説明

薄いガラスの微小板をベースとする耐候安定性真珠光沢顔料およびそれを調製するためのプロセス

本発明は、高屈折の金属酸化物でコーティングされたガラスフレークをベースとし、そのトップの金属酸化物層の上に保護コートを有する、改良された適用特性を有する耐候安定性真珠光沢顔料に関する。
本発明の顔料が特徴としているのは、そのガラスフレークが50nm〜500nmの平均厚みを示し、それに対して、変法Aにおいては、1.8より高い屈折率nを有し、80%〜100重量%のルチル含量を有するTiOを含む金属酸化物層とSiOの保護コートを適用するか、または変法Bにおいては、1.8より高い屈折率nを有し、80%〜100重量%のルチル含量を有するTiOを含む金属酸化物層、ならびに酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムを含む第一の保護コーティングとSiOの第二の保護コーティングとを含む保護コートを適用し、保護コートAまたはBの金属酸化物層に対して有機化学的表面コートが適用されている点にある。本発明はさらに、そのような顔料を製造するためのプロセスおよびそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候安定性真珠光沢顔料に関し、それは、改良された適用特性を有し、高屈折の金属酸化物および一番上の金属酸化物層の上に位置する保護トップコートでコーティングされたガラスフレークをベースとしている。変法Aにおいては、その真珠光沢顔料は薄いガラスフレークを含み、それに対してルチルTiOを含む高屈折の金属酸化物層、次いでSiOの保護トップコートが適用され、その保護トップコートのSiO層に有機化学的表面コーティングが適用される。本発明の第二の変法Bにおいては、その耐候安定性真珠光沢顔料は薄いガラスフレークを含み、それに対してルチルTiOを含む高屈折の金属酸化物層、次いで酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの第一の保護層ならびにSiOの第二の保護層を含む保護トップコートが適用され、それに続けて、その保護トップコートのSiO層に有機化学的表面コーティングが適用される。
【0002】
本発明はさらに、そのような真珠光沢顔料を調製するためのプロセスに関し、さらにはそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
トップコート中に二酸化チタンを含むか、または微粒子状TiOをベースとする真珠光沢顔料は、ある程度の光触媒的活性を有している。そのために、UV光が水および酸素の存在下に真珠光沢顔料に作用すると、その真珠光沢顔料のUV活性が、有機化合物、たとえばバインダーマトリックスの劣化促進の誘引となる。日光の中に存在しているUV分であってさえも、この反応の原因となりうる。すなわち、たとえば、風化作用の影響を直接的に受ける自動車用ラッカーに適用する場合、特に安定化された真珠光沢顔料を使用する必要がある。外での用途においては有害な、この光触媒的効果に対抗するために、真珠光沢顔料に、光活性を減じるための各種の保護コーティングを備えさせておくことができる。
【0004】
金属塩水溶液から出発して、通常は難溶性化合物を顔料の表面上に沈殿させるが、その保護コーティングには、アルミニウムまたはケイ素の酸素化合物に加えて、少なくとも1種の遷移金属、たとえば、ジルコニウム、マンガン、セリウム、またはクロムが含まれている。顔料と各種のコーティング物質、特に、環境に対してより優しい水ベースのシステムとの間の適合性を改良する目的で、たとえばシランを使用して、トップコートをさらに有機的に修飾することが実施される。
【0005】
EP0 141 174には、改良された耐候安定性を有する真珠光沢顔料の記載があり、それは希土類金属化合物、たとえばセリウムとポリシロキサンとから実質的になる保護コーティングを有する。さらに、その保護コーティング(その適用は水性懸濁液中で実施される)にはさらに、亜鉛塩もしくはアルミニウム塩、またはそれに変わるケイ酸塩が含まれていてもよい。そのコーティング操作は水性懸濁液中で行われ、生成物を単離してから乾燥させる。
【0006】
DE2 106 613には、金属酸化物でコーティングされ、次いで直ちに水相中でシリカ層でコーティングされ、そして焼成された雲母フレークを含む真珠光沢顔料が記載されている。ここでの目的は、光沢、透明性および色のような顔料の光学的性質にプラスの影響を与えることである。しかしながら、それらの顔料は、UV光に対して十分に安定化されているとはいえない。
【0007】
EP0 446 986B1は、コーティング用途を目的とした、平滑で連続的な水和アルミナ層のために、受容可能な耐UVおよび耐水安定性を有する真珠光沢顔料に関するものである。酸性またはアルカリ性のアルミニウム塩を使用して、真珠光沢顔料は、調節された条件下の水相中でコーティングされてから乾燥される。
【0008】
EP0 342 533には、コバルト、マンガンまたはセリウムの水和金属酸化物からなる層を適用することが可能な、酸化ジルコニウムでコーティングされた顔料が開示されている。そのような処理をされた顔料は、非水性着色コーティングシステムにおいて使用するのに好適であると報告されているが、EP0 632 109によれば、それは、コーティングされた膜の中に微細な気泡の形成をもたらすために、水希釈性着色コーティングシステムに対してはまだ不適切である。
【0009】
EP0 632 109の教示によれば、金属酸化物でコーティングされた微小板形状の基材に3層保護コートを適用するが、第一の過程においてはSiOを適用し、第二の過程においてはセリウム、アルミニウム、またはジルコニウムの水酸化物または水和酸化物を適用し、そして第三の過程においてはセリウム、アルミニウム、またはジルコニウムの水酸化物または水和酸化物の少なくとも1種と、さらに有機カップリング剤とを適用する。また、そのカップリング剤は、顔料表面に結合させる前に加水分解させなければならない。
【0010】
EP0 888 410B1の教示によれば、添加したカップリング剤の最大でも60%しか顔料表面には結合されない。
【0011】
EP0 888 410B1には、金属酸化物でコーティングされた微小板形状の基材をベースとする修飾真珠光沢顔料が開示されている。EP0 888 410B1の教示によれば、そのトップコートは、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化チタン、および酸化ジルコニウムの酸化物、酸化物の混合物、もしくは混合酸化物の少なくとも2種と、水ベースのオリゴマー性シランシステムとからなる。真珠光沢顔料のUV安定性におよぼす効果に関連しての、酸化物保護層の順序の効果については何の研究結果も開示されていない。したがって、最適な保護層システムについては何の記載もない。さらに、その水ベースのオリゴマー性シランシステムは、8個以下の炭素原子を有する疎水性の画分のみを含むことが可能であるが、その理由は、そうでないとその水溶性が確保できないからである。その結果、この場合には、各種のアフターコーティングの可能性が限定される。
【0012】
EP0 649 886では、二酸化チタンまたは酸化鉄でコーティングされた真珠光沢顔料が提供されるが、それらは、水相中で水和セリウムと酸化アルミニウムとの組合せでアフターコーティングされてから、乾燥される。
【0013】
EP1 203 795の教示によれば、真珠光沢顔料には層システムが含まれることができ、そこでは、第一の層にはケイ素またはアルミニウムの水和酸化物が含まれ、次いで第二の層にはケイ素、アルミニウム、ジルコニウムまたはセリウムの水和酸化物が含まれるが、第一の層の組成物は第二の層のそれとは異なっている。その真珠光沢顔料にはさらに、少なくとも1種の有機疎水性カップリング剤の第三の層が含まれるが、前記有機疎水性カップリング剤は、コーティングシステムのバインダーとは反応することができない。
【0014】
EP1 084 198B1には、効果顔料の記載があり、それは、反応性配向剤を用いて表面修飾が行われることによって、ベースコートに対して極めて強い接着性を示す。EP1 084 198B1の背景を検討してみても、耐候安定性真珠光沢顔料の開示はない。
【0015】
従来技術において使用される大部分のプロセスにおいては、第一の層として、SiOおよび/またはアルミナが適用されている。一般的には、次いで酸化セリウム層が適用されるか、または、他の成分と共に混合酸化物として沈殿される。次いで通常は、シランが、水溶液中で、金属水酸化物と共に共沈殿されることによって付着させられる。そのような水酸化物のシランシステムとの共沈殿から考えると、オリゴマー性シランシステムを用いた表面被覆の効率は乏しい。したがって、高価なシランを不相応に大量に使用することとなり、それが原料コストを不必要に上昇させてしまう。
【0016】
それらのコーティング法を微小板形状のガラスに適用しても、ますます強くなる市場の要請に応えることが可能な耐候安定性を有する顔料を得ることは不可能であった。
【0017】
WO02/090448には、ガラスフレークをベースとする効果顔料が開示されており、その顔料には、一番上の層として、高屈折の焼成された金属酸化物層が含まれる。したがって、それらの顔料は、屋外用途を目的とする着色コーティング物質の中で使用するのは適していないが、その理由は、それらが、風化作用の影響下に、「チョーキング」すなわちいわゆる「白亜化」と、接着性および光沢の損失とを示す傾向があるからである。
【0018】
WO2004/092284は、微小板形状の基材たとえばガラスフレークをベースとする表面修飾効果顔料に関し、1種または複数の焼成された酸化物層が、基材に、単独、または硫酸塩、リン酸塩、および/またはホウ酸塩との混合物としてのいずれかで適用され、次いで有機トップコートが適用される。その中に開示された、焼成された酸化物層を含む顔料の欠点は、表面コーティング剤として使用されるシランの、焼きなまされた金属酸化物層に対する接着力が乏しいことが示される点にある。
【0019】
それらの公知の真珠光沢顔料は、ますます強くなる市場の要請に応えることが可能な耐候安定性を有していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の一つの目的は、微小板形状のガラスをベースとし、風化作用に対して効果的な保護作用を与える単純な層システムを有し、従来技術からの改良を示す、耐候安定性真珠光沢顔料を提供することである。従来からの真珠光沢顔料よりは実質的に薄いガラスフレークに適用される層システムは、特に、たとえば光沢のような光学的性質を実質的に損なうことなく、UVで誘起される顔料の光触媒的活性に対する効果的な保護を与えることが必要とされる。本発明の真珠光沢顔料はさらに、有機化学的表面コーティングを備えていて、それが、コーティング媒体中での真珠光沢顔料に、バインダーに対する傑出した結合性(極めて強い接着性)と同時に、極めて良好な配向挙動を示すことを可能とする。本発明の真珠光沢顔料は一般的に、改良された耐候安定性を有していることが必要であり、自動車用ラッカー中において特に有効に使用することができる。
【0021】
さらなる目的は、単純で効果的な保護層システムを有する耐候安定性真珠光沢顔料を調製するための単純なプロセスを提供することである。さらなる狙いは、表面コーティングを効果的に適用し、使用可能なアフターコーティング剤に関して大きなフレキシビリティを示すための単純なプロセスを見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明が基礎を置くその目的は、高屈折の金属酸化物および一番上の金属酸化物層の上に位置する表面コーティングを含む保護トップコートでコーティングされたガラスフレークをベースとする耐候安定性真珠光沢顔料を提供することにより達成される。
【0023】
変法Aにおいては、その耐候安定性真珠光沢顔料は、50nm〜500nmの平均厚みを有するガラスフレークを含み、それに対して1.8より高い屈折率nを有する金属酸化物層を好ましくは30nm〜300nmの平均厚みを有するように適用するが、その金属酸化物層には、80〜100重量%の範囲のルチル含量を有するTiOと、好ましくは1nm〜50nmの平均厚みを有するSiOの保護トップコート、ならびにその保護トップコートのSiO層に適用された有機化学的表面コーティングが含まれる。
【0024】
第二の変法Bにおいては、その耐候安定性真珠光沢顔料は、50nm〜500nmの平均厚みを有するガラスフレークを含み、それに対して1.8より高い屈折率nを有する金属酸化物層を好ましくは30nm〜300nmの平均厚みを有するように適用するが、その金属酸化物層には、80〜100重量%の範囲のルチル含量を有するTiO、ならびに酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの第一の保護層とSiOの第二の保護層を含む保護トップコート、ならびにその保護トップコートのSiO層に適用された有機化学的表面コーティングが含まれる。
【0025】
TiOの80〜100重量パーセントは常に、そのTiO層の重量に関連する。
【0026】
本発明の主題の好適な展開は、従属請求項2〜26に示されている。
【0027】
本発明の主題は、光触媒的活性が減じられ、光堅牢度が向上し、市販の着色コーティングシステムと最適化された適合性を有する、耐候安定性およびUV安定性真珠光沢顔料である。
【0028】
光触媒的活性が減じられ、光堅牢度が向上し、市販の着色コーティングシステムと最適化された適合性を有する本発明の真珠光沢顔料を、以後においては「耐候安定性がある」と呼ぶこととする。
【0029】
本発明のガラスフレークをベースとする真珠光沢顔料においては、そのガラスフレークの平均厚みは、500nm未満、より好ましくは60nm〜350nmの範囲である。そのような薄いガラスフレークは、自動車用ラッカー中で使用するのに特に適しているが、その理由は、その場合にはそのベースコート層が極めて薄い厚み(12〜15μm)を有しており、さらに厚みが薄くなる傾向を有するからである。基材として極めて厚みの薄いガラスフレークを使用することによって、得られる真珠光沢顔料の全体の厚みもまた受容可能な限度の中に入る。
【0030】
ガラスフレークの厚みが薄いことによって、アスペクト比が改良され、従って、得られる真珠光沢顔料の、適用基材に対しての面に平行な配向が改良される。
【0031】
もっぱら使用されている雲母とは異なって、ガラスフレークは実質的に平滑な表面を有している。個々のガラスフレークの層の厚みは雲母に比較すると、その長さ方向においてより均質であるが、その理由は、後者はフィロケイ酸塩として典型的な階段構造を有しているからである。そのような階段が原因で個々のフレークの層の厚みが不均質になると、高屈折の酸化物を用いたコーティング後に、真珠光沢効果の減少(「グレーイング」)がもたらされる。
【0032】
上述の特性の見地から同様の利点を有するその他の透明な合成基材は、従来技術において公知である。それらの基材は、SiOフレークおよびAlフレークである。これらの基材をベースとする真珠光沢顔料は、Merckにより供給され、Colorstream(登録商標)およびXirallic(登録商標)の名前で製造販売されている。しかしながら、ガラスフレークは、これらの基材を用いた場合よりも、製造がより単純で経済的であるという利点を有している。
【0033】
さらに、ガラスフレークは、厚みの分布の標準偏差が20%未満、より好ましくは15%未満、なおより好ましくは10%未満であるような基材として使用するのに好ましい。これらの基材によって、強いカラーフロップ性を有する特に色の濃い真珠光沢顔料を製造することが可能となる。
【0034】
有機化学的表面コーティングは、1種または複数の有機官能性シラン、アルミン酸塩、ジルコン酸塩、および/またはチタン酸塩からなる。
【0035】
有機化学的表面コーティングは、水に不溶性または難溶性であるシランからなるのが好ましいが、SiOコーティングとの混合層の形態ではないのが好ましい。別の言い方をすれば、保護層を形成させたとき、最初にSiOおよび/または酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムを効果顔料に適用し、その後で、有機化学的表面コーティングを適用した。
【0036】
シラン混合物を含む有機化学的表面コーティングは、単純な方法で極めて有利に製造することが可能であり、極めて多様な表面修飾剤を含むことができる。
【0037】
しかしながら、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)AMMO;Degussa AG製)と、3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)GLYMO;Degussa AG製)との混合物は避けなければならないことが判明したが、それは、この場合には顔料が集塊する傾向があるからである。この傾向は、外側のアミノ基のエポキシ基との粒子間反応のために、顔料の「ケーキング」が起きるためであろうと考えられる。
【0038】
使用可能な表面修飾剤が多岐にわたることから、本発明の顔料は、すべての標準的な着色コーティングシステムに適合させることが可能となる。光沢のような光学的性質は、極めて良好である。
【0039】
本発明の一つの展開においては、顔料に、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムならびにSiO以外の金属酸化物、好ましくはZrOである別の保護コーティングが含まれていてもよい。
【0040】
本発明の真珠光沢顔料を得るための本発明のプロセスには以下の工程が含まれる:
(a)1.8より高い屈折率を有する金属酸化物でコーティングされたガラスフレークを液相中に懸濁させる工程、
(b1)工程(a)において懸濁されたガラスフレークに、SiO保護トップコートを適用する工程、または
(b2)工程(a)において懸濁されたガラスフレークに、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの第一の保護層ならびにSiOの第二の保護層を含む保護トップコートを適用する工程、
(c)工程(b1)または(b2)で製造されたSiOの一番上の構造層に、有機化学的表面コーティングを適用する工程。
【0041】
本発明のプロセスの好適な展開は、請求項28〜35において定義されている。
【0042】
工程(c)は、その大部分が有機溶媒である液相中で1種または複数の有機官能性シランを使用して実施するのが好ましく、各種の添加物、特に疎水性シランが、主として有機溶媒の中で極めて良好な溶解性を示すので、この文脈においては極めて有利である。このことによって、プロセス管理が簡単になり、表面コーティング剤の選択におけるフレキシビリティが大きくなる。
【0043】
「主として有機溶媒の混合物」という用語は、好ましくは50重量%未満の水を含む混合物を意味している。
【0044】
この場合において、溶媒の非有機部分は好ましくは水である。
【0045】
驚くべきことには、真珠光沢顔料において、50nm〜500nmの平均厚みを有する、好ましくは60nm〜350nmの平均厚みを有する、極めて好ましくは70nm〜300nmの平均厚みを有する金属酸化物でコーティングされたガラスフレークをベースとする真珠光沢顔料を使用することによって、優れたUV安定性および耐候安定性が得られることが今や判明した。
【0046】
本発明の真珠光沢顔料の変法Aにおいては、SiOを含むかまたはそれからなる保護トップコート、次いで有機化学的アフターコートが、金属酸化物でコーティングされた薄いガラスフレークに直接適用される。
【0047】
本発明の真珠光沢顔料の変法Bにおいては、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの第一の保護層ならびにSiOの第二の保護層を含む保護トップコート、次いで有機化学的アフターコートが、金属酸化物でコーティングされた薄いガラスフレークに直接適用される。
【0048】
薄い厚みのガラスフレークを含み、所定の厚み許容度を示し、表面修飾保護コーティングを備えた、本発明の真珠光沢顔料のいずれもが、当業者に公知のすべての用途、特に、非常に薄い厚み(12μm〜15μm)のベースコート層を組み入れた自動車用ラッカーにおいて有利に使用することができる。特に、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムならびにSiOの表面修飾保護層システムを有する、本発明の変法Bの真珠光沢顔料は、極めて良好なUV保護性を与える。
【0049】
いずれの変法においても一番上の金属酸化物層であるSiOの屈折率が低いにもかかわらず、それらの顔料は、驚くべきことに、極めて良好な光沢を示す。
【0050】
このことは、決して予想されるようなことではないが、その理由は特に、DE42077237A1、p.2、19〜21行に「ケイ酸塩またはAlでコーティングした顔料は、分散させることが困難であり、その上、印刷インキおよび塗料のコーティングにおいては光沢の減少を示す」と記載されているからである。
【0051】
驚くべきことには、保護層の厚みが薄くても、十分に高いUV安定性が得られることもまた見出された。
【0052】
本発明の変法Bの顔料中において追加で存在するセリウム含有保護層は、酸化セリウムおよび/または水酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物であるか、またはそれらを含む。そのセリウム含有層は、水酸化セリウムを沈降させることにより適用され、たとえば加熱によって脱水させることにより、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物に部分的ないしは完全に変換される。したがって、その保護層には、酸化セリウムに加えて、水酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物も含まれていてよいが、それにも関わらず以下においては、酸化セリウム層と呼ぶこととする。
【0053】
使用されるセリウムは、3価もしくは4価の形態であるか、またはそれらの2つの形態の混合物が使用される。セリウムは3価の形態で使用するのが好ましい。
【0054】
好ましくは酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの形態で使用されるセリウムの量は、いずれの場合も顔料の全重量を基準にした重量で、好ましくは0.05%〜3.0%、より好ましくは0.1%〜1.0%、極めて好ましくは0.2%〜0.7%である。使用するセリウムの重量は好ましくは、使用される顔料の重量の1.0重量%を超えないようにするべきであるが、その理由は、そうしないと、顔料の光学的性質における損失が大きくなりすぎる可能性があるからである。その一方で、0.1%未満であると、一般的に、さらなるUV安定化が十分に得られない。
【0055】
いずれの特定の場合においても、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの重量は、その真珠光沢顔料の細かさ、ひいては比表面積、およびTiO層の厚みに依存するであろう。一般に、顔料がより細かい程、そしてTiO層がより厚い程、酸化セリウムおよび/または水酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物の含量を高くすることがさらに必要である。
【0056】
本発明の真珠光沢顔料の両方の変法において存在させるSiO保護層の平均厚みは、1nm〜50nm、好ましくは2nm〜20nm、より好ましくは2.5nm〜7nmである。
【0057】
本発明の変法Aの真珠光沢顔料のSiO含量は、いずれの場合も顔料の全重量を基準にして、好ましくは0.5%〜10重量%、より好ましくは1.0%〜7%、さらにより好ましくは1.5%〜7重量%、なおより好ましくは1.6%〜6重量%、最も好ましくは2%〜5重量%である。
【0058】
本発明の変法Bの真珠光沢顔料のSiO含量は、いずれの場合も顔料の全重量を基準にして、好ましくは0.5%〜8重量%、より好ましくは1.0%〜6.5%、さらにより好ましくは1.5%〜5重量%、最も好ましくは1.8%〜4.5重量%である。
【0059】
この場合もまた、いずれの特定の場合においても、SiOの量は、その真珠光沢顔料のガラスフレークの平均厚み、細かさ、ひいては比表面積、およびTiO層の厚みに依存するであろう。ガラスフレークがより薄いか、顔料がより細かくTiO層がより厚い顔料は、一般的に、SiOの含量がより高い。SiOが10重量%を超えると、耐候安定性またはUV安定性においては、いかなる種類のさらなる改良も認められない。多くの場合、それらの性質が乏しくなるであろうが、その理由はおそらく、保護層が厚くなると、もろくおよび/または壊れやすくなり、クラックがより入りやすくなって、その結果、コーティングされたTiOの光活性がもはや十分に抑制されなくなるからであろう。0.5重量%未満では、SiO層の保護効果が低くなりすぎる。
【0060】
SiO保護トップコートには、SiOに加えて、ケイ素の水酸化物および/または水和酸化物がさらに含まれていてもよい。
【0061】
本発明の真珠光沢顔料の変法Aの場合においては、真珠光沢顔料を耐候安定性とするための、ケイ酸塩のみからなるコーティングの驚く程に高い効果は、なかんずく、そのSiO層の電子的性質に帰するものと考えられる。SiOの帯域端のエネルギーレベルは、使用されるTiOでコーティングされた真珠光沢顔料におけるTiOのそれと比較して、好ましいことには、望ましい性質を有しているために、UV光子の吸収に続けてTiO半導体中で起きる、電子空孔と電子の両方の移行が、顔料の界面において効果的に抑制されている(「ダイオード効果」)と考えられる。ほんの約2〜3nmの極端に薄いSiO層において、真珠光沢顔料の効果的な耐候安定性がすでに観察できているので、このことは、正しいように思われる。電子的な効果とは別に、ある種のバリアー効果もまた、耐候安定性には重要であると考えられる。なかんずく、バリアー効果はTiOの界面から水を排除する。しかしながら、層の厚みが薄いために、この効果は決定的な因子ではないと考えられる。SiO層の厚みは、好ましくは2nm〜20nm、より好ましくは2.5nm〜7nmの範囲である。
【0062】
本発明の顔料タイプBの改良された耐候安定性およびUV安定性は、特に、上述のSiO層の効果は別にして、本発明において使用される層の順序、すなわち、最初に酸化セリウム、その後でSiOを適用したことに帰すると考えられる。酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムは、TiOの光化学的活性を抑制するための極めて効果的な薬剤であることは自体公知である。その活性は、恐らくは、周知のCe(III)/Ce(IV)レドックスシステムに特に由来する。このシステムによれば、TiOの表面上にその光化学的活性の結果として発生したフリーラジカルが効果的に反応することができる。明らかに、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムが、出発顔料のTiO表面に直接接触するまず第一の層として堆積されると、光触媒的に発生されたフリーラジカルに対するバリアーとしての酸化セリウムの効果が特に高くなる。
【0063】
本発明の顔料のB変法の場合においては、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層をTiO層に直接適用するのが好ましい。しかしながら、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層は、必ずしもTiO層に直接適用されなければならないという訳ではない。
【0064】
酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層は、個別の沈殿により、すなわち共沈殿ではなく適用されて、それによって酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層が好ましくは他の金属酸化物を実質的に含まないようにするのが好ましい。
【0065】
酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムのセリウム含有層は、独立した層であって、下側層、たとえば酸化チタン層のような金属酸化物層と混合層を形成しないのが好ましい。
【0066】
顔料タイプBの場合においてはさらに、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層にSiO層を直接適用するのが好ましい。SiO層は、ゾルゲル法を使用して、主として有機溶媒の混合物から適用するのが極めて好ましいが、これについては以下において説明する。そのSiO層も同様に、独立した層であって、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムのセリウム含有層と混合層を形成しないのがさらに好ましい。
【0067】
したがって、本発明の変法B顔料は、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層、直接それに続けてのSiO層を含む保護層システムを有しているのが好ましいが、それに対して、少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランと、結合基を有さない少なくとも1種のシランとを含む特定の表面コーティングを適用する。この保護層システムは、TiO層に直接適用するのが好ましい。
【0068】
真珠光沢顔料タイプBの場合においては、そのSiO保護層、すなわち酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムに対して適用される第二の保護層は、いずれの場合においても、さらなるバリアーを構成する。それは、真珠光沢顔料の表面を水の浸入から保護し、逆に言えば、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層の中を通過してくる可能性があるあらゆるフリーラジカル種を妨げる。
【0069】
本発明の真珠光沢顔料の有利な特性は、上述の最適化された酸化物層構成をベースとしてだけで得られたものではない。
【0070】
驚くべきことには、SiO層の上に有機化学的なシランのアフターコートを行うことによってさらに有利な適用特性が得られた。驚くべきことには、本発明の真珠光沢顔料は、コーティング媒体中において、傑出した配向挙動を示す。光沢のような光学的性質は、極めて良好である。
【0071】
「官能性結合基」という用語は、バインダーと化学的に相互作用することが可能な官能基を意味する。この化学的相互作用は、共有結合、水素結合、またはイオン的な相互作用の形態であってよい。
【0072】
官能性結合基には、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アミノ基、シアネート基、イソシアネート基、エポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基、ウレイド基、および/またはカルボキシル基が含まれる。
【0073】
好適な官能基をいかに選択するかは、バインダーの化学的な性質に依存する。バインダーの官能性に化学的に適合する官能基を選択して、効果的な結合付着を可能とするのが好ましい。この属性は、真珠光沢顔料の耐候安定性およびUV安定性に関しては極めて重要であるが、その理由は、この方法によって、顔料と硬化されたバインダーとの間で十分に強力な接着が得られるからである。このことは、接着性試験、たとえばDIN50 017に規定されているような凝縮試験ストレス下での碁盤目試験で、試験することができる。そのような試験に合格することが、自動車用ラッカー中において耐候安定性真珠光沢顔料を使用するための必須条件である。
【0074】
有機化学的表面コーティング剤として有利に使用される有機官能性シランは、本来的に縮合しやすい強い傾向、したがってSiO表面への結合性を有している。SiO表面は、シラノール基(Si−O−H)末端を有していて、それは、有機官能性シランと化学的に類似していることにより、表面コーティング剤に対して最良の結合可能性を与える。
【0075】
有機官能性シランは市販されており、たとえばDegussa,Rheinfelden,Germanyにより製造され、「Dynasylan(登録商標)」の商品名の下で販売されている。さらなる製品が、OSi Specialtiesから(Silquest(登録商標)シラン)、またはWackerから(特にGENIOSIL(登録商標)製品群からの標準品およびα−シラン)購入することができる。
【0076】
使用可能なシランの好適な例としては以下のものが挙げられる:3−メタクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A−174NT)、ビニルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan VTMOもしくはVTEO、Silquest A−151もしくはA−171)、3−メルカプトプロピル−トリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan MTMOもしくは3201;Silquest A−189)、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO、Silquest A−187)、トリス(3−トリメトキシシリルプロピルイソシアヌレート)(Silquest Y−11597)、ガンマ−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン(Silquest A−189)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピルポリスルフィド)(Silquest A−1289)、ビス(3−トリエトキシシリルジスルフィド)(Silquest A−1589)、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン(Silquest A−186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y−9805)、ガンマ−イソシアナトプロピル−トリメトキシシラン(Silquest A−Link35、GENIOSIL GF40)、(メタクリロイルオキシメチル)トリメトキシ[またはエトキシ]シラン(GENIOSIL XL33、XL36)、(メタクリルオキシメチル)メチル[またはエチル]ジメトキシシラン(GENIOSIL XL32、XL34)、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン(GENIOSIL XL43)、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン(GENIOSIL XL42)、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン(GENIOSIL XL43)3−(トリエトキシシリルプロピル)無水コハク酸(GENIOSIL GF20)。
【0077】
一つの好ましい実施態様においては、SiO層を修飾する有機官能性シラン混合物には、官能性結合基を有さない少なくとも1種のシランに加えて、少なくとも1種のアミノ官能性シランが含まれる。そのアミノ官能性は、バインダー中に存在する主な基と相互作用することが可能な官能基である。この相互作用は、たとえばバインダーのイソシアネートもしくはカルボキシレート官能性との共有結合、またはOHもしくはCOOR官能性との水素結合、またはその他のイオン性相互作用の形態であってよい。したがって、アミノ官能性は、効果顔料を異なった種類のバインダーに化学的に結合させる目的では、極めて好適なものである。
【0078】
その目的のためには以下の化合物を採用するのが好ましい:アミノプロピル−トリメトキシシラン(Dynasylan AMMO;Silquest A−1110)、アミノプロピル−トリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)もしくはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン(Dynasylan DAMO、Silquest A−1120)もしくはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン(Silquest A−1130)、ビス(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)アミン(Silquest A−1170)、N−エチル−ガンマ−アミノイソブチル−トリメトキシシラン(Silquest A−Link15)、N−フェニル−ガンマ−アミノプロピル−トリメトキシシラン(Silquest Y−9669)、4−アミノ−3,3−ジメチル−ブチル−トリメトキシシラン(Silquest Y−11637)、N−シクロヘキシルアミノメチルメチル−ジエトキシシラン(GENIOSIL XL924)、(N−シクロヘキシルアミノメチル)−トリエトキシシラン(GENIOSIL XL926)、(N−フェニルアミノメチル)−トリメトキシシラン(GENIOSIL XL973)、およびそれらの混合物。
【0079】
さらに一つの好ましい実施態様においては、官能性結合基を有さないシランはアルキルシランである。アルキルシランは式(I)であるのが好ましい。
(4−z)Si(X) (I)
【0080】
この式においては、zは1〜3の整数であり、Rは、10〜22個の炭素原子を有する、置換または非置換、非分岐状または分岐状のアルキル鎖であり、Xはハロゲンおよび/またはアルコキシ基である。少なくとも12個の炭素原子を含むアルキル鎖を有するアルキルシランが好ましい。Rは、Siに対して環状に結合されていてもよく、その場合には、zは通常2である。
【0081】
この種のシランは、顔料表面の強い疎水化を作り出す。このことは、今度は、そのようにしてコーティングされた真珠光沢顔料を着色コーティングの最上部に上げる傾向につがなる。微小板形状の効果顔料の場合においては、この種の挙動を「リーフィング」と呼んでいる。
【0082】
極めて驚くべきことには、上述のように、バインダーへの付着を可能とする少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種のシランと、アミノ基を有さない水難溶性または水不溶性のアルキルシランとからなるシラン混合物が、真珠光沢顔料の側で最適な適用特性を与えるということが今や見出された。
【0083】
真珠光沢顔料が極めて効果的にコーティング物質と結合するために、接着強度の損失は生じない。その一方で、顔料は塗料中において、顕著な面に平行な配向性、およびさらには「残存リーフィング」挙動を示すが、これは、別の言い方をすれば、顔料の統計的に計測可能な画分が、硬化されたベースコートの上側部分で、クリアコーティングの近傍に位置している。通常は、ベースコートの上側界面に顔料が存在すると、接着性能の損失をもたらすが、その理由は、顔料が微小板形状の構造となっているために、真珠光沢顔料が、クリアコートとベースコートとの間で障害バリアーとして作用するからである。本発明の場合においては、驚くべきことには、顔料がベースコートの上側界面には集まらず、ベースコートの上側界面の近傍だけに集まって、そのために、クリアコートのベースコートへの信頼の置ける付着を可能としている。別の言い方をすれば、本発明の顔料は、クリアコートとベースコートとの間の干渉バリアーとして有利に機能している。
【0084】
この「残存リーフィング」挙動および極めて良好な面に平行な配向性のために、たとえばコーティングシステム中において、本発明の真珠光沢顔料の改良された光沢性および高い色純度が得られる。
【0085】
アルキルシランの鎖長が10個未満の炭素原子である場合には、表面の疎水化が不十分でそのような効果は示されない。この場合、いかなるセグメントも、顔料表面上で、アルキル鎖が「自己集合単層」の形で相互に平行に配列されるように並ぶことは不可能であると考えられる。その種の層は、表面に対するアンカー基を有する添加物と、少なくとも10個の炭素原子を有するアルキル鎖とで表面をコーティングすれば、好適に得ることができる。
【0086】
シランが22個を超える炭素原子を有している場合には、官能性結合基を有するシランを介してのバインダーシステムへの付着は、一般的には、もはや十分に良好とは言えず、別の言い方をすれば、DIN50 017に規定された凝縮試験において接着性の問題が認められる。
【0087】
さらなる好ましい実施態様においては、その表面修飾には構造式(II)のシランが含まれる。
(R−X−[A−Y]−B)(4−z)Si(OR (II)
[式中、
*nは、1〜100を表し;
*zは、1〜3の整数であり;
*Rは、ハロゲンによって置換されていてもよい、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;6〜12個の炭素原子を有するアリール基;または、1〜6個の炭素原子を有するアルキルおよび/またはハロゲンによって置換されていてもよい、6〜12個の炭素原子を有するアリール基であり、
*Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル基であり;
*AおよびBは、独立して、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基;6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基;または、1〜6個の炭素原子を有するアルキルおよび/またはハロゲンによって置換されていてもよい、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基からなる2価の基を表し;そして
*XおよびYは、独立して、OまたはSである。
ハロゲンは、F、Cl、Brおよび/またはIを意味している。]
【0088】
好ましい実施態様においては、RおよびRは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、またはそれらの混合物である。
【0089】
さらに好ましい実施態様においては、AおよびBは、独立して、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、2−ブチレン、フェニレン、1〜6個の炭素原子を有するアルキルによって置換されたフェニレン、およびそれらの混合物を表す。
【0090】
これらのシランは、決められたnの値を有する純品の形態であってもよいし、あるいは、nが異なった値のものの混合物であってもよい。
【0091】
一つの好ましい実施態様においては、nの範囲は1〜20、より好ましくは5〜15である。
【0092】
一つの特に好ましい実施態様においては、その表面コーティングには式(III)のシランが含まれる。
CO−[CH−CH−O−]CH−CH−Si(OR(III)
[式中、nは1〜100、好ましくは1〜20、より好ましくは5〜25であり、Rは上述の意味を有している。Rが独立してメチルまたはエチルであることが最も好ましい。]
【0093】
これらのシランもまた、決められたnの値を有する純品の形態で存在してもよいし、あるいは混合物(nが異なった値)で存在してもよい。それらの鎖の中の、オキシエチレン基(単数または複数)によって、この種のシランは特に良好な濡れ特性および分散特性を有している。そのようなシランは、OSi Specialtiesから製品名Silquest(登録商標)A−1230として市販されている。
【0094】
SiO層に適用するより前には、その有機官能性シランは、主としてモノマーの形態であるのが好ましい。
【0095】
アフターコートとして、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの形態で適用される表面コーティング剤の量は、酸化セリウムおよびSiOでコーティングされた全真珠光沢顔料を基準にして、好ましくは0.1%〜6%、より好ましくは0.2%〜5%、極めて好ましくは0.3%〜3%、最も好ましくは0.5〜2.5重量%である。
【0096】
具体的なケースにおいては、その量を、真珠光沢顔料の細かさおよび比表面積に依存させることも可能である。しかしながら一般的に言えば、顔料表面上に1またはそれ未満のシラン単層のオーダーの量で十分である。量が極端に少ないと、顔料表面のコーティングが不十分となり、その結果、コーティング用途における凝縮試験(DIN50 017に規定された試験)の結果が乏しいものとなる。
【0097】
少なくとも1個の官能性結合基を含むシランの、官能性結合基を含まないシランに対する重量基準の混合比は、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:3〜3:1、極めて好ましくは1:2〜2:1であるが、それらの重量パーセントは、出発化合物としての形態にあるシランを指している。
【0098】
そのシラン混合物に含まれる官能性結合基が全体として少なすぎる場合には、その表面コーティングがあまりにも疎水性になってしまう。このことは、DIN50 017に規定された凝縮試験のようなストレス試験の過程で、コーティング適用における接着性の問題につながる可能性がある。その一方で、官能性結合基が過剰にあるような場合には、その表面の親水性が強くなりすぎ、水ベースの塗料中において顔料がペーストを形成する性能、およびさらには硬化された適用コーティング中における真珠光沢顔料の配向性が乏しくなるであろう。凝縮試験において、顔料の親水性が顕著であると、コーティング物質の層の中での水の貯蔵が促進され、そのために主として写像性(DOI)が減じられ、極微小の水泡の生成が起きる。
【0099】
本発明のまた別な実施態様においては、安定化させる真珠光沢顔料に、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムならびにSiOの混合層を第一の保護層としてコーティングする。使用するセリウムは、3価もしくは4価の形態であるか、またはそれら二つの形態の混合物であるが、3価の形態であるのが好ましい。しかしながら、第一に酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム、第二にSiOの層の順序が好ましいが、それはこれによってより高いUV安定性が得られるからである。
【0100】
本発明のさらなる実施態様においては、ガラスフレークが1種または複数の金属酸化物層、好ましくは酸化スズの層を有している。酸化スズの層は、たとえばDE3535818A1の実施例1および5に記載されているようにして適用することができ、これを参考として引用し本明細書に組み入れる。この層は、基材を製造する実際の操作の間に適用し、次いで焼成するのが好ましい。酸化スズは、真珠光沢顔料の調製において、基材、好ましくは雲母フレークの上に沈殿させるTiO層の中にルチルシステムを誘導するために使用される。TiOは、雲母の上ではアナターゼシステムで成長するが、これは、光活性がより強いために望ましくない。しかしながら、SnOで基材をコーティングすると、その次のTiO層でルチル変態が誘導されるが、その理由は、それら二つの酸化物が類似の結晶構造を有しているからである。
【0101】
驚くべきことには、SnOの追加のコートに続けてTiOのコートをすると、すなわち、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムからなるかまたはそれらを含む第一の保護層とSiOの第二の保護層とを適用する前に、これを適用すると、耐候安定性が一段と向上することが今や見出された。SnO層は、TiO層に直接適用するのが好ましい。
【0102】
本発明のさらなる実施態様においては、SiOおよび/または酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムからなるかまたはそれらを含む第一の保護層に加えて、顔料がその他の金属酸化物層を含むようにすることも可能である。金属酸化物はZrOであるのが好ましい。
【0103】
本発明においては、その他の層、好ましくは高屈折率(n>1.8)を有するものを、SiOのような乏しい屈折率(n<1.8)を有する金属酸化物でコーティングしたガラスフレークの上に堆積させることもできる。そのような層は、金属カルコゲニド、特に金属酸化物、金属水酸化物、水和金属酸化物、金属亜酸化物、および金属硫化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属炭化物、ならびにそれらの混合物からなる群より選択するのが好ましい。
【0104】
真珠光沢顔料のガラス基材は、金属酸化物、金属水酸化物、金属亜酸化物および/または水和金属酸化物を含むかまたはそれらからなる多層システムでコーティングされるのが好ましいが、それらの層の順序は各種変更可能である。金属酸化物、金属水酸化物、金属亜酸化物、および/または水和金属酸化物は、同一の層の中に並び合わせて存在させてもよい。
【0105】
真珠光沢顔料の基材は、1種または複数の金属酸化物層でコーティングされるのが好ましいが、そのようなものは、TiO、Fe、Fe、TiFe、ZnO、SnO、CoO、Co、ZrO、Cr、VO、V、(Sn,Sb)O、およびそれらの混合物からなる群からなるかまたはそれらを含む。TiOおよび/またはFeが特に好ましい。
【0106】
また別な実施態様においては、その多層システムが、少なくとも1種の高屈折の層および少なくとも1種の低屈折の層が基材の上に交互に配置された層の順序を有している。
【0107】
それとは異なる層の配列においては、1種または複数の高屈折の層を互いの上に直接配置し、その後に1種または複数の低屈折の層を互いの上に直接配置するということも可能である。しかしながら、層システムは、高屈折の層と低屈折の層の両方からなることが肝要である。
【0108】
多層システムは、基材の上に、少なくとも1種の高屈折の層、少なくとも1種の低屈折の層、そして少なくとも1種の高屈折の層が連続的に配置された層の順序を有しているのが好ましい。
【0109】
この変法においてはさらに、1種または複数の低屈折の層または高屈折の層が互いの上に直接配置されてもよい。しかしながら、層システムは、内側から外側に向けて、高屈折の層、低屈折の層、そして再度の高屈折の層からなることが肝要である。
【0110】
その少なくとも1種の高屈折の層は、TiO、Fe、Fe、TiFe、ZnO、SnO、CoO、Co、ZrO、Cr、VO、V、(Sn,Sb)O、およびそれらの混合物からなる群よりの金属酸化物および/または金属水酸化物を含むかまたはそれらからなるのが好ましい。好ましくは、その低屈折の層は、SiO、Al、およびそれらの混合物からなる群よりの金属酸化物および/または金属水酸化物を含むかまたはそれらからなるのが好ましい。
【0111】
高屈折の層および低屈折の層を含む真珠光沢顔料は、特に強い干渉色を呈する。高屈折の、低屈折の、そして再度の高屈折の層を有する真珠光沢顔料が特に好ましい。TiO/SiO/TiOおよびFeを含む任意の他の層を含むかまたはそれらからなる層の順序にすると、強い金色の色相を得ることが可能であるので、特に好ましい。
【0112】
また別な実施態様においては、基材として使用される真珠光沢顔料のガラスフレークは、半透明な金属層で両面がコーティングされる。
【0113】
その半透明な金属層の金属は、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、金、白金、パラジウム、銅、亜鉛、ならびにそれらの混合物および合金からなる群より選択されるのが好ましい。その半透明な層の厚みは、好ましくは約2nm〜約30nm、より好ましくは約5nm〜約20nmの範囲である。
【0114】
良好な真珠光沢効果を得るためには、金属酸化物層の屈折率は、1.8より高く、好ましくは2.2より高く、より好ましくは2.3より高く、さらにより好ましくは2.4より高く、きわめて好ましくは2.5以上である。
【0115】
TiOおよび/または酸化鉄でコーティングされたガラスフレークは、たとえば、Engelhard,USAから商品名Firemist(登録商標)およびReflecks(登録商標)として、あるいはMerck,Germanyから商品名Miraval(登録商標)およびRonastar(登録商標)として供給されている。
【0116】
さらに、たとえばDE19618569に記載されているような、低屈折率および高屈折率の金属酸化物の交互の層でコーティングされたキャリヤーからなる多層干渉顔料が、本発明に説明するようにして、アフターコートされることも可能である。
【0117】
好適な変法Bにおいては、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムからなるかまたはそれらを含む第一の保護層と、次いでSiOの第二の保護層と、さらに有機化学的アフターコートによって、上述の顔料を安定化させて、UVで誘起される光触媒的活性に対して傑出した効果を得ることができる。
【0118】
本発明のプロセスにおいては、工程(c)の後に、顔料を溶媒から分離させ、場合によっては乾燥させることができる。必要があれば、その後で分級操作を行うことも可能である。
【0119】
水酸化セリウム層は、場合によっては水を添加し、場合によっては塩基または酸を添加し、室温から溶媒の沸騰温度までの範囲の反応温度で、場合によっては触媒の存在下に沈殿させるのが好ましい。堆積反応の際に放出される酸性または塩基性の成分、たとえばプロトンまたはヒドロキシルイオンは、ケイ酸塩、好ましくはSiOの堆積を開始させるより前に、塩基または酸を添加することによって、中和または部分的に中和させることができる。その塩基または酸は、セリウム反応剤と連帯して、またはセリウム塩溶液を導入した後に計量仕込みすることができる。
【0120】
驚くべきことには、使用したセリウム反応剤の沈降は、pH範囲が3〜8、好ましくは4〜7でほぼ完全、好ましくは完全に起きるので、次いで好ましくはテトラアルコキシシランを添加してSiOを沈殿させることによって、ほとんど純粋な、好ましくは純粋なSiO層が適用される、ということが見出された。
【0121】
本発明においては、セリウム含有層とSiO層が順次に適用されるので、好ましいことには、独立した不連続な層が適用される。
【0122】
未焼成のSiO層は、主として有機溶媒の混合物中でのゾルゲルプロセスにより適用するのが好ましい。この場合では、工程(b)において、SiO層が、好ましくはテトラアルコキシシランを使用し、場合によっては水を添加して適用される。主として有機溶媒の混合物中で実施されるこの種のゾルゲル法は、従来技術において記載されているような、水性ケイ酸塩溶液からSiOを堆積させることよりは有利である。
【0123】
最近のバインダーシステムは、塩の存在には極めて敏感である。たとえば、塩がバインダー粒子のコロイド安定性を乱し、そのために、コーティング物質のバインダーシステムの調節できない凝固を誘発する可能性がある。その結果、そのコーティング物質は使用できなくなるであろう。さらに、水溶性の構成成分、たとえば塩が、着色コーティングシステム中において浸透プロセスを促進させ、そのために、コーティング膜の中に水が蓄積される結果として、泡が存在したり、接着力の損失に伴う問題が生じたりすることもあり得る。塩を含まないか、または低塩分の真珠光沢顔料のための製造プロセスは、費用も手間もかかる精製工程を不要とする。別の言い方をすれば、本発明の顔料は、スラリー化させた後では、通常のものよりも低い伝導性を示す。
【0124】
その反応の副生物は主としてアルコールであるが、それは、アルコール系溶媒と共に、たとえば蒸留によって処理をして、次いでリサイクルさせることができる。
Si(OR)+2HO→SiO+4ROH
【0125】
本発明の好適な展開においては、テトラアルコキシシランのアルコキシ基が、使用される有機溶媒中のものと同じである。テトラアルコキシシランが加水分解されると、それに対応するアルコール、たとえばRがCH、CまたはCを表している場合には、メタノール、エタノールまたはプロパノールが放出される。メタノール、エタノール、またはプロパノールを有機溶媒として使用すれば、加水分解の後でも異種の溶媒の混合物が得られることはないので、このことは、溶媒の処理およびリサイクルに関しては極めて有利となる。
【0126】
SiO層を作成するために、モノマー性の出発物質を使用すると、また別な利点が得られる。有機溶媒中で実施されるゾルゲルプロセスの場合においては、その反応は、テトラアルコキシシラン、すなわちモノマー分子の加水分解で始まる。それに対して、水ガラスのような水性ケイ酸塩溶液は常に、予め縮合されたO−Si−O単位のオリゴマーの形で存在する。したがって、本発明において好適に使用されるゾルゲルプロセスの場合においては、その加水分解工程、およびさらにはそれに続く縮合反応も、より効率よく調節することができる。このことは、形成される層の品質および形態に関して有利である。主として有機溶媒の混合物中でのゾルゲルプロセスにおけるSiOの調節された堆積によってさらに、層の高品質と、その結果としての極めて良好なバリアー効果が約束されるものと考えられる。
【0127】
SiO層のための出発化合物としては、テトラアルコキシシランを使用するのが好ましい。その例としては、以下のものが挙げられる:テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、およびテトラブトキシシラン、またはそれらの混合物。
【0128】
SiOの堆積ためのゾルゲルプロセスにおける触媒作用は、塩基性媒体中で進行させるのが好ましい。使用される触媒は、好ましくは、窒素含有塩基である。それらの例としては、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、1−ブチルアミン、2−ブチルアミン、1−プロピルメチルアミン、2−プロピルメチルアミン、1−ブチルメチルアミン、2−ブチルメチルアミン、1−プロピルエチルアミン、2−プロピルエチルアミン、1−ブチルエチルアミン、2−ブチルエチルアミン、ピペラジン、およびピリジンが挙げられる。
【0129】
これらの塩基は、水酸化セリウムを堆積させる際に放出される可能性があるプロトンを中和させるためにも適している。
【0130】
水酸化セリウムを堆積させる際に放出される可能性がある塩基性成分を中和させるには、たとえばHNOまたはHClが適している。
【0131】
本発明のプロセスの一つの好適な変法においては、工程(a)における液相が主として有機溶媒の混合物である。
【0132】
真珠光沢顔料のためのコーティング操作(b1)もしくは(b2)および(c)の全体を、主として有機溶媒の混合物中か、またはその大部分が有機溶媒である液相中か、またはその大部分が有機溶媒である液相中で実施するのがより好ましい。本明細書においては、「主として有機溶媒の混合物」とは、好ましくは50重量%未満の水を含むものを意味している。
【0133】
使用される有機溶媒の例としては、エーテル、エステル、アルコール、ケトン、アルデヒド、およびホワイトスピリットが挙げられる。
【0134】
使用される主として有機溶媒の混合物は、50%〜99重量%のアルコール含量を有するアルコール性溶媒であるのが好ましい。アルコールの割合は重量で、好ましくは60%〜95%、より好ましくは70%〜90%である。アルコールの割合が50重量%未満であると、コーティングされた真珠光沢顔料の適用特性が損なわれる可能性がある。これは、たとえばコーティングの光沢の損失をもたらす可能性がある。99重量%を超えると、最終的に、その反応混合物に含まれる水分が明らかに少なすぎて、そのために、アルコキシシランの加水分解が遅くなり、その結果、反応時間が極端に長くなってしまう。
【0135】
好適なアルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノール、2−メトキシプロパノール、ブチルグリコールなどが挙げられる。これらのアルコールの各種所望の割合での混合物もまた可能である。
【0136】
混合物中の残りの部分は、反応体の水と有機溶媒を含むものである。
【0137】
主として有機溶媒を使用することにより得られる利点は、特に工程(c)において、多くのシランが有機溶媒に極めて溶解しやすいという点にある。その結果、表面コーティングのために、親水性シランだけではなく、特に疎水性シランも使用することが可能となる。それとは対照的に、水溶液においては、多くのシランが可溶性ではないが、この場合に採用される救済策は、シランを調節しながら前加水分解をさせるか[US5,759,255]または特殊な水溶性オリゴマーシステムを合成するか[DE196 39 783]である。しかしながら、前加水分解させたシランシステムは、貯蔵性が極めて悪い。さらに、加水分解または縮合プロセスによってシランがさらなる架橋またはオリゴマー化される可能性があり、最終的にそれらは、表面コーティングの目的には役に立たなくなる可能性がある。さらに、水溶性オリゴマーシステムは最初に合成しなければならず、これがコストを上昇させる。それらもまた同様に比較的貯蔵が困難であり、また有機官能基を種々変更させることを可能とする多様性に関して限界がある。特に、10〜22個の炭素原子を有するアルキルシランは、水に不溶性であるか、または極めてわずかしか溶解しない。それとは対照的に、この種の無極性のアルキルシランは、ここで使用される溶媒中には容易に溶解することができ、このことは、顔料表面上に層を形成させるには都合がよい。さらに、比較的高価なシランを、経済的に高効率で使用することが可能である。
【0138】
その一方で、アミノシランは一般的に水に可溶性であるが、それらは、自己触媒的な加水分解と縮合を起こして、オリゴマーおよびポリマーシステムを形成する。したがって、それらの水中における貯蔵安定性には限度がある。
【0139】
表面コーティング剤として使用可能なシランは膨大な数で存在しているので、各種のコーティングシステムに対して、本発明の真珠光沢顔料の表面特性を種々適合させることが可能である。それとは対照的に、前加水分解させたシラン、および特に水溶性シランオリゴマーを使用した場合には、炭素原子が8個以下の短鎖の脂肪族または芳香族ラジカルを使用することに処方が限定される。
【0140】
上述のプロセスの工程(a)〜(c)は、同一の液状媒体中で実施するのが好ましい。この実施態様においては、工程(b)では、主として有機溶媒に十分な溶解性を有するセリウム塩を使用する。この目的のために好適な例としては、酢酸セリウム(III)、オクタン酸セリウム(III)、セリウム(III)アセチルアセトネート、硝酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、および硝酸アンモニウムセリウム(IV)が挙げられる。
【0141】
一つの好適なプロセスにおいては、SiOおよび/または酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層を修飾するための工程(c)を、その大部分が有機溶媒である液相中で実施する。「大部分が有機溶媒である」という用語は、溶媒混合物が、好ましくは50重量%未満の水、すなわち50重量%を超える有機溶媒を含んでいるということを意味している。
【0142】
使用される有機溶媒の例としては、エーテル、エステル、アルコール、ケトン、アルデヒド、およびホワイトスピリットが挙げられる。
【0143】
本明細書に記載したように、本発明のプロセスの好ましい変法の特徴は、ワンポットプロセスであって、そこでは、有機化学的アフターコーティングを、酸化/水酸化物セリウム、次いでSiOでのコーティングの後、すぐに続けて実施する。シランは、反応溶液に直接、すなわち前加水分解せずに添加し、その場で加水分解させ、最終的にはSiO層のヒドロキシル基と縮合させて、顔料表面に対する共有結合を起こさせる。これによって、使用可能なシランを極めて良好に選択できると同時に、極端に単純なプロセス管理が可能となる。
【0144】
少なくとも1個の官能性結合基を含み、50%を超える程度の前加水分解を受けておらず、好ましくは前加水分解されていないシランを使用するのが特に有利である。
【0145】
本発明のプロセスのまた別な変法においては、SiOコーティング操作を、水溶液から酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムのコーティングを適用させたのに続けて、水性媒体中でケイ酸塩溶液を用いて実施することも可能である。セリウムまたはケイ酸塩化合物を水溶液から堆積させるための条件は、たとえばEP0 141 174の実施例2の第30〜37行、またはEP649 886B1の実施例1、さらにはDE4 207 723の実施例1またはDE2 106 613の実施例1に記載があり、これらを参考として引用し本明細書に組み入れる。次いで、適切であるならば、焼成工程を実施することができる。そのような工程のために必要な条件は当業者には自体公知であり、たとえば、DE2 106 613またはDE3 535 818に見出すことができる。
【0146】
本発明のコーティングされた真珠光沢顔料は、特に、塗料中における耐候安定性真珠光沢顔料として、たとえば自動車用ラッカー、さらには、粉体コーティング、印刷インキ、プラスチック、化粧品の調製、ならびに耐候安定性屋外用途および建築表面仕上げ用途のためのコーティングに使用される。
【0147】
極めて有利なことには、本発明の真珠光沢顔料によって、1回のコーティングで、UV安定性で耐候安定性の塗料または着色コーティングシステムを与えることが可能となり、それに対しては、その後にクリアコートまたは保護コートを適用する必要がない。
【0148】
本発明の目的は、請求項1〜27のいずれか1項に定義されているような真珠光沢顔料を含むコーティングで得られる物品によって、さらに達成される。
【0149】
本発明の一つの好ましい展開においては、前記物品が、車体、好ましくは自動車の車体であるか、または、建築の表面、たとえば表面仕上げ要素である。
【0150】
以下の実施例で本発明を説明するが、本発明がそれらに限定される訳ではない。
【0151】
実施例1:
約300nmの平均厚みを有する100gのガラスフレーク(Glassflake Ltd.製)(WO2004/056716A1)に、酸化性Sn化合物をプレコートした後で、TiOでコーティングして、青色の干渉色が現れるようにした。直ちにそのフィルターケーキを650℃で焼成すると、青色の干渉色を有する極めて光沢の高い効果顔料が得られた。
【0152】
実施例2:(変法A)
実施例1において得られたTiOでコーティングされたガラスフレーク100gを、300mlのイソプロパノール中に懸濁させ、その懸濁液を沸騰させた。撹拌しながら、0.45gのエチレンジアミンの9.5gのHO中の溶液を添加した。次いで、2時間かけて、17.5gのテトラエトキシシランの15gのイソプロパノール中の溶液を、計量ポンプ(Ismatec)を介して連続的に導入した。次いでその懸濁液を放置して、6時間かけて反応させた。次いで、0.6gのDynasylan AMEOと1.3gのDynasylan 9116を添加し、その混合物を放置して、徐々に冷却させた。室温で一夜撹拌してから、その翌日に吸引濾過にかけた。次いで、その顔料のフィルターケーキを真空中100℃で、6時間かけて乾燥させた。その顔料の理論上のSiO含量は4.9重量%であった。
【0153】
実施例3:(変法B)
(実施例1において得られた)TiOでコーティングされたガラスフレーク100gを、300mlのイソプロパノール中に懸濁させ、その懸濁液を沸騰させた。撹拌しながら、まず2.0gのHO、次いで、1時間かけて、2.17gの硝酸セリウム六水和物の100gのイソプロパノール中の溶液を添加した。それに続けて、0.45gのエチレンジアミンの3.0gのHO中の溶液を添加した。その後で、2時間かけて、10.6gのテトラエトキシシランおよび22gのイソプロパノールを、計量ポンプ(Ismatec)を介して連続的に導入した。次いで、その懸濁液を放置して、6時間かけて反応させた。次いで、0.4gのDynasylan AMEOと1.3gのDynasylan 9116を添加し、その混合物を放置して、徐々に冷却させた。室温で一夜撹拌してから、その翌日に吸引濾過にかけた。次いで、その顔料のフィルターケーキを真空中80℃で乾燥させた。その顔料の理論上のCe含量は0.7重量%、SiO含量は3.0重量%であった。
【0154】
実施例4:(変法B)
(実施例1において得られた)TiOでコーティングされたガラスフレーク100gを、300mlのエタノール中に懸濁させ、その懸濁液を沸騰させた。撹拌しながら、まず20gの水、次いで、1時間かけて、2.2gの硝酸セリウム六水和物の10gの水中の溶液を添加した。それに続けて、2.0gのアンモニア(25重量%強度)の8.0gの水中の溶液を添加した。その後で、2時間かけて、10.6gのテトラエトキシシランおよび25gのエタノールを、計量ポンプ(Ismatec)を介して連続的に導入した。次いで、その懸濁液を放置して、6時間かけて反応させた。次いで、0.6gのGeniosil XL926および0.4gのDynasylan AMEOを添加し、その混合物を放置して、徐々に冷却させた。室温で一夜撹拌してから、その翌日に固形分を濾過した。次いで、その顔料のフィルターケーキを真空中80℃で一夜かけて乾燥させた。その生成物の理論上のセリウム含量は0.7重量%、SiO含量は3.0重量%であった。
【0155】
比較例5:
市販の、Exterior CFS Mearlin Super Blue 6303Z(10〜40μm)(Engelhard製)。
【0156】
比較例6:
実施例1に従って調製したが、ただし、アミノシランは使用しなかった。アフターコーティングは、1.7gのDynasylan 9116のみで実施した。
【0157】
本発明に関連する実施例および比較例のものを、耐候安定性およびUV安定性についての各種の試験にかけた。試験方法を以下に説明し、結果を表にする。
【0158】
A:凝縮水気候試験
複数の顔料サンプルを水ベースの塗料システムの中に組み入れ、スプレーコーティングによって試験適用物を調製した。ベースコートを、市販の一成分クリアコートでオーバーコートしてから、焼き付けた。それらの適用物について、DIN50 017に規定された試験(標準湿熱雰囲気)を実施した。その接着強度は、DIN EN ISO 2409に規定されているようにして、試験完了直後および1時間後に碁盤目カットにより試験して、ストレスなしのサンプルと比較した。この試験においては、Gt0は「変化なし」を表し、そしてGt5は「極めて変化大」を表す。凝縮ストレスの直後に、DIN53 230に基づいた方法を使用して、膨潤の程度を視覚的に評価した。この場合、指数0は「変化なし」を表し、指数5は「極めて変化大」を表す。泡の程度は、DIN53 209の規定にしたがって、視覚的に評価した。この場合もまた、評点は0(「極めて良」)から5(「極めて不良」)の範囲とする。「m」は頻度を、「g」は泡の大きさを表す。最終的に、DOI(写像性)を視覚的に評価した。これは、水の保持が原因の膨潤によって実質的に変化する可能性がある(0=極めて良、5=極めて不良)。
【0159】
【表1】

【0160】
本発明に関連する実施例2、3、および4は、すべての点において従来技術の比較例5に匹敵して、凝縮試験に合格する。しかしながら、そのアフターコーティングが、塗料システムに結合する官能基を持たないアルキルシラン(炭素16個)だけからなる比較例6は、碁盤目カットにおける接着強度の点で極端に劣っていて、試験には不合格である。
【0161】
したがって、このサンプルについては、たとえばWOM試験などのさらなるストレス試験は実施しなかった。
【0162】
B:WOM試験
顔料サンプルを水ベースの塗料システムの中に組み入れ、スプレーコーティングによって試験適用物を調製した。ベースコートを、市販のクリアコートでオーバーコートしてから、焼き付けた。加速風化試験は、SAE−J1960に規定されているようにして、水冷の6.5kWキセノンラジエーターを有する、Atlas Ci−65A Xeno試験装置の中で実施した。
【0163】
ΔE指数の決定、およびさらにはグレースケール評点はいずれも、対応するストレスなしのサンプルと比較して、実施した。
【0164】
WOM試験は、すべての加速風化試験の中でも、フロリダ風化試験に対して最良の相関を示すものと一般的に認められている。フロリダ試験に合格することは、たとえば、コーティングが自動車の分野で承認されるための前提条件である。WOM試験における4000時間は、必要とされる2年のフロリダ試験にほぼ相当する。
【0165】
C:ドローダウンにおけるUV安定性
この試験は、EP0 870 730に記載された、TiO顔料の光化学的UV活性を求めるためのUV試験法に類似させて実施した。
【0166】
この目的のために、1.0gの真珠光沢顔料を、9.0gの、二重結合が多いメラミン含有塗料の中に分散させた。厚紙で裏打ちした紙の上でドローダウンを調製し、室温で乾燥させた。それらのドローダウンを二つに切断し、いずれの場合においても、その二つの断片の内の一つは、比較の目的で、暗所にストレスなしのサンプルとして保管した。次いで、Q−Panel製のQUV装置の中で、UV含有光線(UV−A−340ランプ、照射レベル1.0W/m/nm)を用いてそれらのサンプルを150分間照射した。試験完了直後に、Minolta CM−508i色彩計を使用して、相当する対照サンプルと比較して、ストレスをかけた試験サンプルの測色値を求めた。HunterのL式に従って計算して得られたΔE指数を、表2に列記する。
【0167】
この試験においては、ドローダウン中において、UV光の影響を受けてTi(III)中心が形成されたために、真珠光沢顔料のTiO層が実質的に灰色〜青色に変色することが観察される。このことが起きるための条件は、電子空孔がTiOから離れ、バインダー中のオレフィンの二重結合と反応した結果として、残りの電子と直ちに再結合することが不可能である、ということである。メラミン含有塗料層が、水(蒸気)および酸素の顔料表面への拡散を顕著に遅らせるために、チタン(III)中心の再酸化が明らかに妨げられた形態で起こり、そのために、グレーイングの程度が測定可能となり、そしてΔE指数が、顔料の光安定性の目安として使用できる。したがって、ストレスなしの対照サンプルに比較してストレスを受けたサンプルのΔE指数の数値が高い程、調査中のその顔料の光安定性が劣ることになる。
【0168】
本発明に関連する実施例においてこの試験を使用する場合、有機的表面修飾(OSM)されたサンプルと、されなかったサンプルとの間の区別をする必要がある。
【0169】
有機的表面修飾を伴う場合には、その顔料表面は、少なくとも部分的には、反応性の不飽和メラミンシステムからは分離されている。したがって、発色性のTi(III)中心の形成に必須のレドックス反応は、最初に記載した場合におけるのと同じような効率および速度では起きない。したがって、有機的表面修飾が施された顔料の場合には、見出される変色をはるかに少なくすることができる。しかしながら、このことがあるからといっても、この場合にUV触媒的活性が低いということは意味していない。しかしながら、いずれの場合においても、有機的修飾を行っていない本発明の真珠光沢顔料のΔE指数は、そのために、表面修飾を行ったサンプルのそれよりも、いくぶん高い。
【0170】
【表2】

【0171】
本発明の実施例2、3、および4の青色の顔料についてのWOM試験における色の変化ΔEを、従来技術を代表する比較例5において得られた同じ結果と比較すると、値が低い、すなわちより良好な耐候性が見出される。ドローダウン試験において求められた光安定性についても、同様の結果があてはまる。これらの場合においては、真珠光沢顔料を安定化させるために、ただ1つの酸化物層しか使用されていないことから、それらの結果は特に注目すべきである。
【0172】
したがって、本発明の真珠光沢顔料は、従来技術の比較例に比べて、ただ1つのSiO層しか使用しなくても耐候安定性およびUV安定性を改良することができる。
【0173】
UV安定性:
酸化物層の構造と、SiO層の厚みの効果をさらに詳しく調査するために、本発明に関連するさらなる実施例および比較例を実施して、それらのUV安定性について、ドローダウン試験で調査した。この場合、アフターコートは適用しなかったが、それは、アフターコーティングがUV試験に歪みを与えるからである(上記参照)。
【0174】
実施例7および8:
実施例1において得られたTiOでコーティングされたガラスフレーク100gを、300mlのイソプロパノール中に懸濁させ、その懸濁液を沸騰させた。撹拌しながら、まず2.0gの水、次いで1時間かけて、0.93gのCe(NO×6HOの8gのイソプロパノール中の溶液を添加した。それに続けて、0.45gのエチレンジアミンの3.0gのHO中の溶液を添加した。その後で、2時間かけて、所定の量のテトラエトキシシラン(表3参照)および22gのイソプロパノールを、計量ポンプ(Ismatec)を使用して連続的に導入した。次いで、その懸濁液を6時間かけて反応させた。室温で一夜撹拌してから、その翌日に吸引濾過にかけた。次いで、その顔料のフィルターケーキを真空中100℃で6時間かけて乾燥させた。同様にして、異なる量のSiOを堆積させた(表3参照)。
【0175】
実施例9および10:
比較のために、SiO含量を変化させた各種の保護層をさらに調製したが、セリウム塩を付加して堆積させることはしなかった。
【0176】
実施例11:
同様にして、セリウム含有保護層(Ce含量0.3%)を有する比較例を実施したが、SiOを付加して堆積させることはしなかった。
【0177】
すべての実施例について、そのΔE値を、上述のUV安定性試験を使用したドローダウンで求めた。採用した化学物質の量、保護層成分の理論上の含量、およびΔE指数を表3に列記する。
【0178】
実施例12および13(混合層):
実施例1において得られたTiOでコーティングされたガラスフレーク100gを、300mlのイソプロパノール中に懸濁させ、その懸濁液を沸騰させた。撹拌しながら、まず2.0gのHO、次いで0.45gのエチレンジアミンの3.0gのHO中の溶液を添加した。その後で、2時間かけて、テトラエトキシシラン(表3参照)の100gのイソプロパノール中の溶液と、同時に、0.93gのCe(NO×6HOの100gのイソプロパノール中の溶液とを、計量ポンプ(Ismatec)を使用して連続的に導入した。次いでその懸濁液を放置して、6時間かけて反応させた。その混合物を室温で一夜撹拌してから、その翌日に吸引濾過にかけた。次いで、その顔料のフィルターケーキを真空中80℃で乾燥させた。
【0179】
同様にして、異なる量のSiOを堆積させた(表3参照)。
【0180】
比較例14および15:
比較例14および15は、実施例8および9に記載したコーティング方法に規定されているようにして調製したが、ただしこの場合には、最初にケイ酸塩化合物、次いでセリウム塩を導入して沈殿させた。
【0181】
【表3】

【0182】
表3から明らかなように、1)酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム、2)SiOの層の順序が、最善のUV安定性を与えていることが判る。SiOのみで保護した真珠光沢顔料、およびさらには酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムのみで保護した真珠光沢顔料、または、1)SiO、2)酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの層の順序を有するものは、比較すると、顕著に安定性が低い。同様に、SiOと、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムとの混合層もまた、低い安定化効果を示している。これらの知見は明らかに、組み合わせて、連続的に沈殿させた水酸化セリウムコーティングとSiOコーティングとの相乗的な効果を示しているが、それは、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウム層を最初に沈殿させ、次いでケイ素酸化物層を沈殿させた場合に限って有効である。
【0183】
実施例16
実施例1において得られたような、酸化セリウム層とSiO層とでコーティングされたガラスフレークの光沢特性を、以下において、実施例1の酸化物保護層を有していない真珠光沢顔料と比較する。
【0184】
この目的のためには、酸化セリウム層およびSiO層を有する実施例1の真珠光沢顔料(実施例3参照)と、アフターコートを有さないものとを、市販のNC塗料システム中に、塗料の全重量を基準にして6重量%の着色レベルで組み入れる。36μmの湿潤膜厚みを有するドローダウンを、その着色NC塗料システムから調製した。そのドローダウンを、Byk Gardner,Germany製の黒色および白色の背景を有する試験カードに適用してから、25℃で30分間乾燥させた。
【0185】
その光沢を、Byk Gardner製のMicro−TRI−Gloss μ装置を使用し、メーカーの取扱説明書に規定されているようにして、垂直に対して60度の測定角で測定した。60度という測定角は、10〜70の光沢度の範囲のいわゆる「中程度の光沢」を測定するには適したものであって、光沢度の数値が高いものほど、高い光沢を有していることを示す。測定結果を表4に示す。
【0186】
【表4】

【0187】
表4は、酸化セリウム層と低屈折率のSiO層とを含む真珠光沢顔料のコーティングが、驚くべきことには、光沢を改良することを示している。SiOの屈折率が低いとすれば、SiOでコーティングされた真珠光沢顔料は、実施例1の顔料よりも顕著に低い光沢特性を有しているものと予想されていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高屈折の金属酸化物でコーティングされたガラスフレークをベースとし、そのトップの金属酸化物層の上に保護コートを有する耐候安定性真珠光沢顔料であって、
ガラスフレークが50nm〜500nmの平均厚みを有し、それに対して、
A)1.8より高い屈折率nを有し、80%〜100重量%のルチル含量を有するTiOを含む金属酸化物層、ならびにSiOの保護コートを適用するか、
または
B)1.8より高い屈折率nを有し、80%〜100重量%のルチル含量を有するTiOを含む金属酸化物層、ならびに酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムを含む第一の保護コーティングとSiOの第二の保護コーティングとを含む保護コートを適用し、そして
A)またはB)における保護コート中のSiO層に有機化学的表面コーティングが適用されていることを特徴とする、耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項2】
ガラスフレークが、60nm〜350nmの平均厚みを示すことを特徴とする、請求項1に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項3】
SiO層が、焼成された酸化物層ではないことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項4】
SiO層が、1nm〜50nmの平均厚みを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項5】
SiO層が、真珠光沢顔料の全重量を基準にして、0.5%〜10重量%のSiOを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項6】
有機化学的表面コーティングが、SiOで、または、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムならびにSiOでコーティングされた真珠光沢顔料の全重量を基準にして、好ましくは0.1%〜6重量%の量の1種または複数のシランを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項7】
1種または複数の有機官能性シラン、アルミン酸塩、ジルコン酸塩、および/またはチタン酸塩を有するSiO層が、表面修飾されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項8】
シラン表面コーティングが、AMMOとGLYMOとの混合物ではないことを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項9】
表面コーティングのために使用されるシランが、水に不溶性または難溶性のシランであることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項10】
有機化学的表面コーティングが、保護コートに共有結合的に結合されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項11】
有機官能性シランが、少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランを含むことを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項12】
有機官能性シランが、少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランと、官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランとを含むことを特徴とする、請求項7〜11のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項13】
少なくとも1個の官能性結合基が、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アミノ、シアネート、イソシアネート、エポキシ、ヒドロキシ、チオール、ウレイド、カルボキシル基、およびそれらを混合したものからなる群より選択されることを特徴とする、請求項11に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項14】
少なくとも1個の官能性結合基を含むシランが、アミノシランであることを特徴とする、請求項11または請求項13に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項15】
少なくとも1個の官能性結合基を含むシランが、モノマーであることを特徴とする、請求項11または請求項13に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項16】
少なくとも1個の官能性結合基を有する少なくとも1種のシランが、50%以下の程度で前加水分解されたシランであり、好ましくは前加水分解されていないシランであることを特徴とする、請求項11または請求項13に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項17】
官能性結合基を含まない少なくとも1種のシランが、水に不溶性または難溶性の有機官能性シランであることを特徴とする、請求項12に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項18】
官能性結合基を含まないシランが、好ましくは構造式(I)のアルキルシランを使用して適用されたアルキルシランであることを特徴とする、請求項17に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
(4−z)Si(X) (I)
[式中、
Rは、置換または非置換で、直鎖状または分岐状の10〜22個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、
Xは、ハロゲンおよび/またはアルコキシ基を表し、そして
zは、1〜3の整数である]
【請求項19】
官能性結合基を含まないシランが、構造式(II)を示すことを特徴とする、請求項17に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
(R−X−[A−Y]−B)(4−z)Si(OR (II)
[式中、
nは、1〜100を表し、
zは、1〜3の整数であり、
は、ハロゲンによって置換されていてもよい、1〜12個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキル;6〜12個の炭素を含むアリール;または、1〜6個の炭素を含むアルキルおよび/またはハロゲンによって置換されていてもよい6〜12個の炭素を含むアリールを表し、
は、1〜6個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキルを表し、
AおよびBは、独立して、1〜12個の炭素を含む直鎖状または分岐状のアルキレン;6〜12個の炭素を含むアリーレン;または、1〜6個の炭素を含むアルキルおよび/またくはハロゲンによって置換されていてもよい6〜12個の炭素を含むアリーレンを含む2価の基を表し;そして
XおよびYは、独立して、OまたはSを表す]
【請求項20】
およびRが、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項19に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項21】
AおよびBが、独立して、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、2−ブチレン、1〜6個の炭素を含むアルキルによって置換されていてもよいフェニレン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項22】
シランが、決められたnの値を有する純品の状態で存在していても、または、nが異なった値のものの混合物で存在していてもよいことを特徴とする、請求項19〜21のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項23】
表面修飾剤が、それをSiO層に適用する前には、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの形態で存在していることを特徴とする、請求項7〜21のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項24】
表面修飾剤が、それをSiO層に適用する前には、モノマーの形態で存在していることを特徴とする、請求項23に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項25】
保護コートB中のセリウムの割合が、いずれも顔料の全重量を基準にして、0.05%〜3.0重量%、好ましくは0.1%〜1.0重量%、より好ましくは0.2%〜0.7重量%であることを特徴とする、請求項1〜24のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項26】
ガラスフレークが、1層または複数の金属酸化物層と好ましくは1層または複数の酸化スズの層とを含み、1層または複数の金属酸化物層でコーティングされた微小板形状の基材が好ましくは焼成されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料を調製するためのプロセスであって、以下の:
(a)液相中で、1.8より高い屈折率を有する金属酸化物でコーティングされたガラスフレークの懸濁液を作る工程、
(b1)工程(a)において懸濁されたガラスフレークに、SiOの保護コートを適用する工程、
または
(b2)工程(a)において懸濁されたガラスフレークに、酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物および/または水酸化セリウムの第一の保護コーティングならびにSiOの第二の保護コーティングを含む保護コートを適用する工程、
(c)工程(b1)または(b2)で製造されたSiOのトップの保護コーティングに、有機化学的表面コーティングを適用する工程、
を含むプロセス。
【請求項28】
工程(a)における液相が、好ましくは50重量%未満の水を含んだ有機溶媒を優越した量で含むことを特徴とする、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
有機溶媒に可溶性のセリウム化合物、好ましくは酢酸セリウム(III)、オクタン酸セリウム(III)、セリウム(III)アセチルアセトネート、硝酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、硝酸アンモニウムセリウム(IV)またはそれらの混合物を使用して、工程(b2)において製造される酸化セリウムおよび/または水酸化セリウム層を、場合によっては塩基または酸を添加して、適用することを特徴とする、請求項27または請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
工程(b1)または(b2)において、SiO層が、テトラアルコキシシランの添加および場合によっては水の添加で、コーティングされた顔料に適用されることを特徴とする、請求項27に記載のプロセス。
【請求項31】
テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
工程(b1)または(b2)におけるSiOコーティング操作の間に、さらなる窒素含有塩基が添加されることを特徴とする、請求項27〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項33】
工程(c)において、SiO層を備えた顔料を、優越した量の有機溶媒を含む液相中に取り込み、次いで有機化学的手段によって表面をコーティングすることを特徴とする、請求項27〜32のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項34】
工程(a)において、ガラスフレークを、水中、または水性が優越する媒体中に懸濁させ、
そして
工程(b1)または(b2)において、SiO層が、水ガラスのような水性ケイ酸塩溶液を用いて適用されることを特徴とする、請求項27〜33のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項35】
有機溶媒が、酢酸エチル、アルコールたとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノール、2−メトキシプロパノール、ブチルグリコール、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項28〜34のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項36】
コーティング、塗料、粉体ベースの塗料、印刷インキ、プラスチック材料、および化粧品の調製における、請求項1〜26のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料の使用。
【請求項37】
耐候性自動車用ラッカー、さらには、粉体ベースの塗料、ならびに耐候性屋外用途および建築表面仕上げ用途のためのコーティングにおける、請求項1〜26のいずれか1項に記載の耐候安定性真珠光沢顔料の使用。
【請求項38】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の真珠光沢顔料を含むコーティングを用いて得られる、対象物。
【請求項39】
対象物が、車体または建築表面仕上げ要素であることを特徴とする、請求項38に記載の対象物。


【公表番号】特表2009−527605(P2009−527605A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555709(P2008−555709)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001603
【国際公開番号】WO2007/098897
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】