣用される装置、たとえば、ディソルバーまたは撹拌装置の中で、構成成分を強力に混合または分散させることによって製造することができる。ディソルバーを使用する場合、当業者ならば、エネルギーの注入を高くしすぎないようにして、本発明のメタリック効果顔料に対する損傷を防止するであろう。言うまでもないことであるが、逆の面からは、顔料を適切に分散させるのに十分な程度のエネルギーは注入しなければならない。本発明のメタリック効果顔料と同時に典型的な着色顔料を使用する場合には、メタリック印刷インキの溶媒、バインダー、および適切であるならば補助剤の一部または全部の中に、この着色顔料を予備分散させておき、本発明の鉄効果顔料の添加は後回しにすることが推奨される。このようにすると、追加される顔料が分散されて特に良好な効果を与え、過度の分散操作による鉄効果顔料の損傷が起きない。そうした顔料に代えて、予備分散させた顔料濃縮物を添加することも可能である。この場合においては、市販の印刷インキを少量使用することも特に手際のよい方法であるが、ただし、添加する印刷インキがメタリック印刷インキ配合物と相溶性があり、そしてその性質を損なうことがないということが必要である。
【0153】
以下に記述する実施例は本発明を説明するものであるが、本発明を限定する訳ではない。
【0154】
実施例1:
30gのBASF AG Ludwigshafenの還元「カルボニル鉄粉体SM」(平均粒子サイズ:dpowder,50=2.7μm、dpowder,10=1.3μm、dpowder,90=4.5μm、鉄含量:99.8%)および150gのホワイトスピリット、およびさらに0.9gのオレイン酸の混合物を、ポットミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に入れ、ミルの口を閉じた。次いで、2kgの鋼鉄製ボール(直径:1.5mm)を用い、45rpmで5時間かけて研磨を実施した。ホワイトスピリットを用いて、ミルから抜き出した研磨生成物を洗浄し、篩別(40μm)により研磨ボールから分離した。サクションフィルターによって、その篩を通過した物質から、ホワイトスピリットのほとんどを分離した。得られたフィルターケーキ(固形分含量70%)から、40gの顔料ペーストを、150gのホワイトスピリットおよびさらに0.9gのオレイン酸と共に、ポットミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に入れた。次いで、第二の研磨工程において、3kgの鋼鉄製ボール(直径:0.8mm)を用い、38rpmで15時間かけて研磨を行った。ホワイトスピリットを用いて、ミルから抜き出した研磨生成物を洗浄し、篩別(25μm)により研磨ボールから分離した。サクションフィルターによって、その篩別した物質から、ホワイトスピリットのほとんどを分離し、次いでラボラトリーミキサーの中でホワイトスピリットを用いて、ペースト化(約65%の固形分割合)を行った。
【0155】
実施例2:
60gのBASF AG Ludwigshafenの還元「カルボニル鉄粉体SM」(実施例1参照)および90gのホワイトスピリット、およびさらに6.0gのオレイン酸の混合物を、ポットミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に入れ、ミルの口を閉じた。次いで、2kgの鋼鉄製ボール(直径:0.8mm)を用い、45rpmで24時間かけて研磨を行った。ホワイトスピリットを用いて、ミルから抜き出した研磨生成物を洗浄し、篩別(25μm)により研磨ボールから分離した。サクションフィルターによって、その篩別した物質から、ホワイトスピリットのほとんどを分離し、次いでラボラトリーミキサーの中でホワイトスピリットを用いて、ペースト化(約65%の固形分割合)を行った。
【0156】
実施例3:
30gのBASF AG Ludwigshafenの還元「カルボニル鉄粉体SU」(平均粒子サイズ:dpowder,50=1.9μm、dpowder,10=0.9μm、dpowder,90=3.3μm、鉄含量:99.8%)および60gのホワイトスピリット、およびさらに6.0gのオレイン酸の混合物を、ポットミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に入れ、ミルの口を閉じた。次いで、2kgの鋼鉄製ボール(直径:0.8mm)を用い、45rpmで24時間かけて研磨を行った。ホワイトスピリットを用いて、ミルから抜き出した研磨生成物を洗浄し、篩別(25μm)により研磨ボールから分離した。サクションフィルターによって、その篩別した物質から、ホワイトスピリットのほとんどを分離し、次いでラボラトリーミキサーの中でホワイトスピリットを用いて、ペースト化(約65%の固形分割合)を行った。
【0157】
実施例4:
100gの還元された粗い鉄粉体MV144(NMD New Materials Development、St.Panthaleon、Austria)(平均粒子サイズ:dpowder,50=2.0μm、dpowder,10=0.5μm、dpowder,90=3.0μm、鉄含量:98.5%)および380gのホワイトスピリット、およびさらに4gのオレイン酸の混合物を、ポットミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に入れ、ミルの口を閉じた。次いで、4kgの鋼鉄製ボール(直径:1.5mm)を用い、43rpmで32時間かけて研磨を行った。ホワイトスピリットを用いて、ミルから抜き出した研磨生成物を洗浄し、篩別(25μm)により研磨ボールから分離した。サクションフィルターによって、その篩別した物質から、ホワイトスピリットのほとんどを分離し、次いでラボラトリーミキサーの中でホワイトスピリットを用いて、ペースト化(約65%の固形分割合)を行った。
【0158】
比較例5:
DE 101 14 446 A1に従って製造された市販のFerricon 200(Eckart GmbH)。
【0159】
得られた効果顔料は、傑出したメタリック光沢および軟鉄粉体の透磁率を示す。
【0160】
レーザービーム回折測定(Cilasの測定法;装置:Cilas 1064)により、そのサイズ分布を確認した。
【0161】
本発明実施例1〜4および比較例5のサンプルについて、電界イオン走査型電子顕微鏡によって特性分析して、粒子厚みをより精密に求めた。
【0162】
SEMによる厚み分布の測定では、そのサンプルを以下のようにして調製した。
【0163】
それぞれの場合においてペーストの形態またはフィルターケーキの形態で存在する、本発明の鉄効果顔料および標準的な湿式研磨で得られた従来からの鉄効果顔料を、まずアセトンを用いて洗浄してから、乾燥させた。
【0164】
電子顕微鏡法において慣用される樹脂、たとえばTEMPFIX(Gerhard Neubauer Chemikalien、D−48031 Muenster、Germany)を、サンプルプレートに塗布し、ホットプレート上で加熱して軟化させた。次いで、そのサンプルプレートをホットプレートからおろし、その軟化させた樹脂の上に対象の鉄粉体を散布した。冷却するとその結果、樹脂が再固化し、その上に散布した鉄顔料がサンプルプレート上に固定されて調製されたが、粘着力と重力との間の相互作用のために、それらはほとんど垂直に立っていた。その結果、顔料は、電子顕微鏡において、側面から効果的に測定することができた。厚みを測定するには、表面に対して垂直な面に対する顔料の方位角αを推定し、次式に従って厚みの評価に組み入れた。
eff=hmeas/cosα
【0165】
相対頻度を基準にして、heff値から累積分布曲線を描いた。それぞれの場合において、100個の粒子を計測した。
【0166】
本発明実施例および比較例5の厚み分布の累積篩下分布を図1に示す。統計的な解析から、本発明の顔料および湿式研磨による従来からの顔料についての75〜100個の粒子の累積篩下曲線はほとんど一定であることがわかった。本発明実施例の粒子全体の分布における粒子の厚みは、Ferricon 200に比較すると、もっと小さいことが明らかに認められる。いずれの場合においても、測定値は対数正規関数を用いてあてはめた。
【0167】
以下の表1に、本発明の鉄効果顔料の物理的特性を、市販のEckartの鉄効果顔料“Ferricon 200”と比較して示すが、それらは、サイズ分布(Cilas)におけるd10、d50、およびd90値、ならびにSEMによる検討からの厚み測定のパラメーターh10、h50、およびh90、およびそれから計算したスパン値に基づくものである。h10、h50、およびh90値は、もとのデータから計算した(Excelプログラムの分位数関数)。
【0168】
鉄効果顔料の長さ方向の大きさdは、レーザー粒度計(Cilas 1064、Cilas、France)を使用して測定し、長さ方向の大きさの平均値の目安として、累積篩下分布のd50値(単位、μm)を選択した。さらに、BET法により、比表面積を求めた。
【0169】
【表1】

【0170】
表1の中の数字は、市販製品の比較例5(Ferricon 200)と比べて、本発明の鉄効果顔料はそれぞれの場合において、厚み分布の平均値h50が低い、特にh90が低いということを示している。
【0171】
以下の表2に、本発明の微小板形状の鉄効果顔料の不透明性を、市販のEckartの鉄顔料“Ferricon 200”と比較して示す。不透明性は、Cellitワニス中の、コントラストカード上のアプリケータードローダウンから、入射角45゜および視角110゜での明度における差を基準として示している。
【0172】
【表2】

【0173】
この表の中の数字は、市販のEckartの鉄顔料“Ferricon 200”に比較して、本発明の鉄効果顔料が、塗布媒体の中で、実質的により高い不透明性を有していることを示している。この改良された不透明性は、基本的に顔料の厚みがより薄いためである。
【0174】
実施例6〜9:グラビア印刷インキ
実施例1〜4の本発明の顔料を、それぞれ、グラビア印刷インキの中に組み入れた。グラビア印刷インキは、市販のポリビニルブチラールバインダーを含み、また溶媒として酢酸エチル/メトキシプロパノール混合物を含んでいた。
【0175】
DIN 4カップからの流出時間が20秒になるように、粘度を調節した。顔料レベルは、全配合物を基準にして、約16%〜17重量%の鉄効果顔料となるようにした。
【0176】
比較例10:
比較例5(Ferricon 200)を用いた実施例6〜9に相当するグラビア印刷配合物。
【0177】
さらなる特性解析を行うために、実施例6〜10のグラビア印刷インキを用いて、いわゆる面反転塗布(鏡面塗布)を実施した。これらの面反転塗布は、グラビア印刷インキを用いてMelinex 400フィルム(PETフィルム、50μm)に印刷することにより実施した。
【0178】
溝の深さが24μmのアプリケーターを使用して、グラビア印刷インキを塗布した。
【0179】
その印刷物について、裏面から、すなわちフィルムの側からの光沢に関連した特性測定を行った。この側では、所望の金属鏡面効果が発揮された。
【0180】
面反転塗布物は、DIN 67 530に従った20゜での光沢測定により光学的に評価した(装置:Byk−Gardner、D−82538 Geretsried、Germanyのmicro−TRI−gloss)。ここでは、キャリブレーションは、ダークキャリブレーションにより、そしてさらに、20°で92の値を有する黒色ミラーガラス板によって実施した。
【0181】
本発明実施例および比較例5からのそれぞれの鉄効果顔料を用いて着色された鏡面塗布物の測色データを、以下の表3に示す。
【0182】
さらに、メーカーのデータに従って、明度測定(CIE Lab 1973)を実施し、DuPontフロップ指数を計算した。
フロップ指数=2.68×(L15゜−L110゜1.11/L45゜0.86
【0183】
明度の測定は、X−Riteの装置を使用して実施した(光源:D65、10゜標準観測者)。
【0184】
【表3】

【0185】
本発明実施例の鉄効果顔料は、一貫して、Ferricon 200よりも高い光沢を有している。同様にフロップ指数もより高い。しかしながら、驚くべきことには、視角110゜での明度値L110゜は、極端に低く、正に6未満の数値である。このタイプの表面は、主観的には事実上黒色と認識される。したがって、本発明実施例の鉄効果顔料は、強いメタリック光沢を有すると同時に、極めて高い明度フロップ性も有している。鋭角の入射角および/または視角では、その塗布物は暗色ないしは黒色に見える。このことは、主観的には、高度に魅力的な「暗色のフロップ性」と認識される。
【0186】
全体的には、本発明の鉄効果顔料は、従来未知の、極めて魅力的な色彩的特性を有する新規な効果顔料である。
【0187】
類似の性質を有する唯一の顔料は、DE 10 2007 007908 A1から公知である。しかしながら、その顔料は、はるかにコストの高いPVD法によらない限り入手できない。
【0188】
本発明の鉄顔料の新規でユニークな光学的性質は、その厚みが薄いことによって得られたものである。この点に関して重要なことは、厚みの平均値(h50)だけでなく、特に、厚み分布全体にわたって、厚すぎる顔料が存在していないという事実である。このことは、厚み分布のh90で表すことができる。
【0189】
この場合においては、顔料は明らかに、塗布媒体の中で自発的に会合して、干渉性のメタリック顔料膜を形成する傾向がある。この挙動は、PVD顔料から、アルミニウム顔料では知られており、J.Seubert and A.Fetz、“PVD Aluminium Pigments:Superior Brilliance for Coatings and Graphic Arts”、Coatings Journal、Vol.84、A6 225−264、July 2001、pages 240−245を含む文献に記載されている。
【0190】
より厚い顔料では、嵩高いためにこの配列が乱れ、他の顔料の配向に乱れがおきる可能性がある。次いでこのことが、相応の光沢の損失と、輝度の損失に関連する。
【0191】
本発明の鉄顔料の不動態化に関連する実施例:
実施例11〜14(SiOコーティングした鉄):
55.1gの、実施例1〜4のそれぞれによる鉄顔料を用いたペースト(メタリック顔料割合:27.6g)を、375mLのイソプロパノールの中に分散させ、沸騰温度とした。13.0gのテトラエトキシシランを添加した。次いで、9.0gの水中5.4gの25%強度NHの溶液を、3時間かけて計量仕込みした。さらに3時間かけてから、冷却して室温とし、その懸濁液をブフナーロートで濾過した。次いで、その生成物を、真空乾燥キャビネット中、100℃で一夜かけて乾燥させた。
【0192】
一般的なガス発生試験において、その生成物は、優れたガス発生安定性を示すので、水性コーティング系に極めて好適である。
【0193】
実施例15〜18(クロメート処理した鉄):
13.5gの完全脱イオン水の中に4.5gのCrOを溶解させることによって、18gのクロム酸溶液を調製した。
【0194】
1Lの反応器中で、220gの完全脱イオン水を加熱して90℃とした。激しく撹拌しながら(撹拌装置:「ケーキスライス」タイプ)、まず21gのブチルグリコール、次いで125gの実施例1〜4に記載のそれぞれの鉄顔料(ホワイトスピリットペーストの形態、固形分割合70%)を添加した。数分後に、クロム酸溶液を、反応温度80℃で添加した。その混合物をさらに50分間、激しく撹拌しながら反応させておく。次いで30分間かけて冷却し、ガラスビーカー中で、その反応混合物を、その都度250mLの5%強度の完全脱イオンHO/ブチルグリコール溶液を用いて数回デカントさせ、上澄み溶液に黄色の着色がもはやなくなるまで続ける。次いでサクションフィルターを用いてその生成物を濾過し、十分な水を用いて洗浄する。
【0195】
一般的なガス発生試験において、その生成物は、優れたガス発生安定性を示すので、水性コーティング系に極めて好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄効果顔料であって、
鉄効果顔料が、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚みの計測から求めた厚み分布で、下記のように表される累積篩下分布を有することを特徴とする、鉄効果顔料。
a)h50が10〜55nm
b)h90が20〜80nm
【請求項2】
鉄効果顔料が、12〜50nmの範囲のh50を有することを特徴とする、請求項1に記載の鉄効果顔料。
【請求項3】
鉄効果顔料が、25〜70nmの範囲のh90を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の鉄効果顔料。
【請求項4】
鉄効果顔料が、100nm未満のh98を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の鉄効果顔料。
【請求項5】
鉄効果顔料が、8〜40nmの範囲のh10を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の鉄効果顔料。
【請求項6】
鉄効果顔料が、5〜40μmの範囲の平均サイズd50を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の鉄効果顔料。
【請求項7】
鉄効果顔料が、不動態化抑制剤層および/または耐食層を用いてコーティングされていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の鉄効果顔料。
【請求項8】
鉄効果顔料が、粉体、好ましくは粉塵飛散のない粉体として、好ましくはペーストとして、または粒状物、ペレット、タブレット、ソーセージ状物、またはブリケットとしての圧縮された形態で存在することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の鉄効果顔料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の鉄効果顔料を製造するための方法であって、
方法が、
ミリング装置を使用して、溶媒および潤滑剤および球状の研磨媒体の存在下で、dpowder,10≦2.0μm、dpowder,50≦5.0μm、およびdpowder,90≦7.0μmであることを特徴とする粒子サイズ分布を有する粗い鉄粉体を研磨する工程
を含む、方法。
【請求項10】
粗い鉄粉体が、dpowder,10≦1.6μm、dpowder,50≦3.3μm、dpowder,90≦5.5μmの粒子サイズ分布を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
球状の研磨媒体が、0.5〜1.5mmの平均直径を有することを特徴とする、請求項9および10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
研磨時間の合計が、12時間を超え100時間までであることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
粗い鉄粉体を研磨した後に得られる、場合によって分級した鉄顔料を、圧縮成形物の形態、好ましくはペースト、粒状物、タブレット、ソーセージ状物、ブリケットまたはペレットに加工することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、証券印刷および機密保護印刷、化粧品、および多層効果顔料の製造における反射材料における効果顔料としての、請求項1〜8のいずれかに記載の鉄効果顔料の使用。
【請求項15】
コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、証券印刷および機密保護印刷または化粧品の用途における磁気配向が可能な効果顔料としての、請求項14に記載の鉄効果顔料の使用。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載の鉄効果顔料を含む、印刷インキ。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれかに記載の鉄効果顔料を含むか、またはそれらを有する、コーティングされた物品。

【図1】
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【公表番号】特表2011−521090(P2011−521090A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510884(P2011−510884)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003727
【国際公開番号】WO2009/144005
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】